今年最後の投稿です。
季節は7月序盤、簡単に言えば夏である。
温暖化の影響か梅雨明けから一気に気温と日差しが右肩上がりの平日の朝、顔を俯かせて項垂れてるのと対照的に人当たりの良い笑顔を振りまきながら前を歩く計二人の人影が。
「………暑い…。」
「悠兄さん、もうそれで30回目だよ。何回言ったって気温は下がらないんだから。」
「分かってても無意識に口に出るわこの異常気象。
7月に入ってまだ3日でコレだぞ?こんな暑いと夏本番入ったらどんだけ上がるんだよって話だ…。」
「どの世界でも温暖化は進む一方かぁ…。」
秋が悠の家に住み着いて10日が過ぎようとしていた。ハルナのファントム化を防ぎ秋だけで無くハルナ自身も仲間に加わると言ったあの日から頭を抱える機会が多くなってしまった悠だが度々出現するファントムやロイミュードを相手にしてる時だけが頭痛の種から逃れられる唯一の解消法だと最近気づいた時は我ながら不謹慎と思ってしまったのは悠だけの秘密である。
「それはそうと、桜井の方はどうだって?何か良い情報来た?」
「いんや今のとこ姉ちゃんからは何も無し。
それにしても向こうは気前が良いんだが器がデカいんだが、人間に戻った姉ちゃんを追い出さないなんて何考えてんだろうねー。」
「でも向こうから入ってくる情報は役に立つ。俺としてはスパイ紛いの仕事を率先するお前の姉の方に驚かせられたが。」
「まぁ姉ちゃんは姉ちゃんで自分に出来る事をって思っての行動じゃない?昔からそういう感じの人だったからさ。」
ハルナが悠達に協力するという一件以外彼女の身に起きた事がある。上記で言ったようにハルナが転生悪魔から人間に戻ったと言う事だ。
ファントム化を防いだ後、体に異常が無いか調べた結果なのだが特に変わった異常が無くハルナ自身が生活していく内に朝起きるのが苦じゃないとか夜目が効かなくなったとか翼が出せなくなったと言うのでもしかしたらと思いハルナがリアスの元に行ってみたところ、ハルナの体に有る筈の悪魔の駒が無くなっていたと言う。
恐らくグレムリンが入れたあの魔宝石は悪魔の駒と反応し同一化したのものが秋が戦った巨大ファントムの正体だろう。ハルナが人間に戻れたのは巨大ファントムを倒した際、そのまま悪魔の駒も壊した事から悪魔じゃ無くなったと見るのが自然であろう。
リアス・グレモリーの眷属ではなくなったハルナだが、自らの身に起きた出来事を話すとリアスは何故かハルナを追い出すようなマネをせずそのままオカルト研究会の部員として残す事に決めたのだ。
これまでの情が有ったからの行動かどうかは分からないがハルナとしては好都合だった。三大勢力の情報網は広くその情報が自然と此処に集まってくるのだ。今まで過ごして来たリアス達を騙してるようで後ろめたくなるが悠達と協力すると決めた以上戦えない分二人に情報を与えようとするハルナは決心をしていたのだ。
「まぁその辺は吉報来るまで待つとして……やっぱり暑い…。」
「もう悠兄さんってば……ほら!そんなに項垂れてないでもうちょっとポジティブな気持ちで行こうよ。
例えばさ、この暑さで薄着になっていく女の子を見れるイベントが有ると思うとテンション上がんない?」
「そんなんでこの暑さがどうにかなるなら苦労しねえよ。」
「あ、あのぅ。」
他愛もない会話をしながら学園へと足を進める二人だったが、後ろから呼び止められた声に反応し立ち止まって後ろを振り返る。
「すみません、少し窺いたい事が…。」
呼び止めたであろう人物を見た時に二人を目を細める。声から若い女性だと判断できるがこの暑い日差しの中白いローブにフードを掛けて顔が見えなずあからさまに不審者に見えたからだ。
「……テンション上がるどころか警戒心が一気に湧き出たんだが…。」
「うん……オレも流石にこれはなぁ…。」
「あの…あ、そうかこの姿じゃ…。」
