その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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お待たせしました!
ここ最近リアルで忙しくなって小説作る時間が有りませんでした。
ですからいつものようなペースで投稿は難しいのでご了承ください。




 

 

 

人間とは分かってても何かに苦手意識を持ってしまう生き物である。

 

食べ物の好き嫌いや、虫や動物などの生き物に苦手意識など。

 

体質の問題や見解の違いから他人には理解できないのも存在するが当の本人にとっては死活問題に行くまでのレベルもあるのだ。

 

そしてそれは、灰原 悠にも当然の如く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【これより!水上運動会の開会をここに宣言する!!!】

 

《ワアァァァァァァァァァッ!!!》

 

(……帰りてぇ。)

 

苦手な環境(日差し照り付け)、場所(大勢の人混み)が有る訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の日射が直接当たりに来る白い砂浜の海辺では、学園の行事である水上運動会により学園高等部の生徒が全員集まっていた。

 

海辺でやるのもあって、この場に居るもの全員が学園から支給された水着を身に着け、一部の男子は周りのスクール水着の女子の体を鼻の下を伸ばしながら見ているのもあってか普段では見せないハイテンションな様子が見られる。

 

一部例外を除いて。

 

「熱っ、…なんでこんなクソ熱い環境であんな元気出せるんだが…。」

 

「同感だぜ…。

ああ、熱い、焼ける、溶ける、死ぬ。」

 

「アンタ達、何時に無くローテンションねぇ。」

 

悠達のクラスの陣地では、水着に黒いTシャツを羽織りいつもより覇気が感じられない悠と、水着と何時ものパーカーのフードを被った古城の二人が項垂れる姿を浅葱が呆れながら見ていた。

 

「仕方ねえだろ浅葱。

この殺人的な直射日光がジリジリと肌を焼いていく感触がどれだけキツイかお前に分かるか。」

 

「つかこんな行事考えた奴は何処のどいつだよ。

こんな日差し強い日にこんな大勢で、…一発殴りたい気分だわ。」

 

「おー、いいなソレ、その時は俺も付き合うぜ灰原。」

 

「…アンタ等こう言う時だけホント気が合ってるわね…。」

 

「まぁいいじゃないか。

仲が良さそうでなによりだ。」

 

熱さの所為で思考にも影響が出たのか普段口にしない言葉を口にする悠とそれに便乗する古城の二人を浅葱の隣にいたゼノヴィアが微笑ましい顔で見ていたとか。

 

そんなやり取りをしているが今は開会式の真っ最中。

壇上では学園の学園長であると同時に百代と一子の祖父である川神 鉄心が全校生徒にあることを告げる。

 

【尚!今回の水上運動会は突然であるが、お主等の勇姿を一目見てみたいとあるビックなゲストが来ておるので、くれぐれもその期待を裏切らぬように精進するように!】

 

「ビックなゲスト?」

 

「こんなのに態々顔出すなんて余程の変わり者だろ、どうせ。」

 

古城がゲストの知らせに引っ掛かってるなか、その傍らでペットボトルの水に口を付けようとする悠。

古城とは対象にどうでもいいと言った様子を見せるなかその考えは一気に覆る事になる。

 

【それでは今から、アルティギア王国王女であるラ・フォリア・リハヴァイン殿の挨拶が有るので心して聞く様に。】

 

「なっ!!?」

 

「ブハッ!?」

 

ゲストの正体に思わず声を上げ立ち上がった古城と隣で口に含んだ水を思わず吹き出してしまった悠。

悠が視線を壇上へ向けると、バッチリと水着を身に着け上着を羽織ったラ・フォリアが手を振りながら笑顔を振り撒いていた。

 

【こんにちは皆さん、ラ・フォリア・リハヴァインです。

突然の来訪で些か無礼だと思いますが私個人としては日本に来ている思い出として皆さんとの交流を良い思い出として残していきたいのでよろしくお願いします。】

 

《ワアァァァァァァァァァッ!!!》

 

突然のラ・フォリアの来訪に生徒達が盛り上がってるなか、未だ咳き込んでる悠の背をゼノヴィアが擦る。

 

「どうした突然?君がそんな反応見せるなんて初めて見たぞ、私は。」

 

「ゲホッ、ゴホッ。

…ああ、ちょっと暁に釣られて気管に水が…。」

 

「お、おう、悪い灰原。俺もちょっと思いもよらない人物に、つい…。」

 

(一体何考えてやがりますかあの王女サマは!……アレ?)

