その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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まだ序章辺りだってのにエクゼイドの話の展開が早すぎると感じたのは自分だけですかね?

あとスナイプLv50…うん。完全にアレですね。




 

 

【あ、今チーム・グレーオータムがようやくリング内に姿を見せました!!】

 

 

 

「セーフ!いやーギリギリだったみたいだね、悠兄さん。」

 

「あぁ、流石に初戦黒星、不戦勝は計画がパァーになる。」

 

 

黒猫と共にいた場所からかなり離れた位置に居た為にほぼ全力で走った悠と秋。リング上には既に対戦相手であるチーム・源氏物語。偉人クローンの源 義経と那須 与一が待ち構えていた。

 

「む?やっと来たか!このまま来ずに終わってしまうのかと、心配したぞ!!」

 

「いや、普通心配しねえだろ。むしろラクに勝てて儲けモンだろう…。」

 

「それはいかんぞ与一!戦わずして得る勝利など、武士として何の喜びも味わえない!!」

 

「いや、だから…ハア、もうイイ…。」

 

「アレ?対戦相手アイツ等だったか。」

 

「急いでて見るヒマ無かったからね。ちょっと厳しい?」

 

「…いや、そうでもない…Aプランで行くぞ。早く終わらせる。」

 

「その後に猫探しね、了解。サクっと決めよう。」

 

リング内が光に包まれ森林になると同時に二人は戦闘態勢に入る。

 

悠は黒の細剣をズボンのベルトに差し、秋は懐から取り出したのは十センチ程の長さの銀の筒。筒の端を右に回すと逆の端から両刃の刃がとび出すと一気に筒が伸び始め一本の槍となった。

 

「なんと!?そのような仕込み武器、義経は初めて見たぞ!!」

 

「へへッ、イイでしょこれ?特別製だぜ。」

 

(九鬼でも見た事の無いタイプの武器だと?…こいつ等やっぱり、組織の一味、いや、仮面ライダーの可能性が…!?)

 

義経と与一は秋の持つ槍に目を点にして驚いていたが、秋の持つ槍は悠がこの大会の為と今後の護身用武器として手掛け渡したモノである。余談であるが、秋同様に悠手製の護身用武器はハルナやラ・フォリアにもそれぞれ渡されている。

 

 

【さあ、両者準備が整った所で、試合…開始ーーッ!】

 

 

鳴り響くブザーの音と共に秋は瞬時に動き、悠は剣を抜刀。そして地面スレスレに下からすくい上げる様に…。

 

 

「セァアッ!!」

 

 

ーゴオォォッ!!ー

 

 

「ッ!?クッ!!」

 

「ぬおッ!?」

 

 

【おーっと灰原選手開始早々先手を打ったーーッ!】

 

 

振り抜いた剣は一種の衝撃波に近い風を生み出し巻き上げた土から出た土煙と共に義経と与一の不意を突いた。

 

 

【灰原選手、今大会今まで抜かなかった剣を遂に抜いた!川神さん、今の技はどう見ますか!?】

 

【恐らく攻撃より撹乱がメインで放った一撃だろう。見てみろ。フィールドの地面が土だから土煙で視界が悪くなった。おまけにグレーオータムの姿が消えたとなると奇襲を仕掛けに行くだろう。…しかしそれより気になるのが。】

 

【?今の灰原選手に何か可笑しな所が?】

 

【今の衝撃波…あそこまで強力なのに関わらず、気が一切感じられなかった。それどころか灰原には気の流れも一切感じられない。それなのにあのような技を放てる等、一般的に考えて可笑しい…。】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──選手控室──

 

モニター越しで試合をみている風間ファミリーの面々は悠が放った技を見て一子がいち早く反応を示した。

 

「アレって……決闘の時アタシが受けたヤツだ…!」

 

「ワン子の不意を突かせたヤツか…。待てよ。良く考えたら可笑しいぞ?灰原のヤツは気が使えない筈だ。なのにどうやってあそこまでの衝撃波を…?」

 

「いや、アレは気が有ろうと無かろうと放てる技だよ。」

 

「それって、どういう事?」

 

