その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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お待たせしました。
今回の話は前編と後編に分けます。


姉弟

 

「……ハァ~。」

 

日が昇った平日の一日。梅雨の時期に入ったこの季節、外からの湿気が室内である教室の空気を蒸している所為か中に居る学生たちも自然と格好は薄着の姿になってるのがちらほら目に写ってきている。

 

若干ジメジメしてる教室の一室で悠は疲れた様子で机に突っ伏していた。

ジメジメした空気の所為か纏わりついてる空気がそこだけやけに重い様子。それの原因は言わずもがな昨日悠の家に住み着いた秋であった。

 

昨日の夕飯の騒動は様子見に来た間宮のお小言と言う形で幕を引いた(その際に秋も敵わぬ存在嫌と言う程思い知らされたとか)。

だが悠の機嫌がよろしくないのはそれだけでは無い。大体の原因は朝である。

悠の活動は殆どが夜と言うのも有って自然と夜行性の体質に近く朝が弱いのだ。今日もギリギリの時間まで寝ているつもりだったが早起きの体質なのか朝からハイテンションの秋に叩き起こされてストレスが最高潮になりまた騒動を起こしそうになったのが悠の機嫌が良くない原因であった。

 

「……………ハァァ~。」

 

「……ほとんど溜息しか吐いてないな。そんなに疲れているのか?」

 

「あぁ……まぁそんな所かな…精神的に……。」

 

ゼノヴィアが傍により声を掛けるて来るが弱々しく答えを返すだけで顔は突っ伏したままだった。

 

「…なぁ。もしも、もしもだぞ?…考えも物の見方も行動パターンも正反対のヤツと仲良くしろと言われてさ果たしてソイツと上手くやれるものなのかな?」

 

「自分とは正反対…か。」

 

今日は上手く頭が回らない所為か何時もなら口にしない事を言ってしまう悠。

自分に初めて相談事に近い話を持ちかけられたゼノヴィアは一瞬固まってしまうも直ぐに切り替えて悠の質問に答える。

 

「そうだな……あまり上手くは言えないがその辺りはあまり深く考えない方がいいんじゃないか?

実際私もそれに近い経験をしているからな…。」

 

「経験?」

 

「あぁ、私も前に居た所で一時期コンビを組んでいた事が有ってね。

ソイツとは最初お互いのやり方に色々食い違いが有ったから良くケンカもしていたが、少なくとも私達には共通点が有ったから共に過ごしていく内に何時の間にか一緒に居て何の違和感も無くなっていたんだ。」

 

ゼノヴィアは昔を懐かしむように語り出す。

頭に浮かぶのは以前教会で共に死地を駆け回ったパートナーの顔。自分が信じていた神の死を知り何も言わず路頭を彷徨い今の生活を手にしてから度々彼女の事を気に欠けていたが、勝手に姿を消し彼女も信じている神の死を知っている自分と会ってもよいのかどうかと時折思っている。

 

「ようは目的が一緒だったら時間が何とかしてくれるって事?」

 

「ん?…あぁそうだな。一つ付け加えるとしたら、言うべき事は言う事と偶に相手に合わせてやると言う事かな。」

 

「二つじゃないか。」

 

端から見れば仲良さ気に話してる男女二人。当の二人は意識してないにしても周りからは色々噂を立てられても可笑しくない光景である。

 

「…まぁなんにせよ参考にするよ。ありがと。」

 

「どういたしまして。

…コレは一つキミに貸しを作ったと言う事になるのかな?」

 

「君何時の間にそんなゲンキンな子になっちゃったのさ…。

まぁいいや、貸し一つって事で…。」

 

「そうか、それならなるべく近い内に返してもらうよ…。」

 

この光景の影で悠に声を掛けようとした古城を止めた浅葱と矢瀬の姿が見えない所で盛り上がっていたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一度言うわよシュウ。アンタ仮面ライダーの正体知ってるんでしょ!?言いなさい!!」

 

「待てって姉ちゃん!何度も言うけどあの人あの後オレから話聞くだけ聞いて素顔見せないで帰ったんだって!」

 

学園の裏校舎裏では秋に仮面ライダーの正体について強く聞き出しているハルナの二人の姿がそこにあった。

 

秋は姉に自身の正体はバラしても流石に家に置かせてもらってる悠に対して口を割る訳にもいかず、この状況に苦戦しながらも何とか悠の正体だけは言わなかった。

 

「…まぁいいわ。それは後にしてアンタどうして仮面ライダーなんかに?」

 

