その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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今回は戦闘シーンが半分と、もう半分が原作キャラ達のとある場面を写してます。

それではどうぞ。


怒気

 

現実世界。ミラーワールド。二つの世界で起きている激しい死闘の戦いに、リュウガは譲り受けた生存の力、サバイブを。マッハは限界を超えた力、デッドヒートを。

 

今、その力を強敵に振るおうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…その力、我の力に似ているようでそうでない…。

その力、一体何処で…?」

 

「貰ったんだよ。妹大好きの亡霊からね。」

 

ミラーワールドでは進化したリュウガ・サバイブを前に表情こそ仮面で見えないが憤りを感じてる様子であった。

恐らく、自分と似た力のサバイブが原因であるのと、答えをはぐらかすリュウガの態度についてだ。

 

そんな殺伐した空気が広がりつつあるこの場で刻一刻と時間が経つなか…オーディンは消えた。

 

 

 

 

「ッ!」

 

「ムンッ!」

 

リュウガの死角、背後に回り込み片方のゴルトセイバーを横薙ぎに振るうオーディン。

 

だがオーディンが消え、いち早く死角に気を配ってたリュウガは上体をしゃがむ事で回避した。

躱された事に続けてもう片方で追撃をするオーディン。しかしその腕は掴まれ、がら空きの胴にドラグバイザーを突き立てようとしたリュウガだが目の前のオーディンがまたしても消え攻撃は空振りに終わる。

 

離れた所に瞬間移動したオーディン。再び相対する両者だが、先の一瞬の出来事にリュウガは自身の体の変化に内心驚いてた。

 

(さっきのヤツの移動に予め予想張ってたが、反応速度が格段に上がっていやがる…。

オマケに体に漲って来るこの感じ…あの時押し付けられて初めて使ったけど、これ程まで性能が上がるのか、サバイブは…。)

 

初めて使う強化形態へのアイテムの使用。それが自身にどれだけの効果を表すかこれまでリュウガはそんなの考え無しに使わず、今在る自身の実力やモンスターの援護等で過ごして来た。

だが、こうして使っていると単純なパワーアップと言う性能だけでも改めて実感できる。どれだけこのカードを雑に扱ってたのかと。

 

今使ってるカードは間違いなく自分自身の力を上回るモノ。その力に振り回されそうな感覚になりそうだが、目の前の敵、オーディンと言う仮面ライダーを前に緊迫した緊張感は残せていた。

 

(相手は強敵。厄介なのは瞬間移動と一番使わせちゃいけないあのカード!

下手にアレを使われたら、最悪永遠にコイツと殺り合うハメになっちまう…だから!)

 

決心を決めたリュウガは、バイザーを振り払う動作をするとバイザーの頭頂部から片刃の刃が展開される。

刃は炎を纏うと刀身が伸び、銃剣タイプとなったドラグバイザーの刃に蒼炎を纏わせる。

 

(一気に短期決戦で…カードを抜く暇を与えねぇ位に、こっちが使いまくって攻めまくる!)

 

方針を決めたリュウガは短期決戦での勝負を仕掛ける為にオーディンに向かって駆けだして行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……う、んん。」

 

「あ、気が付きましたか?アザゼル先生。」

 

体に暖かな感触を感じながら目が覚めたアザゼル。

眼前にアーシアが此方を心配そうに覗いて来るのでこの暖かい感触は彼女の神器による治療だろうと頭の隅で考えながら周りの状況を知るために、何故か部屋が蒸し暑くなっているのを余所に寝転びながら首を回す。

 

自分と傍らに一斉に横たわってるオカ研のメンバー、その負傷者の前に庇うように結界を貼っているオーディンとロスヴァイセの姿。そして何故か興奮した状態で目を輝かせているイリナとギャスパーの二人。

どういった状況なのか、己の頭脳をフル回転で働かせるが気を失う前の意識を奪った仮面ライダーの姿しか脳裏に浮かばなかったので、堪らずアーシアの制止を振り切って未だ重い体を無理に起き上がらす。