大和の疑問に答える様に口を出したゼノヴィアに全員の視線が集まる。

 

「剣術に長けた猛者なら己の気迫を剣に載せてああいった風に形として放てるんだ。実際私が前に居た教会の戦士にそれと同じ事が出来るのが居たからな。」

 

「…でも待って。それってよくよく考えたら結構難しい芸当じゃない?モモ先輩はともかく気を使ってあれ程のを放つとなると…。」

 

「京さんの言う通りです。私の父も同様の技を放てますが、気とは違い気迫を剣に載せて放つのに相当の時間有したと聞いてます。」

 

「まゆっちの父親…あの剣聖ですら!?」

 

あまりにも高等な技術に驚愕する大和を余所に、ゼノヴィアは画面越しに土煙の中に隠れてるであろう悠に対し…。

 

(秘匿主義のキミがここまで大きく動いてると言う事は、何か考えがあっての行動だろう。なら私がここまで話しを大きくするのもキミにとっては好都合、という事なんだろうな。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──隙有りィ!」

 

「ッ!危ない与一!!」

 

突然の先制攻撃から大きく出鼻を挫かれた義経と与一。そんな二人の元に俊足と言える速さで槍を突き出しに行く秋。

いち早く気付いた義経(気付いたと言っても掛け声をかけたから自然と気付く)は与一の前に立ち秋の槍を捌く。

 

「おっと残念。さっきので決めるつもりだったけど。」

 

「この程度では義経達はやられんぞ!!いざ尋常に、勝負!!」

 

「へッ!上等!!」

 

両者が獲物を構え、俊敏に動き回りながら刀と槍がぶつかり合う。

義経の速さもさることながら秋も長物である槍を扱いながら木々の間を潜っては巧みに扱い回し義経と互角の勝負をしていた。

 

「…このオレを忘れんじゃねえよ。」

 

森を駆けながら義経と打ち合ってる秋に向けて与一が矢を向ける。

 

与一からしたら気乗りしない行事であるこの大会だが黙って義経の足手纏いになるつもりは毛頭なかった。静かに矢を向ける獲物はかなりの速さで動いてるが与一の目からすれば先読みして必中させる事は容易であった。

 

「射抜け我が…ッ!」

 

だがそう簡単にいく相手では無かったと、後になって自分を責める羽目になる。背後から自分に掛かってる影に気付くまで。

 

「チィ…!」

 

「──シッ!!」

 

矢を放つのを止め飛び退いて回避する与一が立ってた場所には勢いよく振り下ろされた悠の右足。

 

受け身を取って即座に狙いを定め矢を放つ。飛んで来た矢に悠は最小限の動きで矢を躱した。即座に弓を向けながら悠に矢を構える与一。これで状況は一対一となる。

 

「二対二だって事忘れないでよ。」

 

「チッ…厄介だな…。」

 

 

 

 

【灰原選手と那須選手が向かい合った!!そして一方では源選手と桜井選手が森を縦横無尽に駆けながら互角の打ち合い!!激戦を繰り広げてます!!!】

 

 

 

実況も交えた勝負の展開は観客の声援をより盛大に盛り上げるのには十分なものであった。

 

特に目を引いているのが義経と秋だ。義経は常日頃から決闘を受けているのもあってその実力は過去の偉人の技を受け継いだと言われるほどの実力者である事は学園の殆どの生徒が知っている事だ。

 

だが武神を除いてそれと互角に渡り合う者など今まで居なかった。それはそうだろう。なにせ今戦っている相手は仮にも日頃から命を賭けた戦いをしている人間なのだ…。

 

 

 

 

 

 

「ハァアッ!!」

 

「のわァッ!?っと…ソォウㇻァ!!」

 

 

義経の上段を槍を前にして防ぎ、力押しに相手を跳ね除けて互いに距離を空ける。

 

長く動き回りながら打ち合ってた所為か肩で息をする義経に対し秋も息が上がってたが義経程呼吸が乱れてる様子は無かった。

 

「ハァ、ハァ…スゴイなキミは。そこまで速く動けて尚、的確に突いて来るなんて。」

 

「まぁね。教えた先生がスパルタだってのもあるけど、速さはオレの売りなもんで。」

 

「ほう。キミもそうだがその先生というのも凄いのだな!義経は一度会ってみたいぞ!!」

 

「あぁ、そう……まぁ、機会が有れば、会えるんじゃね?」

 

「うむ!!」

 

(どうしよ、見たカンジあの子純粋そうだし。あの天龍型の怖い人に会わせてもいいのかな~?)

