やはり俺は浮遊城にいること自体が間違っている(凍結中) 作:毛利 綾斗
自転車を借りて5箇所ほどの観光名所へ行ってきました。
往復電車9時間越え、観光時間7時間と少し慌ただしかった感は否めませんが楽しめましたよ!
ただ一言眠いです.....。
最前線が50層を過ぎた頃だった。PKを生業とする集団が現れた。
その中心核となるギルドの名前は『笑う棺桶』。それに触発されたかのようにオレンジギルドの存在が多数確認された。
オレンジギルドはどうでも良い。鼠から情報を仕入れて何時でも壊滅に追い込めるから。
ただラフコフの情報は鼠でさえ手に入れる事に四苦八苦しているという。数少ない情報といえば、リーダーであるPoh、幹部のザザとジョニーブラック。それ以外の情報はないが確実に存在するPKギルド。そんな集団のお蔭で最近は1人で出歩く奴はおろか夜に活動するプレイヤーも減っている。
そんな中俺は最前線である56層で深夜の経験値稼ぎ兼情報収集に走っている......いた、という方が正しいかもしれない。
この階層はありがたい事に群れを組む小mobが少なく大型mobが闊歩している。ただ互いに縄張り意識が強いのか一歩でも縄張りに踏み込めばタゲられる。下手すれば大型mobに周りを囲まれるという事にもなりかねない。
実際俺のレベルだったから1人でごり押しできたが、俺以外だとキリト、ヒースクリフ位しか無理なんじゃないかと思う。
少しずつ、だが確実にmobのルーチンが複雑化、プレイヤーへの順応が見られてきている。あと10層程上がればソロはできなくなるかもしれない。
その時は隠居でもするかな......。
「せんぱい、目がどんどん腐って行ってますよ。何か良くないこと考えて.......ッハ。
たとえこんな可愛い後輩である私と夜に2人きりでいるからって隣でやらしい事考えるのはどうなんですか?ていうかココはmobが沢山で危険なんで安全な圏内、ていうかせんぱいの部屋で2人きりじゃないと無理です。ごめんなさい」
一色曰く俺の目がどんどん腐って行ったらしい。
つかこいつに振られたの何回目だよ。
親と話した回数よりも多いんじゃないか?
「何バカな事言ってんだよ。勝手についてきたお前を放置していないんだ。
感謝はされこそ暴言を吐かれる筋合いはない」
「わかってますよ。私1人じゃ直ぐにしんじゃいます。なので私から目を離さないでくださいね」
「はぁ。わかった。ただし次からは勝手に付いてくるなよ。ユキがいるんだし2人で狩りでもしてろ」
俺も暇じゃないんだ、と言い不平不満をぶちまける一色を無視する。
大体彼奴さっきまで生きるか死ぬかの瀬戸際だったんだぞ。なのに今では軽口を叩きやがる。
遡る事1日前
56層迷宮区前『魔女の森』
「魔女の森って言うくらいだからそれに相応しいものがあると思ったんだが.......」
読みを外したか、と思い歩いている。
本当ならばホームに戻ろうと思っていたんだがどうやらストーカーがいるようで、未だ鼠にも知られていない俺のホームを見られるか、と半ば意地になり撒こうとしている。
少しずつ縄張りの密集地点に近づきギリギリを歩く。
俺をつけている奴も上手く縄張りの目印である引っ掻き傷を見て避けているが姿を隠さなければならない分行動範囲は狭いはずだ。
つか待てよ、縄張りの目印はまだ本にしていない。って事は安全マージンがしっかりと取れている攻略組の誰かって事か。
クソ、ここまで来たのは完全に悪手だ。攻略組と逃げ場が無いとこで戦うとか勘弁してくれよ。
俺は気づかれないようスキル欄を開くと『死神』を発動する。
そのまま闇に溶け込むように縄張りの中に入っていく。
これで普通の奴なら帰ってくれるだろう。もし来たら、悪いがタゲを移させてもらおう。俺も命はだいじだからな。
姿を見失う事を嫌ったのか追跡者はガサガサと音を立てながら急いで茂みをかき分けてくる。ちょうどその反対からは地響きが聞こえる。
