あけましておめでとうございます!8日も過ぎたけど…。
今年も忙しくても頑張って投稿続けて行く所存ですので皆様、応援よろしくお願いします!
街で暴れてるインベスの群れを駆除して行く艦娘達。
怪人を相手に想定した訓練の成果と相手しているのが初級インベスなのもあって幾人か小破したのがいるものの駆除作業は順調とも言えた。だがここでインベス達が予想外の行動を起こす。
「ギィィイイィィッ!!!」
「ギュァアアァァッ!!!」
「な、何ッ!?」
「インベスが…逃げてく?」
今まで破壊行動や艦娘達に抗ってたインベス達が突然何かに反応したように昆虫の様な羽を出して何処かへ飛び去ったのだ。
空へ逃げ去ってくインベスを撃ち落とそうとするも既に砲撃の射程外にまで飛び去っていったインベス。飛び去ったインベスの後を見上げる阿賀野型姉妹、古鷹型姉妹と朝潮型の朝潮、大潮、満潮、荒潮は突然の事に呆然としてしまう。
「ぴゃー…行っちゃった…。」
「…なあこれって…アタシ達の勝利?なら帰って寝ても良い?」
「加古、冗談でもそんな事言わないの。もう。」
「どうします矢矧さん?」
「そうね…とりあえず通信で他の状況を聞いてみるわ。その間に皆は補給と周囲の警戒を。」
「は~い。いや~、久しぶりに本気出したからお腹ペコペコ~。」
「阿賀野姉は何時もお腹ペコペコでしょ。」
「あ~。それよりも眠い。…ねぇ、寝ても良い?」
「加古!!」
「…なんか、全然緊張感の無い面子ね…。」
「そうかしら~?私的には余裕があっていいと思うけど~?」
「だからと言って油断はいけません!こう言う時こそ敵は油断を突いて来ると朝潮は教わりました!」
「…油断大敵。」
「ぴゃ~。朝潮ちゃん。それ誰から教えて貰ったの?」
「悠さんです!戦術についてのアドバイスを求めた際に、教わりました!”勝った気分程、隙が見えやすいから気を付けろ”って。」
「へぇ。そう言って来るって事は、アイツそれで痛い目を見たのね。」
「いえ、”若い頃よく自分が使ったやり方”と言ってましたよ。」
「そっち!?」
「あらら~。」
「Zzzz…。」
「ああ!寝ちゃダメだって加古~!!」
「ん~♪動いた後のオヤツは一味違うな~♪」
「阿賀野姉!まだ終わって無いのにそんな食べないで!!ただでさえお腹回り増えたのにまた太るよ!?」
「んなッ!?べ、別に太ってないもん!これはアレ……ふくよかになっただけだもん!!」
「それを太ってるって言うんでしょう!?」
「…カオス。」
「ぴゃ~…みんな楽しそう~。」
「えぇ……え?それ本当!?」
所々騒いでるなか、本部となってるラボと通信してる矢矧に各部隊の状況を聞き予想外の展開に声を上げてた。
「お姉ちゃんどうしたの?」
「…各部隊からの連絡だと、何処の部隊からもインベスが突然逃げて行ったって来たわ。
でも向こうからの連絡じゃ、インベスは逃げてるじゃなくてある一点を目指してるって。」
「ある一点って…?」
「…丁度彼等が戦ってる所よ。」
「彼等って…悠さんですか?……もしかして!」
「そういう事になるわね。他の部隊は皆そこに行ってるらしいわ。私達も準備が整い次第すぐ出るわよ!」
「「「「「「はい!!」」」」」」
「だから加古!いい加減起きて!!悠さん戻って来たかもしれないよ!?」
「Zzzz…んあ?アイツ戻って来たって?…。」
<< 大・大・大・大・大将軍ッ!!! >>
悠はサガラから譲り受けた極ロックシードを使い最終形態、極アームズへと進化しその存在感をロードマルスに見せつけていた。
新たな武神鎧武を目に後ろで控えてたダークドライブとガタックを含めインベスと戦闘中だった摩耶達も目を奪われていた。
光り輝く白銀のボディにこれまた存在感を放つ紅いマント。風でマントが靡く光景は正に天下を取る武将を思わせる。
「なんだよ、あの姿…。」
「大、将軍…?」
<新しいロックシードか?だが何時の間にあのようなロックシードを………秋?>
「…嘘だろ…悠兄さん…。」
ダークドライブが隣に居るガタックの様子が可笑しい事に気付き声を掛けるも此方に反応せずただ茫然と武神鎧武を見てた。まるで今の光景を認めたくないという思いが籠められて。
「「「ギィィイィイッッ!!!」」
「ッ!な、なんだァ!?化け物共が…!?」
様子が可笑しくなったのはガタックだけでなくインベス達もだった。
武神鎧武が極アームズへと変化した途端、相手をしてた摩耶達とダークドライブ達を放ってその場に居たインベスが全部一目散に武神鎧武の元へ駆けてった。
<悠!そっちにインベスが行ったぞ!悠!>
「……。」
ダークドライブが声を荒げて叫ぶも依然棒立ちのまま。そんな事お構いなしに一斉に武神鎧武へと襲い掛かるインベスに目を背ける者が居るなか、ここで武神鎧武がベルトの極ロックシードに手を掛けた。
<< 大橙丸! >>
「──ハァッ!!」
一閃。突如武神鎧武の手に現れた紅い大橙丸を横に横一文字に振るっただけで、襲いかかって来たインベス数匹を撃破した。
一撃、たった一振りで数匹のインベスを撃破した武神鎧武は大橙丸をロードマルスへ向ける。
「フゥーーー…。」
【ァァーーーーー…。】
息をゆっくり吐き、片手を腰にやり、腰を落として重心を乗せながら構える様は歴戦の武者を思わせる武神鎧武を余所にロードマルスは大剣を構え直し武神鎧武へ駆けてった。
