その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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今回はもう殆どが戦闘シーンです。

難しかった、本当にどう書けばいいか分からなかった!


乱舞・1

 

 

ヘルヘイムの森に響く爆発音。木々が倒れ、赤い火の手が上がる。そんな激しい戦火の様子を遠くから眺める人物。いや、人を模った存在が眺めていた。

 

 

 

「──全く、アイツ等ときたら…。」

 

普段静寂に包まれている死の森は生死を賭けた死闘の場にされた事に、森の意志でもある存在。以前悠に接触した民族衣装を身に付けた男。サガラは森を一望できる崖の上にて火の手が上がる森の様子を眺めていた。

 

 

「確かに好きに力を使えとは言ったが、なにも此処で戦る事は無いだろうに…。

このままじゃあ森を全部焼き尽くしかねん勢いで暴れやがって。ここまで騒ぐと流石の”アイツ”カンカンなって出て来ちまう程だな、こりゃあ…。

──にしても。」

 

サガラは森の様子を見ながら何処か不満げな表情をして空を眺める。森の一部である彼にしかわからない感覚。

今暴れてる二人なら許容は出来るが、今感じてる得体の知れないモノだけは受け入れられない。そう訴えている目をしていた。

 

「アイツ等が連れ込んで来ちまったのか、それともオレと同様に高みの見物する為に勝手に入り込んだのか…。

まっ、どちらにせよ、この不快なカンジの持ち主が動くのはあの二人の決着次第ってワケか…。」

 

異物が入り込んだような不快な声を上げるなかサガラは下の森で繰り広げてる激闘を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

かつて黄金の果実を巡って戦った鎧武者と騎士の一騎打ちを思い立たせながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウオォォォオラァッ!!!」

 

「うおッと!…ハッ!」

 

そして森の中ではサガラが言った二人、デュークこと悠と、マルスこと竜二の死闘が興じられていた。

 

マルスは大剣、ソードブリンガーにロックシードから送られるエネルギーを纏わせて大木の枝に乗ってるデュークに向けて大振りに振るい斬撃を放ち、デュークは他の木に跳び移って躱しながらソニックアローでの攻撃を繰り広げていた。

 

放たれた斬撃が巨木をいとも簡単に両断するのを後ろに空中で放った矢をマルスは盾のアップルリフレクターで弾くかローリング回避で防ぐなか、デュークは跳び移った木を支えにマルスに向かって跳躍。一直線に特攻を仕掛けた。

 

コレにマルスは真っ向から受けるつもりで盾を前に剣を後ろで構える。カウンターを狙っての構えだ。

空中では此方に向かって来る軌道は変えられない。故にマルスはカウンターを狙いにきたのだがこの時はまだ一度戦ったデュークドラゴンエナジーアームズの性能を完璧に思い出してなかった。

 

 

距離の間隔が5mを切った所でデュークの体が赤い霧状のモノへと変質し、軌道を変えたのだ。

 

「ッ!ヤベ…ッ!」

 

「ウラァッ!!」

 

デュークの能力の一つである体を霧状に変えての高速移動。これでマルスの正面に向かう軌道のコースを変えマルスから見て右側からデュークは不意を突いたマルスの隙を突いてアークリムによる一撃を叩き込んだ。

 

「グァ…!」と声を漏らて後ずさるマルスにデュークはマルスの盾を蹴って手元から離れさせ、その後鳩尾に向けて飛び膝蹴りを入れた。

 

「ごはッ!…。」

 

肺から一気に空気が吐き出されるのを仮面の下で顔が歪むマルス。勢いに乗ったデュークは盾を失ったマルスに追撃を仕掛ける為ブドウロックシードを取り出した。

 

<< LOCK・ON >>

 

「ハッ!」

 

<< ブドウ・チャージ! >>

 

矢先に集まった幾つもの紫のエネルギー球体が弾けると無数の矢が一斉にマルスへ向かって行く。盾を失ったマルスは大剣を盾代わりに防ぐが盾に比べ面積の小さい大剣では防ぎきれず所々に矢がマルスの体に直撃し火花を散らせていた。

 

「なろッ!……舐めんなぁッ!!!──デゥラァッ!!!」

 

マルスは力技とも言える衝撃波を大剣を振るって起こし矢を全て弾き飛ばした。

衝撃波はかなりの威力で遠くに居たデュークすらも吹き飛ばし掛ける程の荒業だが、足に力を入れて吹き飛ばさぬ様堪える。

 

「チッ!──馬鹿力かよ…!」

 

「…フンッ!」

 

マルスは、今度は自分の番と言わんばかりにデュークに向かって正面から跳躍。地面が抉れるほどの脚力で跳び、息をする間も無くデュークとの間を詰めた。

 

マルスはデュークに向けて大剣を上段から振り降ろしにいくのをデュークは下がって回避しようとするが、両手でしっかりと握られた大剣はデュークを空振るも、切っ先が地面に着いた途端、地面が割れた。

 

「ッ!?──のわッ!?」

 

