その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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メリークリスマス!そして、今年一年お疲れ様でしたーッ!


…との事で、今年最後の投稿です。色々忙しい一年でしたが、皆さまいかがでしたか?

また来年もよろしくお願いします!


追伸・デンジャラスゾンビ、カッケエ!
   でもキリヤが…(悲) 
   



乱舞・2

 

「──まさか、こんな事になるとは流石に、な…。」

 

サガラは森の影から一部始終を遠目で見て思わず口にする。

 

悠と竜二の死闘の決着。謎の第三者の介入。そして、ヘルヘイムの果実を無理矢理口にされた小金井 竜二のインベス化。

 

サガラは不快と言わんばかりの視線を介入してきた謎の男に向ける。サガラが言ってた招かれざぬ者とはどうやら黒ローブを被った謎の男の様であった。

 

「──よもやヤツが直々にお出ましになるとはな…。アイツ相手に今のボウズは何処までやれるか…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【……ハァァァアアア──。】

 

 

「ッ……。」

 

「うわお、コレは思いのほか中々…!」

 

突如現れた謎の男によって果実を無理矢理口にさせられた竜二の姿は、劇的な変化を遂げていた。

 

金と黒の体に手には大剣。その異形の姿はまるで…。

 

「う~ん、これってまんまマルスをオーバーロードにしたカンジだよね。

…さしずめ、ロードマルスとでも命名しとこうかな?」

 

そう言いながらローブで見えない顎の部分に手を当てて言う謎の男の視線の先には悠の記憶にあった姿とほぼ同一の姿が在ったのだ。

 

人間からインベスの頂点とも言える存在、オーバーロード。

それに至る事が出来た人物は只一人だが新たに誕生したソレもそれと近い姿をしていた。ただ違いがあるとすれば体を構成している色が金と黒である事と、肩と胸にマルスの鎧のような特徴。頭の耳の辺りから真っ直ぐ伸びた角が竜二のオーバーロードとしての姿だった。

 

オーバーロードとなった竜二の、ロードマルスと名付けられた怪人から発せられる濃密な威圧は辺り一面どころかこの森全域にまで達するかもしれない程の域のプレッシャーに悠は固唾を飲んで目を外す事すらできなかった。

 

【……ァ…。】

 

「ッ!」

 

【ァアァ……ァァァAAAAAAAッッッ───!!!】

 

悠は一瞬でもロードマルスへの警戒を最大限に張っていたのもあって僅かな動きでも反応出来るようになった恩恵か脱力状態から一変して此方に向かって来るのに反応できた悠であったが先程の戦闘のダメージがあってかロードマルスの手にした大剣からの上段をギリギリの所になってようやく横に跳んで回避する事が出来た。

 

【フゥゥゥゥウーーーッ!!!】

 

「あーれまッ、ありゃ完璧に理性無くしちゃってるね♪

今の彼には周りのモノ全てが敵に見えるんだろうねェ。」

 

次々に悠へ攻撃を仕掛けるロードマルスの様子から謎の男は特に変わり映えが無く冷静にロードマルスを分析していた。

 

悠は痛みが走る体をどうにか動かして寸でのタイミングで躱し続けていたが限界が来るのは早かった。大剣を持っていない方の腕で首を掴まれ軽々しく持ち上げられるとそのまま力強く放り投げられた。

受け身を取れなく地面を転がる悠の手に固いモノをふれた感触があり悠は思わず手にするなか謎の男は楽しそうに話し掛ける。

 

「カッハハハハッ!ホラホラ頑張りなよ。ほら立って!

倒したと思った敵がパワーアップで復活だなんてよくあるじゃんか?ホラ!」

 

「ッ……テメェ、一体何が目的だよ…ッ!」

 

「オー、怖い顔。ボク泣きそ。

──何が目的かって?すっごく単純だよ。むしろその為に色々手を加えて動いてると言っても良い位に。」

 

「んだと…ッ。」

 

「でもそれもまだ教えるのには早すぎるね。いずれ分かるよ。───キミが、”選ばれた存在”なら尚更…。」

 

「ッ…どういう…。」

 

「おーっと、そう言ってる間にも、ほらアレ。何とかしないと、死んじゃうよ?」

 

「ッ!」

 

【ォオォォゥウッァアアァアア───ッッッ!!!】

 

謎の男に言われ目を向けた先にはロードマルスが大剣から発せられる炎を纏いその矛先を向けようとしている所であった。

足に力を入れて立ち上がるが激しい戦闘の後遺症もあって膝が笑ってる状態の悠にロードマルスは容赦なく炎の塊を悠に向けて乱発した。

 

「グァッ!ウワァァッ!!!」

 

一瞬で炎の渦に呑みこまれる悠。

激しい火柱が立ち上る光景を謎の男は花火を眺めるかのように手を叩きながら眺めていた。

 

「ハッハーッ!中々だねぇ。……ん?」

 

【フゥゥウウゥゥウ───ッッッ!!!】

 

「ありゃりゃ?もしかしてボクも敵として見てる?やだぁー、そんな目で見つめないでよー。」

 

【ウガアアァァァアアッッッッ───!!!】

 

「…あー、言葉通じないのね。理性無いからそりゃそうだったね。…でもボク相手に暴れるより、コッチで暴れてきなよ…。」

 

向かって来るロードマルスを前に謎の男は前に手を翳すと、ロードマルスの進行方向にクラックが現れ、止まる事無くクラックを潜り、現実世界へと踏み入れてしまった。

 

クラックを閉じるとローブに付いたホコリを払う動作をしスキップ歩調で進みだす。その先には晴れた炎の真ん中で気を失ってる悠の姿が在った。

男は倒れた悠の傍に近寄ると声を掛ける。

 

「こらこら。なに呑気におねんねしてるんだい?早く起きて追い掛けないと、みーんなあの金ぴかに殺されちゃうよー?」

 

しゃがんで声を掛けるも一向に反応しない事に痺れを切らしたのか、手を出すと怪しげなオーラを纏わせ悠の頭部に触れようとしたその時だった。

 

「ッ!チッ!」

 

上から何か来る事を察知した男は後ろに跳んで悠から離れると悠の頭上から神々しい光を纏ったナニかが来た。悠を庇うように降り立つ光は徐々に人の形をしだすと男と相対し、謎の男その姿を見て顔こそ見えないが少しの間顔を顰めるとまたすぐにふざけた様な振る舞いをする。

 