【ウガァアッ!!!】
「──フンッ!」
ーキィィイインッ!!!ー
全てを両断するべく振るわれた上段からの一振りは、巧みに受け流した大橙丸に阻まれカウンターの要領ですれ違い様に胴を斬られるロードマルス。
【ッ…!】
「──ハッ!」
斬られた個所を思わず抑えるロードマルスに斬られた個所は徐々に元に戻っているが先程のダークドライブが付けた傷より治りが些か遅い。極アームズの力がどうかは知らないがこれなら有効打が撃てると追撃を仕掛ける武神鎧武だが突如二人の間に割り込む影が現れる。初級インベスがロードマルスを庇い、武神鎧武の一撃を受けたインベスは爆散して散っていった。
「ッ…アレは…。」
ロードマルスを庇ったインベスの散り様を前に武神鎧武は周りを見渡してみるとその光景は誰もが絶句するような光景だった。
空を見ると羽を生やしたインベス達が真っ直ぐ此方に向かい、地上からも上級を含めたインベスの群れが一斉に武神鎧武目掛けて向かって来ていた。
「…大人気な王様だ事で……羨ましくないがな…。」
軽口を吐く束の間に囲まれてしまった武神鎧武。初級、上級を含めヘルヘイムから呼び出されたインベス全てが武神鎧武を王に害なす存在として敵視を向けられていた。
「…丁度良い。サガラの頼まれ事も、コイツの慣らし運転も済ませられる…。」
空までもインベスに囲まれ圧倒的不利な立場に居ながらその心情は毛ほども変わりなく大橙丸を左手に持ち替えた。
<< バナスピアー! >>
新たに召喚したバナスピアーを手に腰を落としバナスピアーを弓矢の様に引いて構えた。
「来いよ、害虫共。王様諸共駆除してやる。」
「「「ギシャァアァアッ!!!」」」
「「「ギュァアアアァッッ!!!」」」
如何にも挑発めいた言葉分かったのか武神鎧武を取り囲んでたインベス達が雄叫びを上げながら一斉に襲いかかって来る。
四方八方から迫る魔の手に武神鎧武は動く事無く、極限にまで気を集中し、脱力し、そして…。
「──ゼェィラァッ!!!」
ーダァアアァンッッッー
弓矢を放つように放ったバナスピアーの突貫。
踏み込んだ一歩は自身も矢の如く突き進み。向かって来るインベスの群れを掻き退ける程の突貫力。
宙に舞うインベスを背に敵地のど真ん中で武神鎧武は槍と剣を振るう。
死角から来るモノに身を捻って躱し一閃を、纏まって襲い掛かる集団には真正面から槍による渾身の突きで打ち払う。
絶え間なく向かって来る魔の手を前に堂々と立ち振る舞うその姿は正に、武神の名に相応しかった。
<< 極・スカッシュ! >>
「ウォオリャァッ!!!」
バナスピアーを地面に突き刺すと刺した箇所を中心に波紋が広がり、やがて地面からバナナを模したオーラ体の拘束具が周囲のインベスを捕まえると、大橙丸を手に…。
「セイッ、ハーーッ!!!」
自身も一回転する程の大きく振るった一撃は捕えたインベスを皆一刀両断の元に斬り伏せた。
散ってったインベスの火の粉が降りしきるなか役目を果たした様に消える大橙丸とバナスピアーを余所に上から降り掛かる火の玉に武神鎧武は新たに武器を呼び出す。
<< メロンディフェンダー! >>
出現した盾、メロンディフェンダーで迫る火の玉の攻撃を防ぐ武神鎧武。
空から攻撃を放つコウモリインベスの群れは防戦となってる武神鎧武を目に火球を放つ手を休めなかったが、武神鎧武からしたらこの程度の事で怯むほど脅威ではなかった。
<< ブドウ龍砲! >>
「ハッ!」
ハンドガン型のアームズ、[ブドウ龍砲]の撃鉄を引き、コウモリインベスを撃ち抜く。
一秒に最大百発の弾丸を放てる連射に優れたブドウ龍砲の息吹は瞬く間にコウモリインベスの数を減らしていき、ダメ押しにメロンディフェンダーをブーメランの様に投降し切り裂き、コウモリインベス達の逃げ場を失くし更にブドウ龍砲の射撃で空を覆ってた程のインベス達を撃破した。
「さてお次は…「グォォオオオッ!!!」…ハイハイ、おたく等ね。」
後ろから聞こえる雄叫びに振り返ると、後ろには二体の上級インベス。
二体とも右手の鋭利な鍵爪が特徴で同じに個体に見えるビャッコインベスとヘキジャインベス。同時に繰り出してくる二体のインベスの攻めの手を受け流していく。
<< 影松! >>
影松を手に長物の長所であるリーチを活かした戦法でビャッコとヘキジャの爪の間合いに入らせず巧みに扱う武神鎧武。
影松でビャッコインベスを抑え付けた武神鎧武の死角を狙ってヘキジャインベスが攻めて来るが…。
<< ドンカチ! >>
片手で扱え小振りが効くハンマー型アームズ、ドンカチでヘキジャの爪を砕き、頭部にその強烈な一撃を見舞わせる。
「…やっぱコレ使い勝手良いと思うの俺だけか、なッ!」
ドンカチの使い具合を再度改めながら影松で抑えてたビャッコインベスの脳天に一撃見舞わせた後に、再度もう一撃重いのを喰らわせダメージを与えると影松とドンカチを投げ捨て…。
<< ドリノコ! >>
鋸状の双剣ドリノコを手に跳び上がりヘキジャインベスとビャッコインベスに振り降ろして切り裂き二体同時に爆散、撃破した。
武神鎧武は改めて周りを見渡すと未だ数多くのインベスが自身の命を奪わんと言わんばかりに敵視されていた。
