その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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今回はある原作キャラが今回の話に深く関わります。
もし不快に思ってしまう人が居たら、お詫び申し上げます。


欲望

 

 

 

 

 

悠の犯した失態と秋の心境の一辺から翌日。

 

 

この日も朝早く秋が悠よりも早く起床する。

洗顔して歯を磨き、台所で次々と食パンをトースターで焼き、後から来るであろう悠の為に予めインスタントのコーヒーとお湯を用意してあげる。

暫くしてリビングで朝食を取ってた所に遅れて悠が姿を現わす。昨日の事もあってか何時にも増して寝起きの気分が良くなさそうだ。

 

「おっはよう!随分寝起きが良くないみたいだね。」

 

「どっかの誰かさんがバカ食いした所為でも在るが…少し、いや、かなり面倒臭い事になってなぁ…。」

 

「面倒臭いって…もしかして、昨日のメイドちゃん?」

 

「早霜から聞いたんだが、昨日ガレージに入ろうとしていたらしい。多分あのおチビに言われて調べようとしてたんだろう、これで悩みの種がまた一つ増えたってこった。」

 

「オカ研に次いで悠兄さんの担任功魔師、か。

…ねぇ真面目な話どうするの?敵って訳じゃ無いけど、この勢いでオレ達を目の仇にするの増えたら落ち着いて戦えないよ?」

 

「あぁ俺も昨日同じこと考えてた。いい加減こっちの面倒事に向き合わなきゃいけないなって…。

それで決めたんだよ。先にこっちを片付けようって。」

 

「片付けるって、もしかして…。」

 

「お前の考えてるような荒事じゃないよ。あくまで穏便に行くつもりだ。この件は桜井も含めておちおち話していくつもり。」

 

「…そう。ならいいけどさ…。」

 

一先ずこの先のやるべき事について軽く話し合った後、秋は山盛りに積まれたトーストを食べ始める。悠もコーヒーを飲もうと台所に向かおうとすると点けていたテレビから臨時のニュースが入ったようで慌ただしい所が見られた。

 

『たった今臨時ニュースが入りました。

今朝方〇△町の市街地にて、幼い子供が多数道端で彷徨っていると警察への通報があり。確認に言った所、サイズの合っていないスーツや作業着を纏った子供達が多数見受けられ、警察は身元を確認した所、身に纏っていた服や所持してる所持品の持ち主と同名の名前であり、警察は子供達を保護し、身元確認を急がせている模様です。』

 

『尚、子供達が名乗った服や所持品の持ち主の人物につきましては行方が掴めておらず、保護された子供達は皆年相応の精神状態であることが医師の診断で確認出来ました。

これを知ったメディアはネット上等で、大人が若返って子供になった。という噂が流れているようですが…。』

 

多数の子供が道端でサイズの合っていない服を纏い、尚且つ名前は持ち主と同じ名前。果ては大人が若返ったとのワードはこの二人を動かすのに十分な材料だった。

 

「「……。」」

 

二人は無言で頷き合って一目散にラボへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<これが警察のデータベースをハッキングして得た情報だ。>

 

ラボではクリムの調べた情報が二つのスクリーン映像となって写しだされ、赤い点が載った街の地図と行方不明となった子供達と同名の者達のリストが出されていた。

 

<赤い点が入ってる地図の方は警察が発見した子供達の発見現場。リストの方は服や所持品の持ち主を纏めたリストだ。

調べて分かった事だが、リストに載っている人物たちの通勤ルートや仕事場などがそれぞれ地図に点されている場所と一致したと言う事が分かった。>

 

「てことは、このリストに載ってる大人達が本当に子供になったって事?」

 

<現実から見て有り得ない話だが、保護した子供を行方不明者の親族が見た所、子供の頃の姿と全く同じだとの証言がデータベースに記録されているらしい。>

 

「大人を子供に若返らす。…こんな事出来るファントムは居なかった筈だよなぁ…。」

 

「なら残る可能性は…。」

 

「…融合進化態のロイミュード、か…。」

 

二人が同時に行き着いた一つの答え。それは融合進化態によって新たな能力を得たロイミュードの仕業だと考えるが、ここで秋が有る疑問に気づく。

 

「…ちょっと待ってよ。これがロイミュードの起こしたヤツならさ、事件が起こる前にオレ達が気付いてる筈じゃね?」

 

