その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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今回書きたい事書いた所為で、えらく長いのになってしまった。


必要

 

 

「ねえキンジ?アタシは桃まん買ってきてって言ったわよね?

それなのに一体何をどう間違えたらこんなガキんちょ連れてくんのよ!?」

 

「ヒッ!」

 

「あーもう!説明する!するから子供の前で銃を抜くな!」

 

武偵生徒が住んでいる寮の一室では先程リュウガに預けられた少女を連れたキンジが自室に戻ると勝手に居候しているアリアに不満と銃口を向けられる。

 

キンジは冷静を欠いてるアリアに簡潔に自身が連れてきた少女が仮面ライダーに関わってる事を説明するとアリアは銃を降ろしてジッとキンジの後ろに隠れてる彼女に目を向ける。

 

「そう・・・とりあえずまずはお風呂に入らせましょ。

そのみすぼらしい格好まずはどうにかしなきゃ。・・・ほら来なさい、アタシが入れてあげるから。」

 

「え、お前がか?」

 

「何よ、アタシだってそのくらいは出来るんだからね。

さ、お風呂入って話はそれからよ。」

 

「・・・あ、・・えと・・。」

 

アリアに手を引かれて浴室に連れてかれる彼女を見て、自分が組んでいる相方の意外な一面を見て少し驚いたが、まずは自分なりに何故彼女が仮面ライダーと一緒に居たのかを考えるキンジであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ~から私は最初に言ったんだよ。契約は計画的にって。

それなのに一体どころかその倍も契約した時は何を狂ったかって思ったよ。」

 

「・・・今回ばかりは自分の非だから何も反論しねえよ。」

 

武偵の男子寮の近くの茂みで木を背に預けながら上司と電話していた。

内容はもちろんの事、契約しているモンスター達のエサについてである。

 

「でも実際の所どうする?今からでも此方から君のモンスター達のデメリット消すことは出来るけど・・。」

 

「それこそ最初に言った筈だよ。俺はライダーギアを扱えること以外のデメリットは受けるつもりだって。」

 

「ホントに君って変わり者だよね~。

普通はデメリット無くして楽に使いたいって言うのが今時の転生者のお決まりみたいなものなのにさ。」

 

「俺は力の重みを忘れたくないんだよ。

何の代償も無くただ振り回す力程危険な物は無いからね。」

 

「・・・うん、君のその思いは人としては正しいものだろう、だが正しいが故に残酷な結末もあるというのは私が神として人間を観測している時に初めて気づかされた事だよ。」

 

「・・・まぁなにわどうあれ、此方も簡単には死にはしないさ。」

 

「・・・そう、兎に角こっちも対象と成り得そうな転生者を捜してみるよ。分かり次第すぐに連絡する。」

 

「分かった。・・・あぁそうだ。後アイツ等に暫く俺に近ずくなって言っておいて欲しい。ウチのペット達が何時噛み付いて来るか分からないんでな。」

 

「あーー、いや、そのことで君に謝らなきゃいけない事が・・。」

 

電話の向こうでは急に声のトーンを下げた上司の態度に、悠の顔色が次第に変わっていく。

 

「・・・何だ。」

 

「いやねぇ、何処で聞き耳を立てていたのか、私がついポロっと呟いた事が聞かれちゃって・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、居た!オーイ、ユウ!夜食持って来たよー!」

 

「もう既にそっちに行っちゃったんだよねえ。」

 

「・・・・ハァ。」

 

悠が頭を押さえて溜息を吐くもすでに遅く、通話を切って包みを持って此方に駆け寄る川内に向き合う事にした。

 

「何しに来たんだ。」

 

「え?何って夜食届けに来たのとユウの手伝いに。」

 

「よし、夜食はありがたく頂く、でも手伝いはいい、ハイお疲れさーん。」

 

川内から包みを若干強引に受け取り、彼女の背を押して此処から離れさせようとする悠だが。

 

「いやちょっと待ってよ!アタシ夜戦得意だよ!?夜なら川内さん!って言われてるくらい役に立てるよ!?」

 

「いや夜戦じゃないから。ただの張り込みだから。」

 

「それでも一緒に居るよ!ホントだったらアタシ以外にももっと来る予定だったけどそれじゃあ逆にユウの迷惑になるから決死のジャンケンでアタシ一人で来たんだよ!?」

 

「あのなぁ川内。俺は今・「知ってるよ。アタシ達を巻き込まないために言ってるんでしょ?」・・知ってるなら尚更・・。」

 

「・・・ねえユウ。アタシ達に出来る事って何?ユウはずっと辛い思いや痛い目に遭っているのにアタシ達は黙ってそれを見ていろなんて素直に聞くと思う?」

 

「川内・・・。」

 

川内は頭を悠の胸元に預ける形で顔を俯かせながら悠に話し続ける。

 

「アタシだって・・神通だって・・皆ユウの力になりたいんだよ?

