英雄になりたいと少年は思った   作:DICEK

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ランクアップ1→2

「発展アビリティについてなんやけども、よう頑張ったみたいやな。候補は3つも上がったで」

「それは目出度いことだな。良い発展アビリティがあると、私としては訓練を施した甲斐があったというものなのだが……」

 

 リヴェリアには狙っていた発展アビリティがあった。神々が地上に降りてきてからこっち、発展アビリティの解析については、研究が進んでいる。達成度を別にすれば、概ねこういう行動をすればこの発展アビリティが発現する『だろう』ことは、いくらか解っていた。

 

 その内の一つが『狩人』である。この発展アビリティは短期間の内に大量のモンスターを撃破することで得られるもので、その効果は一度経験値を得たモンスターと戦った時、アビリティが強化されるというものだ。これはレベル2へのランクアップの時にしか発現しないとされ、アイズも習得したものである。

 

 達成が比較的困難であるが、基本、新規のモンスターと戦うよりは戦った経験のあるモンスターと戦う機会が多いことから、生存率を高めるためにと冒険者だけでなく神々にも人気の高いアビリティである。

 

 一日のノルマを決め、ベルには沢山のモンスターと戦わせた。なるべく多く、なるべく沢山のモンスターと戦わせたのだから、これで発現していなければお手上げなのだが、さて、どうなることか。

 

「その3つな、一つはリヴェリアのお目当ての『狩人』や。これはこれで人気が高いんやで? お次が『耐異常』でな。これは読んで字の如く状態異常をある程度遮断してくれる便利なもんや。で、もう一つが肝心なんやけども……うちは結構長いこと神様やっててな。ステイタスの更新もそれなりにこなしてるんやけども、この発展アビリティは初めてみるなー」

 

 ロキがさらさらと羊皮紙に書き上げたのは、発現した発展アビリティの3つの名前である。『狩人』『耐異常』と、もう一つは『幸運』とあった。これにはリヴェリアもレフィーヤも首を捻る。聞いたことがない上に、字面から感じられる印象が非常に漠然としており、正確な効果が想像しにくかったからだ。

 

「……運が良くなるということか?」

「それは間違いないと思うけどな、問題はどの辺りまで良くなるかっちゅーことやな」

 

 最高は勿論、ダンジョン外も含めたこれからのベルの人生全ての場合において幸運になるということであるが、流石にそれは高望みし過ぎだろうと、ベル以外の全員が思った。それに比較すれば、効果は大分限定されることは想像に難くない。ダンジョン内においてレアドロップアイテムが入手し易くなるとか、ランクアップ時に良い発展アビリティが出やすくなるとか、そんな所であると推察される。

 

 レアリティ相当の効果はあるだろうが、戦闘力やダンジョンでの生存率の向上は見込めない。ベルの安全を考えるならば、狩人や耐異常の方が良いのは言うまでもないが、レアというのは魅力的だった。

 

「ここで決を採っても良いが……やはり考える時間は必要ではないかな」

「せやかて、情報収集の成果は見込めないで? うちが知らんということはギルドにも記録はないやろうし、仮に知っている神がいたとしても、それを聞いて回るのは無理や」

 

 既に、レベル1のベルがミノタウロスを単独撃破したことはオラリオ中に知れ回っており、ランクアップが近いことも当然、知られている。レアな発展アビリティの情報をロキやファミリアの幹部が嗅ぎまわっていたらそれだけで、ベルにそういうレアな発展アビリティが発現した、あるいはその可能性があると看破されてしまう。

 

 最大手ファミリアであるロキ・ファミリアであるが、それだけに目の上のタンコブと思っているファミリアは多くある。フレイヤ・ファミリアにとってのイシュタル・ファミリアのように、一方から刺客が差し向けられる程に険悪なファミリアはないが、ステイタスに関する情報はどこのファミリアでも秘匿されている事柄である。

 

「なぁ、ベルはどうしたい?」

 

 ロキは自分の股下でうつ伏せに寝ころんでいるベルに問うてみた。ベルからすると、女性三人の前で上半身裸というこの状況は、羞恥プレイ以外の何ものでもない。討論するのは良いけれど、やるんだったらせめて服を着させてもらいたいというのが、青少年の本音だったが、女性三人はベルの羞恥よりも発展アビリティの方が重要なようだった。

 

 早く服を着るために、ベルもうつ伏せのまま考えてみる。毒などを食らわない、アビリティが上昇するというのは魅力的ではあるが、幸運がレアな発展アビリティであるというところに、ベルも魅力を感じていた。

 

 ロキが初めて見るくらいにレアということは、今のロキ・ファミリアにはこれと同じ発展アビリティを持っている団員はいないということで、そうなると自分は自分にしかできない仕事を、できるようになるかもしれない。まだまだ駆け出しであるベルにとって、団の誰かに明確に必要とされるということは、それだけ魅力的なことなのであった。

