ペルソナ4 正義のペルソナ使い    作:ユリヤ

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前回のあとがきで影戦になると書きましたが、今回は2話構成で行っていきます。
今回は会話パート、次回が戦闘パートになります。


第10話

「おッ俺…!?」

 

 明日香は椅子に座っているもう一人の自分に愕然とした。あれはまさしく自分、そして自分の影だと。

 

『おいおい、なに驚いてるんだよ?頭のキレる俺だ。そろそろ俺が出てくるんじゃないかって、少なからずは分かってたんじゃねえのか?』

 

 明日香の影は愉快そうにケタケタと笑いながら階段を降り始めた。

 雪子の影との戦いの後に明日香の影が現れたのだ。警戒は解かない。

 

「明日香の影、何かヤバそうな雰囲気があるんだが」

 

 陽介はすぐにでもジライヤを召喚できるような体勢をとっていた。

 

「あのアスカ、何かヤバそうな臭いがするクマ。ヨースケや千枝ちゃんやユキちゃんの影よりも…ヤバそう」

 

 クマは悠の背中に隠れながら、震えながら言った。

 先程雪子の影との戦いで体力が消耗しているのに、ここにきて明日香の影が現れるとは…

 明日香の影はゆっくりと階段を降りて、明日香に近づくと思いきやそのまま明日香をスルーしてしまった。

 

「は?」

 

 明日香は思わず呆けた声を出してしまい、明日香の影はそのまま千枝と雪子へ近づいた。

 

「なッ何よ、やるって言うの!?」

 

 相手は明日香の影だ。今ままでの陽介、千枝そして雪子の影のように何するか、何を言いだすのか分からない。

 千枝は何時でも蹴りがいれられるよう、構えていた。

 そして明日香の影は、千枝にニコリと笑った後に…千枝に抱き着いた。

 なッ!?と千枝以外の皆が、明日香の影の行動に唖然としていた。

 

「いや!ちょッ何すんのよ!?」

 

 千枝は行き成り抱きついてきた明日香の影に動揺と恥ずかしさで顔を赤らめた。

 明日香の影は千枝に抱き着いたまま、あぁと感嘆の声を上げる。

 

『あぁ…千枝、千枝ェ…こうやって君を抱きしめたかった』

 

 明日香の影は抱きしめながら、心底嬉しそうにしていた。目にはほんのり涙を浮かばせていた。

 明日香は自身の影がやっていることに目を見開いており、本来だったら千枝から離れろと言う所が何も言えなくなっていた。

 陽介や悠も明日香の影の行動に、自分達が如何動けばいいのか分からなかった。

 

「なッなぁ、あの明日香の影本当に危ないのか?さっきから里中にべったりしてるぞ」

 

 陽介は目の前にいる明日香の影に対して余り危機感を感じられないでいた。

 雪子の影も色々とぶっ飛んでいたが、行き成り千枝に抱き着くと言うかなりぶっ飛んでいる。

 何を言ってるクマ!とクマは陽介に憤慨しながら

 

「あのアスカの影は本当にヤバいクマ!だって僕らの事をまるっきり無視クマよ!千枝ちゃんの近くにいるユキちゃんだって無視してるクマ!」

 

 クマの言った事にハッとする悠、確かに明日香の影は千枝の近くにいる雪子の事なんか眼中になかった。

 まるで千枝以外の者なんかどうでもいいと言っているような感じであった……

 

「ねッねぇ明日香君…なんだよね?」

 

 雪子は明日香の影に恐る恐ると近づいた。千枝の以外の者が近づいたら、何かしらのアクションを起こすのではないか。

 雪子が近づいて、明日香の影はアクションを起こした。

 だがそのアクションと言うのが、雪子を思い切り突き飛ばした事である。

 

「キャッ!」

 

 雪子は突き飛ばされ、尻餅をついた。

 

「雪子!?アンタ雪子に何すんのよ!」

 