助けてくれたからだけじゃなくて、ユウが背負ってるモノを一緒に出来れば背負って上げたいんだって。」

 

「・・・前から聞こうとはしてたけど、キミ達ってどうしてそこまで俺に世話焼くかなあ。」

 

「・・・・・・御堂 香苗。」

 

「!・・・お前・・・なんでそれを・・・。」

 

川内の口から出た言葉に悠は先程までの雰囲気とは変わりずっと胸の奥底にしまっていた感情が浮き上がって来そうだったが、必死で堪え川内から何故その名前を知ってるかを聞く。

 

「ゴメンね。アタシ軽はずみであの人からユウの女性関係聞き出そうとお酒に酔わせて聞き出したんだ。あの人酒癖悪くて酔ってる時の記憶曖昧になるからユウの事も喋ってくれるんじゃないかって・・。」

 

顔を俯かせながら悠に話す川内の様子が段々変わり始めていることに悠が気付き、その様子は先程まで明るい性格だったのに今では親に自分の悪事を告白する子供の様であった。

 

「アタシ・・・聞いて自分がどれだけバカなことやったかひどく後悔した!・・・ユウが・・・あんな辛い目に遭ってるのを・・アタシ何の覚悟も無く聞いちゃって・・。」

 

泣いてるのだろうか、声が所々途切れながら悠の服を掴む手が強くなり懺悔する川内の足元に湿った後が目に写った。

 

悠は胸元で泣いてる川内を見て自分の心を無理矢理いつもの状態に戻して、未だ泣いている川内の頭を撫でながら落ち着かせる様に言葉を掛ける。

 

「・・オレの過去を知っているのはお前だけ?」

 

「・・・・うん・・・・・さすがにこれは・・・・皆に言えないよ。」

 

「ならオレの仕出かした事を知ってる上で言わせてもらうが。

・・・・あれは、完全にオレの所為だ。

オレは間違った選択をしたから、・・・彼女はおろか関係ない命まで・・。

・・・・これはオレが一生背負わなきゃいけない罪なんだよ。」

 

「でも!」

 

「でももこうもない、もう起きてしまったんだ。

ならばオレは、罪を背負って一生償いながら戦う事をそう心に決めたんだよ。」

 

「でもそれじゃ、ユウは一生・・・。」

 

「・・・・・あぁもう!本人がイイて言ってんだから良いの!

あのバカ神が酔った勢いで軽々しくベラベラ言うほど底が知れた話だ、お前も変に真に受けないでバカな男の黒歴史だって軽く流せば良いんだよ!

・・・・だからなぁ、お前がそんな顔する必要なんかこれっぽっちも無いんだよ川内。」

 

「・・馬鹿ぁ、ユウの馬鹿ぁ!・・・。」

 

落ち着かせる所か更に泣いてしまった川内に頭を悩ませながらも悠は川内に胸を貸してやったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって何処かの研究室のような場所。

 

そこには人一人が入っても十分な大きさの円柱型のガラス管の中に最早異形の塊と言っても過言ではない程の生物がズラリと並んでる部屋に一人の白衣を着た男が居た。

 

頭は脱色したように真っ白で外見から60代と言ってもいいくらいのシワが顔にあるが体から湧き出ている覇気は年に似合わない程のモノを出していた。

 

「・・・・フム。」

 

男は何か待ってるようだが一向に来ない事に痺れを切らしとある場所へと向かい出した。

地下へと続く階段を下りて重厚な扉を片手で開けると幾つもの牢屋が。

牢屋の中には先程のガラス管に入れられた怪物が入れられた牢屋を男は歩みながら見ていた。

 

「考えたくはないが、どうやら追手に出したのは失敗したようだ。」

 

独り言を言いながらさらに奥へと進みながら目的の所まで歩んでいく。

 

「逃げ出したのが普通のモルモットならいいものの、あれは稀にない奇跡の産物だ。

ここは多少派手に動いてもあれが戻れば釣りがくる。」

 

行きついた先は入り口よりさらに厳重に強固されてる鉄の扉。

扉の除き口を開きながら語るように男は呟く。

 

「そら、久々の外だ。出してやる分きっちり私の為に動いてもらうぞ。」

 

