大変長らくお待たせしました!
遂に敵の転生者の情報を掴んだ悠は潜伏地である親不孝通りに向かうが、待ち伏せていたかの様にロイミュード三体の襲撃に遭う。
ダークカブトへ変身しロイミュードを撃破した悠だがこれから戦うであろう転生者の一人、ドクターは黒いベルトを取り出し不吉な笑みを浮かべるのだった。
(此処か。)
ロイミュード三体を撃破したダークカブトは転生者の潜伏地であろう廃墟の中にエクステンダーを停め、中を散策していた。
中の様子は他の廃墟同様に支柱が立ってるだけの内装であり一階建てと言うのもあって全体図を見た限り何もない。ならば残る可能性はたった一つ。
「…地下か。」
そう呟くと、クナイガンを取り出し辺りの床を狙って連射する。
クナイガンの銃弾によって床のコンクリートが破片となって舞い散るなかある一点が破片では無く火花が散っているのをダークカブトは見つけた。
クナイガンの銃弾を受けて尚火花が散ると言う事は相当な硬さの金属が有ると言う事、ましてやこんな誰も使ってない廃墟に気付かれない様にカモフラージュして
「ビンゴ。」
クナイガンを電子エネルギーから高エネルギーイオンビームへと変換。銃弾の威力を増した[アバランチシュート]を連射する。
二撃程その硬さに阻まれたが段々と表面の金属部が見えるようになり、やがて人一人が入れるような穴が出来た時に下に続く階段がそこにはあった。
下に降りる階段を静かに降りて行くダークカブト。やがて下に辿り着くと上の廃墟とは違い全て金属の壁に囲まれて明かりは足元を照らす光だけというこの空間は色んな意味で不気味な雰囲気が漂っていた。
「…まるでショッカーのアジトだな、これは…。」
軽口を言いながら辺りを警戒して進んで行く。
自身から出る足音だけが響き、罠や待ち伏せが有ると踏んでいたが先程偵察に行かせたバットバイラルコアからは
何も報告が無い。だが仮にも今居る場所は敵の潜伏地。その事実がダークカブトの神経を極限の域まで達していた。
「…ん?、何か見つけたか?」
偵察に行かせたバットバイラルコアが鳴きながら此方に戻って来た様子から、この先に何かあることを伝えているようだ。
バットバイラルコアの案内で通路を進んで行くと行き着いた先は機材などが数多く置かれている部屋だった。
そこは悠のラボと同じような機材や工具等が置いてあることからこの部屋は研究室であることが分かり、ダークカブトはふと機材の前に置いてあったファイルのような物を見つけファイルの中身をページをめくって目を通してみる。
「!」
ファイルの中身は悠の知っている内容の研究内容であった。
コア・ドライビアの製作、大量生産のプラン
バイラルコアの設計図
ロイミュードの強化プラン
ファイルの中身はどれもロイミュードに関連してる内容のモノばかり、これには此処が一体どのような場所であるか容易に答えを出すことが出来る。
「ロイミュードは此処から造りだされてるのか…。」
ファイルから読み取れる情報を元に此処から敵の戦力が出されてる事に気付いたダークカブト。
更にファイルを読み進めるとそこに書かれてるモノに目を見開く。
「このプログラム……まさか奴等こんなモノまで使って…。」
【へえ、それだけを見て大方分かったのか…中々見どころが有るじゃないか。】
「!」
突如聞こえた声にファイルを手放しクナイガンを構えるダークカブト。
【そこまで警戒せずともボクは別の場所からキミに話しかけてるだけだよ。
その部屋は只の作業室だから罠も何も仕掛けては無いから安心したまえ。】
「…一体何が目的でロイミュードを造ってる。おまけにあんなモノまで…。」
【うーん。別に言っても構わないが、正直言っても意味は無いとボクは思うよ?だって…。】
「此処で俺は死ぬ。と、言いたいのか?」
【お決まりのセリフだけどそうなっちゃうよねぇ。ボクも正直柄じゃ無いんだよこういうのはさ…。
まあ取りあえずこの先に暴れても大丈夫な広いスペースが有るからボクに会いたいなら来ればいいさ、待っているから…。】
それだけ言って声は途絶えた。
此処で立ち止まっても仕方ない。ダークカブトは声の主の言う通り先に進む為部屋から出ようとしたが入り口の辺りで立ち止まる。
そして振り返り際にクナイガンで機材や資料に狙いを定め銃撃し、中に残されてるデータを跡形も無く消去したのだ。
