本来なら今回更新したものをもう少し勧めたかったのですが、時間と文字数的に少し抑えさせていただきました。
しかし、皆さんに楽しめるように執筆をしたので、是非ご覧ください。
狂三とのデートの後、一護は折紙とのデートに臨もうしていた。先ほどの悲劇から少し間を空けることが出来たので少々心を落ち着けることが出来た。ただ、次の相手が折紙だと思うととって喰われそうだった。まぁ、そう思うのは失礼なのだけど。
『鳶一折紙はフードコート内にいるわ。士道からこれから一護が来ることを伝えてあるから、自然にデートできるわよ』
「了解」
一先ず息を吐いて気合いを入れ直す。折紙とのデートに臨む気持ちを作れたところで後ろから肩を叩かれた。せっかく、これからデートに臨もうとしていたのにと思いながら振り返ってみると…
「来てくれてよかった。少しして来なかったら、探しにいくところだった」
「お、おう」
肩を突いてきたのは今回のデートの相手である折紙だったのだ。予想だにしない登場で完全に不意を突かれた一護だが、折紙が手に持っている袋が気になった。
「なあ鳶一、その袋の中には何があるんだ?」
「下痢止め」
デートに下剤を買ってくるとは一体どういうデートなのだろうか。まさか、食品に混ぜて一護がトイレに篭っている間に何かをするということなのか。
「これは士道がお腹を下していると思い、買ったもの」
それを聞いて一護は安心した。四糸乃を精霊の力を封印した日に折紙の部屋に行った士道から聞いた話だと、まさに野獣というイメージしか湧いて戦々恐々していたのだが、士道がかなり話を盛っていただけみたいだ。
「それよりも、これはデート」
「ああ、そうだな」
「あなたは夜刀神十香のことを十香と呼ぶ。これは、非常に不公平」
「えっと、鳶一のことを下の名前で呼んでほしいということか?」
折紙はこくりと頷いた。自分と近しい男性ならば下の名前で呼んでいたが、かなりの付き合いのある井上織姫でさえ下の名前で呼ばなかった一護にはなかなか難しい課題に思えた。
「ダメ?」
首を横に傾けながらそう言ってくる。全体的な表情には特段変化はないが、瞳には少しさびしそうな感情が乗っていた。さすがに、これを断る一護ではなかった。それともうひとつ、普通に可愛い。
「別に駄目じゃねぇ…折紙…これでいいか」
折紙は再び頷いた。どうやら、満足してくれたらしい。
「あなただけ私のことを下の名前で呼ぶのは不平等。私も『一護』と呼ぶ」
「ああ、わかったぜ」
もういきなり折紙から下の名前で呼ばれて心臓がバクバクなのだが、このまま立ち話というのも味気ないので士道と折紙のいたフードコート内の席へと移動した。一護は先に料理を注文してから折紙に尋ねた。
「なあ、今日は何で士道だけじゃなくて俺も誘ったんだ?」
「今日は一護も士道も一人にしたくなかったから」
「それって、どういうことだ」
ASTの隊員である折紙だが、彼女が一護と士道を1人させたくないという判断に至ったのは恐らく2人に危険が迫ってきているということだろう。しかし、そういう類の話なら折紙がこんなオープンスペースで話すとは思えないが。
「しばらくの間、士道と一緒に私の家に泊まってほしい」
「はい?」
自分で言っていることが解っているのだろうか。ひとつ屋根の下に男子2人に女子1人、一護と士道はもちろん
「大丈夫。準備はもう出来ている」
「準備って何だよ! 詳しくは聞かないけどさ」
「それは夜の「だから、聞かないって言ってるのに言おうとしてんだよ」…わかった」
こんなところでアブナイ発言してもらっては、周囲にいる人々に奇異な目で見られてしまう。対して、折紙は途中で止められたことに少し不満そうである。あまり耐性のない一護にしてみればそういう発言は勘弁してほしい。
「お待たせしました。ミートスパゲティです」
これまでの流れを断ち切るかのようにウェイトレスが一護が頼んだ料理を運び込んだ。正直、これ以上会話を続けるのはきつい。気持ちを紛らわす為にミートスパゲッティを口に運ぶ。
(…確かに店で出せるぐらいには美味いけど全然物足りねぇ)
いつも喫茶
カサカサカサカサ―――
ここで折紙が携えている鞄の中から水筒を取り出した。特に何も変哲のない水筒だ。
「味噌汁を作ってきた、飲んで」
水筒のキャップを取り外して中身を外したキャップの中に注ぐ。その中身には、舌が肥えている一護でも美味しそうに見えるキラキラと光る味噌汁があった。
