英雄になりたいと少年は思った   作:DICEK

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修行場

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘファイストス・ファミリアの本拠地(ホーム)で途方に暮れていたベルを迎えに来たのは、水色の髪に眼鏡をかけた、見覚えのない女性だった。女性の部屋の寝台で一人所在なさげに座っていたベルを呆れた様子で見降ろしたその女性は、品のある所作で一礼した後、自分の所属と名を名乗った。

 

「ヘルメス・ファミリア団長、アスフィ・アル・アンドロメダです。神ロキの使いで、貴方を修行場まで連れてくるようにと頼まれました」

「修行場?」

「貴方がここに匿われている間に『神会』で『戦争遊戯』の内容が決定しました。時間が惜しいので道中で話すとしましょう。ついてきてください」

 

 さ、とアスフィに促されて、ベルは椿の部屋を後にした。ベルにとってもアスフィにとってもこの本拠地はアウェーであるはずなのだが、アスフィは全く気にした様子もなくずんずんと歩みを進めている。職人たちの視線を一身に浴びながら、居心地の悪さを強く感じていたベルは下を向きながらアスフィの後を付いて行く。

 

 アスフィが目指していたのは、屋上だった。最大手の鍛冶系ファミリアだけあって、建物の身長は高い。普通の生まれではここまで高い建物に足を踏み入れることなく一生を終えることもあるだろうが、ベルは普段ここよりも遥かに高い建物で寝起きしているので、そういう感慨はなかった。

 

「ここから、どうするんですか?」

「目的地に向かいます。先に言っておきますが、これから見ること知ることは他言無用に願います」

 

 良いですね? と眼鏡の奥の怜悧な瞳が念を押してくる。その視線の鋭さに、ベルはこくこくとせわしなく頷いた。素直なベルの態度に満足したアスフィは、背中の鞄から二人分の兜を取り出す。

 

「これは姿隠しの兜というマジックアイテムです。その名前の通り、これを被ると他人から姿が見えなくなります」

「……これを僕に?」

 

 マジックアイテムを渡されたのだ。冒険者としてときめかないはずがないのに、ベルは悪い予感を憶えていた。いやさ、胸中には悪い予感しかない。兜を抱えて悶々としているベルを知ってか知らずか、アスフィは淡々と説明を続けている。

 

「貴方がどこで誰と修行をしているのか。それを知る者は極少数にしたいと神ロキは仰せです。そろそろ夜の帳も降ります。夜空を見上げる者たちに私たちの姿は見えないと思いますが、念には念を入れてです」

「今、ちょっと怖い単語が出てきたような気がするんですが……」

「察しが良いようで助かりました。じっとしていてくださいね。これを怠ると、いくら冒険者でもタダでは済まないので……」

 

 兜を取り出した鞄から麻縄を取り出したアスフィはそれをベルの腰で結び、反対側を自分に結び付けた。どうぞ、というアスフィの仕草に促され、ベルは姿隠しの兜をかぶった。魔法をかけられたという特別な感覚はない。それこそ一瞬で、ベルの姿は自分の目にも見えなくなった。

 

 見れば、隣にいたはずのアスフィの姿も消えている。気配はするのに姿は見えないことに内心慌てるベルだったが、縄の感触はしっかりと腰に残っていた。

 

「あまり距離を取ろうとしないでくださいね。他人を縄でつないで飛ぶのは、私も初めての経験なので」

「色々聞きたいことがあるんですけど、とりあえず一つだけ。もっと安全な方法はないんですか?」

「物語に出てくる姫のように、私が貴方を横抱きにするというのが一番安全で簡単です。それをご所望というのなら、応えてさしあげますが?」

「縄で良いです。縄でお願いします」

 

 縄でぶら下がるのも不格好だが、女性にお姫様抱っこされるのは更に恰好悪い。人に見えないというのは慰めにもならなかった。これはベルの男としての自尊心の問題である。

 

