その男が進む道は・・。   作:卯月七日

67 / 187


最近、今後の展開を考えてかなりの路線変更をしようかと考えてる自分が居ます。



話合

 

 

冥界襲撃事件から数日。

 

数の理を得たソーサラー率いるファントム、更なる進化を遂げたロイミュードの出没は確実に、少しづつ、その勢いを増していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファ~~。今日ハコンナモンデイイダロ~。

ア~、ニシテモホントメンドクサイナァ。最低デモ一日ニ一匹ハ襲ッテコイッテサァ…。ア~~~、メンドクサイ…。」

 

夜の街中で欠伸をしながら呑気に歩いてる白い猫のようなファントム、ケットシー。

 

不真面目そうに愚痴を溢しながら道を歩いていくケットシー。他のファントムとは違い命令にそこまで忠実に従うと言う様子は見られず、むしろ与えられた命令に嫌々従っていると言った表現が合ってる様なファントムだった。

 

そんなケットシーの耳に入って来るバイクのエンジン音。

 

先程まで愚痴を溢していたケットシーだったが、段々と此方に近づいて来るエンジン音に嫌な予感を感じ音がする方へ目を向ける。

自分が今思っているモノで無い事に懸命に願うがこの時のケットシーには、現実は非常と言う言葉が一番合っていたのは後の話。振り向いたケットシーにとって最悪なモノを目にする事になる。

 

「ゲェッ!」

 

ケットシーが目に写ったのは、エターナルボイルダーに乗って此方に向かって来るエターナル。

ケットシーからしたら敵対してる仮面ライダーに遭遇するのは最悪のシナリオであるために…。

 

「冗談ジャネエヨ、クソッタレ!」

 

迷う事無く逃走の選択を取る。

 

素早い瞬発力と軽快な身の動きで民家の屋根伝いに飛び回り、エターナルとの距離を空けていくケットシー。

次第に二人の空いた距離が空いていき、目に見えているケットシーの姿が段々と小さく見えて来るが、エターナルはこれと言って慌てる様子も無く、一本のガイアメモリをバイクのハンドル部のやや下に空いているスロットへ挿し込む。

 

<< ACCEL MAXIMUM・DRIVE! >>

 

加速の記憶を宿したアクセルメモリによって強化されたエターナルボイルダーの速度が上がりだし、ケットシーとの間を瞬く間に詰めていく。

逃げながら振り返ってエターナルを振り切ったか確認するケットシーだったが空けた筈の距離を何時の間にか詰められてる事に驚愕している間に、エターナルはバイクごと跳び上がり、そのままケットシーへとバイクでの体当たりを喰らわせて、吹っ飛ばされたケットシーを追いつめる事に成功した。

 

バイクから降りたエターナルは、起き上がるケットシーを前にエターナルエッジを手にする。

 

「ア~モウ!仮面ライダーニ遭遇スルトカ…!モウマジデ最悪ダァッ!」

 

「知るかそんなもん…ここ最近お前等の所為で、コッチはほぼ徹夜続きなんだよ。」

 

此処最近、頻繁に確認されてるファントムやロイミュードの出現に振り回されてる所為か、声に少し怒気が含まれている。

一日に一度は確実に起こり、多い時には二度目も有るペースが続いているので秋と手分けして対処に当たっているのが悠達の現状なのである。

 

「ンナノオレガ知ルカァ!チクショウ、コウナリャモウヤケクソダァ!ウオォォォォッッ!!!」

 

半ば勢い任せに、両手の爪を剣状に伸ばしてエターナルに向かって駆けだすケットシー。

そのスピードは本来のケットシーに比べかなり速いものだったが、エターナルの目にはその姿をはっきりと捉えていた。

 

ケットシーの繰り出した右の刺突をエッジで受け流し、右足を引いて、カウンターに左の縦拳をレバー(肝臓)の部位を的確に狙い、放つ。

 

ファントムと言えど急所は人間の構造と変わりなく、口から灰の空気を吐き出したケットシー。尽かさずエターナルは突き出した右腕を左の脇を通して固定し、刃先が光ったエッジで剣となっている爪を斬り落とす。