 

「ム?やっと起きたのかアザゼルの小僧。目が覚めるのに随分と時間がかかったのぉ?」

 

「うっせぇ。それよりも今どうなってやがる?あのオーディンとか言う仮面ライダーは?」

 

「それなら今は大丈夫じゃ。…じゃが、油断出来ん状況じゃ。見てみぃ。」

 

「ん?…ありゃあ…。」

 

オーディンに言われ目を向けるアザゼル。

そこには死神ロイミュード三体を相手に体からオーラと高熱から来る蒸気を散らしながら戦うマッハの姿。どうやらこの部屋の蒸し暑さはマッハが原因であると理解でした様だ。

 

「ご覧の通り、あぁして別の仮面ライダー同士が戦ってる最中じゃ。下手に動いたら危ないと思いこうして結界を貼っていると言う訳じゃよ。」

 

「…なんだが漠然として状況を掴んだか掴んでねぇか知らねぇが…。あの白いの、味方と見ていいのか?」

 

「あぁそれなら多分…。」

 

「味方ですよ!」

 

オーディンが口を開こうとした時に割り込むように口を出して来たのはイリナだった。

 

「あの人はいい人です!だってあの機械の化け物に襲われた時に助けてくれたし、今だってそうです!

それに、……えへへ。」

 

(…悟られぬ様適当に言っとこうかと思ったんじゃが、これなら問題は無い、かの?

”戦闘の邪魔をするようなことはしない”、”此方との協力関係を口外しない”、今の所、問題は無さそうじゃな。後はあの若造が早く終わらせてくれるのを待つだけ、と…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、オーディン達の前で戦闘を行ってるマッハは…。

 

 

「ぜぇえぇぇいりゃあぁッ!!!」

 

体が蒸発すると思わせるくらいの高熱を感じながら前方二体の死神ロイミュードを連打で引き下がらせる。

 

そこへ鉤爪が後ろから奇襲をかけるが、マッハはこれを後ろを見ずに素手で掴む。引きはがそうとする死神だがマッハの圧倒的なパワーにビクともせずもがくだけ。

鉤爪を掴むマッハは、掴んでいない方の腕にオーラと熱を纏わせると手刀で死神の腕をへし折る様に両断。

切り取った腕を放り投げ、先程下がらせた二体の方へ蹴り飛ばしベルトの上部スイッチを連続で押した。

 

 

<< Burst! DEAD HEAT! >>

 

 

「ぬおぉぉおぉッッ!!!」

 

 

纏ってた蒸気が更に増し、赤いスパークが体から放たれるマッハ。

 

三体の死神ロイミュードが一斉に向かって来るなかマッハは真正面から向かって行く。

 

「おぉぉおぉうらぁッ!!!」

 

勢いを殺さず加速して行くマッハはボーリングの様に向かって来る死神達を体当たりで吹っ飛ばし、宙に浮かぶ死神達は赤い放電を放つマッハの頭上で一斉に爆散していった。

 

 

死神ロイミュードを撃破したマッハは此方を観察するように見ているゴルドドライブへ目を向けた。

最初の時と比べ口数が減り息を荒げてるマッハを目に、ゴルドドライブは冷静に分析する。

 

「フム……成程、高エネルギーとそれに伴い発生する超高温の熱を攻撃に転換して本来のスペックより高いパワーを引き出してる、って所かな?

…面白い。だが、どうやらまだ完璧に使いこなせて無いようだねぇ?」

 

「…ッチ。」

 

ゴルドドライブの言ってた事は正しかった。

幾ら実力を上げようと初めて使う力にマッハはデッドヒートの性能だけで戦ってるのが精一杯の状態。隠す気は全く無いらしく分かりやすい舌打ちをしてしまった。

 

「おやおや、分かりやすい反応だ事で。」

 

「うるせぇよ。どうせ隠したって無駄だってんのは流石のオレでも分かるっての、そんで……だからどうしたってハナシだっつうの。」

 