「さて慣らしはこの辺で…そろそろ本格的に行くか……ッ。」
<< スイカ双刃刀! >>
新たに出した薙刀型のアームズウェポン、スイカ双刃刀は本来武は武神鎧武の身の丈以上の大きさなのだが極アームズの恩恵か丁度良いサイズとなっており片手で扱うのにも十分であった。
そして双刃刀を手に左足を高々と上げ…。
「どッ…せいィッ!!」
メジャーリーガー顔負けの豪快なサイドスローで投げ、一振りの薙刀が投降武器として真っ直ぐにインベスに向かって行く。
高速で回転しながら猛スピードでインベスを次々と真っ二つにしていく中で…。
<< キウイ撃輪! >>
「もう一丁ッ!」
更に投降武器でもあるキウイ撃輪で今度は逆方向に投げていき、二つのキウイ撃輪が不規則な軌道でインベスを切り裂き見る見るうちに数が減ってゆく。
だがこのまま黙ってやられるだけのインベス達では無かった。
「ガァアアァァッ!!!」
「グァァアアアッ!!!」
初級インベス達が爆散して行くなかでスイカ双刃刀とキウイ撃輪から免れた上級インベス、ライオン、シカ、カミキリ、セイリュウと一筋縄では行かない相手が纏まって武神鎧武へ向かうが。
「一々相手にするのは面倒だから…!」
<< パインアイアン! >>
パインアイアンの鎖を駆使しまずはインベス四体を翻弄し獲物を狙う釣りの如くその機会が来るのを待つ。鉄球部のパインが容赦なくインベス達にヒットし、そして上手い具合に四匹が固まった所を…。
「ハイッ、そこォ!」
「グゥッ!?」
「キュァッ!?」
「ブルッ!?」
「ガゥッ!?」
パインアイアンの鎖で四匹纏めて縛り上げ、渾身の力を籠めてインベス諸共アイアンを振り回した。
「ヌゥゥオォオオオォォラァァァァッ!!!」
「グゥゥッ!!グァァッ!?」
「ギュッ!?ギュァアアアッ!!!」
「纏めてパイン叩きじゃあぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
<< 極・スカッシュ! >>
「ドラァアァアァアァアアアッッッ!!!」
鉄球部のパインから夥しい量のエネルギーの光が灯されると、武神鎧武は巻き付いたインベス諸共回した勢いを殺さずに軌道を変えて初級の群れに目掛けて叩き落とした。
当然の如く巻き付かれてた上級四体は地面に叩き付けられた際に爆散し、その近くに居た初級を巻き込んで瞬く間に散ってった。
息が荒くなっているのが分かる程に肩で息をしている武神鎧武だが残るインベスが視界に入ってる数十匹である事に対し、残るアームズでどう駆除するかの算段が今着いた。
<< イチゴクナイ! >>
右手を上に翳すと現れたのはクナイ型アームズ、イチゴクナイ。数あるアームズの中で一番小さい武器であるが現れる数はまだまだ増え続け、二十、四十、八十、百六十、と明らかにインベス以上の数のクナイイチゴが頭上に召喚された。
「これぞ血の雨…ってかァ!!!」
掲げてた右手をインベス達に向けて翳すと空中で待機してたイチゴクナイが一斉に放たれる。
その光景は正しく血の雨の如く、逃げ場のないクナイの雨にインベス達は抵抗はしようも空しく、爆弾にもなるクナイの餌食となりインベス達は爆ぜる爆炎の中で散ってった。
最後のインベスの群れを片した武神鎧武は初めての力にまだ馴れてないのか息が荒いのが遠目でも分かるくらい消耗してた。そんな状態の中本命を探す。
「さーて。問題の野郎は何処に…………みっけ。」
武神鎧武の本命、ロードマルスを今度こそ倒すべく辺りを注意深く見渡すと差ほど離れてない所で蹲ってるのが見えた。
隠れるつもりは無く堂々と背後から近づき相手の様子を窺う。ロードマルスは此方に背を向けて何かしているようであったが、その仕草と音から何をしてるのか予想が出来た。
(…何か食ってる?でもヘルヘイムの植物は一度も見掛けてない。なら何を…。)
固いモノに齧りつく咀嚼音が耳に残る様な音を立てながらロードマルスはゆっくり立ち上がった。どうやら背後の武神鎧武に気付いたらしい。
此方に振り向くロードマルスの口元と足元に転がってるソレを見て何を喰っているのか目にしてしまった武神鎧武は仮面の下で険しい表情をした。
ロードマルスの足元に右腕から胸まで喰われた上級のヤギインベスの亡骸。喰い口から流れる血と肉の断面が生々しく残り此方を見据えるロードマルスの口にはヤギインベスの角が咥えられ、バキンッ、っと軽快な音を立てて真ん中から折れゴリゴリと噛み砕く音が聞こえた。
【ゴクンッ…ァア~~~…。】
「こっちはせっせと害虫退治してる最中に食事休憩?しかも果実が無いからインベス喰うとか……ぶっ飛び過ぎてツッコみきれねえっつうの…。」
口元を拭う仕草をするロードマルスに悪態を吐く武神鎧武だが幾ら言った所で何の返答もしないお蔭でフラストレーションが溜まる一方であった。
そんな武神鎧武の心境など構いも無しにロードマルスは大剣を手に駆け出してく。
一瞬の内に間合いに入って来たロードマルスの袈裟懸けをバックステップで躱すが、切り替えしの速度に一瞬遅れ切っ先が擦れる。間合いを取って下がろうにも張り付く様に詰めてながら斬りに掛かるロードマルスに苦戦する武神鎧武。
(インベス喰った所為かどうかは知らねえけど、さっきより動きキレキレじゃねえかよッ!