 千枝は雪子が突き飛ばされたのをギョッとしてしまい、抱き着いている明日香の影を強引に突き飛ばして、雪子の元へ駆け付けた。

 明日香の影は雪子の元へ駆け付けた千枝を見て、見るからにテンションが下がっていた。顔に影を落としながら

 

『やっぱり千枝は俺なんかよりも、俺から千枝を奪ったその女の方が大事なんだな…』

 

 明日香の影は金色の瞳をぐらぐらと泳がせながら、焦点の合ってない目でこの女がこの女が…と呟いていた。

 

『千枝がこの女と出会ってから千枝は俺よりもそこの女と一緒にいる事が多くなった。其処に居る女のせいで千枝は変わってしまった!』

 

 明日香の影は千枝千枝千枝千枝千枝!!と喚き散らしながら、何処から取り出したのか刀を構えながら近づき

 

『その女が居なくなれば、千枝は俺の元へ戻ってきてくれる。だから……死んでくれよ雪子』

 

 明日香の影は千枝が一緒に居るのに、容赦なく刀を振り落した。

 明日香の影が雪子を突き飛ばすと言う光景を見てしまい、ペルソナを出すタイミングを逃してしまった悠と陽介。

 間に合わないと思いきや、明日香がすぐさま駆け付けて明日香の影の刀を模擬刀で防いだ。

 刀を防いで鍔迫り合いとなる。

 

「テメェ何やってんだ!本気で雪子と千枝を斬るつもりだったのか!?」

 

『あぁ斬るつもりだったさ。俺なんかよりも雪子を優先する千枝なんかいらない』

 

 ふざけんな!!明日香は自身の影の刀を押し出し、一気に斬りかかった。

 だが明日香の影なだけあって、明日香の剣筋を読んでいた。

 

「クソ!俺の影だからか剣筋が読まれる…!」

 

 焦りを感じていた。明日香に明日香の影は余裕そうに挑発する。

 

『あぁ知ってるさ。俺はお前だからな。テメェの剣の癖も分かってる…テメェが心に押し込んでいる事もな』

 

「ッ!」

 

 明日香の影の言動に動揺した明日香は動揺してしまい、剣筋が乱れてしまった。

 その隙を逃さず、明日香の影は明日香を容赦なく蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばされて、仰向けに倒れる明日香。

 蹴飛ばされた明日香を笑い飛ばした明日香の影は、今度はスゥッと静かになり

 

『そうだ、此処には千枝と雪子がいるからあの話でもしようかねぇ……あれは初めての天城越えがあった小学6年の頃、千枝が雪子を庇ったその放課後…いじめが起こりそうになった』

 

「いッいじめ!?アタシが」

 

 いきなり自分がいじめにあいそうになった聞いて、仰天する千枝。

 明日香の影がさらに詳しい話をする。

 

『雪子に遊び半分で付き合おうと言った男子生徒を、千枝は追い払った。その腹いせに仲間を連れた男子生徒は、千枝の上履きを隠すと言う嫌がらせをしようとした』

 

「しようとした。と言うことは未遂だったのか?」

 

 悠が未遂だったと分かり、明日香の影に何故なのかと尋ねた。

 それはこいつのおかげさと明日香の影は、倒れている明日香を指差した。

 

『そこで寝てる俺がそいつらを止めたんだよ。そいつらも俺を口封じしようとしたけどな。まぁ返り討ちだったけど』

 

 返り討ちされたその後も男子生徒達は、こりずに千枝に嫌がらせをしようとしたが明日香がみぜんに防いだり、先生に報告したりしたそうだ。

 

『その男子生徒も今度は俺に暴力をふるわれた、なんてホラを吹いて親を呼んで軽く大事にしようと馬鹿な事に走ったけどな。まぁ俺が千枝の嫌がらせについての動かぬ証拠やら、父さんが刑事ってことで立場が逆転したけどな』

 

 あの時のガキとその親のアホ面が目に浮かぶぜと明日香の影は思い出し笑いをする。

 その後はその男子生徒は、クラスの男子に明日香を無視するように命令していたようだ。

 その男子は乱暴者で有名だったらしく、他の男子生徒は逆らえなかった。その日から明日香はクラスの男子から仲間外れとなり一人ぼっちになっていた。

 男子生徒は仕返しが出来たと思い込んでいたが、明日香自身親譲りの正義感で間違った事は正そうとして、孤立する事がしょっちゅうあったので慣れていた。

 