「後ってまだ信じてないのかよ……まぁそれについてはなんて言うの?成り行きと言うかなんと言うかさ…。」

 

悠の正体と同様に秋がこの世界に転生した目的である敵転生者の打倒。それが今この世界を巻き込む程の戦いになっているので余計な混乱を招かぬよう例え実の姉でも口に出さないよう悠から口止めされているのだ。

 

「…力が欲しかったんだよね。もう姉ちゃんの後ろに隠れないような力がさ…。」

 

「シュウ…。」

 

「姉ちゃんが事故に遭って死んだって聞いた時さ、オレすっげえショック受けた。もう姉ちゃんに頼らず一人で大丈夫ってとこ見せる前にいなくなっちまったんだからよ…。

でもこのままじゃウジウジしてちゃいけないって思って踏ん切り付けた時に今度はオレが死んじまってよ、そしたらカミサマに会って今に至るって訳……もう大丈夫だから、泣き虫で弱っちぃオレはもう卒業した。これからはオレが守るからさ、姉ちゃんも、この世界も…。」

 

「………。」

 

「……まっ!そういう訳で何にも心配無用!それよりそろそろチャイム鳴るからまた後でね!」

 

「あ、待ちなさい!まだ重要な事聞いて…あぁもう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ。」

 

ハルナを無理矢理振り切った秋は自身の教室に向かいながら自分のこれまでを思い返していた。

死んだ姉に笑われないよう強く生きる事を決意した矢先、目の前の子どもがトラックに轢かれそうなのを助けた代償に自身が死んでしまった先にあったのは神と名乗る人物からの依頼だった。

 

とある世界では転生者同士の激しい戦いが繰り広げられ神と名乗る者は自分にその戦いを手伝って欲しいと頼んで来たがそのような一件にすぐ答えを出せる程考え無では無かった。

だがその神から自身の姉がその世界に転生しており尚且つその転生者同士の戦いに少なからず関与していると聞いた時はすぐさま決意を固めた。

 

「まぁ何はともあれ強くなんなきゃな、世界の為にも、姉ちゃんの為にも…。」

 

 

『強くなる?フン、笑わせる。貴様のようなヒヨっ子など早死にするのが目に見えてるわ。』

 

「…ハア、またお小言かよ。て言うか外じゃなるべく話しかけないでって言ったよな?キマイラ。」

 

『そんなモノ知らん。貴様如きがこの我に物申すなど千年早い。』

 

秋の頭の中でしか聞けない声、この声の主こそ秋が変身するビーストの魔力源であるファントム、キマイラ。

 

『それに今回口出しをしたのは昨日の戦闘を見て確信を得たから故に物申したまでよ。』

 

「確信?昨日は難無く倒したじゃねえか?」

 

『アレがか?昨日止めを刺す際六が出たにも関わらずあの程度のを仕留めきれなかったのがか?』

 

「ぐっ……。」

 

『これが動かぬ証拠よ、現にお前は昨日の戦いで我の力を半分も引き出せておれん。あの機械人形の時もそうだ、お主の動きには無駄が多すぎる。』

 

秋の欠点を次々と指摘してくるキマイラ。

コレに関しては秋は上手く言い返せなかった。何せ受けるべき訓練を中途半端に抜けてしまい悠にも散々言われてしまったのだから。

 

『分かったか。今の貴様が何を言っても未熟者だと言う事が。』

 

「……あぁそうだなぁ。こうもボロクソ言われちゃ認めざるえねぇよ…。

………だったら……。」

 

そう言って秋は懐から携帯を取り出しある人物にメールを送る。

 

「自分が今どれだけなのか少し付き合ってもらうよ、先輩。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でまたこんな所に呼び出したんだ?」

 

「悪いね先輩。ちょっとお願いが有ってさ。」

 

放課後、河川敷の高架下で二人の男が立っていた。

 

一人は呼び出しを受けた悠、そしてもう一人は悠を呼び出した張本人である秋。

 

「お願い?」

 

「そ、先輩にしか頼めないお願いでね……来い!」

 

秋が手を上に翳すとそこに向かって飛来してくる青い影。

手に収まった青いクワガタ、[ガタックゼクター]を手に掴むと腰のライダーベルトを露わにする。

 

「変身!」

 

<< HENSHIN >>

 

ゼクターを装填すると腰のベルトから六角形のアーマーが展開され鎧となって形造って行き、秋の姿は重装甲に包まれ両肩には無限弾装を積んだガタックバルカンを積んだ戦士、仮面ライダーガタック・マスクドフォームへ姿を変えた。

