その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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不死

 

 

 

 

<< STRENGE VENT >>

 

目の前のオーディンに向かって駆けてくリュウガが運に任せて発動した特殊カード。ストレンジベント。

 

その効果は、”その戦況に置いて有利にする”カード。

リュウガはそのカードの効果に今オーディンが発動させようとしているカードを阻止できるカードを望み、バイザー音声の後に挿入口から出て来たカードを確認しないで発動させた。

 

 

(来い来い来い、来いッ!)

 

 

 

オーディンのカードは既にバイザーの中、後はスライドを閉じれば発動してしまう。

 

そんな一瞬の出来事がスローモーションのように見えたリュウガは、コレに全てを賭け事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< STEAL VENT>>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、現実世界でのマッハとゴルドドライブの戦闘では…。

 

 

「ハッハッハ!そら、まだまだあるよォ!」

 

「だあァッ!もうッ!うざったい!」

 

<< シューター! >>

<< タクサン・カクサーン! >>

 

ゴルドドライブから放たれるエネルギー球体の連続撃ち、最初の内は様子見でデッドヒートとなったマッハと近接戦を繰り広げてたが、パワーが飛躍したマッハの近接戦闘では不利になると判断し遠距離からの攻撃に移し替えたがコレが効果覿面だった。

 

パワーが上がったもののマッハの売りであったスピードが低下してる為、迫って来る弾幕の嵐を完全には避けられず、シグナルカクサーンにて迎え撃つという流れが先程から続いていたのだ。

 

「ホラホラホラァッ!もしかしてもう限界が来たのかい?困るなァ!まだ楽しませて貰わないとねぇ!」

 

「るっせぇ!ならチマチマチマチマ撃って来ねえで堂々と掛かって来やがれってんだ!」

 

「えー?どうしよっかなぁ?……やっぱりヤダ。キミの嫌がってる所を一杯見たいからねぇ!!!」

 

「このッ……性格悪すぎんだろうが!」

 

完全に手玉を取られている事に仮面の下で顔を歪めるマッハ。

どうにかして自分のペースを掴みたいが、デッドヒートを完全に使いこなせてない所為か先程から体力の消耗が激しく低下しており、時間が残されてないのが現実だった。

 

(ヤベェなオイ。このままじゃタコ殴りの状態じゃねえか。調子乗って飛ばし過ぎたのがイケなかったな……こうなったらアレ使うか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話しは数刻ほど遡る。

 

北欧のオーディンが宿泊してるホテルから離れたビルの屋上で待機してる悠と秋の二人。そこで今、悠は秋にこれからの戦闘で使う事になるであろうシフトデッドヒートを渡している所だった。

 

「と、言う訳で。コイツはお前に渡しておくがさっき言った通り、くれぐれも…聞いてる?」

 

「ッ~~~~~!ホンットもう!悠兄さんったら何だかんだ言ってオレの為にこんな……もう大好き!今ならキス出来ちゃいそう!」

 

「だぁぁあッ!!!顔近ずけんな!キモい!つかテメッ!話聞いてなかっただろ!ゴラッ!オイッ!」

 

 

落ち着かせるのに全力で殴ったのは、本気でキス仕掛けて来そうな時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく。流石に野郎にまでやらせるかってんだ。

…で、さっき言ってた俺の話し、聞いてなかったようだからもう一度言うけど、タイヤコウカンはまだするなよ。今現段階で使えるのはシグナルバイクだけだかんな。」

 

「イテテ、もう冗談なのに思いっきり殴って……え?なんで?」

 

頭にデカいタンコブが出来た秋は、首を傾げた。

 

「簡単に言えば、シグナルバイクはマッハの攻撃補助がメインの能力だからデッドヒートの状態でもそこまで大層な負荷は掛からないけど、フレアとかダンプとかの攻撃力高くて負荷がかかりそうなモノに耐えられるほど完璧に出来て無いんだよ。」