 

 勿論、ロキを始め、リヴェリアやレフィーヤは良くしてくれるが、ミノタウロスのことで心配をかけてしまった手前、何とか恩返しをしたいと思っていたところである。それがレアスキルで帳消しになるとは思っていないが、自分にしかできない貢献ができるというのなら、それに越したことはない。

 

「僕は、幸運が良いんじゃないかと思うんですが……」

「本人が言っているのなら、私もそれで良いと思うが……」

「私も異論はありません」

「子供らが全員そういうなら、うちにも勿論異論はないな。せやったら、幸運にするでー」

 

 ベルの意見がすんなりと通り、ステイタスの更新手続きが始まった。ロキがベルの背中に神血を垂らすと、そこにロキ・ファミリアのエンブレムが浮かび上がる。自分の背中にも刻まれている、滑稽に笑う道化師のエンブレムをぼんやりと眺めていると、ほどなくしてベルのステイタスの更新は終わった。

 

「おめでとさん、ベル。レベル2にランクアップしたで」

「ありがとうございます!!」

 

 やったー、とはしゃぐベルにリヴェリアとレフィーヤは拍手を送る。ベルほどはしゃいだ記憶はないが、リヴェリアもレフィーヤも、かつて通った道だった。誰もが強くなった自分を実感し、未来への希望を抱く瞬間である。

 

 もっとも、それを経て尚、高い壁にぶち当たることも冒険者ならば日常茶飯事であるのだが、ランクアップをしたその瞬間くらいは水を差すまい、という配慮は先達としては当然のことだった。

 

 ミノタウロスを撃破し、皆でダンジョンから帰還した翌日である。一晩ぐっすり寝たベルは、すっかり回復していた。そうして、満を持してのステイタス更新だ。朝一番に部屋に押し掛けたのだが、ロキは嫌な顔一つせずにステイタスを更新してくれた。見物しているのはお馴染みのリヴェリアとレフィーヤの二人である。

 

 本来はティオナも参加する予定だったのだが、幹部三人を見つけるために不眠不休で走り続けた疲労により、今は自室で爆睡している。頑強なアマゾネスも疲労には勝てないのだ。ティオナによって伝言を伝えられた幹部三名には、その日の内にロキから通達がなされていた。

 

 普段であればベートなどはそんなことで、と憤慨したのだろうが、超の付く実力主義者のベートをしても、ベルのレアスキルには大いに興味を刺激された。ロキの説明を聞いた彼は一先ず溜飲を下げ、自室に戻っている。他人にレアスキルが発現したところで、自分が強くなる訳ではない。本質的には、ベートには何も利益はないのだが、ファミリアの仲間が強くなることについて、彼が文句を差し挟むことはなかった。

 

 ベートにはベートの『強者の論理』というものがある。とかく言葉を尽くさず、乱暴な物言いのために敵は多く誤解もされやすいが、決して情に薄い訳ではないし、悪い奴でもない。ファミリアの中で、最もベートと衝突するのはリヴェリアであるが、そんな彼女をしても、ベートの人物評は『悪い人間ではない』である。

 

 半面、リヴェリアを慕うエルフには蛇蝎の如く嫌われているのだが、それはともかく。ベートたちに話が行き届いたことで、幹部全員にベルのスキルが伝わった。監督役はそのままリヴェリアとレフィーヤが行うが、パーティを組む際には、色々と選択肢ができたことになる。

 

 幹部たちと一緒にダンジョンに潜っても良いし、訓練をしても良い。凄まじい速度でランクアップしたベルには能力相応の基礎が身についていない。覚えなければいけないことは山ほどある。既に第一線で活躍している冒険者たちは、ベルにとっても大いに助けになることだろう。

 

「それでな、スキルについてなんやけども」

「もしかして僕にも魔法が!?」

「やー、それは発現せんかったなー」

「そうですか……」

 

 期待に目を輝かせたと思ったら、事実を告げられてしょぼくれてしまう。その落差がおかしくてレフィーヤは思わず吹き出してしまった。

 

「その代わり新しいスキルは発現したでー」

 

 ロキは英雄志願(ヒロイックロード)を、今目覚めました、という体で共通語に起こしていく。記載に嘘はないが、大成するという文言だけは削除されていた。今回これを告げることにしたのは、ベルにスキルを良く理解させ事故を未然に防ぐためだった。『大成する』という文言は、冒険者としての将来をある程度保証するものであり、とりわけ若い冒険者には毒にしかならないという判断である。

 

「――てな訳で、こういうスキルやと思う。間違いなくレアスキルや」

「レアスキル……」

「使いどころが難しいスキルやろうから、何ができて何ができないのか、ちゃんとリヴェリアたちの言うこときいてなー」

「解りました」

 