…下がってダメならあえて…。)
<< クルミボンバー! >>
後ろがダメなら前に行く。両手に巨大なグローブ型のクルミボンバーを着けインファイトでの戦法を試みる。
左拳を前にするボクシングスタイルの構えでロードマルスの大剣を見切る。斜めに斬りかかって来た太刀筋を軽いフットワークを生かして躱し、そして素早い左のジャブを顔面の右側に捕える。一瞬の怯みを逃さず更にボディに二発。左フックを脇腹。そして重みを乗せた右ストレートをボディへ見舞わせ、後退させる。
後退するロードマルスに今度は武神鎧武が前に出て張り付く。剣が満足に振れない位置まで近づき着実にダメージを与え続け、最後に大技で決めに掛かると言う戦闘スタイルだ。
だがあまり時間を掛けてはすぐ再生されエンドレスを向かえてしまう。だから顎や鳩尾と言った急所をピンポイントで狙い怯ませた所を集中して狙いダウンを決める。
そこからの武神鎧武の動きは早かった。ボクシングスタイルのやり方で今度はロードマルスが翻弄される。
大剣を振るう間を与えず、離されてもすぐ詰めに行き、返しに来た攻撃は身を潜って躱し、躱されても放つ拳を緩めない。ボクシングと言う一種の動きに惑わされてるのか着実にその拳が届き始めた。
「フッ、シッ──ゥラァ!」
【グゴッ!…】
身を低くして伸ばした際の反動を活かしたアッパーが顎にクリーンヒット。
アッパーが綺麗に決まったのもあって足元がフラつき始めたのを狙い、鼻っ柱にストレートを叩き込む───筈だった。
ーガシッ!ー
「ッ!…。」
【ウゥゥゥ───ッ!!!】
大剣を捨てたロードマルスが両腕で顔面を狙いに行ったクルミボンバーを掴んだのだ。
拳を引こうにも凄まじい力で掴まれビクともしない。逃れようとする武神鎧武を前にロードマルスの拳が次第に赤くなってゆき、仕舞いに両拳から炎が噴き出して来るとクルミボンバーにヒビが入り始めた。
「な…!?」
【ブルァッ!】
両側から挟むように力を入れると右のクルミボンバーが砕け散った。右手が剥き出しになった武神鎧武は即座に下がり間合いを取るがそれを許さぬといった風にロードマルスが詰め寄って来た。
そして炎が灯った拳を放つ。両腕を前に出してガードの体制を取って防ぐ武神鎧武だが、ロードマルスは間髪入れず逆の拳を放ってきた。
ガードしながらロードマルスの動きを見る。構え、足運び、拳の放ち方、動きは荒々しいのが目立つがその動きは先程まで自分がしていた動きと一緒だと言うことに気付く。
(冗談じゃねえよ、ここに来て相手を学習するとかふざけたハナシだぜ。)
ガードしながら内心悪態を吐く。オーバーロードの恩恵かどうかは知らないが一度見た動きをコピーすると言う並外れた目と身体能力は武神鎧武にとってはイヤな気持ちにさせる情報だった。
だが、それでも闘志に揺らぎは無かった。
「──シッ!」
【グアァッ!】
おもむろに突き出した片方のクルミボンバー。そして反射的に拳を突き出すロードマルス。
威力の差で砕け散るクルミボンバーであったが、油断したとこを下段の蹴りを相手の膝元に喰らわせバランスを崩し、膝蹴りを見舞わせた。
<< 無双セイバー! >>
<< 火縄大橙DJ銃! >>
「ウラァ!」
そして使うに使ったアームズウェポンの中で取って置いた無双セイバーとDJ銃を上に掲げて大剣モードに合わせる。コレを見たロードマルスは手を出すとそこに吸い込まれるように捨てた大剣が意志を持ってロードマルスの手中に収まる。
「ウォオオオォッッッ!!!」
【ァアアアァアァッッッ!!!】
雄叫びを上げながら二人は駆けだしてゆく。
剣と剣が交じり合って火花が散る。幾度となく鳴り響く剣戟音は二人の雄叫びの代わりに辺りの空気に響かせた。
「──おい龍田!この先だな!?」
「そうよ~。通信じゃあ、そこを曲がったところよ~。」
市街地のインベス駆除部隊として出撃してた天龍、龍田、高雄、愛宕、暁、響、雷、電。
彼女等もインベスの突然の奇行に移動し居る所であり、最も離れていたのもあって時間が掛かっていた。
「っと、到着!…ってなんだありゃ?」
「別部隊ですね。あの数だと、全員かしら?」
「私達がビリって訳ね~。」
天龍達がインベスの集合地帯に到着すると、今回の作戦に出撃してた全部隊が砲身を手放さずに皆何かを見ていた。
丁度人が集まって壁が出来てるが、耳を突く様な金属音が仕切りなしに聞こえると言う事は戦闘しているのだと推測できる。
「…ん?天龍達じゃない。今来たの?」
「瑞鶴、お前等空母と戦艦は後方でインベスの拡大を防いでたんじゃなかったか?」
「その必要が無くなったから此処に居るのよ。皆事の結末を見るのと、万が一の時の為に、ね。」
「万が一?…そういえばインベスは?確かここに集中的に集まってるって聞いたけど?」
「…アイツが全部片したわよ。…今もね。」
「アイツって…まさか!悪ィ!通してくれ!」
「ちょ、天龍ちゃん!?」
固まってる艦娘達を避けて天龍達は前に出ると、そこにはロードマルスと剣を打ち合ってる武神鎧武の姿が目に入った。
「あらァ?随分キラキラな人ね~。新入りさん?」
「愛宕…普通に考えてそれは無いわよ、お馬鹿。」
「あの銀色のヤツ…もしかして悠か?」
「そうだよ。」
天龍の呟いた言葉に応える様に口を開いたのは神妙な面もちをした川内だった。その隣には神通や那珂の姿も見える。
「悠さん?アレがですか?でもあんな姿私達知らされてませんよ?」
「私達もです。摩耶さん達に聞いてみたら、どうやら新しい力らしいです。」
「それで悠ちゃんに向かって行ったインベス達を、み~んな倒しちゃって今ラスボスと戦ってるんだって。」
「全部倒した!?少なくとも報告では、軽く300は超える数って言ってましたよ!?」
「…ハラショー。」
「じゃあ残ったあの金ぴかの怪物倒せばそれで終わりって事じゃねえか!
