その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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対面

 

 

「じゃ、これ任せた。」

 

「分かったわ……もう一度聞くけど、私のやる事本当にこれだけで良いの?」

 

「あぁ。余り大きく動いてポカやらかすよりいいからね。」

 

リジュベロイミュードの騒動から一日経過した午前。

灰原家のリビングにて朝早く来たハルナは、悠から手渡された手紙を手にある事を任されようとしていた。

 

「そ。まぁこれならこれで楽だから私としては助かるけど…。

…それと話は変わるけど、秋の奴アナタと一緒に暮らしてて迷惑かけてない?姉としてはやっぱり不安と言うか心配と言うか…。」

 

「ぶっちゃけ言わせてもらうと、アイツが来てからウチの食費が右肩上がりでエンゲル係数上昇中だよ。」

 

「…ごめんなさい。ウチの弟が…。」

 

「……まぁでも、そこまで大した迷惑は掛かってねえよ。今だって鍛錬している真っ最中だし、前に比べたらずっとマシだ。」

 

「………プッ。」

 

「何だよ…。」

 

「いいえ、秋から聞いた通りツンデレなんだなぁって…。

あと、なんか私よりも本当の兄弟に見えちゃって少し嫉妬してる。」

 

「…秋にとっての家族はお前だけだろ。アイツの戦いはお前の為でもあるんだからな。」

 

「…そう。」

 

悠に言われて少し儚げに笑うハルナの心情をあえて悠は読み取ろうとしなかった。その微笑みだけでどれだけ弟の事を思いやってるのかが分かったからだ。

 

「…ま!なにわともあれこの戦いが終われば静かに暮らせるさ。その為にも…。」

 

「まずはこの手紙、でしょ?そうと決まればこれさっさと届けに行くわね。」

 

切り替え速くいつもの調子に戻ったハルナは家を出て手紙を届けに行った。

 

残された悠はこの後用事があるためにコーヒーを飲みきってから彼自身も出て行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所代わりオカルト研究会部室では先程手紙を受け渡されたハルナ、顧問のアザゼル、リアス、一誠、祐斗、子猫、キンジがハルナが持って来た手紙の内容に騒然となった後中々言葉を発することが出来ずにいた。その内容とは

 

 

 

ー今夜0時、此方を正体を探っているオカルト研究会と武偵二人組との対談の場を設けるー

 

ーもし此方の招待に応じるならば三人を代表として以下の場所まで来られたりー

 

ー貴殿等の探し人、仮面ライダーよりー

 

 

 

 

「……なぁ皆コイツをどう思う?」

 

おもむろにアザゼルが周りの意見を窺おうと口を開く。アザゼルからしたら追いかけてる相手からコンタクトを取って来るなど微塵も予想していなかったので、まだ内心では整理がついてなかった。

 

「どう、と言われても…。」

 

「罠という考えも無くは無いですが…。」

 

「それよりもこの手紙本当に仮面ライダーが直接桜井に渡したのか?」

 

「何よ疑ってるの?」

 

それぞれが思いつく限りの意見を言うなか一誠が不意に放った言葉に全員の視線がハルナに向けられる。

 

「そんならもう一度聞くが、コイツを受け渡したのはリュウガで間違い無いんだな、桜井。」

 

「はい。ココに来る途中リュウガが私の前に出て、それでこれを投げ渡されて…。」

 

「またしても逃げられたって訳ね…。

にしてもどうして今頃になってこんなモノを…。」

 

「……状況が変わったから、とか?」

 

リアスの疑問に答える様にキンジが自分なりの見解を言う。

それに喰い付くかのように全員がその訳をとキンジに目で訴え、それに対してキンジはあくまで仮定と言う事を重視して答える。

 

「この間先生が言ってた仮面ライダー同士の対立で、リュウガ側が不利になったとか…。それで状況を変える為にオレ達に協力を申し込もうとか?」

 

(ほぼ当たってるわね。でも、後半は全くと言って良い程逆だけど…。)

 

「ふぅむ。……有り得なくは無いな。」

 

アザゼルやその他のメンバーがキンジの意見に納得しているなかハルナは一人今回の対談についての本当の理由を聞かされてる為キンジの意見に一人内心で採点していた。

 

「…ま、それはともかくだ。オレはこの話に乗ろうと考えてる。オレはまだこの目で仮面ライダーを見てねえし、何より今回のコレで知りたい事が分かる唯一のチャンスだ。仮面ライダーと言う存在を知りチャンスがな。」

 

「…そうね。此処まで来て何の手掛かりも無い私達にとって是非も無いわね。」

 

「部長がそう言うならオレも賛成っす!」

 

「…私も。」

 

「でもこれには代表三人って書いてますよ?一体誰が行くんです?」

 

「そうだなぁ。オレはオカ研の顧問として行くのなら多分問題無いとして、残りは一応部長であるリアスと……遠山、頼めるか?」

 

「え!?」

 

