おぅ、めでたいなー。でも……あのパックはそこまでいい内容じゃなかったよなー。
「むー、そんなことないよー!新しいエクシーズモンスターやゼンマイとかDT関連のカードとか、色々なカードが出たんだよー」
次に発売されたパック、フォトン・ショックウェーブ にはレスキューラビット、エヴォルカイザー・ラギア、一時休戦、ゼンマイ・ハンター、ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンといった強いカードが多数収録されたんだぞ。それに比べてジェネレーション・フォースは……
「むー、私が収録されたパックをバカにするなー!!」
んなこと言っても、事実だからなー。……さて、そろそろ本編を始めようか。
突然、パチパチと入り口の方から拍手が鳴り響いた。
入り口の方を見てみるとハイ・プリーステスがいた。なんでこいつがここに?
「ランドスターさんもセームベルさんも、素晴らしいデュエルでしたよ」
「あ、ありがとうございます……ところで、どうしてプリーステスさんがここにいるんですか?」
「それはその……グレファーさんにエリアルという女の子を元気付けるようにと頼まれまして。そのエリアルという子はこの建物にいるとうかがったのでこうして参上してみたのですが。ノックをしてみても何もお返事がなかったので、失礼だとは思いましたが、そーと侵入しました。すると、お二人がとても素晴らしいデュエルをしていたので魅入っていました」
そういえば昨日、グレファーがそんなこと言ってたな。
「それであの……エリアルという女の子はどちらにいるのですか?」
「あの部屋の隅で疼くまって……」
そこで俺は気づいた。エリアルが疼くまってないで、セームベルとランドスターをジッと見ているのに。
俺は恐る恐るエリアルのすぐ側まで移動した。
「なぁお前、もしかして……デュエルに興味があるのか?」
「へ?……!!……あ…あ…あぅ…」
エリアルはいきなり話しかけられてビックリしたのか、キョドリだした。
「そ、そんなに怖がるなよ……俺は何もしないからさ」
「え…う…あぅ……」
「もう一度聞くげど、エリアルはデュエルに興味が有るのか?」
エリアルは震えながらだけど、ゆっくりと首を縦に振った。
「そうか……お前の世界にデュエルはあるか?」
「……ない…です……」
「そうか……なら俺がエリアルに、デュエルの事を色々教えてやるよ。まずは……」
俺は30分ぐらいの時間を使って、デュエルの基礎を教えた。
エリアルは賢いのか、すんなりと覚えていった。
そういえば……ベルベルは覚えるのにかなりの時間が掛かったなー。
「えーと…あの……色々教えてくれて…あ、ありがとうございます」
まだ少し固いけど、最初よりは全然マシになったな。
少しずつでも、慣れてくれればいいよな。
「気にすんなって。……それより、エリアルは特にカードは持ってないだろ。俺が好きなカードをやるよ」
「えっ!…そ、それは…悪いですよ」
「気にすんなって。……どんなカードが欲しい?」
「えぅ……あの…私……どんなカードが有るのか…知らない…」
「そういえば、特に教えてなかったなー。うーん…例えば……かっこいいカードとか、可愛いカードとか、怖いカードとか、ふつくしいカードとか色々あるぞ」
「ふつくしいカードって何ー?」
「社長の嫁、ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン」
「何それー」
「強いドラゴン族のモンスターだよ。……でっ、エリアルはどんなカードが欲しい?」
「えっと……じゃあ…あの…かわいいカードがいい…かな…」
「分かった。なら……このカードはどうだ」
俺はハネクリボーのカードを渡した。
因みにこのカードは、サイバネティック・レボリューションで当てたスーパーレアだぜ。
そういえば、この頃はスーパーレアのカードにすらレリーフが有ったよなー。
ああ、あの頃は楽しかったなー。
「…!!…ハネクリボー…か…かわ…いい……」
エリアルはまじまじと見つめて、そう言った。
気に入ってくれたみたいで、良かった。流石、クリボーだな。
「気に入ったみたいだな。なら、そいつに似たカードをやるよ」
クリボー、虹クリボー、といったクリボー系のカードと、クリボー関連のカードをあげた。
ただし、クリボンだけは見せる事もあげる事もしなかった。理由は……分かるだろ。
そういえば、確かもうすぐ発売されるパックに新しいクリボー系のカードが収録されるんだったな。
名前は確か……クリボールだったっけな。あれ欲しいなー。
「良かったねー、エリアルちゃん」
「う、うん……あ、ありがとう…ございます…」
「気にすんなって。どうせ、俺が使わないカードだからさ」
「う〜ん……ねぇ、ライライ〜。そのカードだけだと、デッキは作れないよね〜」
「まぁそうだな。……なぁエリアル、お前はどんな戦術で戦いたい」
「…ど、どんな戦術?…」
「例えば、生贄を中心としたデッキとか、融合を中心としたデッキとか……種族や属性を統一したデッキとか、パワー、デイフェンス、バーン、デッキ破壊、サーチ、ハンデス中心のデッキとか……」
「えっと…じゃあ…あの……儀式がいい…かな…」
なんとなく予想してたとはいえ、儀式を選ぶのか。出来れば、違うのにして欲しかったなー。
「……分かった。ちょっと待ってろよ」
俺はいくつかの儀式モンスターとそのカードの対となる儀式魔法、マンジュ・ゴッドや儀式の準備、儀式魔人といった儀式をサポートするカードなどを渡した。
因みにこの頃はマンジュ・ゴッドになんの制限も掛かってなかったから、3枚もあげちまったよ。
「あ、ありがとう…ございます……み、未来さん…」
エリアル、始めて名前を呼んでくれたな……へへ、スゲー嬉しいぜ。
「サクリファイス…か……」
「んっ……どうしたプノ?」
「ん〜、別に何でもないよ〜。あははは〜」
はぐらかされたな。ホント、こいつはたまに、何考えてるんだか分かんねーな。
……まぁ、それがプノか。
「ふふふ。どうやら私の出る幕はなかったみたいですね。……ですが本来、命を賭けたデュエルの道具であるカードで、人の心を開き笑顔にするなんて……未来さんは素晴らしいお方ですね」
…………はっ!べ、別にハイ・プリーステスに褒められても嬉しくないんだからね!勘違いしないでよ!
