その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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発覚

 

 

 

場所は昼前に家から出て約三十分弱。

 

バイクで走りながら感じる潮風の匂いと後ろに乗ってる同乗者の体温を感じながら海岸近くの駐車場に停めヘルメットを脱いだと同時に感じる日差しのジリジリと肌を焼く感触は何度味わっても馴れないものであった。

 

「…………あっつい。」

 

「海に……キタァーーーーーッ!!!」

 

「ちょっと、秋。抑えなさい。恥ずかしいから…。」

 

「いやぁ今日はいい天気で良かったですねぇ。絶好の海水浴日和です。」

 

「……俺達遊びに来たんじゃねぇんだけど?」

 

自称、チームライダー+アルディギア王女は海に来ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨夜那月の使いと言う事で灰原家を訪れたアスタルテの呼び出しにより急遽街の名所スポットの一つである海水浴場に訪れた悠達。

那月は海に来る前に一つ仕事を終わらせてから来るようで折角だから那月が来るまで海で遊んでいようと言う秋の提案に賛成したハルナ、ラ・フォリア(結局そのまま灰原家で厄介になる事になった。)達の意見に投げやりで了承した悠。

 

海と言うのもあってそれに相応しい格好、薄手のシャツにトランクスタイプの水着に着替えた悠達男性陣は立てたパラソルの下で未だ着替えている女性陣を待っていた。

 

「……あっつい。人を呼び出しといて待たせるとか何考えてんだあのゴスロリチビめが…。」

 

「悠兄さーん。暑いのは分かったから汚い言葉は止めようねー。…いやにしても楽しみだね~。」

 

「何が…?」

 

「何がって決まってんじゃん!水着だよ、み・ず・ぎ!海ときたら定番のイベントじゃん!早く来ねえかなぁラ・フォリアちゃん。」

 

「…今更アイツの水着見たってなぁ……。」

 

「ちょっと待って。何そのセリフ?まるで前に見た、っていう感じのセリフだけどもしかして…?」

 

「あぁ、あの時まだお前コッチに居なかったけ。桜井が言ってたじゃん。水上運動会の時に出たって、あの時アイツ水着姿で学校の生徒全員の前に出たんだよ。」

 

「何ですと!?ビキニか!?ビキニだったのか!?」

 

「はいはい、ビキニビキニ。黒でしたよ、はい。」

 

「んなーーーッ!?

な、なんてこった。どうして…どうしてその場にオレが居なかったんだ!?」

 

「…そんな騒がなくてもさ、その本人が今から来ますけど?水着で。」

 

「…あ、そうか。それもそうだったね、うん。」

 

「…フゥ。やれやれだぜ、ホントによ…。」

 

「何がやれやれなんです?」

 

隣の秋が勝手に騒いだり勝手に納得したりで呆れる悠の呟きを拾い上げる声が後ろから聞こえる。

振り返り、隣の秋が”おぉッ!”っと言うオーバーなリアクションを聞き流しながら見てみるとそこには遅れて来た女性陣がそこに立っていた。

 

ラ・フォリアは水上運動会の時とは違った青の黄色いラインが入ったパレオの水着を着て隣に立ってたハルナは赤いスポーツタイプの水着を纏っていた。

 

「すみません遅れました。どの水着をレンタルするかで迷ってしまいまして…。」

 

「いやイイ!全然イイよ!バッチグッド!超似合ってるよ!ラ・フォリアちゃん!」

 

「あら、お世辞が上手いですね秋は。」

 

「いやいやお世辞じゃなくて本音のハナシ。

姉ちゃんは……うん。腰のラインは良いけど、色気がなぁ…(ガンッ!)イタッ!」

 

「悪かったわね、胸が小さくて。

でも言わせてもらうけど、これでも少しはサイズ上がってんのよ。」

 

「あ、そうですか。すんません…。」

 

桜井姉弟のやりとりを余所にラ・フォリアは未だパラソルの日陰で座ってる悠に前屈みで顔をズイと近ずける。

 

「それでどうです?私の水着姿。」

 

「…それならこの前言ったが?」

 

「前は違う色でしたでしょう?私が聞きたいのは今着ている水着の話しです。」

 

「う~ん………アンタ青系の色が似合ってんな、髪の色も考えて。…でも個人的には白も似合うと思う…。」

 

「そうですか。なら今度はリクエストに応えて、海岸デートでもしましょうか。」

 

「しませんよ?」

 