 型どおりのやり取りである。その他、細々とした注意をロキから聞いていたベルは、ふと思いついた。レベル1からレベル2にランクアップすることは、冒険者にとって特別なことがいくつかある。その筆頭とも言うべきものが、

 

「あの、神様。レベル2にランクアップしたということは、僕にも二つ名が?」

「そうやねんけど、二つ名は『神会』で話し合って決めるもんやから、付くのは三日後の話やな。安心し。うちが責任もってかっこいい二つ名にしたるさかい」

「おー……」

 

 スキルの話をした時以上に、ベルの瞳はきらきらと輝いていた。その目が、ロキには少し痛い。オラリオでも最大のファミリアを率いているロキは『神会』でも強い発言力を持っている。二つ名は話し合って決められるとなっているが、ファミリアの規模に比例して発言力が高まる現状では、ロキの子供に痛い二つ名が付けられることはほとんどない。ロキ・ファミリアの子供が命名式に上った時、二つ名は概ねロキが考えたものが採用され、『神会』はそれを承認するだけという形骸的な物になっていた。

 

 ロキとしてはそれで満足なのだが、子供には神々が悪ノリして考えられた痛い二つ名の方がウケが良く、ロキの目から見たベルは、どちらかと言わずともその痛い二つ名をありがたがるタイプに見えた。

 

 最短記録である。レアスキルである。ロキとしては無難でかっこいい二つ名を付けてあげたいのだが、子供の意思を汲んであげたいとも思うのだ。それで毎日毎晩、あまりの痛さにのた打ち回ることになったとしても、子供が笑顔になってくれるならそれで……というのは、子供を思うロキが『神会』の度に思うことでもある。

 

 結局、無難な二つ名に落ち着いてしまうあたり、神の痛い名前に対する拒絶反応も相当なものであるが、それは大抵の子供には理解されないものだった。今回も悩むんやろなぁ、と思いつつもそれは顔には出さないようにしつつ、

 

「それから明日の晩、ベルの最短記録更新の前祝をするでー。『豊穣の女主人』亭で大宴会や」

 

 宴会、という単語にベルはきょとんとした顔をした。リヴェリアからもレフィーヤからも、そういう話は全く聞いていなかったからである。

 

「……なんや、話しとらんかったんかいな。レベル1からレベル2のランクアップで、今までの最短記録はうちのアイズたんの一年やったから、ベルの一ヶ月半は大幅な記録更新や。その功績を称えての宴会も兼ねとるで」

 

 子の功績はその主である神の名誉にも繋がる。種々の記録はそのバロメータの一つであり、ランクアップの最短記録更新、ミノタウロスの単独撃破など、次の神会での興味はこれで持ち切りになることは間違いない。それは目立ちたがりのロキには、この上ない愉快なことだった。神の名誉に貢献した子供がその神から褒美を受けるのは当然のことである。

 

 ちなみにロキ・ファミリアで宴会そのものは珍しいことではない。オラリオでも一二を争う大所帯であるが、レベルに関わらず、子供がランクアップした時はロキは必ず宴会を開く。参加するメンバー、規模こそ違うがその全てにロキは必ず参加していた。誰がお気に入りかと言われれば、ロキは躊躇いなくアイズ・ヴァレンシュタインと答えるだろうが、それ以外の子供を愛していない訳ではない。

 

 軽い性格で対外的にはそう思われていないことが多いが、神々の間では子供に対する愛情が深い神として知られている。その辺りも、フレイヤ・ファミリアと並んで大派閥になった一因なのだろう。所属する団員達も己が主神を神にしては軽々しく扱いつつも、良く慕っているのだ。

 

「飲んで食べての大騒ぎやから、ベルも楽しみにしててなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、翌晩。

 

 レベル2にランクアップしたことのお祝いとしてベルが連れられてきたのは、ロキ・ファミリア行きつけの『豊穣の女主人』亭だった。

 

 ロキが主催する大規模な宴会では、所用でオラリオを離れているなど、特別な理由が無い限りはレベル5以上の幹部とロキ本人は必ず参加することになっている。次いでレフィーヤやラウルなどのレベル3以上、レベル4以下の準幹部たちが席を埋め、余った席はそれ以外のメンバーの早い者勝ちだ。

 

 基本、ロキは給仕をしてくれる女の子がかわいい店を選ぶ上、支払はファミリアが行うのでタダ飯のタダ酒だから競争率は高い。更に普段は一緒にいることも憚られるリヴェリアやアイズなどと、特に理由もなく近づけるとなれば、参加しない理由はなかった。

 

 ベルを祝うという気持ちももちろんあるが、そういう俗物的な理由でもって参加する面々もいた。神ロキの性格を反映している。主役がベル、という意識があったのも最初だけだ。参加者は皆ベルに祝辞を述べて、背中をぶっ叩くなどお祝いの気持ちを行動で表した後、好き放題に飲んだり食べたりをし出した。