あれからエリアルは20分ぐらいの時間を使って、デッキを完成させた。
さて、エリアルとの関係も多少良好になったし、そろそろ気になってることを聞いてみるか。
「なぁエリアル……一つ聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「えっ!…な、なんですか?」
「エリアルの世界は一体どんな世界なんだ?」
「わ、私の世界…」
「それは私も気になるかな〜。デュエルが無い世界が、一体どんな世界なのか気になってたんだ〜」
「確かに、私も気になる」
「僕も知りたいです」
「僭越ながら、私も知りたいです」
皆んな、やっぱりエリアルの世界がどんな世界だか気になってたんだな。
「わ、分かったよ。…え、えっと……私の世界は…いくつかの部族に別れてるの」
「いくつかの部族ですか……それはあの、戦士族や魔法使い族といった種族の事ですか?」
「うーん…ちょっと違うかな。…私の部族は絶対零度の地域、氷結界で暮らしてるから氷結界の一族って呼ばれているの」
氷結界だと……どういう事だ? エリアルはリチュアに所属してたはずだ。
考えられる可能性はいくつかある。
ワームが侵略して来なかった。
氷結界がトリシューラを復活させなかった。
ノエリアがエリアルを養子として引き取らなかった。
それ以前にノエリアがヴェルズの思念に取り憑かれなかった可能性もある。
だが、エリアルが儀水鏡を持っているから、どれも可能性としては低い。
やっぱり、儀水鏡の事も聞いてみるしかないよな。
「ひょ、氷結界ですか……私、その様な部族は聞いたことがありません」
「えっと、氷結界はね…3体の氷の龍を信仰していて、その龍を封印している氷結界を守護している一族なの」
ちゅーか、ハイ・プリーステスとは普通に会話出来るんだな。……少しショックだ。
いや、きっと優しそうな女姓だからだ! 俺やグレファーは男だからな、うん。
「ふーん……ねぇ、他にはどんな部族がいるの〜」
プノに先を越された! ……でも、その質問は俺も気になる。
出てくる部族によって、エリアルの世界は今どんな状況だか分かるかもしれないからな。
「えっと……ガスタ、ミストバレー、ドラグニティ、ジェラック、ラヴァル、フレイムベル、ジェムナイト、Xセイバー、ナチュル……あと一応、ジェネクスも入るのかな?」
「ふーん、そうなんだ〜」
今の話を聞いた限りだと、本当にワームが侵略して来なかった可能性が高いな。
何故なら、ジェラックはワームの侵略がトリガーとなって、魔轟神の侵攻を受けて絶滅したからだ。
もっとも、エリアルが嘘を言ってる可能性もあるが、俺はエリアルを信じる。
まぁ、どちらにしろ、儀水鏡の事を聞いてみるか。
「なぁエリアル、その鏡が付いてる魔法の杖は何なんだ?」
「あっ、私もそれ気になるー」
「えっ…これ?…これは…リチュアの儀水鏡だよ…まぁこれは、模造品なんだけどね…」
「りちあの儀水鏡……なーにそれー?」
「この儀水鏡を使う事で、リチュアの儀式術を行う事が出来の。…リチュアの儀式術は…術者に自己催眠を掛ける事によって…異界の精神を降臨させて…術者を肉体的…精神的に変異させる術なの……それでね…変異した術者の事はイビリチュアって呼ばれているの」
「ふーん、そうなんだ〜」
「その様な儀式術があったんですね」
「んー、どうゆうことー?私よく分からなかったよー」
「僕も全然、分からなかったです」
うーむ……リチュアの儀式術は存在するみたいだ。だがリチュアという部族は存在していない。
何がどうなってんだ?まだまだ分かんない事だらけだなー。
次は……ナタリアの事でも聞いてみるか?いやでも、なんて聞けばいいんだ?