祐斗の疑問に答える様にアザゼルが指名されたキンジは自分が呼ばれる訳が無いと思ってたのかアザゼルの言葉に大いに驚く。

キンジが何故自分なのかをアザゼルに聞く前にハルナが口を開く。

 

「先生、どうして遠山を?」

 

「理由としちゃあこの手紙に書かれてる武偵二人組ってのはコイツ等の事だ。態々名指しで来たって事は恐らく武偵のコイツ等にも話す事があるとオレは踏んでいる。」

 

「そうか、向こうはオレ達が組んでいる事を知っているから…。」

 

「それと言っちゃあなんだが、神崎よりもお前の方が今回の一件に向いてると思ってな。アイツはかなりの激情家みたいなもんだし、仮にも対談の場で銃を抜かれて機嫌損ねたら敵と見なされちまうからな。まぁ昨日のアレで当の本人は塞ぎ込んでいるからお前しかいないと言うのもあるが…。」

 

この場にアリアが居ない事を簡潔に説明すると、昨日のハルナと同様にリジュベロイミュードの能力によって子供の姿に変えられてしまい、そしてハルナと同じように元に戻った瞬間来ていた子供用の服が破けてしまい生まれたての姿を曝してしまったのである。

そのアリアの姿を見てキンジはヒステリアモードに切り替わって銃を乱射しようとしてたアリアを上手く落ち着かせたのだが、当の本人はキンジ以外の男子に見られたのもあってか部屋に籠ってしまい此処に居ない朱乃とアーシアが様子を見に行っているくらいの心境らしい。

 

「意外だったわよねぇ。気の強い子だと思ってたけど、やっぱり女の子だったわけね。」

 

「ですよねぇ。おっぱいは下手すりゃ子猫ちゃん以上に無かったっすけどね…ぶふぉ!?」

 

「一誠先輩。余計な一言です。」

 

「まぁとにかく、もしお前が望むのなら外してもいい。こればっかりはお前の意見無視して押し通すもんじゃ無いからな。」

 

「……行きますよ、オレ。仮面ライダーについて知りたい事が色々在りますんで。」

 

「…よし、決まりだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おチビ先生が?」

 

「はい。お兄さんの事について聞かれましたでした。」

 

廃教会の中で、悠は猫の毛並みを整えてる最中夏音から聞かされた内容について耳を傾けていた。

いわく、夏音の前に那月が現れ悠について聞き出していたと言う事について悠は動かしていた手を止めた。

 

「どんな事聞かれたのさ?」

 

「えっと…お兄さんと知り合った時とか、どういった人とかでした。」

 

「そう…。(完璧にクロと思っての聞き込みか、急いだ方がいいな…。)」

 

「お兄さん?」

 

那月が確実に疑ってる事について考えてる姿が気になったのか夏音が心配そうに声を掛ける。そんな夏音に悠は何とも内容に答える。

 

「ん?…あぁいやねぇ、一学期サボり気味だからトサカに来たのかねえ?俺の恥ずかしい過去を使って揺さぶろうと考えてんのか…言ってないよね?」

 

「え?…えーと………。」

 

「……言っちゃったの?」

 

「…はい。凪沙ちゃんの事とか、結構…。」

 

嘘を着けない性分なのか那月の質問に全て答えてしまったらしい。恐らく凪沙に頭が上がらない事も、初めてファントムと遭遇した時の事まで全部。

 

「あの…その…。」

 

「あー、叶瀬?別に怒っては無いよ。ただサボり過ぎたバチが当たったかって反省してただけだから…。

それ以外に何か言われたか?」

 

「…はい。この教会でこれだけの猫を育てるのはいずれ限界が来るから、速い内に飼い主を探しとけ、って言われちゃいました。」

 

「…あらら、教師らしい台詞。

確かに何時までも二人でこいつ等世話すんのは限界があるよな…。」

 

「…はい。」

 

「…やっぱ居なくなると思うと、寂しいか?」

 

「はい…私にとってこの子達は宝物と言ってもいい位ですから。」

 

猫達を見ながら夏音は少し寂しそうに返事する。

ここまで自分が拾ってきた猫達を世話していたが、いずれこうなる事は夏音自身分かっていた。それでもいざこうして猫達と別れる事を考えると、名残惜しいのだろう。

 

そんな夏音の心情を感じてか、悠は夏音に対し

 

「…まぁ別に期限は設けられてないし、こいつ等を可愛がってくれる飼い主が出来るまでゆっくりやればいいさ。

俺も出来る限りは手を貸すし。」

 

「…はい。」

 

こう言った風の言葉でしか掛けられなかった悠だが、悠なりに励ましてくれたのが夏音にとっては嬉しかったようで先程とは違って控えめだが明るい返事が返って来た。

 

そんな二人の間に入る様に一匹の黒猫が悠の足元に頭を擦りつけて来る。

 

「ん~?あぁお前か。まーたメシ食いに来たってか?」

 

「にゃ~。」

 

しゃがみ込んで猫を抱える悠の言葉に答える様に鳴く黒猫。

 

「…そーいやお前、結局野良か飼い猫か分かんなかったよなぁ…。」

 

