時は悠による作戦が行われた同時刻に遡る。
ハルナ達と別れたキンジは両手に幾つもの缶ジュースを抱えながら今日共に来た面々が居る場所へと戻っていた。…直視しないよう少し目を背けながら…。
「オーイ。飲みモン買って来てやったぞ~。」
「お!遅いぞ~!さてはドコかでナンパでもして来たのかなキーくんは?」
「それはねえよ理子。ただそこで知ってる奴と少し話しただけだ。」
「お帰りなさいキンちゃん。一人で大丈夫だった?」
「あぁ。そもそもジャンケンで負けた罰ゲームだし…。」
キンジを駆け寄ったのは長い金髪をツーサイドアップに結った童顔が目立つ峰 理子、もう一人は黒髪ロングヘアーで正しく大和撫子と言う言葉が似合う星伽 白雪。
キンジは主に理子から今日の誘いを受け、それと偶然に予定が空いてる白雪が同行していた。
「…アレ?アリアはどうした?」
「ん?あ~オルメス?それなら、ホラ。」
理子が指差した先にはビーチチェアでサングラスをかけて寝ているアリアだった。
「…どうしたんだ?」
「あ~、なんかねぇ?理子がちょ~~っと探し人について話したら何か機嫌悪くしてふて寝しちゃったんだよねぇ~。」
「はぁ…理子、今のアイツにそれ言ったら機嫌悪くなるのくらい普通思いつくだろ?」
「だってぇ。どうして今日ここに来たかって聞かれて普通に答えてる最中に寝ちゃったんだもん、理子は悪くありませーん!」
「ここに来た理由?…そう言えば探し人って言ってたけど、もしかして……。」
「ピンポーン!そう!理子がキーくん達を連れて来てあげたその理由は、此処に仮面ライダーが来るかもしれないと言う事を教えてあげたのだー!」
「何ですって!?」
理子がキンジに対して今日海に誘った理由に仮面ライダーが絡んでいると聞くや否や即座に反応したアリア。
「ちょっと理子!アンタどうしてそんな重要な話を今まで黙ってたのよ!?」
「え~?だって言おうとしたら耳塞いでふて寝したのどこの誰だっけかな~?」
「またアンタがくだらない与太話でもするのかと思ってたのよ!
とにかくこうしちゃいられないわ!アイツが居るってんならきっちり逮捕してやる!」
「アリア。オレ達この前蘭豹に言われたばかりだぞ?」
キンジの静止の声に聞く耳を持たず荷物の中から自身の武器であるガバメントを取り出し、半ば暴走気味で銃を手にしていた。
「えぇ言われたわね。でも私達は探すなとは言われたけど、偶然見つけた時の注意は言われてないわ。」
「うわぁ…。」
屁理屈に近い行動理由に思わず引いた表情を出してしまう白雪。そんな白雪に目が行かずアリアは理子に問い詰める。
「…それで?その情報が合ってるかどうかは知らないけど、それを私達に教えた理由はなに?まさか、アンタも仮面ライダーを狙ってる訳?」
「う~ん。…どっちとも言えないかなぁ?」
「どっちともって…どういう意味だ?」
「聞きたい?聞きたい!?どうしよっかな~…。」
「くだらない事につきあう暇はないわ。行くわよキンジ…。」
「あぁんもう!しょうがないな~。
仕方ないから視野が狭いお二人に教えてあげよう!
理子が今気になってるのは、仮面ライダーのベルトなのだー!」
「ベルト?仮面ライダーのか?」
キンジは今まで見て来た仮面ライダー。斬月、ガオウ、リュウガ、デューク。
その仮面ライダー達が身に着けていた独特と言えるデザインのベルトを思い返し、アレに狙いを付ける理子の考えがこの時までは理解できなかった。
「二人は知らないかもしれないけどね、今世間どころか世界中が仮面ライダーと言う存在に釘付けなんだよ?
