「じゃあ、また会おうね!行くわよワイバーン!」
他国のトップにする挨拶にしてはあまりにも軽い挨拶……されどナツミらしい挨拶を合図にワイバーンは雄々しく(雌だけど)翼をはためかせ、空へと昇る。
瞬く間にその体が米粒に見えるまでに上昇すると、ワイバーンはナツミ達と共に瞬く間に空の彼方へと去って行った
「始祖の血脈を現代の虚無が救ったか……。これが神の導きならレコンキスタの虚無はいよいよきな臭くなったということですかね」
そう呟くジュリオがヴィットリオーへと視線を向けるとヴィットリオーと視線が合う。
ヴィットリオーはジュリオと目が合うと同じことを考えていたのか微笑みながら頷いた。
「ええ、まぁそもそもクロムウェルは血筋からして疑わしいものでしたし、偽物と考えていいでしょう。陛下の身柄を預かれなかったのは少々惜しくはありますが……あの少女の傍ならまず安全でしょうし、……というかガンダールヴにも関わらず幻獣を自在に操るとは、どういうことなのでしょう?」
「うぅ……あ、あれは、驚きましたよ」
ワイバーンに睨まれた時の事を思い出したのだろう。ジュリオの顔は明らかに青くなり、冷や汗まで垂らしていた。
「あのワイバーンが特殊なのか、ナツミが特殊なのかはまでは分かりませんが、どちらにしても、とんでもないですね」
乾いた笑いを浮かべながら、あまり的中して欲しくない予想をジュリオは口にするが、実際は魔王と小細工無しにぶつかり合える力も持っているのだから、とんでもないどころの話ではない。
「とりあえず調べられるだけ調べてみますよ」
「頼みます」
ガンダールヴとしてではなく、ナツミ自身が異質だと感じた二人は、ひとまず情報収集が肝要だと判断し、当面の目標を定める。だが、調べても調べてもナツミの力の底に至れない事をこの時の二人はまだ知る由も無かった。
広いワイバーンの背に、ウェールズの風の障壁を張った一行は優雅に空を旅を楽しんでいたが、ガリア領に入って幾ばくかしたころ、ワイバーンが何かを知らせるように一啼きする。
「gaaaa!」
「どうしたのワイバーン?」
「gaaall」
ナツミの問いにワイバーンは更に啼き声をあげ、その巨体を地面へと向かわせる。
「ナツミどうしたの?」
「んーよく分かんないけど、なんか見つけたみたいよ」
「何かって?」
「さぁ?なんとなく考えてることは分かるんだけど、細かいのはよく分かんないんだよね」
そういう間にもぐんぐんとワイバーンは地面へと近づいて行く。その先にはこじんまりとした宿場町の姿があった。
それを見て、ルイズとソル、ウェールズの比較的常識組は、こんなデカいワイバーンが突然、町の上空に現れたら一騒動になると顔を青褪めさせる。
「ナ、ナツミ君、このままだと」
「やばいナツミ、ワイバーンを止めろ!」
男性陣がナツミに警告するが、二人の悪い予感は当たらず、ワイバーンは町には目もくれず、街道から外れた森にその巨体を降り立たせる。
「ん?ここに何があるの?」
空から見えた限りでは、ただの鬱蒼とした森にしか見えず。ワイバーンがこんなところに降りた理由があるようには思えない。
「きゅいきゅい!ワイバーン姉様ですの!」
すると、妙な声が辺りに響く。声色自体は若い女性のそれだが、きゅいきゅいと何を意図して話しているのかは、まったく分からない。そんな声だった。
声に反応してナツミは、その光景に己が目を疑った。
「ん……え!?」
そこには、若く瑞々しい肢体をマント覆い辛うじて腰の辺りに腰を巻いてずり落ちないようにしている青い長髪の美しい女性が立っていたからだ。そして、その隣には……。
「……ナツミ?」
最近、学院で仲良くなった少女、タバサの姿がそこにはあった。
ハルケギニアの誓約者
第三章
第七話
~エズレ村にて~