片手では無く両手で勢い良く振った事で地面が割れる程…いや、地面を斬った剣戟は大剣・ソードブリンガーの切れ味もあって簡単に地面を割る程の力を得た事に意表を突かれたデュークだが、すぐさま追撃に迫ったマルスの突きをソニックアローで受け流す。

 

この時マルスは右手に持った大剣の突きをデュークは右手に持ったソニックアローで左に受け流していた。そこに空いているマルスの左手がソニックアローを手にしたデュークの手をがっちりと掴んだ。

 

「ッ!」

 

「ハッ!つーかまーえ…たァッ!!!」

 

「ごッ!?…。」

 

万力にでも絞められたような力で掴まれたデュークにマルスは強烈なヘッドバットをデュークに喰らわせる。かなりのものだったのか、デュークの意識が失いかけてるみたいでありフラフラと朦朧していた。

 

「ハイ!もう一丁!!」

 

「…何度も…喰らうか!」

 

「なッ!?──んがッ!!!」

 

マルスは更に強力なヘッドバッドをお見舞いしてやろうと今度は軽く跳躍して喰らわせようとした所に、朦朧としてたデュークの意識が覚め始め、跳躍したマルスの顎目掛けて頭突きを見事必中させた。

 

人体の急所を的確に狙われたマルスは、掴んでたデュークの右腕を放した途端トンファーキックを喰らい突放される。

間合いを空けたデュークはベルトに嵌ったロックシードを外し、対するマルスも首を大きく振るって正気を取り戻し、ソニックアローにロックシードを嵌めるデュークを見てすぐさまカッティングブレードを倒した。

 

<< LOCK・ON >>

<< ドラゴンフルーツ・エナジー! >>

 

「ハァッ!!」

 

<< COME・ON! ゴールデン・スカッシュ! >>

 

「デェイラァッ!!」

 

赤い龍のソニックボレーと金のリンゴを模ったエネルギー態が衝突した。

相殺した両者の必殺技は辺り一面を轟音と炎に包み、白煙が二人の視界を遮る。

 

「クソッ。何処行きやがったあの野郎…!」

 

マルスは視界が遮られてデュークの姿を見失い口調が荒ぶるなか、マルスの耳にメキッメキッと軋む様な音が聞こえてくる。

 

後ろを振り向くと黒い影のシルエットでその正体が分かった。森に生えてる大木が此方に向かって倒れて来ていた。

 

「んだよ…オラァッ!」

 

マルスは特に慌てる様子も無く、大剣で倒れてくる大木を上段に振り降ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、縦真っ二つに斬れた大木の次に目に映ったのは弓を引いてるデュークだった。

 

「ッ!」

 

「フッ!」

 

倒れる大木の影に隠れてたデュークの矢は容易くマルスのボディに命中。着地したデュークはよろめくマルスに今度はアークリムによる斬撃を見舞いし体を霧状に変えてその場から離れてった。

 

「ングッ!…なろッ、ちょこまかと!」

 

またしてもデュークを見失い周囲を警戒しだすマルス。

 

すると今度はマルスの背後から光矢が放たれ、マルスはコレを察知して叩き落とすが大剣を振り降ろした直後に今度は左からも光矢が放たれ喰らってしまう。

 

姿も見せずに隠れて撃ってくるデュークに苛立ちを隠しきれないマルス。だがこうしてる今も視界の悪さを利用しデュークは高速移動を使って撃つポイントをランダムに変え、着々とマルスへダメージを与え続けていた。

 

「……ウォォオォイッッ!!!

さっきからコソコソ隠れて撃ってきやがって!!!ちったぁ前出てかかって来いやァッ!!!」

 

「フゥ……戦いってのはゴリ押しだけじゃねえんだよ!こうやって色々有効利用しながらするもん…だッ!」

 

そう言ってデュークは隠れてた大木をアークリムで斬り落とすと、大木はまたもマルスへ向かって倒れて行く。

 

「同じ手が通じるかよ!!!」

 

マルスはまたデュークが木の影に隠れていると思い、今度は躱して、木の裏に回り込んで捕まえようと考えた。

 

大木が当たる直前を狙ってマルスは向かって右に跳ぶ。が、木の裏が目に入るとそこにデュークはいなかった。

むしろ目に飛び込んで来たのは、真っ直ぐ此方に向かって来る強化されたソニックアローの矢だった。

 

この時のマルスはデュークの策に自分がまんまと掛かった事に矢が当たる直前に気付いた。

 

大木を避ける位置を前もって予測して放つ。これは相手の行動パターン等が分からなければ出来ない所業だが、デュークは二度のマルスとの戦闘データをゲネシスドライバーにインプットしていたのもあって、今まで有利に立ち回れる事が出来た。

 

敵の中で一番に関わってるマルス、竜二だから有効な手だが、戦況はデューク、悠に傾きつつある状況であった。

 

強化されたソニックアローの矢を受けて吹っ飛ばされたマルスを木の影から様子見る。今までかなりの攻撃を受けたのもあってそろそろ決めるべきかのタイミングを見極めるべく注意深く見てたが、暫くして大剣を杖に立ち上がってきた。

 

ならばもう三発ほど矢をぶち込むだけだ、と、高速移動をしようとした時だった。マルスから先程まで見られてた怒りが感じられなくなり違和感を感じたデュークだったが、当のマルスは遠くに居る程のデュークに聞こえる程の溜息を吐くと、デュークに向けてか、言葉を発した。

 

「──カァーーーーッ!!!