(あんな計画、態々残してやる必要などは無いしな…。)
破壊された状態でスパークを放つ機材や燃える資料を後にダークカブトは先へ進んでった。
行き着いた先は言ってた通り確かに広く、ドーム型に造られたこの場は一種のコロシアムの様にも見えた。
最低限の明かりで照らされてるなか中央部にポツンと立ってる白衣を着た男の姿が一人。灰色の頭髪と言う特徴的な容姿からダークカブトは目の前にいる男が誰だがすぐに分かった。
一歩一歩近ずいてくなか男の様子は変わらず口角を上げながら此方を見ている。
お互いの距離が5メートルと言った所で立ち止まり、ダークカブトが問いかける様に口を開く。
「番堂 天治だな?」
「ふぅむ、やっぱり名前は知られてるか。 如何にも。ボクは番堂 天治、組織じゃドクターと呼ばれて主にデスクワークを担当してるよ。」
「それとロイミュード製造もだろ?」
「まぁね、にしてもよくあのファイルに書かれてる内容が分かったねえ。
あのファイルに書いてあるヤツ、ボク以外の人間が見ても分からない内容だったのに。」
「生憎俺も物作りが趣味でね。書いてあったのはまだ試作段階のプログラムだったがアレがどういったモノかは直ぐに想像出来たよ。」
「そうか、いや嬉しいねえやっと話が分かる様な人物に会えたよ。
組織の中じゃあボクの科学者の話に付いて行けるような奴は居ないし、大臣は大臣で魔法とか言うファンタジーなモノにお熱だし。
出来ればキミと小一時間ぐらい先程のファイルに中身について語り合いたいものだね…。」
「そうかい。でも生憎それは無理だ。
…アンタを此処で消させてもらう…。」
「……ふむ、ならば。」
闘志をむき出しにするダークカブトにドクターは未だ変わった様子を見せない。
そして懐に手を伸ばし、取り出したのは黒いベルト。
「!、…それは。」
ドクターの取り出したベルト。それは悠の使った事が有るドライブドライバーを黒くしたものをダークカブトを余所に自身装着する。
「フフ……変身。」
イグニッションキーを回しドクターの姿が変わって行く。
その姿は悠の変身した事が有るドライブ、だが
「金色の…ドライブ…。」
「フフ、そう。これがボクのもう一つの姿。ゴルドドライブだ。」
ゴルドドライブを前にダークカブトはその依然として変わらない余裕のゴルドドライブの前に警戒するが、意を決してゴルドドライブへ向かってゆっくりと間合いを詰めていく。
対してゴルドドライブは未だ笑いながら立ってるだけ、やがて間合いが2メートルを切った所でダークカブトが仕掛ける。
「…フッ!」
「フン。」
右のジャブを頭部目掛けて放つが頭を下げられ回避。
追撃にボディ目掛けて左フックを出そうも右腕でガードされバックステップで距離を取られる。
「ハハハ。」
「オラッ!」
今度は右足の蹴りを繰り出すも、軽々と受け止められカウンターの右ストレートを喰らってしまう。
これを皮切りに右の裏拳、左のアッパーカット等ゴルドドライブからの猛攻にガードするしかなく防戦一歩になるが左のストレートを受け止め一瞬動きが止まったのを見て前蹴りを当て距離を取る。
「おうっとっと。」
「(これでどうだ!)セリャッ!」
間合いを詰めたダークカブトは右の蹴りを放とうとした所で左のジャブを顎に向けて放つフェイントを仕掛けたが、ゴルドドライブは蹴りのフェイントに全く反応する素振りも見せずジャブの一撃を掌で受け止めた。
「何っ!?」
「フフフ、見え見えだよ。フンッ!」
左手を掴んだままで右足から来る蹴りをモロに受けたダークカブト。
下がるダークカブトを前に笑うゴルドドライブを見てダークカブトは違和感を感じた。
(…何なんだ、この変な感じ。)
再度ゴルドドライブへ接近し、フェイントや反撃する隙を与えない程の連撃を放つも笑いながら受け流したり躱したりするゴルドドライブ。
受け流すにしても躱すにしても何処か腑に落ちない違和感を感じる。攻めながら思考を働かせ探っていくダークカブトだが先程ゴルドドライブが言ってたある言葉が頭の中に過った。
ーーー見え見えだよーーー
(まさか…俺の動きを……。)
「シッ!」
「ッ!?」
此方の一瞬の隙を突かれ反撃を許してしまったダークカブトはゴルドドライブの一撃を喰らってしまう。