 

 リヴェリアの周囲には女性のエルフを始めとした、彼女を慕う面々で固められていた。これはいつものことで、リヴェリア本人の認識はともかくとして、彼女らはリヴェリアの従者のつもりでいる。高貴な女性を有象無象の異性から守るのは当然のことだ。

 

 男性の団員からは疎ましく思われているが、もともとロキ・ファミリアは主神の趣味で女性の割合の方が多い。男性団員の肩身が狭いのも、いつものことと言えばいつものことだった。

 

 向上心のある面々は、幹部や準幹部を捕まえては日頃の心構えなどを聞いている。口下手ではあるが、こういう時に剣姫アイズ・ヴァレンシュタインはモテにモテ、比較的若い冒険者たちに囲まれて、ダンジョンの話をしている。

 

 大騒ぎせず、飲み食いだけがしたい面々は、最初から隅の方に陣取り、ひたすら飲み食いだけをしている。コミュニケーションが苦手な連中のたまり場であるとも言うが、ここにいる限りはお互いに干渉せず、ただ黙々と食事をするという暗黙の了解があった。万事に攻撃的なベートも、ここでは口を開かずに、黙々と食事をする。誰が周囲にいようとお構いなしだ。ここは食事を楽しむ場所である。レベルもスキルも種族も性別も関係ないのだ。

 

 ただひたすらに酒や料理を楽しみたい面々は、ガレスの周りに集まって大騒ぎだ。身体は酒樽、血潮は麦酒。幾たびの酒宴を超えて不敗。ただの一度も酔いつぶれたことはないひげ面のドワーフは、酒さえあればそれで良いとばかりに酒飲みたちと杯を空けまくっている。

 

 ロキはそんな集団の間を行ったりきたりだ。男でも女でも万遍なく絡んで話をする辺りに、彼女の神性が伺える。

 

 ベルの周囲に残っているのは、監督係であるレフィーヤと、飲んで食べるのは好きだけれども、つるんでバカ騒ぎというのはあまり好きではないティオナといつもの面々だ。

 

「ベルはああいうのには参加しないんですね」

「どういう風に振る舞ったら良いのか解らなくて……」

 

 田舎で祖父と二人暮らしをしていたベルは、大勢で飲み食いする席に参加したことがほとんどない。祖父は元々都会で仕事をしていたらしく、宴席に参加することなど日常茶飯事だったというが、そんな人がどうして田舎で暮らすようになったのか、ベルは全く聞いていなかった。

 

「おじいさんと二人暮らしだったんですよね。どんな人だったんですか? ベルのおじいさん」

「とにかく明るくて、物知りな人でした。後はとっても、その、女性好きだったというか……」

 

 2人暮らしではあったが、女性が祖父を訪ねてくれることはそれこそ、数えきれないくらいにあった。若い頃は浮名を流していたとは本人の弁だが、女性たちが言うには『年を食ってからの方が酷い』ということである。その女性らも皆、祖父の若い頃というのは知らないらしいが、当事者が言うのだから間違いないだろうと、ベルですら思ったものである。

 

「英雄譚は、おじいさんが買ってくれたの?」

「いえ、買ってくれたんじゃなくて書いてくれたというか……」

「え、おじいさん作家なの?」

「普通に畑を耕したり色々やってました。昔は都会で仕事してたって言ってましたけど、具体的に何をしてたのかは知らないです」

「私はあまり英雄譚とか読まないんですけど、そういう人が書けるものなんですか?」

「どうだろうねぇ……ベル、ちょっと質問なんだけど」

 

 ベルの読んだ英雄譚が自分の知っている物と全く違っていたら困りものだ。ティオナは比較的有名な話の筋をベルに問うてみたが、ベルが答えたのはティオナが知っているものと大筋は同じものだった。一般に流通するものは写本が大半のため、細かな所が違うのは仕方がない。

 

「違わないみたい。ベルの家にはおじいさんが書いてくれた本しかなかったんだよね?」

「そうですね」

 

 ベルの答えに、ティオナが沈黙した。よく読み込んだティオナは現物がなくても話の筋を追うことができるが、本にできるほど細かく記憶しているかと言えば否である。ベルの英雄譚の知識は自分と同じくらいで、しかも良く読み込んでいるように思えた。

 

 ということは、少なくとも自分の部屋にあるのと同じくらいの量の英雄譚がベルの実家にはあったということになるが、彼の祖父はそれを現物を見ずに書きだしたということになる。その本を見ないことには何とも言えないが、それがきちんと本の体裁をなしているというのならば、凄い記憶力だ。

 

「凄いおじいさんだったんだね」

「はい。僕の自慢のおじいちゃんです」

 