「話もまとまったようなのでいきましょう。なるべく低空を飛行します。下に声が届くとは思えませんが、あまり大騒ぎはしないようにしてください」

 

 言うだけ言って、アスフィはベルの応答を待たずにマジックアイテムを起動させた。自分が空を飛んでいる。その事実にベルは半狂乱になりかけたが、悲鳴を上げることはどうにか堪えた。普段、命をかけてダンジョンにもぐり、魔物と戦っている冒険者でも、自由に空を飛ぶことのできる者は少ない。豪傑無双の冒険者でも怖いものは怖いのだ。

 

 どこをどう飛んだのかもよく覚えていない。余裕のある冒険者ならば空からの光景を楽しむこともできたのだろうが、ベルにそれは無理な相談だった。ヘファイストス・ファミリアの屋上を立ち、瞬きをしたら目的地に到着していた。冗談のようだが気持ち的には、そんなものである。

 

 身体を繋いでいた縄をナイフで切られて、バランスを崩したベルは地面に尻餅をついた。しばらく地に足を付けていなかったので、感覚が狂ったのである。空を飛ぶのに慣れているらしいアスフィの足取りはしっかりとしたものだ。僅かに呆れた様子でベルを見下ろしているが、その口からバカにするような言葉は出てこない。大抵の者は最初に飛んだ時こうなるということを知っているからだ。事実、アスフィも最初の空を飛んだ時には、似たような有様になった。

 

「僕も空になれた方が良いんでしょうか……」

「空を飛ぶ怪物に空での戦いに付き合う義理はありませんし、私の知る限り、ダンジョンにおいて空を飛ばなければどうにもならない状況、というのは数える程しか聞いたことがありません。どうしても欲しいというのであれば神ロキの顔を立てて用立てて差し上げても良いですが、それなりの値段は覚悟しておいてくださいね」

「名残惜しいですが、それはまたの機会にお願いします」

「賢明な判断です」

 

 アスフィとのやり取りを終えて、平衡感覚を取り戻したベルはようやく周囲を見まわした。オラリオの中にもこんな場所があるのか、という木々の生い茂った場所。街の喧噪もここには聞こえず、人工物と言えばさびれた小屋があるのみである。ベルたちが到着したことを察知したのか、小屋の中から人影が出てくる。

 

「修行の相手は彼女ですよ」

 

 その人物の登場に、ベルは軽く目を見開いた。

 

 小屋の中から出てきたのは、一言で言うならば怪しい女だった。草色のマントに草色のフード。顔は覆面で半分を隠している。金髪に青い目。とんがっている耳から、種族はエルフであることが見て取れる。

 

 金髪碧眼というのは、おとぎ話に出てくるエルフによく見られる特徴であるのだが、実際にこの特徴を持つエルフは全体の半分にも満たない。事実、オラリオで最も有名なエルフであるリヴェリア・リヨス・アールヴは髪も目も翡翠色であるし、レフィーヤ・ウィリディスも目こそ青いが髪は明るい茶色である。

 

 そんなエルフは身体能力を犠牲にして魔法力を高めた種族、というのが一般の認識であるが、覆面の腰には小太刀が二本と、木刀が下げられている。

 

 どちらも相当に使いこまれた武器である。そこそこ経験を積んだ冒険者ならば、眼前の彼女が近接系であることが理解できるだろう。さらに事情を知っている者ならば、その装備とエルフらしい特徴から、『疾風』の二つ名まで言い当てることができるかもしれない。

 

 さて、そこへ行くとベルはどうだろうか。驚きの表情を浮かべているベルにアスフィが視線を向けると、彼は開口一番に、言った。

 

「リューさん!?」

 

 ベル以外の二人の動きが、一瞬だけ止まった。

 

 全く考えもせずに正体を言い当てたベルに、アスフィと覆面――リューは、はっきりと驚いた。確かに覆面の下にいるのはリュー・リオンそのエルフであるのだが、顔の半分が見えているとは言え遠目に、しかもフードに覆面の怪しい奴を知り人と看破できるものだろうか。