そう言いながら、マッハはゼンリンシューターを構える。

 

「使いこなせねえなら今使いこなす!テメエと戦り合いながらなら、コイツを乗りこなすのは手っ取り早いからな!」

 

「…フフッ、そう。どうやら思ってた以上に…。」

 

翳した手平に巨大なエネルギー球体を造り…。

 

「楽しめそうだ、ねぇッ!」

 

「ゼリャァッ!」

 

<< ゼンリン! >>

 

マッハに向けて投げたエネルギー球体をゼンリンシューターで振り降ろす事で叩き割ったエネルギー球体は、分割されマッハの両サイドにて爆発した。

 

そしてそれが開戦の合図のように両者同時に駆けだして行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< ADVENT >>

 

「行け。」

 

 

 

Syaaaaaaa!!!

 

 

 

所変わりミラーワールドでの戦いもその勢いを増しつつあった。

 

リュウガが召喚したべノスネーカはその心境を表すかのような鳴き声を上げながらオーディンに向かって行く。

 

口を大きく開きその牙を突き立てようとするべノスネーカだがオーディンは片手の素手でべノスネーカの鼻先を掴むだけでその猛攻を止めた。

 

「この程度…ムンッ!」

 

対した様子も見られないオーディンはべノスネーカを掴んだ状態で軽々しく腕を振るい、投げ飛ばした。

 

「詰まらんな。もう終わりか?」

 

「…次ならもう出してる。」

 

「何…ッ!」

 

 

 

Guooooooooo!!!

 

 

リュウガに言われて気付き、振り返った先には奇襲を仕掛けに襲い掛かるデストワイルダー。オーディンは瞬間移動でデストワイルダーの奇襲を回避。だがこれで終わった訳では無い。

 

 

<< ADVENT >>

 

 

更に召喚したエビルダイバーが上空からトップスピードで移動したオーディンの後ろから体当たりをしてくる。

 

二段構えの奇襲戦法にオーディンはタイムラグの所為もあって直ぐに瞬間移動が出来ず。

 

「ングァッ!」

 

振り返り様にエビルダイバーの体当たりを喰らい後方へ吹っ飛ばされる。この時が初めてオーディンに対し決定的な攻撃を喰らわす事に成功出来た瞬間であった。

 

「グッ…!」

 

「そこぉッ!」

 

吹き飛ばされたオーディンの決定的な隙を狙ってリュウガが銃剣にしたドラグバイザーで斬りに掛かる。

オーディンは咄嗟の事に反応出来ず、腕を反射的に出してガード。だが蒼炎を纏う刃はオーディンの腕を溶かす様に音を立てながらジワジワと刃が腕にめり込んでいく、堪らずオーディンは瞬間移動で下がる事にした。

 

右腕にくっきりと切り傷と焼けた跡が残ってしまったオーディンは傷跡を目にしてリュウガに対する怒りを更に込み上げて来るのを感じる。

 

「貴様…一度でならず二度までも我の体に傷を付ける等…!」

 

「そんなに痛かった?参ったねこれからもっと痛くするんだけど。」

 

炎を振り払い、刃を指先でなぞる仕草をして挑発するリュウガ。それが効果覿面なのかオーディンから放たれる怒気がより一層強くなるのを感じる。

 

「さて、続きやろうや。

コイツの扱い方も分かって来た。瞬間移動も段々馴れた。お宅もそろそろ本気で掛かんねえと、ただのビックマウスのまま…殺されるぜ?」

 

明らかな挑発。それは誰が見てもそうとしか思えないような口ぶりをリュウガはオーディンに向けて叩く。

 

普通ならここで相手の思惑に嵌らない様慎重に動くのがセオリーだが、リュウガには挑発に乗って来るとの確信が在った。

何故ならオーディンから放たれてる怒気が、その確信を得るのに十分な程のモノを感じ取ったからだ。

 

その答えかの様にゴルトバイザーを手にしたオーディンは忌々しげな口調で語りだす。

 