下がるダークカブトは自分の考えを確かめる為ゴルドドライブに話しかける。
「…デスクワークがメインのくせに随分お強い事で…。」
「そうかい?いやはや、お褒めに扱り光栄だよ。」
「……最初に見た時、アンタはソーサラーやマルスと違ってそこまで強いってイメージが全然なかった。
ゴルドドライブになってる時のアンタもそこまで強いってイメージが全然無い。むしろ強くない事に警戒心を抱いてた。」
「ふぅむ。一流の武道家が構えを見ただけで相手の実力を見極めるアレか…。」
「でもそれに反してコッチの攻撃はまともに決まらない。確実に騙したと思ってたフェイントもだ…。
それで一つ気付いた。アンタ、さっき言ってたよな。見え見えだって。」
「………。」
「アンタは俺の戦闘データを持ってる。しかもパターンや何処を狙いに行くかのかなり細かい部分まで…。
これは仮説だが、こうじゃなきゃアンタがそこまで俺の技を見切ってるのが説明つかないんだよ。」
「………。」
一時の沈黙が流れる。
ダークカブトの推測にゴルドドライブは静かになり、その場に緊迫の間が現れた。
そしてそれを破ったのは
「……ク…ククク…ハハハハ!」
「………。」
「ハハハ!正解だよ!確かにキミの言う通りボクは組織の中じゃ腕っぷしは一番下さ。」
ゴルドドライブは何の反論も無くダークカブトの推測を肯定した。
「キミの言う通り、このベルトにはボクが集めたキミの戦闘データが入ってる。ゆえにキミが繰り出すパンチやキックも即座にベルトがデータを元に対応策をボクに指示してくれるようになっているんだ。
分かるかい?このゴルドドライブは対仮面ライダー用に強化されたキミの天敵だと言う事に!」
「だが一つ腑に落ちないな。それだけのデータを取るにしてもそこまで詳細なデータが集まるとは到底思えないな。監視してるにしても俺の素顔までは知らないのだろう?」
「そうでも無いさ、実際キミのデータは簡単に取れたよ。
…ここまで言えば、後は容易に想像つくだろう?」
「……!、まさか街で暴れてたロイミュードは…。」
「正解!そうあれはキミのデータを取る為にやったんだ。
流石に無関係な人間が襲われてる所をキミは黙って見てられないだろう?それを利用してキミが戦ったロイミュードから自動的にデータが送られこのベルトに収集されると言う訳さ。
お蔭で色々なことが分かったよ。今変身してるライダーや、一時ボクと同じドライブで戦った事もね。」
「…まんまと俺は策に嵌ってたって訳か…。」
「そう言う事、お蔭でこのゴルドドライブと言うキミの天敵が出来たと言う訳さ。
ゴルドドライブを前にキミの勝つ確率は限りなくゼロさ。」
「それはどうかな。」
<< CLOCK・UP >>
ゴルドドライブを前にこちらの動きが全て読まれるなら読まれない様にすれば良い。
ダークカブトはクロックアップを発動してゴルドドライブの前から姿を消したが、対するゴルドドライブは何処からかスイッチのようなモノを取り出す。
「クロックアップか、それについては既に対策済みだよ。」
スイッチを押すとドーム状の広場の壁から緑色のオーラが波紋状に広場を包み込むと、先程クロックアップで見えなくなっていたダークカブトの姿が見える様になりその様子は体にスパークが走りながら片膝を着いていた。
「グッ!?グァァアァァァァッ!!!」
「ハハハ、此処まで来るのに罠も何もなかったから気が緩んじゃったかな?この広場にはキミのクロックアップを封じる仕掛けが施してあるんだよ。」
「……クロックダウンシステムか!…。」
「そう、ボクはロイミュード以外にもこう言った知識を持っているんだよ。
さて頼み綱のクロックアップも使えない。そろそろ降参でもするかい?」
「んな訳…ねえだろ!」
ダークカブトはクナイガンを取り出しゴルドドライブへ向けるが
「おっと。」
ゴルドドライブはベルトのイグニッションキーを捻ると胸の[ゴルドコンバージョン]から放たれる金色の光にダークカブトが持ってたクナイガンが分解されゴルドドライブの手に渡ってしまう。
「!、武器を…。」
「フフ、貰ったよ。」
奪ったクナイガンをダークカブトへ向け容赦なく銃撃を放つゴルドドライブに成す術無く喰らってしまうダークカブト。