 ベルのめったにない自慢話を聞きながらティオナはフライを摘み、ベルの前に差し出した。意図を察しあーっと開けられたベルの口に、ひょいとフライを放り込む。特に意識した訳でもないらしい自然なやりとりに、それを見ていたレフィーヤの背中に戦慄が走った。

 

 この二人は、もうここまで仲良くなってしまったんでしょうか。険悪になられるよりは遥かにマシであるが、あっという間に仲良しになられるのも、それはそれで困るのである。こういうことはもっと、きちんと段階を踏んでですね……心中で言い訳をするレフィーヤだが、あーんはティオナだからこそ自然にできたことだ。

 

 アマゾネスにしては貧相であるが、ティオナ・ヒリュテというのは快活で、人好きのする美少女である。がさつなところばかりが目につくが、英雄譚を読むのが好きなど、どこか夢見がちなところも持ち合わせていた。自分には一生かかっても真似できなさそうな気安さに、レフィーヤの心にも陰りが生まれる。

 

 そんなレフィーヤの心中など想像もできないロキは、酒に酔った赤ら顔で高らかに宣言した。

 

「よっしゃー、飲み比べ大会をするでー! 優勝者はリヴェリアのおっぱいを好きにする権利進呈やー!!」

「自分参加するっす!」

「俺も!!」

 

 勢いよく手を上げる男衆、その数は十ではきかない。良く見れば関係ないファミリアの冒険者も混じって狂喜乱舞している男衆に、女性エルフたちの冷め切った視線が突き刺さる。如何に神が許可を出したとは言え、そんな都合の良いことができるはずがないことは解りそうなものなのだが、酔ってテンションの上がった彼らはそれにも気づかなかった。

 

 男というのは可能性に生きる生き物である。何もしなければ絶対に触れないのだから、もしかしたらというロマンにかけて行動するのは彼らとしては当然のことだった。人間だけでなく獣人などの亜人や、中にはエルフの姿もある。種族を越え主義を越え、男たちは共通の目的のために熱を上げていた。

 

 それは一重にリヴェリアという存在がどれだけ異性として好意を持たれているかの証明でもあったが、リヴェリア本人はそんな沸き立つ男衆を苦笑と共に眺めていた。ロキが訳の解らないことを言うのはいつものことなのだが、

 

「……ベル、ちょっとこっちに来い」

 

 狂喜乱舞する男衆の中に、ベルが入っていないことがリヴェリアの癪に障った。その声音に周囲のエルフたちも彼女の虫の居所の悪さを敏感に察知した。主役にも関わらずレフィーヤとティオナと一緒に隅っこにいたベルを、強引にリヴェリアの前まで引っ張ってくる。

 

 大騒ぎを横目に見ながら、ひっそりと食事をしていたベルは、訳も解らずリヴェリアの前に引き出されていた。女神も嫉妬する美貌のハイエルフは、何故だか機嫌が悪いようだった。何か粗相をしたかと考えたが、さっぱり原因が解らない。小さい身体をさらに小さくするベルを前に、リヴェリアは大騒ぎする男衆を指して、言った。

 

「お前はどうしてアレに参加していないんだ?」

「どうして、と言われましても……」

「私の胸では不満か?」

「そんなことは!」

「よし。ならば参加してこい」

 

 もしかしてこの人は酔っているのだろうか。テーブルを見てみたが、酒の杯はない。基本的にリヴェリアは酒を飲まないので、周囲のエルフもそれに倣うのだ。彼女らの卓には一つも、酒の注がれた杯はなかった。

 

 つまり、リヴェリアは完全に素面である。エルフ流の冗談である可能性に賭けてベルはリヴェリアを見返してみたが、しばらくリヴェリアの表情は変わらなかった。周囲のエルフたちも、いつにないリヴェリアの態度に困惑している風である。

 

 その言葉が覆らないと判断したベルは踵を返し、男衆の輪に加わった。リヴェリアの寵愛を受けているベルが参加したことで、男衆のテンションは更に上がった。もしかするともしかするのでは。関係ない他の冒険者たちも巻き込んだ飲み比べ大会は、まさに最高潮だった。

 

 信じられないくらいの喧噪に包まれる酒場に、普段であればこの辺りでミアの拳が飛んできそうなものだったが、もはや貸し切りと割り切ったドワーフの女将は、ウェイトレスたちにせめて高い酒を売り込んで来いと檄を飛ばしていた。

 

 かわいらしいエプロンドレスで着飾ったウェイトレスは、ここぞとばかりに酒を押し売っていく。会計はどうせファミリア持ちだと解っている男衆は、何が持って来られるのかなど気にせず、ウェイトレスから渡されるままに杯を受け取っていた。

 