 

秋は内心、長物の扱いに長けている龍田とのマンツーマンレッスンの事を思い出し、その際に向こうが本気で切り掛かろうとした際に言って来たあの言葉とあの笑顔が脳裏に浮かび上がる。

 

 

 

 

──知ってる秋君?人間って追い込めば追い込む程、ウソみたいに火事場の力を発揮するのよ~?フフフ…。──

 

 

 

 

 

「ど、どうした!?急に顔が青くなって震えているぞ!病気なのか!?」

 

「ああ…ある意味病気植え付けられたよ!!……とにかく掛かってこいやァアアアァアァア!!!!」

 

「ムムッ!?」

 

先程と打って変わり強行的に向かって行く秋を目に義経は尻込みながらも応戦していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──奔れ!」

 

「おぅっと。」

 

場面は変わり悠と与一の一戦。下がりながら矢を射る手を止めはしない与一の正確で早い矢の攻撃を悠は与一を追い掛けながら最小限の回避をしながら間を詰めに行っている。

 

走る足を止めず身を捻って回避する悠を見て与一は一本一本放つのでは埒が明かないと察し、攻め手を変える。

矢筒から取り出した矢の矢尻についてる羽の一部をむしり取る。そして向かって来る悠に放った。

 

(──胸か。)

 

放たれた矢の軌道から狙われた個所を即時に特定。そして上体を捻って矢を回避、する筈だった。

 

「ッ!」

 

胸の辺りに真っ直ぐ向かっていた矢が急遽意志を持ったかのようにその軌道を変え始めたのだ。

跳ねる様に上向きに変えた軌道は悠の額目掛けて矢が当たらんとした時、悠の足が止まった。

 

「何ッ!?」

 

「…フゥ。」

 

与一は悠の足を止める事が出来たが、細工を施した矢は高く上にあげた右腕に掴まれていた。

 

「あっぶな。…今のヒヤッとしたよ。」

 

「あのタイミングで掴むのかよ…。お前本当に何者なんだよ?」

 

「最近そういう質問が多いなぁ。ただの高校生だって。」

 

「信用出来るか!ただの高校生が武神を前にあんな事出来る訳ねえだろ!!」

 

「う~ん、そうは言ってもねぇ。…ならこの試合が終わったら何でも聞いてご覧よ。控室で言ったの聞いてただろ?満足するまで出来る限りの質問に答えるさ。」

 

「…あぁそうかよ。ならそうさせてもらうぜ。テメェを射抜いた後でな。」

 

「ふ~ん…やってみなよ。」

 

軽く跳んでステップを刻みながら挑発する悠に対し与一は矢を放とうとした時であった。

突然与一の横から義経が吹き飛ばされ与一はすぐさま義経の傍に駆け寄る。そしてそれを傍観してる悠の隣に険しい表情で槍を構える秋がやって来た。

 

「オイ!大丈夫か!?一体何があった!?」

 

「グッ!…与一、トラウマと言うのは凄まじいものだな。あのように鬼へと豹変させるものだなんて、義経は初めて知ったぞ…!」

 

「何言ってんだ…?」

 

「どーしたよ、珍しい顔しちゃってさ。」

 

「悠兄さん…オレは、オレは呪われた過去を振り切ってやるぜ!!」

 

「…何言ってんだお前?」

 

相方の理解できない説明に対し首を傾げる二人だが試合中だと言う事を忘れてなかった為に二対二の場面となって相対しだした。

 

「与一。一対一で勝ちに行くのは難しい。ここは二人で行こう。」

 

「あぁ。オレは後ろから援護する。」

 

「悠兄さん。いい加減決めに行こうぜ。」

 