「貴様如きにコレを使う等一生の恥。

だが、我にとって最大の侮辱。絶対なる存在には不要の結果。

…修正を加える。」

 

「ッ!させるかぁ!」

 

オーディンが何をするか察したリュウガは一目散に駆け出す。もし思ってた通りのカードを使われたら戦況的にリュウガが不利になってしまう。何とか阻止すべく一心の思いで走る。しかしデッキに手を掛けたオーディンとの距離が空け過ぎている所為でタイミング的に間に合わない。

 

バイザーを空けカードを挿し込もうとするオーディン。カードの絵柄はリュウガが察した通りの時計の絵だった。

此処からじゃ間に合わない。走りながら脳裏に浮かんだ事実にリュウガは一つに賭けに出る事にした。

デッキから引き抜いたのは武器でも無く、モンスターを召喚するアドベントでもファイナルベントでも無い、ある意味運任せのカードだ。

 

(頼む良いのが来てくれよ、オイ!)

 

全力で駆けながらバイザーにカードを挿し込もうとする寸前のオーディンの前でリュウガはバイザーにカードを挿し込んで素早く発動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< STRANGE VENT >>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、場所は変わり廃墟ビルの一室。

 

そこには夜にも関わらず、少年少女が集まりある報告会をしようとしていた。

 

「さてと、んじゃ我が風間ファミリーの軍師様よ、幅広い交友で集めた情報を頼むぜ!」

 

「了解キャップ。とは言っても、ホントに限られた情報しか集まんなかったけどね。」

 

そこに集まってた団体は百代を除く風間ファミリーの一団。

 

先日の海水浴場で悠が百代を相手に押さえつけたのもあって、前から疑問に思ってた悠の存在を明かしてやろうと思った翔一の一言が発端で、こうして悠に関して集めた情報を公開しようとしていた所だった。

ちなみに何故この場に百代が居ないのかの話についてだが、あれ以来悠の話を持ち出そうとすると前の様子とは一変して避ける様になってしまい今回の集まりに対し呼びかけても来ないだろうと大和の判断にて百代を除くメンバーがアジトに集まった訳である。

 

そうしてる内に大和は取りだした手帳を取りだして中に書かれた内容に付いて説明する。

 

「じゃあまず学園での生活態度だけど、成績はそこそこ良いみたいだけど、無断欠席が目立った所があるみたいだ。よく担任の南宮先生のとこに呼び出しを喰らってるって。」

 

「無断欠席…何とも不真面目な奴だな。」

 

「あ。でもその休んでた理由って、バイクで事故起こしたから休んでたって聞いたよアタシ。」

 

「私もだ。最初は休日に一人旅をして、それで怪我の治療に時間が掛かったとかで。」

 

「何で犬達がそれを…ってそうか。二人はこの中ではあの男と仲が良かったのだったな。」

 

「それならそうとして話を戻すぞ?

交友関係は、同じクラスの暁ってのと、武偵クラスの遠山っていう二人と良く自販機前で喋っているのを良く見かけられている。それと同じクラスのゼノヴィアとワン子。それ以外は偶に話し掛けられたりされるのを答える程度であまり広い顔は持っていないね。」

 

「あの雰囲気じゃねぇ。どっちかと言うと、京みたいに何考えてるか分からないから近寄りがたい、って雰囲気があるしね。」

 

「失礼ねモロ。私はいつもどうやって大和と結婚しようとか、初夜はどういったプレイでするか、その後の営みはどう攻めるかで一杯なのよ。だから安心して、大和。」

 

「何に安心すればいいのか分からないけど、お友達の関係でお願いします。」

 

「もう、いけず。」

 

話しが進まないと感じた大和は、多少強引に自分のペースに持っていき、今度は学園外の行動について報告する。

 

「家の方は最初一人暮らしだったみたいだけど、ここ最近居候を入れたみたいで同じ学園の一年生だって。名前は桜井 秋。」

 

「あ、その人知ってます。隣のクラスで、結構人気者の人らしいです。私も何度かお話ししました。」

 