そして拘束を解き、背後に回り込んで右肘でケットシーの背を突き少しの間を空ける、此方に顔を振り向く時を狙って右足の回し蹴りを顔面に叩き込み、ダメ押しに振り上げた足をそのまま鳩尾目掛けて強烈な蹴りを叩き込む。

 

この一連の動作、約5秒。

 

「オ……オォ?……。」

 

ケットシーは蹴られた事で脳震盪に近い状態で今の状況を出来る限りで確認した。

 

覚悟を決めて戦いに挑み先手必勝で攻撃を仕掛けたと思ったら、気が付けば武器でもある爪を片方とは言え斬り落とされてしまい、おまけに足取りがおぼつかない状態にさせられている。

 

”こいつはヤバい。”生物の本能かどうか分からないが、やはり無謀に戦いを仕掛けず逃げるのに徹すれば良かったと後悔するも時既に遅く、エターナルは既にシナリオのラストを書き上げていた。

 

<< CYCLONE MAXIMUM・DRIVE! >>

 

「フッ!」

 

エッジに挿し込んだメモリによってエッジの刃先に風が渦巻きながら集う。

風を纏ったエッジを振るうと刃先に渦巻いてた風が巨大な竜巻となってケットシーに意志を持ってるこのように向かって進んで行く。竜巻に呑みこまれたケットシーはそこから逃れようにも体が宙に浮いているため抜け出せない。まるで水の中で溺れている様に。

 

そんな光景を目にエターナルはもう一本のメモリを取り出す。

 

「猫は寒いのが苦手だったよな?」

 

<< ICEAGE MAXIMUM・DRIVE! >>

 

ベルトのスロットに挿し込まれたのは氷河期の記憶。

 

掌から放たれた全てを凍てつかせる吹雪はケットシーを捕えてる竜巻と一つになる。

中に居るケットシーは次第に体温を奪われながらか細い悲鳴を上げいるが吹雪の竜巻の中ではどうする事も出来ない。

巨大な竜巻が次第に細くなりやがて尽きていく頃にはケットシーは氷の彫刻となり地面に落下する際にその体は氷の破片となって砕け散っていった。

 

散っていく氷が幻想的な光景を出す中で浮かび上がる白い球体は氷の粒を反射させ、より幻想的な景色を作り出す。

そんな白い球体を近くのビルの窓ガラスから出て来たダークウィングが吸収する頃には浮かび上がってた氷はその輝きを失い、気体となっていった。

 

「祐斗先輩!あのコウモリ…!」

 

「リュウガの使い魔!てことはこの近くに……!、見た事無い仮面ライダー…?」」

 

(……あー、またか。)

 

そしてこれがまた悩みの種の一つ。

ファントム・ロイミュード出没の際にオカ研兼武偵組とエンカウントする機会が増えた事。秋の方でもそうだが、運が悪いのか何故か遭遇する頻度は悠の方が上。

向こうは此方を捕えようと襲い掛かって来る事も有り、逃げる為に余計な体力を使うのは悠にとって非常に迷惑な話。頻繁に起こる戦闘の後に鬼ごっことか真っ平御免なので早々に立ち去ろうとしたが運悪く夜回りしてた所に遭遇したのだろう。

エターナルを目にした祐斗と子猫は戦闘態勢に入っていた。

 

めんどくさいと言わんばかりに二人にも聞こえる様な深い溜息を吐く、その後は何でも無い様に二人の元へゆっくり歩いていく。いや、正確には二人の後ろに置いてあるバイクに向かってである。

 

此方に向かって歩いて来るのに対して警戒を強める二人。

間合いが3mを切った所で祐斗が動き出す。このタイミングならと、トップスピードで真っ直ぐエターナルに剣を突き立てようとするが、剣先が触れる寸前といった所でエターナルは跳躍。

マントを靡かせながらそのまま子猫の頭上まで跳び越えていき、エターナルボイルダーの元に着く。

 

「くッ…!」

 

「逃がさない…!」

 

二人はバイクを出す前に捕えようと駆け出す。

バイクで逃げるのなら、エンジンを付けて、ギアを操作して発進する。その動作をする時間内にならばこの距離を詰められる。そう思っていたが…。

 