 ベルの前にも、酒が並々注がれたジョッキが置かれる。頼んでもいないそれは、やけに力強く置かれ、中身が少しベルのズボンにかかった。恐る恐る見上げると、金髪エルフの怜悧な瞳が見えた。男を軽蔑しきった女の視線である。何か謝らなければ、とベルが考えを巡らせている内に、リューは配膳に戻ってしまった。

 

 こんなはずでは……と暗い気持ちになるベルは、ロキの号令と共に、反射的にジョッキに手を伸ばし、中身を一気に煽って――しかし、喉を通り過ぎる凄まじい熱さと共に一瞬で意識を失った。

 

 酒、とアバウトな指定しかされていないため、各々の前に置かれている酒は一種類ではない。共通するのは比較的質が良く、値段が高いということくらいだ。沢山飲めるように度数の低い酒をこっそり注文する輩もいたが、ベルの前に勝手に置かれたのは『豊穣の女主人』亭で最も度数の高いドワーフの火酒である。火種を近づければ燃える程、強い酒だ。

 

 一瞬でぶっ倒れたベルに、レフィーヤが慌てて駆け寄り、自分の席まで引きずって行く。自分が煽った者が一瞬で脱落するとは想像の埒外だったリヴェリアが周囲を見回すと、給仕のエルフと視線が交錯した。ベルを『運命の人』と呼んだエルフは、リヴェリアの視線に軽く肩を竦めて見せた。挑戦的と言えば挑戦的なその仕草に、リヴェリアは苦笑を浮かべる。

 

 たまにはいじめてやろうと思って無責任に煽ってみたのだが、それが気に食わないという者もいたらしい。意外な伏兵に、むしろ気分を良くしたリヴェリアは、大騒ぎする男衆など存在しないかのように振る舞い、自分たちの食事に戻った。

 

 結局、参加者全員が凄まじいガッツを発揮した飲み比べ大会は三度の延長戦までもつれ込んだが、その時まで残っていた面々が都合、十五杯目を飲み干したところで、全員ダウン。勝利者なしという誰も得も損もしない結果となり、お開きとなった。

 

 ついでに、宴も酣でもありますが、と祝いの席そのものも解散となる。参加していた団員たちは、三々五々目的の場所へ散っていく。黄昏の館に戻って休むか、これから梯子して飲みなおすか、怪しいお店に直行して良い思いをするかはそれぞれだ。飲みなおす派はガレスに率いられて次の店へ。怪しいお店に行く連中はこっそりとイシュタル・ファミリアの縄張りである歓楽街へ。それ以外の面々はフィンと共に黄昏の館へと戻っていった。

 

 そして、第四の勢力である。酔いつぶれた団員が多い場合、それを介抱して黄昏の館まで連れていく貧乏クジの役割を担う者だ。普段はこれはただの貧乏くじであるのだが、先ほどの飲み比べで酔いつぶれた連中は自分の足で立ち上がり、三組のどれかに合流していった。飲み会慣れしているだけあって、回復も早いのである。

 

 立って歩けない程に酔いつぶれていたのは、酒に慣れていないベルだけだった。それだけに、ロキ・ファミリアから残った者は少なく、普段からベルの面倒を見ているリヴェリアとレフィーヤ、これからベルの面倒を見ることになるティオナの三人だけだった。リヴェリアの取り巻きのエルフたちも、彼女の一声で黄昏の館に帰らされている。

 

 ロキ・ファミリアが解散したことで、『豊穣の女主人』亭の営業も終了となった。てきぱきとした動作でイスとテーブルを片づけたウェイトレスたちは、素早く帰り支度をして店を後にした。女将であるミアも、戸締りだけはしっかりするようにと釘を刺して上がってしまった。

 

 ウェイトレスで残っているのはベルと縁の深いシルとリュー、それから面白そうだからと残ったクロエの三人である。彼女らから提供された店の余りものと、残った飲み物で一つのテーブルを囲んで世間話に花が咲いている。会話に乗り切れなかったレフィーヤは、ベルの傍らに残っていた杯に目を移した。

 

 ベルがぶっ倒れた時に、一緒に回収してきた杯だ。一気飲みしたために分量は大分減っていたが、まだ少し残っている。一体どんな酒を飲んだのだろう。試しに、と残った液体に舌をつけたレフィーヤは、それだけで強い眩暈を覚えた。

 

 一瞬で酔いが回ってくる。ベルはこんな酒を一気飲みさせられたのかと思うと怒りすら湧いてきたが、それは酩酊感によって霧散し、朦朧とした意識のままふらふら歩いたレフィーヤは足を滑らせると、額を思い切りテーブルに打ち付けた。

 

 冗談では済まないような音が響くが、レフィーヤとて冒険者である。今さらテーブルに額を打ち付けたところで死にはしない。むしろ、従業員たちはテーブルの心配をする始末だったが、目を回した所に頭部に衝撃を受けたレフィーヤは、そのまま意識を失ってしまった。