ならなんでアイツ一人でやらせてんだよ!?ココに全員居るんだろ!?よく見りゃ秋達も居んじゃねえか!!今からでも加勢に行って…。」
「…一人でやらせてくれって言ったんですよ。他でもない、悠さん本人が。」
「一人でって…何考えてんだよアイツは!?」
「そうよそうよ!暁達が一緒に戦えば、あんなのすぐ倒せるわよ!」
「えぇ!わたし達だってやれるのに、何で頼ってくれないのよ!?」
「天龍ちゃん落ち着いて。それに暁ちゃんも、雷ちゃんも。」
「でも!」
「とにかく神通さんの話を聞いてから自分の意見を言おう。悠だって考え無しで戦ってる訳ではないのだろう?」
声を荒げる天龍、暁、雷を龍田と響が落ち着かせ三人を納得させる為に、神通が事の訳を言う。
「私も詳しくは聞かされてないんですけど、悠さんはケジメをつけると言ったそうです。
誰の手も借りず一人で…秋さんやベルトさんに頼んでまで…だからこうして私達は見ているんです。」
「ケジメって……何だよソレ。そんなんで納得できると思うか!?なぁ、川内!神通!!」
「……そりゃ、正直納得しろって言われてすんなり出来ないよ。私は…。」
「…私もそうです。ここで黙って見ているのは、正直辛いです。」
「なら・「でも。」…でも、何だよ?」
「…でも悠は、一度決めたら絶対止めないよ。
悠が言ってた。”所詮俺は周りの意見を気にせずにやるような自己中野郎”って。」
「こうも言ってましたね。”やらずに後悔するより、やって後悔した方が数倍マシ”って。
…今あの人に何言っても聞いてくれませんよ。今あの人を動かしてるのは、ただの意地。周りが聞いたら馬鹿にされるような事でもあの人にとっては一番重要な事なんです。
…それが、灰原 悠という人なんですよ。」
「……それで…意地で戦って、死んでもかよ…。」
「…それでも理由無く、機械みたいに戦うより、人間らしく死ねる…。」
「響ちゃん?…。」
「…私も聞いたんだ…どれだけ強い力が在っても、ちっぽけな人間であることを忘れちゃいけない…それが教訓みたいなモンだって。」
そういう響の視線の先にはロードマルスと鍔迫り合いをする武神鎧武の姿。仮面で見えないが、その下では苦しくも強い目をした悠の顔が見えた気がしたのだった。
「ッ…ハァ、ハァ、ハァ…。」
ロードマルスの思い一撃をDJ銃で受け止めて下がる武神鎧武。剣から通じる衝撃に手が痺れながらも持つ手を緩めずに相手を見据える。
向こうも幾ら強化したとはいえ無尽蔵では無いのかパワーを除いて最初の時より動きが鈍くなってるのが見える。消耗が激しいのが弱点であることが分かった。
ようやく良い報せが来たがこれで安堵できるような優しい相手では無い。こちらと向こうの体力の差がどれ程あるがは未知数だが、恐らくこれ以上の長期戦は厳しい。
そう思った矢先ロードマルスに動いた。天に掲げた大剣に力を送り刀身が輝きだした。恐らく大技を放つようだ。
「…理性は無くともそういう性分は残ってるのか…。いいぜ、乗ってやる。」
<< 極・オーレ! >>
武神鎧武の持つDJ銃の刀身にロックシードからエネルギーが送られロードマルスに負けない位に光り出す。
金と虹色。二つの鮮やかな光はまるで幻想的な空間を作り出してた。この戦いの終わりを迎える為のクライマックスと言わんばかりの光景を…。
【──ガァアアアァァッッ!!!】
「ォオォォオオオォッッ!!!」
そして放たれた斬撃は三日月の弧を描いてぶつかり合った。
相殺した際の衝撃が凄まじい突風を生み出す。傍に居た艦娘達が吹き飛ばされかねない位の衝撃を二人は踏ん張りを効かせて立ち、そして駆け出す。
【ガァァアアアッ!】
「オウゥリャッ!!」
未だ衰えない光を放った剣が衝撃を生み出してまたぶつかる。
激しく散る火花をモノとせず互いに一歩も引かない鍔迫り合いはどちらかの根気が折れるかまで続くと思われたが、武神鎧武とロードマルスの根気より先に、二人の手にした剣が折れ掛かってた。
その事に二人が気付くより先に打ち合ってた二本の剣が限界を迎え折れた。
二人が同様に驚くのも一瞬だけだった。目の前の敵を前に無理矢理意識を切り返させられたからだ。
武器を失ったロードマルスは再び拳に炎を灯した。この至近距離で喰らったら一溜りも無い一撃を叩き込んで勝負を着けるつもりだ。
それに対し武神鎧武は──。
ーバサァッ!ー
【ッ!?】
ロードマルスの視界が突然黒一色に染まった。
手探りで探るとその正体は布らしきものが顔を遮っているようであった。そう、武神鎧武の背中に羽織ってたマントを脱ぎ捨てロードマルスに被せたのだ。
「オウㇻァッ!」
視界が遮られたロードマルスに前蹴りを叩き込む。蹴りを入れられ下がった所を突け狙って武神鎧武は跳んだ。
<< 極・スカッシュ! >>
突き出した足に虹色が灯る。
ー無頼キックー。武神鎧武が持つ蹴り技、武器を使い尽くした今、最後の武器とも言える技で勝負を決めに行った。
覆ってたマント剥がして視界が良好になったロードマルスは、一瞬武神鎧武の姿を見失うが空中で此方に向かってくる姿が目に入り拳を構えた。
「ッ───!」
【ッ───!】
突き出した足と拳がぶつかり、光に包まれた──。
「うわッ!…。」
<なんて…凄まじい威力だ…!>