「そうだな。思いのほか時間が掛かり過ぎだ。」

 

方針を決め、息を整えて刀を構える義経の後ろで矢を構える与一達と、腰に差してた剣を抜く悠と特攻を仕掛ける構えをする秋。

 

そして、先に動き出したのは…。

 

「…行くぞ!」

 

「オッケイ!」

 

動いたのは悠達、グレイオータムだった。悠が先導して駆け出し、秋がその後ろに付いていってる。

 

「与一!」

 

「分かってる!!」

 

対する源氏物語も動き出す。与一の後方援護を貰いながら今日一番の瞬発力を活かし、悠目掛けて特攻。

 

(あの二人を倒すのは難しい…でも一人、一人倒してしまえば…!)

 

刀の切っ先を向けながら駆ける義経の先には与一の矢を切り落としながら走る悠に目をやる。

 

この大会の勝敗は、”相手チーム一人倒せば勝利”というルール。

相手は予選でやり合ったチームと比べ各上の実力者。とても一対一で簡単に倒せる相手ではないと先程直に思い知らされた。

だが今好機と言わんばかりに相手チームは狙いを一人に向けられる陣形を取っている。

 

(後ろの彼が前に出る前に、与一の矢で出来た隙を…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(──俺を叩く。どうせそう考えているのだろう?)

 

十七本目となる矢を切り落としながら悠は相手方の動きを察していた。

 

(君みたいな直情型のタイプの考えは直ぐ分かるよ。一人倒せばいい。確かにベストな答えだ。──だが生憎。)

 

 

ービュンッ!ー

 

 

「ッ!?」

 

【なんと!?灰原選手、剣を投げたーーー!?】

 

悠は手にした剣を投降。だが剣は義経では無く、丁度二人の間の地面に突き刺さったのだ。

 

この異様な行動に義経は目を点にしてしまう。予選の時に剣を投げた場面を見たがあれは相手チームの剣であって手元に無くとも困らないのは承知だが、状況で自らの武器を投げ捨てる行為など自滅行為に近い。

 

だがそれに何時までも長く動揺してる訳にはいかない。むしろ悠が丸腰になった事で自分達の勝機がさらに上がった事に義経は勝機を見出し、刀を突き出そうと剣を引いた時だった。

 

「──フッ!」

 

互いの距離が十メートルを切った所で悠が大きく動き出す。

 

充分に助走をつけて跳び上がる先は、先程投げた悠の剣。柄頭を足場に更に跳び、義経の頭上を越えたのだった。

 

「なんと!?」

 

投げた剣は自身に当てる為でなく足場にする為に投げた悠の狙いは後ろに居る与一だった。

 

(此方は一人では無く、二人倒すのを課題にしてるんでね。)

 

「ウオリャァッ!!」

 

「チィッ!」

 

空中で一回転して右足を突き出す悠に矢を放つ与一だが、放たれた矢は悉く素手で掴み取られ最終的に悠の飛び蹴りを喰らい吹き飛ばされた。

 

そして悠の後ろに付いてた秋も、悠が跳んだと同時にギアを上げ更に速くなる。自身も槍と化す様に突き出した槍は義経の反応速度を超える程の速さに義経は先程の光景による硬直が解けてなかった。

 

「セァアッ!!」

 

「うわぁッ!!」

 

凄まじい速さに反応出来ず義経は秋の突きを喰らい、与一同様吹き飛ばされる。

 

倒れ込む源氏物語。試合は誰が見ても一目瞭然であった。

 

【源氏物語ダウンーーーッ!!勝者、チームグレーオータム!!】

 

「グッ……フゥ…。」

 

湧き上がる歓声のなか蹴られた個所を抑え上体を起こす与一の前に手が差し伸べられる。それは決定打を味合わせられた張本人である悠の手だと知った時は、差しのべられた手を払い退け苦しみながらも自力で立ち上がった。

 

「フゥ…お前、無茶苦茶だな。」

 

「戦い方は人それぞれだろう?」

 

「フン…それよりもさっきの話し…。」

 

「あぁ。ちゃんと守るよ。でも後日って事でイイ?この後急用が合ってね。」

 