「これもおいしいのね。あ、これもおいしい。このワインで煮込んだお肉なんて、とろけるほどに柔らかいのね。ほら、ジン……なんだっけ?なんでも良いや、このあぶり鳥を試してみるのね。中に野菜やらキノコが詰まってて、たいしたもんなのね」
「おう!、んん!?うめぇうめぇ!フラットのご飯もうめぇけど、久しぶりの肉は美味いなぁ!な、姐御!」
「うん。もぐもぐ、リプレよりは落ちるけどまぁ美味しいわね」
青髪の女性、ジンガ、ナツミの単細胞トリオがのんきにご飯を貪る中、ルイズだけは渋い顔していた。
ちなみにソルとウェールズ、タバサは黙々と箸ではなく、スプーンやフォークを進めていた。
「タバサは食べるの早いね。それに量もすごいわね。どこに入ってんの?」
「……お腹」
小さな体のどこにそんな容量があるのか、ジンガに負けず劣らずタバサは恐ろしい勢いでテーブルの上の食料を平らげていく。それを見て不思議に思ったナツミがタバサへ問うが、帰った来た答えは、当たり前と言えば当たり前の回答が帰って来た。
タバサはナツミへと答えを返す為、食べる手を一度は止めるが、すぐに料理へと手を戻した。
そんな中、唯一渋い顔していたルイズがキレた。
「だああああ!!なにのんきにご飯なんか食べてんのよ!?私達は任務の帰りなのよ?早く報告をしなきゃいけないの!いい!?聞いてる!?」
「は、はい」
あまりのルイズの剣幕に思わずナツミは背筋を伸ばして話を聞く体制をとり、タバサ、ソルもそれにならう。
「そう思いますよね!?」
「ん、あ、あぁ、そうだね」
剣幕そのままにウェールズへと同意を求めるルイズ。その怒りの権化の様な姿にさしものウェールズも肯定以外の言葉を持っていなかった。
だがそんな怒れるルイズを物ともしない猛者が二人程、存在していた。
青髪の女性とジンガだ。二人はルイズを無視してご飯を食べ進めていた。そんな二人の様子に火に油を注がれたような状態になったルイズは矛先を彼らに向ける。
歴戦の猛者たるジンガの反応を上回る速さで二人の目の前に置かれた料理をルイズは奪い取る。
「だから!話を聞けって言ってるでしょ!?」
「何すんだ!」
「うるさい!!人の話くらい聞きなさいよ!」
歴戦の勇士たるジンガの眼力を真っ向から受けたにも関わらずルイズはジンガに怒鳴り返した。……それはもうスキル・勇猛果敢が発動したかのような堂々としたものだった。
そしてルイズの怒りはジンガにとどまらず青い髪の女性へと向けられる。
「ってか、青いのあんた誰?タバサの知り合い?それにしては服装があれだけど……」
タバサもいまいち素性こそはっきりとはしないが、貴族であることは疑いようがない。
にもかかわらずタバサと一緒に居た女性は、素っ裸にマントを羽織り、腰の部分で蔦を縛るっているというなんともあれな恰好をしているのだ。しかもそのマントはタバサのものときたものだ。
「ん?シルフィードはシルフィードですの」
女性はきょとんとしながらなんでもないことの様に自分の名前を名乗った。女性の名はシルフィード。タバサの使い魔たる風竜と同じ名前だった。
「へぇ、シルフィードは人間の姿になれるんだ~すごいね」
「鬼妖界の獣の中には歳を重ねると人化できる獣が居ると言うが、それと同じようなものか」
もともとシルフィードが喋ることを知っていたナツミとソルは竜が人間の姿になったことに然程も驚かない。それにリィンバウムでは幽霊だの悪魔だのシルフィードすら上回る珍妙な生き物が幾多の世界から召喚されてくるのでその程度ではびくともしないのだ。
だが、生粋のハルケギニア人たるルイズはそうはいかなかった。
「えええええええ!?こ、この人が、シ、シルフィ……ド?」