<< ZONE MAXIMUM・DRIVE! >>

 

「っ!消えた!?」

 

「転移魔法…では無いですね。魔力を感じませんでした。」

 

乗っていたバイクごと忽然と姿を消したエターナルを目に二人は驚くが、すぐさま気持ちを切り替えて冷静になる。

 

「今のは、今まで見た事の無い仮面ライダーだったね。」

 

「はい。でもあのコウモリが居たと言う事は、アレもまたリュウガの持つ姿と考えていいかもしれません。」

 

「そうだね………取りあえず、もう少し見て回ってからオカ研に戻って報告しよう。もしかしたらまだこの周辺に居るかも…。」

 

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし。昨日の報告会始めんぞー。」

 

「おー。」

 

翌日、昼休みの学園。

悠のベストスポットに認定されている校舎裏で悠と秋は集まっていた。

 

話す内容は、昨夜のファントム・ロイミュードの出没についての内容。本来なら学園で話す事ではないと思うが、家に帰る頃には疲労で即座にベットに入り、登校時間ギリギリまで寝て、ロックビークルで学園の一歩手前までとばすと言うスケジュールなので、落ち着いて話すにはこの時間帯しかないためである。

 

「んじゃあ、先に秋くんどうぞ…。」

 

「おー、オレんとこは昨日リザードマン倒してから、オカ研メンバーと鬼ごっこ。以上。」

 

「俺はケットシー倒して、オカ研メンバーと遭遇して逃げて、その後にロイミュード三体倒した。以上。」

 

連日の疲れか溜まってる所為か声に覇気が無い事が分かる二人。

思わず秋も深い溜め息と共に愚痴を溢す。

 

「はぁー…体力に自信はあったんだけど、こうも続いたら流石にキツイわ……あれから融合進化態が来てない事が唯一の救いだよね。」

 

「ロイミュードと融合するには人間の強い感情がカギだからなぁ、そうそう条件の合う奴が見つからないって事でしょ、アレ。

一度倒したファントムもまた来てない所を見ると再生怪人みたいにホイホイ出て来る事は無いみたいだし。冥界での悪魔ファントムも一度も出て来て無いし…。

俺としては、フェニックスやメデューサレベルのが何時出て来るかどうかが問題なんだよなぁ…。」

 

「あー、来ちまったらやっぱし太陽まで吹っ飛ばさなきゃいけねえのかなぁ…。

…ねぇ、ちょっと話切り替えない?さっきからテンション下がる事しか言ってなくね?」

 

「切り替えるったって、何話すんだよ……明日のテスト?」

 

「気分変えるのに何でテスト出てくんのさ?じゃなくて、もっとこう、テンション上がるようなヤツをさぁ…。」

 

「俺がその手の話題を上手く切り出せると思うか?お前。」

 

「……………そうでしたね。」

 

「でもお前、冗談抜きで大丈夫なんだろうな?赤点取って夏休み補習で潰れましたとか、笑い話にもならねえよ。」

 

「悠兄さん知らないの?オレ、こう見えて成績優秀者なんだぜ。仮にも前世大学通ってたっつうの。」

 

「初耳だよそんな事。まぁそれならそうでいいや。とにかく今夜も……。」

 

「?…どったの?」

 

「…誰か来る…。」

 

人が余り来ない校舎裏に近づいて来る気配に気付き会話を中断した悠。

二人が此方に来るであろう曲がり角に目を向けて、現れた人物は。

 

「やっぱりここに居たのか悠。ん?秋も一緒か…。」

 

「ゼノヴィア?」

 

現れた人物の正体はゼノヴィアであり、ちなみに秋の事はこの間の一件で秋の悠に対する呼び方から兄弟と間違われたが、悠の家に住み着いてる居候と言う風に話してある。

 

「しばらく姿を見ないと思ったら秋と一緒だったのか。…随分仲が良いな、君達。」

 

「あ、分かっちゃいます?オレ達何時でもベストパートモガッ!」

 

「いやーコイツはすぐに無駄口を挟むのが悪くていけねえや。…それで、なんか俺に用か?」

 