「今までのロイミュードは重加速を探知してか、シフトカーの報告によって場所を把握してただけだ。

多分今回見つかんなかったのは重加速を出していなかったからだと思う。」

 

「成程…でもなんでロイミュードは大人を若返らせたんだろ?リスト見た限りじゃ、サラリーマン、OL、ゴミ清掃員、…皆バラバラで共通点も何も無いみたいだし…。」

 

<フム、自分の能力が何処まで通じるかの実験、という線も有り得なくないな。

狙いは何であれ何かを企んでいる事には違いないだろうね。>

 

「まぁなにわともあれ、相手は融合進化態だ。さっさと探して無力化するぞ。

皆聞いたな!ロイミュードを探しに行ってくれ!」

 

悠の号令にラボに居たシフトカー達が一斉に動き出しロイミュードの捜索に出た。

 

「クリムは此処に居て事件の情報をもう少し集めてくれ、何か手がかりが在るかも。」

 

<OK。キミ達はどうする気かね?>

 

「ジッとするのもアレだからな。秋、行くぞ。」

 

「ラジャー!」

 

悠達も行動を開始すべくロイミュードの捜索に外へと出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商店街にて…。

 

 

 

「……やっぱそう簡単に見つかんねえよなぁ。」

 

そうして街に出向き今回の騒動を引き起こしたロイミュードの捜索に入るがただ時間だけが過ぎていき、時刻は昼を越した時間帯。夏の強い日差しも有って額から汗がしたり落ちるなか秋が余りの収穫の無さにボソッと呟く。

 

「探し物見つけるなんざそんなもんだろ。こう言うのは地道に探してやっと見つかるモンなんだよ。」

 

「そりゃそうだけど…取りあえず飯食いに行かねえ?朝中途半端に喰ったまんまだったし。」

 

「…別に良いけど、自分の分はちゃんと払えよ。」

 

「え~!いいじゃん昼飯ぐらい奢ってくれたって、こういうのは年長者が出してくれるんじゃないの?」

 

「昨日百皿以上の回転寿し食ったってのにまだそんな口叩く気かテメエは?」

 

余談だが昨日の外食で一番多く食べた順は、秋、アスタルテ、早霜のスリートップである。

 

「まぁまぁ、細かい事は気にしない気にしない。そんな事ばっか気にしてたら、いずれハゲちゃうよ?」

 

「お前の所為でな!…もう飯はその辺のコンビニで適当に買って食いながら探すぞ。」

 

「う~ん。昨日は魚だったから肉が良かったんだけど…。」

 

「いい加減にしねえとブッ飛ばすぞテメエ。」

 

ドスを利かせた声で睨む悠に流石にふざけ過ぎたかと黙り込む秋を放っておいて歩き始めた悠。

 

秋もその後を付いて行く形で歩み始めたが、突如女性の悲鳴らしき叫び声が街中に響き渡る。

 

耳にした悠達は動きを止めた。

 

「…昼飯はまだ先だな。」

 

「言われずとも分かってますよ!」

 

真っ先に悲鳴が聞こえた方角へ駆け走る悠達。

街中を掛ける二人は声のした方へほぼ勘で向かって行くが、また新たに聞こえた男性の悲鳴のお蔭でここからそう遠くないことが分かった為に迷う事無く大体の目的地へと目星が着いた。

 

「っ。…こいつは…。」

 

「何なの、コレ?」

 

曲がり角を曲がった二人の目に入ったのは、至る所に居る年端もいかない子供がブカブカのシャツ一枚や果ては全裸などの格好の姿多数見受けられ此処一辺に目に入りあたかも片っ端から目に入る大人を子供に変えたと言う事を物語っていた。

 

異様な光景に思考が一瞬止まりかけた二人だが、足元に来た10歳より下の少年が不思議そうに見ていたのを秋が目線を合わせて話し掛ける。

 

「ね、ねぇ、キミ。此処で一体何があったか分かる?」

 

「えー?んーとねー……わかんない!」

 

「…本当に中身まで若返ったってのか…。」

 

答える子供の様子から見て、どう見ても年相応の反応と喋り方からとても演技では無いと見受けられる。

重要な事が聞けないと分かった秋は質問を変える。

 

「んじゃあさ、何か変わったモノとか見なかった?例えば、変な人とか。」

 

「へんなひと?う~ん……あ!まっしろおばけ!」

 

「「真っ白お化け?」」

 

「うん!ほらあそこ。」

 

少年が指差した雑居ビルの屋上にはうっすらとだが確かに全身が白く、天井で何かをしている様に見られる。

 

「アレっぽいな。」

 

「だね、行こう!…っと、ありがとね!」

 

教えてくれた少年に礼を言って雑居ビルの中に入っていく二人。

屋上に通じる階段を駆けて上りながら秋は口を開く。

 

「そういえばさ!融合進化態から切り離すのベルトさん居なきゃダメじゃね!?