男が見る先に目を光らせながら唸ってる巨大な影がそこには居たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同時刻、キンジの自室。

 

 

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

キンジとアリアはお互いテーブルに向き合いながら深刻な表情をしながら思考に老けていた。

 

キンジが視線をふと見上げるとそこにはベットの上でぐっすり寝てる彼女、名前を聞いた所ミカという名前の少女はアリアが浴室で体を綺麗にした後にアリアの服を着させて(ちなみにサイズは少し大きいだけで何も問題なかったとか)キンジは取りあえず部屋にある適当な食材を使って出来合いの料理をミカに食べさせた時だった。

 

『・・ひぐっ、・・ぐすっ・・。』

 

ミカが料理を口に運んだ時彼女は突然泣き出した。

 

キンジもこれには大きく動揺し、アリアも料理を作ったキンジの腕に文句をつけてきたが。

 

『・・違う・・・・私、あったかい食べ物・・食べたの初めて・・・。』

 

ミカが涙を流した理由は初めて誰かの作った料理を食べた事による嬉し涙だった。

 

二人はそれから一心不乱に料理に手を付けたミカを黙って見た後、今までの疲れが一気に来たのか直ぐに眠ってしまい今に至る訳である。

 

「・・・なぁアリア。・・・現時点でミカと仮面ライダーの関係性を俺なりに考えてみたんだけど・・。」

 

「・・・言ってみなさいよ。」

 

「ミカがあの仮面ライダーを見てる時の眼は、何と言うか信頼してるって感じの眼だった。

・・・多分だけど、アイツあの子の事助けたんじゃないか?

ミカが着ていた服やあの子の居た場所が戦りあった形跡が有ったから・・・絶対とは言い切れないけど、そうじゃなきゃミカがあの仮面ライダーにあそこまで懐く想像が出来ないんだよ。」

 

「・・・かもしれないわね。

でもキンジ、アンタから聞いた特徴だとソイツ堕天使の幹部殺したリュウガってやつよ?

そんな奴があの子を助けて一体何の得が有るのよ?」

 

「それは・・・・分からない。

・・・・・でも一つ確かなのは、ミカにとって仮面ライダー・・リュウガは心の支えとして必要な存在になっちまったんだよ・・。」

 

そう言ってキンジとアリアはベットで蹲る形で寝ているミカを見て何とも言えない気持ちになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「すぅ~~。」

 

「・・・これの何処が夜に強いんだが。」

 

夜明けまであと少しと言った時刻で先程まで泣いていたのに疲れて来たのか木にもたれ掛りながら悠の肩を頭に乗せて眠ってる川内。

 

悠は川内の寝顔を見て若干呆れつつ彼女が自分の過去を意外な形で知ったことに取りあえずこの一件が済んだらあの上司にディメンションキックを喰らわしてやろうかと本気で考えていた。

 

「・・・・フゥ。」

 

『アタシだって・・神通だって・・皆ユウの力になりたいんだよ?

助けてくれたからだけじゃなくて、ユウが背負ってるモノを一緒に出来れば背負って上げたいんだって。』

 

「・・・・そういう訳にはいかねえよなあ、こればっかりは。」

 

悠は川内の言ってた事を思い返して、鼻で笑いながら呟く。

先程はああ言ったが実際の所悠が犯してしまった罪は悠自身が一番許せないモノだった。

 

 

 

あの時、あの選択を間違えてなければ。

 

 

そんな事を何回無意識に思っても自分がやってしまった事に変わらない。

だから悠は戦う道を選んだ。

自分の罰として、そして、同じ間違いを二度と繰り返さないために。

 

 

 

ーキィィィィンキィィィィンキィィィィンー

 

 

「・・・ハァ。」

 

そんな事を思いつつ突如耳に聞こえた金切音が悠を現実に戻した事にめんどくさそうな表情を浮かべる。

 

悠は川内を起こさない様に立ち上がって着ていた上着を彼女に被せると何処かへ歩を進めた。

 

やがて行き着いた先は川内から離れた茂みの場所で立ち止まり、誰もいない事に細心の注意をする。

 

すると突然、近くのビルの窓ガラスから突如メタルゲラスが木を薙ぎ倒しながら悠に突っ込んで行き、悠は薙ぎ倒されてる木にいち早く気付いたお蔭でメタルゲラスの突進を躱すことが出来た。

 

だがそれも束の間、今度は後ろからアビスラッシャーとアビスハンマーが襲い掛かり悠は突然の奇襲に完璧に躱し切れずアビスハンマーの突進を受けてしまう。

 

「ぐっ!」

 

奇襲を受けてしまった悠は動きが止まり、動きが止まった悠にべノスネーカが地を這いながら悠に襲い掛かろうとしたが。

 

 

ーGuoooooooon!ー

 

 

悠を庇うようにドラグブラッガーがべノスネーカと対峙し、ドラグブラッガーとべノスネーカがお互いを威嚇し合って咆哮を上げる。

悠を庇ってるのはドラグブラッガーだけでは無く、メタルゲラスをエビルダイバーが、アビスラッシャーとアビスハンマーの二匹をダークウィングが抑えている。

 

「・・オマエ等・・・まだ耐えられるだろう!

