やはり比企谷八幡は捻くれている。   作:秋乃樹涼悟

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お気に入りに入れて頂いた方、ありがとうございます。
初めまして投稿したものが人に読んでもらえるというのはとても嬉しいです。
基本友達がいないので、誰かに読んでもらえる機会というのがなかったので…
作品の感想や、誤字脱字などがあれば編集致しますので、教えて頂けたら幸いです。


やはり比企谷八幡の思考は捻くれている

こんな寒い日は暖かいMAXコーヒーが一番なのだが雪ノ下が淹れてくれる紅茶もなかなか悪くないもので、だからコーヒーは帰りに買って飲もうと我慢し、かさかさと寒い廊下を歩き部室へ向かう。

 

「うす」

「ヒッキーやっはろー」

「んおう。さっきも教室で会ったけどな」

「いいの。あれだよ。お約束だよ。恒例だよ。伝統芸だよ、伝統芸」

 

最後のはなんか違う気がするがまあどうでもいい。

つまんねーこと言うなよ!

 

「こんにちは、比企谷君。紅茶、淹れるわね」

「おう、サンキュー」

 

いつもの席に座り小説を取り出し読み始める。

 

「あまり冷めないうちにね」

「それは猫舌な俺には無理な相談だな」

 

パンダのパンさんのプリントが施されている湯呑みからは紅茶の香りと湯気を漂わせる。

 

誰かがドアをノックしてきた。

 

「どうぞ」

「失礼しまーす。今日は生徒会の仕事特にないので遊びに来ちゃいました」

「一色さん、こんにちは」

「いろはちゃん、やっはろー」

「雪ノ下先輩、結衣先輩こんにちはです。せんぱいもこんにちはです」

 

あざとく敬礼しながらのあいさつ。初っ端からあざとさ全開。流石あざとす。

 

「おう」

「せんぱい、こんなに可愛い後輩があいさつしてるのに反応薄くないですか?」

「はいはい、あざと可愛いねー」

「棒読み…」

「いろはちゃん、今日はね、奉仕部からいろはちゃんにプレゼントがあるの」

「え⁈そうなんですか。ありがとうございます」

 

バックの中からプレゼントを取り出す雪ノ下。

 

嬉しそうな一色。こういうときの一色はなかなか可愛いから困る。あざとさがあまり感じらないからだろうか。

 

一色があざとくなかったらまた勘違いして好きになりそうまである。

 

いや、もしかしたら一色のことだからそれすらも計算かもしれない。

 

「ありがとうございます。開けていいですか?」

「うん」

「綺麗で上品なティーカップですね」

「一色さんもよくここへ来るし、毎回紙コップというのも味気ないと思ったから」

「マグカップにしようか迷ってたんだけど、ヒッキーが、一色は生徒会長だし、こういう上品なものの方がいいんじゃないか?って言うからこれにしたんだ」

「別にそういうこと言わなくていいから」

 

やめて、なんか恥ずかしいから。

っていうかなにそれ、俺のマネ?全然違うだろ。

 

「せんぱい、照れてるんですか?可愛いですね」

「ち、ちげーよ。あれだあれ、もうちょっと会長らしい振る舞いをしろってことだよ」

「その割にどのティーカップにするかあなたも随分と悩んでいたじゃない」

「仕方ないだろ、小町にそういうことは真剣に考えろって教育されてるんだよ。そもそもそんなに贈る機会なんてないんだけどな」

 

基本ぼっちにはそういうリア充なイベントはあまりない。

まあ奉仕部では何度かしたが。

むしろ小町以外だと奉仕部でしかしていないまである。

 

「小町ちゃんもなんだかんだでブラコンだね」

「そういえばせんぱい、妹さんいたんでしたね」

「一色さん、紅茶はいかが?」

「はい。是非頂きます」

 

雪ノ下が淹れた紅茶を飲む一色の姿はしっかりと様になっていて、真剣に選んで良かったと思えた。

少しだけ、一色に見惚れてしまった。

 

 

 

「今日もう、終わりにしましょうか」

 

陽が沈み始め雪ノ下の顔を蒼く染める光りが俺らの下校時刻を告げる。

 

「そうだね」

「今日も楽しかったです」

「一色さん、ティーカップはここに置いていていいかしら」

「はい。また遊びに来ますし」

 

カップの片付けをし、戸締まりをして雪ノ下は鍵を返しに行った。

 

廊下は寒く、部室に戻りたい衝動に駆られるが我慢だ。MAXコーヒーが俺を待っている。そして小町が待っている。あとついでにかまくらも。

 

自販機でMAXコーヒーを買おうとしているとさっき由比ヶ浜と帰ったはずの一色がいた。

 

「せんぱいMAXコーヒー?好きですよね」

「おう、どうした?さっき帰ったんじゃないのか?」

「ちょっと生徒会室に忘れ物しちゃって」

 

えへっといつものようにあざとくそう言った。

 

「そうか、早く帰らないと先生に注意されるぞー」

 

購入したMAXコーヒーを手に取り、カイロ代わりに手のひらで転がす。

 

「既に言ってることが先生とかお兄ちゃんみたいです。せんぱい」

「まあな、手のかかる妹がいるとこうなるんだよ」

「っは、もしかして私を妹だと思ってるんですか、お兄ちゃんっていうのはちょっと憧れますけどせんぱいはせんぱいなのでせめて彼女にしといてくださいごめんなさい」

「なんかまた振られたな、俺」

 

何回目だよ、ん?てか今の振られてなくね?まーいいか。

とりあえずMAXコーヒーを一口。

 

コーヒーの芳醇な香り、砂糖と練乳の甘みとコク。美味い。

 

「せんぱい、それって美味しいんですか?私にも一口下さい」

 

そう言って俺からさらっとMAXコーヒーを奪った。

一瞬、奪われたことに気づかなかったほどに自然に。

なんだったんだ今のは。

 

「あまっ⁈これ本当に珈琲なんですか?甘過ぎです」

 

っていうか間接キス。

 

やめろよそういうの。勘違いしちゃうだろ。

 

「もうそれお前にやるわ」

「あ、もういいです。今はまだこんな甘いのは飲めませんお返しします」

「って言われても」

 

もう意識しちゃって飲めないだろうし。

 

「もしかして私と間接キスとか思ってるんですか?せんぱいのそういうところは面白いですね」

「っ。それより、忘れ物はいいのか?」

「っは、そうでした」

 

ぱたぱたとあざとく走って行った。

よし、今のうちに帰ろう。また駅まで送れだの言われては叶わん。

 

それに、今の顔はなるべく見られたくない。


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