ここまでは計画通り、むしろ上手くいきすぎていた。
最後の茂みを掻き分けようとしている手を引っ張り投げとばす。そのままの勢いで俺は走り去ろうとしたのだが
「ちょ、せんぱい。何するんですか!」
という追跡者の声で足を止める。
一色が追跡者だったのか。
頭の中で一色=追跡者という等式を成り立つと同時に一色がSOSの声を上げる。
それもそのはずだろう、いきなり投げ飛ばされたと思ったら目の前に大型mobが現れたのだ。少なくとも俺だったらこんな目に合わせた奴は末代まで呪ってやると思う。
仕方ないか。まあ一体までだったら余裕だし大丈夫だろ.......なんだろう、絶対フラグだよな。
気が付いたら大型mob4体に周りを囲まれている。
俺1人だったら何とかするんだが今は一色がいる。しかたない......逃げるか。
ありがたい事に縄張りから少し離れたら敵対も外れるようだしな。
俺は一色を抱き上げると全速力で走り出した。
其れから5分後
どうやらうまく撒いた俺は一色と2人で森を歩いている。絶賛迷子中という奴だ。
「せんぱーい、センパ〜イ。........先輩、黒鉄宮」
「おう、何だクレア?」
俺は冷や汗をかきながら一色の言葉に反応して答える。助けてやったのにその過程での弱みを使うってどうなんだよ.....。
え、元の原因を作ったのもお前だろだって?
其れもそうだが尾けられてたんだ、普通は撒くだろ。だから俺は悪く無い。
「今何処にいってるんですかー?早く帰らないとユキが心配する頃だと思うんですよ、直ぐに帰るからって言っちゃったですし」
「じゃあ当分帰れないってメール送れよ。まだ迷宮区じゃ無いし送れるだろ」
「それが送れないんですよ。さっきから何度送っても『you cannot send a message!』ばっかりで」
メールが送れないって事はここは何処かのイベントステージ。雪ノ下は条件を満たせて無いからメールが送れない、と考えるのが自然か。
「あ、先輩。あんなところに灯りがありますよ。行ってみましょうよ!」
俺が考え事をしている内に走り出す一色。
距離はかなり有るが確かに灯りが見える。どうやら家の明かりのようだ。
ちょっと待てよ、まだそうとは決まって無いがイベントステージに建っている一軒の家ってすごい怪しいんじゃないのか。
俺は全速力で走り一色の首根っこを掴むと
「何やってんだ、どう見ても怪しいだろ。
まあいい、早く此処から離れるぞ」
何やかんや文句を言いながらも指示に従う一色。俺たちが離れようとすると前から老婆が
「ありゃ、珍しいねぇ。こんな所に人がいるなんて。どうじゃもう外も真っ暗だし止まっていきなさい」
といきなり声をかけてきた。
お婆さんのカーソルはグリーン。
「NPCですよね?どうします、このまま森に居ても暗すぎて道も分からないですし今晩だけ泊めてもらいます?」
顔を耳に近づけ耳打ちする一色。
だからもう少し警戒心を持てって。そんな事するとそのうち誰かに襲わ.........って何で灯りが付いてんのに俺らの背後から、家と反対方向から近づいてきたのかとか俺の索敵に視認できるまで反応できなかったとか色々不思議な点があるでしょうが。
........べ、別に可愛いなんて思ってないんだからね。俺ほどのボッチになると一色のあざとい行動に惑わされたりしないんだよ。だからアレだ、素でされてスゲェ動揺した。
「その代わりと言っては何だけど薪を割って欲しいんじゃ。
今日分は何とか用意できたけど腰を痛めてしまってね.....。代わりにやってくれる人を探しておったんじゃよ」
そう言いながら曲がった腰をさする老婆。
一色は目を輝かしながら俺の言葉を待っている。
はぁ、と短いため息を吐き
「わかりました。依頼を受けますよ。
でも今日はもう遅いんで明日の朝からでもいいですか?」
「本当ですか!ありがとうございます。