「おーやおやおや。これはまたビックなゲストが登場の事で。でも生憎キミの相手をするヒマは無いんだよねぇ。これからビックなショーを見逃すわけにはいかないんでね。と言う事で、じゃーねー。」

 

そう言って謎の男は煙の様にその場から消えてった。

 

残されたのは気を失った悠と、彼の傍に立つ男は神々しい光を纏っていた。

男は傷ついた悠の傍にしゃがむと、そっとその手を翳した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【───ァァアアァ──。】

 

そして謎の男によってヘルヘイムから現実世界に送られたロードマルスは、とあるビルの屋上から見渡せる街を眺めていた。

 

理性を失い、小金井 竜二という記憶が徐々に薄れていくなか今のロードマルスの頭に思い浮かぶワードは唯一つ。”闘争”だ。

 

元の竜二が一番願っていた欲望だったのかどうかは定かではないが薄れていく記憶の中はっきりと脳裏に浮かび上がるのはただひたすら暴れ、戦いたい。理性と言う枷が外れた今のロードマルスは文字通りの血に飢えた獣と言って良い程であった。

 

【ハァァ──。ヌァァアアアッッッ!!!】

 

 

 

ーギュイィィィィンー

 

 

 

雄叫びを上げ大剣を天に翳すと頭上に幾つものクラックが開きだしそこから灰色のすんぐりとした虫のような異形。初級インベスが数体降りて来て、その他にも様々な生物を模った上級のインベスも交じりながらロードマルスの後ろに降り立つと、ロードマルスはインベス達を従わせる様に、ビルの屋上から飛び降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…う~~ん…。」

 

灰原宅の地下ガレージラボで秋は性格情普段から落ち着かない性分だが今回は別の意味で落ち着かない状態だった。

腕を組んでラボ内を落ち着きなく行ったり来たり歩いてく様子を見て鬱陶しいと言わんばかりの視線を向ける艦娘の鈴谷が声を少し荒げながら秋に向かって言う。

 

「あーーー、もう我慢できないッ!

ちょっといい加減落ち着くじゃん!?さっきからそうやってウロウロして、近くに居る人の事を考えてよ!!!」

 

「ま、まぁまぁ。鈴谷少し抑えて…。」

 

「しょーがねーじゃん!!!ランニングから帰ってきて携帯見たらこんなメール来てたらさ!!」

 

鈴谷の姉である最上が二人を抑えようとするが、当の秋も我慢の限界と言わんばかりに差し出した携帯の画面を二人に見せつける。

 

 

 

 

──────────────

 

To:悠兄さん

 

──────────────

 

マルスと決着つけに行く。街の防衛頼む。

 

PS・王女に言うな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな大事な事!こんな簡潔に!しかも一人でだぜ!?複雑な気持ちにならずどうしろって言うのさ!?」

 

「秋の気持ちは分かるよ?ボクだってこんな勝手に話進められてかなりとはいかないけど複雑だし…。」

 

「だろ!?」

 

「だ・け・ど!それを抜きにしてアンタのそのオロオロする様子が見ててこっちがイライラすんの!街の防衛頼まれたならもう少しシャキッ!っとしろし!」

 

「するよ!だからこうしてココに待機してる訳じゃん!」

 

「その待機の仕方が見ててイライラするって言ってるの!」

 

「「んぎぎぎぎぎぎッ!!!」」

 

「もうーッ!二人共抑えてよォ!

兎に角!悠に対する文句は帰ってきたら正座でもさせてたくさん聞かせよ?それまでボク達は与えられた役目をちゃんと果たそ?ね?」

 

「………だからだろうよ…。」

 

「秋?…。」

 

「…無事に帰って来るかどうか分かんねえから、落ち着かねえんだよ…。」

 

「「……。」」

 

「いや、別に悠兄さんが負けるとかこれっぽっちも思ってねえよ?ただ、この前みたくまた傷だらけで戻って来てその後なんも無かった様に振る舞う。っつう周りが心配するような事しちまうんだよなぁって思うとよ…。」

 

「…そう、だね…。」

 

「…そういうの、マジやめて欲しいよね…。」

 

三人が一層暗い顔で俯いてた時だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ービーッ!ビーッ!ビーッ!ー

 

「ッ!」

 

「ちょッ、何コレ!?」

 

「非常用のアラームだよ!設置したセンサーが何かを察知したんだ!」

 

いち早く最上がラボの端末を起動させて街に設置したセンサーの位置を割り出し端末の画面上にカメラの映像が流れた。

 

後ろから覗き込む秋と鈴谷も画面に写しだされた映像を見てみると写ってたのは逃げ惑う街の住民達がインベスの群れを相手に逃げている映像が流れていた。

 

「これは…ファントム?でも聞いてたのと全然違う…。」

 

「何コレ!?キモッ!!!」

 

「おいおい何の冗談だよ……何でインベスがこんなにいんだよ!?」

 

「知ってるの!?この気持ち悪い虫怪人!?」

 

「知ってるも何も最悪な奴等だよ!!」

 

<皆!>

 

インベスを見て混乱する秋であったがそこに台座に設置されたクリムが姿を見せる。

 

<とにかく非常事態だ!私と秋はすぐ出撃する。

鈴谷、キミは向こうと連絡を取り部隊を市街地に配備してくれ!最上は此処で街の状況を送られた部隊に逐一報告を。>

 

「了解じゃん!」

 

「任せて!」

 

<秋!我々も速く現場に。>

 

「分かってるって!ヤバい事態になる前に早く倒さねえと…!」

 

クリムからの指示を受けて各自行動を開始するなか、秋は地下から出てガレージに停まってるガタックエクステンダーの元へ向かおうとする。

 

「ッ…ラ・フォリアちゃん。」

 

「…行くんですよね?」

 

ガレージに上がった秋を待ち構えてたのは家の中に居た筈のラ・フォリアだった。その後ろでは、傍に付いてた三隈と熊野が申し訳なさそうに立っており、熊野が事の事情を説明する。

 

「すみません。テレビで街の事が流れてて…。」

 

「…悠は、戦ってるんですね?それもかなり困難な。」

 

「な…!」

 

「…アナタは隠し事が下手ですね…帰って携帯を見たあの表情から大体察せましたよ。」

 

「…あの…ラ・フォリアちゃん。悠兄さんは、その…。」

 

「……ハイ。」

 