「そんな……アタシのせいで明日香は虐められてたの…?」

 

 千枝は明日香に対して申し訳ない気持ちで一杯になっていた。

 別に構わないさと明日香の影は首を横に振りながら

 

『俺は一人になっても構わない。千枝が俺に笑いかけてくれるならそれでいいのさ』

 

 明日香の影は千枝に笑いかけながらそう言った。

 だが次の瞬間からギリッと歯ぎしりをした。

 

『中学、高校と進むにつれて天城越えをする生徒が後を絶たなかった。千枝だけじゃ負担になると思ったから俺も雪子に近づこうとする男達を追い払った。俺は陰で何を言われても構わなかった……けど千枝が陰で男共にウザいやら可愛げがないやら、女じゃないやらと好き勝手に言いやがって……ふざけんな!千枝が可愛くないだと!魅力が無いだと!?テメェ等の節穴の目の奴らが千枝を語るじゃねえよ!千枝は俺にとっての生きる喜びだ!それを侮辱するなんてアイツ等は生きる資格なんかねぇんだよ!』

 

 明日香の影の叫びにたじろぐ悠達。

 それとお前だ!と雪子に指を差す。

 

『テメェは千枝に助けてもらうって言うのがあたりまえって面をしていた。そして時々千枝に対して下に見ているような面が気にくわなかった!テメェにそんな自覚が無かったかもしれねぇが、テメェは友達である千枝を対等じゃなくて下として見ていやがった。自分には何もない?ふざけんなよ…その何もないテメェに千枝は嫉妬していたのか…千枝がため込んでいた負の感情は何だったんだよ…』

 

 だから…と明日香の影は刀の切っ先を雪子に向けながら

 

『俺は心のどこかでこう思ってたんだ……この世界で雪子が死ねば千枝は雪子と言う重みから解放されるってな。雪子が居なくなれば千枝はもう誰からも陰口を言われないし、虐められることも無い。だから俺は出て来た。雪子を亡き者にするために』

 

 明日香の影は刀を持ち、雪子に近づいた。

 

「待て…!そんな事は俺が許さない!」

 

 影に蹴り飛ばされた箇所を押さえながら、明日香は模擬刀を構えていた。

 そんな明日香に、明日香の影は呆れた様な顔をしながら

 

『んだよ、お前も素直じゃないよなぁ。お前だって本当は千枝を悩ますような雪子の存在が目障りだと思った事はあるだろう?いい加減素直になれよ。俺はお前だ…だからお前がやりたい事をやろうとしてんだよ』

 

「黙れ!俺は雪子の事なんかそんな風に思っていない!雪子を亡き者にしようなんてな!お前みたいな歪んだ考えを俺は持っていない!お前は俺じゃない!!」

 

「ッ!駄目!明日香!」

 

「言うんじゃねえ明日香!!」

 

 千枝と陽介がこれ以上言うなと明日香に叫んだが、一足遅かった。

 

「お前は俺じゃない!!」

 

 明日香も千枝達のように自身の影を否定してしまった。

 明日香の影はハァと溜息を吐きながら

 

『結局お前も俺を否定するのか……まぁいいさ、これで俺に力が漲って来るんだからなぁ!!』

 

 明日香の影を黒い影が包み込んでいった。

 そして影が晴れると、鎧武者の姿で縦半分に割れた鬼の仮面を被った明日香の影が現れた。

 

『我は影…真なる我』

 

 明日香は自身の影が、巨大な武者の姿をした化け物変わってしまった事に呆然としてした。明日香の影はそんな明日香なんか無視し、腰に差している太刀を鞘から抜いた。

 

『じゃあな…俺』

 

そして明日香の影は、太刀を呆然としている明日香に振り下ろした。




次回が1話丸ごと戦闘パートになります。

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