二人の反応を見て掛けていたフードを脱いだ人物の素顔は長い栗色の長髪をツインテールに纏めた顔立ちの整ってる女性だった。
「お!カワイイ子じゃん。」
「美人でもあんな格好じゃ立派な不審者だろ…。」
「違います!これはその、正装と言いますか何と言いますか。えぇと…。」
「あのぉ、何も無いんなら行っても良いですか?俺達一応学生の身なんで。」
「あぁちょっと待って!人を探してるんです!青いショートカットで緑のメッシュ入れた女の子を知りませんか!?」
「うーん随分特徴的な娘だけどオレは転校したばっかだからなぁ、悠兄さんは?………悠兄さん?」
「……………いや、知らん。」
「今の間は何!?知ってるの!?アナタもしかしてその子の事知ってるの!?」
「あ、やべぇ。早く学校行かないと遅刻する。走るぞ秋。」
「えぇ!?ちょ、待ってよ悠兄さん!」
「待って!お願いだから話を聞いて!私不審者じゃないんだってぇぇッ!!」
後ろから聞こえる彼女の叫びは無慈悲に無視され暑いなかダッシュした悠と秋だった。
「ゼノヴィア、少しいいか?」
「ム、珍しいな。キミから声を掛けるなど。」
教室に辿り着いた悠はゼノヴィアの姿を見つけるとすぐさま声を掛けた。声を掛けた理由は言わずもがな登校中にあった不審人物についてである。
「お前ここ最近変な女に目を付けられるような事したか?」
「変な女?どういう意味だそれは?」
「ここに来る途中変な格好した女がお前の特徴言って探してたみたいでよ、余りに怪しかったから知らないって言っといた。」
「変な格好……なぁ、その格好って具体的にどんな?」
「このクソ暑い日にも関わらず白いローブで全身隠してた栗色ツインテールの女。」
「………。」
何か思い当たる節が有るのか顎に手を当てて考え込むゼノヴィア。思わず悠は声を掛けてしまう。
「…何か心当たりでも?」
「あぁ、以前私と組んでいた相方が居ると言ったの覚えてるか?」
「……もしかして…。」
「その相方かもしれん。」
ゼノヴィアが今朝会った不審者の素性を明かした所で悠は思い出した。フードを取った時何処か見覚えがあると片隅に思っていたら確か最初にゼノヴィアを見た時隣に同じ格好をしたツインテールの女が居たなとこの時内心思っていた。
「だけどまた何でその相方がお前を探してんだ?」
「…分からないな。教会の指示で私を探してるかそれとも個人で動いてるのか……。」
「どちらにせよ話聞かなきゃ分かんねえって事か。
…それはそうと、お前その相方と何かあった?」
「え?」
「いや、相方の話出た途端お前あからさまに態度急変したからよ。お節介だとは思うが…。」
「…そうだな……仲違いとまでは行かないが、少し訳ありでな…。」
「そう……まぁお前を探してんならまだこの街に居る筈だし話してみたら?心残りがあんならこれを機にさ。」
「……あぁ、そうだな…。」
「時に彼女のあの格好って趣味なの?すっげえ怪しさ満載だったけど。」
「あぁあれか、残念な事にあれは教会の正装なんだ。そう言えばよく警察に職務質問されてたっけかあの頃は…。」
ゼノヴィアの遠い目を見て、言うべき質問じゃ無かったと反省する悠だった。
「……なぁゼノヴィア。アレって…。」
「あぁ……言わなくとも分かってるさ。いや、分かってしまったな…。」
悠とゼノヴィアは放課後にまだ街に居るであろうイリナを探そうと二人で行動していたが街でイリナを探す前に校門前で異様に目立ってる光景を前に
「それで?教会の犬が何しに此処へ来た?えぇ?」
「ですから!此処へは教会の指示では無くて私個人で来たんですってば!信じてくださいよ!」
校門前で那月に補導と言う名の尋問を受けているイリナ。
涙目で訴えるイリナを余所に目の仇の眼光を向けている那月を前に少し同情してしまう。
「どうする?」