そうでしたら今日はゆっくり休んでください」
そう言って老婆は歩き出す。
「やっぱり先輩は困っている人を見過ごせないんですね。お人好しです」
と老婆には聞こえない声で囁く。
そう囁いた彼女は優しい笑顔を俺に向けていた。からかうような声音とその表情の組み合わせは自分を可愛く見せるために努力してきた一色ならではの感情表現なのかも知れない。
これも狙ってしているのだったら大したものだと思う。不覚にも一瞬だけ可憐だと思ってしまった。
いかんいかん、と頭を振り落ち着かせていると
「くすっ。何やってるんですかせんぱい?早く行きますよ!」
と一色は笑いながら老婆の元に駆け寄り腕を貸す。
それから後ろを振り返ると俺に早く来てくださいよ、という意味を込めて手を大きく振った。
日をまたぎ、ところ変わって?......変わってるんだよな。確か昨日は出会った老婆の依頼を受ける代わりに寝床を用意してもらって、一色はベット、俺はソファで寝た筈だ。
じゃあ何で俺は今檻の中で床板の上に寝転がっていたのだろう。
辺りを見回したが、一色の姿も老婆の姿も無い。此処から見えるのは色々なものが所狭しと置かれている机と人1人が余裕で入る事ができる大きさのストーブだけだ。
ダメだ。何故か頭がスッキリしない。
何処からか金属がぶつかる音がする.....。
取り敢えず檻から出よう。
俺はウィンドウを開き武器装備の欄に『バーンブレッター』を装備する。
リズベットから渡された時は黒がメインで所々に白のラインが入っていたこの大鎌は今ではほぼ透明になりつつあった。
どういう原理かはわからないがmobを倒すと色が変わっていくのだ。前回の層のメインmobは半透明なゴーストだったからこの色になったのだろう。
そのまま俺は一閃すると檻は真っ二つになる。
さっきから音がするのは家の外.....か。一色なら大丈夫とは思うが。
俺はフラフラと覚束ない脚で出口を目指した。木造のドアを開け、表に出ると予想通り一色と老婆だったものが戦っている。
予想外だったのは一色が一方的に攻撃されていたという事だろう。
時折聞こえていた金属のぶつかる音は攻撃を辛うじて防いだ時に発生するものだったようだ。
老婆だったモノが扱っている武器は両手剣、ただしそれを片手剣のように振り回しているのだから余計にタチが悪い。武器の相性では一色の短剣が有利なのにも関わらず逆に手も足も出ないのはそれによるものが大きいようだ。
「クレア、一旦下がれ!」
その声に反応し横目で俺の居場所を確認する一色。
駆け出した俺は大鎌を振り上げる。
「スイッチ!」
「ちょ、せんぱい速すぎますって。今消えましたよね」
普通に駆け寄った筈なのだが一色には一瞬消えたように見えたらしい。
そのまま振り下ろすと両手剣に直接的なダメージは防がれたが流しきれなかった威力によって吹き飛ばされる老婆.....基『トロイムウィッチ』。『夢の魔女』ってところだろうか?
そんな光景に驚きながらも一色は後ろに下がり回復ポーションを飲み始めたようだ。
コレで一安心出来たし、相手すんの面倒くさいな。サッサと殺るか。
大鎌は一対一の戦いに向いていない。それどころか正面切って行う戦い全般に向いていないと言えるだろう。本来は刈りとるための武器だ。敵に死んだ事も気付かれないように立ち回るのが一番なのだ。
そのために扱いが難しい。が慣れれば早かった。初撃で勝負を決め、刈りきれなかった場合は武器を変化させ、止めをさす。一ヶ月ほどで違和感を抱かない程度になったこの武器が今でも何処か俺に気を許していない気がするのだ。
武器に感情がある訳ないと笑いたいなら笑えばいい。ただこの武器は使い込んでも一定以上は馴染まず、使えるが使いやすくなく本来の力でを発揮している様でしていない気がしていたのだ。
そんな武器でも圧倒できるのはレベルによるゴリ押しなのだろうか。それともこれ迄に無いほどにしっくりきている武器の性能なのか?
