その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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長々お待たせしました。

注意書きとしましては、今回も変身、戦闘は有りません。戦闘シーンは次回からとなります。

あと、後書きの方で思い付きの小話を書きました。


家族

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーお前が間違った事を仕出かしたら……その時は容赦なく…お前を…殺す。ー

 

 

(悠兄さんッ!…。)

 

 

家を飛び出て川原で一人、膝を抱えながら悠に告げられた言葉が頭から離れない秋。

 

未だに信じられなかった。共に隣で戦って来た相手から自身を殺す等言われる事に。だが幾ら否定しても脳に焼き付いてしまった言葉は、現実から逸らす秋を否定するのに十分であった。

 

未だ混乱してる秋の元に近ずく影、秋が気付いたのは水面に影が映ってるのに気付き反射的に振り向いた時だった。

 

「ッ!…あ…。」

 

「うわッ、びっくりしたぁ。急に振り返るから、って、あーッ!?アナタあの時の!」

 

振り返り後ろに立っていたのは膝を手に着き声を掛けようとしてた紫藤 イリナ。

イリナの方は声を掛けようとしてた人物が前に一度色目を向けられた事から一瞬嫌な顔をしたが、秋の顔色の悪さを見て直ぐに態度を改め話し掛ける。

 

「アナタ…大丈夫?何か、辛い事でもあった?」

 

「…別に、お宅には関係ないでしょ。」

 

心配そうに声を掛けて来るイリナに対しそっぽを向く秋。

イリナは秋の態度にムッとした顔つきになると、本人の確認も取らず隣に腰を掛ける。

 

「…イヤ、何してんの?」

 

「私ね、こう見えても教会での仕事以外に色んな人の話を聞いてあげてその人の相談にも乗った事があるのよ。だから分かる。今のアナタは一人で悩み抱え込むより、吐き出して少しでもスッキリした方がイイ。」

 

「んな事…。」

 

「関係無い、って?そうかもしれない。でもキミみたいな人見てると放って置けないのよ。性分かどうかは知らないけど。

それにキミだってこのままジッとしても悩みが解決できないのは目に分かるでしょ?」

 

「……。」

 

「それならいっその胸の内全部出しちゃった方が良くない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…なんだこのデタラメな代物は?そこらの神器より厄介なモンじゃねえかよ…。)

 

オーディンの護衛から数日、アザゼルはオカ研の活動に顔を出さず自室に籠りあるモノを調べている真っ最中だった。

 

薄暗い部屋の中で一人、目の前にライトで照らされたあるモノを部屋から出ずに調べ上げる程の代物でありその性能に驚愕の色を隠さずにいた。

 

(奴等の使うモンだからそれなりにぶっ飛んだものかと思いきや想像以上だぜコイツは…。

まだ荒い部分があるのは見て分かるが、もしコイツの完成品が出回って敵に回るとなると……厄介極まりないぜ。こっちだって悪魔勢程じゃないが、まだ被害の復興に建て直せてねえんだからよ…。)

 

あの時マッハとゴルドドライブの激戦の際に密かに回収した仮面ライダーの私物であろうモノを手にした時は未知の領域に踏み込める誘惑に負けその蓋を開けて見るとその技術だけでも別次元の技術が使われ得た事に興奮を隠しきれなかったが次第にその圧倒的な科学力に興奮の熱が冷めていった。

 

この技術だけでもこの世界を掌握できる。長く生き、堕天使の長として培った見解が導き出した答えは自信を冷静にさせるのに十分な程の脅威だった。

 

(とにかくコイツはもうしばらく調べてみる必要があるな。せめて対抗手段を掴まなければ、三大勢力の危機所じゃねえ。世界の危機に繋がるぜ…!)