その辺どうすんのさ!?」

 

「言ってなかったか!?この前お前のベルト整備した時に分離プログラム入れといたって!」

 

「マジ!?今聞いたんだけど!?」

 

「俺はちゃんと言ったぞ!お前が適当に聞き流してただけだろ!」

 

こんな時にでも何時もの調子で会話する二人。

やがて屋上へ通じる扉に着き勢いよく開けると、そこに居たのは確かにロイミュードらしき機械の異形だったが一回り変わった姿をしていた。

 

全身が白い人型。一言で言えば一昔前の宇宙人の様なシルエットと、白いロングコートの様な上着を羽織り肩には神父が見に着けるような長いスカーフ巻かずに肩にかけてるだけの姿。この間のキメラロイミュードと比べると至ってシンプル、いや、実態の掴めないような姿のロイミュードだった。

 

そして白のロイミュードは扉の開く音に気付き、後ろを振り返って悠達の存在に気付く。

 

【な、何だお前等は!?此処一帯に霧状の水を撒いた筈なのに、何で子供に成って無いんだ!?】

 

「水?」

 

「…成程。その水とやらで若返らせてるって訳か。ご親切に教えてくれてどうも。」

 

【くっ!…だ、だが!例えオレの能力が分かったとしてもお前等なんぞにどうにか出来る訳じゃ無い!

悪いが、お引き取り願おうか!】

 

「やれるもんならご自由に。…行くぞ。」

 

「オッケイ!」

 

自身の能力を失態とは言え見破られた事に動揺してた融合進化態のロイミュードだったが、相手が普通の何の武器も持っていない二人の人間である事と自身の力を見比べればどうって事無いと思い、戦闘態勢に入る。

 

だがそんなロイミュードの考えとは裏腹に悠はサイガドライバーを、秋はマッハドライバーを装着する姿を見て、ロイミュードは”へ?”と間抜けな声を出してしまう。

 

<< Standing By >>

 

<< Signal Bike Rider! >>

 

「Let‘s!…。」

 

「「変身!」」

 

<< Complete >>

 

<< MACH! >>

 

青と白の光が二人を包み込みロイミュードはその光の眩しさに思わず目を瞑ってしまう。

光が止んで目を開けた其処には先程までの二人の姿は無く、代わりに全身装甲に包んだサイガ、マッハの二人の白い戦士が並び立つ姿に先程までとの態度は一変した。

 

【ま、まさか…お前等が、お前達が仮面ライダー!?】

 

「その通ーり!

追跡!撲滅!いずれもマッハーッ!仮面ライダーッ!マッハ~!

…ほら、悠兄さんも何か決め台詞的な!」

 

「ねぇよ。それよりもさっさと無力化さして、切り離すぞ。」

 

【ま、まさか、こんなにも早く仮面ライダーと出くわすなんて……いや、だからなんだ!こんな所でみすみす諦めるオレじゃねぇぇぇッ!!!】

 

サイガ、マッハの二人に弱気になっていたロイミュードだが、途中から臆する事無く向かって行く。

 

【ダァラッ!】

 

「フンッ!」

 

「デァッ!」

 

迫るロイミュードに二人は構え、ロイミュードが殴りかかった所をサイガは前に出て受け止め動きを止める。

動きが止まったロイミュードにマッハが攻めに行くが、ロイミュードはサイガの掴みを解きすぐ離れて回避。

追撃にマッハが攻めて行くも、拳はガードされ蹴りも下がる事で躱される事で大したダメージになっていない。

回し蹴りを下がって回避した所をサイガが殴りに行って右のジャブがボディに入るが、引く前に腕を掴まれロイミュードの前蹴りが入り、少し下がるサイガに続いてマッハが跳びかかりに行くが、これを躱しマッハに攻撃を仕掛けるロイミュード。