他の客がいるのも忘れて、いやその前から忘れていたが、ルイズはシルフィードを指さして口をぱくぱくしている。そんな驚くルイズにシルフィードはしまったという顔をした。
「あ、いけない。このことは内緒でしたの!きゅい!おねえさまに怒られるぅ!!!……いたぁい!」
鈍い音とそれに続くシルフィードの呻き声があたりに響く。
鈍い音の正体はいつのまにかタバサに握られていた杖がシルフィードの頭部にめり込む音だった。
「きゅい~痛いのね~!!おねさ、痛っ!きゅいきゅい!」
痛がるシルフィードに何度もタバサは杖を振り下ろす。そのシルフィードのあまりに痛々しい様子にナツミが助け船を出した。
「タバサその辺で許してあげなよ。別に内緒にすることでもないでしょ?」
「ナツミ……あんた本気で言ってるの?」
「?別に確かに最初に喋ったときは驚いたけど……それに喋れるんだから変身したっておかしくないんじゃない?」
「いやいや、すごいおかしいから!喋るくらいだったら使い魔のルーンの効果でそういうのもあるけど……変身するなんて聞いたことないわよ。……説明してもらうわよタバサ」
そう言うなりルイズはタバサにぎろりと視線を向けた。タバサはその視線に首を左右に傾けた後にナツミをじっと見る。そして一人で頷くとぽつりと話し始めた。
「風韻竜」
「ぶっ!」
その言葉にルイズが吹いた。かつてハルケギニアに存在していた最強クラスの強さを誇る幻獣の名が飛び出たことで淑女らしからぬ行動をとってしまったようだ。
「ふ、風韻竜って……」
「……ばれたら大変。だから秘密」
タバサは口元に指を当ててそう呟いた。いつもと違うそのリアクションはクールな彼女を年相応に見せた。
「まだ生き残りが居たのも驚きだが、その風韻竜を使い魔として召喚するとは……余程の使い手なのだな彼女は」
「それを言ったら、ルイズはどうなるんです?」
ルイズが驚いている間、ウェールズとソルがそんな事を話していた。
一騒動はあったものの、その後は静かにテーブルを囲んで食事としゃれ込んでいた。
ルイズはシルフィードが風韻竜だったのがあまりに衝撃的だったのか、任務の報告を早くしなければならないと喚いていたはずなのにそれをすっかり忘れて食事をしていた。
一行がそんな食事タイムを過ごしている中、店の扉の鐘がチリンチリンと鳴り、新たな客が来店してきた。
客はこの店で食事をするお金があるのかも怪しい痩せこけた老婆であった。ボロボロの麻の服を纏い、穴が開いた靴を履いている。
老婆は店の中をきょろきょろと見渡し、ルイズの方を見やると慌てた様子で走り寄ってきた。
「き、貴族様!!」
「な、なに?」
鬼気迫る老婆の声に引き攣った声をルイズは漏らす。老婆はそんなルイズに気付きもせずに更に言葉を続ける。
「貴族様は、も、もしかして森にいるワイバーンの主様でございますか?」
「……えっと」
自分がワイバーンの主でないことと、そのワイバーンのせいで一騒動が起こっていることにルイズは思わず言いよどむ。ナツミが本来なら自分が主と言ってもいいのだがと思いつつもそれはそれで面倒だと考えて助け船を出す。
「どうしてそんな事を、ワイバーンが何かしました?」
「いえ、そうではなくて、実は……」
そう言って老婆は話を切り出した。
「ミノタウロス?」
ルイズ達のテーブルで老婆はとつとつと自分達の村で起こっている事件について語っていた。なんでも老婆が住むエズレ村の近くの洞窟にミノタウロスと呼ばれる牛頭の怪物がつい最近住み着いた上に、若い娘を生贄として寄越すように要求しているのだという。しかも、もしその要求が飲めないようなら、村人すべてを皆殺しにするという。
もちろん村人はそんな要求を飲みたくはない。だが、ミノタウロスは首をはねてもしばらくは動くことができるほどの生命力と巨大なゴーレムに匹敵する怪力を持っており、とても普通の人間が相手にできる存在ではない。