最初は仮面ライダーの正体の話題に色々ネット上じゃ騒がれてたけど、とある誰か呟いた事で一気に皆ソッチに目が行くようになったんだよ。
”仮面ライダーの超人的な力は、あのあからさまなベルトにあるんじゃないか?”って。」
理子の言葉にキンジは在る場面が脳裏に浮かんだ。
ガオウと対峙した際に、自分はベルト目掛けて撃った事に対しガオウは必死になってベルトを庇ってた事に。
「そしたら皆正体よりベルトの方の話題に行ってばっかでさ、誰が作ったのか、どれ程の性能なのかって。
アレは誰でも扱えることが出来る究極の兵器!なんて言うのも言って来てね。仕舞いにはベルトの懸賞金まで出したヤツがいるんだよ!軽く億は超えるくらい。
アレを手に入れれば世界を手に出来る!ってお馬鹿さんも出て来る始末でさ。」
理子が告げる仮面ライダーのベルトの話にキンジは思いがけない事実に目を向けてなかった事に気付かされた。
対談の時に相対した戦極凌馬とが作ったとされるベルトの性能、もとい危険性。それは誰でも超人的な力を手に出来ると言う事に。
その力は例え、たった一人で世界を大きく動かせるほどの力を持って居る事にこの間この目で直接見た事を。
「アンタの言いたい事は分かったけど、それでどうしてベルトを欲しがるのよ?
お金?それとも…。」
「そ・れ・は……内緒で~す!理子が言えるのはココまで!続きは次週お楽しみに!」
そう言ってはぐらかす理子にこれ以上は聞けないと判断したキンジは先程の理子の話に、仮面ライダーの謎が深まるばかりに頭を悩ませている自分がいた事に自分もアリアの事を言えないと思っていた。
そして同時刻、海中の中では…。
「だぁーーーーッ!!!キモい!キモい!!キモい!!!
野郎の触手攻めとか誰得の画だっつうの!」
「五月蠅イヤツダ。仮面ライダート言ウノハコウモ騒ガシイヤツナノカ。」
海中でファントム捜索で潜ってるビーストが見つけたは海藻と海蛇のような特徴が合わさったファントム、ヒドラを見つける事が出たがヒドラがビーストを見つけるや否や体の棘の様な部位を触手の様に伸ばしビーストを巻き付けて拘束し今に至る。
「マァイイ。久シブリノ獲物ガ仮面ライダーナラ手柄ヲ立テルチャンスダ。
魔力ヲ持ッテイルヨウダシ、根コソギ奪ッタ後ニバラバラニ切リ刻ンデヤル。」
そう言いながら手に持った槍を見せ付ける様に振りビーストに近ずいてくヒドラ。
「冗談じゃねえっつうの…こうなりゃ、特訓の成果見せてやるぜ…どおぅううりゃあぁぁぁぁぁあッ!!!」
「ムッ!?ウ、ヌゥウウオオォォォォォッッワッ!?!?!?」
自身を巻き付けている触手を自分から更に絡める様にしっかりと掴んだビーストは、海中で自身を中心に回り出し、豪快にヒドラを振り回した。
「コノッ!水中デ、コレ程ノ力ヲ出セルナンテ…!」
「伊達に戦艦組にイジメられてねえんだよ!少なくともパワーとタフさは嫌ほど身に付いてんだよコッチは…なぁッ!」
「ウワァァアッ!?」
区切り良く言い放った後に振り回した事で触手の拘束が解け始めたヒドラを上に投げたビースト。
抵抗在る水中の中で真っ直ぐロケットみたいに上がってくヒドラ。やがて海中から出た後もまだ上に登って行くヒドラは宙を舞ってた。
ヒドラ自身は大したダメージは負っていない。このまま海にまた入ってビーストのパワーが活かしきれない様な戦法で行こうと重力に身を任せていた時だった。
ヒュルルルッ!バシィッ!