気がつくと魔女のHPバーは三本から最後の一本になろうとしていた。
魔女が何かを地面に叩きつけると辺りに霧の様な物が立ち込め始める。
どんな攻撃にも対処できる様集中して待つが動きは何もなく霧も10秒ほどで薄くなっていった。
音もなく俺の後ろに移動しただと。それに一色は消えちまうし、まあ目の前の敵を倒せば全ては丸く収まるだろ。
そのまま後ろにいる魔女めがけて走り寄る。魔女のHPはいつの間にか二本目の約3/4まで回復しているが気にせず攻撃する。
魔女の武器はいつの間にか両手剣から短剣に変わっているため、俺も武器を変化させる。曲刀と短剣に姿を変えた大鎌。そのままスキル『ワイドシュナイダー』の溜めに入るが魔女は動かずに此方を見ているだけだ。
クソッ、構えるまでも無いってことかよ。
じゃあ切り裂いてやるよ!
溜めが終わった俺は最大速度で魔女目掛けて走り出す。魔女はギリギリ避けると大きい隙ができた俺に攻撃を.....して来ない。
硬直時間が切れた俺はスキルを使わずに武器を振るう。全ての攻撃を避けるか短剣で弾かれるが隙が出来たところで相手からの攻撃は無い、そんな考えが頭の中を侵食していく。だからだろう、いきなり背中に斬撃を喰らい吹っ飛ばされる。吹き飛ばされながら攻撃を受けた所を見ると両手剣を構えた魔女が立っている。そのまま前にいた魔女にぶつかり一緒に地面に転がる。
「魔女が二人.....だと」
「何言ってるんですか先輩。魔女は一人だけです!」
さっきまで姿が見えなかった筈の一色の声が隣から聞こえた。
いつの間にか短剣の魔女が倒れている筈の場所に一色がいて、短剣の魔女は消えている。
「先輩は幻想を見せられていたんです。ボロボロですけど何とか先輩の攻撃は防ぎきりましたし、お話はこの勝負が終わってからにするとしてサッサとケリをつけちゃいますよ!」
これはどうやって許しを請うか......。生半可なことじゃ許してくれなさそうだしなぁ。
今すぐ逃げたいと思いながらも魔女を見据える。どれもこれも全部お前のせいだ、って事で八つ当たりさせて貰うぜ。
さっきと違って頭がすっきりする。余計な事は考えず魔女だけに集中できる。
武器を大鎌に戻し一振り........。
なんか大鎌がこれまでに無いくらい使いやすいんですけど。
其処からは一方的だった。
残り一本だったHPバーは俺と一色の連続攻撃で青いポリゴン片を残しあっという間に消えてしまう。
「せんぱい!やりましたよ。私がLAですね!」
魔女に最後に攻撃を繰り出した一色は喜びながら目の前に現れているだろうウィンドウを操作している。
「アレ?おかしいですよ。
LAは私なのにボーナスドロップの表示がでないですよ?もしかしてバグですか?」
まず最初にバグを疑うところが一色らしいな。
まあいい、LAは何だろう?
『幻香』っていうのか。アイテム化してみて.....と。
俺の手の平の上が青白い光に集まり急に重くなる。と同時に青い光が消え去り『幻香』が姿を見せた。
対のイヤリング、対の指輪、対のネックレス。計6つの装飾品がいきなり俺の手に現れたのだ。一色がそれに気が付かないわけで.......。
「ちょ、先輩。その装飾品どうしたんですか!
ハッ、もしかしてこの中からどれか一つあげるから俺と付き合って欲しいってことですか?その提案はとても魅力的なものですがいきなりペアルックとかは恥ずかしいですし、それにそういう事は口にして欲しいっていうか。だから口にしてください、ごめんなさい」
またまた勝手に勘違いされて振られる俺。毎度毎度あんな長文を一噛みもしない一色に感心してしまう。本当にお疲れ様です、佐倉さん。
まあ戦闘が終わった直後にそんなの見たら高揚が抑えきれずに暴走の一つや二つするよな、あぁするだろう。
まあ勘違いさせとくのは悪いしLAって事を説明するか?べ、別に最近一色に振られるのが辛くなってきたってわけじゃ無いんだからね!