 

 驚きのままアスフィがリューを見ると彼女は勿体ぶった仕草でフードと覆面を外した。正体を知られたのならば、顔を隠しておく意味はない。

 

 エルフらしい怜悧で整い過ぎた顔が覆面の下から現れる……が、その無表情が微妙ににやついているように見えるのはきっとアスフィの気のせいではないのだろう。覆面をしていても自分を解ってくれたベルに、少なからず喜びを感じているようである。

 

 エルフにしても潔癖であるという情報は聞いていたが、それがどうしてベルに限ってここまで心を開いているのだろうか。一目ぼれと表現するのは安っぽいが、噂の通りに運命の人と表現するのは詩的に過ぎる。僅かに思考した後、軽く首を横に振ってアスフィは考えることを止めた。

 

 男女の間に、小難しい理屈など必要ない。そうあるべくして、そうなったのだ。まして他人であるのだから、目の前の事実を受け入れるだけで十分である。

 

「それでは、私はこれで。後はお二人に任せます」

「もう帰っちゃうんですか?」

「私が残っていてもできることはありませんし、対外的にはヘルメス・ファミリアがロキ・ファミリアに協力していると思われるのも問題なのですよ。その辺りの機微については、道中に話したと思いますが……」

 

 お忘れですか? とアスフィの怜悧な視線に射抜かれ、ベルは思わず背筋を伸ばした。アスフィは現状を懇切丁寧に説明してくれたのだが、空を飛ぶ恐怖と戦っていたベルはそれどころではなかった。要点のみを纏めるならばベルがロキ・ファミリアを一人代表して戦うということである。

 

 逆の立場ならばまだしも、それなら何も問題はない。まして他のファミリアに援軍を頼むこともできるのだ。確かに困難な道だろうが、こうしてアスフィもリューも協力してくれている。やってできないということはないだろうと、楽天的に考えることにした。

 

 どう見ても、問題の本質を全く理解していない様子のベルにアスフィは不安になったが、既に『疾風』は本番での協力も約束しており、椿・コルブランドも同様ということである。アポロン・ファミリアは圧倒的多数であるが、この二人の協力があるならば、どう転ぶかは解らない。

 

 もっとも、それも『神会』にとって決められた今回の『戦争遊戯』のルールを、真っ当に解釈したらの話であるが。既に神ロキと神フレイヤの間で同盟は成っているということを、アスフィはヘルメスから聞き及んでいた。最大ファミリアの二つが手を組んだのならば、オラリオの中で怖い物はない。

 

 神の代理戦争とは名ばかり。実際は消化試合も良い所だが、それを知らないベルやリューにとっては、その限りではない。ロキ・ファミリアの多くの団員にとってもそうだろう。実は茶番であると知っているだけに心も痛むが最終的に全員が笑って終わるのならば、文句もそれほどは出るまい。

 

 神の都合に振り回される眷属の身にもなってほしいものだが、神という生き物が全体として子供のことを真に考えていたら、今よりもっとつまらない世界になっていただろう。きっと、これくらいの距離感がベストなのだ。

 

「ステイタスの更新のために、神ロキをお連れします。物資の補給なども私が行うことになっていますので、何かあったらその時に知らせてください」

「ありがとうございました。アスフィさん」

「これも主命ですので。感謝は不要です」

 

 それでは、とまた品のある仕草で一礼し、姿隠しの兜を被って空へと消えていく。アスフィとは今日あったばかりで肩書と名前くらいしか知らないが、彼女の所作は印象に残った。ベルに近い所では、リヴェリアに通ずるものがある。リヴェリアはエルフのさる氏族の王族出身で、エルフ全体で見ても相当高貴な血筋に当たるという。

 