参ったねぇ!!!こうも一方的にやられちまうんなんざよォ!!!コレがテメエの戦い方ってヤツかァ!?!?」

 

「…まぁね!こちらとらテメエとは違って命の取り合い嫌と言う程してんだ!力任せの喧嘩殺法なんざに遅れを取るかよ!!」

 

今居る位置を見つけられない様に注意を払って答えるデューク。少しでも体力を回復させるための時間稼ぎに話し掛けてきたのかはまだ分からないが何時でも撃てるように構えていた。

 

「成程なぁ…確かにケンカみたいなやり方じゃ勝てる訳無いか…。

んじゃ、ここは素直に経験豊富なオメェのやり方を参考にさせて貰いますか。」

 

「?」

 

マルスは大剣・ソードブリンガーを上に掲げると一瞬剣が光ると、森が騒ぎ出した。

 

「ッ!…アイツ何を考えてやがる!?」

 

マルスが使っている金のロックシード。それは黄金の果実に限りなく近い模造品なのだが、たとえ模造品でもヘルヘイムの森を操れるほどの力を秘めた強力なアイテム。

 

マルスは今まさにヘルヘイムを操りあちこちに生えてる果実の実った蔦が動き出してる。

 

デュークは森を操って自分をあぶり出そうとしているのかと考えたが次の光景を見て驚きを隠せずにいた。

 

蔦はデュークを探す所かマルスに向かい、そのままマルスに巻き付いたのだ。

体の至る所に蔦が巻き付き、理解が出来ずにいたデュークだがその変化はすぐ訪れた。

 

マルスに巻き付いてる蔦がまるで養分を吸われてる様に次第に枯れ始めていってるのだ。もしやと思い解析してみるとデュークの悪い予想は当たってた。

 

(アイツ…馬鹿かッ!?……ヘルヘイムの…この森のエネルギーを吸収してやがるッ!?)

 

デュークの想像を明らかに超えるマルスの行動にデュークは色んな意味で動揺を隠しきれなかった。

 

本来ならロックシードに変換してその力を使う筈のヘルヘイムの実の力、果てには実を生み出してる森の力までも吸収すると言う何とも言えない、最早無謀とも言える程の行動に開いた口が閉まらなかった。

 

そしてマルスの周りには枯れ果てて塵となる蔦と絞りカスになった実、太く逞しい大木も痩せ細ったように小さくなりマルスの周りだけ荒れた荒野となった。そんな荒野の中心でマルスは取り込んだ力の具合を見た後、大剣を後ろに引いて構えだした。

 

「お前の言った通り、周りのモノを有効利用してやったぜェ!!!

お礼に…コレでも受けとれやァッ!!!」

 

「ッ!──アレは…マズイッ!!!」

 

大剣・ソードブリンガーに、吸収したであろう森のエネルギーが発光しながら溜まっていくのを本能で危機を察したデュークは霧状の高速移動でマルスとの距離を出来るだけ遠ざける為に全力で離れた。

 

恐らくあの性格上からマルスが放とうとしてる技の威力と範囲は、近くに居たらヤバい。その予想は見事的中してた。

 

 

「オオォォオォオッッッ、……ンドリャァアアアアアアアアァァッッッッッ!!!!!」

 

「──ッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

───ドォォォオオオオォォォッッンッッッ!!!!!───

 

 

 

 

 

 

 

 

溜めに溜めたマルスの剣から放たれた渾身の一撃。

 

 

その威力は森一面、マルスを中心とした木々や草木が空爆にあったように全てが焼き野原となり、木々が全て焼け払われた事で、緑が茂ってた森の景色から一転してしまう程の威力。そして範囲は学園の校庭の敷地面積の十倍はいく程の地形を変える程の力であった。

 

これ程の強力な技を放ったマルスは特にこれといった変化は無かった。反動も、暴走もそう言った類の変化は見られずむしろ幾らでも撃てると言う平気な様子が見て取れるほどであった。

 

「…ほォー。自分でやっといてなんだがこりゃスッゲエもんだなァ…。で、アイツ何処行った?まさか今ので消し飛んだんじゃねえよな?」

 

そう言いながら焼け野原となった辺り一面を見渡すもマルスを除いた人影は誰一人として見当たらない。

 

一瞬もしやと失望するような考えが頭に過る。あの時自分から離れて行ったのは直感で分かったが、試し打ち感覚で放った技にそのまま死んだのか?と、思っていや矢先、覆い隠すような影がマルスを包み上を見上げると、巨大だがボロボロな状態の大玉スイカ、デュークの自動操縦型のスイカアームズが落ちて来た。