「ッ!?ナン、ダ、ウォォォッ!?!?!?」
突如ヒドラの体に巻き付いたピンクのロープ状の物はヒドラを巻き付けたと同時に引っ張り上げていった。
ヒドラの目に付いた先は岩で囲まれた人気が無い岸辺。ロープ状のモノが解いた時にはそのまま慣性の法則に則って岸の方へ飛んでいき顔面から勢いよく着地していった。
「プベラァッ!?」
「ったく秋のヤツ。言った所と全然違う所に上げやがって…まぁ今回は大目に見てやるか。」
声のした方へ目を向けると、そこには傍にバイオグリーザを従えさせたリュウガが倒れてるヒドラの前に立っていた。
そして海の方からも何かが打ち上がったように水柱が立ち上がり、打ちあがった際に撥ねた海水を降らせながらビーストもリュウガの隣に降り立った。
「ふぅ……イイ仕事したっしょ?」
「あぁ、少し予定と違うが。」
「おまけに特訓の成果も出た!」
「そうかそりゃ良い事だ。」
「…ちょっとは見直した?」
「………少し。」
「…ツマンない。素直じゃねぇの。」
「結構。ホラ仕事だお喋りはココまで、俺時間制限在るんだから。」
<< SWORD VENT >>
遠回しに言って来るビーストに対しリュウガはドラグセイバーを召喚しヒドラに構える。
「行くぞ……海の害虫退治。」
「誰ガ害虫ダ!ナメオッテ、グール!」
ヒドラが懐から魔石を投げグールを出現したと同時にリュウガとビーストは一斉に駆けだして行った。開戦の合図であった。
(……多分、コレだよね。また随分変わったデザインだから…。)
同時刻、海岸近くの駐車場で百代達に一言言って離れた燕は、今二台のバイクを前にしていた。
Dカブトエクステンダー、ガタックエクステンダー。そう、悠と秋が此処に来た際に乗って来たバイクの前にである。
(二台在るって事は、彼以外にも……とにかくコレは真実を明らかにする大きな手掛かり…!)
燕は手にした携帯のカメラをバイクへ向けるのだった。
(燕さん?何やってんだあんな所で…バイクを撮ってる?)
そしてその光景を偶然大和が目撃した。
「…なぁアスタルテ。ちゃんとあの問題児予備軍の気抜け男を此処に来るように言ったんだよな?」
「Yes。本人からの証言も取ってあるので間違いないです。」
「…その割にはどこにも見当たらんがな。」
そして悠達をこの場に呼び出した張本人である那月も今アスタルテと共に着いたようであったが、当の悠が何処にも見当たらない事に眉間を寄せていた。
「失態だったな。こうなるのなら待ち合わせ場所を決めておくべきだったか。
まぁでも奴の事だからこの近辺でうろついてる筈だし、探しながら情報収集でも……。」
「?…どうかなさいましたか教官。」
「いや…この場に似つかわしくない大物が目に入ってな。」
そう言う那月の視線の先は、二人組の女性の後姿、特に銀の長髪をした女性に目をやるのだった。
そして、ファントム、ヒドラと絶賛戦闘中のリュウガとビーストは…。
「ウラァッ!」
「ソオゥラッ!」
ヒドラが放ったグールの軍勢。そのラスト一体を丁度切り伏せた所であった。
グールを五分と掛からず全滅させたライダー二人を前に、ヒドラは槍を構えながら焦りを感じ半ば狼狽えてる様子だった。
「フゥ。もう終わりか?」
「残るはお前だけだ!」
「グッ……クソ!」(ダッ!)