「どうするって、あのおチビ先生どうにかせんといけないでしょうが。
……あぁもういい。俺が何とかすっからお前は相方連れて話して来い。」
「良いのか?そんな身代わりみたいな役買ってもらって。」
「良いよ別に、損な役には慣れてる。」
そう言って那月とイリナの方へ向かって歩を進める悠。終始涙目のイリナは此方に近ずいてくる悠を目に目を見開く。
「あーーーッ!!!アナタ今朝の!」
「何だ灰原。この女お前の知り合いか?」
イリナが悠を指差して声を荒げてる傍らで那月がめんどくさそうな顔をしてるなか悠は那月の問いに答える。
「いいえ。この不審者モドキとは今朝口を交わしただけで何の関係も無いっすよ。」
「だから私は不審者じゃないって!」
「それはそうと私に何か用か?御覧の通り学園の前で不審な動きをする不審者に話を聞いてる真っ最中なのだが?」
「そんなに時間は取らせませんよ。少し耳に入れたい事が。」
「何だ。」
那月と同じ目線に屈んでそっと耳に近ずき内緒話のように語り出す悠。悠が何か告げた後、那月の体から途轍もない威圧感が放たれ傍にいたイリナは”ヒィッ!”と思わず声を上げてしまう程だった。
「オイ灰原、その話、本当か?」
「えぇ、この間偶然聞いたので。」
「そうかそうか、……報告ご苦労。私は少し用が出来たからこれで失礼する。」
「はーい。いってらっしゃーい。」
謎のオーラを纏ったままイリナの事など放っておいてその場を立ち去っていく那月。
未だ那月の威圧感に全身震えてるイリナの肩に置かれた手によって正気を取り戻したイリナが振り向くと。
「ゼ、ゼノヴィア?」
「久しぶりだな、イリナ。」
場所は変わって公園広場。
あと少しで日が落ち空が黒くなる手前の時間帯では遊んでいた子供が家に帰る姿が見えるなか、再会を果たしたゼノヴィアとイリナはベンチで隣り合わせに座っていたが。
「…………。」
「…………。」
この通り終始無言の状態が続いてる真っ最中である。
行方不明のゼノヴィアがこの街に居ると耳にしたイリナは単独でこの街に訪れ聞き込みをしていたが朝の様に不審者に間違われ思ったように上手く行かなかったがやっとの思いでゼノヴィアが学園に通ってるとの情報を掴んで放課後の帰り際に見つけようとしたの那月に捕まったのがイリナに起きた今日一日の出来事である。
ようやく目的のゼノヴィアを見つけこうして話せる機会が巡り来たのだが、いざこうして本人を前にすると中々話を切り出せない。そしてそれは隣のゼノヴィアも同じ心境だった。
(どうしよう、やっと会えてこうして隣に居るのに話が切り出せない。)
(なんて言えば良いのだろうか…まず話を切り出さなければ言いたい事も言えん。)
このままじゃ埒が明かないと思い何でもいいから会話をしようとイリナが口を開く。
「げ、元気にしてた?こうして会うのは久しぶりだし…。」
「あぁ、お陰様で楽しくやってるよ。」
「そう、良かった……ねぇゼノヴィア、その……。」
「デュランダルか?そういえば追放されて私が持ったままだったな。教会から取って来いと言われたか?」
「いいえ、デュランダルはアナタが持って良いってミカエル様が。せめてものお詫びだそうよ。」
「そうか…。」
「えぇ…。」
ある程度喋ったが、また沈黙の間が訪れる。
(マズイ。ある程度話せたがまたこの空気だ……こうなれば此処は…。)
(ナニ話し終わらせてんのよ私!また気まずい空気に戻っちゃったじゃない!……こうなったら…。)
((いっその事自分の思いをありのままぶつけ る!・よう!))
この場を打破すべく奇跡的に考えてる事が一致したゼノヴィアとイリナ。
二人のやる事が決まり後は切り出すタイミング。二人はこれを慎重に見計らってた。
(余り時間を掛けては逆に自分のペースで言い出すのが難しくなる。此処で行く!)
(よし、言おう!こう言う時は当たって砕けろって言うしね!)