 

「ッ!ハハッ!!」

 

込み上げてきた歓喜が思わず表に出ながらも後ろに下がって落ちて来るスイカアームズを回避。落ちた途端、その衝撃で限界だったのか爆散して消えたスイカアームズの直後に上から機銃の弾丸が降って来た。

 

弾丸が当たるもヘルヘイムの森の力を蓄えた体にビクともせず、それでも放たれる弾丸。ダンデライナーに乗って空から攻撃するデュークを目にマルスは先程の不満な考えは一気に消えた。

 

「安心したぜ!!やっぱそん位じゃ簡単に死なねえよなテメエはよォ!!!」

 

「────勿体ねぇが、くれてやる!!!」

 

マルスの感情を余所にデュークは乗っていたダンデライナーから飛び降りる様に後ろに跳ぶ。操作する人間が居なくなった事で真っ先に高度が下がって落ちて行く。その先にはマルスが居る場に向かって。

デュークはダンデライナーに向かって矢を放つ。矢はダンデライナーに当たると近くに居たマルスを巻き込んで爆発。着地したデュークは追撃を仕掛けにロックシードをドライバーから外す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──オイオイ。随分乱暴な乗り方だなァ。」

 

「ッ!?」

 

突如後ろから聞こえた声に反応する前に背中に衝撃が走った。

 

前倒れになりそうなのを堪えて後ろを見ると先程まで離れた所に居たマルスが大剣を振った姿勢で立っていた。

 

「何時の間に!?」

 

「さぁ?何時来たんだろうなぁ?」

 

「このッ…!」

 

<< ドラゴンフルーツ・エナジー! >>

 

何故後ろに居たかの謎が掴めないままだったが、これ以上相手のペースに飲まれない為にデュークは連射型のソニックボレーを放つ。

対するマルスは迫るソニックボレーに対して構えを取らなかった。する必要が無かったからだ。

 

マルスはデュークの様に体を霧状に変えて不規則な動きで次々とソニックボレーを躱していったのだ。先程のダンデライナーの爆発もこれで素早く回避しデュークの背後を取った。謎が解けた事でデュークは仮面の下ではマルスの突然の強化に悪態を吐きながらもソニックボレーを放つしかなかった。

 

「クソったれ!人の勝手にパクリやがって!」

 

「ホラホラどうしたぁ!?さっきから外してばっかだぞォ!?あぁん!?」

 

「るっせぇッ!!黙って躱すか、煽るかどっちかにしやがれ!!!」

 

「そうかよ!!ならそろそろ攻めさせてもらおうか!!!」

 

ソニックボレーを躱しながらデュークへと接近して行くマルス。

デュークは絶え間なく撃ち続けているが、相手が速く、予測できない動きで飛び回っている為に狙いが定まらず外すなか、互いの距離が2mを切ったとこで、マルスが実体化しデュークへと斬り掛かって来た。

 

デュークは咄嗟にソニックアローでマルスの大剣を受け止めようとしたが、この判断は強化したマルスに対して握手だった。

 

ーガッ──ギリィッ!ー

 

「なッ!?」

 

「フンッ!!!」

 

ーパキィィィンッ!ー

 

咄嗟に受け止めたソニックアローのアークリムだったが、マルスの持つ大剣の刃がアークリムに少しづつ通って行き、マルスが片手から両手に持ち替え再度踏み込んだ途端、甲高い音を立ててソニックアローが両断されてしまった。

 

「ウラァッ!!!」

 

「グァッ!!!」

 

ソニックアローを失った事でマルスの追撃を防ぐ手段失ったデュークは成す術無く喰らってしまう。

後ろへ吹き飛ばされ、胸部のアーマーにくっきりと刻まれた跡が相当の切れ味を語ってた。

 

(コイツ、想像以上にパワーアップしてやがる!?ランクSのアーマーがこうも簡単に斬られるなんて…!

………いや待て、いくら黄金の果実だからってロックシードは兎も角、あれ程の力を受けたら肉体は…。)

 

「なにボンヤリしてんだァ!?」

 

「ッ!グウゥッ!」

 

斬られたダメージが相当のもので起き上がるのを待てなかったマルスはデュークの首元を掴んで無理矢理立ち上がらせ、膝蹴りを二度ほど浴びせた後、大剣で斬りかかって来た。

 

切れ味を増した大剣で上段、右薙ぎ、左薙ぎ、切り上げ。豆腐でも切る様にアームズに切口が増え続け右肩の装甲までも斬り落とされた後にマルスはトドメに体を半歩引き、剣を極限にまで下げた後に剣を前に突き出す、刺突をデュークのベルトに目掛けて突き出した。

 

短い悲鳴を上げたデュークは腹部から全身に走る激痛感じながら後ろへ吹き飛ばされ変身が解除されてしまった。

 