言うべきかどうか悩む秋だったが、ラ・フォリアが秋のヘルメットを差し出した事にキョトンとするもラ・フォリアは笑顔で応える。

 

「…私にはアナタ達の様な力はありません。こうして無事を祈って送り出すだけしか出来ません。」

 

「ラ・フォリアちゃん…。」

 

「私、この家で皆と過ごす日々が楽しくて好きなんです。毎日が新鮮で、新しい事ばかりで。

…だから、ちゃんと帰ってきてくださいね。アナタも、悠も。」

 

「……。」

 

秋はラ・フォリアからヘルメットを受け取ってエクステンダーに跨る。

 

「…心配すんなよ。ラ・フォリアちゃん。

きっちり勝って。みんな揃って帰って来るさ!…だからオレは死なない。悠兄さんも、オレが死なせない。」

 

「…ハイ!」

 

秋は笑顔で送り出すラ・フォリアに対し、自身も笑顔で応えエクステンダーのアクセルを回した。

 

 

 

インベスが蔓延る街へトップスピードで向かう最中、後ろからネクストライドロンが来て並走しだすと窓からクリムが変身したダークドライブが見える。

 

<秋。街に居るインベスの数は相当のものらしい。どうにかして食い止めなけれこの街のみならず至る所に被害が広がってしまう!>

 

「あぁ!それなら…!」

 

秋の元にガタックゼクターが飛来し、秋はそれをキャッチする。

 

「変身ッ!」

 

<< HENSHIN >>

 

秋はガタック・マスクドフォームへ変身するとガタックエクステンダーの両ハンドルを内側に押し上げるとエクステンダーに電気が走る。

 

「キャストオフッ!」

 

<< CAST・OFF >>

 

ガタックがエクステンダーから跳び上がると、エクステンダーの本体が両側に開き車体内部から挟撃棒・エクスアームが突き出すと宙に浮かび、サーフボードの様になったエクステンダーにライダーフォームとなったガタックが乗った。

 

<< CHANGE STAG・BEETL >>

 

「マッハ・スピード・速攻で駆逐だ!!クロックアップ!!」

 

<< CLOCK・UP >>

 

エクスモードとなったエクステンダーもクロックアップに対応出来る事でガタックはダークドライブの前から姿を消した。

 

ダークドライブも遅れを取らないよう、ネクストライドロンのアクセルをマックスに踏み込み街へ向けて駆けだしてった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見ていた。

 

明晰夢というものか悠は自分が今気を失って夢を見ているのだと目の前の光景を前に冷静に判断してた。

 

 

映画のスクリーンみたいに写しだされてるのは過去の映像。どこかのドームの敷地内で眼前には自身が変身してるライダー、リュウガが息を切らして大の字で寝ている姿とそれを少し離れた所で見ている茶色のコートを着た男が写しだされてた。

 

悠は何処か引っ掛かる感覚を脳裏に感じながらも一先ずその光景を眺める事にした。

 

 

 

 

 

 

「──驚いたな。」

 

「…何に、だよ…。」

 

「確かに俺はこの中から契約したいモンスターを選べ、と言ったが。まさか全てのモンスターを屈服させてすべて契約するとはな。」

 

「人が鍛錬してる時に勝手に出て来て、モンスターわんさか出して、コッチの話ガン無視で話し進めるアンタが言うか。」

 

倒れるリュウガにコートの男は顔色を変えず無表情で胸の内をリュウガに話す。

 

倒れてるリュウガの体には至る所に傷が目立ちバイザーもボロボロ。仮面もひび割れてる状態であり、そんなリュウガの周りには男が言った様に契約したモンスターのカードが散らばってた。

 

ここで寝転がってたリュウガが起き上がり、仮面越しにコートの男と目を合わせる。

 

「…でだ。いい加減こっちの質問に答えてくんねぇかな?

なんでココ…ミラーワールドにアンタが居て、俺の前に姿を現わした?えぇ?”神崎 士郎”!」

 

コートの男、神崎 士郎は悠が今使ってるカードデッキの開発者であり仮面ライダー同士で戦わせるバトルロワイヤル、ライダーバトルの創始者である存在。

 

悠の記憶には神崎 士郎はとある目的の為にライダーバトルを始め、その結果に満足がいかないときは時を遡ってその結果を無かった事にしもう一度ライダーバトルを行うと言うある意味危険な男。

だが、最終的にその目的を果たす事を断念し自身の存在を消した筈。その男が何故悠の目の前に居るのか只々謎であった。

 

その疑問に神崎は顔色一つ変える事無く、淡々と語り出す。

 

「お前は恐らくライダーバトルの数ある結末の一つである俺の最後を知っているようだが、幾度も繰り返してきたライダーバトルの結末はその全てが様々な終わりを迎えた。

最後の一人が13人の内の誰か、または相打ちで勝者の居ない結末など。お前が想像している以上の結末を迎えたライダーバトルを俺は繰り返してきた。

そしてお前の前に居るこの俺も、数多くの結末迎えた内の一つに居た神崎 士郎と言う事だ。」

 

「…簡単に言えばパラレルワールドみたいなもんね。…で?俺はまだ肝心の何で俺の前に姿を見せたかだ。

少なくともここには何百回も来てるぜ。それがなんで今更…。」

 

「お前を見ていた。”俺の知らない仮面ライダーとその契約モンスター”。ライダーバトルが終わり、モンスターしか存在しないこの世界でモンスターを相手に戦い続けるお前をずっと監視していた。」

 

(?……ここはリュウガの居ない世界なのか?それにライダーバトルが終わった?