「それじゃ、ありがたくいただくぜ」
洋風のミートスパゲッティを注文したのに和風の味噌汁が合うのかは別にして、せっかくの折紙の好意である。いただかないわけにはいかないだろう。味噌汁が注がれたキャップを受け取って飲もうとしたところだった。
「ちょっと待って」
「ん? どうしたんだ」
カサカサカサカサ――――
再び鞄から何やら探しているような物音が聞こえてきたのだが、実際に取り出したのは瓶だった。恐らく士道の為に買ってきてくれた下痢止めなのだろう。でも、なぜ今のタイミングでそれを出してきたのか一護にはわからなかったが。
「少し貸して」
「あ、ああ」
折紙が一護の手から受け取ったとき、一護は何となく悟ってしまった、折紙が何をしようとしていたかということを。
「折紙、それはまずい。そこまで料理とかに詳しくはない俺でもわかる」
「大丈夫。私に任せて」
「それが大丈夫じゃないんだって」と一護が言おうとする前にそれをドバドバと入れた。それは液体だった。
「液体? 下痢止めじゃなかったのか」
「そんなモノを入れてしまったら、一護のお腹が壊れる」
「そうだな、普通だったら食べ物の中にそんなモノを入れるワケがねぇ。ちょっと混乱してたみてぇだ。でも、何を入れてるんだ?」
「こちらこそ誤解を与えてしまってごめんなさい。これはスパイス」
味噌汁の中にスパイス、要するに香辛料を入れるのだろうかという疑問はあるのだが、きっとプロの料理家とかは使うのだろうと納得した一護。
「完成した」
「お、でき…た…か…」
一護が中身を確認してみたら顔を曇らせた。それも無理はない。なぜなら、あれだけ美しかった味噌汁がどす黒くなっていたのである。一体何を入れたのかと折紙に気づかれないように横目で瓶を改めて見てみると…
―――『ア○マムシ』
紛うことなき精力剤だった。きっとこれを飲んでしまったなら、もうそれは体が黄金に輝いて理性が保つことが難しくなるだろう。
「えっと、これは…」
「飲んで」
「いや、これ飲んだら危ないことなるんだけど…」
「構わない」
一護にしてみれば構わなくはないのだが、それでも折紙が勧めてくる。というよりも、追加生産している。現在折紙は某英語を喋る独眼竜さんの如く指と指の間に計6本の瓶を挟んで中身を味噌汁の入っている水筒に投入している。そんな光景を見ていた一護は少し胸やけがしてきた。
「これ「大丈夫。私も飲んだことがある」」
退路が塞がれた。もう覚悟を決めるしかないようだ。
「いただきます」
(お袋…今からそっちにいくかもしんない)
そして一護は味噌汁という名のブラックマターを口に運んだ。
時間は遡り、ちょうど一護が折紙とのデートを始めようとしていたとき、士道は目の前で「うふふ…」と微笑んでいる狂三とのデートに臨もうとしていた。
『妙ね…』
「妙って、何が妙なんだ?」
『どう考えても可笑しいのよ。一護とデートをしてた場所からそこそこ距離があるのに時間を空けずに士道とデートするなんて…よっぽど男に飢えてるみたいね』
「おいおい」
さすがに男に飢えているという表現は言い過ぎなんではないかと思う士道。しかし、琴里の言う通り確かに可笑しい。二股をかけている時点でも可笑しいし、そもそもこんなに短い時間で一護とデートしていた場所からここまで来るなんて物理的に不可能なのではないか。
『精霊を常識の範囲で考えないでちょうだい。人間では不可能なことでも、精霊なら不思議パワーでなんとかなっちゃうことなんてあるんだから。それよりも今は、狂三が目の前にいるんだからそっちに集中しなさい』
「そうだな。いろいろ考えても俺には詳しいことはわかんないから、あとは任せたぞ」
『ふん…自分の役目をわかってるじゃない』
一しきり通信を終えて、士道は狂三に声を掛けた。
「ごめん、少し遅れた」
「いいえ、それほど待ってはいませんわ」
「そうか、それは良かった」
「ところで士道さん。今日はわたしをどこに連れていってくださります?」
「そうだな…」
今日のデートは狂三から誘われてきたものなのだが、町を案内するというお題目が付いているので士道が行き場所を決めるのが自然である。とはいっても、一護と行った場所は覗かなければならないから大分選択は難しい。
『士道、選択肢よ』
フラクシナスのAIから導きだされた選択肢とは…
1.喫茶
2.喫茶
3.喫茶
実質一択だった。でも、デートに喫茶店は悪くない選択だとは思う。しかも喫茶