ゴルドドライブは連射の後、腕に付いてるシフトブレスのスイッチを押しアックスモードに持ち替えたクナイガンの刃にエネルギーを溜め、ダークカブトへ向けて跳び上がりクナイガンを思い切り振り下ろした。
「ガハッ!」
「フンッ!」
大ダメージを負ったダークカブトに追い打ちを掛ける様に今度は横薙ぎの一撃を喰らわせる。
モロに喰らったダークカブトは変身が解かれ、吹き飛ばされる形で倒れる。
「ふぅ…ん?おやおや随分頑張るんだねえ、まだ立ち上がろうとするとは。」
クナイガンを放り捨てたゴルドドライブは決着が着いたかの様に息を吐くが、未だ目に闘志が宿り今にも倒れそうな悠が懸命に立ち上がる姿を目にする。
「今更立ち上がった所で無駄な足掻きだ。キミがどんなライダーになろうとボクはキミの全てを知り尽くしている。」
「……ホントにそうかな…。」
「…何?」
悠の言葉に反応するゴルドドライブを余所に悠は取り出したブレイクガンナーのディストラクションノズルを押す。
ゴルドドライブはその光景に鼻で笑った。
「ハッ、何かと思えばジャンクパーツの寄せ集めか…今更そんなのになった所で…。」
「それはこれを見てから、評価を改めな。」
<< BREKE UP >>
嘲笑うゴルドドライブを余所に悠は魔進チェイサーへ姿を変える。
暫くしてチェイサーはブレイクガンナーにエネルギーを溜め込み、紫の発光が段々と強くなる光景をゴルドドライブは警戒し始める。
(なんだアレは?あんなモノデータには無いぞ…。)
「オォォォォッ…ウラァッ!!」
ブレイクガンナーを地面に打ち込むと、打ち込まれた場所を中心に重加速が発生する。だが従来の重加速とは違い辺りは紫のオーラにに包まれ、この重加速を前にゴルドドライブの動きは静止してた。
「なんだこれは!?ゴルドドライブになっているのに、重加速に掛かっているだと!?」
チェイサーの奥の手である超重加速はこの世界に来て初めて使った手であり、超重加速のデータは流石に無かった所為か此処で初めて慌てる様子を見せた。
慌てるゴルドドライブを前にチェイサーは一撃で終わらせるため自身の持つ最大の攻撃を出す為、バイラルコア三台を手に持った。
「砕け、散れ!」
<< TUNE・CHASER・SPIDER >>
<< TUNE・CHASER・COBRA >>
<< TUNE・CHASER・BAT >>
三台のバイラルコアをブレイクガンナーに装填し、ファングスパイディー、テイルウィップ、ウイングスナイパーがチェイサーの右腕に付けられ、背中のサーキュラーダイナミクスから三つの武装にエネルギーが送られる。
これがチェイサーの持つ最大火力の必殺技。
「トリプルチューン!」
紫の光線が真っ直ぐ静止しているゴルドドライブへ放たれる。
トリプルチューンを前に超重加速によって静止してるゴルドドライブは抵抗しようにも出来ない状態にあり只目の前の光線を受け止めるしか道は無かった。
「う、うわあぁぁぁぁッ!!!」
(これで…。)
「なんてね。」
突如ゴルドドライブから金色の光が辺り一帯を包んでいた超重加速を打ち消し、自身に向かって来るチェイサーの攻撃を金色のエネルギーで壁を作り最大火力のチェイサーの攻撃を難無く防いだ。
「なん…だと……。」
「ムゥゥンッ…ハアッ!!!」
お返しと言わんばかりにゴルドドライブは自身の周りにエネルギーで出来た特大の光球を三つほど作り出し、それらを全てチェイサーへ向けて放った。
回避しようとするチェイサーだが光球の破壊力はかなりの威力を持っており離れた地点で着弾しても爆発の威力だけでも十分な威力にチェイサーはダメージを負ってしまう。
「ガッ!」
思わず倒れかけたが何とか四つん這いの状態で耐えるなかゴルドドライブは此方に向かって一歩一歩近ずいてく。
「いや~あれは驚いたよ。まさか重加速を強化させたヤツでボクの動きを止めるとは。
でも残念だったね、あの程度ならすぐに解析出来て打ち消すのは難しくない。例えそれがコア・ドライビアによるモノだったら尚更ね。」
ゴルドドライブはチェイサーの目の前まで辿り着き、チェイサーの頭部を掴んで顔を無理矢理上げさせる。
「さて、キミのとっておきの策は不発に終わった。…ここからはボクの番って事だねぇッ!」
「グァッ!…。」