…あの野郎、何が丁度いい修業場所だ。)

 

「だがライダーバトルが終わった今、お前が何故俺の知らないライダーになっているのかはどうでもいい。それよりも聞きたい事がある。」

 

「…何?」

 

「お前は何故戦う?何故、力を欲する?」

 

「必要だからだ。」

 

神崎の問いにリュウガ、悠は迷いも無く即答する。仮面で顔は見えないが、その眼には確かな意志があった。

 

「俺はこれから嫌と言う程性根腐った未知数の敵と殺し合う。その為に経験と力が必要だ。」

 

「それはお前でなければいけない程か?それに今お前が得た力は身を滅ぼしかねない力だ。三体なら兎も角、十体も契約するなど俺も初めて見たのでな。」

 

「……俺だから、丁度良いんだよ。」

 

「何?」

 

「…今の俺は、帰る家も、待ってくれる家族も、夢も無くなった死に損ないなんでね。

そんなヤツが何処でどう死のうがどうでも良いんでね…。だから正直アンタが羨ましい。」

 

「羨ましい?俺をか…?」

 

「アンタのやった事は、関係者もそうでない奴からしたらそりゃすっごく傍迷惑な事だよ。

…でも、誰かの為にそこまでの行動を起こせるっていう行動理念が、もう今の俺には無いんでね…。」

 

「……。」

 

神崎に問いに自身も淡々と答えるリュウガであったが、仮面で隠した顔は下を向いて何処か哀愁が漂っていた。

 

神崎はそんなリュウガをただじっと見つめた後にコートの中から一枚のカードを投げ渡してきた。

 

「あ?……なんだよコレ?」

 

「ライダーバトルを効率的に進める為に用意していたカードだ。だがそのカードが使われる前に今回のライダーバトルは終了した。」

 

「要は在庫処理かよ。…要らねえよ、こんなん…。」

 

「力が必要な貴様なら、いずれそのカードの力を使う時が必ず来る。使うも、破り捨てるも、貴様の勝手にするがいい。」

 

神崎はリュウガの意見を無視して背を向けて歩き出した。もう何も聞く必要も言う必要もないとその背中で語る様に。

 

「……なぁ。最後に一つ、これは俺の単なる興味本位なんだが…このカードが使われる筈だったライダーバトルはどんな終わりを迎えたんだ?」

 

「それこそ参加者では無いお前が知る必要は無い。

…俺はまだ諦めない。何度でも………俺の造ったライダーの力を使うのならお前も最後の最後、死が訪れるまで……戦え。」

 

振り向く事無く告げた神崎はその一言を最後にリュウガの前から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ん。」

 

目を覚ました悠の気分は最悪だった。

 

焼け焦げた匂いが辺り一面に充満し、体は鉛のように重い。ぼやけた頭で何故こうしているのかを遡るとロードマルスの攻撃で気絶してた事を思い出す。

 

「ンッ…?体が…。」

 

重い体を起こそうとした悠であったが、未だ生傷があるが先程より幾分か動ける特に左肩など肩と脇の半分の肉が両断されてたと言うのに捲ってみると傷口が塞がって大きな傷跡がある事に首を傾げるが、背後に感じ取った気配で大体の事を予想できた。

 

「…動ける様にしたのは、アンタの仕業か?サガラ。」

 

「ん…まぁ一応、な。お前さんにはちとやって貰いたい事があるもんでな。」

 

起き上がったからに着いた泥を落としながら背後に話し掛ける悠。そこに居たのは悠と竜二の死闘を見ていたサガラが居た。

 

「悪いが今アンタの頼み聞いてるヒマは無いんだ。俺は…。」

 

「インベスになった小金井 竜二を追う、か?それなら奴はこの森にはいない。今お前さんの居る世界でインベスを引き連れて暴れているよ。」

 

「なんだとッ!?…あの野郎か…ッ。

オイ!なんなんだアイツは!?お前の事だ、どうせ知ってるだろう!」

 

「教えても良いが、今のお前にそんな余裕があるとは思えんな。

黒ローブの男と街で暴れてるインベス、今のお前にとってどっちを優先する?」

 

「…チッ。…頼みってのは、街で暴れてるインベスの事か?」

 

「理解が早くて助かる。

前にも言ったがあの世界は非常に不安定な世界だ。簡単に言えば天秤みたいなもんだ。僅かなバランスを保ってなんとか釣り合ってる。

だが今あの世界に居るインベス達がその存在を持ってこのヘルヘイムとの繋がりを結ぼうとしている。そうすると…。」

 

「…天秤のバランスは崩れ、あの世界もヘルヘイムも消える…。」

 

「そうだ。それだけは阻止せねばならない。だからお前さんには、あの世界で暴れてるインベス達を一匹残らず刈り取って欲しい。勿論、インベスにされたアイツもな。」

 

「……言われずとも。」

 

悠はロックビークルを開錠しローズアタッカーに跨ろうとする。が、その直前でサガラが声を掛ける。

 

「ちょい待ち。お前、あの時どさくさに紛れてアイツのロックシード拾ったろ?ちとそいつを貸して見ろ。」

 

「?…何する気だ。」

 

「イイからホレ。早くしろ。」

 

サガラが差しのべた手に悠は渋々ポケットに入れてたロックシードを渡す。

 

それはロードマルスが攻撃を放つ直前に偶然手にしたロックシード。竜二の使ってた金のロックシードだった。

 

「…コイツは確かに黄金の果実の力だが、所詮は良く出来た模造品だからな。」

 

サガラが手にしたロックシードを両手で包み込むと手から激しい光が指の間から放たれ思わず目を瞑りそうなほどだった。

 

やがて光が収まると重ねてた手をどけてみると、そこには以前のような金のリンゴのロックシードでは無く錠前の形から離れた、”鍵”だった。

 

眼を開いて驚いてる悠にサガラは愉快そうな笑みを浮かべる。

 

「こんなカンジに形を変える事ならオレにも出来る。

さぁどうする?お前の前には今新たな道を切り開くための鍵がある。だがコレを使えばどういうリスクがお前を襲うかはオレには分からない。

オーバーロードにはならないとだけ言えるが、最悪の場合一回使っただけで死、という可能性も無くは無い。さぁどうす──。」

 

「それも言われずともだ。」

 

サガラの言葉が終わるより前に悠はサガラの手からロックシードを取る。

手にしたロックシードを見る悠をサガラに大した変化は無く、こうなる事が分かってた様に見える。

 

「そうだよな。お前はそういうヤツだったよな。」

 

「あぁ。……でも…。」

 

「ん?」

 

「…何でも無い。これは使わせて貰うぞ。」

 

「おう。…っとそうだった。ホレ、落としもんだ。もう失くすなよ。」

 

ローズアタッカーに跨る悠にサガラはカチドキロックシードを投げ渡した後アクセルを吹かした。

 

元の世界に戻って行ったのを見届けたサガラは、何処か微笑ましげであった。

 

「…どうだ?中々に面白い奴だろう?」

 

「…だから肩を持つのか。見届ける役目のアンタが…。」

 

サガラの背後から歩み寄る青年。神々しい光を放ちながら歩み寄るその存在にサガラは語り続ける。

 

「まぁ最初は興味本位で近づいたがもうこれっきりだ。これ以上は流石に贔屓だなんだて文句言われそうなんでな。

そういうお前こそ助けたおまけにアイツの傷を癒すだなんて、人の事言えないぜ?」

 