 

胸の内で方針を決めつつアザゼルは作業を再開した。

 

ゴルドドライブが紛失したであろう金色のバイラルコアを前にして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、ようはあの時一緒に居たお兄さんと喧嘩しちゃったんだ。」

 

「…まぁ、そんなモン。」

 

秋はイリナに自分の抱えてる悩みを打ち明ける事にした。

 

流石に全容は言えないが自分と悠の間に感じる溝と先程の一件について手を加えた内容だが、イリナは秋の話を聞いて暫く間を空けた後に色々と聞いて来た。

 

「とにかくまずはその、悠兄さん?だっけ、その人はアナタから見てどんな人なの?」

 

「どんな人って……ツンデレで、容赦無しのサドな一面あるけど女の子に弱くて、フラグ立てまくりで、納豆嫌いで、泳げなくて、不満な所上げればキリがねえけど……それでもなんやかんやで人を惹きつける魅力?ってヤツがあんのかな。面倒見良い所あるし、ぶっきら棒で捻くれで素直じゃねえけどお人好しだし…。」

 

「ぜ、前半部分は知る必要があるかどうかは知らないけど…喧嘩した大まかな理由は、”お兄さんに比べて自分は劣ってる”っていう解釈で良かったわよね?」

 

「まぁ大体は。」

 

「それでお兄さんはそんなアナタに、”これからの自分を考えろ”と言って来た訳ね。」

 

「うん…しかも厳しい判定付きの。」

 

一通りの内容を理解したイリナは顎に手を当て話の内容を自分なりにもう一度振り返り、整理してみる。

そして暫くして整理した内容を簡潔に述べてみた。

 

「話を聞いて私なりに解釈してみると、”オレとの差なんて関係ねェ!お前はお前のやり方で行け!”ってカンジで、アナタの事気遣ってるように思えるけど?」

 

「なんだそりゃ。…いやいやそんな、だって変な理由だったら殺すとか真顔で言って来た野郎がそんな…。」

 

「アナタ言ってたでしょ、ぶっきら棒で捻くれで素直じゃ無いって。そんな人が如何にも貴方を心配してます。なんて正直に言える?」

 

「………確かに。悠兄さんなら一回しどころかかなり回りくどい事言いそう。」

 

「まぁ実際の所は知らないけどアナタを気遣ってるのは確かだと思うわ。

だって私とゼノヴィアを怪物から遠ざけた時、お兄さんアナタを信頼しているように見えたもん。そんな人がアナタを殺すだなんて本気ですると思う?

もしそれが本当だとしても、それはアナタを信じてるからよ。アナタなら間違わないって。」

 

「……。」

 

浮かない顔の秋を励ます様に真っ直ぐ相手の目を見て語るイリナ。

 

イリナに言われた後秋は今までの悠と過ごした日々を思い出してた。

 

共に過ごし、共に戦い、共に背中を預けた。過ごした時間は長いとは言えないがお互い通じるモノは確かに感じ取れた。悠は決して表に出さないが、それは紛れもない信頼の証とも言える。

 

G4と言う危険な代物に手を付けたのは自分の事を信頼してないからと思ってたが、思い返せばまだその理由を聞いておらず只自分が勝手に決めつけて逆上しただけに今ようやく気付いた。

何とも言えない後悔の念が頭の中で渦巻くなか、冷静になった秋は一番の問題点がまだ解決して無い事に気付いた。

 

(そう言えば結局何の為に戦うのか全然考えて無かったじゃん…。)

 

悠の事を考えてる内に本来の悩みの種を思い出し、またしても悩みに苦しめられる秋。隣でイリナが秋の異変に気付いて声を掛けて来るが当の本人の耳には届いてなかった。

流石にこればかりはイリナに打ち明けられない。仮面ライダーとして戦う理由などしょうたいを明かすのと同様なものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー全く、見るに堪えられんわ…ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………アレ?」

 

気が付くとそこは何も無い空間だった。

 

先程まで河川敷に居て隣にイリナが居た筈なのに何も無い空間に一人。

 

秋自身何が起きてるか分からない状態と言って良いこの状況、敵の攻撃なのかどうかは知らないが周囲を警戒してると響き渡る様に、聞き覚えの声が聞こえて来た。

 

『ヒヨっ子が少しはマシになったかと思いきや…全くの見当違いか。真にこのような奴の中に居るとなると我が身が哀れに思えるわ。』

 

「お前は…!」

 

何も無い空間の上から雪のように振って来る金色の光。光が当たり一帯をを包み込んでく中何かが此方に近ずいて来るのが分かる。霞み掛かってたシルエットが次第に明確にその全貌を表した。