 

「ふむふむ。…で?」

 

「もし使ったら……最悪死ぬぞ。お前。」

 

「……マジ?」

 

「マジ。超マジ。タイヤバースト所か、お前自体がオーバーヒートでバーンかも。」

 

「…はい。」

 

「まぁ使い所さえちゃんと見極めてくれればそれでいいんだけど。

…でもこれだけはちゃんと胸に刻んどけよ?デッドヒートはまだデータ不足もあって不完全故に、何時何が切っ掛けで暴走するか分からねえから、デッドヒート自体もちゃんと使い所見極めろよ?」

 

「…分かったよ。流石にそこまで言われちゃ、下手に使いませんよ、っと。」

 

そう不貞腐れながら、渡されたシフトデッドヒートを見つめる秋だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…って言いながら、早速使っちまったしなぁ。こりゃカンカン怒られるのはもう確定だし…。)

 

<< Burst! キュウニ・DEAD HERT! >>

 

「うぅぅぅうりゃあぁぁあッッッ!!!」

 

「何ッ!?ムゥッ!?」

 

迫り来るエネルギー球体を、溜めたエネルギーと高熱を勢いよく爆発的に排出させたことでゴルドドライブに弾き返したマッハは、ドライバーからシグナルカクサーンを取り外し、手にしたのは使用する事を禁じられた筈のシフトカー、マックスフレアだった。

 

「使わないなんて勿体ねえ事、今更だよなぁ!」

 

<< ShiftCar! >>

<< タイヤコーカン・モエール! >>

 

ドライバーに装填し、胸にタスキ掛けられたタイヤがマックスフレアのタイヤと交換されるとマッハの全身を炎が包み込み、その熱はスーツのお蔭で軽減されるも装着者にかなりの負荷を掛けてた。

 

「グッ、グゥゥッ!!」

 

「ん?…おやおや、アレでは余計に苦しくなるだけだろうに、正に風前の灯、ってとこかな?」

 

身に纏う炎に苦しむマッハの姿を外野から眺める様に見据えるゴルドドライブだが、その余裕は一気に崩れ去っていく。

 

何故なら苦しそうに悶えるマッハの姿が突然居なくなったと思いきや、目の前に突然現れたのだから。

 

「な…ッ!?」

 

「デァァアァッッッ!!!」

 

「ブハッ!?」

 

炎を纏わせた右ストレートの一撃がゴルドドライブの顔面に叩き込まれる。

マックスフレアの能力で攻撃力が上がったマッハの一撃はゴルドドライブのマスクをひび割れさせる程の強力なモノとなり、欠けた仮面の下から複雑なコードやパーツ等で出来た機械の顔が覗かせていた。

 

「そんな状態でここまでの威力を…狂ってる!…いや…!」

 

だがマッハはそんなのに目もくれず一心に攻撃を目の前の敵に休む間もなく叩き込ませる。

 

<< Burst! モエール! >>

 

(コイツ、自分の命を顧みらない、本物のバカだ!)

 

「オゥッラッ!」

 

自身の全力を示す様な雄叫びを上げながら今度は左のフックを喰らわせる。顎先に入った一撃は機械の体で出来ていようと相当なダメージを与え怯むゴルドドライブにマッハは追撃に後ろ回し蹴りを胸元に叩きこんで大きく下がらせた。

 

マッハの強烈な攻撃を喰らったゴルドドライブのマスクはひび割れて今にも砕け散りそうであり、蹴りを喰らった胸部も、大きく焼けた足跡がくっきり残る程強く蹴られたのが分かる程のモノだった。

 

「ま、サか。あんナ状態、であソコまデのこうげ、キ、を…。」

 

相当やられたのか所々発する声が可笑しいゴルドドライブを前にマッハはマックスフレアからシフトデッドヒートに戻すと、上部パネルを上げてスイッチを押した。

 

<< ヒッサツ! >>

<< Burst! Full Throttle! >>

 