「…アイツにはインベスを倒してもらいたかったから最低限の手を貸しただけだ。オレが出る訳にはいかなからな。」

 

「そりゃそうだ。お前さんの立場なら尚更…。時に見たか?最後のあの顔。オレにはあの時オレがお前に差し出した鍵を受け取った時と同じに見えたぜ。

てっきり戒斗寄りだと思ったが、あの世界の人間との日々がアイツを変えたんだろうな。」

 

「…オレはオレ。アイツはアイツだ。アイツがどう戦うも。それはアイツが決める事だ。」

 

「…そうだな。ま、それも込みで見させてもらうか。アイツがちゃんとやってくれるかどうか、これから見届けなくてはならないからな。」

 

そう言ってサガラは煙の様に消えてった。

 

その場に残されたのは白銀の鎧を纏った金髪の青年。

 

「…そう、オレとアイツは違う。だけど、誰かの為にという思いは、オレ…いや、オレ達と一緒だ…。」

 

微笑みを浮かべるは黄金の果実を勝ち取った──始まりの男。

 

「……頑張れよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギシャァァアアッ!!」

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

同時刻。街での方ではインベスによる被害が続出しており混乱に溢れていた。

 

その中に初級インベスに囲まれて壁に追いやられたスーツ姿のサラリーマンが絶体絶命の危機に追いやられていた所だった。

 

「待てぇぇぇぇッ!!!」

 

クロックアップでいち早く到着したガタックは、エクステンダーのエクスアームを用いた体当たりを下級インベスに喰らわせた。

猛スピードの特攻とエクスアームの強靭な刃がインベス達に炸裂し爆散。追い込まれてたサラリーマンは腰が抜けたのかへたり込んでた。

 

「フゥ…おいアンタ大丈夫か!?」

 

「ぇ…あ…はい。大丈夫です…。」

 

「そうか、ここは危険だから早く逃げな!」

 

エクステンダーを操り颯爽とその場を後にしたガタック。

サラリーマンは呆然とその後ろ姿を見ながらこう呟いてた。

 

「…仮面…ライダー…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!ハッ!ハッ!もうッ!何のよコイツ等ッ!」

 

街の少し離れた街道で偶然にもインベスの襲撃に巻き込まれたハルナはインベスから逃れるべく駆け回っていた。

 

だが只逃げ回っているだけで無い。道中傷ついた人などの治療や避難の誘導など自主的に行いながらインベスから逃れていたのだ。

汗だくで額の汗をぬぐいながら息を整えるハルナ。建物の影から相当な数のインベスの暴動を目に自分もそろそろ避難した方が良いと思っていた。が、そう思って矢先。ハルナの目ある光景が写った。

 

 

 

 

 

「ハァ!ハァ!お姉ちゃん!」

 

「止まっちゃダメ!頑張って走るの!」

 

「ギュァァァア!」

 

恐らく十歳にも満たない姉弟が一体のインベスから逃れようと必死に走っていた。

姉と思われる少女が弟である少年の手を引いて走っているが少女の方も限界なのか段々と走るペースが下がって行くのが遠目でも分かる程だ。

 

「ッ!…。」

 

ハルナは懐から悠に渡されたバックルとカードを取り出す。

 

コレを使えばあの姉弟を助けられる。なのに今バックルとカードを掴んでる手は寒くないのに震えていた。

 

動け、動けと頭で念じるも体が思うように動かない。言葉で言い表せない感情に支配されそうになっている時、遂に限界が来たのか弟の少年が転んで倒れた。

 

「あっ!…うぅ…!」

 

「シャアァァァッ!!!」

 

「ッ!ダメェ!」

 

転んだ弟をインベスから庇うように覆い被さる姉を見て、ハルナの中にあったナニかが…切れた。

 

「あ…ああああああああああああッ!!!!」

 

これでもかと必要以上に叫びながら走り出したハルナは、バックル・[ラルクバックル]に"CHANGE"と言う文字が書かれたチェンジケルベロスのラウズカードを入れると腰に着けるとカード上のベルトが装着され、バックルのゲート部を勢い良く横にスライドした。

 

「ああああああッッッ!!!!」

 

<< OPEN・UP >>

 

スライドして現れたAの文字から赤のオリハルコンゲートが眼前に生成されるとハルナはヤケクソ気味に突っ込んで潜り抜けインベスの元へ只一心で走る。

 

「しゃああああんなろおおおおおおッッッ!!!!!」

 

「ブギャッ!!!」

 

頭が真っ白な状態で放った全力のパンチはインベスの顔面を完璧に捉え盛大に吹き飛ばし爆散した。

 

拳を前に突き出した状態で放心していた。ハルナを前に二人の少女少年は目の前で怪物を倒した存在を見る。

 

赤いボディアーマーを身に包み、胸と側頭部に主張するようなAの文字が入った仮面ライダー。

 

仮面ライダーラルク。それがハルナの変身した、目の前の姉弟を救った仮面ライダーの名だ。

 

 

暫く放心状態だったラルクは腰が抜けたように女子座りで座り込む。そんなラルクを前に目をキラキラした少年と顔が強張ってる少女を目に、ラルクは気付いたように声を掛ける。

 

「あ……大丈夫?」

 

「あ、は、はい。」

 

「すっごーい!さっきのお化けが吹っ飛んだ!

ねぇ!お姉ちゃんって、仮面ライダーなの!?」

 

「え…あ。」

 

ラルクは座り込んだ状態で変身した向かいのガラスに映ってる自分を見てみる。

全身が身に纏ってて全く違和感を感じ無いボディアーマーに包まれ極めつけは顔を覆い被さってる仮面。どう答えるか暫く考えた後少し戸惑いながらもラルクは少年の質問に答える。

 

「…えぇ、そうよ。…一応、ね…。」

 

「うわぁ…本物の仮面ライダーだよお姉ちゃん!すごいよ!

ねぇあのおっきいドラゴン出せる!?ねぇ!ねぇ!!」

 

「こら!助けてくれた人に無茶な事言わないの!!