 

 テーブルに突っ伏すレフィーヤを見て、ティオナは軽く溜息を洩らした。何も知らずにドワーフの火酒を飲めば、そうもなる。ティオナが知る限り、これをがぶがぶ飲めるほど酒に強いのは、ロキ・ファミリアの中ではガレスくらいのものだ。

 

 ともあれこれで介抱するべき相手が二人に増えてしまった。黄昏の館まで戻るのは二人だが、まさかリヴェリアに人を背負わせる訳にもいかない。誰かが何かをいった訳ではないが、自分がこの二人を一度に運ぶのだということを、ティオナは理解していた。

 

 これがガレスやフレイヤ・ファミリアの『猛者』オッタルくらいデカくてゴツくて重い男であればティオナも拒否していただろうが、細身のエルフと人間の二人くらい、アマゾネスには軽いものである。

 

「それにしても、この少年はほんとに酒に弱いにゃ。冒険者とは思えないにゃ」

「冒険者の方が皆酒飲みって訳じゃありませんよ? クロエ」

 

 もっとも、シルも冒険者は酒のみであるという印象が強い。刹那的な生き方をする傾向が強い彼ら彼女らは食事にもそれを求める。特に比較的高めの価格帯である『豊穣の女主人』亭に来る冒険者たちは、その傾向が強かった。杯一杯で倒れる冒険者というのは、毎日冒険者の相手をしているシルをしても珍しいものだった。

 

「勿体ないにゃ。起きていればにゃーが色々とサービスしてやったのににゃ」

「クロエ、貴女まさか……」

 

 シルの声にお前もか、という強張りが生まれる。黙って世間話を聞いていたリューも、クロエの発言に長い耳を欹てていたが、クロエの答えは二人の予想とは全く違うものだった。

 

「にゃーが興味があるのは、少年そのものじゃにゃくて、このぷりっとしたお尻なのにゃ! にゃーはこのお尻に夢中なのにゃ!」

 

 軽くポーズまで決めて宣言するクロエに、シルははぁと大きく溜息を吐き、エルフであるリヴェリアとリューは無視を決め込み、アマゾネスであるティオナは腹を抱えて笑っていた。ジョークに関する受け止め方の違いが如実に出た形となるが、全員が先の発言をクロエなりのジョークと解釈していた。

 

 しかし、これをジョークと受け止めなかった者がいた。

 

「バカなこと言わないでください!」

 

 酔って突っ伏していたはずのレフィーヤである。酒に酔った赤い顔のままクロエの言葉を聞きつけたレフィーヤは、クロエを指差すと一気にまくしたてる。

 

「ベルは! 私が! 毎日面倒見てるんです! 私とパーティを組んでるんです! これは! 私のお尻です!!」

 

 言いたいことを全ていったレフィーヤは、またもテーブルに突っ伏した、酒場に痛いほどの沈黙が流れるが、酒場において、酒の勢いでした発言に責任を取れというのも無体な話だ。それが年端もいかないエルフの少女というならば、情状酌量の余地はあってしかるべきだろう。

 

「……色々あって、こいつも疲れているんだろう。すまないが、聞かなかったことにしてやってくれ」

 

 重々しい口調のリヴェリアに、クロエですら素直に頷いていた。酒場に流れた痛苦しい沈黙を打ち破ったのは、それまであまり発言をしなかったリューだった。静かに、リヴェリアに向けて手を挙げたリューに、リヴェリアは苦笑を浮かべる。

 

「なんだ。お前も尻の所有権を主張するつもりか?」

「クラネルさんの尻に興味はありません」

 

 ぴしゃりとした物言いであり、リューの視線は動きもしない。見ないようにしている、という不自然さもないから本当に尻には興味がないのだろう。一方、隣のシルはクロエと一緒にそろりとベルを盗み見ていた。欲に正直というのも、痛しかゆしである。

 

「私がこの人を見つけた時、とても冒険者に向いている人だとは思いませんでした。それが奇矯な縁を得てロキ・ファミリアに入り、貴女がたの元で戦うことになった。ミノタウロスを単独撃破したという話を聞いた時には驚いたものですが、それでも、私は冒険者として先達である、貴女の口から聞いてみたい」

 

 エルフとして生まれ、エルフとして育ち、冒険者としてオラリオにある、あるいはあった者は、例外なくリヴェリアの身分を知っている。他所の派閥であろうと廃業していようと、エルフとしての慣習は中々消えるものではない。無頼のリューにとっても、本来、リヴェリアというのは敬うべき存在であり、軽々に意見をして良い存在ではないのだが、その視線に籠る意思の強さは揺るぎない。

 