そして二人がいざ口を開こうとする。
「「あのッ!」」
ーゴオォォォォォォォォン!ー
「えぇッ!?」
「これは…あの時の!」
二人が同時に言い出したその時である。見計らったように重加速の波が二人を襲いイリナは突然体の動きが遅くなっていることに理解を追いつかず、対するゼノヴィアはこの現象が以前味わった重加速だと気付くのにそう時間は掛からなかった。
そんな二人の前に降りてくるバット型のロイミュード。狙いを定めたように二人に向かって一歩一歩歩を進めて行く。
「アイツは……イリナ逃げるぞ!このままでは一方的にやられる!」
「逃げるって体がこんな状態じゃあ逃げるにも逃げれないわよ!それより一体何なのコレ!?」
「説明してるヒマは無い!とにかく急いで逃げるんだ!」
向かって来るバット型の脅威をその身を持って味わせられたゼノヴィアが逃げる様に言うが重加速の所為で体が思うように動かずベンチから立ち上がるだけで精一杯の状況。そんな二人を余所に確実に近ずいて来るバット型は二人に向かって手を振り降ろそうとしたがそこに割って入って来るように二台のシフトカー、バーニングソーラーとロードウィンターがバット型と二人の距離を開けさせ、二台はそのまま二人の肩に停まると二人の体が自由に動く様になった。
「体の自由が…。」
「何なのこのミニカー?私達を助けてくれたの?」
イリナが肩に停まってるバーニングソーラーに目を向けるなかバット型は二人に向かって跳びかかって来る。体の自由が効く様になった二人は左右に分かれて回避しバット型が後ろにあったベンチを破壊するのを目にしながらそれぞれの武器を構えだした。
「ゼノヴィア!イケる!?」
「愚問だ、伊達に武術道場で過ごしてないさ!」
「なら久々にコンビ復活ね!」
ローブを脱いだイリナのその言葉が合図のように同時にバット型へ斬りかかって行くイリナとゼノヴィア。
二人が同じタイミングで此方に向かって来てる為首を左右に振るバット型目掛け剣を振り降ろすがそれぞれの剣を片腕で受け止められる。しかし左側のゼノヴィアの剣は見た目以上のパワーを有しているのも有って圧されてしまい体勢を崩した隙を突いてイリナが胴に斬りつける。
胴から火花が散ったバット型は斬られた個所を抑えながら後退し此方に剣を向けて構えてる二人を殲滅対象へと見方を変えて指先から光弾を放った。
「散れ!」
ゼノヴィアの一声で二人は散開しバット型の光弾を回避。すぐさま間を詰めたイリナが上段から斬り掛かるがバット型は受け止めるのではなく今度はバックステップで回避、僅かな瞬間バット型が後ろへ跳んだの見てイリナは口角が上がる。
「引っ掛かったわね。」
振り降ろした剣の剣先が意志を持ってるかのようにバット型の方へ刀身が曲がりそのままの角度を維持したまま剣が伸びて胸部に剣先が突き刺さる。
思わぬ攻撃を受けたバット型にゼノヴィアが追撃に迫って来るのに気付き、大剣を上段から振り降ろそうとする動作を見て咄嗟に腕を交差したがゼノヴィアは瞬時に足技に切り替え脇腹辺りに回し蹴りを叩き込ませた。
「アンタ、パワー馬鹿のクセに何時の間にフェイントなんて器用な技身に着けたのよ。」
「そういうお前こそ、あんな聖剣の使い方初めて見たぞ。」
「私だって日々の鍛練怠って無いわよ。あの事件の一件から特にね…。」
「それは私も同感だ…。」
敵を前に余裕を見せながら口を交わす二人。