 

悠がふと遠くにあるモノに気付き目を凝らて、じっ、とその正体に目のピントを合わせる。

 

目を向けた先はラ・フォリア……の立ってる壇上の影からちょこっと出ている銀色に光ってるミニカー。

壇上から降りたラ・フォリアが背を向けて用意されてる席に向かう彼女の後をスパイダー、コブラ、バットの三体のバイラルコアが付いて行ってる姿を見て悠の何かが崩れ落ちた。

 

「?、どうした?今度は酷く顔色が悪いが。」

 

「…いや、信じていたモノが裏切られる光景を、ね……。」

 

「……なんだか分からないが気を強く、な?」

 

ゼノヴィアに励まされながら水上運動会は始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

の、筈だったのだが。

 

「………。」(カタカタ)

 

開催地である海辺から離れた茂みの中で一人ノートパソコンに向き合いながらとあるプログラムを作っていた。

 

悠の出る競技は那月が無理矢理押し付けた謎の競技は午後の時間帯にやる予定なので、それならその余った時間を有効に使おうと、一人離れてコツコツとキーボードを叩いてる最中である。

 

(…これで大丈夫…の筈。

後は実際に動かしてロイミュードを探知できるかどうか…。)

 

悠が作っていたプログラムはロイミュードから発する重加速を探知するシステム。

重加速現象を発するコア・ドライビアは悠が作り上げたシフトカーにも組み込まれてるのもあって探知機のシステムを作るのにそこまで時間は掛からずこの午前中には終わりそうなペースだった。

後はこのプログラムをラボの機材と自身の携帯に入れれば終わりと言った所で、一度背を伸ばして首を鳴らす。

 

悠はふとこの間の死神部隊について思い返す。

 

敵は自分の知らない所で着実と脅威を上げてきている。

この前は巨大ロイミュード相手にライドブースターが来なければ無事ではいられなかった。

もし敵が強化態に続いて進化態レベルのロイミュードを投入してきたらと思うとそれこそ頭が痛くなる。

 

此方が一人に対し、敵は未知の戦力。

悠は自分でも知らずの内に追いつめられて焦ってきていることをつい最近嫌でも突きつけられたのだ。

 

なんとかロイミュードを生み出してる人物を叩くか、敵の情報を少しでも掴みたい所だが、それは上司がブラックボックスを解き明かさない限り下手に動けない。

 

「……ハァ…。」

 

いつになく溜息を吐くが、それにはいつもよりどんよりと重い不吉な色が見えていた。

 

そんなネガティブなオーラに包まれてるなか、此方に来る鳴き声の元に目を向けると先程ラ・フォリアの傍にいたバイラルコア達が悠の元に来たが、悠の顔は如何にも不機嫌と言った顔をしてた。

 

「何だよオマエ等、人が悩み抱えてるって時に女のケツ追っかけるとはね。」

 

「その女が不機嫌な顔の男よりも魅力的だからじゃありません?」

 

バイラルコアに続いてさも当然の如く現れたラ・フォリア。

悠と対照に見る者を虜にするような笑みを浮かべてそこに居た。

 

「なんだが今日は随分と調子がよろしく無いようで。」

 

「まぁね、暑い日に運動会やるわ、裏切られた気分味わうわ、どこぞの王女は急なサプライズ用意するわ。」

 

「だって教えたらサプライズでは無いではないですか。

…それにアナタには直接会って話さなければいけない事が有りますので。」

 