『オイラの事をちゃんと付喪神って信じてくれる、イイ兄ちゃんだぜィ!』

 

「何でたって灰原はソイツを居候として、一緒に住んでんだ?」

 

「それは分からないけど、桜井は灰原を”悠兄さん”って呼んでるから、従妹か親戚って関係が妥当だと思う。

…それと、この前分かった、あのアルディギア王国の王女様が今、灰原の家に居るって事だけど…。」

 

「それだよ!オレ様が今一番知りたいのはよぉ!何でたってあの清楚で可憐な女性と同じ屋根の下で暮らしてんだよアイツはァ!?羨ましすぎんだろうぉ!?」

 

「ガクトの考えは兎も角、ボクも気になるよ。どういった経緯で王女様と知り合ったのかが謎で仕方ないよ。」

 

「その辺に関してだけど、内容が内容なだけに情報が集まらなかった。

ただ、外で一緒の姿を見た際に結構仲が良くて、カップルって思う程だって。

その他にも、中等部の叶瀬 夏音と大量のキャットフードを買っている姿とか、暁の妹の凪沙って子と買い物とかしている姿も…。」

 

「ってオォォイィッ!!!

叶瀬 夏音って言やぁ、中等部の聖女って言われる美少女と!チア部で明るく人当たりが良いって評判の暁 凪沙とか!アイツなんて羨ましい思いしてんだチックッショウーーーーーッ!」

 

「…それと、一時期松永先輩にも目を付けられてたね、灰原。」

 

「ヌアァァァアァッッ!!!

灰原ァ!許しまじ!モテ男など、オレ様の手で滅却してやるわァーーーーッ!!!」

 

「よし!その戦い!自分も手を貸すぞ!女子を股に掛けるなど、武士として見過ごせん!」

 

余りに話しが脱線して暑くなっている二人を放って置く事にした。大和であった。

 

「…ワン子とゼノヴィアは、灰原を恋愛抜きでどう思ってるの?

一緒に鍛錬してる仲なんだから、この中では一番詳しいでしょ?」

 

「れ、恋愛とかそう言うのじゃないよ京!

ただ、校舎裏で偶然会って、相談乗ってもらって、決闘して、鍛錬に付き合ってもらってるだけの仲だもん!」

 

「それを世間では、仲が良い、って、言う物ではないでしょうか…?」

 

『まゆっちが一番欲しいって思ってるモノだぜィ!』

 

「ならゼノヴィアは?クラスも一緒だし…。」

 

「そうだな。分かってるのは、相当な実力者、ってとこかな?後は転校してして来てまだ時間が浅いし、これから深く知り合ってく予定だ。」

 

「…ねぇ。この際だからハッキリ聞くけど…灰原の事、好き?」

 

「好きだ。」

 

京のストレートすぎる質問に正直に答えたゼノヴィアに全員が唖然とした状態となった。

 

「ず、随分と、正直に、言うんですね。ゼノヴィアさん…。」

 

「ん。まぁ、色々と吹っ切れたと言うか、隠してもどうにもならないと言うか…。

とにかく、これからは悠に自分の気持ちをぶつけて行く気だよ。そう言う訳だから一子。その辺りよろしく。」

 

「え、えぇえぇぇぇッ!!!」

 

「頑張れワン子!恋は何時でも攻めるのが大事なのよ!」

 

「み、京ォ!?」

 

もうこの場の者達が本来の目的を忘れている位にそれぞれ脱線した話に盛り上がり、やる気が失せる大和。もう今日は終わりにしようか考えた矢先、ここまで黙ってた翔一が口を開く。

 

「…なぁ。結局の所さ……灰原って何モン何だ?」

 

その一言に全員が口を閉じ、翔一に視線が注目される。

暫く経って大和が全員に語り出した。

 

「…オレが灰原に関する情報について分かっているのは、この街に来て以降のコトだけ。

この街に来る前の情報が一切無いんだ。出身地も、前の学校も、家族構成も親戚の女の人が居るってだけで、それ以外の事は全然。」

 