以前と組んでいたように戦っている所為か、先程まで抱えていた不安も何時の間にか無くなっていた。
「…こんな時に言うのもアレだけど、教会から追放されたって聞いた時アナタが主を裏切ったんじゃないかってアナタの事疑ってたわ。でもそれは私の勘違い、主の不在を知ったから追放されたって聞いた時は私馬鹿だって自分を恨んだわ。どうしてコンビのアナタを信じなかったんだって…。」
イリナが懺悔するかのように告白するなかバット型は二人に掴み掛るがゼノヴィアが大剣を盾に防ぎ弾き返す。
「私も似たようなものだ。主が死んだと聞いて、今の生活をしている内に思うようになったんだ。
私がこうして生きている中で主の不在を知らないお前を余所に私はこのままでいいのかって……私は自分の事しか頭に無く黙ってお前の前から消えた事に今更気付いたんだ。」
「ゼノヴィア…。」
「……この場で言うのもなんだが、今しか言えないので言わせてもらう。」
「…私も、これを逃したら言えなくなりそうだから言うわ。」
「「ゴメン 。・なさい。」」
自分の思いをようやく伝えられた二人は向かって来るバット型を迎え撃つため地を駆ける。
先程から碌に攻撃を当てられず一方的にやられてるバット型は自身に備わってるある信号を放ちながら此方に向かって来る二人に光弾を放つ。
二人は光弾を躱しながらスピードを緩めずバット型に向かいながらイリナは剣を鞭のように操りバット型を牽制し隙を作り
「今よ!」
「分かった!」
一気に距離を詰め聖剣デュランダルの力を解放し、バット型を肩から袈裟懸けに斬り付ける。
ボディに大きく斬られた跡を付けられたバット型は大きくよろめきながら爆散。バット型の倒れた姿を見て二人は構えを解く。
「…やったな。」
「えぇ。」
顔を合わせ、頭上で手を合わすハイタッチをし勝利した事実を喜ぶイリナとゼノヴィア。
だが勝利を確信してしまった所為で大きな隙を作ってしまう。
「ぐぁッ!」
「きゃあッ!」
突如二人に襲い掛かる光弾は辺りを瞬く間に炎に包みこんだ。
光弾を放ったのは先程バット型が放った信号によって駆けつけたスパイダー型とコブラ型を率いる死神ロイミュード。死神の視線の先には先程の光弾で所々衣服が破れ肌の色が見えているイリナとゼノヴィアが剣を杖代わりに未だ立っている事を確認する。
「参ったな、まさか新手が来るとは…。」
「えぇ、しかもさっきより数が多い…。」
二人が苦虫を噛んだ顔で目の前のロイミュード三体を見るなか、コブラ型とスパイダー型が二人に接近。先程の攻撃でダメージを負ってしまいロイミュードの攻撃を回避するので手一杯の状態になってしまい防戦一方になってしまう。
そんな二人に死神は武器である鎌を取り出し、刃先にエネルギーを籠めた鎌を振るうとエネルギーがそのまま斬撃となって二人の元に飛来して来た。
「うわぁあッ!!」
「きゃあぁッ!!」
直撃はしなかったものの余りの威力に二人は吹っ飛ばされてしまい地に落ちてしまう所で。
「よっと。」
「え?…。」
「キャッチ!」
「ふぇッ!?」
二人を抱き止めた二人の男。一瞬何が起こったか分からない様に呆然としてしまうがゼノヴィアは自信を抱えてる男の顔を見て我に返る。
「……悠?」
「あぁ、とんだ目に遭ってるご様子で…。」
「あ、アナタ達今朝の…。」
「大丈夫?……ワォ、これまた眼福な…。」
「ちょ、見ないでよ!変態!」
「オーイ、お宅等今の状況ちゃんと見てるー?