先程とは打って変わって真剣な表情に悠もふざけた内容では無いと知り、ラ・フォリアの言葉に耳を傾ける。

 

「さて、いきなりなんですけど九鬼財閥というのに聞き覚えは?」

 

「…あぁ、確かかなりデカい企業だよな。

学園の生徒にも九鬼の御曹司が居るとかなんとか。」

 

「実はあの空港の騒ぎから九鬼の人間が私の所に来るようになったんですよ。

恐らく王国との繋がりを持つための機嫌取りと言いますか。」

 

「ふむふむ、で?」

 

「そして訪れる度に聞かれるんですよ…アナタの事を。」

 

「?、俺は一企業に目を付けられるような覚えは全くないのだが。」

 

「すみません言葉が足りませんでした。

正確には、アナタの裏の顔ですよ。」

 

「…成程、大体分かった。」

 

ラ・フォリアの知らせによれば九鬼財閥という企業が悠を、仮面ライダーを調べてる事を知る。

唯でさえ悪魔や武偵に狙われてる身なのに今度は大企業に目を付けられるなど悠からしたら”いらないオマケ”である。

 

「それでどんな事を聞かれたんだ、キミは?」

 

「えぇと確か、どんな姿だったか、あとどのような道具を使っていたかでしたね。

でも私肝心な事は言ってませんよ?」

 

「疑ってる様に聞こえたなら謝るよ。

でも毎回聞いてくるとなると向こうは何かしら君と俺の繋がりを疑ってんだろうなぁ。」

 

「そうですね、電話で伝えようにももしかしたら盗み聞きしてるかもと思って迂闊に掛けれませんでした。」

 

「…まさか、この事を伝えに態々?」

 

「えぇ、今は紗矢華に頼んで人払いの結界を張ってるのでこの話を聞かれる心配はありません。

彼女には私から他言しない様に言っておきますから。」

 

「そうか……君には悪い事をしたな。

関係の無い事に巻き込んでしまって…。」

 

「構いませんよ。元より私はアナタの味方でいる事に決めてますから。」

 

「………ありがとう。」

 

「どういたしまして。

…それよりも悠。何か私に言う事はありませんか?」

 

「?…えーと、何か気分を害することを言ったか?」

 

「ハァ、期待を裏切りませんねアナタは。

私を見て何か気付きませんか?」

 

(………あぁ、そう言う事か。)

 

ラ・フォリアのヒントから察するに彼女の水着姿についての感想を求めているのだと思い付き、じっとラ・フォリアの全体像を詳しく見てみる。

黒いビキニを身に着けたラ・フォリアの体は上着を羽織ってても非常にバランスのとれたボディラインもあって黒のビキニが白い肌と彼女の銀髪の魅力をより引き出している。

 

「……綺麗だな。」

 

「!、そ、そんな率直に言われるとなんだか照れちゃいますね。」

 

「…あー、すまん、正直こっちも女性の水着についての感想を言うの初めてだから思った事をそのまま言ったのだが、なにかマズかったか?」

 

「いえ、こういうのは大体予想は出来たんですけど、いざ言われるとやっぱり照れるのが有りますね…。」

 

「…そうか、そんなものなのか。」

 

悠の言った言葉が切っ掛けか、普段目にしないラ・フォリアの赤面に悠が一瞬動揺するも直ぐに落ち着きを見せる。

その時、向こうの会場からのスピーカーの呼びかけに悠は反応する。

 

【2-Bの灰原 悠、大会総本部へ。2-Bの灰原 悠、すぐに大会総本部へ。】

 

「なんだ?」

 

「お呼びの様ですね、私もそろそろ戻らないと。」

 

「そうだな、この借りは何時か返すよ。」

 

「えぇ、その時は是非おねがいします。それじゃあまた。」

 

そう言ってラ・フォリアはその場から去り、悠も取りあえず呼び出しに言われた場所へ向かおうとする。

 

(アレ?)