戦いを見守ってたガタックとダークドライブは武神鎧武とロードマルスの技の余波に舌を巻いていた。
恐らくこれが最後の一撃だと二人は悟っていた。突然強化するロードマルスを前に必死に食らいついてく武神鎧武。固唾を飲みながら見届けるこの激闘にようやく終止符が打たれた。
抑え切れない緊張感を感じながら二人が正面から合わさった場所を只々見つめる。次第に上がってた白煙が晴れて行くとその姿が見えた。
変身が解かれた状態で蹲ってる悠の姿と、その前に未だ健在と言わんばかりに立つロードマルスの姿が見えた。
「そんな…。」
<くッ、悠でもダメだったのか…!>
信じられない光景に希望が砕かれる感覚が襲う。血まみれで未だ立ちあがろうと踏ん張る悠の姿に正直見てられなかった。
そんな悠の前に立つロードマルスは悠に向かって歩き出した。息のある悠にトドメを刺そうとしているのか、二人は一斉に駆けだした。最早今の悠は立ち上がっても戦えない。このまま黙って殺されるの見てはいられない。
これには待機を命じた艦娘達も動き出した。砲身を向け、弓を引き、剣を抜いた。このまま恩人を殺させない為に。
【……ウ゛ッ、ゥッ、オ゛オ゛ッ!!】
悠へと近づくロードマルスの異変には誰が見ても分かる程であった。突然苦しむ仕草を見せ始め、いきなりの事に動いてた足が止まってしまう。
苦しむロードマルスを前に悠は立ち上がった。最後まで倒れまいとするその気持ちを目に宿しながら。
【グッ!ガ、ガァァァアアァアァァアアアアァッッッ!!!】
ロードマルスの体の至る所からから炎が吹き出る。胸や肩、足にも。まるで血の様に。
大きなダメージを受けたのは悠だけでは無かった。ロードマルスにも無頼キックのダメージを確実に与えた。ほんの僅かな差が雌雄の決め所だった。
【ァ……ア…。】
「……。」
最早口にせずとも見ただけで分かった。ロードマルスは時期に死ぬ。
立つ事もままならない二人は只ジッと見つめるだけ。
「……。」
【……ア…
ア、リ…ガト……ナ…。】
「ッ!…」
【……──。】
そしてロードマルス…小金井 竜二は前倒れに倒れた。
体は光となって塵の様に風に流され、後も残らず消えた。
悠はその消えてった後を眺めるしか出来なかった。
「……ハ、殺した相手に礼を言うかよ。…ま、った…く…──。」
「ッ!悠兄さんッ!!!」
<悠ッ!!!>
意識を失う悠の目に映った最後の光景は、此方の顔を覗き込む秋とダークドライブの顔を最後に次第に目を閉じてった。
そして、武神鎧武。ロードマルスが激闘を繰り広げてた場所から離れたビルの屋上。塀の外に立って拍手する黒ローブの男。そう、竜二をオーバーロードへ変えた謎の男が一部始終を見ていた。
「いや~中々見応えのあるショーだったなぁ。…なぁ、アンタもそう思うだろ?」
後ろを振り返ると、謎の男同様に事の戦いを見届けてたサガラが何時に無く険しい顔つきで男を睨んでいた。
「そうだなぁ…お前が手を加えた、と言う事実が無ければそれなりに心が震えただろうな。」
「あらら。厳しいご意見だ事で。」
「…一体何を考えてる?何故今になってこんな茶番を引き起こした。ルールと秩序を何よりも重んじる、お前等達…。」
「あー、それだよそれ!そういう固っ苦しいのがイヤだからこんな事してんじゃん!」
「何だと…?」
「ホント楽しいよ。あの時のヒマで退屈な日々に比べたら断然。今もとびきり面白いのが見られたしね。」
「その為に幾つものルールを破り、関係の無い命を混乱に巻き込んで…。」
「やだなぁ。それはキミも一緒でしょ?一人の勝者を決める為にたくさんの命を巻き込む。それで幾つの文明を滅ぼしたと思ってるの?」
「……。」
「…ま!なにわともあれ今回は彼が勝ったからヘルヘイムは安泰だね。そして…。
舞台は次の章に進んだ。喜劇か悲劇か、刺激的な戦いは、これを機に勢いを増す。」
最後に意味深な言葉を残して男は消えてった。
残されたサガラは遠くから秋や艦娘達に囲まれてる悠の姿を見た後、事の後始末をする為に姿を消した。
事の結末を語ろう。
世間は今回起きた怪生物の暴動を今話題にされてる仮面ライダー、BABELの仕組んだ可能性が高いと見て世間一般に公表される。
なぜそのように至ったかの理由は怪生物の被害を青と黒の仮面ライダーが防いだとの市民情報が聞かされており、中には幼い姉弟の子供を避難区域まで赤い仮面ライダーが連れ添った姿が多く目撃されているからである。
余談だが今回の事件には隠れた逸話が存在する。
仮面ライダーと同じく市民を怪生物から守り撃退していったとされてる謎の少女たちの話。
地面を滑るかのように移動し大砲の様な轟音と共に怪生物を撃ち抜くと言う興味深い話だが、これまた奇怪な事に目撃情報はあるもののその少女たちの顔や声など誰も覚えて無いと不可思議な話は未だ未曾有の謎に包まれてる。
「──って、言うのが怪生物騒動の詳細らしいわよ?」
休校の解けた学園の教室。
悠のクラスである2-Bの教室の一角で、ゼノヴィアを含む古城達は情報通の浅葱からインベスの騒動について聞いていた最中だった。
「…ってそれだけ?らしいくねぇな浅葱。お前の事だからもっとあの化け物の名前とか仮面ライダーについて調べてるって思ったんだけどよ。」