 

「…どういうつもりだ?」

 

「見ての通りだよ、自分の力がどんなものか試したくなってね。」

 

「だから俺とやり合うってか…。」

 

「これしか思いつかなくてね。それに先輩もオレの強さがどんなものか知っておく必要有るんじゃない?」

 

「…確かに、使えるか使えないか見極めるのにもこれが一番手っ取り早いな……変身。」

 

<< HENSHIN >>

 

ガタックに釣られて悠もダークカブトへ変身。

 

両者暫く睨み合い先に動いたのは

 

 

 

「…フッ!」

 

「おわッ!?」

 

瞬時にカブトクナイガンを構え銃撃を繰り出したダークカブト。

ギリギリのタイミングでローリング回避したガタックは体勢を立て直し肩のガタックバルカンをダークカブトへ標準を合わせる。

 

「喰らえッ!」

 

「チィ!」

 

毎分5000発を発射できるガタックの遠距離砲撃、余りの間髪入れず放たれる連射と余りの高火力にダークカブトは回避し続けるしかなかった。

 

「クッソ、相変わらず厄介だなあのトンデモバルカンは…!」

 

「どうしたのさ!?このまま逃げるしか策が無いの!?」

 

「ハッ、言わせておけば……戦いはモノの性能だけじゃねぇぞ!」

 

走りながらダークカブトはクナイガンを連射したが狙いはガタックでは無くその周辺の地面へ。

ガタックは最初狙いを外しているのだと思って気に留めなかったが次第に視界が爆煙の所為で悪くなっていることでようやくダークカブトの狙いに気付いた。

 

(ヤバ、視界奪われた!)

 

気づいた時には既に遅く、ガタックの周辺はダークカブトの張った煙幕によって包まれてしまい狙い定められなくなった。

 

(何処だ?何処から来る?)

 

ダークカブトの狙いはこの煙幕を利用して攻めて来ると思い、常に死角を気にして警戒するガタック。

しかし、その考えは覆される。

 

「オラァッ!」

 

「うわァ!(ウッソ!真正面!?)」

 

不意を突いて死角から来るとばかり思ってた所為でガタックの前から現れたダークカブトに反応するのが間に合わず顔面に腰の入った拳をモロに喰らい倒れ込む。

 

「イテテ…。」

 

「大方煙幕に紛れてお前の死角から俺が攻めて来ると思ってたんだろ?

相手から見てどういう手で来るか予測しながら次の手を打つ、それもまた戦いの一つだ。」

 

「ご指導どうも。ゴリ押しがダメならこれで行くしかないかぁ。」

 

ガタックは立ち上がりゼクターのゼクターホーンを少し展開させるとベルトから電気が走りアーマーが浮き出す。

 

「……フン。」

 

ダークカブトも同様ゼクターホーンを少し展開させアーマーを浮き上がらせ

 

「キャストオフ!」

 

<< CAST OFF >>

 

「キャスト、オフ。」

 

<< CAST OFF >>

 

両者のアーマーが同時に弾け飛び、飛び散ったアーマーが衝突して火花を散らしてるなか両者の真の姿を露わに出す。

 

<< CHANGE BEETLE >>

 

一人は黒い太陽神、仮面ライダーダークカブト

 

<< CHANGE STAG BEETLE >>

 

そしてもう一人は青いボディに両サイドのガタックホーンを展開し両肩のガタックバルカンをパージされた近接武器[ガタックダブルカリバー]を装着した戦士

 

戦いの神[仮面ライダーガタック]

 

 

お互いライダーフォームへと姿を変えた直後にダークカブトとガタックの行動はどちらも一緒だった。

 

 

 

 

 

 

 

「「クロックアップ!」」

 

<< CLOCK UP >>

 

ベルトのスラップスイッチを押しダークカブトはクナイガンのクナイモードをガタックは両肩のガタックダブルカリバーを手に高速の世界へ足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁもう!シュウのヤツ後で話聞くって言ったのに勝手にどっか行っちゃって!」

 

河川敷近くでハルナは秋を捜していた。

放課後になって秋のクラスに足を運んだが既に帰ったと聞いて捜そうとしたが連絡先も聞いておらずまた何処に住んでいるかも聞いておらなかったので仮面ライダーの正体の先に聞いておかなかった事を後悔しながら走っていた。

 

ハルナとしては秋が何を黙って戦っているのかそれが心配だった。

秋はあの時自身と世界を守ると言っていた。もしかしたら仮面ライダーとは何の関係も無く戦っていたのではなくこの世界を守るために闘ってたのではないか?