 

その時悠は先程までとは違い幾分か気分が良くなったような気がすることに気付く。

傍らではバイラルコア達が此方の様子を窺ってる様に鳴き声を上げている。

 

「…もしかしてオマエ等…。」

 

悠はバイラルコア達がラ・フォリアの元に行ったのは悠の不安を彼女に和らげてもらう為に悠の元へ連れて来たのではないかと思うなかバイラルコア達が悠の肩辺りに飛び乗ってそれぞれ鳴き声を上げる。

 

「…ありがとよ。」

 

悠は肩に乗ってる仲間達に短く礼を言い、バイラルコア達は嬉しそうに飛び跳ねてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大会総本部、テント前。

 

「…何しに来たんだ君達は?」

 

「アタシだって来たくて来た訳じゃないわよ!このクソ!」

 

「おやおや~?そうは言っても、ぼのちゃん文句言わず行くとか言ってなかった~?」

 

「ちょっ、余計な口出すんじゃないわよ漣!」

 

「…それで結局何しに来たんだ?、バッチリ水着まで着て来て。」

 

呼び出しを受けた悠に待っていたのは口調が悪く髪をサイドテールに纏めた曙とそれにちょっかいを出すピンク髪の短いツインテールの漣のやり取りを余所に、まともに話してくれそうな頭にカニを乗せた薄い茶髪の朧に聞き出す。

 

「鳳翔さんに言われてお弁当届けに来たんだよ。

水着は漣が…。」

 

「やだなぁ~お兄ちゃんってば。

海に来たなら水着になるのは当然の事でしょ?」

 

「前にも言ったが俺はお前の兄になった覚えは無いぞ。」

 

「え~?、でもご主人様じゃ嫌って聞いたからナチュラルな感じにお兄ちゃんにしたのに…。」

 

「それは俺じゃ無くお前等の上司に言ってやれ、多分発狂する程喜ぶぞ、アイツ。

…それはそうと、何故弁当を?昼食なら既に用意したんだが。」

 

「フン。そう言ってアンタが用意したの水とゼリー飲料だけじゃない。

はぐらかそうたって無駄よ、早霜がその時の事見ていたらしいから。」

 

「……あー、あれだ。

こういう暑い日って自然と食欲が…。」

 

「あ、あとコレ。鳳翔さんから手紙預かってるんだ。」

 

朧が差し出した二つ折りの紙を受け取り、中に書いてる内容を読み上げると。

 

 

 

”運動会と聞いて思わず張り切って作っちゃいました。

少し量は多くなっちゃいましたけど、食べ盛りの男の子ならこのくらい余裕で食べれますよね?

後で感想聞かせてください、残したら…分かってますよね?

                     鳳翔

     追伸・ちゃんと食べたかどうか後で朧ちゃん達に聞きますので”

 

 

 

手紙を読む悠の顔に冷や汗が流れ、気のせいか若干足が震えてる様子が見られる。

 

「ね、ねぇ大丈夫?」

 

「……あぁ。」

 

「うわー、お兄ちゃんがマジでビビッてる。

流石はオ艦、マジパネェ。」

 

「自業自得でしょ。いっその事もう一度鳳翔さんと間宮さんから痛い目に遭っちゃえばいいのよ。」

 

「…まぁその辺は置いといて。

さっきからずっと気になってたんだが、潮は今日一緒じゃないのか?」

 

「ハァ?ビビッて周り見えなくなったの?潮ならここに……アレ?」

 

「アレ?居ない。漣、潮知らない?」

 

「え、知らないよ私?

そういえば、お兄ちゃんの弁当持ってるの潮ちゃんだったよね?」

 

三人がお互いに聞くも誰もが知らないの一点張り。

そして、暫くしてようやく潮が自分たちからはぐれたことに気付き焦りの表情を見せる。

 

「ど、どうすんよ!、よりにもよって気弱な潮がこんな所で…。」

 

「取りあえず落ち着けお前等、特に曙。」

 

「どうしよう、アタシ達連絡取りあえるモノ持って来てないし。」

 

「まぁ探すしかないな。

俺はここで潮の迷子を放送してもらうよう頼んで来るから、その後は二手に分かれて探そう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こ、これは!)