「あのねぇ。パソコンにだって載ってる情報と載って無いのが有る訳よ。それに、どの情報サイトから見てもこれ以上の事が載ってないし、むしろ色々消された所が多くて調べようにも無かったわよ!」
「消されたって…政府のお偉いさんとかそういうのがか?」
「可能性の一つとしてね。でも一番大きいのが…。」
「仮面ライダー。か…。」
ゼノヴィアはそう言いながら悠の席に目をやる。そこには当の本人が居ない。
「どうしたゼノヴィアちゃんよ?まーた愛しの灰原が来てないのにショック?」
「矢瀬。あんた黙んなさい。しょうがないでしょこればかりは。」
「へいへい。にしても灰原のヤツもついてねえよな。あの化けモンに襲われたって。なぁ?古城。」
「え?…あぁそうだな…。」
悠は表向きインベス騒動の際の被害者として自宅治療と言う事でここ数日学園を休んでいる。
HR開始のチャイムが鳴り古城達は自分達の席に戻る。古城は空席の机に目をやってある場面を思い出す。
それはいつもの自販機の前でそこに居たキンジに悠の事を聞かれたのだ。あの時は正直に伝えたが、その時のキンジは何処か思いつめた様な顔をしてた事に。
そしてそれはキンジだけに限らず雪菜も同じだった。学園襲撃の際に悠の事何処か気にしてたが雪菜にも同じく自宅治療しているいったら「やっぱり…。」とか言っていたがその事を詳しく聞いてもはぐらかされるだけだった。
二人の様子からまるで悠が何かあるということが頭にちらつく。その事が脳裏に浮かびながらも突如転校生と言うロスヴァイセのワードにクラスの男子がデカい歓声の声を上げた事で無理矢理意識を呼び戻された。
そしてその転校生の正体に古城が違う意味で声を上げたのは此処だけの話…。
「───……。」
起き上がるといつも見慣れた天井が見えた。
それだけでここは自分の部屋と言う事が認識できる辺りもう大丈夫だという悠の勝手な認識であった。
ベットから上半身を起こして様子を見る。包帯に巻かれてる自身の体。でもG4の時と比べればそこまで巻かれてない。手を翳して開いたり閉じたりして具合を見る。問題無い。両手とも動く。足の指も動かして見るが同様に問題無く動いた。
何故か腕に刺さってた点滴の針を抜く。ベットから足を出しゆっくりと立ち上がる。問題無く立てる。
(…体にこれといった異常は無し。体のどこかが欠損していると言う感覚も無い。)
悠が今気にしているのは極ロックシードの代償だった。オーバーロードになる事は無いと言ってたが、なら自分はどんな代償を払ったと言うのだろうか。
(五感は………味覚以外普通に感じるな。記憶の欠落も無いし…。)
<悠!目が覚めたのか!?>
聞き馴れた声のする方へ顔を向けると、シフトネクストに意識を移したクリムが部屋の中に入って来ていた。
<もう大丈夫なのか!?傷が治っても目を覚まさないからヒヤヒヤしたぞ!>
「…クリム。あれから何日経った?」
<五日だ。キミはずっと目を覚ます事無く五日が経ったんだぞ!それが起きて第一声に聞く事かね!?>
「…悪い……なぁ。俺の体に何か変な所無かった?」
<……あぁ。在ったとも。キミはそれの所為で死ぬ間際にまで追い詰められた…。>
「そうかやっぱりあったのか……なあ、それそうとして…怒ってる?」
<……そうだな。あの時確かにキミを信じて送り出した自分にも非はあるが。あのような危険なモノに手を出して戦う等、その後の事を考えての行動かね!?>
「まぁね。正直分の悪い賭けだと思ったよ。……でもあの時のアイツに対抗するにはアレを使うしか策が無くてね。…その時死んだら、それまでのハナシってだけさ…。」
<……。>
「…怒った?」
<あぁ。そうだな。………キミのその自分の命を軽視してる所に。>
「……。」
<…とにかく今は休む事に専念したまえ。事後報告は明日するよ。>
それだけ言ってクリムは部屋から出て行った。
残された悠はベットに腰掛けながら頭を搔く。その時不意にとある記憶が頭を過った。
少しの間悩んだ結果行動を起こす事にした。後で大目玉喰らう事だが味覚が正常かどうかを確かめると言う名目で部屋のタンスから服を取り出した。
「いらっしゃいませー!あ!」
「…どうもー。」
悠が訪れたのは最後に竜二と対面した喫茶店だった。
何時もの如くあの時の女性ウェイトレスが悠を迎えるが頭に巻かれてる包帯に一瞬怪訝な顔したが、ハッっと何かに気付いて悠に詰め寄る。
「あのー、アナタが来たって事はこの後竜二さんも来るんですか!?ここ最近パッタリ来て無いから少し心配しちゃたんですよー。ほら、あの怪物のニュースの後に来なくなったから。」
「…期待させて悪いけど別に待ち合わせとかそういうのじゃないんだよね。それと前から言いたかったけど…。」
「?」
「俺とアイツ、友達でも何でもないから。」
「えー!?だってあんな仲良く話して、強盗の時も息ピッタリだったじゃないですか!あれで友達じゃ無かったら一体どういう関係なんです?」
「……さぁね。どう言ったら良いのかね…。」
「?…あ、いけない。席ご案内しますね。」
どこか遠い目をする悠に首を傾げたが本来の業務を行う為に悠を席に案内するウェイトレス。