「あ!アイツまた海の中に入るつもりかよ!」
「逃がすかっての!」
<< ADVENT >>
分が悪いと判断したヒドラは自分にとって優位に立てる海へ向かい逃走を試みるも、リュウガが呼び出した鮫型モンスターのアビスラッシャー、アビスハンマーが海から飛び出て海へ跳び込もうとするヒドラを捕まえ二匹掛かりでヒドラを陸に追いやった。
「グッオノレェ…。」
「生憎海の中にはもう行かせねえよ。此処で一気に決める。」
「それただ泳げないから此処で倒す、って言う風にしか聞こえないぜ?」
「………行くぞ!」
<< STRIKE VENT >>
隣のビーストの指摘を聞き逃してデストクローを装着してヒドラへ駆けるリュウガの後に続いたビースト。
鉤爪の突きを槍で防ぐヒドラだったが、デストクローの爪と爪の間に挟む様な形で槍を掴まれその隙にビーストがダイスサーベルでがら空きの胴に突きを喰らわす。
下がって怯んだ所にリュウガもデストクローを横に振るって槍を払い、アッパーカットの要領で爪を突き立てながらヒドラを打ち上げた。
「グァアッ!」
「トドメだ。」
「おう!」
<< FINAL VENT >>
<< KICK STRIKE! GO! >>
<< DOLPHIN MIX! >>
リュウガがカードをベントインすると、先程召喚したアビスラッシャーとアビスハンマーが融合し一匹の巨大な鮫。メガロドン型モンスター、アビソドンが海中から召喚されリュウガの後ろに佇む。
「ハッ!」
「トウリャ!」
アビソドンの口から放たれた高圧水流に足を突出しキックの体制で乗ったリュウガに続いて同じく足に青の魔方陣とイルカの頭部を模した魔力のエネルギーを纏って水流に乗るビースト。
迫る必殺技にヒドラは自身の触手を一つに束ねてドリルの様にし、渾身の一撃を持って迎えようとしたのだったがアビソドンの高圧水流を前に触手は弾かれてしまい、水流に飲み込まれそこからリュウガのアビスダイブ、ビーストのストライクビーストがヒドラに炸裂したのだった。
「ウオリャッ!」
「ガッハッ!?」
「デリャァッ!」
「ウワァァァァッッッ!」
キックを受けたヒドラは吹き飛ばされそのまま海に向かって飛んでいき、着地したリュウガとビーストは海から上がった爆発を目に変身を解いたのだった。
「いよっし!ファントム撃破!これで海の平穏は訪れ、ナンパし放題!」
「そんな邪な思いで戦ってたのかよ……まぁいいや。もうおチビは来てる頃だし、この辺はもう大丈夫って伝えてハイお終い、と…。」
「そんでその後は思いっきり遊ぶ!さぁ~てなにっすかな!」
戦闘を終え完璧に遊ぶ気満々の秋は先に駆けだして行き、はしゃぐ秋の後姿を見て一息吐いて悠も戻ろうとした時だった。
ヒュルルルッ…パシッ!
「ッ!?(グイッ)のわッ!」
ドボォォンッ!
「ん?…あれ、悠兄さん?」
不意に後ろ振り返った秋は、居る筈の悠が居ない事に気付き辺りを見渡しても姿が居ない事に嫌な予感を感じていた。
そして、当の悠は。
(コイツ、まだ生きてたのかよ!)