「今度こそ…これでシメェだァァァッ!!!」

 

<< DEAD HERT! >>

 

キックマッハーを強化した必殺技[ヒートキックマッハー]。

 

跳び上がって空中で高速回転しながら赤いエネルギーオーラを纏い、ゴルドドライブ目掛けて足を突き出していった必殺技は、ゴルドドライブの胸部に真っ直ぐと突き刺さると後方の壁へ吹き飛ばされ、ぶつかった際に声を上げる事も無く爆散していった。

 

爆散していったゴルドドライブを見てマッハは膝を着いた。今まで無理に動かしてた分が今一気に襲って来たのだ。

視界が霞んで何時意識を失っても可笑しくない程まで消耗してるマッハだが、ようやく敵の仮面ライダーの一人を倒す事が出来た事実に内心歓喜で満たされてるのもあって荒い息を吐きながらも仮面の下では笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…が。

 

 

 

 

 

 

 

ーヒュン!ー

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

爆散していった機械の残骸の中から小さく光る物体が勢いよく割れた窓ガラス目掛けて飛んでいく様がマッハの目に映った。

物体はフヨフヨと弱々しく飛んでいるが割れた窓ガラス目掛けて飛んでいると言う事は知性が在ると言う事になる。外見は”ZZZ”と、三つのアルファベッドで出来たモノだがマッハはそれが何であるかすぐ分かった。

 

「(アレって、ロイミュードのコアか!)…ッグ!?」

 

ロイミュードにとって稼働するための核であり、命とも言えるコア。本来ある筈のコアは今までのロイミュードには無かったが、今目にしてるコアはゴルドドライブ、番堂のコアであると気付いたマッハはコアを破壊しようと足に力を入れるが思うように動かない。

そうこうしてる内にコアは静かに割れた窓から外に出て行き、外に待機してたのかバット型のロイミュードがそれを回収し夜空の闇へと消えてった。

 

「…クソッ!!」

 

またしてもゴルドドライブを逃がしてしまったマッハは拳を地面に打ち付ける。仮面で顔は見えないがその様子からかなり悔いが在るように見える。

 

(何やってんだよオレは!一度のみならず二度も…ッ!新しい力を貰ったってのに…オレはッ!)

 

北欧のオーディン、オカ研メンバーは呆然と見ながらその場は、激しい戦闘が有ったのが嘘のように、沈黙の空気に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてミラーワールドでも沈黙の空気が広がっていた。

 

 

 

「ガッ…ッ!」

 

「………。」

 

オーディンの腹部、丁度カードデッキが嵌ってるVバックルを貫いてるリュウガのバイザー。

 

そしてオーディンを貫いたリュウガの右手には先程までオーディンが持っていた筈のゴルトバイザー。

 

この展開に貫かれたオーディンも、貫いてるリュウガも、この現実を頭で理解するのに時間を有した。

 

 

 

 

 

 

リュウガが発動したアドベントカード、スチールベントは他ライダーの装備を奪うカード。

リュウガ自身はアドベントカードによって召喚された武器等を奪うだけのカードだと思っていたのだが、今手に握られてるのがカードを発動する前のゴルトバイザーを手にしてる事から、バイザー等の装備も奪取可能だという事がオーディンのデッキを貫いて後にようやく理解できたのだった。

 

ようやく全ての流れを掴んだ矢先だった。デッキを貫いたオーディンの体が消えていっているのだ。

 

「ア…アァ……ぁ…。」

 

何の抵抗の動きも見せぬままオーディンはただ体が細かな粒子となって散り行く様をその体が崩壊するまでただ、呆然と立ち尽くしたまま何の抵抗も、言葉も無く、無となって消え去っていった。

 

オーディンが消えたと同時に手に持ってたゴルトバイザーも粒子となって最初からそこに無かったように、持ち主同様に無となり、リュウガもサバイブも使用時間が過ぎたのか今になって来る体の疲労感と共に元の形態へと姿が戻っていた。