ごめんなさい。この子あのテレビを見てからずっと仮面ライダー、仮面ライダーって…。

…あれ?でもあなた、女の人ですよね?」

 

「まぁね。でも男の子の方が強いなんて事は無いのよ?女の子だって強い所はあるの。アナタがその子を守ったようにね。」

 

「ワタシ?」

 

「うん。凄いわよアナタ。大人でも早々できる事じゃ無いわよ。」

 

「…エヘヘ。」

 

ラルクに褒められたのが嬉しかったのか、顔を赤くしながら照れる少女を目に先程まで蝕んでた感情が消えたような気がした。

 

とりあえずこの子等を安全な場所まで送り届けよう。ラルクは足に力を入れ二人の子供を連れて街を駆けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ガタックはエクステンダーで街を駆け廻りながらひたすらインベスを駆除していった。高速で飛ぶエクステンダーのお蔭でインベスは順調に駆除していってるが余りに順調なこの流れにガタックは何処か疑問を抱く。

 

(何だこのイヤなカンジ……そういえばオレがさっきから倒しってってるの初級ばかりじゃん。上級が一匹も居ねえっていうのこの状況。どうにも胸騒ぎが…。)

 

普段からこういう知略めいた事は悠に任せてた所為か戦闘中だと言うのに集中できていないガタック。その隙の所為で横から高速で飛来してる物体に気付かなかった。

 

「ッ!?うおッ!?」

 

「ギィィィイイッ!!!」

 

突如ガタックに襲いかかって来た上級インベスであるコウモリインベスはガタックをエクステンダーから離すとそのまま掴んで空を飛んでいった。

コウモリインベスに捕まったガタックはすぐさまガタックカリバーを手にコウモリインベスの翼を斬り落とした。

 

重力の法則に従って落ちて行くコウモリインベスとガタック。翼を斬り落とされた事でバランスを崩したコウモリインベスは地面に落下したがガタックは問題無く着地してもう片方のカリバーを手にした。

 

「んにゃろう、人が頭使ってる時に襲い掛かりやがって!」

 

<< RIDER・CUTTING >>

 

ガタックは尽かさず起き上がって来たコウモリインベスにライダーカッティングを喰らわせ撃破。

 

カリバーを仕舞い放されたエクステンダーの元へ行こうとしたがそれを防ぐかの如くのエネルギー弾がガタックを襲った。

 

「グァッ!…クッ!何だ…!」

 

またしても突然の奇襲に反応出来なかったガタックの周りを取り囲むようにインベス達が次々と現れる。中には今まで姿を見せなかった上級の姿も数多くが見られた。

 

「オイオイ。女の子なら兎も角お前等に囲まれても嬉しくねえっての…。ん?アレは…!」

 

カリバーを手に構えるガタックの目の先に此方に歩み寄って来る怪人。ロードマルスが大剣を地面に引きずりながら此方に歩み寄って来ると、ガタックを取り囲んでたインベス達がロードマルスに道を空けた。

 

「お前…もしかしてオーバーロード!?だったらこれはテメエの仕業か!!」

 

【………ァアーー…。】

 

「…この野郎…ッ!」

 

ガタックの問いに答える様子が見られなかったロードマルスにガタックはロードマルスへ向かって駆けてく。途中にインベスの横槍が入るかと思ったがあっさりと通した事に違和感を感じたが今は目の前の敵に集中すべきと考えカリバーを振り降ろした。

 

「セリャアッ!!!」

 

ーギィィィンッ!!!ー

 

【………。】

 

「ッ…ウオォォオッッッ!!!」

 

冗談から振り降ろしたカリバーの一撃は確かに入った。だが攻撃を喰らった筈のロードマルスに何の変化も見られない事にガタックはカリバーを振るう手を続けた。

 

何度も何度も、飛び散ってる火花が確かに当たってる事を証明している筈なのにガタックの嵐の様な斬撃にロードマルスは未だ大した変化が見られない。

 

「クッ…セアッ!!」

 

【…ガァッ!」

 

「ッ!──うわッ!」

 

カリバーを振るう手を休めず更に振るペースを上げたガタックだがロードマルスはガタックの攻撃を無視を払う動作で弾き、ガタック諸共弾き飛ばした。

 

倒れるガタックにロードマルスは大剣をの切っ先をガタックに向けて歩み寄る最中、ロードマルスの体に光弾が直撃し動きが止まった。

 

【?…。】

 

<< NEXT! >>

 

<ハァッ!>

 

ガタックの後ろからダークドライブが跳びながらエネルギーをチャージしたブレードガンナーの銃撃を乱発する。

雨の様に降りかかる光弾はロードマルスとその周辺を巻き込み、辺りは黒煙に包まれた。

 

「ベルトさん…。」

 

<遅くなって済まない。インベスを倒しながら来るのに時間が掛かってしまった。>

 

「いや問題ねえ。ただあるとするなら…。」

 

<ああ。当然、アレだろうな…。>

 

ガタックとダークドライブの視線先には、黒煙の中からゆっくり歩いて来る無傷のロードマルス。

ロードマルスは手を頭上に翳すとエネルギー弾を生成しガタックとダークドライブに撃ち出す。二人はロードマルスのエネルギー弾を後ろに跳んで躱す。

 

「っと!…一発でこの威力か…。」

 

<直撃は避けた方が良いな。それにあの防御力の前では並の攻撃では大したダメージは与えられん。>

 

「なら必殺技バンバンぶつけてダウンさせればいいさ…。でも…。」

 

<ウム。まずこの状況をなんとかせねばな…。>

 

「ギィィイイ!!」

 

「ギャァァアア!!」

 

二人を囲むように立ち塞がるインベスの群れ。あのロードマルスが指示を出してる様には見えないが周りを囲んでるインベス達はロードマルスに危害を加えるであろう障碍者から守ろうとしている姿勢が見えた。

 

「あーーもう、ホントこう言う時に限って悠兄さんは、遅刻しまくりだっつうの。」

 

<全くだ。私の相棒は時間にルーズで困る。>

 

「あ!言っとくけどベルトさんは順番的に一番で、相性的にはオレが一番なんだからな!」

 

<フフッ。そうか。>

 

ガタックはクロックアップで囲んでるインベス達を全部とはいかないがある程度一掃しようとスラップスイッチを押そうとするが、何処からか聞こえた砲撃音に動きが止まった。

 

「この音…。」

 

<あぁ。どうやら援軍が来たらしい。>

 

二人が見上げた先には此方に向かって落ちて来る砲弾。砲弾は取り囲んでるインベス達目掛けて降り注ぎ、ガタックに着弾時の熱と衝撃が襲ったがダークドライブが支えてくれた為吹き飛ばされることは無かった。