「…いいだろう。」

 

与一から了承を得た後早速急用を済ませようと秋に呼び掛けるが当の秋も倒れた義経に手を差し伸べ、義経は与一とは逆にその手に掴まって立ち上がった。

 

「大丈夫?結構思いっきりやっちゃったけど?」

 

「うむ。この位へっちゃらだ。それにしても本当に速いなキミは!最後のは義経も感服する程だったぞ!」

 

「そっちこそ純粋な剣術だったら感服モンだよ!普通にやってたらオレの方が危なかったぜ?…あ、すんません一個上の先輩に結構タメ口聞いちゃって…。」

 

「そんな事ないぞ!義経はそういう事は抜きに皆と仲良くしたいと思っているから好きに呼んでくれて構わないぞ!」

 

「そうっすか?…ならお言葉に甘えて…。」

 

「秋。俺達急いでるって事忘れてない?ん?」

 

「おっとそうだった!ゴメンオレ達は此処で!あ、あとナイスファイト!!」

 

「うむ!キミ達も次の試合義経達の分まで頑張ってくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。場所は変わり何処かの資料室の様な室内。明かりが点いておらず薄暗い印象の室内を唯一照らしてるのは大画面のモニター。今行ってる若獅子トーナメントの試合が中継されてる映像であった。

 

そんな室内に中継の音声以外に聞こえる足音。モニターを前に椅子に座って見ている高齢の女性の背後に燕尾服姿の男性が姿を現わす。

 

「鑑賞中の所失礼します。」

 

「クラウディオか。何かあったのかい?」

 

「はい。例のプロジェクトの件で。」

 

「分かった。今行くよ。」

 

女性は傍に置かれた紙束の資料を手に資料室を出る。長い通路を歩きながら背後を歩く男性、クラウディオが声を掛ける。

 

「…残念でしたね。義経様と与一様は。」

 

「そうだねぇ。絶対負けないとは言わないが、あんな負け方をするのは少し予想外だったよ…時にクラウディオ。例の候補組に二人ほど追加したいんだが。」

 

「義経様達に勝った、グレイオータムの二人ですか?」

 

「あぁ。あんな男に頼るのは少し癪だが完成の目途が立った今、残る問題はそれを使いこなす実力者さ。だから武神を倒すついでにこんな大舞台を用意したんじゃないかい。」

 

「かしこまりました。でしたらリストに加えておきます。」

 

長い通路を歩き辿り着いたエレベーターホールで紙束の資料を眺める女性、マープルはボソっと呟く。

 

「…全く、我ながらとんだ企画を任されたもんだよ。」

 

TOP SECRETと言う文字の表紙の設計図を見ながらやって来たエレベーターに乗り込む二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい!猫ちゃんやーい!どこいったーー?」

 

「…お前流石にゴミ箱の中は無いだろ。」

 

「そういう悠兄さんこそ自販機の裏は無いんじゃない?」

 

「猫は狭い所が好きと聞くからな。もしかしたらいるんじゃないかと…。」

 

「いや、それ狭すぎだから。」

 

 

 

結局二時間かけて探したが、一向に見つけられなかった悠達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぅむ。」

 

自らの書斎の中で大臣は一枚の写真を眺めていた。

 

キング、小金井 竜二の死から大分経った今、とある疑問にぶつかっている最中であった。

 

「…コレ、何でしょうねぇ…。」

 

手にしてる写真はとある衛星からゴルドドライブがハッキングして得た画像。写しだされてる内容のモノは竜二が悠に倒された場所から少し離れたビルの屋上の画像。

屋上に立っているのは黒いローブを全身に掛けている者と何故かピンボケしたようにはっきり映し出されてないが人がそこに居るモノだった。

 

(キングが彼に負けたと言うのなら、それはそれで納得出来る。だが、問題はどうして彼がインベス化したのか?