村人も領主に騎士団を派遣するように要請を出してはいたが、一向に重い腰を領主はあげることはなかったそうで、村人たちが方々の町々を訪ねて騎士もしくは貴族にミノタウロスを退治してもらえるように頼み込んでいるという状況だという。
老婆も昨日、この町にたどり着き目に付いた貴族に声をかけたが一向に聞いてはもらえず。途方に暮れていたところにあのワイバーンが現れたというわけだ。もし、ワイバーンが野生のものであれば食い殺されてもおかしくない中、何故老婆はそんな危険を犯してまでも、誰かの使い魔か確認したのか、その理由は……
「実はミノタウロスが最初に生贄に選んだのは……わたしの孫娘なのでございます……」
そう言って老婆は泣き崩れた。
「どうか、貴族様があのワイバーンの主様ならさぞかし腕の立つ方とお見受けいたします、どうかどうか……」
老婆は地べたに頭を擦り付けるまでに下げて必死に懇願する。その様子にナツミが動いた。
「大丈夫よ!おばあさん。あたし達に任せちゃってください!ミノタウロスなんてぽいっとやっつけちゃいますよ!!」
「ああ!俺達にかかりゃあ、そのミノ……?まぁいいや、その化けもんなんて楽勝だぜ!……くぅ腕が鳴るぜ!」
「ミノタウロスな」
ナツミに続きジンガが立ち上がり、指の骨を鳴らしてやる気を見せ、ソルが頭の足らないジンガに突っ込みを入れた。
「やはりあのワイバーンの主様がいらっしゃいましたか!ほ、本当にこの老婆めの頼みを聞いて頂けるのですか!?」
「うん!ワイバーンに……じゃなくて大船に乗ったつもりで期待してください」
「……ナツミ、私達は……言っても無駄か、はぁ」
安請け合いするナツミを咎める様な声色でルイズが呟くが、途中で諦めた。
異世界に召喚され、不良に絡まれ、気付いたらその流れで魔王を倒してしまう程のお人好しのナツミが困った人を放っておけないのに今更ながら気付いたからであった。諦めの色が濃い溜息を語尾に付けつつもその表情はどこか誇らしげであった。
徒歩で三時間もかかる場所にその村はあったが、ワイバーンにかかれば僅かに三十分もかからぬ間に老婆が住む村エズレ村へと一行は到着していた。ちなみにその背にソルとウェールズの姿は無い。あまりウェールズの姿を人前に晒すのは良くないのと、危険なミノタウロス退治にわざわざ突き合わせる理由が無いからだ。
ワイバーンが村の広場に降り立った途端に村は悲鳴に包まれてしまったのはお約束と言えばお約束であった。ミノタウロスに怯える今の村人たちとって、凶暴だと有名なワイバーンが現れれば、無理もらしからない事だろう。
そんな村へ颯爽というか衝撃の到着を見せたが、ワイバーンの背から続々と人が降りてくると野生のワイバーンではないと分かったのか物珍しげに巨大すぎるワイバーンを村人は遠巻きに見つめていた。
「小さな村ね」
ルイズが村を一通り見渡し感想を口にする。エズレ村は領主が見放したのも頷けるほどの小さな寒村と呼ぶに相応しい村であった。ナツミも同じ感想を抱いてはいたが、それよりも気になることがあったので、まずはそちらへと視線を向けた。
「来てくれたのはありがたいけど、タバサは用事とかあるんじゃないの?わざわざガリアまで里帰りしてるんだしさ」
ナツミが声をかけた先には、青き髪を靡かせるメガネっ娘―タバサ―がぼーっと突っ立っている。タバサはナツミへと視線を向けると一言。
「乗りかかった船」
と何の感情も見せずにそう呟いた。そしてそれに続くようにもう一言呟く。
「……それに助けたい」
空気に溶けるように小さく囁いた言葉だったが、風のいたずらかそれがナツミの耳には届く。感情表現こそ不器用で何を考えてるか分からないタバサが見せた優しい言葉を聞き、ナツミはなんやら無性に嬉しくなりタバサの頭を静かに撫でた。