 

「こ…来ないで…ください。」

 

所変わり悠達が居る場所から離れた所では、はぐれた潮の前に目を光らせた一誠が潮のある一点を凝視してた。

正確には涙目になってる潮の胸部。

 

(子猫ちゃんより小さめの子だが、その体系に合わないあのおっぱい!

これが世に言う、ロリ巨乳!!)

 

段々と無意識の内に鼻息が荒く鼻の下が伸びきってる一誠。

潮は今にも泣きそうな顔で目の前の一誠に怯えきっていた。

 

「た、助けて…。」

 

(…ハッ!イカンイカン!仮にも年下の女の子を怖がらせるほど俺は最低な人間…いや悪魔じゃない!

見た感じウチの学園の生徒じゃないし、一先ず大会本部に連れて行こう。

…もしかしたらお礼に、おっぱい触らせてくれるかも。)

 

「あのさ、迷子なら取りあえず…。」

 

「ヒッ!ヒャアアアアアアアアッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「潮にナニ手を出してんのよ!!!この変態!!!」

 

「ドリャー!大・天・罰!!!」

 

「ブゲラァッ!!?」

 

声を掛けた瞬間悲鳴を上げる潮と同時に駆けつけた曙と漣が一誠目掛けて飛び蹴りを繰り出し、モロに喰らった一誠は吹き飛ばされる。

そして倒れた一誠に追い打ちと言わんばかりに踏みつけ、年端もいかない少女に嬲られる男子の絵と言う如何にも奇妙な光景がそこにあった。

 

「死ね!死ね!潮に手を上げようとした罪で死ね!」

 

「マジモンの変態キタコレ!

艤装は無いけど、汚物は消毒じゃー!!!」

 

「ブヘッ!ちょっ!まッで!ボゲェ!?」

 

「おっ、いたいた。…って、なんだアレ?」

 

「潮!大丈夫!?」

 

「ゆ、悠さん!朧ちゃん~!」

 

悠と朧が着いた先には泣き顔の潮が朧に抱き着く光景と、曙と漣が一人の男をリンチしてる何とも理解が追い付かない異様な光景がそこにあった。

とにかく目当ての潮の身は問題無いので悠は未だ一人の男を踏み続けている二人の元に行って止めさせる様に口を開く。

 

「おーい、お二人さん。潮は見つかったからその辺にしてやれ。

もう顔がビフォーアフター並に形変わってきてんぞ。」

 

「何言ってんのよ!潮を泣かせたこのクソ野郎にはここまでやってもやり足りないわよ!!」

 

「マッハで撲滅だぜ!ヒャッハー!!!」

 

「…おいお前等、此処へは一体何し来たんだ?

俺に届けもんがあるからだろう。それとも、騒ぎ大きくしてお前等がおっかない鬼オ艦に痛い目遭うか?」

 

声を低く二人に向かって言うと、二人は渋々といった様子で一誠から離れ潮の所に向かう。

悠は倒れてる一誠に近ずき手を差出す。

 

「いや、ウチの奴等が大変失礼な事をして申し訳ない。」

 

「い、いや、女子に嬲られるのは初めてじゃねえから気にすんな。

それよりありがとよ。あの子達止めてくれて。」

 

(!、コイツは。)

 

差し出した手を掴む一誠の顔を直面した時、悠は初めてリンチに遭った男の存在に気付く。

顔は足跡まみれだがその実何度も会って時に一戦交えた悪魔である兵藤 一誠とこうして素顔で初めて対面した。

 

「あぁそうだ俺、兵藤 一誠って言うけどお前…あっーーー!」

 

「!」

 

悠の顔を見た一誠が突如叫び、悠は身構えるが。

 

「お前は女子の間で密かに人気の脱力系イケメンの灰原!」

 

「………。」

 

「あんな男の何処に良い所が有るんだが。」

 

「ほぇ~。」

 

「まぁ、いい男じゃなかったら川内さん達も好きにはならないだろうし。」

 

「にししししWWWWW、良い事聞いちゃった♪」

 

取りあえず何か企ててる漣には後で言っとくとして、先程とは一転変わって悠を嫉妬の眼で睨み付ける一誠。

 

「クソォ!これもイケメンの特権なのか!!?