「あ、あぁ、那月先生から伝言を言われてな。放課後に私の部屋に来い。だ、そうだ。」

 

「おチビ先生が?」

 

何かやったっけ?と、思いながら、もがく秋の頭を鷲掴みに時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、オカルト研究会部室。

 

そこにはリアス・グレモリー率いる眷属一団、顧問のアザゼル、協力関係のアリアとキンジ、そしてハルナが集っていた。

アザゼルを筆頭にそこでは昨夜の出来事についてその場に居た全員が耳を傾けている真っ最中である。

 

「まーた新しい仮面ライダーが出たってかぁ?しかも二人も。」

 

「はい。僕たちが見たのは、白くてマントを着けた仮面ライダーでした。ソイツは転移魔法のようなもので姿を消しましたが魔力の反応は有りませんでした。」

 

「オレ達は金色でライオンみたいな飾りが着いたヤツです。追いかけたんすけど何時の間にか見失いました。」

 

祐斗と一誠の報告にアザゼルは面倒臭そうに頭を搔く。その表情からかなりの疲れが見えているようであった。

 

「大丈夫すか?アザゼル先生。」

 

「武偵のオメェに心配されるほど軟じゃねえさ、遠山。ただ流石に冥界でのゴタゴタ片付けんのと、こっちの両立は思いのほか疲れるってだけだ。

…さて、今日はおさらいも含めて、現状確認されてる仮面ライダーについてもう一度話し合うぞ。」

 

そう言ってアザゼルが持ってきたのホワイトボードには大雑把に手書きで書かれたリュウガ、武神鎧武、ガオウ、マッハ、ゴルドドライブの絵が張られていた。

 

「まず最初に確認されたのが、リアス達が見たリュウガだな。」

 

「えぇ、見た事も無い使い魔とカードを使って武器を出したりするのが特徴ね。現状の対策としては、カードを腕の籠手に入れる前に倒すのが今の所ベストなんでしょうけど…。」

 

「仮にもコカビエルを前に捻じ伏せた実力の持ち主でしょうからそう簡単にはいきませんわね。使い魔も相当な力を持ってるでしょうし、特にあの黒い龍は…。」

 

「赤龍帝の全盛期並みの力を持った龍なんざ白龍皇と五大竜王かそれこそオーフィスかグレードレッド、果ては邪龍しかいねえが、聞いた特徴だとその黒い龍は今まで確認されたドラゴンの特徴と一切合わねえ。

オマケにデカいコウモリだ、ロボットみてえなデカい牛だとか、このオレでさえ知らないと来たもんだ。」

 

「………。」

 

「?、どうした遠山。なんか、浮かない顔してるけどよ。」

 

顔を伏せて思い悩むキンジの横顔に、一誠が声を掛ける。

 

「え、あ、あぁいや。何でも無い。」

 

「?、そっか…。まぁ何かあったら言えよ?」

 

「あぁ、悪いな兵藤。」

 

「オイそこの二人、話進めても良いか?」

 

アザゼルがキンジと一誠に注意を入れて話を進める。当の二人は申し訳なさそうな様子で周りを見る。

 

「んじゃ次行くぞ。次にお前達が見たのは、この武神鎧武。通称ガイムだな。

コイツは身に着けてる鎧と武器が何故か果物を模してる錠前で変わるんだったよな。」

 

「果物もそうだけど中には木の実も有ったわね。マツボックリにドングリだったかしら…。」

 

「オレが…ドングリに負けた…!」

 

「ま、まぁ相手は未知数なんだし、そこまで気にすることは無いよ、ね?」

 

「…私なんか松ぼっくりに…。」

 

「こ、子猫さん。気を確かに!」

 

「リアスはいいですわね。アナタの頭と同じイチゴにやられたのですから。」

 

「…朱乃。それバカにしてるのかしら?」

 

「…あのー、ちょっと皆さん。アザゼル先生が相手にしてもらえなくて少しいじけちゃってますよー?」

 

「いいんだよ桜井。所詮オレは実物をまだ目にしてねえんだからよ…。」

 

「……取りあえず、話進めておきません?このままだとアリアがまた銃撃ちそうなんで。」

 