 

「うわッぷ!……ちょっとォ!撃つなら撃つでもう少し考えて撃ってくれよ!?」

 

<まぁまぁ。悪気があって撃って来た訳ではないだろう…。>

 

「おーーーい!助太刀に来たぜ!!」

 

文句を言うガタックをダークドライブが鎮めるなか遠くから聞こえてくる摩耶の声に二人は視線を向けると、滑る様に此方に向かって来る、摩耶、鳥海、長良、五十鈴、名取、由良、秋月、照月、初月が陣を組んでやって来た。

 

「っと!いよッ!待たせたな!」

 

「遅れてすみません。敵の数が思いの外多くて…。」

 

「でもみんなやっつけたよ!鳥海さんの指示と私達のコンビネーションで!」

 

「こら姉さん。勢い余って調子乗らない。私達これが初陣なのよ?」

 

「うわぁお、初めてで全部倒すとかマジパネぇ。」

 

「当然!伊達に厳しい訓練受けて無いわよ!気の弱い名取だってここまで追いついて来たんですから!」

 

「い、五十鈴姉さん…!」

 

<とにかく助かるよ。早速だがキミ達に一暴れ頼みたい。私達は敵の首謀の討伐に集中する。>

 

「へへっ、言われずとも暴れるさ。腕が鳴るぜぇ!」

 

「分かりました。インベスの駆除はお任せください。皆さん聞きましたね!」

 

「「「「「「「ハイ!」」」」」」

 

<…ウム。これなら問題無く戦えるな。>

 

「だね。無理だけはすんなよ皆。」

 

「ハイ!頑張ります!…って、照月!?」

 

「大丈夫、訓練通りにやれば大丈夫…。」

 

「大丈夫だよ姉さん。何かあったらボクと秋月姉さんがフォローするよ。」

 

「では皆さん、先程と同じようにいきますよ。

摩耶姉さんは空から来る敵に対空砲火を!秋月型の三人は摩耶姉さんの防衛と対空を!長良型の皆さんは二人一組で敵の迎撃を行ってください!」

 

鳥海の指示通りに動く艦娘達を背にガタックとダークドライブは未だ動きを見せないロードマルスに向かって行く。

 

「よし!オレがヤツを撹乱して隙を見せる、その時にベルトさんも…!」

 

<必殺技で討つと言う訳か…分かった。その手で行こう。>

 

「よし──クロックアップ!」

 

<< CLOCK・UP >>

 

ガタックはカリバーを構えクロックアップを発動しロードマルスへ向けて集中攻撃をした。

 

前後左右、縦横無尽から攻撃を繰り広げ、目に見えない集中攻撃に流石のロードマルスも不動の構えが解かれつつあり効果ありだった。

 

そして離れた所ではダークドライブが腰を落として構え、ブレードガンナーに限界までエネルギーを籠めていた。ただ一瞬の隙の隙を狙って勝負を決める為に。

 

 

 

 

───そして遂にその時が訪れた。

 

 

ロードマルスの体が宙に打ち上げられた。

 

<< CLOCK・OVER >>

 

「ベルトさぁぁぁんッ!!!」

 

<< RIDER・KICK >>

 

<OK!>

 

<< NEXT! >>

 

 

宙に浮かんだロードマルスにクロックアップが解けて見える様になったガタックがロードマルスの背後に回ってライダーキックの体制に入り、それが背中に決まると蹴られたロードマルスはダークドライブに向かって行く。

 

そしてブレードガンナーにフルチャージしたエネルギーによって刀身が伸びたブレードガンナーをダークドライブが横一閃に斬る。

斬撃はロードマルスの胴に横一文字を刻み吹き飛んでった。

 

「……。」

 

<……。>

 

倒れたロードマルスを警戒しながら見る二人。

倒せずとも今ので堪えてくれればと祈りながら武器を収めずにいるが、その期待を裏切る様にロードマルスはムクリと起き上がった。

 

「ッ!…オイオイ。」

 

<随分タフなヤツだ…。>

 

起き上がるロードマルスに薄々分かっていたもののそれでも動揺してしまう二人を余所に、ロードマルスはダークドライブに着けられた傷口に触れると、傷口がゆっくりと塞がっていった。

 

<自己再生能力!?なんて奴だ、あれ程防御力に加え回復まで持ち合わせているなんて…!>

 

「ベルトさんもう一度さっきのやろう!今度は頭とか狙って・(ヒュンッ!)・なッ!?」

 

<ッ!?>

 

かなり離れてた筈のロードマルスが一瞬でガタックとダークドライブの眼前にまで詰め寄って来た事に反応出来なかった二人にロードマルスは手にした大剣をガタックとダークドライブに横薙ぎに振るい大きなダメージを負わせた。

 

呻き声を上げ吹き飛ぶ二人に追撃を仕掛けるロードマルス。大剣に赤い電気が走り、力を溜める動作を二人は回避しようと立ち上がるが先にロードマルスの技が放たれてしまい。三日月状の赤い斬撃は二人を襲った。

 

「グァァアアァッ!!!!!」

 

<ヌァアアアァァッ!!!!!>

 

ロードマルスの斬撃を喰らった二人は変身解除こそされなかったが負ったダメージは相当のモノだった。

武器を支えに立とうとする二人を前にロードマルスはゆっくり歩み寄る。

 

「ゼェゼェ…ッ、まだまだァ!」

 

<あぁ。負ける訳には…いかん!>

 

傷ついた体で立ち上がろうとするガタックとダークドライブをロードマルスは終わりにさせようと大剣を構えた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーブォォォォォンッ!!!ー

 

 

二人の背後から聞こえて来たエンジン音。長良達がインベスに向かって砲撃してるその間を潜って猛スピードで駆けるバイクを目にガタックは仮面の下で笑みを浮かべた。

 

猛スピードで突っ込んでくるバイク、ローズアタッカーはガタックとダークドライブを飛び越えると乗っていた人物がバイクから離れ、バイクは操縦者を失ったままロードマルスに突っ込んで行きクラッシュして爆散してった。

 

そして二人の前に立った人物は被ってたヘルメットを脱ぎ捨て、後ろを振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……スマン遅れた。」

 

「…ハッ、ホントだよ、コレがデートならもう最悪の場面だったよ。」

 

「…そうだな。うん。…決めた、待ち合わせには一時間前に着こう。」

 

<それはそれで早すぎると思うが?>

 