もしこれが正しいなら尚の事弟に危ない橋を渡らせるわけにはいかない。放課後になったら隠してる事全部喋らせて持っているであろうベルトを取り上げるつもりでいた。

 

「とにかく急いで見つけなきゃ、アイツが…シュウが手遅れになる前に!…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< CLOCK OVER >>

 

「セアッ!」

 

「トウリャ!」

 

クロックアップの時間が切れ二人の姿が見える様になってもダークカブトとガタックの剣戟の音は鳴りやまなかった。

ガタックの二刀流の剣舞をダークカブトがいなしカウンターで斬り付けるもガタックに防がれる。

 

元々はセンスが有ったのだろう、今のガタックの連撃にカウンター主体のダークカブトですら結構手こずっている。これでちゃんと訓練を受けていればかなりの実力者になっていただろうとダークカブトはいなしながら考えていた。

 

「シッ!」

 

「ウラァッ!」

 

とかそんな考え事をしながらも剣戟の攻防は勢いを増して続いていき、その光景は端から見れば誰もつけ入る隙が無く拮抗状態が続いた。

 

「あれは……シュウ!アンタなの!?」

 

「!?、姉ちゃん!?」

 

「余所見すんな!」

 

「ぐがッ!」

 

突如現れたハルナに反応してしまいクナイガンの攻撃を受けるガタック。

ガタックが自分に反応した事からハルナはガタックが秋だと確信し傍に駆け寄る。

 

「シュウ!、アンタ何やってんの!?」

 

「イツツ、悪ィ姉ちゃん。ちょっと退いてくんねぇ?今ご覧の通りバトってる最中だからさ。」

 

「退くわけないでしょ!聞いてシュウ、アンタが何で戦ってるか知らないけど今すぐ辞めなさい!

アンタに…アンタに戦いなんて…私は…。」

 

ハルナが悲痛な表情を露わにガタックに強く言葉を掛ける。

久しぶりに会った弟が今のように戦って傷つき、自分の知らない所で死んだ等と言う事がハルナにとって自身が今一番恐れてる事なのだとようやく気付いたのだ。

 

「シュウ、お願いだからちゃんと話して。アンタが何で戦ってるのか、どうしてもアンタじゃダメなのかどうかちゃんと良く考えてよ!」

 

「…姉ちゃん…。」

 

ガタックが俯くハルナに声を掛けようにもなんて声を掛けたら良いか分からない。

自分は姉を守るためにこの世界にやって来た。そして仮面ライダーになった。

だけど姉は自分が仮面ライダーであることに納得しておらずこうして悲しませている。

 

自分はどう答えたらいい?自分は何のために戦えばいい?

 

 

 

守る筈の人間から否定されて自分はこれからどうすれば良い?

 

 

 

 

ガタックは俯く姉の前で立ち竦むしかなかった。そんなガタックをダークカブトは何も口にしない。

 

 

 

「姉ちゃん……オレ…オレは…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガァァァァァンンッッッ!!!

 

 

「グァァッ!」

 

「うわァッ!」

 

「きゃあッ!」

 

突如三人を襲う爆発。

 

その場を空気を壊すかのように突如三人に降り掛かる無数の光弾。

光弾を辺り一面に放たれ完全に不意を突かれてしまった三人は防ぐ暇も無く喰らってしまい、ダークカブトとガタックは余りの威力に変身が解除され吹き飛ばされてしまった。

 

「く…そったれッ。何処のどいつだいきなりぶっ放してきたのは!」

 

「!、姉ちゃん!大丈夫か!?姉ちゃん!」

 

「え、えぇ大丈夫よ。なんとか…!、…灰、原君?」

 

爆煙が少しずつ晴れていき、ハルナは辺りを見渡すとそこに居た人物は弟の秋とこの間知り合ったばかりの悠の姿を目にした。

 

「え?…どういう事…もしかして、灰原君が?…。」

 

ハルナは必死で頭の中で整理し始める。さっきまでこの場にいたのは自分と秋、そしてこれまた見た事も無い黒い仮面ライダー。先程の爆発で秋の変身が解けたなら黒い仮面ライダーもまた変身が解除されている。それなら今ハルナの前にいる悠は仮面ライダーと言う事になってしまう。

 

「ヒャッハーッ!!」

 