………おい、どうした?」
「いや何でも無い…………コレはコレで中々…。」
「…あの、そろそろ下ろしてイイ?」
横目で抱き抱えてるイリナの格好を見て思わず声を上げる秋に呆れてるなか顔が紅潮してるゼノヴィアの安否を確認して下ろす悠達。
「コイツ等を此処から引き離すぞ!」
「了解!」
「待って!危険よアナタ達が行っても…。」
「オーイ!二人とも無事!?」
イリナが悠と秋がロイミュードの注意を惹き付けて離れてくのを止めようとしたが、そこに割って入る様にハルナが姿を表す。
「キミは……確かグレモリーの…。」
「元、だけどね。それよりも傷見せて、治療するから。」
「そんな事をしてるヒマ無いわ!早くあの二人を止めないと!」
「大丈夫よ、あの二人はそれなりに強いから機会を見て逃げるわ。それより…。」
「それより、何だ?」
「…何でも無い。ほら、怪我人は大人しくして治されなさい。」
「っと!」
「あらよっと!」
一方悠と秋はロイミュード三体を引き連れ迫り来るロイミュードの手を躱しながら公園の奥まで移動していた。
「今更だけどよ!お前の姉ちゃんのサポート!どれだけ必要か今分かった!」
「でしょ!?そこんとこは!自慢の姉だからさ!」
<悠!>
躱しながら悠はハルナの働きの見解を今一度改める。こうしてハルナがイリナとゼノヴィアを引きとめてくれなかったら、変身出来ずに戦えなかったからだ。
そんな悠の元にフッキングレッカーに引っ掛けられながらクリムが悠の手に収まり、腰に装着した悠と秋はスパイダー型とコブラ型に蹴りを入れて十分な間を空ける。
「お仕事開始だ。」
<Start our mission!>
「オッケイ、行くよ!悠兄さん。」
<< Signal Bike! RIDER! >>
秋は腰に付けたマッハドライバーにシグナルバイクを入れレバーを倒し、悠はイグニッションキーを捻りシフトブレスへシフトネクストを装填する。
「Let‘s!…。」
「「変身ッ!」」
三体のロイミュード達が向かって来るがシフトカーとシグナルバイク達が行かせまいと妨害している内に
<< DRIVEtypeNEXT! >>
<< MACH! >>
悠がダークドライブ、秋がマッハへと姿を変え堂々とロイミュード達と相対するなか、そこにハルナに足止めされていたイリナが現れる。
「待ちなさいって!アナタの怪我まだ完ぺきに治してないんだって!」
「イリナ、落ち着け!」
「落ち着ける訳無いでしょ!それに動けるようになっただけさっきより全然…ってあれは!」
ハルナとゼノヴィアの静止も聞かず進んで行くイリナに二人の仮面ライダーが目に写り
「追跡!撲滅!いずれも、マッハ!仮面ライダ~…マッハーッ!」
「…お前それ毎回やるの?」
<呑気に話してる場合かね、来るぞ二人とも!>
「だそうだ、ホレ行くぞ。」
「えぇッ!?もう決め台詞ぐらい言わせてよ!」
ダークドライブはブレードガンナーを手に死神ロイミュードを、マッハ遅れながらもゼンリンシュータを手に残る二体のロイミュードを相手に戦闘を開始した。
「始まったわね。」
「あの仮面ライダー以前見た黒いのとは違うヤツか……イリナ?」
「アレが噂の仮面ライダー……カッコいい!」
「……あぁそうだった。確か好きだったんだっけか、ヒーロ物…。」
キラキラした目で見るイリナを横目にゼノヴィアも目の前で行われてる戦いへ目を写した。
「It`s!ShowTime!」
<< MACH! >>
「そうらッ!」
ベルトの上部スイッチを押し加速したマッハはロイミュード達を翻弄し所々攻撃の手を加えながら場を制していく。
コブラ型は手から光弾、スパイダー型は口から糸を吐くが
<< ズーット・MACH! >>
更に加速したマッハのスピードに目が付いて行かず全て外してしまう。
<< シューター! >>
「フッ!」
ゼンリンシューターの光弾を浴びせ怯んだ隙に一台のシグナルバイクが手元に来る。
「コレ、危ないよ?」
<< SignalBike! >>
<< シグナルコウカーン! キケーン! >>
シグナルキケーンをマッハドライバーに装填したマッハはロイミュード達の頭上に向け光弾を放つと危険地帯のマークから小さなロケット型の生き物が落ちてくる。身構えていたが余りの小ささに警戒を解いたのを見計らって。