まさか「ナタリアは生きてるかー?」なんて聞けないし。うーん…どうしようかなー?
「ねぇ、アルルンもリチュアの儀式術は出来るの〜?」
いや、儀水鏡を持ってるって事はどう考えても出来るからだろ。
「わ、私!? 私は……
「……こ、これ…全部…わ、私がやったの!?……う、嘘だよね…ノエリアさん……」
「……私は出来ないよ……落ちこぼれだから……」
……明らかに嘘だな。なんだ?儀式術で何か嫌な事でも有ったのか?
リチュアの儀式術に失敗したとか? いや、もしかしたら魚と合体するのが嫌になったのか。アレはないよなー。
ま、まさか、エミリアが儀式術に失敗して死んだとか。
うーむ……分からん。
「そうなんだ〜。……なんだか気にしてる事を聞いちゃったみたいで、ごめんね〜」
「だ、大丈夫だよ…全然気にしてないから……私こそ、必死で励ましてくれてたプノちゃんとセームベルちゃんを無視して…ごめんね…」
「別に私は気にしてないよ〜」
「私も気にしてないよ。…そんな事より…ねぇエリアルちゃん、折角だし私とデュエルしない」
「えっ!…わ、私と?」
「うん!」
おいおいセームベルのヤツ、唐突だな。エリアルもかなり戸惑ってるぞ。
「わ、私まだ…デッキが完成したばかりだよ。それに…デュエルのルールだって、しっかりとは理解はしてないよ」
「大丈夫だよ。私もデッキを作ってすぐにデュエルしたから。それにたくさんデュエルをすれば、自然とルールは覚えられるよ」
それはどうかな!遊戯王のルールを、始めたばかりの初心者が全て理解するなんて不可能だ。
タイミングを逃すとか、墓地に送ると捨てるは違うとかいったコンマイ語。あれを全て理解するのは簡単じゃない。
というか俺すらちゃんとは理解出来てない。
何十年もデュエルをやって来た俺すらも、いやそれ以前にコンマイすらルールが分かってないとか、どう考えてもおかしいだろ!
何でこう複雑になっちまったのかねー。
……いや、昔からか。飛行能力とか、30%攻撃力アップ+先制攻撃とか、月に向かって攻撃よとか言ったもん勝ちだったからなー。
「え、えっと……わ、分かったよ。…しょ、勝負にはならないと思うけど…やってみるよ」
「そう来なくちゃね! じゃあ、すぐにやろう!」
セームベルとエリアルはテーブルに移動した。
「セームベルさんは本当にデュエルが好きみたいだねー」
「そうだね〜」
「お二人のデュエルは、どの様なデュエルになるのでしょうね」
「デュエル!!」
「でゅ……デュエル!?」
「もー、ちゃんと合わせてよー!」
「ご…ごめんね…」
とある異世界
「エリアル……どこいっちゃったんだろ……」
「だから言っただろ。外の世界に旅立ったんだよきっとな……アイツの妹みたいにな」
「エリアルはそんな事する子じゃないよ!アバンスだって知ってるでしょ!」
「どうかな……俺は全然あいつの事を知らない。エミリアだってそうだろ」
「そ、それは……で、でも!」
「それに、あいつは最近、俺たちの事を避けてた」
「それは…あのことで負い目を感じていたから……」
「だからこれ以上、俺たちに迷惑を掛けたくなかったから、ひっそりと出て行ったんだろう」
「うぅーー……アバンスのバカァー!!」
「あっ!ま、待てよ、エミリア!…チッ……俺だって本当は心配してんだよ。…どこ行ったんだよ…エリアル」
きょ、今日の最強カードはハネクリボー。
光属で天使族…レベルは1…攻撃力300…守備力は200。
効果モンスターで、破壊されて墓地へ送られた時にターン終了時まで、自分が受ける戦闘ダメージを全て0にする効果を持ってるよ。
皆んな知ってると思うけど…十代さんの相棒でもあるんだよ。
これからよろしくね…ハネクリボー。
なぁライズベルト。夢に魂喰らいが出てきて、「もっと出番くれー」って言ってきたんたんだけど。どうしたもんかねー。
「いや、知らねーよ。というか夢に魂喰らいが出て来るとか、お前魂喰らい好き過ぎだろ!」
当たり前だろ、俺が始めて手に入れたカードなんだから!どんなにボロボロでも、曲がってても、端が欠けてても、俺にとって掛け替えのないカードなんだよ!
へへへ、見てろよ。次のセームベルとエリアルのデュエルで大活躍させるからな……多分。
「多分かよ!いい加減なヤツだな!」
因みに俺はアニメみたいに儀式を冷遇するつもりは無い。これからどんどん使って行くぞ!
儀式だけじゃないぞ!デュアルやユニオン、スピリットとかもいずれ出す予定だぜ!
それでは次回の投稿をお楽しみに。
「因みに〜。私、ピュプノシスターが収録されたパック、ザ・デュエリストアドベントが発売されたのは4月19日(2014)だよ〜。じゃーね〜」