「…ありがとよ、お前達だけだぜ気遣ってくれんの。」

 

キンジとハルナの好意でかうっすらと目尻に水が溜まってたのは、あえて言わなかったとか…。

 

「んで、エクスカリバーを折った銅色の奴は見た所前のと比べてこれといった特徴はねぇな。強いて言うなら剣や銃にもなる組み立て式の武器位ってとこか。

そして、神崎が見たこの白いのと金色の仮面ライダー。白いのは銅色のと共に行動しているから仲間である可能性は高い。そんでもって金色のは、冥界で確認できた三人の仮面ライダーと同様に化け物を引き連れているのでそいつ等の仲間と見ていいかもな。

そして冥界を騒がして今もこの巷を騒がしてる化け物共を片付けているのはこのリュウガ達二人の仮面ライダーとなると…。」

 

「……同じ仮面ライダーどうし、敵対してるってことですか?」

 

子猫が放った一言に場の一同の目はそちらに向けられるが、ここぞと言う重要な事を言われたアザゼルは少しショックを受けた後、切り替えて話し続ける。

 

「そう見ていいかもな。残る問題はイッセー達が見た金色の仮面ライダー、ソイツも冥界襲った奴等とつるんでんのかどうか知らんが、一応あの化け物倒した見てぇだしなぁ、コイツもリュウガと同じで正体はこの白い奴と同一人物かもしれねえ。」

 

アザゼルはマッハの絵を叩いて自らの推測を口にした、思わずハルナはアザゼルの推理に反応してしまいそうになるが、そこはグッと堪える。

そこで議題の流れが止まった頃に、キンジが控えめに手を上げる。

 

「あのー、オレその化け物についての詳しい資料今持ってんすけど…。」

 

「何!?マジか遠山!?」

 

「流石は武偵ね、アナタ達と手を組んで本当に良かったわ。」

 

「アンタそんなモノ何時の間に用意してたのよ!?」

 

「まぁその辺は置いといて、んでこれがその資料なんすけど……その…。」

 

「ノート?……なんだこりゃあ…。」

 

「何?何が書いてるの?」

 

受け渡されたノートを開いて見たアザゼル反応にリアスが気になってノートを覗き込む。それに釣られてキンジを除いた面子がノートの中身を覗き見るが…。

 

「これは…。」

 

「あらあら。」

 

「何と言うか、コレって…。」

 

「ほえ~。上手く描けてますね。」

 

「…手作り感満載。」

 

「なんか、オレも子供の頃に描いた絵、というか、なぁ。」

 

ノートには色鉛筆で書かれたファントムの正面図の絵が描かれておりそれぞれの能力も簡潔に一文書いただけ、資料というか図鑑みたいな感じのモノだった。

 

「ちょっとキンジ。アンタこれの何処が資料なのよ!?

書いてあるのは、画と名前と炎を出すだ飛ぶだって、ただの落書き帳んしか見えないじゃない!」

 

「……いや待て。このガーゴイルってのオレと桜井を襲った奴だ!能力の石になるってのも合ってる!」

 

「…このワータイガーってのもオレの所の部下を襲った奴と特徴が合ってんな。

ふざけた様な作りだが、こっちが知りたい能力まで書かれてやがる……おい遠山。お前コレどうやって手に入れた?」

 

「えーと、それに関しては情報提供者からとしか…。」

 

「だからその提供者が誰かって聞いてんのよ!」

 

「それなんだが……その資料を提供する代わりに、名前を伏せておいてくれってその提供者が……(喋ったら借りてる金に利子付くからなぁ)…。」

 

キンジが悠からノートを受け取る際、自分の事を喋ったら借りてる借金に利子を付けると半ば脅しに近い事を言われてる為、常に金欠状態のキンジからしてもこればかりは言えなくなっているのである。

 

「うーん……なぁ遠山よぉ。そいつは今ココでリアス達が色仕掛けやっても、答えてくれねえか?」

 

「な!?…先生!いくら情報が欲しいからって部長達をそんな風に使うなんて…!」

 

「あら、私は別に構わないわよ?その提供者がこれ以上の事知ってるかもしれないし。」

 

「うふふ。私も構いませんわ。」

 