前倒れになる悠の目前には、壊されて自身から外れたゲネシスドライバーと砕け散ったエナジーロックシード。そしてカッティングブレードに手を掛けるマルスを激痛に耐えながらも立ち上がりながら視界に入れてた。

 

「…終いか。少し呆気ない最後だが……楽しめたぜ。」

 

<< ゴールデン・スカッシュ! >>

 

マルスはベルトが壊され、ボロボロで今も必死に立ち上がろうとする悠を見て勝負がついたと思ったのか大剣にロックシードのエネルギーを籠めそれを振りかざそうとしてた。

 

そして当の悠は、震える膝を隠しながらもようやく立ち上がり、戦極ドライバーを身に付ける。

 

「勝手に……終わらせんなよ…まだ……。」

 

<< カチドキ! >>

 

「…俺はお前の前に立ってるぞ。」

 

「──ウラァッ!!」

 

マルスはこの時何を思って剣を振るったのかは自分でも分からなかった。

 

ただ、傷ついても尚此方を見る目は、今まで倒した転生者とは違い最初の時と全く変って無いというどうでも良い事しか思ってなかったのを目の前の爆炎を見ながらマルスは、小金井 竜二は思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< カチドキアームズ! いざ出陣!エイ・エイ・オー! >>

 

(……あぁ。やっぱり…。)

 

爆炎の中心で佇む紅い鎧武者を見て再度実感した。

 

 

 

 

(此処で終わるテメエじゃねえよなぁ…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ最終ラウンドにはまだ早ぇよ。……こっから大逆転劇だ!!!」

 

「…あぁそうかい……ならとことんやろうぜェ!!!」

 

 

 

 

マルスは大剣・ソードブリンガーを手に、武神鎧武カチドキアームズは背中の二本の旗[カチドキ旗]を手に雄叫びを上げながら再度倒さんが為に駆け出す。

 

大剣を右に持ったカチドキ旗で受け流し、左の旗をマルスの右肩部に叩き付ける。

強烈な一撃にマルスが声を少し上げるが、大剣を空いてる左手に素早く持ち替えて切り上げる。コレを喰らう武神鎧武だが、各段的に上がった防御力のお蔭でアームズに傷つかずにいたがそれでも体に来るダメージは相当なものだ。

 

斬られた際に体を回して左の旗を振るうがコレをマルスが受け止め、そこへがら空きの足に右の旗で払う様に振るいマルスはバランスを崩して転倒しそうになるがコレを堪えた。

 

が、この隙を狙ってたのか二つの旗を勢い振り回すとマルスの体が宙に浮きだした。

突然体が重力を無視したように浮き困惑したマルスに武神鎧武は二つの旗でマルスの胸部を思い切り上に突出し、さらに上がり落ちて来た所を一回転を加えたフルスイングで弾き飛ばした。

 

「グオッ!………ハハッ!スゲエなソレ、んなもんあんなら最初から出せよ、オイ。」

 

「ゼェ、ゼェ、ゼェ……切り札早々出すバカが…居るか…。」

 

吹き飛ばされたマルスは多少のダメージは負ってるようだが、肩で息をしてる武神鎧武と比べればマルスの有利的状況は変わらなかった。

 

(このままじゃジリ貧だな。パワーは勝ってるけど、こっちの身が持たねえ。

………ヤツに決定打を与える攻撃。とびきりの一撃を外さずに与えるのには…………あー、また桜井にうるさく言われそう。)

 

一発逆転の案を思考を巡らせて導き出すも、思いついたのは覚悟と大きなリスクが掛かるギャンブルでありこれ以外どうにかならないモノかと感じながらこの短い時間で息を整えながら再度思考を働かせようとした時に、様子を窺ってたマルスが話し掛けてきた。

 

「…よォ!作戦考えてるとこ悪いんだけど、いい加減まどろっこしい事抜きでやり合おうとか思って無いワケ!?」

 

「…それが出来ればどれだけ救われるか…ホンットお前のそう言う単純思考が羨ましいよ。」

 

「だったらなればいいじゃねえかよ!お前が戦ってる相手は今俺一人。そしてオレが戦ってる相手はお前一人。今は誰も邪魔の入らない環境に居るんだぞ!?

なのにチマチマしたまどろっこしいやり方にいい加減うんざりしてきたんだよ!!!」

 

「………。」

 

「もう分かってんだろ!?

お前の相手は小賢しい策なんざ通用しねえって!なら真っ向から行くしかねえって!!