「行きつけの喫茶店があるんだけど、そこでいいか?」
「いいですわね。士道さんの行きつけの喫茶店…楽しみですわ」
「それじゃ決まりだな」
喫茶
「来たか、一護の弟」
「こんにちは、いつも兄貴がお世話になっています」
一護がここでバイトをしていない時でも、士道は個人的に料理のレパートリーを増やすために通っている為にウルキオラに顔を覚えてもらっている。ただ、ウルキオラは一護のことを下の名前で呼んでいるのに対し、士道のことを「一護の弟」としか呼ばれていない。一護とウルキオラは昔からの仲のようなのでこの差は分からなくもないのだが、なんだか自分が認められていないようで悔しい。
「今日は2人か…」
「はい、どこか2人でゆっくり話せるところ探していてここに来ました」
「そうか。それなら奥にある個室を使え」
2人でゆっくり話せる場所という要望に配慮してか個室を勧めてきた。別にそこまでの意図があって言ったわけではないのだが、せっかくなので使わせてもらおう。
「あらあら、ここは本当に
「ここで出てくる料理は本当に絶品だから、楽しみにしててくれ」
「そうですわね。本当に本当に
「…」
そこまで期待してくれているとは、ここに連れてきて正解だったか、と思う士道。それにしては壮絶な笑みをこぼしているが。そんな狂三の姿をウルキオラが視界に収めていたことには士道と狂三本人も気づくことはなかった。
「何でも好きなものを頼んでいいよ。俺が奢るから」
「それはありがたいですわ」
個室スペースにある席に座った2人は早速テーブルの上に置いてあるメニュー表に目を通した。
「やっぱすげぇな」
「何がすごいんですの?」
「実は1週間前にもここに来てたんだけど、そのときよりもメニューが3つ新しいメニューが出来てるんだ。いつも妹に料理を作ってる俺でも1週間に1つ新しいレパートリーが出来ればいい方なんだよな」
「それはすごいですわよね。1週間で1つの新しい料理を作れる士道さんもすごいですけれど、あの店員さんスペックが非常に高すぎますわ。これでは、わたくしがこの中で一番女子力が無いということになりませんの」
冗談めかしてそんなことを言ってくる狂三。この世界に馴染んで暮らしている精霊だということなのだから、狂三も一人暮らしが出来るぐらいには料理の腕やその他の家事スキルは身に着けているはずなのだが。
「それにしても、こんなにメニューが多いとどれを頼んだら迷ってしまいますわ」
「そうだな…俺だったら「ちょっと士道さん、あの人を見てくださいまし」」
狂三が指差した先には成人男性だった。士道はその男性には見覚えがあった。この喫茶店の店主である気怠そうな男性だ。狂三が気になった何かが分からない内にその男性が喫茶店の店内に入ってきた。そしてここでようやく士道は狂三が何に目を奪われていたのか知ることになる。
「え!? マグロ? しかも、丸々一本!?」
当の本人は何事もなさげに歩いているが、その肩には丸々太ったマグロを乗せていた。これは一体どういう状況なのか理解できない。そもそもマグロを常温で持ち運んでいれば鮮度が落ちてしまうことは確実。ならば、常温のままで運んだのか。
「ようやく帰って来たか」
「ようやく帰って来たか…じゃねえからな。お前のこだわりの全部に付き合ってたら普通の奴だったらもっと時間が掛かるに決まってんだろ」
「釧路沖でマグロを一本釣りしてここまで戻ってくるのにお前なら1時間程度で充分ではないのか」
ウルキオラが滅茶苦茶なことを言っているということは士道や狂三だけでなく一般の人々にも分かるだろう。しかし、ウルキオラが当然のように言っていることから、実際にそのようなことが出来るというのか。
「お前の立てたノルマ厳しすぎんだよ。俺の睡眠時間いくら減ったと思ってんだ」
「だが、58分で届けてきた。それについては感謝する。ゆっくり休め」
ウルキオラはスタークの抗議に聞く耳を持たず労いの言葉を一言掛けただけで、あとは黙々とマグロの解体に勤しんでいた。
「あの人たち本当に人間ですわよね…」
「俺もそうだとは思うけど…」
正直いえばこの間の十香の一件のことだったり、今回の一件であったりどう考えても人間業とは思えない。士道は一護が死神であるように、ここにいるウルキオラやスタークが死神に似たような存在ではないかと思えてきた。
「すたぁぁぁぁぁぁぁくぅぅぅぅ! おそいぃぃぃぃ!!」
「うるせぇよ。俺は疲れてんだ」