二人のやり取りを見た桜井姉弟は”この二人、本当に付き合ってないの?”と同じ意見が出る程の何時もと違う悠を見て、調子が狂う感覚を覚えた。

 

「…まぁところでさ、実際この後どう時間過ごす?あのおチビ先生何時来るかって詳しい時間知らされてねぇしさ。」

 

「そうだなぁ………専門家として此処に呼ばれたなら恐らくファントム絡みの件だろうからな。今の内に此方で少し調べるか。」

 

「え~!?海に来てまでぇ?どうせなら楽しく遊ぶとか…。」

 

「この後戦闘になるかもしれないってのに体力使うバカがいるか。それに、おチビが来る前にさっさと片付けてしまえばその後自由にウンと遊べるぞ…泳ぎ放題、ナンパし放題でな。」

 

「よっし分かった!そうと決まれば聞き込み開始と行こうぜ!」

 

((すっげえ・すごい 単純な ヤツ・弟ね。))

 

「あらあら。楽しそうな方々ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして二手に分かれて聞き込みをする事になった悠達四人。

 

だが聞き込みをするにもシーズンにも関わらず海岸には余り人が居らず情報が中々掴めないなか途中立ち寄った海の家で休憩がてら店の従業員に聞きつつ中の席で悠とラ・フォリアは耳にした情報で意見交換してた。

 

「海で泳いでたら何かに引きずり込まれる、ですか…しかもそれが人では無く獣人や悪魔…。」

 

「決まりだな。

ファントムは海で泳いでる人外共に襲い掛かって魔力を奪ってる。となると水の中を泳げるファントムとなると…自然と限られるな…。」

 

席に座って買ったラムネの瓶を傾けて飲みながら悠は今回のフォントムについて考察する。確かに水の中なら被害が出るまでシフトカーの捜索の目に引っ掛からないし狩りをするなら最適の場だ。だが余りにも被害が出過ぎて人外どころか人間すら寄らなくなってシーズンの時期なのに客が来ない事に従業員が嘆いていたのはここだけの話し。

 

とにかくにも、ファントムが潜伏してるであろう場所が分かった所で那月が来る前にさっさと倒してしまいたいと思ってた悠だったが、その顔色は何処か曇っていた。それに向かいで座ってたラ・フォリアが声を掛ける。

 

「どうかしましたか?顔色が優れないですよ?」

 

「…いや何でも無い……とにかくファントムの仕業だってのは分かった。これ飲んだら秋達と合流するぞ。」

 

何でも無い風に振る舞いラムネを飲む悠にラ・フォリアが何処か納得いかない顔でジッと悠を見てた。

そんな時、店に客が来たのか外から談笑しながら近づいてくる声が聞こえて来た。

 

「オイオイ弟よ。なんか私が頼んだヤツとは大分違くないか?海の中の魔物って…。」

 

「なら言わせてもらうけどね姐さん。姐さんの探し物はいくらオレでも限度だ在るってモノだよ。ネット上で探しても情報規制かすぐ消されてるし、此処に来たのもあくまで予想中の予想って言ったんだから文句は勘弁してほしいよ。」

 

「ヤツが怪物退治してるからってか?燕も呼んだってのになんとも地道なやり方だなぁ、私の性に合わん。」

 

「まぁまぁモモちゃん。こういうのは根気の勝負だよ。」

 

「ま、その辺は気長にやりながら探してこうぜ。それよりもそこで休まねえ?魔物の所為で人があんま居ねえしゆっくり出来るぜ!」

 

「そうね、ワタシ喉がカラカラ~!」

 

「そうしよう。この日本の夏はここまで暑いとは予想外だ。」

 

「自分も同感だ。ドイツに比べてこの暑さには堪える…。」

 

中に入って来たであろう十人の団体が店の中の席に着いているなか悠は振り返らずとも入って来た団体が分かった。いや、正確には分かってしまった。

 

「悠?」

 

「……出るか。ちょっと面倒臭い事になりそうだ。」

 

更に顔色が変わった悠にラ・フォリアは不思議そうにするなか悠は店から出ようとなるべく感づかれない様に去ろうとしたが。

 

「…アレ?もしかして…ユウ?」

 

「何だと!?」

 

「え?…。」

 

「ッ!」

 

「………ハァ。」

 

気付くな、という思いも一瞬の内に砕けた悠の願いは団体の風間ファミリーの一人である、一子が悠を見つけてしまい悠の存在に大きく反応を示した百代、クリス、そして百代に呼ばれた燕とゼノヴィア。

 

気付く否やすぐさま近づいてきたのは一子とゼノヴィアだった。

 