 

巨大な頭部が獅子、顎下に牛、右肩に隼、左肩に海豚、そして尾にカメレオン。

秋にとって自身の力の源であり、体内に存在するソレは眼前にまで近づいて見下ろした。

 

「キマイラ…!なんでお前…て言うか此処何処?」

 

『お前の精神世界。…アンダーワールドとは違い我が閉じ込められている檻と言っても良い忌々しい所よ。

…まぁ、それも今では我の思うが儘に出来るがな。』

 

「どういう意味だよ?」

 

『貴様の意識を我の力で此処に呼び出せたのがその証拠だ。

以前ならそのような事は出来なかったが今は出来る。…分かるか?それだけ貴様の心に付け入る隙が生まれたと言う訳だ。

今の我なら、お前の意識をこうして奪ったりする事も容易に出来ると言う訳だ。』

 

「…オレが弱くなったって言いてえのかよ?」

 

『精神的に、だな。中に居るのが我で良かったな。もし普通のファントムならば、お前は既にその命を内側から消されてる所だったぞ。』

 

キマイラから告げられた言葉に何時もなら反論する筈だが今回に限っては何も言えない。自覚が在るからだ。

小馬鹿にした様子も含ませながら淡々と突きつけるキマイラに対し下を向いて立ち尽くす秋。そんな光景にいい加減飽きたのかキマイラが不満な態度吐き出すように一歩的に語る。

 

『えぇいッ!いい加減その情けない無様な様を直接見せつけられる我の苛立ちを考えろ戯けめがッ!!

貴様のような愚か者があの小僧の様な思考で物事を考えられる器では無い事が知れてるであろうに。出来もしない背伸びをしおって…。』

 

「キ、キマイラ?…。」

 

思いがけない一括に度肝を抜かす秋。それでも尚キマイラは胸の内を目の前の秋にぶちまける。

 

『最初の時の小僧に言った事を覚えておるか?…いや、その様子だと忘れておるだろうな。

貴様が小僧に何を目的に戦うべきかと言った時、あの小僧に何と答えた?』

 

「えっと確か……”納得のいくまで戦ってやる”って…。」

 

『それでコレが貴様の納得のいくモノか?だとしたらお笑い草だ。これでは三文芝居の方がまだマシと思えるほどの結末としか言えんな。』

 

「…なら、ならどうしろってんだよ!!さっきから好き放題言いやがって!

あぁそうさ!オレはみっともねぇよ!弱ぇよ!!戦う目的も決められない程さ!!!…悠兄さんに比べて弱いのなんざ、知ってるっつうの…。」

 

秋も遂に我慢の限界か胸に溜まってた鬱憤を吐き出す。血が出そうなまで手を握りしめ悔しそうに俯く秋。

 

そんな秋の心境などお構いなしに、キマイラはシレっと秋の鬱憤に対し一言告げた。

 

 

『…ならば、強くなればいいだけの話ではないか?』

 

「……へ?」

 

思わず間抜けな声が出る秋。

 

「どういう…。」

 

『どうもこうも、ただそれだけだ。弱い自分が嫌なら力を付け強くなればいい。単純明快な事。馬鹿なお前でもこれぐらいなら理解出来るであろうて。』

 

「強く、なる…。」

 

『だがただ強くなるだけではそれこそ意味が無い。それはあの小僧から散々聞かされている筈だ。

”強くなる理由”。貴様が今考えるべきは、むしろそれではないのか?』

 

「戦う理由じゃなくて、強くなる理由…か…。

なぁキマイラ。」

 

『何だ?』

 

「……お前ってさ、悠兄さんと同じツンデレ気質?なんやかんやでお前…。」

 

『それ以上下らぬ戯言を吐くと噛み殺すぞ小僧。』

 

「あぁ分かった分かった!……ありがとよキマイラ。」

 

『…フン。そう思うなら精々我の機嫌を悪くしない事だな───。』

 

その言葉を最後に秋の視界がまた暗転したように真っ白になっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ぇ!───っかり!───!」

 

「……ん。」

 

「やっと気が付いたッ!大丈夫!?なんか急に意識を無くしてたみたいだけど…!?」

 