「がはッ!」

 

「っ!、シュウ!」

 

ハルナが悠の姿を見て唖然としてる間にハルナの傍にいた秋を何者かに蹴り飛ばされる。ハルナの傍に降り立ったのは爬虫類の頭部のような両肩をした緑色のファントム、グレムリンがそこに現れた。

 

「ファントムか、…オイしっかりしろ。」

 

「あぁなんとか、それよりも姉ちゃんが…。」

 

痛みが走る体に鞭打って蹴り飛ばされた秋の元に駆けつける悠。見た所秋は無事のようだがグレムリンの近くに居るハルナが心配の様だった。

 

「おんやぁ?結構本気でやったのに意外と元気ですね~。加減間違えちゃった?」

 

「随分と流暢に喋るファントムだな。…一体何が目的で割り込んで来た?魔力集めか。」

 

「ブッブ~、ざんねぇん!今回は実験で来たのよ、実験。」

 

「実験だと?…」

 

「イエ~ス!どうせなら見てって頂戴よお二人さん。これから結構レアなモンが間近に見れるぜぇ。」

 

そう言ってグレムリンは懐から小石台の赤黒い魔宝石を取り出し、近くに居るハルナの方へ向き足で逃げない様に抑え付ける。

 

「グッ!…。」

 

「オイ!テメエ姉ちゃんになにする気だ!?」

 

「言ったでしょう?実験だって、ホレ。」

 

抑え付けたハルナに目掛けて魔宝石を放ると、石は水面に入っていくかのように波紋を出しながらハルナの中に入っていき、石がハルナに入ったのを見て悠達の方へ目掛けてハルナを蹴り出した。

 

「姉ちゃん!」

 

悠と秋がハルナに駆けつけ抱き上げるが強く蹴られた所為で顔が苦痛で歪んでるがそれ以外の変わった様子は見られなかった。

 

「姉ちゃん、しっかりしろ!姉ちゃん!」

 

「ゲホッ、…うるさいわよ、そんな大声出さなくても聞こえてるって…。」

 

「オイ、グレムリン。一体コイツに何を入れた!?」

 

「アッヒャヒャ。それならもうすぐ分かりますよォ♪」

 

「何が…。」

 

悠がグレムリンに再度問いかけたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──パキン──

 

「ッ!?あ、アぁぁアアァあッッッ!」

 

「姉ちゃん!」

 

「これは…。」

 

突如ハルナの体に起きた異常。ハルナの体からヒビが入ったような音がしたと同時に石が入ったとされる胸を中心に紫の亀裂が走り始め苦しみだした。

 

「始まった始まったぁ!さぁ~て、どんなのが生まれて来るかなぁ?」

 

「オイどういう事だ!?さっきの石は一体何なんだ!?」

 

「う~んどうしよっかなぁ?、教えちゃおっかなぁ?……まぁいいか教えるんで。

さっきの石は、転生悪魔の中にある…悪魔の駒だっけ?に反応するように出来ていて、それの構造を悪魔からファントムに書き換えるんでしたっけ?

……まァようは簡単に言っちゃうとそこの女悪魔ちゃんはあと少しでオレ等とおんなじ化け物になっちゃうと言う訳でーす!」

 

「まさか魔力集めはその為の…。」

 

「さぁ?オレっちは只適当にクソ悪魔で実験してくれって金ピカの旦那に言われただけで詳しい事はぜぇ~んぜんわっかりませぇん!」

 

「野郎…。」

 

グレムリンの態度に苛立ちを覚えるがそんな事をしてる間にもハルナのファントム化は進んで行く一方だった。

 

悠はこの状況を何とかすべく対抗策を練り出す。

ファントム化の原因は先程の魔宝石と悪魔の駒と言われるモノが反応してハルナの体に異常をきたしている。それならその現況を取り除けば…。

 

「オイ、オイ秋!いい加減しっかりしろ!」

 

「先輩、姉ちゃんが。姉ちゃんが…。」

 

声を掛け顔を上げさせると、先程までとは違い意気消沈した顔で悠に顔を向けていた。

 

「良いかよく聞け!まだコイツが助かる手は有る!」

 

「え?」

 

「ようは今のコイツの状態は本来のファントムが生み出されるのと一緒だ。中にある石と悪魔の駒って言うのをどうにかすればまだ間に合う。」

 

「でも…それをどうやって…。」

 

「まだ分かんないのかよ!俺に無くて、お前には有るだろ!コイツを助けるための手が!」

 