「やっぱりユウだ!最近稽古の誘いに付き合ってくれないから随分久しぶりな気分だよ!」

 

「あー…悪いね。ちょっと最近ゴタついてて、ちょっと…。」

 

「ゴタツキとは、そこに居る女性の事でか?」

 

ゼノヴィアが名指した隣に居るラ・フォリアに全員の目が行ってしまい中には水着姿のラ・フォリアに見惚れる者や目を見開いたりしているなか、悠がゼノヴィアの質問に対し答える。

 

「あー………そう!、異文化交流のホームステイに家が選ばれてねぇ。そのお蔭で、ちょっとバタバタしたり…。」

 

「へぇーそうなんだぁ…アレ?何か見た事ある様な、無い様な…。」

 

「ワ、ワン子。そ、その人いやそのお方は…。」

 

「ん?どうしたのクリ?なんか固まっちゃてるけど…。」

 

「どうも初めまして。ラ・フォリア リハヴァインです。訳あって灰原家に厄介になっています。」

 

「わぁ、日本語上手ですね!私、川神 一子って言います!皆からはワン子って言われてます!

所でリハヴァインさん。何処かで会った事ありません?なんかリハヴァインさんに何処か見覚えが…。」

 

「お、オレも!お姉さんとはどこか会った気と言うか、何と言うか……もしよろしければ!お茶でもしませんか!?」

 

「ガクト!いきなり過ぎるよ!て言うか会ったどころかつい最近ボク達見てるよ!」

 

「へ?…。」

 

「えぇ。ついこの間の、水上運動会の時に皆さんの前で挨拶しました。」

 

「挨拶…あーそうだ!確か開会式の時に出て来た何処かの国の王女さ……ま…。」

 

 

 

 

突如固まる空気、そして…。

 

 

 

 

 

 

 

「「「ええぇぇぇぇええッッッ!?!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

店中に気付いて無かった三人(一子、ガクト、翔一)の叫びが木霊した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと…その…王女様とは知らず、馴れ馴れしく…。」

 

「あぁそんな畏まらないでください!今の私は王女とかそんなの関係無しに此処に居るので、私としては今みたいに振る舞っていただけたらそれでいいんです。

なんなら私の事をフォリりんって呼んでも…。」

 

「誰も呼ばねえっつってんだろ、そのヘンなあだ名。てかまだ諦めて無かったのかよ。」

 

「お、王女相手にツッコみ入れてる…なんて奴だ、灰原…。」

 

「わ、私なんか恐れ多くてとてもあんな風に振る舞えません!」

 

『恐れ知らずにも程があるぜィ!』

 

ラ・フォリアの素性を知って固まる一子に比べ素っ気無い口調で話す悠に唖然とする大和と由記江。

風間ファミリーのメンツから様々な視線が集められるなか少し鬱陶しいと言わんばかりに口を開いた。

 

「で?其方は団体さんで海水浴かい?仲がよろしい事で。」

 

「それもあるが、今回ココに来たのは別の目的があるんだ。」

 

「おい、ゼノヴィア…。」

 

「別に良いじゃないか。言った所で大した事は無いと私は思うぞ?」

 

「目的、ねぇ。ナニが目的なんだ?」

 

大和がゼノヴィアに呼び止めている様子から何やら只事じゃ無い予感を感じ取った悠は話してくれそうなゼノヴィアに聞き出す事にした。

 

「この海水浴場で魔物が出ると噂されてるが、キミは聞いたか?」

 

「あぁ。泳いでる奴が海に引き込まれるってハナシだろ?」

 

「そうだ。私達はその魔物を狙って来る、ある人物を探しているんだ。」

 

「魔物を狙うある人物ゥ?一体そりゃ…。」

 

「仮面ライダーだよ。お前が全く私の相手をしてくれないから、私が弟に頼んで手掛かりを探して貰ったんだ。」

 

それに応えたのは悠に対して好戦的な視線を向けている百代。

さっきからギラついた百代の視線や、睨んで来ているクリスに対し早くこの場を去りたいと思っているが当の本人は逃がさないと言った風に悠から目を離さない。獲物を狙う肉食獣の様に。

 

「まぁでもここに来たのはツイてるな。

あの時から雪辱を晴らそうと勝負を挑もうにもお前は簡単に消えるわで、仕舞いには都市伝説に縋りつかなきゃいけなくなるまで鬱憤が溜まってるんだ。

…責任は取ってもらうぞ灰原ぁ。私をこんなんまでにした責任をなぁ…。」

 