掴み上げられた顔に膝蹴りを喰らったチェイサーは後ろに倒れ、かなりの威力で蹴られたのか顔のマスクは左目部分が割れてしまい中の悠の顔から血が流れてる事が分かる程に
「フフフ、フンッ!」
倒れたチェイサーに笑いながら何度も何度も踏みつけるたびボディから出る火花はまるで血を表現しているかのようにチェイサーから出て、再度掴み上げ体を起こした状態でイグニッションキーを捻り今度はブレイクガンナーを奪い取り掴み上げたチェイサーを一方的に殴っていく。
「ハハハッ、アッハハハッ!、ハーッハッハッ!」
笑いながら奪い取ったブレイクガンナーで殴る画はゴルドドライブの狂気を写しだしており、割れた仮面の下から見える悠の目は虚ろな状態に近かった。
暫くして飽きたかのようにチェイサーを離すゴルドドライブ。一方的に嬲られたチェイサーはフラフラの状態でも未だ立っているが意識を失いかけているのか先程まであった闘志が最早感じられなかった。
「フフフ。」
<< GUN >>
満身創痍のチェイサーに一切の容赦なくブレイクガンナーの銃撃を喰らわせるゴルドドライブ。
只立っているだけが精一杯のチェイサーにはどうする事も出来ず、動かぬ的になってしまったチェイサーはゴルドドライブの銃撃によって遂に倒れてしまう。
「あ……がッ…。」
「ふぅむ、どうやらここまでのようだね。いやはや、思いのほか奮闘したよキミは。
あれは流石のボクもヒヤッとさせられたよ。」
僅かに見える右目で此方に歩み寄って来るゴルドドライブを睨むが、その眼光は焦点が合っておらず今にも失いそうな意識を保つので精一杯の状況が読み取れていた。
「さて、見た所かなり苦しんでる様子だし此処で楽にさしてあげよう。
キング辺りが残念がるだろうがこれもまた運命と言うヤツか…。
それでは御機嫌よう、噂の仮面ライダー君。
キミの事は忘れないであげるよ。…ボクの計算を狂わせた人間としてね…。」
(クソッ…たれッ!!)
ブレイクガンナーの銃口を向けるゴルドドライブを前に激痛が走る体は糸が切れたように動かせず内心悪態を吐くしか無い。
やがてゴルドドライブがトリガーを指に掛け、引こうとする
ドガァァァンッッ!!!
「グァァッ!!?」
(…な、んだよ…一体……。)
突然だった。
トリガーを引こうとしたゴルドドライブが突然吹き飛ばされ、そのまま壁にめり込む形で止まった。
(何だ!?何でボクはこんな形でやられてる!?攻撃された?ならゴルドドライブが即座に反応してボクに伝える筈だ!)
壁から離れたゴルドドライブは先程の出来事が自分は攻撃されたことに疑問を抱かずにいられなかった。
ベルトの機能により周囲の索敵能力もあるのに攻撃を与えたそれらしき敵の反応は一切感知されてない。その事がゴルドドライブの癇に触れていた。
「!、居ない、一体何処に!…。」
感情的になっていたゴルドドライブだが、先程まで倒れていた悠の姿が無い事に抑えていた感情が再度暴走し苛立った声を上げる。
「バカな!あの間にあの体で此処から逃げられる訳がない。
ならさっきのはヤツの仲間か?ボクに屈辱を与えたムカつくヤツの!!…。」
苛立ちを表に出すゴルドドライブだが、変身を解いてやがて自分に言い聞かせるように独り言を放ち自信を抑えようとする。
「まぁいい。とにかく手負いだろうが何だろうが彼を仕留めるのは何時だって出来る……そうだ、問題無い。
問題は先程のだ、一度戻ってよく調べよう。絶対に何かしらのトリックが有る筈だ…。」
ドクターは悠の事は一先ず後にし、広場を後にした。
(……痛ってぇ…そして気持ち悪りぃ……。)
悠は親不孝通りの入り口付近の路地裏に居た。
何で自分がここに居るか悠自身も全く分かってない。
只ゴルドドライブが吹き飛んだ光景の後に何時の間にか此処で寝転がっていた。体中が悲鳴を上げるのと同時に乗り物酔いしたような嫌悪感と同時に。
(……あぁクソ…見えなくなって来やがった…。)
元々ぼやけてた視界が段々と暗くなっていき、自身の限界が訪れたようだった。
意識を失われてく悠だが、誰かが自身の肩を掴んで揺さぶってるのが辛うじて分かった。
「──い!─────じょぶ─────え──。」
「………。」
誰かが悠に声掛けているようだが悠の耳には届いていなかった。
これが、悠に突きつけられた敗北だった
次回お楽しみに。