スタークは向かって突っ込んでくるリリネットに口を開けて大きなあくびをして、ただ一歩横に移動しただけである。その結果、何がもたらされたかというと…
――――ドンガラガッシャン
「べぶし!」
そう、霊力が集まる場所にトラブルも集まるのかというぐらいの確率でリリネットが士道と狂三の居る個室に頭から突入し、机の上で逆立ちの状態で止まった。ついでに、リリネットがスカートではなくてズボンを履いていたことから士道の精神衛生上非常に助かった。
「大丈夫ですかっ!」
「全然大丈夫。ほら、こんなに動くでしょ」
逆さまの状態で中学生の女子が股を開閉させているのは何ともシュールというか見ているこちらが恥ずかしくなってしまう。それよりも、それを首を捻らせている状態でそれをやっているので全然大丈夫そうには見えない。
「なかなか個性的な方ですわね」
「はは…そうだな」
「そうでしょ、そうでしょ」
リリネットは狂三の言葉を良い意味で捉えたようだが、少なくとも士道はどう対処すればいいか分からない故にその言葉に同意したのだが。まあ、狂三はニコニコしながら言っているので本当に士道と同じように考えているかはわからない。
「序でだ、注文を取ってこい」
「ちぇ、ウルキオラに指図されんのはやだ」
「ほう、それならば今日の夕飯は無しでいいのか」
「是非やらせていただきます」
ウルキオラの持つ家計の裁量権に屈し、渋々といった様子で机から降りてから注文を取ろうとするリリネット。そこで初めて顔を見てようやく気付いた。
「あんた、一護と一緒にいた!」
「あらあら、気づかれてしまいましたわ」
「2人は会ったことがあるのか?」
「ええ、学校の方で少々」
接点が無いと勝手に思っていた2人が以前に出会ったことがあるということには士道には意外だった。そもそも、身長からして恐らく中学生ぐらいのリリネットがどうして高校に来たのであろうか。
「もしかして、今日は2人でデートでもしてるの?」
男女二人きりで楽しく会話しているのとなれば誰でもそう思うのが当然だ。実際にもデートという形で町を散策している。だけれども、リリネットの士道と狂三を見る眼が怖すぎてどうにもその事実を言いにくい。
「そうですわ、今わたくしは士道さんとデートをしていますの」
「ちょっと、狂三さん!?」
もう既に遅かった。狂三がストレートにデートをしていると宣言したところリリネットは…
「一護にもデートしてたくせに、この浮気者っ!」
そう言いながら、リリネットは狂三に指差した。そこで士道は全てを察した。以前、一護と狂三が学校案内という名のデートをしていたときに、何かが原因で高校に来てしまったリリネットが偶然にもデート現場を目撃したに違いない。
「もしかして、妬いていますの?」
狂三がリリネットを煽るように顔を近づけて言ってくる。そんなことを言われて、感情的なリリネットが黙っているはずがない。
「男をたぶらかしてるあんたが許せないんだよ。あと、私は誰にも妬いてないわっ!」
グルルルルル、と肉食獣のように唸りながら睨むリリネット。しかし、その背後にはウルキオラの姿が。
――――ゴツッ
鈍い音がしたかと思うと、士道の目にはウルキオラが刀の柄でリリネットの脳天に振り下ろされた一連の状況が写った。
「また刀ぁぁぁぁぁぁ!」
まさかの2回目の刀の登場にまた同じようなリアクションを取ってしまう士道。一方の狂三は平静に装っているが、実際は足がガクガクしている。遠くからは高濃度の霊力の集まりとしか認識できなかったのだが、こうして近づかれると異様な空気が漂ってくる。一言で表すとするならば、日常の中の異物感。若しくは、ぽっかりと空いた空虚。
狂三を恐恐させていることを全く知らないウルキオラはそれこそ塵を見るような眼でリリネットを見てくる。
「何をしている。俺は注文を取ってこいと言ったはずだが」
「…」
刀の柄を振り下ろして完全に意識を刈り取れた状態のリリネットにそんなことを言っても意味はないが。今度は士道と狂三の方に向き直って腰を曲げた。
「申し訳ない。馬鹿が迷惑を掛けてしまった。ちゃんと教育しておく」
「いえ、少しびっくりしましたけれど大丈夫です」
「謝らないでございまし。あの小さな女子さんは活発な子で、むしろあのままでいいですわ」
「そうか。しかし、このまま詫びないというのは忍びない」