 アスフィもまた、どこかの王族なのだろうか。身体的特徴からおそらくヒューマンだとは思うのだが、田舎暮らしのベルの知識は、英雄譚に関するものしかない。生まれがオラリオの人間であれば、言葉の訛りや身体的特徴から出身地を推測できるのかもしれないが、オラリオ歴の浅いベルにはアスフィは『おそらく自分よりも大分上の階級の出身かもしれない』くらいしか推論を立てられなかった。勿論、それが外れている可能性も大いにあり、つまりは何も解っていないのと同じである。

 

「鼻の下が伸びていますよ」

 

 リューの冷たい声音に、ベルはまたも背筋を伸ばした。アスフィに『かっこいい人だなぁ』と見とれていたのは事実である。それに後ろ暗いことは全くない……はずなのだが、リューの声音にはいますぐそれを止めさせるような強い響きがあった。良く言えば素直、悪く言えば単純なベルの反応に、リューは深い溜息を漏らす。

 

 ベルの行動に呆れたのが一割、自分の行動に反省したのが九割である。彼の行動に制限を加えるような権利はないし、事実、リューの目から見てもアスフィはかっこよく見えた。中堅とは言えファミリアの団長を務め、神秘の希少スキルを持つアイテムメイカーである。

 

 公称ではレベル3となっているが、その程度ではないだろうとリューは見ている。レベルを偽装するのは決して軽くない罰則の対象であるのだが、それを指摘する理由もない。隠しているならば何か理由があるのだろう。レベルの管理はギルドが行っており、半ば独立しているとは言えかの組織は『神会』の下部組織である。

 

 偽装をしているならば、彼女の主神の意思が関わっているに違いないのだ。自分の事情に関わらない以上、神の決定に逆らう道理もない。何より今は、ベルのことだ。

 

「さて……これからクラネルさんには修行をしてもらいます。予算はいくらでも下りるということなので、とりあえず回復薬を可能な限り用意しておきました。『戦争遊戯』の前日まで、食事と睡眠以外は全て修行です。死ぬ気で……いや、今ここで死んだつもりで、修行に励んでください」

「解りました!」

「間違いなく理解していないようなので付け足しますが、これから始まる修行は、今まで経験してきたどんなものよりもキツいものとなるでしょう。逃げたくなると思います。私を恨むこともあるかと思います。ですが忘れないでください。貴方の肩には今、貴方自身と、貴方の信ずる神と、その眷属たち全ての名誉がかかっています。貴方の敗北即ち、名誉の失墜です。肝に銘じておいてください」

「……解りました」

「よろしい。本戦については、私も微力ながらお手伝いします。聞けば、椿・コルブランドも合流の意思ありとか。これならば勝負にならないということはないでしょう。貴方にも活躍してもらうので、そのつもりでいてください」

「あの、協力してくださるのは嬉しいんですが、リューさん、大丈夫ですか?」

「それが『所属するファミリアは大丈夫か』という意味の質問なのでしたら、気にしてくれてありがとうございます。ですが、私のファミリアは少々特殊な事情がありますので、問題ありません。そして『お前の実力で大丈夫か』という意味で問うたのでしたら少々心外ですが……初めてパーティを組む者の実力が解らないことが不安、というのは私にも理解できます。いいでしょう。ちょうど良い機会です。時の人である『白兎』に、私の微力を知っていただくとしましょう」

 

 リューはマントを翻しベルから距離を取った。一刀足の間合いとでも言えば良いのだろうか。踏み込み、剣を振るえば首を飛ばせる。そんな距離である。

 

「改めて自己紹介をしましょう。私はアストレア・ファミリア所属。レベル4、『疾風』リュー・リオン」

 

 話の展開から元冒険者というのは予想していたが、想定していたよりも高いレベルにベルは内心で驚いていた。冒険者は危険な家業であり、様々な事情で引退を余儀なくされることも多いが、リューは見たところどこにも怪我らしいものはないし、今も武装している。これから修行をつけてくれるというのだから、戦えないということでもないのだろう。

 

 ならば何故酒場でウェイトレスなどしているのかと考えたが、それこそ自分などでは考えもつかないような『複雑な事情』があるのだと思い至った。人に話さないことには、それなりの理由があるものだ。話したければ話してくれるだろうし、話したくないならそのままでも良い。