席に案内した悠にメニュー表を渡す。この時ウェイトレスはまたパフェ系のものを頼むものだとばかり思ってたが、今回は違った。
「アップルパイ、コーヒーセットで。」
「あれ。今日は違うヤツなんですね。しかもアップルパイって。」
「…野郎に喰ってみろって、煩く言われてね…。」
思い浮かぶのはヘルヘイムで決着をつける前の話。あの時の会話の内容を思い出して今ここに居る。
──アレは何だかんだで美味えからよ。もし勝てたら喰ってみろよ。万が一勝てたら、な──
──覚えておくよ…。──
(別に有言実行しなくても良い事なんだけどな…。)
「お待たせしましたー!アップルパイセットです。」
前に出されたアップルパイを目にフォークで切って口に運ぶ。
向かいの席に目をやるが誰も居ない空席。それでも目を離す事無く味わう。
「……確かに、美味いな…。」
誰かに聞かせた言葉か、不意に出た独り言か、その真意は明かされないまま黙ってアップルパイを味わって食べた。
以前”相談”という話の最後に描いた嘘予告に今話題のエクゼイドの要素を多く取り込んでみました。
気分転換にどうぞ…。
別世界の灰原 悠を監視せよ。
…だが、彼等に与えられた使命はそれだけでは無かった…。
「オレ達の新しい力が奪われた!?」
「そうだ。俺のコピーを作った神が、ウチの上司が手掛けてた新しいライダーシステムを盗んだらしい。そして…。
その奪われた力はこの世界にある。もしコピーがその力を持ってるのならばそれを回収する必要がある。」
「マジで!?…で、その奪われた力って?」
「コレだ。」
取り出したアタッシュケースの中には、紺色、黄色、黄緑色のゲームカセット。別のケースには二つのドライバー。
「どうにか防げた盗まれた十本の内の三本。そして二つのドライバー。
そしてもしヤツが残りの七本、二つのドライバーを持ってる場合に急遽用意された試作型。」
悠の手にある紫のカセット。
「てことは…。」
「コピーの監視は潜入してる桜井がメインにやる。俺達はガシャットの回収、いや…下手をすれば争奪戦だな。」
そして繰り広げられる怒涛のゲームバトル!
「新しい力を試すか…。」
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「さぁ~て、オレもマッハで走りますか!」
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「「──変身ッ!」」
「お前達にやられる訳にはいかない!──変身ッ!」
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そして予期せぬイレギュラー!?
「友達のお前一人に戦わせる訳にはいかない!オレも一緒に戦うぜ!」
「一夏!」
「何だと?」
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「変身!」
(何故織村 一夏が変身できる?このライダーシステムは適応手術。バクスターウイルスの抗体が無いと変身出来ない。コピーは兎も角、何故ヤツが…。)
「…桜井の仕事がもう一つ増えたな…。」
「何でオレ達のガシャットを狙うんだ!この力が在れば皆を守ることが出来るのに!」
「…借り物の力でこうも大口を叩くとはな。それにそのガシャットもドライバーも元は此方のモノだ。だから回収するだけ。」
「ウソを言うな!」
「ウソじゃないさ。それにお前はISとかいう兵器を既に持っているのだろう?今使ってる力はISを超える兵器だ。お前に扱いきれる代物じゃない。」
「うるせぇ!そんなのやってみなきゃ分かんないだろ!」
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「…交渉決裂、か…。」
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「一夏!」
「おーっと行かせないぜ?アンタの相手はオレ。」
「なんでだ!なんでオレ達の邪魔を…!」
「散らばったガシャット集めかい?だってライダーガシャットは元々オレ達が使うモンだし、それを集めるオレ達に深い理由がいる?」
「く!…とにかく、そこは通してもらうぞ!」
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「させねえって言ってんじゃんよ…。」
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そして残る最後の一本!
ーGyaooooon!!!ー
「最後の一本。ドラゴナイトハンターZか…。」
「最後ガシャットは渡さない!アンタには、負ける訳にはいかない。」
「そうか…なら一騎打ちと行くか?」
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「……ねえ悠兄さん。」
「なんだ?」
「向こうにいる姉ちゃんからメールなんだけどさ……コピー野郎が姉ちゃんに言い寄ってるって書いてあんだけど…。」
「…好都合だ。それなら監視をしやすい……だが、程々にと、返信しとけ。」
「はーい。」
乞うご期待!
なんて、嘘です。