「部長!?朱乃さん!?」

 

「…そりゃ言えないっすよ。武偵云々抜きにして、ソイツからの信用失いたくねえっすから。」

 

キンジとしては借金の話を抜きにしても悠の事を此処で言う気は全く無かった。

向こうは此方を信用してノートを渡してくれたのだろうし、もし話して悠を此方の事情に巻き込んでしまうような事をするのはキンジからしたら余りしたくない事だったからだ。

 

「………そうか、分かった。今の所、コイツを手にできた事で良しとするか。」

 

アザゼルはキンジの答えに渋々了承しノートに書かれてるファントムの情報に再度目を向けた。今の内に頭に叩き込んで対策を立てているのだろう。

他のメンバーもアザゼルの持つノートを除き見て、敵の正体を知ろうとしていた。

 

ただアリアだけは、少し納得のいってない目でキンジを見ていたのをハルナが見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと。俺はまた何でここに呼ばれたんでしょうか?」

 

「そう急かすな。落ち着きの無い男は嫌われるぞ。」

 

そして同時刻。悠は那月の自室にて相変わらず高そうな椅子に座りながらティーカップを手にする那月を前に呼び出された理由を聞き出していた。

軽く受け流された後、カップを置き口を開く。

 

「灰原。お前、一体何をしているんだ?」

 

「はぁ…何、と言われても何が何だが…。」

 

「ここ最近、授業中隙あらば居眠りしている頻度が多くなっているって聞いてな。顔色から見ても目の下の隈がうっすら出来ているしな。」

 

「え?……あ、ホントだ。」

 

部屋の鏡で自分の顔を見てみると那月の指摘通り、目立ってはいないが目の下に隈が出来ていた事に悠は今気付いた。

 

「いやよく見てますねぇ先生。こりゃ思ってた以上に生徒思いの先生で俺感激っす。」

 

「下手な誤魔化しが効くと思うなよ。

私は、お前がそんなになるまで一体何をしているのかと聞いているのだ。」

 

「んー。そうは言われてもなぁ、ただのテスト勉強で夜更かししちゃった。なんて在り来たりの答えしか言えないんすけどねぇ。」

 

「そんな勤勉な奴が殆どの授業中に居眠りするのか?あの暁でさえテスト対策にノートを取っていると言うのに、お前は腕組みながら器用に寝てるときたもんだ。

…っと、話が逸れたな。」

 

「…どうしたんです?今回はやけに人の事情に突っ込んでくるような感じじゃないですか。らしくないですよ?」

 

その一言に火が着いたのか、那月は悠に鋭い眼光を飛ばす。まるで、取り調べの刑事がするような目連想するよう。

 

「……そうだな。お前相手に遠回しに言ってもキリがないから単刀直入に言おう。

この前、冥界で大規模な襲撃があったようだ。歴史に残りそうなかなりの大事のな。」

 

「へぇ~。そりゃまた物騒な…。」

 

「で、ココからだが本題だが、その襲撃にファントムらしき化け物が確認されている。

そしてこの襲撃を境に、この街でのファントムの目撃証言がかなり増えている。……その時からだ、お前の生活態度が変わり始めたのは。」

 

「……俺が、ここ最近のファントムの騒動について関わりがある。と、言いたいんですか?」

 

「あぁ。私の知るなかで専門と言えるのはお前しかいないのでな。」

 

率直な那月の言葉に、部屋の中にピリピリとした空気が張り詰めているのが感じられるが当の二人はその目で互いに探り合っていた。

 

暫く経ってやがて根負けしたのか、悠は小さく両手を上げて降参のようなポーズをして口を開く。

 

「参りましたよ。こりゃ何やっても誤魔化しが効かないようですし…。」

 

「認めると?」

 

「ええ。とは言っても、俺がやってるのはアテも何も無い勝手な調べ事なんすけどね。」

 

「調べ事?…ファントムのか?」

 

「最初あの晩からミノタウロス見た時に、師匠から聞いたファントムの特徴と違うって事に気付いたんすよ。

んで、先生達に粗方説明した後、陰でこっそり調べた結果幾つか相違点が有る事が分かりました。」

 