繰り出す拳や蹴りは一撃一撃が素人が繰り出すモノでは無く磨きがかかった技であり。ガードして受けてたマッハだが技のキレに次第にガードが崩れていき、遂にロイミュードの拳が胸部に入る。

 

「ガハッ!」

 

【ハハッ、どうした!?そんなもんか仮面ライダーって言うのは!?って、おあぁぁぁぁッッッ!?!?!?】

 

下がってしまうマッハにサイガが遠距離から背中のフライングアタッカーをライフルモードにしてロイミュードに発砲。

だがロイミュードは慌てながらも素早いバックステップで躱されてしまい、サイガは銃口を構えたままマッハの元に近寄る。

 

「アイツ…変なカッコしてる割に強い!」

 

【誰が変なカッコだ!幾らお前らがカッコいいからって、人の姿を悪く言うのはいけないんだぞ!】

 

「人じゃなくてロイミュードだろ…。

戦法変えるぞ。遠距離から攻めて行く。」

 

「了解!」

 

<< Signal Bike! >>

<< シグナルコウカーン!マガール!>>

 

<< シューター! >>

 

シグナルマッハからシグナルマガールへと変えたマッハはゼンリンシューターを構え光弾を放つ。

いきなり出した銃と思われる武器にロイミュードは身構えたが、放たれた光弾は全くの見当違いの所に撃ち出されるのを見て、呆気に捕らわれる。

 

【オイオイ何処撃ってんだよ。射撃下手クソにも程が有るだろ…。】

 

「フッフ~ン。それはどうかな?」

 

<< マガール! >>

 

ロイミュードの言葉に余裕を含めた返答しながら上部スイッチを押した直後、放った光弾は急カーブを描くように曲がった後完璧に警戒を解いていたロイミュードへと直撃した。

 

【のわぁッ!?…ビ、ビームが曲がった!?そんなのアリかよ!?】

 

「アリだよ!」

 

<< マガール!マガール!マガール! >>

 

驚くロイミュードを余所にマッハは続けて三発ほど撃ち込んでいき、回避しようにも曲がる弾道の光弾はロイミュードの予測想像を超え成す術無く被弾する。

 

【ぶへぁッ!!、この…曲がるビームなんて卑怯だぞ!只でさえ二対一で掛かって来てるクセに……っておい、もう一人は何処行った?】

 

「此処だよ!」

 

【な!?う、上ぇ!?】

 

何時の間にか姿が見えないサイガを探してたロイミュードは声のする方へ目をやると、上空で銃口を構えながら飛んでいるサイガに目を見開く。

 

「奢りだ貰っとけ。」

 

【アギャバババババッッッ!?!?!?】

 

上空からフライングアタッカーの光弾を容赦なく浴びせていくサイガ。

腕を構えてガードするロイミュードだが、上から雨の様に降ってくるフォトンブラッドの光弾に耐える事が出来ず喰らってしまい。サイガが攻撃を止めた頃にはロイミュードは力尽きたように前倒れに倒れていった。

 

マッハの隣に降下したサイガは今が好機だと見てマッハに指示を出す。

 

「今なら切り離せる。秋!」

 

「オッケイ!ロイミュードの方は任せたよ。」

 

「誰にモノ言って・「いたぁーーーッッッ!!!」・…オイオイオイ。」

 

突如後ろから聞こえた聞き覚えのある声に二人は嫌な予感を感じながら振り向くと、屋上の入り口から此方に銃口を構えてるアリアが睨みを利かせながら立っており。後から遅れてキンジと前の二人に気付かれない様に後ろから此方に向けて申し訳ないと言った視線を向けるハルナの三人が乱入してきた。

 

「見つけたわよ仮面ライダー!今日こそお縄を頂戴するわ!」

 

「…ねぇ、ゆ…サイガ。もしかしてだけどアンタ疫病神でも憑りつかれてんじゃないの?」

 

「…今度お祓いでもしてもらうかなぁ…。」

 

「ちょっと聞いてんの!?」

 

「…アリア下手に突っ掛かるな…お前それで何度失敗したと思ってるんだよ…。」

 

「神崎さん。私も遠山に賛成。アナタ少し感情を抑えた方が良いと思うわ。」

 

「な…ッ!……う、うるさいうるさいうるさぁーい!!!