──世の中には頭で考えても動かなきゃ始まんねぇ事が腐る程あるんだよ!!オレは昔も今もそうやって生きて来た。……だからお前もなってみろよ。一々頭捻ってねえで掛かって来い!!!オレはオメェとそういう戦いがしてえんだ!!!」

 

「………。」

 

マルスの胸に秘められた思い。

 

それは端から聞いてる者からしたら常識から外れた野蛮な考えだと聞こえる。でも、こうして聞くと武神鎧武の胸に何処か突き刺さるようなものが感じられた。

 

「………要は当たって砕けろってか………ふぅ……確かに、それもありなのかな。今にしろ、女関係でも…。」

 

顔を上げて雲が勝った曇天の空を見上げる。脱力した状態なのか、手に持ってたカチドキ旗がするりと手から抜け落ちる。

 

「…よくよく思い返せば、最初の時はがむしゃらでぶつかるだけぶつかったよなぁ……。

初心に帰る時、ってか…。」

 

カチドキ旗の代わりにアームズウェポンである火縄大橙DJ銃と腰に差してあった無双セイバーを引き抜き、合体させて大剣モードにしマルスを前に腰を落として構えだす。

 

「ハハッ、ようやくその気になったかよ。」

 

「その気も何も、最初からその気さ。」

 

「じゃあなんで真っ向から来る気になった?さっきまで猪口才手しか使ってねえのによ。」

 

「コレが効率的だと判断したまでさ。…で?そっちは構えないのか?」

 

「急に言うじゃねえかよ。甘党野郎が。」

 

「それはお互い様だろ。」

 

「それもそうだ。」

 

風が吹き、焼けた煤や灰が舞い散るなか二人の戦士は決闘の如く剣を構える。

 

「…行くぜ?」

 

「来なよ。」

 

 

少しの沈黙が続き、風が止んだ後。二人は動き出した。

 

 

 

「──ドゥラァッ!!」

 

「──ゼェラァッ!!」

 

 

 

 

ーギィィィンッ!!!-

 

 

互いに全力で剣を振り、耳に残るような甲高い金属音が響く。

 

 

 

それからはただひたすら剣をぶつけ合うだけの攻め合いだった。

互いに一歩も動かず大剣を振るい、打ち合い、振り切った後また振るっての繰り返し。

 

次第にヒートアップしていき、やがて剣の振るうスピードも速くなってか武神鎧武とマルスの間に幾つもの火花が散り始めてた。

 

 

「「ウラァッ!!!」」

 

 

ーガキィィィィンッ!!!ー

 

 

二つの剣が鍔迫り合いになった時、刃が合わさった際の衝撃か空間に波のような波紋が二人を中心に広がり、辺りに大きな爆発が生じた。

 

燃え滾る荒れ地の中で二人は剣を振るうのを止めなかった。

 

 

 

黄金の騎士は無邪気な子供の様に笑い、紅の鎧武者は決死の雄叫びを上げ互いに一歩も譲らない死闘だった。

 

 

 

(──そろそろ…。)

 

(──ここいらで…。)

 

 

((──決めに行くッ!!))

 

 

 

ーギィィンッ!!!ー

 

 

 

二人は息が合った様に距離を空け、自身の体力と集中が摩耗し切っている今この時が勝敗の分かれ道と感じたのか、二人の行動は手早かった。

 

 

<< LOCK・OFF >>

 

<< COME・ON! ゴールデン・スパーキング! >>

 

マルスはカッティングブレードを三回倒して大剣・ソードブリンガーにロックシードのエネルギーを収縮し始める。対する武神鎧武はベルトのカチドキロックシードを外して大剣モードのDJ銃にセットしただけでロックしなかった。

 

(何だ?また何か企んでるのか?いや、だがあの感じは、真っ直ぐコッチに向かって来る…。)

 

(勝負は五分五分。どっちに転がっても凶が出るが、これに賭ける!)

 

 

マルスは武神鎧武の行動を不審に思ったが此方に向けられてる威圧に小賢しい手などは使わないと判断したのか真っ向から迎え撃つ構えをする。

対する武神鎧武は先程渋っていた案をマルスに使う事を決意。口から大きく息を吐き大剣を両手でしっかりと手に握った。

 

 

この一撃で勝負が決まる。技のモーションに入ってる二人には今この時が長い時間に感じた。

 

三度目の正直が…此処で決する。勝利を手にするのは自分だと決める為の一撃を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「──ッ!!!」」

 

 

 

撃ち込む為に二人は同時に駆けだしてった。

 

 

マルスのソードブリンガーには直視できない程の光を纏った剣を構えながら、武神鎧武は未だロックオンしてない状態のままで走り、徐々にその間が縮まる。

 

 

そして互いの距離が間合いに入った。

 

 

「──ッ!!」

 

マルスはソードブリンガーを上段の唐竹割りの如く両手で持ち、低い体勢の武神鎧武目掛け振り降ろす。

 

(──ココだッ!!)

 

そして武神鎧武は左の腰元に構えてた大剣を振り上げ始めた。左手に無双セイバーの柄、右手にDJ銃の持ち手を持って、そして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー──ガッ!!!ー

 

 

(手応え…あったッ!!!)