<< キケーン! >>
上部スイッチに手を掛けた瞬間ロケット生物は瞬く間にロイミュードを飲み込む程巨大化し、気付いた時には既に遅くスパイダー型は弾かれコブラ型は鋭い歯が生えた口に噛まれ爆散していった
弾かれたスパイダー型はすぐさま立ち上がりマッハの元へ駆けつける。
「次は悠兄さんの借りちゃおうか。」
<< ShiftCar! >>
<< タイヤコウカーン・モエール! >>
マックスフレアをベルトに装填し向かって来るスパイダー型に応戦するマッハ。
足技を繰り出すもスパイダー型受け止められ足を掴まれてしまいその隙に口から吐かれた糸に捕まってしまう。
「うわッ汚ねぇ、ぐおッ!」
糸によって身動きの取れないマッハにスパイダー型は拳を叩き付けマッハは転倒。尽かさず追い込みを掛けようと跳びかかる。
「こんにゃろ!」
<< モエール! >>
上部スイッチを押すとマッハのボディが炎に包まれ糸は燃え尽き自由が効くようになったマッハはゼンリンシューターを放ち炎を宿した光弾はスパイダー型に大きなダメージを与えた。
立ち上がったマッハはゼンリンシューターにシグナルマッハを装填しタイヤ部を回す。
<< ヒッサツ! >>
<< Full Throttle! MACH! ゼンリン! >>
スパイダー型に向かって駆けて行くマッハ。先程の攻撃で倒れてたスパイダー型は此方に向かって来るマッハへ光弾を放つが隙間を潜る様に躱されてしまい。
<< キュウニ!モエール! >>
「デアァッ!」
懐に入り込み低い姿勢からスパイダー型のボディへ炎を灯したゼンリンシューターを叩き入れる[ビートマッハー]が炸裂し空に打ち揚げられたスパイダー型はそのまま爆散。マッハは爆散したスパイダー型を背に華麗に立ち振る舞い。
「フフン♪いい画だったでしょ?」
何時もの如くポーズを決めた。
マッハがロイミュードを撃破する数刻前。
ダークドライブは死神ロイミュードを相手にブレードガンナーで死神の鎌をいなしていた。
<このロイミュード、以前戦ったのより幾段か強くなっているぞ。>
「でも倒せないってレベルじゃねぇ。この長物を何とかすればどうとでもなるさァ!」
鎌を掴んだダークドライブはブレードガンナーを逆手に持ち懐に入って打撃技を容赦無く死神へ叩き付ける。
「ホラホラァ!懐に入られちゃあッ、折角の長物も満足に振れねぇよなァッ?」
<…やってる事と言ってる事が悪役だぞ。それは…>
絶え間無く打撃を浴びせ渾身の一撃を頭部に放つダークドライブの一撃に死神は大きく吹き飛ばされてしまう。だがそれでも武器の鎌は手放さず、すぐに立ち上がって光弾を放った。
<< タイヤコウカーン! >>
<< DREAM VEGAS! >>
ドラムシールドを構え光弾を防ぐが光弾の勢いは止まらず防戦一方の状態になる。
<シフトカーズ!GO!>
この状況にクリムとシフトカー達が動き、イリナとゼノヴィアの肩に乗ってたバーニングソーラーとロードウィンターも死神の元に向かい光弾を止めさせた。
「ナイスアシスト。」
<サポートなら私だって負けないさ。>
「そうだな。」
<< ヒッサーツ! >>
<< FULL THROTTLE! VEGAS! >>
ドラムシールドが胸部のタイヤと重なりスロットが回転し777が揃うと大量のコインが死神に向かって排出される[ミリオンアタック]が炸裂し死神は盾代わりにした鎌で防ぐも鎌は耐え切れず粉々に散っていった。
<< DRIVEtypeNEXT! >>
「シッ!」
タイヤを変えブレードガンナーを手に死神に向かって駆けて行くダークドライブに対し死神も対抗してダークドライブに向かって駆けだして行く。
<< NEXT! >>
「デリヤァッ!!」
すれ違い様にブレードガンナーで一閃。胴へ横一文字に斬られた跡から火花が飛び散り爆散していった。
「フゥ…。」
<Mission complete…。>
「スゴイ!スゴイ!スゴイ!、要注意人物って言われてるけど本物のヒーローみたい!……ッ!!イタタタタッッ!!!」
「あぁもうそんなに騒ぐから塞いだ傷口また開いちゃったじゃないの!」
(…アイツ等何騒いでんだ?)