「?」
「なんでもないよ」
不思議そうに自らの頭を撫でるナツミを見上げるタバサに小さくナツミは微笑んだ。
そのまま、頭を撫でつつタバサを促しながら、ワイバーンを物珍しそうに集まってくる村人達の元へと二人は向かった。
村人は老婆―ドミニクと名乗っていた―を囲むように集まっていた。ドミニク婆さんはこれ村人が粗方集まったのを見ると大きな声で救世主の訪れを告げる。
「皆!貴族様を連れてきたよ!」
「貴族ってそのワイバーンの主様かい?」
「ああ!こんな大きなワイバーンを従える立派な貴族様が我らを救いの手を差し伸べてくださるそうじゃ!」
村人はルイズの小さな体躯を見て一度は肩を落とすが、その後ろに控える巨大なワイバーンを見て、人は見た目には寄らないと考えたのか、大きな歓声を上げる。
その中で、ワイバーンの恐ろしさを知らない小さな子供がワイバーンに近づきたそうなのを見て、それに気付いたナツミがワイバーンになにがしかを呟く。
それにワイバーンが小さく一啼きすると、その大きな顔を子供近くまで近づけた。
村人達にどよめきが広がる中、子供がおずおずとワイバーンの顔をちょんちょんと突くが特に暴れもせずに子供の好きにさせているワイバーンを見て村人達が先程よりも大きな歓声をあげた。
「すげぇ!凶暴なワイバーンをあんなに手懐けるなんて!」
「主じゃない人の言うことも聞くなんて……よっぽど貴族様はメイジとして卓越してらっしゃるのね」
メイジとしての実力を見るにはまず使い魔を見よという言葉もある。それが正しいならあの使い魔の主と思われる少女―ルイズ―は、巨大なワイバーンを従えるに相応しいメイジだと村人は考えた。
まさか人間が使い魔で、更にその人間がワイバーンを捕まえているなどと想像する者は村人の中にはいなかった。子供たちはワイバーンが大人しいと分かると我先にと尻尾や翼などペタペタと撫でたり、背に昇ったりと好き放題しているのを尻目に、一行はドミニク婆さんが案内するままに、彼女の家へと向かうのだった。
ドミニク婆さんの家は、村のはずれにあった。土を焼いて固めた壁の、素朴な作りの家であった。ドミニク婆さんが扉を開くと、ナツミと同い年くらいの美しい少女と、母親と思しき女性が二人抱き合いさめざめと泣いているところであった。
「おばあちゃん!」
少女は扉を開けたドミニク婆さんを見るなり、飛び込むように抱きついた。
「ジジ、もう大丈夫だよ。ほら、凄腕のメイジ様を連れてきたからね」
ジジと呼ぶ少女の頭を愛おしそうに撫でると、扉の外へと視線を移し、安心させるようにルイズ達を紹介した。
「まあ!」
ジジは一瞬、ちんまりとしたルイズとタバサを見ると悲しそうに顔を歪めた。それを見たドミニク婆さんがジジを外へと連れ出し、村のはずれのこの家からでも見える広場のワイバーンを見せると安心したように瞳を輝かせた。
「なんて大きいワイバーンなの!」
それに続き母親と思しき女性が、皆の足元に平伏する。
「どうか、どうかこの娘を救ってやってくださいませ!」
一行の返答は既に決まっていた。
その夜……、ルイズ達は村長の家で歓待を受けていた。ジジを始め、ドミニク婆さんが自分の家の娘がミノタウロスに狙われているのだから、自分たちの家で歓待するべきと主張したが、ルイズを含め五人(内一名は風韻竜)もの大所帯を招待できる家はエズレ村では村長の家しかなかった為、急遽村長の家が提供されたのだ。
食料も村人達がおのおのの家から持ち込んだものと、ナツミがワイバーンに頼んで森から調達してもらったイノシシが振る舞われた。これには村人も大いに喜んだと同時に、ミノタウロス退治に更なる希望が見えたと久々の笑顔を見せていた。