「ほう、で?その相違点とは?」

 

「魔力を奪う。地道に調べてこれだけしか分かりませんでしたね…。師匠にでも聞けば分かるかも知んねえすけど、今となっちゃあ叶わぬ望みですし…。」

 

「ふむ……なぁ灰原。隠しているのはそれだけか?」

 

「ええ。これ以外俺が何を隠しているんだと思います?」

 

「そうだなぁ…。」

 

手を顎に当てて考える素振りを見せた後、ニヤリと笑いながらこう答える。

 

「お前が噂の仮面ライダー。とか思ってたりしてな?」

 

「ほー。先生でもジョークって言うもんなんすね。」

 

「…まぁその辺は置いといて。これからも続けるのか、その調べ物とやらを。」

 

「ええ、まぁ。

一度のめり込むと気が済むまでやっちゃうタイプなんで。」

 

「……そうか。まぁそれならそれで私からは何も言わん。実質、こればかりはお前にしか出来んことらしいしな。

ただ、もし何か分かったらその時は私に伝えろ。ヤバい事になりそうなら私が動く。」

 

「…それって、遠回しに無茶はするなって言う俺に対しての気遣い・「フンッ!」・おぉッ!?」

 

那月が偶々近くにあった英語辞典を手に悠に空間魔術を使って投げたが、寸での所で躱した事に隠す気も無く舌打ちをする。

 

「チッ、相変わらず無駄に反応が良い奴め…。」

 

「先生。照れ隠しに辞典投げるのはどうかと思いますよ?しかも術なんぞ使って…。」

 

「教師を相手にからかうお前が悪い。全くどいつもこいつも私をコケにして…。」

 

その見た目じゃあ仕方ないんじゃないですか。と思わず口が出そうだったが、言った先の未来が簡潔に予測出来たので咄嗟に口を手に堪えることが出来た。

その事について問い出されたが、上手い事誤魔化して話は取りあえず終わった。

 

「とにかくだ。何か分かり次第すぐ連絡しろ、少し腕があるとは言えお前はただの高校生なんだからな。」

 

「了解。程々にやっときますよ。」

 

連絡先の書かれた紙を渡されて、悠は那月の自室から退室した。

 

その道中、山となっている資料の束をアスタルテが持ちながら横を通り過ぎたが少し考え事をしていた為にそのまま素通りしていった。

考え事の内容は、先程那月が言っていた事である。

 

(………あれ、本気じゃねぇよな?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「只今戻りました。教官。」

 

「ご苦労だったアスタルテ。それで頼んでおいたものは?」

 

部屋に入ったアスタルテが資料の山を近くの机に置き、その中から数枚の資料を手渡す。

 

「此方が灰原 悠の経歴を纏めたモノです。先程通り過ぎた際に此方に気付かなかった様子でした。」

 

「そうか…。」

 

那月は今までの悠の行動、言動についてどこかしら納得のいって無い所が所々有った為に密かに今までの経歴をアスタルテに調べてもらう様に頼み、今回呼び出したのも少し突っついて何かしらのボロが出るかと思っての行動である。

 

あの話し合いではこれといった素性の話は聞き出せなかったが、アスタルテが調べ上げた調査報告を目に資料を捲ってみたが。

 

「………アスタルテ。調査報告はこれだけか?」

 

「はい。あらゆる手を使って調べ上げても、それ以上の事は何も解りませんでした。

まるで実体の無い霧を掴む様な感覚でした。」

 

アスタルテの報告に耳を傾けながらも手元の資料に目をやる那月。

 

資料には名前、性別、住居の場所など在り来たりなプロフィールが載っていたが、那月が一番知りたい出生や此処に来るまで経歴が一切記されていなかった。

戸籍や住民票に関しても、何も問題無く灰原 悠として記録されているにも関わらずにだ。唯一の身元引受人である灰原 神太郎と記されている人物も分かっているのは名前だけであってそれ以外は一切記されていない。

 

(……私は幽霊でも調べていると言うのか?………いやそれとも…。)

 

先程の会話で出て来た言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……少し強引だが踏み込んで調べてみるか。アイツが仮面ライダーであるか否か…。)

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。