オマエ等が唯の血に飢えた獣じゃないと証明したいならオレがエサを用意するまで待て!

・・・・無理と分かったんなら、その時は容赦なくオレを喰らうがいいさ・・。」

 

悠が叫びながら威嚇し合ってるモンスター達にもう少し待てと強く言ったのが効いたのか、悠を襲いにかかったモンスター達はミラーワールドに戻り庇っていたドラグブラッガー達も自分たちの世界へ戻って行った。

 

悠が一先ず落ち着いたかと息を吐いた所に、此方にクラクションを鳴らしながら来るシフトカーが三台。

 

緑色のスポーツカー[ファンキースパイク]とダンプ型の[ランブルダンプ]、サーカスのピエロの頭が付いた[アメイジングサーカス]が悠の元に何かを知らせに来た。

 

「・・・ハッ!来たか。ピンチはチャンスとはよく言ったモノだよ。」

 

悠は吉報の知らせに口元に笑みを浮かべてカードデッキを取り出し、ビルの窓ガラスに翳して腰に黒のVバックルが装着されるとVバックルにカードデッキを入れる。

 

「変身。」

 

虚像が悠に重なり、黒い戦士・リュウガに姿を変えてそのままビルの窓ガラスの中へと入りこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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白髪の男はまだ日が昇ってない夜の街を歩いてた。

まだ人が居ない街を一人で歩くならばまだ何の不自然には思わなかったが、男の後ろに付いて来る巨大な影が異様な光景を出していた。

 

その影は10mはあろう巨体に頭の鬣を靡かせるライオンと体はクマの様に四足歩行で全身が黒い毛に包まれている。

 

男と巨体の怪物は目的地に向かいながら歩を進めていたが。

 

「・・・ム?」

 

ふと先を歩いていた男が止まりそれに釣られて怪物も止まる。

 

男の視線の先には此方の行く手を遮るように立つリュウガの姿が。

 

リュウガの姿を見て怪物はライオンの牙を剥き出して戦闘態勢に入ったのを男が見ると、目の前にいるリュウガに話しかける。

 

「何か用かな?生憎と此方はこの先に用が有るのだが・・。」

 

「へぇー。そんなデカいペット連れてどんな用なのかなぁ?

例えば・・・小さなお姫様探しかな?」

 

「・・・フム。

その口ぶりからすると君が追手に放ったキメラをやったそうだな。

これは思いのほか予想外のアクシデントだよ。」

 

「あのガキ使って何企んでやがる。

たかがガキ一人にあそこまでの追って出すわ、現にそこまでデカいペット連れて態々直接来るとは。」

 

「研究の為だよ。私にとってそれ以外の何物でもない。

さて、そろそろいいかな?私も暇ではないのでね。」

 

男が後ろのキメラに指示を出すように手を翳すと、キメラは咆哮を上げながらリュウガに向かって行く。

 

<< SWORD VENT >>

 

リュウガはドラグセイバーを召喚し、キメラの前足から繰り出される爪の一撃を避けてドラグセイバーで斬り付ける。

が、腕を切断するつもりで斬り付けたが実際はそこまで深く斬れておらず血は出てるものの大したダメージを与えた様子は無かった。

 

次いでキメラはリュウガにライオンの特徴である鋭い牙で噛み付いてきたがバックステップで距離を取って直撃を避けた。

 

(今度は何の動物だ?

見た感じだと、ライオンとクマだってのは分かるがそれだけじゃねえよなあ。)

 

「教えてあげようか?」

 

リュウガがドラグセイバーを構えながら思考してるなか、白髪の男は如何にも余裕だといった様子でリュウガに話しかける。

 

「恐らく君は今相手してるキメラが何の動物を合わせたのかと考えているだろう?