「あー…ゴメン。ちょっと、ね…。」

 

秋の視界に入ったのは、倒れてる自分に必死に声を掛け続けているイリナの顔だった。

若干パニック状態のイリナを何とか落ち着かせ、秋は先程のキマイラとの会話を思い返していた。

 

(”強くなる理由”、か。……落ち着いて考えてみると、見つかりそうで案外難しいなぁ…。)

 

「ねぇ。本当に大丈夫?今度は上の空になってるけど…。」

 

「へ?お、おぅ。平気平気。問題ねえって。うん。」

 

「そう?…なら私はそろそろ此処で。」

 

「あ、うん。…何か悪かったな。色々聞いてもらって。」

 

「お構いなく。さっきも言った通り私の性分みたいなものだし、それに仮にもアナタには助けて貰った恩が有るからね。…あの時スケベな目で見て無かったら好印象だったんだけど…。」

 

「あ、あはは。まぁそれは、男の性ってヤツか何と言いますか…。」

 

「ふぅ~ん。…まぁいいわ。また何かあったら相談に乗ってあげる。

お姉さんと、あの時のお兄さんによろしく言っといてね。」

 

「…おぅ。」

 

イリナはそう言って秋の前から去って行った。

 

残された秋は一人また河川敷に腰を掛けながらイリナが最後に口にした人物である悠とハルナの事が頭に浮かび上がっていた。

 

「…そういや二人とはギクシャクしたままだっけ…。」

 

不意に浮かんだ光景は、三人がチームとして組んだ時の一場面…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───俺の前世がどうだったか?」

 

「うん。悠兄さん一度死ぬ前どんな人生送ってたのか気になって。」

 

「あ、それ私も気になる。仮面ライダーの前世がどうだったのかって。」

 

三人で活動を始めて少し経った頃。ラボでメンテナンス作業中の悠に秋が前世の事について聞き出した時であった。

 

「オレ達はガキの頃、母さんと父さんが事故で死んじゃって以来親戚の家で過ごしたんだよねぇ。それでオレが高校上がった頃に親戚の家出て、二人でバイトしながら暮らしてたけど…。」

 

「私がバイト帰りに飲酒運転の事故で死んじゃって、この世界に来たのよね。

あの時は秋一人残して逝ったのが結構堪えたのよねぇ…。」

 

「そんでオレもなんやかんやで事故に巻き込まれて死んで、仮面ライダーになってこの世界に来た訳…。

ハイ!次は悠兄さんの番!で?どんな死に方した?」

 

「…ビジネスパートナーを組む上で長続きする秘訣知ってるか?……ソイツの過去を詮索しない事だ。と言う訳で言わない。」

 

そう言ってキーボードを叩く手を止めない悠に対し、二人は異論の言葉を投げる。

 

「イヤイヤイヤ!そこは空気読んで言おうよ!多少相方の事情知っておくのも良い関係築く為に必要だろ?」

 

「そうよ。それにここに居る人間は数少ない転生者なんだし、普段言えない事を公に言える絶好の場よ?

それに私達はもう言っちゃったんだし、自分だけ言わないのはズルいわよ?」

 

「俺が了承する前に勝手に言ったのはソッチだろ。」

 

「イイ~じゃん!ちょっと位さぁ!ホラ、これも一種のコミュニケーションだと思ってさ!」

 

「………ハァ。」

 

これ以上無視したら埒が明かないと思った悠は、渋々自分の事を語ることにした。その際にその全貌は明かさず一部の事情だけと言う前置きを言って。

 

「俺の両親はお宅等同様。家族旅行中に、事故で死んだらしい。」

 

「らしいって…どういう事なの、ソレ?」

 

「その時俺も事故に巻き込まれた。車の、後部座席に乗ってて。その上にトラックの荷台が偶然落ちてペシャンコだと。

前に居た両親はその場で即死。俺は運良く生き延びたが、頭部をかなり損傷してて相当ヤバい状態だった。」

 

「それじゃあ、悠兄さんはその事故で…。」

 

「いや、死んで無い。長時間の手術の結果。俺は生き延びた。

…でも事故で負った怪我の所為か、すぐ目を覚まさず、気が付いたら事故から二年の年月が経ってた。

おまけに事故の後遺症か事故に遭う前の記憶がキレイさっぱり無くなってた。」

 