とにかくアタシはアタシのやり方でアイツ等を捕まえてやるだけよ!」

 

キンジとハルナに欠点とも言える部分を指摘され激情するアリア。

そんな光景を冷めた目で見てるサイガとマッハの後ろで倒れていたロイミュードはこの光景を目に好機と捕える。

 

【今だ!隙有りィィィッ!】

 

「っ!アブね!」

 

「うおわッ!?」

 

突如両手の平から出した水は水鉄砲の様に二人目掛けて放たれたがいち早く気付いたサイガがマッハを押し倒してこれを避ける。

だが放たれた水は当の二人を頭上を追い越してしまった所為で…。

 

「きゃッ!…んもう、何よコレ!びしょ濡れじゃないの!」

 

「うわッ!…ッ!?な、何コレ!?体が、縮んで…ッ!」

 

サイガ達が避けた水を代わりに浴びてしまったアリアとハルナの体は風船の空気を抜くように段々と縮んでいき、それに伴い声も次第に高く纏っている服も下半部はズリ落ちてギリギリ上の制服を被っていると言う格好になってしまい、二人はものの一分とも掛からぬうちに五才程度の子供の姿になってしまった。

 

「ア…アリア?桜井も…。」

 

水から運良く逃れたキンジが恐る恐る声を掛けてみる。

するとキンジに気付いたアリアがジッとキンジを見つめだし。

 

「う……ふぇぇぇぇぇええぇぇぇえんッッッ!!!」

 

「えぇッ!?ちょ、オイ!」

 

「ママァァァッ!ドコぉぉぉぉッ!?!?!?」

 

容姿だけでなく中身まで退化してる為か突如鳴き出したアリアにキンジは困惑する。

そんなアリア達を同じく子供にされたハルナは、服が脱げないように気を付けて落ちているアリアと自分を素早く懐に仕舞ってロイミュードを睨み付ける。

 

「こら、ロイミュード!あんた私達を子供にして、何企んでんのよ!」

 

「桜井!?お前は大丈夫なのか!?」

 

「えぇ。何でか知らないけど神崎さんみたいに中身まで子供になってないみたい。」

 

泣いてるアリアをあやしながらハルナはロイミュードへ問い詰める。

一瞬蚊帳の外にされがちなサイガ達もハルナ達をロイミュードから庇うように相対し、ロイミュードの目的を聞き出そうとする。

 

「俺も是非とも聞きたいねぇ。こんな大騒ぎになるまでやらかしたんだ。何と無くやったとか、言わねえよな?」

 

【……あぁいいぜ。そこまで言うんなら聞かせてやろうじゃねえか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

只純粋に子供が好きだからだ!!!】

 

 

「「「「……は?」」」」

 

ロイミュードの放った言葉はその場に居た者全員を固まらすのに十分な威力だった。

 

【俺は子供が好きだ。純粋無垢で笑顔を振り撒き、外を駆け走るあの姿が好きだ。

だが最近は外で元気よく遊ぶ子供の姿が見えなくなって俺は嘆いた。進み行く少子化問題に俺はどうする事も出来ない自分に憤慨した。

この夏休みも本来なら子供が元気よく遊ぶ姿を見れると思って楽しみにしていたが全然だ!外はこんなに晴れているのに元気よく遊ぶ子供の姿が全く見当たらない!】

 

「…そういえばここ暫く熱中症になりやすいって天気予報言ってたな。」

 

「そんなに暑かったら、そりゃ家の中で遊んでるね…。」

 

【そんな時だったよ。俺が絶望にも近い形で落ち込んでる時に金ピカの仮面ライダーがこう言ったんだ。

”その欲望を形にしないか”って。そして俺は手に入れたんだ!自分にとっての楽園を築き上げる為の力を!

もうここまでやっちまったからには後戻りは出来ねえ!俺はこの力で、子供達から思う存分、お兄ちゃんって呼ばれるんだぁぁぁぁ!!!】

 

ロイミュードが抱いてる計画を聞き終えたサイガ達はおろかキンジ達でさえ何も言えなかった。

子供になったアリアが顔をキョロキョロと周りの様子を窺うみたいに顔を忙しく動かしてるなか呆然としていたサイガが此処でようやく口を開く。

 

「……とにかくさぁ。こいつ、アレだな…。」

 

「うん…アレ、だね…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「コイツただのロリコンじゃねえか!!」」

 

「確かに…それだけの理由でここまでの騒ぎを…。」

 