「にゃ~。」

 

「……気の所為か、なんかこいつ……。」

 

「お兄さん?…。」

 

「……いや何でもね。そろそろ飯食わせてやっか。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜23:56分、廃工場内。

 

 

「…あと四分…か…。」

 

廃工場内では手紙に書かれた待ち合わせ場所にアザゼル、リアス、キンジが時間が来るまで待っていた。

 

「さーて、こんな人の気も待ち伏せも無さそうな場所で誰が来るか、ちと楽しみになって来たな。」

 

「アザゼル…。」

 

「オイオイ、そう睨むなって。お前こそそう緊張していても意味ねえだろうが。」

 

「それはそうだけど…。」

 

「あと二分半…。もうすぐ時間なのに誰も来る気配が無い…。」

 

キンジが腕時計を見てもうすぐ指定の時間が来るというのに何の動きが無い事に違和感を感じ始めていた。もしかしたら仮面ライダーを名乗る者の罠かと頭の片隅で思う程に。

 

そんな事を考えてたら時刻は0時になる。

時間になったと言うのに誰も来ない廃工場はより一層静かに感じられた。

 

「もう0時よね?もしかして私達、騙されたのかしら?」

 

「噂の仮面ライダーがこんな悪戯をか?………ん?」

 

アザゼルが何か気付いた様子にリアスとキンジはアザゼルの目が向けられている所へ視線をやると、そこには足元に此方に向かって来る三台の銀色のミニカー。バイラルコアのスパイダー、バット、コブラであった。

 

「なにかしらアレ?ミニカーにしか見えないけど…。」

 

「コレってあの時のミニカー…!。まさか、こいつ等が?」

 

「…いや待て、何か伝えようとしてるぞ。」

 

バイラルコア達が鳴き声を上げているのをジッと見ている内に、三台は方向転換をして緩いスピードで走って行く。まるで先導するように。

 

「…行くぞ。」

 

アザゼル達がバイラルコアを追い掛ける。やがて廃工場の奥隅にまでついて来たアザゼル達の目に異様な光景が目に入る。

 

「何だ、こりゃあよぉ…?」

 

「アレって……森?」

 

奥隅の壁に巨大なファスナーを開けたように広がる森林の光景。この異常な光景に固まっていたが、ファスナーを潜って行くバイラルコア達を見て、どうやらこれから会う人物はこの森の中に居るのだと確信した三人は意を決して森の中へ入って行く。

 

森の中に入った三人がまず初めに感じたのは、静寂。

森の中に居ると言うのに生命と言う存在が感じられない静寂で不気味な森。辺りを見渡しても霧が全体を霞ませ、植物は冥界でも見られない植物や至る所に果実がなっている。

 

「なんだこの森は?…一体何がどうなってやがる。」

 

「何と言うか…不気味ね。まだ鳥肌が立っているわ。」

 

「…この果実。」

 

キンジが目に付けた木に生っている果実。最初は見た事も無い果実を興味本位で見ていたが、見ていく内に果実に対しての欲求が湧き上がってくる。

 

(なんだろう、コレを見てると、凄く美味そうに…。)

 

不意に手が果実へ触れようと伸ばした時にキンジの手に当たって行くバットバイラルコアによって無意識に果実へ手にしようとした事にキンジは警戒心を露わにする。

 

「二人とも!この果実なんかヤバい感じがする。だからあまり見ない方がいいかもしれない!」

 

「何だって?…ッ!

…確かに、見てっとなんか不思議と喰いたいって思うなこりゃ…。」

 

「そうみたいね。これにはなるべく手を出さない様にしましょう。ただでさえこの森がなんだか分からないのだから。」

 

三人が果実に対して警戒してるなかバイラルコアは三人を案内するように鳴きながら森の中を進んで行く。

 

三人は取りあえず黙って付いて行くことにし、森の中を進んで行く。黙ってバイラルコアの後を付いて行き見渡す光景が木一面とびっしり生っている果実の中を突き進んでいく事五分ぐらいだろうか。やがて広場の様に空けた場所に辿り着く。

その場に着いた途端バイラルコア達は飛ぶように走って行き、空けた場に不自然と置いてあるテーブルと椅子に座ってる一人の男の元へ向かって行く。

 

男は此方に背を向けながら座って何か本を読んでいるようであり、テーブルに上ったバイラルコアと近ずいて来てる三人の気配に気付いき本を閉じて椅子から立ち上がる。

 

「あー、やっと来たようだねぇ。」

 

立ち上がった男は振り返ってその姿をアザゼル達に見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白衣のようなジャケットを羽織り、頭髪はメッシュを入れた短いポニーテール。

 

顔立ちが整ったその男は此方を見ているアザゼル達に対しうっすらとした笑顔で名乗り上げる。

 

「初めましてお三方。今回キミ達の対談を任される事になった戦極凌馬だ。

周りからはプロフェッサーとも呼ばれてるから、そちらで呼んでくれても構わないよ?」






今回は久しぶりに短く書いた。

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