 

 

振り降ろした剣から伝わるのは、刃が相手に触れ肉を抉る感触。加え自身には相手の剣が触れた感触は無い。

 

 

ーこの勝負……勝った!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< LOCK・ON!! >>

 

 

 

ーピタッ!ー

 

 

 

「……あ゛?」

 

 

 

 

自身の勝ちを確信したその時だった。

 

 

マルスは自身の腹部に当てられた感触を元に目を下ろす。そこには、今までロックオンしなかったDJ銃の銃口が自身にピッタリとくっ付いてる事と、肩にめり込んだソードブリンガーを掴む武神鎧武の足元に折れた無双セイバーが。

 

 

「テメエ…!まさかこの距離で…!」

 

「悪ィな。デカいの確実に当てるのにこれしか浮かばなかったんでなぁ!」

 

「正気か!?この距離で撃ったらテメエも…!」

 

「あぁ。躊躇ったよ。でもそんな時にお前のあの言葉だ。お蔭で決心出来たよ…今度は俺が礼する番だ!」

 

「お前………最ッ高にイカレてんなァ!!!」

 

「それはどうもォ!!!」

 

DJ銃にエネルギーが充填されていく。最大火力で放つ為に必要な時間である。

普通なら引いて逃げるのがセオリーともいえるこの場面。だが当のマルスは剣を引くどころかむしろ力を籠めていった。エネルギーが溜まって撃たれる前に、肩から心臓まで切り裂いてやろうとの意気込みであえて前に出て来たのだ。

 

これには武神鎧武も少しは予期してたのか、少し息を飲んだ後、刀身を掴んで押し返し、でも引き放さない為に左手の激痛を堪えて掴む力を緩めなかった。

 

肩の装甲が壊れ、ライドウェアを突き破って熱と刃の鋭い痛みが肩口から伝わる武神鎧武を襲うがマルスの腹部に当てられた銃口に集ったエネルギーの存在が伝わり始めて来た。

 

 

 

「アァアァァアァァァァッッッ!!!!!」

 

「オオォォオオオォォォッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

…そして、その時が来た。

 

 

 

 

<< カチドキ・チャージ!!! >>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人を中心に起こった爆発の後。辺りには静寂な空気が流れた。

 

飛び散った火の手と白煙が少しづつ晴れて来て当の二人の人影はと言うと…倒れていた。

 

 

 

大きく吹っ飛び間が空いた二人の変身は解けていた。やがて少しの時が流れピクリとも動かなかった二人の指が動いた。

 

「ぐぅ……あ…はぁ!」

 

「んぐゥ!……こん、のォッ!」

 

立ち上がってきた二人だったがその姿は最初の姿と比べ見る影もない位傷だらけであった。

 

顔や服装も血で汚れどれだけの重傷か見て分かる程。特に悠は深く切られた左肩を抑え、竜二は服が血で滲んでる腹部を抑えながらも未だ健在の相手を視界にとらえていた。

 

「ハァ、ハァ……残念。オレはまだ…立っていられるぜ…。」

 

「ゼェ、ゼェ……痩せ我慢は…止めなよ。その腹、内臓にまでイッてるだろ…。」

 

互いに重症の傷を抑えながら、おぼつかない足取りで一歩一歩進んで行く。

 

腰のドライバーには嵌めてあったロックシードが無い。先程の爆発で飛んでったのかは定かではないが、二人の頭にはもう変身して戦う等の考えは無かった。

 

歩みながら二人は何を思っているのか。勝敗の行方か、何時相手が倒れるのか、あとどの位自分は動けるのか、様々な考えが脳裏に自然と浮かんで来るなか、竜二の体に異変が起きた。

 

 

「ッ!?ぐッ!グァァァアアッ!?!?!?」

 

 

突如悲鳴に似た呻き声を上げ、体のあちこちを抑えながら倒れ込んでしまう。竜二の顔に血管のようなモノが浮かび上がり何とも言えない苦痛が竜二を襲うなか、悠はやはりと内心思い竜二に歩み近寄り、遂に眼前にまで来て悶え苦しむ竜二を見下ろした。

 

「ガァァッ!!!

て、テメエ!オレに…なに、しやがったァ…!?」

 

「何もしてねえよ。お前のソレは、リバウンドだよ。ヘルヘイムの力を大量に取り込んだ代償だ。」

 

「な…んだと…。」

 

「お前は森を操れる力はあっても、この森の恐ろしさを知らなかった。だから果実の力どころか森のエネルギーまで吸収して得た力がお前の体を蝕んでったんだ。

インベス化してないのは特典の恩恵か黄金の果実のロックシードを使ったからかは知らないが、その傷もあってお前はあと少しで…死ぬ。」

 

「……ハ、ハハッ。何だよ、そりゃ。じゃあ、アレ、か?あん時力蓄えた時点で、オレの負け確定、ってか?」

 

「…いや、少なくとも生身なら兎も角変身した状態なら体に毒素が回るのに時間が掛かる筈だ。

あの時戦いが長引かず早々に決着をつけて変身を解いてればもしかしたら、な…。」

 

「慰めか?止めろよ、逆にへこむぜ…。」

 

「それは無い。お前に限って特にな。」

 

「あ、そう……ま、いいや。最後の最後は、なんだかんだて楽しめた…殺れよ。」

 

「……あぁ。」

 