 

「……フゥッ!」

 

緊張を解く様に今まで溜めてたモノを吐き出すように息を吐いた。

 

ミラーワールドに置いて強敵とされる仮面ライダーオーディン。その存在を目の前で倒し、消えてった事実を素直に受け止めきれなかったが、心の整理が追い付いて今までの疲労感と共に現れた安堵の気持ちを感じられた。

 

「……っと。まだ秋の方が終わってるとは限らないか…。」

 

まだ戦ってるかもしれない相方にへと思考を切り替えるリュウガ。まだ続いてたとしたら加勢に行かなければ。

そんな考えを頭に浮かべながらミラーワールドから出ようとしたリュウガであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背後からの攻撃を受けるまでは。

 

 

 

「ッ!…ア、ガッ!?」

 

突然の後ろからの攻撃。

背中が爆ぜた様な発光と熱を感じながら、リュウガは今までの思考を切り替えてた。

 

 

誰が、後ろから攻撃してきた?

 

 

このミラーワールドに入れるのはカードデッキを持った人物だけ。この世界でカードデッキを持った人間は自分と先程倒したオーディンのみ、もし入れたとしてもライダーの姿で無ければ塵となって消滅してしまうこの世界はミラーワールドの住人しか許さない無の世界だ。

 

ならミラーモンスターが?それは考えはすぐに切り離した。モンスターも自分の契約してるモンスターしか存在し無いし、契約のカードが在る限り此方を襲って来る事などあり得ない。

 

 

なら誰が、自分を後ろから攻撃してきた?

 

 

前倒れになる直前に首を動かして撃って来たであろう何者かを確認すべく目をやる。

 

其処に居た存在にリュウガは自身の目を疑った。何故なら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フン。あの程度で、我を殺した事に悦に入る等、おこがましい。」

 

先程消滅した筈のオーディンが何も無かったように立っていたのだから。

 

「なん、で!さっき…!」

 

「我は絶対の存在。故に、死なず。」

 

思いのほかダメージが大きく倒れてるリュウガの側に移動したオーディンは、召喚したゴルトセイバーの一本を手にし倒れてるリュウガの右足を振り降ろした。

 

「ッ───ガッ!」

 

一度では無く、何度も振り降ろし、叫ぶ間も与えない程にまで斬られた足は最早動く様子は無かった。

 

「これで走り回る事も出来まい…ムンッ!」

 

「グゥッ!」

 

剣を放り投げて仰向けのリュウガを踏みつけるオーディン。

ふとオーディンはリュウガのカードデッキに手を伸ばし、三枚ほどカードを抜き取ってじっくりと眺めた。

 

「ほう、良く育てられてるようだな。喜べ、コイツ等は我がもっと有効的に使ってやろう。」

 

「ふッざけんな!返し、ゴッ!」

 

奪われたカードに手を伸ばすリュウガだが、踏みつけらてた足で蹴り上げられ吹き飛ばされてしまう。

 

そしてオーディンはゴルトバイザーを手にし、デッキから抜いたカードを装填した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では貴様の判決を言い渡す。……死罪だ。」

 

<< FINAL VENT >>

 

「ッ!」

 

バイザー音が鳴ったと同時にオーディンの頭上に現れたのは、光り輝く不死鳥型のモンスター[ゴルトフェニックス]。

 

オーディンの体が浮かび上がりゴルトフェニックスと一体化し、余りの光量にその全貌が見えない程である。

 

「ハァァアッ!」

 

「ッ!」

 

そしてそのまま立ち上がる事が出来ないリュウガに向けて体当たりを仕掛けて来る。

リュウガはカードデッキに手を掛けたが、オーディンから発する光に包まれてしまい、そして…辺り一面が巨大な炎に包まれた。

 

 

 

 

 

 

ーエターナルカオスー。

 