「クハハ…。」
海中の中でもがく悠の視線の先には、先程倒した筈のヒドラが触手を悠の腹部に巻き付けて海の中へ引きずっていたのだ。
だがヒドラの体は先程の必殺技の所為で無事にとは言えず、体の七割以上が無くなっており今では上半身と右腕が在るだけで伸ばしてる触手も辛うじて残った一本の様であった。放っておいてもこのまま消える運命だが、せめてもの見返しに道連れにしようと言う魂胆であった。
「魔法使イノ言ウ通リ本当ニ泳ゲナイ様ダナ、ナラバコノママ水ノ中デ死ニ絶エロ!」
(この状況誰だってこうなるだろうがッ!…ヤバい、息が……。)
触手を外そうにも外せなく次第に意識が遠のいてくなかヒドラの体が次第にひび割れて来た。もうじき命が尽きようとしてるのだ。そうしてる最中にも段々海深く沈んでいき海面がどんどん遠のいていく。
「クハハ、ココマデ沈メバイイダロウ。デハ先…ニ、行ッテル…ゾ…。」
そう言ってヒドラは体が塵の様に崩れていき海の中を漂って散ってった。
ヒドラの触手からようやく逃れる事が出来た悠だが、海面を上がろうにも泳げない悠にとっていくら手足を動かしても上がるどころか逆に沈んでいき、次第に息が出来ない事から目の前が真っ暗になり始めてた。
(オイオイ、こん…な、終わ、り方…かよ…。)
手足も動かなくなり遂に潮の流れに身を任せる事になってしまった悠。
こんな事なら苦手な泳ぎを克服するべきだったと後悔しながら、やがてその意識も失い海中深く沈んでいった。
誰かに腕を掴まれる感触を最後に。
「オーイ!悠兄さーん!何処行ったー!?」
そして陸の方で今だ見付からない悠を探し大声で叫ぶ秋だが一向に見つからない。
秋の中で感じた嫌な予感は段々と大きくなりつつあった。
「何処行っちまったんだよ、何も言わず消えるとか………まさか…。」
秋は海を見て、そういえば後ろの方で何か海に落ちた様な音を聞いた事を思い出し、悠が何かしらの形で海の中に引きづりこまれたとしたら…。
「…ヤッベェ。オイオイこれはヤバいっしょ!」
もし悠が海に引きづり込まれたなら大分時間が経っている。秋は今まで見た事も無い取り乱した状態でビーストリングを取り出そうとしたが冷静で無い為に中々ポケットから取り出せない。
取り乱した秋がようやくリングを手に掛けようとした時だった。海から誰かが上がって来たのに秋は気付き敵かと思って警戒したが良く見ると意識の無い悠を抱き抱えているのが見えた。
その人物とは…
「ゼノヴィアちゃん!?何でココに…。」
「それよりも手を貸してくれ!」
ゼノヴィアが何故海の中から悠を抱えて来たのに疑問を抱く秋だがゼノヴィアの言葉にそんな考えは吹き飛び一先ず悠を陸に上がらせるのに協力した。
陸から上がった悠を横にし悠の顔に自身の顔近ずけるゼノヴィア。
「…息が無い。気管に水が入ったか…。」
「えぇ!?ちょ、どうすんの!?このままじゃ…。」
「決まってる。こうするんだ。」
慌てふためく秋を余所にゼノヴィアは悠の顎を引かせ自身の口を合わせる。人工呼吸だ。
息を送り胸部が膨らんだのを見て胸部の中心をマッサージする。そしてまた口から息を送りこの動作を繰り返す。
こればかりは秋も何も言わず悠の安否を心配して見守るなか、悠の指がピクッと反応し
「…ッ、ゲホッ!ガハッ!」
「ッ!悠兄さん!」
口から水を吐き出し意識が戻った悠の顔を除く秋。
覚めたばかりで意識が朦朧としてるなか、悠は此方を覗き込んでる秋と一安心して笑みを浮かべているゼノヴィアを見てまだ死んでいない事が分かった。
「……金槌…克服した方が良いよな、コレ…。」
「本当だよッ!こんなんで死んだんじゃマジ洒落にならねぇって!」
「…あぁ。悪い。」
涙ぐんでる秋の手を借りて起き上がる悠。その視線はゼノヴィアに向けられてた。
「あと何でキミがここに居るんだ?」
「あの後モモ先輩が急に帰って皆どうするかって話になった時、一子達と別れて少し歩く事にしたんだ。
そしたらキミ達が四人で話し合ってる内容を聞いて此処に…。」
「え…てことは…もしかして…。」
「見てたよ。キミ達が戦ってる姿を。
とは言ってもずっと前から気付いてはいたんだがね。」
「前って……まさか、最初のあの時?」
「あぁ。あの時の雰囲気がさっきキミが成ってた姿の時と一緒だと言うのに気づいてね。
あの時一子の決闘に混ざったのもそれを確かめる為だったんだよ。」
「………マジかよ。」
「…ちょっと待って。二人がどういう感じで知り合ったかは知らないけど、ずっと前に知ったんならどうして今まで黙っててくれた訳?」
「特に意味は無いよ。ただ、私に違う生き方が在ると教えてくれた恩人を困らす様な事をしたくなかっただけさ。」
「…おやおや~?これはもしや…?」
「秋、黙ってろ。変な口は出すなよ?」
「いやだってね~?これはまた悠兄さん、罪深い事を…。」
「黙ってろ、三度目は言わないぞ。」
「いやなんか面白くなって来たね~!ラ・フォリアちゃんも居てまた新たにゼノヴィアちゃん増えて、おまけに川内ちゃん達も(ガシッ!)…へ?」
「ちょっとウミん中泳いで、こいやァッッ!!!」(ブゥンッ!)