って誰得だよ、俺のツンデレゼリフ.......。
「俺を何回振れば気がすむんだよ一色。これはLAボーナスだよ。『幻香』ってアイテムで、説明は、っと.......邪を祓い理不尽に抗う......らしいな。何だよこの厨二感漂う説明文」
「へーそーなんですかー。.......て何で先輩にLAボーナスなんですか!最後は私でしたよね」
顔を膨らませブーブーいう一色。
そんなに頬を膨らませやがって突っついてやろうかこの野郎。まぁ、セクハラって言われて慰謝料取られそうだからやらねえけど。黒鉄宮に送られたらシャレにならねぇし。
「LAだろ、お前が最後の技を繰り出すよりちょい前に、まぁそれこそ一秒も無かったと思うが、投擲したんだよ....」
「でも感覚は、突き刺した時に確かに感覚はありましたよ」
「ったく、話はちゃんと聞けっつの。どうせあれだろ?お前の攻撃の後に俺の投擲が当たった。
だから先に攻撃したのは俺だが、あの魔女が先に攻撃を喰らったのはお前のだったんだろ」
そうなんですかねー、と一色は興味をなくしたかの様にいう。
「もう帰ろうぜ、ユキが待ってるんだろ?」
「っとそうでした。やっぱり心配かけてますよね」
俺たちは森を抜ける為に歩き出し、数分もすると迷宮前の安全地帯に抜け出てきたのだった。
その後は冒頭に戻るのだが、42層にある雪ノ下と一色の二人のホームに着くと疲れていたのだろう。一色はソファに座って眠ってしまった。寝る前に
「雪ノ下先輩は遅くとも22時頃には帰ってくると思うので」
と言って俺にそれまで残る様に暗に命令してきた。
仕方ない、一緒に怒られてやるかとずっと待っていたのだが22時をまわっても帰ってこない。
更に30分、1時間と待ってみるが帰ってこない。
おかしい、あの雪ノ下が夜遊びなんてするとは思えんし......。一色には悪いが探しに行くしか無いよな。
俺は『幻香』をアイテム化し、寝ている一色の首にネックレスを付けてやる。
顔の距離は限りなく0に近く側から見ればキスをしようとしていると思われても仕方が無い距離だ。
そんな時に微かに動き、薄っすらと目を開ける一色。寝ぼけ眼で俺の顔を見ている。
『い、一体何をしようとしてるんですか先輩!
たった一晩共にしただけで彼氏面しようだなんて思ってませんよね。もしそうならちゃんちゃらおかしいです。襲う前に告白してください、ごめんなさい』
また感心するくらいの長文を使いハイスピードで噛まずに俺を振ってくるのだろう。そう思い俺は言い訳を考える。
「わ〜せんぱいだ〜。ぎゅ〜」
俺は一色に肩と脇に腕を回され固定され、ただでさえ近かった距離をゼロにする。仮想世界だと言うのに感じられる一色の体温は温かく気持ちが良い。このまま眠りに落ちれたらなんて幸せなんだろう。一瞬そんな考えがよぎったがネックレスを付け終え緩んだ拘束から抜ける。
その時耳元で
「大好き...です..せんぱい」
という声がする。
一色は葉山の夢を見てるんだろう。幸せそうな顔をしている。
クッソ、ここ最近身を弁えるってのが出来なくなりつつある。一色が好きなのは葉山だ、勘違いしたらいけない。
俺は居なくてもこいつがきっとお前を守ってくれる。俺の考えが杞憂で終わればいいんだが......。
俺は足音を殺し家を出ると、ドアがロックされたのを確認し走る。
目的地は1層の黒鉄宮。雪ノ下は案外心配性だからあそこにいる確率が一番高い。それにあいつの安否確認もできる。まあ雪ノ下ほどの手練れならそう簡単には死なないだろうけど。
俺は更に転移門までの速度を上げた。
タメは有るんですが修正とうで早くあげられませんでした。
待っていてくださった方ありがとうございます。
もしかしたらまた遅くなるかもしれませんが今後ともよろしくお願いします