「重度のヤツね。確実に。」

 

「?」

 

サイガとマッハが同時に放った言葉は外野の二人も同意せざる得なく、唯一キンジの後ろに居る子供のアリアは分かっておらず首をコテンと傾げる。

 

【別にお前等に分かってもらう必要は無い!革命家とは常に、革命を成し遂げるまで狂信者扱いだからな!】

 

「あっそ。なら尚更、革命家さんにはご退場願おうかね。」

 

「ちょっとアホらしいけど、見過ごす訳には行かないからね!」

 

ロイミュードにそれぞれ銃口を向けるサイガとマッハ。

二人掛かりで一人の相手に向かうと言うのは端から見れば決して良いモノとは言えないが、例え相手がどのような理由を持とうがロイミュードの力を使っている時点で躊躇いも迷う暇など必要無い。二人は一気にロイミュードの戦意を削って行くことにした。

 

そんな二人を前に後ずさって行くロイミュード。

先程の攻防で思い知らされたからか、今自分がこの二人から逃れる術が見当たらず詰みの状態。

 

二人が引き金を引こうとした時である。屋上一帯に謎の攻撃が襲い掛かり、小規模の爆発がサイガとマッハ、キンジ達に襲掛かる。

 

 

ロイミュードの危機を救う様に現れたのは三体の死神ロイミュード。

ロイミュードの前に庇うようにサイガ達に相対してから、三体は一斉にサイガとマッハに襲い掛かり場は一気に混戦となった。

 

【い、今の内に!…。】

 

「あ、待て!このッ、退けぇ!」

 

死神三体とサイガ達が戦っている今がチャンスとロイミュードは屋上から飛び降りてその場から逃げ去る。それをマッハが追いかけようにも死神に阻まれてしまい融合進化態ロイミュードを逃がしてしまった。

 

二人は死神から離れ、一度固まり背中合わせになる。

 

「クッソ!逃げられた!」

 

「あんなのでもみすみす倒される訳にはいかないってか?ホンット何考えてんだがあのベルト野郎…。

さっさと片付けるぞ!」

 

「…オーケイ。邪魔された恨み、倍返しにしてやりますか!」

 

サイガは背中のフライングアタッカーから操縦桿を外し、トンファーエッジを構えながら二体の死神に向かう。マッハもゼンリンシューターを手に再度死神へと肉薄して行った。

 

死神ロイミュードとの戦闘を行っている二人だが、そんな光景を子供となったアリアとハルナを両脇に抱えながらキンジはひたすら見ていた。

仮面ライダーの確保とかそういうのは頭に無く、ただ純粋に仮面ライダーと怪人との戦いを見ていたのだ。

 

彼らが何と戦い、何故戦うのか。

 

今キンジの頭の中にあるのはそれだけだった。

ミカの件に加え、キンジは仮面ライダーと言う存在を何よりも知りたかった。

 

あの時、ミカの前から去る時だ。

リュウガがキンジに言ったあの言葉がキンジの何かを刺激した。今まで敵を作るような言動をしていたリュウガがキンジに頼むように言ったあの声色に何処か違和感が有ると。

 

「!、遠山!前!」

 

「キャアァァッ!!!」

 

「ッ!?マズイ!」

 

ハルナに言われてハッと現実に戻るキンジの目の前には死神が此方に向かって跳びかかっていた。恐らくサイガが相手してた二体の内一体がキンジ達に気付いて向かって来たのだろう。

思考に耽ってた所為で気付くのが遅かったキンジは咄嗟に両脇に抱えてたアリア達を抱き抱え死神に背を向ける。身を挺して二人を守る気だ。

 

背に傷をつける覚悟を決めて目を瞑り来る痛みに備える。

 

「…?」

 

だが何時まで経っても来ない事に不思議に思い、ゆっくりと振り返ってみると後ろでは襲い掛かって来たロイミュードとトンファーエッジを交差して死神の腕を受け止めてるサイガの姿が有った。

 

「お、お前…。」

 

「此処はヒーローショーの会場じゃねえんだよ。観客はお断り!」

 

トンファーエッジが強く光り出すと、交差して受け止めた死神の腕が焼き切る音と火花を散らしながら死神の腕が宙に舞う。

腕を斬り落とされた死神を斬られた個所を抑えながら下がろうとするが、それより先にサイガが前蹴りで後方へ蹴り飛ばすキンジ達を前に庇うように立つ。

 