「じゃあ、モモ先輩を軽くあしらう程の腕前は、この街に来る前に身に着けた事になるのかな?」

 

「多分そうだと思う。気も無しにそこまで出来る程って言ったら、想像尽かない程のレベルだってのは素人のオレでも分かる事だし…。」

 

「う~ん……あ!」

 

 

 

この時の翔一の一言が、悠に関するファミリー見解を改めさせるきっかけとなった

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかして、アイツが噂の仮面ライダーだったりしてな!」

 

「ちょっとキャップ。流石に、それは…。」

 

「そうだぞ。幾ら得体の知れない奴だからと、言って…。」

 

翔一からすれば、当ても無くただ突拍子に思いついただけの、所轄、勘と呼ばれるモノ。

最初は否定の色を見せたものの、悠と仮面ライダー。その二つの存在を合わせてみると、否定の言葉が詰まった。

 

「…モモ先輩を凌ぐほどの実力。それにさっきワン子が言ってたバイクの事故って…。」

 

「あ!仮面ライダーはバイクに乗って現れるってネットに載ってた!それにボク達も見たよね!?ガクト!」

 

「お、おぉ!確か…まっぱだったよな!?」

 

「マッハだよ!仮面ライダーマッハ!あの時名乗り上げてたじゃない!」

 

「まさか、あの時助けてくれた白い鎧武者か黒い仮面ライダーが…。」

 

「いやまさか、あの男が仮面ライダーなんて…でも、あの時の動き、よく思い出したら、何処か似てる所が…。」

 

「まさか…ユウが?」

 

「ちょっと待とう皆。幾らキャップの勘が良く当たるって言っても確かな確証が…。」

 

「それならアイツが仮面ライダーだと想定して、調べてみるのはどうだ?

それなら漠然と調べるよりもっと確かな事が分かりそうじゃね?」

 

「確かに、粗方の目途が在った方が調べやすいけど…。」

 

「ならダメ元で一度やってみようぜ!仮面ライダーの正体を暴くなんて機会、滅多に出来ねえからな!」

 

「な、なぁ皆…。」

 

「乗ったぜキャップ!仮面ライダーにしろそうでないにしろ、アイツの本性暴いてやるぜ!」

 

「自分もだ。敵を倒すにはまず知る事が大事だというのはこの地に来て初めて知った事だ。」

 

「ぼ、ボクも!もし彼がマッハなら、助けてくれたお礼が言いたいし!」

 

「そ、それを言うなら私もお手伝いします!あの時は何とかお礼を言えましたけど、面と言った方が良いと思いますし。」

 

『よく言ったまゆっち!それでこそだぜィ!』

 

「…で?ワン子はどうするの?」

 

「アタシは……今思い返すと、ユウの事に関して知ってるようで知らなかった所が一杯あるって今初めて気づいた……こんな事していいのかなって思うけど…。」

 

「…迷いがあるなら、無理しなくていいよ。こればっかりは、ワン子が自分で決めなきゃいけない事だから。」

 

「…うん。ゴメン、京。」

 

躊躇う様子の一子に無理しない様言葉を掛ける京。

そんなやり取りを余所に、翔一の勢いは止まらなかった。

 

「よし!それじゃあ今後の事について話し合おうぜ!大和!」

 

「…ハァー。分かったよ。」

 

渋々翔一の提案に乗る事にした大和。

やると一度言い出したら聞かない。これが風間ファミリーなのだと自分に言い聞かせながら今後の事について思考を働かす事にしたのだった。

 

そんな面々の様子を見て一人、一子の傍についてたゼノヴィアは内心焦ってた。

 

(悠…これは私一人ではどうにか出来る状況では無くなってしまったぞ…。)

 

この場に居ない人間に、自分の無力を訴えるゼノヴィアは申し訳無い気分で一杯だったと言う。

 

 

 

 

 

 





次回、それぞれの決着を投稿します。ではでは。

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