オーディンの必殺技であるそれは全ライダーの中で最も高威力必殺技は辺り一面を焦土と化した。

 

地面にそっと降り立つオーディン。ふと辺り一面を見渡して、忌々しく口を開いた。

 

 

「…逃げたか。存外しぶとい下等生物だ……まぁいい。」

 

忌々しく一人愚痴るオーディンは先程リュウガから奪った三枚のアドベントカードを見る。

 

「態々我が探す必要も無い。これで見つけ出し、今度こそ我の手で判決を処す。

我が下した判決は、絶対なり。」

 

そうしてカードが握られてる別の手にはまた違ったものが三つ。オーディンの手に握られていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブランク状態の三つのカードデッキが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、深夜の住宅街。

 

 

「~♪~♪」

 

日が落ちて人通りが少なくなった住宅街の通りで、松永 燕は鼻歌交じりに帰宅してた。

 

一見陽気そうに見える彼女だがその様子とは裏腹に内心では一種の迷いが生じてた。

あの海岸での一件から悠の事を更に調べ上げて、その行動に僅かな隙を見つけながら燕の想像してたイメージ像と当ては待て来てるのだ。

本来なら真相に近ずく事に喜ぶはずなのだが現状素直に喜べないのが今の燕だ。悠の真相に近ずくに連れて本当にこれで良いのか?と言う迷いが燕の心境を満たしているのだった。

 

(どうすれば良いんだろうな~。コレはモモちゃん打倒の次に大事なお仕事だし、でも命の恩人を仇で返すっていうのも今更になってどうかと思うし………ハァ~。)

 

返しようのない心の叫びに溜息を吐く燕。そんな時だった。

 

 

 

 

 

ガシャアァァンッ!!!

 

 

「ッ!・・・え?何?」

 

突如、路地裏の方から物音が聞こえた。

 

燕はこの辺の地理に詳しく、確か物音が聞こえた所は人なんて全く通らない行き止まりのゴミ捨て場の筈だ。そこからまるで何かが、跳び込んだような物音がする等普通に考えて聞こえない筈だ。

 

「……。」(ゴクッ)

 

無意識に唾を飲み込んで路地裏の方に足を運びだす燕。本来なら誰だって不審がって近ずく事などの考えは思いつかない無い筈なのにこの時の燕は何故か様子を確かめに行くと言う考えしか無かったのだ。

 

一度有り得ない事態に巻き込まれ、命の危機に瀕した経験を味わっても尚の行動だ。そんな自分に自然と苦笑いしか浮かべてる内に曲がり角から顔覗かせて物音の正体を目にした。

 

「……え?」

 

言葉が詰まった。

 

燕が目にしたのは先程まで頭で一杯だった人物がボロボロの状態で辺りに散らばってる空き缶やビン等のゴミの中に壁に背を預けている事、右足なんかは切り刻まれたようにズタズタでシャツで縛って止血してるがおびただしい量の血が流れていた。

 

「は、灰原君!大丈夫!?…すごい傷。早く救急車を…(ガッ!)・ッ!?」

 

近ずいて声を掛けるも返事が無い。傷の具合から見て相当な重傷だと言うのが素人でも分かるくらいの姿に燕は携帯電話を取りだすが突然その腕を掴まれた事に動きが止まってしまった。

 

額から血を流してる悠の顔を見る燕。その顔は普段の学園で見せる様な気の抜けた感じでも無く、海岸で自分を探る様な視線を向ける顔でも無く、ただ此方を見た事も無い真剣な目で見ていた。

 

”余計な事はするな”そんな思いが込められた目は燕の動きを止めてた。

そして燕は見てしまった。視線を下ろして悠の腰に巻かれてるモノに。

 

 

「灰原君…それって…。」

 

「……。」

 

そう…

 

 

 

 

 

 

 

 

悠の腰に巻かれてる、グリーンに光るライダーベルトをだ。








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