ヘルヘイムからようやくこの場に来た悠は立ち上がったガタックとダークドライブと並び立つ。

 

「いやいやベルトさん、甘い甘い。デートってのも案外戦いと一緒なもんだよ。

…さて、ようやく揃った事だし、行こうぜ悠兄さん!」

 

「…それなんだけどさぁ。悪いけど俺一人でやらせてくんねえかな。…アイツはどうしても俺がやらなきゃいけねえんでね。」

 

<何を言う!?敵は圧倒的な攻撃力と防御力で、おまけに自己再生までする相手だぞ!>

 

「そうだぜ!何でか知んねえけど悠兄さんもやる前からそんなボロボロで…三人揃ったんだ!悠兄さんを含めたさっきの戦法ならやれるって…!」

 

「…こんな騒ぎを起こしちまったのは俺の所為でもあるんだ。尻拭いしなきゃいけねえ…頼む。俺を信じてくれ。」

 

「悠兄さん…。」

 

<悠…。>

 

「頼む。」

 

ガタックとダークドライブに向ける悠の眼差しは真剣そのもの。やがて爆散してった跡からロードマルスの姿が現れた。

 

「……ハア。しょうがねえ。ヤバくなったらすぐ行かせて貰うからな!」

 

<その代わり、ちゃんと勝って来い。キミの帰りを待つものがあの家に居るのだからな。>

 

「あぁ……ありがとうな。」

 

二人に背中を押されロードマルスの元へ向かう悠。

相対しだすと、ここまでなんの変化も様子も見られなかったロードマルスが悠の姿を見た途端初めて変化が見られた。

 

【…ァ……アァ~ァ…。】

 

「…まだかすかに理性が残ってるか?……まぁいい。どちらにせよ俺がお前にやる事は一つだ。」

 

悠は戦極ドライバーを装着する。それに反応してロードマルスは大剣に力を籠め始める。

 

【アアアァァァーーーーッ!!!!】

 

「…倒してやるよ。そうしなきゃ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ォ、レを…とメ…ろ。──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──そうしなきゃお前を助けてやれねえからな!!!───変身ッ!!」

 

<< カチドキ! >>

 

<< LOCK・ON >>

 

【アアァッッッ!!!!!】

 

放たれた斬撃と共にカッティングブレードを倒し、駆ける悠。

 

今は敵として倒すだけでなく、望みもしない力で苦しむ男を解放するために。

 

 

 

<< カチドキアームズ! いざ出陣!エイ・エイ・オー! >>

 

 

「ウオォォォォアァッ!!!」

 

迫る斬撃を腰の無双セイバーを抜いて両断した武神鎧武・カチドキアームズはロードマルスへ肉薄して行く。そしてロードマルスも雄叫びを上げ武神鎧武へと肉薄して行く。

 

「ラァッ!」

 

【ブルァッ!!!】

 

振り降ろされる大剣と刃は打ち合い、それに打ち勝ったのはロードマルスだった。

弾かれた無双セイバーと共に後ろに下げられる武神鎧武。バレッドスライドを引いて銃弾を浴びせるもそれに怯む様子無く突き進むロードマルスの一撃を喰らい吹き飛ばされてしまう。

 

「グッ!…。」

 

「悠兄さん!…。」

 

「来るなァ!!」

 

後ろでガタックが此方に来ようとしたがそれを止める武神鎧武。

無双セイバーを杖代わりに立ち上がり、未だ傷を負ってる体の具合からみて今の自分ではロードマルスに立ち向かえない事を突き尽きられた。

 

 

そう…今の自分では。

 

 

「…やっぱ使うしかねえか…。」

 

そういって取り出したのはサガラから受け取った竜二の金のロックシードだったモノ。

 

新たな高みへ入る為の鍵。だがその代償は計り知れない禁断の力。

 

(…構うか。俺は…。)

 

脳裏に浮かぶはこの世界に来てからの味わう事の無かった日常。

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングで一人で取る筈の食事が、何時の間にか四人で囲む食卓に…。

 

広く殺風景なラボが小さな子供の遊び場になったり、共に武器を開発したりする場になったり…。

 

学園の教室の一角で、ポーカーをする場面…。

 

自販機の前で男三人が集う日課等…。

 

廃教会で拾われた猫の世話をする思いも寄らない日常を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺は…!)

 

 

【ガァァアアアッ!!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< フルーツバスケット!! >>

 

 

新たな領域へ進む扉が、開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

ーギュイィィンーーギュイィィンーーギュイィィンー

ーギュイィィンーーギュイィィンーーギュイィィンー

 

 

 

【ッ!】

 

 

 

 

武神鎧武の頭上に現れる幾つものクラックから降りてくるアームズ。

 

ブラッドオレンジ・バナナ・ブドウ・メロン・レモン。幾つもの展開前のアームズがロードマルスにぶつかりながら宙を舞い、やがてアームズは武神鎧武の周りを囲う様になると、戦極ドライバーのフェイスプレート部が変わり鍵穴のようなモノが出現する。

そしてその鍵穴に、開錠した”極ロックシード”を挿し込み前に回した。

 

 

 

<< LOCK・OPEN! >>

 

<< 極アームズ! >>

 

 

 

そして囲んでアームズが全て武神鎧武取り込まれると重装甲の鎧が弾け飛んだ。

 

そして、そこに現れたのは…。

 

 

 

 

 

 

 

<< 大・大・大・大・大将軍ッ!!! >>

 

 

 

 

弾け飛んだ鎧から剥き出しなるは白銀。

 

西洋様式の鎧を模り、血のように紅いマントに茨の装飾。胸部にはオレンジ、バナナ、ブドウ、メロン、イチゴ、スイカが描かれ額には三日月の装飾と虹色の複眼。

 

 

仮面ライダー武神鎧武・極アームズ

 

 

 

「こっからはサドンデスだ!」

 

 

 

 

 





ここで詳しい解説。





ロードマルス

下半身がロードバロンの様に足元にマント状のモノが掛かってるモノに、上半身はマルス鎧をロードバロンやデムシュのようなデザインで頭部は耳の真っ直ぐ伸びた角で金と黒。
武器はデムシュとロードバロンと同じ形状です。



武神鎧武・極アームズ

今作でのオリジナルアームズ。
大体のデザインは本家の鎧武と一緒だが、相違点はマントが紅一色の茨が装飾が着いたモノと手足にも紅い茨の装飾が着いただけ。後は一緒。








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