悠の前に出て何時でも戦えるという意欲を出していく百代。ファミリーの面々は百代に此処まで言わせる悠の実力は百代経由で聞かせられたが素直に信じられなかったのが本音だった。幾らクリスや二人掛かりのゼノヴィアや一子に勝ったからって百代と一対一で簡単に伸したなど、それこそ嘘みたいな話だ。

 

そんな百代を前に悠は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…行こうぜ王女。こんなんに一々時間潰してるヒマは無いからな。」

 

「なに!?オイ待て!」

 

ラ・フォリアの手を取って店から出る悠に、百代は追いかけて再度悠の前に立ち何故戦わないのかを聞き出す。

 

「ふざけるなよ灰原!お前は強い!上手く隠してるつもりだが私には分かるぞ!お前はまだ本気でその実力を出してないと!

力を持ってるなら、私がお前と戦いたい理由が分かる筈だ!」

 

「知らねえよ。勝手な思い上がりも大概にしてほしいね。

それに、何が”私には分かる”だ。笑えねえジョークより最低だ。」

 

「なんだと!?」

 

「お前が戦いたいなんて理由なんざ、どんなモンであろうが所詮暴れたい口実に過ぎねえだろうが。

幾ら口で言ってもお前の今までの態度と行動、あとさっきから睨みつけてる目で丸分かりなんだよ。俺の目から見たらアンタ、ただのケモノ同然にしか見えないね。」

 

「ケモノだと…この私がケモノだとぉ!?」

 

次の瞬間、悠に向かって真っすぐ向かって行く百代。

百代の怒りに触れたのか百代の頭の中には最早悠を倒す事しか考えておらず、このまま突っ込めば傍に居るラ・フォリアにまで巻き込んでしまう等一切頭には言ってなかった。

 

そんな百代を前に悠は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドバァァァアンッッッ!

 

「ンブゥッ!?」

 

気が付いたら百代は顔に強烈な痛みを感じた後、頭を掴まれ砂浜に思い切り顔を打ち付けられ頭を抑え込まれていた。

 

誰がとは言わない。あのままでは避けようと受け止めようとも傍に立っているラ・フォリアに何らかの巻き添えを喰らわせてしまうと感じた悠は、あえて前に出たのだ。

そのまま百代の頭を掴み下に思い切り顔面を打ち付ける。アスファルトじゃないにしても、日差しで熱せられた砂浜に顔を叩き付けられたら流石の百代もこれには痛いと感じるモノが有った。

 

「ぐっ!ぐぅぅぅッ!!!」

 

「ホレ見ろ。この有り様がケモノ同然と言わせてるんだよ。何でもかんでも力を振りまわすのに頼って、口じゃ何も言い返せない。

こんなケモノ相手に俺に何の得が有る?」

 

「んぐゥゥゥゥッ!!!」

 

頭を掴まれてる腕を振り払おうにも、うつ伏せで倒され此方の抵抗に対しビクともしない。ファミリーの面々が驚愕の表情を浮かべるなか、悠は百代にギリギリ聞こえるくらいの声で語るのを止めなかった。

 

「いいかよく聞いとけよ。コッチにだって堪忍袋の緒ってモンがあるんだ。

お前が何時までもキャンキャン鬱陶しく吠え続けるなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二度とその口叩けなく為るまで…………潰ス。」

 

 

 

ゾクッ

 

 

「ッ!?」

 

低く、何の温かみも無い告げられた冷たい声は百代の抵抗を止め何とも言えない悪寒を走らせた。

暑さで出る汗でなく、体が目の前の存在から見下される視線に危険信号を発するように全身から嫌な汗が流れてる感覚を味わっている百代の頭を離した悠はラ・フォリアを連れて今度こそ店の前から出た。

 

悠が去っても砂浜に倒れる百代にフォミリーの面々が駆けつける。

 

「姐さん!」

 

「モモ先輩!」

 

各々が垂れてる百代に声を掛けていくが、当の百代の耳には何も入っておらずただ頭の中では先程感じた悪寒についての事しか頭に無かった。

 

(何だ今のは…。私が…恐れた?アイツに……ジジイでもここまでされなかった。それをアイツは簡単に……何なんだアイツ…何なんだアイツは!?)

 

百代が初めて感じた恐怖と言う感情に狼狽えているなか、燕はここから離れる悠達。ラ・フォリアの後姿を見て有る場面を思い出した。

 

(あの人…あの人も銀髪……昨日後ろに乗ってたのって、まさか…!?)