今も言葉に出来ない苦痛を味わってる筈なのに竜二の顔は何処か満足気な顔だった。そんな竜二に向けて悠は傷口を抑えた血まみれの手でブレイクガンナーの銃口を向けた。

 

「頭は狙わない。死んだ後で脳に残った記憶を回収する必要があるからな。

でも、一発で楽に逝ける様にしてやる。」

 

「ハッ。そりゃ、ありがてぇ…。」

 

これ以上の言葉は不要と感じたのか竜二は目を閉じてその時を待ち構える事にした。

 

その意思を感じた悠は本人の望み通りに、引き金に指を掛ける…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーっと!ちょーっとそれは待った!」

 

 

ードォォンッ!ー

 

 

 

「ッ!?──うわッ!?」

 

 

それは誰も予期せぬ事態だった。

 

突如後ろから声を掛けられ横に吹っ飛ばされた悠も、立ち上がれず死を待つだけだった竜二も、この展開だけは予期する事は無かった事態。第三者の介入など誰も予期しなかった。

 

悠は吹き飛ばされた事で感じる痛みに顔を歪めながら吹き飛ばしたであろう第三者を見ると、黒いローブで全身を隠して男か女かすら判別が出来ない人物だった。先程の掛けられた声から、高いが男だと推測出来るが問題は何故この者が人間が住めないヘルヘイムの世界に存在するのかという事。

例外の存在はあるが、その例外の存在はもうこの世界には居ない。あとはインベスと言う生命体しかいない筈なのに何故?

 

そんな悠の疑問を無視するように謎の人物は突如拍手しだし、自らの思いをありのまま伝えた。

 

「いやー、すごかったねえ二人共!

派手なアクションだったよ!特に最後のなんか荒野の決闘みたいでかなりの見応えだったよ!うん!」

 

「…テメエ。一体何モンだ。…なんでこの世界に居る…!?」

 

「ん?ボクが誰かって?

ん~~~。別に教えても良いんだけどォ、それはまだ早いって言うかねェ。ま!後のお楽しみって事で!!」

 

「ふざけるな!勝手に出て来て訳分かんねえ事言いやがって!」

 

「あちゃ~。怒らせちゃった?………なら…。」

 

「んがぁッ!!」

 

謎の男は傍に倒れてた竜二を掴み上げて腕一本で持ち上げる。

 

そしてもう片方の手にはこの世界にしか実らない、禁断の果実を手にしていた。

 

「お詫びと言っちゃなんだけど、面白いもの見せてあげるよ!

コレ。彼に食べさせるとどーなっちゃうのかさ。」

 

「グェッ…テメッ…!」

 

「全く。身から出た錆だよねェ~?

渡す時ちゃーんと説明しようとしてたのにコレだから。ま、事項自得って事で、お詫びに面白いモノ見せてね♪」

 

「…ッ!思い出した!テメエ、ムガッ!?」

 

何かを思い出しそれを口にしようとした竜二の口を塞ぐように謎の男は禁断の、ヘルヘイムの果実を竜二の口に押し込んだ。

吐き出そうとする竜二だがそれを謎の男が口を塞いでる所為で吐き出せずにいる。

 

「ほらほら駄目だよ~。ちゃんとゴックンしなきゃ・(バキュン!)・ん?」

 

謎の男に紫の光弾が放たれたが、当たる直前に掻き消える様に弾かれた光弾の元を辿ると、ブレイクガンナーを構えた悠であった。

 

「あれれ?どういうつもり?もしかして今彼を助けようとしてボクを撃ったのかな?だとしたらいいねェ!殺し合いによって生まれた友情!グッとくるよ!」

 

「…勘違いすんじゃねえよ。それよりテメエ人間じゃねえな…!」

 

「だからそれは、後の、お・た・の・し・み♪

それよりも今は…。」

 

「ムガァァアアァァァッ!!!!」

 

必死に呑み込まないと言わんばかりに痛みが走る体で抵抗する竜二だが、それ抵抗もむなしく遂に果実を飲み込んでしまった。

 

無事に口にした事を確認した男は、竜二を手放すと跳んで竜二から距離を取った。

竜二の体が果実によって変異していく様が体から生える蔦と緑の発光から見て分かる様に着々と進んで行き。

 

「おい……お前…。」

 

「さぁ、彼は一体どんな姿になるのかなぁ?」

 

「ガッ!ウッゥゥウッ!!ァアアアッァァッ!!!!

………は、イバ…ラ…。」

 

「ッ!」

 

体が蔦に巻かれ顔だけ残した状態で竜二は残った意識で悠を見た。

 

その眼と言葉から、悠は彼が言おうとしてる事を察してしまう。

 

 

 

「ォ、レを…───。ァァアアアァアアァッッッ!!!」

 

 

辺りに響く雄叫びの中、微かに聞いた悠の眼前に現れたのは、金の異形が誕生した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 





ドライブ・サーガ。movie対戦見て来ました!


色々と言いたい事があるけど、簡潔に…最高でした。

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