あんなロリ巨乳とS系とピンクツインテな美少女と仲良さ気なんて羨ましすぎだろォ!!」

 

「…アレ?アタシは?」

 

(ドンマイ、朧。)

 

「ちょっと兵藤、アンタ飲み物買うのにどんだけ時間掛かってんのよ。」

 

勝手に嫉妬して勝手に悔し涙を流す一誠の元に来たのは、これも悠の知っている悪魔・ハルナ。

 

悠は思わぬ人物の登場に内心溜息を吐いた。

 

「全く、ジャンケンで負けた奴がジュース買って来るって言ったのはアンタでしょう。

…って、なんで泣いてんのよアンタ。」

 

「グス、お前には分からねえよモテないヤツの気持ちなんか。」

 

「なにそれ?…ん?そこのアナタは…!」

 

泣いてる一誠を余所に悠の存在に気付いたハルナだがあるモノを見て驚愕する。

悠の後ろに居る4人の少女達、朧、曙、漣、潮。

うっすらとしか覚えてないが彼女の前世の記憶に朧達の存在は頭にあった。

 

(あの子達って確か艦これの…。

もしかしてこの男って…。)

 

「グス、ああコイツは今女子に密かに人気の灰原だ。

俺があの子達にやられてる所を助けてくれた。」

 

「…そう、私、桜井 ハルナよ。どうせコイツがまた何か仕出かしたのだろうけど一応よろしく。」

 

「オイ!なんで俺が何かやった前提なんだよ!?

俺は只迷子のあの子を本部に連れて行こうと!」

 

「あー、まあ後の事は想像できる。

大方、潮がビビッている所をアイツ等は勘違いしたんだろう。

それなら非が有るのは此方だな…ほら二人とも勘違いとは言え過剰にやり過ぎたんだ。詫びの一つは入れなさいよ。それがルールだろ。」

 

「ぐっ!……ごめんなさい。」

 

「いや~ホント申し訳無い事したでやんす。」

 

「漣、お前軽すぎる。

いやホントに申し訳ない。コイツ等も悪気が有った訳じゃないからどうか許してもらえないだろうか。」

 

「ま、まあ俺ももう少し配慮に気を付けたらあの子が怯えずに済んだし、この件はまあお相子にするって形でイイぜ。」

 

「どうせアンタはあの胸の大きい子をいやらしい目で見てたんでしょうが。」

 

「ぐっ!?」

 

「そうか、そうしてもらえるならありがたい。

それじゃあ俺達はこの辺で。」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

悠が朧達を連れてこの場から去ろうとした時突如ハルナに呼び止められる。

悠は警戒して顔に出ないよう自分に注意して、ハルナの呼びかけに答える。

 

「何かな?」

 

「あ、えっと。…その子達ご家族?」

 

「いや、遠い親戚の子だよ。俺がうっかり弁当忘れたのを態々届けに来てくれたんだ。」

 

「そう…ゴメンね、急に呼び止めて。」

 

「お構いなく。それじゃ失礼。」

 

そう言って悠達は今度こそその場を後にする。

 

ハルナが朧達の事を聞いてきてと言う事は、此方を転生者だと疑っていることが分かる。そして下手すればそこから悠の正体に気付くかもしれない。

 

また一つ悩みの種が増えた事に思わず大きな溜息を吐いてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ悠さん。これお弁当。」

 

「…三段…だと。」

 

お昼は朧達を含めての昼食になりました。

 

 







後編に続く。

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