 

 知らない仲ではない。リューのことなら何でも知りたいと思うが、根掘り葉掘りする権利はない。そういう時にはじっと待つのも男の仕事だと亡くなった祖父も言っていた。

 

「貴方を信頼してこれを打ち明けました。できるだけ、他言は無用に願います」

「リューさんの信頼は、絶対に裏切りません」

「結構。それでは今から貴方に全力で攻撃を()()()()。何があっても、その場から一歩も動かないように。それから危機を感じても、目を閉じないこと。どこに窮地を脱する手段があるか解りません。目を閉じず、相手を観察することに全ての神経を費やしてください」

 

 気づけばリューの両手には、抜刀された小太刀が握られている。マントが風に流れるのが見えたその瞬間、リューがベルの視界から消えた。その次の瞬間にはベルの顔のすぐ横に、右の小太刀が突き出されていた。目を閉じるなと言われたが、閉じる暇もない。全身が恐怖で硬直するが、それを気合で何とかする。この恐怖に耐えること、それも修行なのだ。

 

「良い覚悟です」

 

 淡々とした言葉の後に、左の小太刀が来た。振りぬかれた小太刀はベルの鼻先を掠め、その次の瞬間には右の小太刀が来る。それでもまだ遅すぎるとばかりに、リューは段々と回転を上げていった。右、左、右、左、かろうじて交互に攻撃されていることだけは認識できていたはずの攻撃も、リューの興が乗ってくるとそれすらもできなくなる。

 

 一瞬たりとも途切れない刃の嵐の中に立たされているのではと、錯覚する程にリューの攻撃には切れ間がなかった。ベルもレベル2になって、地力が上がったことを認識していた。少しはやれるようになった、と思っていたのだが、それが思いあがりであることを思い知らされた。レベル一つで世界が違うのなら、レベル二つでは一体どれくらいか。

 

「集中してください。気も漫ろだと首が飛びますよ」

 

 ぴたり、と交差した二刀が、ベルの首を挟む直前で止まる。薄皮一枚が斬れて、僅かに血が流れた。リューの切れ長の目が、ベルを見つめている。青いその瞳を、ベルは素直に綺麗だなと思った。

 

「すいませんでした。どうぞ続けてください」

「いえ。この程度で良いでしょう。思っていた以上に目が慣れているようで安心しました。途中までは小太刀を追えていたようですしね」

「たまにリヴェリア様に訓練をしてもらっていたので……」

 

 訓練とは名ばかりの一方的な攻撃であるが、それでも訓練は訓練である。認識できないような速度で飛んでくる攻撃をレベル1の内に何度も何度も経験できたからこそ、攻撃に対する集中力が高まったと言える。

 

「それは何より。では、訓練の間はこれを」

 

 言って、リューは左の小太刀をベルに放った。持ち手には動物の皮が巻かれている。使いこまれた様子のそれはリューの手に合わせて作られたものだろうが、不思議とベルの手にも馴染んだ。

 

「椿・コルブランドには小太刀を発注したと聞きました。『単眼の巨師』のことですから本番前には完成させるでしょうが、武器に慣れるのは早い方が良い。幸い、私も小太刀には心得があります。本番前日まで約十二日。修行の間はそれを肌身離さず持つようにしてください」

「解りました」

 

 リューの前でかっこつけたい。そういう思いがあったのだろう。勢いよく小太刀を振ったベルの手から、いきなり小太刀はすっぽ抜けた。かしゃん、と遠くで小太刀の落ちる音がする。穴があったら入りたいと、顔を真っ赤にして硬直するベルに、リューは苦笑を浮かべながら小さく溜息を吐いた。

 

「まずは持ち方から教えましょうか。大丈夫です。死にもの狂いになってもらわないと困りますが、根気よく、一つずつ教えていきますから」

 

 

 

 

 


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