「「……。」」

 

自分の過去を語っている筈なのに、その姿は何処か自分とは別のモノを語っている。…まるで他人事の様に淡々と喋る。

そんな悠の姿も、語られている過去の話しも、黙って聞いていた。

 

「…気が付いたら病院のベットの上、知らない天井で何故ここに居るのか頭に浮かんだ。その後思い出させる筈の自分の名前と、親の顔、家の形も、何にも分からなくなった時のあの感覚は、今でも鮮明に覚えてるよ。それが記憶の無いオレにとって一番最初に感じた感情だったんだから…。」

 

「…その後は…。」

 

「施設へと預けられた。親戚と呼べる間柄は少なくて、居たとしても金を喰う厄介者として見られてたよ。当時住んでた家もその親戚が勝手に売っ払ったみたいでな。残ったのは僅かな遺産位しか無かった。」

 

「…酷い。」

 

「…まぁそんなこんなで色々俺も荒れてね。問題児扱いで施設を転々とされて…そして…。」

 

「?…悠兄さん?」

 

急に黙り込む悠の顔には先程まで余所事の様に喋ってたのに対し、哀愁の雰囲気を漂わせてた。

二人が見つめるなかハッとしたようにいつも通りに振る舞う。

 

「…とまぁ、そんな感じ。これ以上は有料だ。聞きたきゃ金払え。金額は応相談。」

 

「ってオイ。一番気になる所で…。」

 

「とにかく、これ以上言うつもりは無い。話は終わりだ。無駄話してるヒマがあったらお前も自分のドライバー位メンテ出来る様にしろ。」

 

「へーい。

…あ。ねぇ悠兄さん!」

 

「…今度は何?」

 

またロクでも無い思い付きを言うのだろうと適当に聞き流す気でいた悠。それとは対象に秋は陽気に提案を持ち出す。

 

「…悠兄さんがさ、どんな人生送って来たか知んねえけどよ。今はオレ達が居るんだしさ…何ならもういっその事家族って思ってくれても良いぜ!」

 

「…それ、下手な同情の言葉にしか聞こえないんだが…。」

 

「そんなつもりはねえって!ただオレがそうしたいだけだし、悠兄さんと仲良くやっていきたいって言う本心での思い付きだぜ。」

 

「……馬鹿が。」

 

「…アレ?悠兄さんもしかして、照れてる?」

 

「照れて無い。」

 

「いやその反応絶対照れてるって!顔背けちゃってさ!なぁ姉ちゃん。」

 

「アハハ、アレ、照れてるのかしらね…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(家族、かぁ…。

今思えば、最初に此処に来たのって姉ちゃんの為だっけ。…アレよく考えたら、残されて一人になるのが嫌だったから二つ返事で誘いに乗ったっけ。…悠兄さんにあぁ言ったのも…。)

 

この世界に来て出会った悠を何時の間にか兄同然の様に慕ってたのは、幼い頃に無くなった家族の繋がりを欲していたのかもしれない。

そんな考えが過ると自然と笑みがこぼれる。思ってた以上に自分はガキのままか、と。

 

だがそのお蔭で辛く傷つく事もあるが、それと同様に楽しい事も山程在ったのは事実だ。

 

姉と再会し、悠と出会い、艦娘やラ・フォリアとの繋がりも、秋にとってはこの世界に来て良かったと思える程に後悔は無いのだから。

 

(…あぁそうか。オレの場合そんな難しい事じゃ無かったじゃんかよ…。)

 

「───勢い良く家を飛び出したかと思えば、こんなとこで似合いもしねぇ黄昏か?」

 

「!」

 

聞き馴れた声が背後から聞こえ振り返ると。重傷で寝てる筈の悠が大袈裟とも思える程の包帯を巻いた状態で上着を羽織って立っていた。傍らには此方を心配そうに見る神通が控えていた。

 

「悠兄さん…何でココに、て言うか怪我…。」

 

「ちょっと予期せぬトラブルが起きてな、収める為にこうして体に鞭打って動かにゃいけない状況なんだよ。

…それはともかく。」

 