「えええぇぇぇぇぇッッ!?!?!?」
何時までも黙らない秋の頭を掴み上げ海に向けて投げた悠。投げられた秋は叫び声を上げながら姿が見えなくなるまで飛んでいった。
「フーッ、フーッ…おぉっと。」
「っと。まだ無理に動くな。一時的とは言え、死ぬ間際寸前だったんだぞ。」
「悪い……デカい借りが出来ちまったな。」
「気にする事じゃ無いさ。それを言うなら私なんかキミに三度ほど助けられている。」
「でも実際命の恩人だよお前は。俺のやった事より…返すのにちと時間掛かりそう。」
「そうか………なら、今はコレだけ貰っとくよ。」
「何を、んッ…ッ!?」
ふらついてる悠を支えていたゼノヴィアは悠の顔を自分に近ずけて口を合わせた。
先程の人工呼吸のような作業的なのとは違い、感触を味わうように啄む突然のキスに悠は何も出来なかった。
「プハッ…うん。さっきは仕方なしとは言え、初めてにするのに少し不満が在ったからな。」
「…えぇーっと。」
「あぁ、心配せずともこれからもキミの正体は言わないでおくよ。助けられた恩が在るからな。一子達にバレそうな時は私が何とかしてみせるよ。」
「…あ、あぁ。それは、どうも。」
「気にするな。
さて、私はそろそろ戻るよ。体はもう大丈夫か?」
「あー、うん。…お陰様で。」
「そうか。では私は行くよ。」
「う、うん。」
うわ言の様にゼノヴィアの言葉に返す事しか出来なかった悠を置いてゼノヴィアは去って行った。
去った後残された悠は近くにあった岩に腰を掛けて、先程の行為を思い返しながら両手を顔にやってた。
「…俺って何で不意のキスに弱いのかなぁ…あの時はちゃんと防げたのに…。」
「ブッハァ!酷いよ悠兄さん!あんな遠くまで投げる事ねえじゃねえかよ!…アレ?ゼノヴィアちゃん、もう行っちゃった?」
「……もう戻って来たのかよ。五分足らずで…お前も規格外になってきたなぁ…。」
「…ねぇゼノヴィア?」
「どうした?」
「なんか、顔が赤いよ?大丈夫?熱中症にでもなった?」
「ッ!チュ、チュウ……イヤ、なんでも無い、少し顔が日に焼けたかな…。」
「?…そう?」
「…オイオイ。」
「あっら~。こりゃちょっとまぁ…。」
そして悠達がハルナ達の元に戻る時にも思いがけない人物が居た。
「やっと来たか。さて早速呼び出した件について話し合いたいんだが、それより先に聞きたい事が出来たようだな。」
「ご、ゴメン。灰原君…。」
ハルナとラ・フォリアの所に戻った悠達に待ち受けていたのは、ジト目を向けている那月だった。
那月の後ろでは見つかった事にぎこちなく謝罪するハルナと困り顔で笑みを浮かべるラ・フォリアを目に、悠の心境は最悪と言ってよかった。
「あー、遅かったすねぇ。
ファントムならこの辺一帯調べましたけどそれらしき反応は見つかりませんでしたよ。多分、もうこの辺を移動したとみていいと思いますよ。アイツ等一つの場所には留まりませんから。」
「そうか。ならこの海岸はもう安心、と言って良いのか?」
「えぇ大丈夫です。専門家のお墨付きってヤツで。
と言う訳なんで俺達は夏休み漫喫しに行くんでこれで…。」
「逃がすと思ったか馬鹿者め。」
悠達が二人の背を押して去ろうとしたが、当然那月はそれを許す訳にはいかなかった。