「ロキ・ファミリアが副団長。『九魔姫』リヴェリア・リヨス・アールヴ殿にお尋ねします。彼は、クラネルさんは、冒険者としてやっていけそうですか?」

 

 それ程までにしてリューが聞きたかったのは、ベルのこれからだった。生真面目なこのエルフにとって、ベルの今後はそれだけ重要なことなのだろう。何を聞かれるのか、少しだけ身構えていたリヴェリアは、その質問に相好を崩した。それはリヴェリアにとっても、他人事ではなかったからだ。

 

「心根はまっすぐな奴だ。話していて、それを良く感じる。真面目で、何事にも一生懸命だ。私の座学はあまり人気がないのだが、それでもこいつは良く付いてきてくれている。浅層でのモンスターの知識なら、うちのファミリアでもそれなりの物だ」

 

 リヴェリアはベルに視線を落とす。レフィーヤと仲良く赤ら顔でうんうん唸っている様は、とても褒められている者の姿ではないが、これはこれでベルらしいと思えた。

 

「仲間のために命を張ることができる。避けようのない窮状においても、動くことのできる胆力もある。確かに短所も多々あるだろうが、それを補ってあまりある程、こいつは可能性に溢れているよ。このまま成長を続けるならば、こいつはいずれ、私やフィンに並び、追い越していくことだろう。無論のこと、簡単に負けてやるつもりはないがそれでも、冒険者としてとてつもない可能性を秘めていると思う」

 

 それはオラリオでも最上位の冒険者である、リヴェリアをして最大級の期待の言葉だった。それ程までとは思っていなかったのだろう。リヴェリアの言葉を聞いたリューは相好を崩しかけ、慌てて表情を引き締めた。それを見ていたシルは忍び笑いを漏らしている。人前で笑顔を見せたがらないエルフはそんな友人に鋭い視線を向けるが、シルは両手を挙げて降参すると、クロエを引っ張って厨房に引っ込んでいく。

 

「この答えでは不満かな? リュー・リオン。かつて『疾風』と呼ばれた、我らが同胞よ」

「いいえ、十分です。お手数をおかけしました、『九魔姫』」

 

 そっけない風を装っているが、ベルを気にしていることが言葉や態度の端々から見て取れる。リヴェリアはリューがどういう経緯でこの店で働くことになったのか知っている。冒険者は死と隣り合わせの職業だ。知り合った人間がダンジョンで命を落としはしないか、気になって仕方がないのだろう。

 

 本音を言えば、同行したいに違いない。ブランクはあるだろうが、かつては『疾風』として名を知られた冒険者である、自分がダンジョンにおいて、ベルの助けになれるという事実をリュー自身が認識しているからこそ、歯痒い思いをしているというのも、また事実だった。

 

 振るうことができないならば、その腕はないのと同じである。冒険者としてはかつて『疾風』として鳴らした腕が腐っていくのは心苦しくはあるが、リューの現状はリヴェリアでも変えられるものではなかった。

 

「そろそろお開きにするか。ティオナ。悪いんだが、その二人を黄昏の館まで運んでくれないか」

「そう言われると思ってたよー」

 

 よいしょ、とティオナはレフィーヤを背負い、ベルを腕で抱きかかえる。ダンジョンから引き揚げてきた時に続いての、ベルのお姫様抱っこである。男性としての名誉を考えるならば、普通は逆にするべきなのだろうが、ティオナの感性でも自然とこうなっていたのだ。

 

「余りものですが、ベルさんと一緒に召し上がってください」

 

 厨房から戻ってきたシルが、その日の余りものを包んで戻ってくる。それを受け取ったリヴェリアは軽い挨拶をして『豊穣の女主人』亭を辞した。

 

「ねえ、リヴェリア。さっきの話、本当? ベルがその内、フィンもリヴェリアも超えて強くなるって」

「所謂希望的観測という奴だな。流石に私も言い過ぎたと思わないでもないが、件のスキルのこともある。見どころがあるということについては、お前も異論はないだろう?」

「そうだね。私もベルが私よりも強くなってくれたらって思うよ。これも希望的観測って奴」

 

 からからとティオナは笑う。好意を持っていたとしても、アマゾネスとしてはやはり、自分よりも『強さ』で劣る者を相手としては見れないものだ。ティオナはレベル5.オラリオに存在するアマゾネスの中では、トップクラスの実力を持っている。これに釣り合う相手は中々存在せず、存在したとしても好みではなかったりすると、それはそれでもうどうしようもない。

 

 ベルには戦闘以外の感性の面で、中々近い物を感じている。今すぐ子供を作りたい、というほど好意が募っている訳ではないが、将来の選択肢を増やすためにも、ベルには強くなってもらいたい。アマゾネスであっても、レベル5の冒険者であっても、ティオナ・ヒリュテは少女なのだ。いずれ番になるはずの異性に思いを馳せることだってあるのである。

 


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