悠の目つきが家を飛び出す前と同じ、誤魔化しなど一切通じない鋭いモノへと変わる。

思わず肩が上がり唾を飲み込む秋に悠は問い掛ける。

 

「俺の出した宿題……答えは、見つかったと見ていいのか?」

 

重い空気が漂うなか秋は迷い無くこう答えた。

 

「あぁ。見つけた。オレの戦う目的…強くならなきゃいけねぇ、その目的が。」

 

「……。」

 

秋は真っ直ぐ、その目と口を悠に向ける。

 

その鋭い視線に怯む事無く、その思いをぶつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな秋を前に悠は背中を向けて歩きだす。

 

「…えと…悠兄さん?」

 

立ち止まった悠は振り返らず何時もの口調で言った。

 

「何してんだ。さっさと行くぞ。」

 

「え?行くって…。」

 

「馬鹿が、言っただろう。ちょっとトラブルを収めに来たって。

俺はこんなザマだ。お前も来るのは当然だろ。」

 

「ちょ、待ってよ!聞かねえのかよ!?オレの出した答え!?」

 

「口で言ったって実行しなきゃ意味ねえだろ。

決まったのならやってみろ。それが出来れば……その時は褒めてやる。」

 

そう言って再度歩き始めた悠。そんな悠の背中を秋は呆然と見ていた。

 

「…えーっと……オレ、どういう反応すればいいの?コレ?」

 

「いつも通りで良いと思いますよ。」

 

不意に口から出た疑問に答えて来たのは付き添いで付いて来た神通だった。

 

「あの人はきっとアナタがどんな答えに行き着こうとも、ああいう調子で向き合っていくつもりだと私は思います。

あの人にとって秋さんは…。」

 

「オーイ!何時までそこに突っ立ってんだ!早くしろ!コッチは怪我なんだよ!早く終わらせて寝たいんだよ!!!」

 

「あぁもう分かったって!直ぐ行くよ!せっかちでしょ悠兄さんってば!」

 

呼び掛ける悠の元へ駆け出す秋。何時の間にやら何時もの調子に戻っていた。

 

隣に立ち並び歩く二人の姿を見て神通は、元から要らぬ心配だったと苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うんうん。一先ず二人の仲は何とかなったか。

いやー、見てるこっちもドキドキしちゃったよ。」

 

所変わり場所は天界。

そこでは悠の上司の位置に当たる神が事の顛末を何故かブラウン管テレビで一部始終見ていた所だった。

 

上司は満足した様子でデスクの引き出しを開け、中からあるモノを探しだした。

 

「そろそろ秋くんにアレを渡す頃合いかな~。中に居るキマイラと上手くやっているようだし。

コレばかりは科学好きの悠くんには手の出しようが無い代物だし…お、あったあった。

さて後は…おーい。誰か空いてる娘居ないー?」

 

上司は引き出しから取り出したソレをデスクに置いて部屋から出た。

 

 

 

 

デスクに置かれた獅子の指輪を残して。






注意・この話は本編とは一切関係ありません。






~裏道~その1





ー流行モノー

【今世間が注目してる最新スマートフォンアプリゲーム・ポ○モンGO。通称ポ○GOは、学生だけでなく、社会人、外国人にも多大な影響を与えておりー】

「……。」

「?…どったの悠兄さん。もしかして気になってんの?ポ○GO。」

「ん?あぁいや。このゲームと似たような事、前の世界で必死にやったなー、って。」

「え!?(…いや待てよ。悠兄さんいろんな世界行ってるからこの世界より先にポ○GOある世界に行っても可笑しくないか。…にしても意外だなぁ。必死になって悠兄さんがポ○モン集めとか…。)
ねぇ、どんなポ○モン捕まえたの?」

「…俺一言もポ○モンだなんて言ってねえぞ。」

「え?…じゃあ何捕まえたの?」

「ん…。」

「?。これスマホじゃなくてカードデッキじゃ…。」









※秋、回想中

「よっしゃ!ダークウイング、ゲットだぜ!」

ーGuoooooooo!ー









「…ポ○モンGOじゃなくて、ミラモンGO!?」

「何だそれお前?」

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