ダークドライブとマッハの戦闘を観たイリナは余りの光景に興奮状態に陥り暫くして傷口からの痛みで蹲ってしまう。
ダークドライブがマッハの方へ目をやると頭上の爆炎をバックにポーズを取ってる光景を見て”またやってんのか”と内心思っているのでもう見慣れたようである。そうこう思ってる内に此方に気付いてマッハが駆け寄って来る。
「オーイ!こっちは問題無く倒したぜゆ…ドライブ。」
「……お前、頼むからマジで口にしないでくれよマジで…。」
「ちょっと良いか?」
本気でうっかり身バレしそうな心配を抱えるなかゼノヴィアがダークドライブとマッハに声を掛ける。
「…何だ?」
「聞きたいのだが、キミは以前川原で私達を助けてくれた仮面ライダーか?」
「…だったら何だ?」
「あの時は由記江しか礼を言ってなかったから改めて礼を言おうとね、あの時はお蔭で助かった。それにさっきの機械の奴等も倒してくれて。」
「いやぁそれほどでも。」
「照れてどうすんだよお前が。」
「あと、私達を助ける為に奴等を引き離した男二人を知らないか?一人は私の友人なんだ。」
「え?あ、あぁ彼らは、その…。」
「俺達が駆けつけた時に逃げる様に言ったんだ。恐らくあと少ししたらお前達の元に来るんじゃないか?」
「……そうか。ありがとう。」
「…一応受け取って置く。マッハ、そろそろ行くぞ迎えも来たし。」
「迎え?…おぉ!」
マッハが目を向けた先には此方に向かって飛んでくるライドブースターの二台。ダークドライブはブルーの方へ飛び乗り、マッハも釣られてレッドのライドブースターへ飛び乗った。
「あぁちょっと待って!せめて、せめて名前だけでも!」
「オレ?オレは仮面ライダーマッハ!機会があればまた会おうね、美人さん♪」
「びッ!?」
治療を終えたイリナが急いで駆け付けるも既にダークドライブはライドブースターと共に闇夜に消え、残っていたマッハからの返答に紅潮してる間にマッハの乗ったライドブースターも瞬く間に消えていった。
「び、美人…私が……。」
「おいイリナ。お前大丈夫か?もう一度彼女に診てもらった方が良いんじゃないか、特に頭を。」
「エヘ、エヘヘヘ。」
「…アチャー、こりゃ手遅れかも。」
「おーい。」
イリナがマッハに言われたことを思い返して自分の世界に入ってるのをハルナが見てると、気の抜けた声が遠くから聞こえてみてみると悠が走りながら此方に向かって来ていた。
「悠。」
「よぉゼノヴィア。格好はアレだが、無事みたいだな。」
「まぁな。キミこそ何の問題も無いようだな。時に一緒に居た彼は?」
「あぁアイツなら…。」
「悠兄さーん!」
悠が言おうとした時に後ろから聞こえる声に振り返ると汗だくの状態で此方に走って来る秋が悠達の元に来て肩を大きく揺らしながら激しい息切れで膝に手を着く。
「なんッ……でぜぇッ!、あんなッ…ぜぇッ、早く動けん…のさッ!?」
「鍛えてるから。」
「ムフフ……ってあぁッ!!、いけないあの二人の事忘れてた!」
「もうそこに居るわよ。」
「えぇぇぇッッ!?!?。」
「…キミの相方、随分騒がしいね…。」
「もう慣れたさ…。」
一方、別の場所では…
「オイ空隙の!いきなり鎖で雁字搦めたぁどういうこったこりゃあ!?」
「少し小耳に挟んでな?どこぞのカラスの大将が私を合法ゴスロリータなどほざくから駆除でもするかと思ってな…。」
「それってこの間のオカ研での打ち上げで言ったヤツじゃねえかよ!何でオメェが知ってんだ!?」
「言ったろう小耳に挟んだと。さて言い残す事はあるか?」
ハルナから貰った情報が意外な所で使われました。
7月から始めた今作を見ていただいた皆様、ご愛読ありがとうございました。
来年も引き続き読んでくださると幸いです。