「そこに居るのはアルティギアの王女様だろう?何で一国の王女が、お前達と一緒に夏休みを満喫しているんだ?ん?」
「それはですねぇ…。」
「私と彼はちょっとした事で知り合ってお友達になったんですよ。
今夏休みというのもあって彼の所でホームステイをしているんです。」
「ほう?」
悠の前に出たラ・フォリアが那月に事情を説明仕出し、突然のラ・フォリアの行動に三人は内心焦ってた。
「…まさかお前が一国の王女と友達とはなあ、普段暁達としかつるまないお前が。」
「ホントはそれ以上の関係を望んでるんですけどね。」
「その辺はちょっと黙ってて。」
「…成程。此処まで来たら暁以上か…。」
何処か納得したような様子を見せる那月は再度悠に問いかける。
「話は戻すが、本当にファントムはもう居ないんだな?」
「えぇ居ませんよ。何なら今度暁連れてウミん中投げますよ。」
「……そうか。報告ご苦労。また何かあったら呼ばせて貰う。
…後担任として言わせて貰うが、同じ屋根の下に居るとしても不純な行為はしない様に。」
「私は何時でもOKなんですが…。」
「お願いだからそれ以上は言わないで。」
やけにあっさり追及を止めた那月に悠はもっと来るものだと思ってたがその期待は裏切られた。
魔術で消えた那月を後に悠は何処か納得いかないようであった。
「なんか引っ掛かるなぁ、もうちょっと何かしら言って来るものだと思ってたんだが…。」
「まぁ良いではないですか。無事に終わったのなら万事解決と言う事で。
「そうそう。それよりもファントム退治も終わった事だし、オレ達も海を満喫しようぜ!」
「全くアンタって子は…。
でも、偶の息抜きには良いんじゃない?」
「…はぁ。あぁ分かったよ。今日はもうフリーで。」
「いよっし!そうと決まれば………先ず腹ごしらえでイイ?」
「……教官。あのままアレ以上聞か無いままで宜しかったのですか?」
「別に大した事じゃ無いと判断したまでだ。……それに…。」
「?何か?」
「…いや、何でも無い。」
(確かアルディギアの王女はファントムと仮面ライダーを空港の一件で目にしてる筈。
それとファントムを知り尽くしてる謎の男と友達…偶然にしては出来過ぎてるな。)
「……ん?」
「どうかしました?」
「いや、家の前に誰か突っ立てる。」
海からの帰宅途中。エクステンダーを走らせる悠の視線の先に家の玄関前に立っている老人らしき人物が居た。
老人は此方に来るバイクの音に気付くと待っていたかのようにバイクを停めた悠達に近寄って来た。
「おぉ帰って来たか。いやはや急とは言え訪れたら誰もおらんようじゃったからどうしたものかと悩んでだ所だわい。」
「あー…家に何か用ですかお爺さん?」
「おぉスマンスマン。そりゃ突然来られて困るのも当然じゃな…。」
「…!ちょっと、この人もしかして…!」
「どったの姉ちゃん?」
少し汚れた服装の隻眼の老人を見てハルナは老人について何か気付いたようだが当の老人は長い顎鬚を撫でながら名前を名乗り始めた。
「儂はオーディン。北欧を収めてる神じゃ。今回訪れたのはお主等の力を借して欲しく参った。」
「…あの、ウチ宗教セールスは基本お断りしてますんで。」
「イヤ、儂本物の神サマなんじゃが…。」
劇場版ゴーストで新ライダー出て来るみたいですけど。あのデザイン正しくゴーストって感じが出て良いなって思った自分でした。