 

 

 

刻一刻と真相に近づきつつある鳥は、そこが怪物の巣だと知るのはまだ先であった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、桜井姉弟たちの方は…。

 

 

「人居ねえなぁ~。折角の海だってのに、水着の女の子全然居ねえ!」

 

「アンタねぇ。ナンパしに来たのか仕事しに来たのかはっきり区別付けなさいよ。」

 

「………両方って答えはダメ?」

 

悠達とは反対方向に進んでいる秋達は聞き込みをしようにも余りの人の少なさに情報収集は捗らなかった。秋の考えを聞いて呆れるハルナを前に秋の携帯から悠からのメールが届いた。

 

「あ、悠兄さんからだ……姉ちゃん。一度合流しようだって。何か分かったのかな?」

 

「多分そうでしょ。なら待ち合わせ場所に行きましょ。」

 

「オッケイ、んじゃ行こ・(ドンッ)・っと、すんません。」

 

「あぁいや、此方こそ…ってお前は…。」

 

「アナタ…。」

 

振り返り様にぶつかってしまった相手に秋は軽く謝り、ぶつかった相手も秋に謝るなかハルナの姿を見て男を見て同じくハルナも反応する。

ぶつかった相手は少しの間だが、共に行動していたキンジだったのだから。

 

「桜井じゃないか。お前が何でココに?」

 

「それは私にも言えるわよ。こっぴどく怒られて、暫く罰受けるって来たけどサボり?」

 

「違ぇよ。今日の分終わらせて来てるだけだって。そっちの男は…まさか、彼氏か?」

 

「違う違う。弟よ。まぁ似てないってよく言われるけど。」

 

「どうも!桜井 秋です!姉ちゃんがお世話になってるようで…。」

 

「なってないわよ。どちらかと言えば振り回されたってトコかしら。」

 

「そんなハッキリ言わなくても。と言うかそれは殆どアリアだっての…オレは遠山 キンジだ。よろしく。」

 

互いに自己紹介する秋達はその後、何故今噂が出ている海水浴場に居るのか話しだした。

 

「まぁ私達は只の海水浴よ、海水浴。でもこんな人が居ないなんて少し変だから、ちょっと調べてたのよ。」

 

「そうか。オレは何と言えばいいのか……ちょっと知り合いに付き合ってくれって言われたからここに居るってカンジかな?気分転換も兼ねて。」

 

「そう。ならもう行くわ。どうせ神崎さんも居るでしょうし、私達も連れと会うし。」

 

「そっか。じゃあオレはココで。」

 

そう言ってハルナ達とキンジは分かれた。キンジに悠達と会うと言わなかったのは、これから起こるであろう怪人騒動に巻き込まないのと下手に会って此方の支障が出ない為に早々に分かれたのだ。

 

そんなハルナの考えを知らずにキンジは分かれたハルナの連れについて考えてた。

 

(桜井の連れか…誰だろう?兵藤達は忙しいってこの間聞いたし、クラスの友達か?

…ま、そこまで俺が考える事は無いか。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合流した悠達は、得た情報からファントムの殲滅について作戦会議を行っていた。

 

「へぇ~。今度のファントムは海の中、って訳ね。どうりで水着の女の子が居ない訳だ!」

 

「アンタまだ言うんかい。」

 

「素直な方ですね。」

 

「…後半はともかく、敵が海の中と知れば正体も対策も直ぐ考えが付く。今から早速始めるぞ。おチビが来るまでに片しておきたい。」

 

「お、流石悠兄さん。もう作戦思いついたの?」

 

「あぁ。至って簡単だ。

お前が海に入ってファントムを人気のない場所へ運び出す。そして陸に上がらせ二人で叩く。それだけだ。」

 

「え?オレ?…悠兄さんは入らないの?海の中。」

 

「生憎俺の持ってるライダーには水中戦に向いたのは無い。

だからお前が行くんだ。」

 

「イヤイヤイヤ!だったらオレだって無いぜ!?水の中自由に行くなんて裏技!?」

 

「ドルフィンリングが在るだろ。空飛べるヤツが在るなら、海の中潜れるリングだって在るだろうに。」

 

「イヤそんな使い方したことねえよ!

と言うか無い言ってるけど考えれば出来るじゃん!ガイアメモリとかさ!