そこで取り出したのは大きなグラスに入った南国風の青い色のドリンク。そして、それに挿してあったのが飲み口が2つあるストローで、途中にハートのようにストローが折れ曲がっていた。士道は何となく察してしまったが、お詫びとしてこれがプレゼントされるということなのだろう。
「えーと、これは」
「これを、2人で飲むといい」
「ですよねー」
全くもって士道の予想していたとおりだった。別に狂三ような美人と同じストローで飲みたくないといえば嘘になるが、こんな表立ってそういう行為をするのはかなり恥ずかしい。
「わたくしと一緒に飲むのは嫌ですの?」
「いや…そうじゃないんだけど「それとも、あちらのホテルでもよろしいですのよ」こっちの方がいいです、全然!」
狂三が指差したのは、以前琴里たちに騙されて入らされたラブホテルだった。いくら何でも過程を飛ばし過ぎだし、士道には大人の雰囲気の狂三を喰うなんて勇者すぎた。すぐにお断りをしたので、狂三は若干残念そうにしていた。
「「…」」
早速両人が両端にあるそれぞれのストローの飲み口に口をつけた。もうその時点で顔がかなり接近していて、士道の心臓の鼓動が速くなっていた。士道自身、狂三を意識していることはわかっていた。狂三がそんな状態に陥っているということをわかっているかどうかは分からないが、頬をほんのり熱くさせて微笑んでくる。
「ッ!」
もう士道の心臓はバクバクだ。それと同時に体も火照ってくる。一刻も早く体をクールダウンするためにドリンクを吸い上げた。ストロー内のドリンクは底から昇って行って、ハートの形の道を通り士道の口へと運ばれた。
「美味しい」
―――と思えたのは一瞬だった。士道の口に運ばれているということは、狂三の元にも運ばれているということだ。士道がその姿を捉えたときには、士道にはただただ甘い感覚しか残っていなかった。こんな姿、誰かに見られたのなら色々と恥辱に塗れそうだった。
『士道、時間よ。あと、今の情けなくて気持ち悪いデレ顔を撮影しておいたから、楽しみにしておきなさい』
それを聞いた士道は逃げるようにその場から離れた。
精霊図鑑ゴールデン
※おまけは台本書きでいきます。
コン「レデイ・エーン・ジェントルメーン! プリティな俺様ことコン様だ!」
?「ククク、人形が喋るとは、世界は不可思議なもので構成されておるなぁ、我が半身よ」
?「同意。まったくです」
コン「コラァァァ、人が紹介する前に出て来てんじゃねぇええ! 耶具矢、夕弦」
耶具矢「ふん、我が道を進むのが颶風の御子たる八舞。これしきのことで狼狽えるでない」
夕弦「侮蔑。耶具矢にダメだしするとはいい度胸です」
コン「段取りとかいっても、聞いてくれそうにないからまあいいや。今日来てもらったのはお前らに見てもらいたいものがあるからだ」
耶具矢「ほう、そのようなものこの地上にあるとな。もしも、つまらぬものであるならば、我が『
夕弦「辟易。作者も言ってました。耶具矢は一番好きだし、その無理してる中二病も好きだけど技名が長すぎて原作が手放せないと」
耶具矢「味方から裏切りがッ! ってか、それホントなの? 嘘だよね、絶対嘘だよね」
コン「おまえらがラブラブなのは分かったから本題いくぜ。今日見てもらいたのは全然納得できねぇけど、これまでの一護の活躍だ」
耶具矢「ほう、それは楽しみだ」
夕弦「期待。早く見せてください」
『兄貴ってのが…どうして一番最初に生まれてくるか知ってるか…?後から生まれてくる弟や妹を護るためだ』
『俺はスーパーマンじゃないから世界中のひとを護るなんてデケーことは言えねぇけど、両手で抱えられるだけの人を護れればいいなんて言えるほど控えめな人間でもねぇんだ。俺は山ほどの護りてぇんだ』
『恐怖を捨てろ、前を見ろ、進め決して立ち止るな! 退けば老いるぞ 臆せば死ぬぞ 我が名は 斬月』
『あたりめーだろ! 誓ったんだよ…絶対助けるってな…誰でもねぇよ、ただの俺の…魂にだ!』
コン「…とまぁ、こんな感じだ。どうだ感想は」
――――キラキラ(眼が輝いてる)
コン「完璧に魅了されてんな」
耶具矢「やっぱ、一護かっこよすぎ。私も参考にしなきゃ。特に月牙天衝っていうのを使ってみたい」
一護「わりぃな、それは俺専用の技だから全く同じことはできないと思う。でも、似たようなことは出来るかもな」
耶具矢「ふーん、そうなんだ… って、一護!」
コン「って、勢いで俺様を掴んで投げふもっ」
夕弦「驚嘆。私の二つの球にストライクです」
耶具矢「うわあああんんん!それは胸の無い私に対しての当てつけかぁぁぁ」
一護「…」