私にはそれがどうも引っ掛かる…。)

 

こうして次第に疑問が湧き上がりドクターに頼んで当時の監視カメラ、衛星カメラまでハッキングしてもらい得たのがこの一枚。大臣の目から写しだされてるアンノウンのこの二人が関連してるのではないか?と思考を働かせるなか手元に置かれてる水晶が光り出した。

 

【マスター?チョットイイカシラ?】

 

「セイレーンですか…すみませんが今一人で考えた事があるので暫く連絡は…。」

 

【ソレナンダケド、事ニヨッテハ早急ニ耳ニ入レル必要ガアル位ノ事態ナノダケドモ…。】

 

「…言って御覧なさい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~~~~ん。」

 

そして今大臣が注目してる黒ローブの男は、夜空のビルの屋上で大の字になって寝転びながら不満げな呻き声を上げていた。

 

「な~~~んか最近つまらないなぁ。一人死んだから盛り上がると思ったけど、ぜぇーん然だし!ヒマだなぁ~~~……あ、そうだ!!」

 

ガバっと起き上がったローブの男は何か思いついたのか懐を弄りながら声を弾ませる。

 

「すっかり忘れてたよ~。向こうからくすねて来たアレは~~?…っと、あったあった!」

 

取り出したのは何処か一昔前のゲームカセットを思わせるアイテムが複数。だがそのパッケージには何も描かれておらず黒一色だった。

 

「デカい花火を上げるにはまず火を点けなきゃ♪…でもまずはコレを使える様にしなきゃいけないから…フフッ、ラストステージまでは観客として楽しもうと思ったけど、やっぱ色々動かなきゃね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な暗躍が影で動いてるなか、帰宅した悠達にある災いが訪れていた。

 

 

それは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ダメ。全ッ然動かない。壊れてる。」

 

「マジ!?オレ今日メッチャ汗かいたのに~!」

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!!ごめんなさい!!!」

 

浴室の温度調節メーターを前に色々弄り一向に動かない事に壊れてる事を告げる悠に、扉から顔覗かせる秋達三人と頭を何度も下げる五月雨。

 

事の顛末を簡潔に述べるとこうである。

 

 

今日の待機当番に五月雨が居る。

 

      ↓

 

何も起きないのでちょっとした気遣いでお風呂でも用意しようと浴室へ

 

      ↓

 

洗おうとした時に躓いてメーターに思い切り頭ぶつけた

 

 

そして、今に至る訳である。

 

 

 

「灰原君直せないの?」

 

「うーん。…こういう分野は初めてだしどう言った風に壊れてるか分からないからなぁ…。時間掛かりそうとだけ。」

 

「それは困りましたね。」

 

「ごめんなさい!本当にごめんなさい!!」

 

「まぁまぁ落ち着きなよ別に誰も五月雨ちゃんを責めて、へぶッ!?」

 

「あぁ!!秋さん大丈夫ですか!?」

 

下げた頭を上げた際に顎に当たってしまい悶絶する秋を余所に、ラ・フォリアがある提案を出す。

 

「そうだ!なんでしたらこれから皆で新しく出来た健康ランドに行きません?この間チラシに割引クーポンが載っていたので。」

 

「いいじゃんソレ!!ナイス、ラ・フォリアちゃん!」

 

「そうねぇ、私もお風呂入れないってのはアレだから…。」

 

「…まぁいいんじゃない?行って来なさいよお前等。」

 

「アラ?悠は行かないんですか?」

 

「俺は別に汗流せれば冷水でもいいし、コレ速く直す方が…。」

 

「あの、それでしたら私明石さんを呼んだんで、早ければ悠さん達が帰って来る頃には直ってるんじゃないかと…。」

 

「ナイス五月雨ちゃん!てなわけで四人で行こうぜ、それによく言うだろ?”風呂は命の洗濯だ”って。」

 

「聞いた事ねぇよ、んな言葉。……ハァ、イイよ行くよ行きますよ。だから全員そんな目で見んなよ。」

 

「よし!なら早速行こうぜ!替えのパンツ取って来る!」

 

「楽しみですねえ、混浴風呂ありますかね?」

 

「いや、それは無いわよ流石に。」

 

「…呑気で良いなぁ、アイツ等。」

 

そう言いながらもサウナで一汗搔いた後にマッサージ、等と考えてた悠だった。

 

 

 

 

 


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