…あ!分かったぞ。悠兄さん、実は泳げないんだろ!?」

 

「ちょっと秋。幾らなんでも流石にそれは無いと思うわよ。ねぇ?」

 

「そうですねぇ。もしそうなら途轍も無いギャップ?ですかね。在ったら可愛い一面…?、悠?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………。」(プルプル)

 

「…えww…ちょっとwwwもしかしてwww…マジで?www」

 

「…えっと……灰原君?」

 

「悠…アナタもしかして本当に…。」

 

「……………泳げなくて……悪いか……。」

 

三人から目を逸らして弱々しく言う悠に何とも居た堪れない空気が流れだす。

 

が、そんな事露知らずに声を掛けるのが一人。

 

「ねぇ悠兄さん。水上運動会で何も知らされず競技に出たって言ってたけどwww。その時もし泳ぐヤツだったらどうしてたのさ?www」

 

(秋ゥ!?アンタ傷口に塩ってレベルじゃないわよそれ!今の灰原君見て何とも思わないの!?今までの仕返しのつもり!?)

 

「……それこそ、ガイアメモリで何とか誤魔化す、つもり、だったさ…。」

 

(いや律儀に答えなくていいわよ!すごく震えてるじゃない!声もいつもより弱々しいわよ!?)

 

「悠。…海岸じゃなくて、プールデートにします?それなら足が着きますし、私も少しなら泳ぎ教えられるので。」

 

(アンタもかい!?てかどんだけデートしたいのこの人!?)

 

「…………考えとく。」

 

(考えるの!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて。とにかく、作戦は今言ったので異論は、無いか?」

 

「あぁ。さっきキマイラに聞いたら出来なくないって。そのかわりそれ相応の対価要求されたけど。」

 

「…仕方ないか。後で用意するって伝えといて。」

 

「…ねぇ灰原君。…アナタ本当に大丈夫?もう少し休んでから…。」

 

「大丈夫だ。作戦通りなら俺は陸だ。……うん。大丈夫。俺は大丈夫だ…。」

 

(いや、私から見たら大丈夫に見えないけど…。)

 

色々あったが何とか持ち直した悠にハルナは心配して声を掛けるも、大丈夫の一点張りに逆に不安を感じてしまうハルナ。

まさか悠にこんな弱点が在ったとは。ハルナは悠の事を何でも出来る男だと思っていたが、この時ばかりは悠も出来る出来ないが在る人間なんだと再認識した。

 

そんなハルナの心配を余所に、秋は既にビーストドライバーを起動し変身する体勢に入っていた。

 

「変~身ッ!」

 

<< SET OPEN! >>

 

<< L・I・O・N LION! >>

 

「さてと…。」

 

ビーストへの変身が完了し、ビーストはリングホルダーから青の指輪を右手に嵌めベルトサイドスロットへ嵌めこんだ。

 

<< DOLPHIN GO! >>

 

<< Do-Do-Do-DOLPHIN! >>

 

魔方陣がビーストの右腕を通過すると青いマントのドルフィンマントが付き、準備体操をしてるビーストに悠が再度声を掛ける。

 

「いいか。陸に上げるポイントはさっき言った所だ。間違えるなよ。」

 

「オーケイオーケイ。コッチは任せて気長に待っててよ。海でも眺めてさ。」

 

そう言ってビーストは海に飛び込んでいきファントムの捜索に向かった。

悠も指定したポイントへ向かう為に移動しようとしたが、万が一を考えての安全策をハルナに渡そうと考えた。

 

「桜井。コレを…。」

 

「え?……何このカード?」

 

悠が渡したのはエビルダイバーの契約カード。悠が海面を見れば、ミラーワールド越しから此方を見ているエビルダイバーが見える。

 

「俺が飼ってる中で一番温厚なヤツだ。カードを手放さなきゃ、ソイツが守ってくれる。」

 

「…うん。ありがとう。…何か、ちょっと…。」

 

「何だ?…」

 

「…ううん。何でも無い。ホラ、さっさと行って。ラ・フォリアさんは私に任せておいて。」

 

「…頼んだ。」

 

そう言って悠は今度こそ移動を開始した。

ハルナは渡されたカードを強く握りしめながら、さっき言えなかった無力感に心が満たされる感じで嫌な気分になった。チームを作ろうと提案した自分が二人に任せっきりな立場に居る自分に対し、気付けば自称気味に笑っていたのだ。

怪人相手に自分は何も出来ない。ならば二人のサポートに専念しようと決意したのに、今のハルナにはその決意が揺らぎ始めていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………。」

 

そして、そんなハルナ達を影からずっと見ていた謎の人物は、ハルナ達を余所に何処かへ移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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