「………あぁッ!アンダーワールド!」

 

「遅ぇよ気付くのが。」

 

秋がおもむろに取り出したのは心の世界アンダーワールドに入り込むための指輪、エンゲージリング。

先程までの意気消沈した顔から一気にいつもの調子の戻った秋はそっとハルナを横にして立ち上がる。

 

「ちょっとちょっとォ!何か企んでるみたいですけどオレっちの前で安々出来ると思わんで欲しいでやんすがねぇ!?」

 

「…アイツの相手は俺がやる。お前は早くアンダーワールドに…。」

 

「…分かった。気を付けてよ先輩。」

 

「そりゃコッチの台詞だ…。」

 

それぞれの分担を決め悠はグレムリンの相手を、秋はハルナを救うべくアンダーワールドへ。

 

「待っててくれ姉ちゃん。今助けるからな。」

 

<< DRIVER ON! >>

 

「変~身ッ!」

 

<< SET OPEN! >>

 

<< L!・I!・O!・N! LION! >>

 

秋はビーストに変身しハルナの手に先程取り出したエンゲージリングを嵌めベルトのサイドスロットに嵌める。

 

<< ENGAGE GO! >>

 

ハルナの体からビーストの魔方陣が現れ魔方陣に向かって飛び込んでくビースト。

その光景を悠はグレムリンを前に後ろ目に見ていた。

 

(急げよ秋。似ているとは言え時間が有るとは到底言えないぞ…。)

 

「ありゃ?なんか飛び込んだと思ったら消えちゃいましたけど、アレ?」

 

「アレに関しては気にすんな。それよりもお前の相手は俺だ。」

 

悠はゲネシスコアを取り付けた戦極ドライバーを着ける。

 

「変身。」

 

<< ブラッドオレンジ! >>

 

<< レモンエナジー! >>

 

<< MIX! ジンバーレモン!ハハァ! >>

 

「ん?…アアアアッッ!?!?!?、アンタそりゃあ!」

 

「あ?何そんなにびっくりしてやがる。」

 

此方の姿を見て指差しながら驚いてる様子のグレムリンに首を傾げる武神鎧武。

 

「まっさかアンタがだったとは……ヤッベェ、チョー嬉しい。正に運命的な再会ですなこりゃ。」

 

「さっきから何言ってんだお前は…。」

 

「えぇ!?もしかして忘れちゃったのォ!?酷いなァ~お兄さん。あんだけ激しく殺りあったオレッちを忘れるなんて……あ、この姿だから分かんないのか…。」

 

そう言うとグレムリンの姿が緑のオーラと共に変わる。

その姿を見て武神鎧武は目を見開いた。何故なら姿を変えたグレムリンの姿に心覚えがあったからだ。

 

「お前……あの時の神父か。」

 

「ピンポーン!お久ぶりですねぇお兄さん♪」

 

武神鎧武の前に立っている男、それは以前二度ほど戦い人間で有った筈のフリードであった。

 

「ファントムにされても自我を保っているのか?」

 

「みたいですね~。コカビエルの旦那が消えちまった後途方に暮れてたらなんやかんやでこんな体にされるわで色々有りましたけど案外いいもんですぜこの力、クソ悪魔や色んな人外相手にメッタメタにしてやる快感が堪らないのなんのって!

……でもオレとしちゃあ…。」

 

歪な笑顔で武神鎧武を見ながら再びグレムリンの姿へ変える。

 

「アンタと殺し合ったあの快感に比べたら全然なんですよォ!だからお兄さん、オレッちをこんなんにした責任とって頂戴なぁッ!!」

 

グレムリンはハサミのような双剣[ラプチャー]を両手に武神鎧武に特攻を仕掛ける。

武神鎧武はソニックアローを手にラプチャーを受け止めた。

 

「さぁやろうぜィ。あの時みてぇなサイッコーな殺し合いをよォ!!」

 

「…今まで色んな奴を見て来たが…お前ほどイカれた奴は初めてだよ!」

 

鍔迫り合いの状態からお互い距離を取り、武神鎧武はソニックアローの弦を引き、グレムリンはラプチャーの刃にエネルギーを溜め。

 

「シッ!」

 

「シャラァッ!」

 

光矢と斬撃がぶつかり合って両者の間に爆発が起こるも二人はそのまま相手に向かって駆けて行き。

 

「オラァ!」

 

「チョイサーッ!」

 

自らの武器を手に振り降ろしていった。

 

 





次回お楽しみに。

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