「ホラさっさと行けよ。」

 

「……なぁ。」

 

「あ?」

 

「…助けてくれて、ありがとう。」

 

「……フン。」

 

キンジはそれだけ言って二人を連れて屋上から去って行った。

キンジが去って行ったのを確認するとサイガは此方と相対する死神二体を前にトンファーを弄ぶ。

 

「…showdown。」

 

<< Exceed Charge >>

 

サイガフォンのエンターキーを押し、ベルトからトンファーエッジにフォトンブラッドが送られ刀身が青い光に包まれながらサイガは駆け出す。

 

二対の死神も応じる様に駆け出し、腕を落とされた死神からの攻撃をサイガは頭を低くする事で掻い潜りぬけ。

続けて来る死神の攻撃が攻撃が来るよりも早く右のトンファーエッジ逆手にリーチが出来たエッジを突き出し死神の胸部に突き刺す。

サイガが刺した所を後ろから先程の死神が襲い掛かって来るがサイガは残った左のトンファーエッジを後ろ見ないまま投げた。投げたトンファーエッジは死神の腹部に突き刺さりもう一体の動きが止まる。

 

「フッ!」

 

刺さった状態から切り上げる形で胸部から右肩に架けて焼き斬られた死神はフォトンブラッドの毒によって静かに灰となって崩れていく。

サイガは尽かさずもう一体の死神へダッシュ。投げて突き刺さったトンファーエッジを手にするとそのまま一気に上に押し上げた。腹部から頭頂部まで縦に裂かれた死神も先程の死神と同様、音を立てる事無く灰となって散った。

 

「ふぅ…。後は…。」

 

サイガは一息吐いた後残る一体を相手にしてるマッハの方へ目をやると。

 

<< ヒッサツ! >>

<< Full Throttle! MACH! >>

 

「タアァァッ!」

 

丁度マッハが必殺のキックマッハーを死神に決めようとした瞬間であり、キックマッハーを受けた死神は爆散していった。

死神が爆散していった跡からマッハがイノベイトバイザーを展開しながらサイガの元に近寄る。

 

「ふぃ~。…逃げられちゃったね、あのロリコンロイミュード。」

 

「あぁ。あんな馬鹿げた理由でロイミュードと融合するなんてな…これが欲望のエネルギーってヤツか…。」

 

「性癖って変えた方が良いかも……で、この後どうする?」

 

「フム…。」

 

顎に手を当てて考えるサイガ。一見するとシュールに見えるがマッハは黙って案が出て来るのを待った。

 

「…一つ手が浮かんだ。」

 

「マジ?どんな?」

 

「詳しくは後で。一先ず、ラボに戻るぞ。体制を整える。」

 

「オッケイ。……あぁでもその前に飯食おうぜ。腹が減っては戦は出来ぬって言うし。」

 

「……コンビニ寄って帰るぞ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ……此処まで来れば…。」

 

所変わりサイガ達の居た屋上からかなり離れた路地裏では一人の男が息を切らしながら壁に寄りかかっていた。

影でその全貌はハッキリ映らないが手に力強く握っている赤いバイラルコアを持っているからには先程の融合ロイミュードと融合した人間である事が見て分かる。

 

男はポケットから取り出した携帯を見る。携帯には男にとって家族と言っても過言では無い者達から来たメールや着信の数で画面が埋め尽くされていた。

男は携帯を仕舞い、傍らに立っていたスパイダー型のロイミュードに向き合った。

 

「今更こんなに騒ぎを大きくしちまったんだ。誘惑に負けたとはいえ、せめて二人には迷惑掛ける訳にはいかねぇよなぁ。」

 

決意を胸に男はバイラルコアを握りしめて強く自身の思いを込めるとバイラルコアは赤く発光し、光となってスパイダー型と融合を果し、白のロイミュードへと変わってった。

 

【俺はやってやるぞ!己の欲望を叶える為に…子供達からお兄ちゃんと呼ばれるために、俺は悪魔にでも為ってやるぅぅぅッ!!!】

 

果す欲望が何であれ、強大な力によって歪な形となった欲望の暴走は止まる傾向は無かった。






今回出て来ましたロイミュードですが、Wに出て来たオールドドーパンと対象の白と身に着けている服などは眼魔の怪人をモチーフに出しました。
正式名称は後半に出します。

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