ソイツには外見で分かるようにライオンとクマの一種であるグリズリーの体にラーテルと言うイタチの特徴を混ぜ込んだ作品だ。

ラーテルの皮膚は硬い事が有名でね、先程その剣で斬った時浅くしか斬れなかっただろう?」

 

「随分余裕だな、そんな事ベラベラ喋るなんて。」

 

「なに、せめて冥土の土産くらいに教えたまでだよ。

ソイツは私が作ったなかでも最高傑作のひとつでね、君に負けるなんて思いつかん。」

 

「ならその期待を裏切らせてやるよ。」

 

<< ADVENT >>

 

ビルの窓ガラスから現れたのは紫の毒蛇・べノスネーカ。

 

突如現れたべノスネーカにキメラは戦闘心を剥き出し、男の方もガラスから現れたべノスネーカに初めて顔色を変える。

 

「な・・なんだその蛇は・・・ガラスから出て来た?私はそんな生物知らないぞ!!」

 

「生憎俺はアンタほどお喋りじゃ無いんでね。」

 

そんなやり取りを余所に、べノスネーカは自身の口から毒液を放ちキメラに浴びせる。

 

べノスネーカの行動に呆気に取られたがハッ!と気づいたようにした後、突然笑いだす。

 

「フハハハ!そうか毒か!剣では倒せないから毒で殺そうという算段か!

だが残念だったなあ!ラーテルにはコブラの毒すら効かない耐性を持ってる、その上ソイツは私が改良に改良を重ねたキメラだ!そんな毒では何も変わらんよ!」

 

「・・・そいつはどうかな?」

 

男の言葉に返すリュウガに「何を馬鹿な。」と言おうとしたが、キメラの方から苦痛に叫ぶ鳴き声が聞こえたのでそちらに顔を向けると。

 

「な!?なんだと!?」

 

毒液を浴びたキメラの体は体毛が溶け皮膚が焼け爛れた跡が見られていた。

 

「アンタの言ってたのは主に血中に入った神経毒の事だろうが、外側からでも十分効く強酸性の毒は流石に効くみたいだなあ?」

 

リュウガの言葉に反応せず唯キメラが毒によって苦しんでる光景を見ていた男を余所に、リュウガはドラグセイバーをキメラに向かって投げ、肩辺りに深く突き刺さった。

 

「よーし、これで十分剣も効く。」

 

<< SWORD VENT >>

 

<< SWORD VENT >>

 

左手にウイングランサーと右手にアビスセイバーを召喚してキメラに向かって駆けだす。

 

跳び上がってキメラの体に乗り、左前足の関節部分であろう箇所にウイングランサーを深く突き刺して左前脚の動きを止める。

 

痛みで叫ぶキメラを余所に今度は先程投げたドラグセイバーを回収して右前足をドラグセイバーとアビスセイバーの二刀流で斬りおとす。

 

前足二本が機能しなくなって自然と倒れるキメラに止めを刺しに行くリュウガ。

 

<< SHOOT VENT >>

 

召喚されたギガランチャーを前倒れになってるキメラの口に挿しこんで引き金を数発引く。

大口径の銃弾を内側に数発撃ちこまれたキメラは流石に耐え切れず、口や目から血が流れそのままぐったりと動かなくなった。

 

「・・・フゥ。」

 

そしてそれが合図かのようにリュウガの契約モンスター達が亡骸のキメラに一斉に喰らい付く。

あの動きが遅いマグナギガですら一心に喰らう様子を見るとリュウガは安堵の息を吐く。

 

「ギリギリセーフってとこかぁ。・・・・さて。」

 

リュウガは視線を男の方に向けるが先程と同じように目を見開いたまま、亡骸のキメラとリュウガのモンスター達に目がいってる。

 

「・・・・しい。」

 

「あ?」

 

男がモンスター達に目を向けながら何か呟いてることに気付いたリュウガは耳を傾ける。

 

「素晴らしい!私の知らない生物の上、最高傑作のキメラを上回る性能とは!

これを解明したら私の研究はさらに上に行く!」

 

眼が狂気じみた顔で一人叫ぶ男はリュウガのカードデッキへ目を向ける。

 

「先程の蛇や武器もそのベルトに嵌ってるそれがあの生物たちを操ってると見て良いようだな。

それを奪って解析すれば自然とあの蛇達も私の言う事を聞くことになる。」

 

「ご自慢のペットを失って随分強気だな?」

 

「ククク、なに。私がそれだけ君をねじ伏せるだけの手が有ると言う事だよ!」

 

自信有り気に笑いながら男の体が次第に肥大化していく。

着ていた服が破け肌の色も若干黒くなっており、狂気に満ちた眼をしながらリュウガに対峙した。

 

「おやおや、見た目の割に元気な秘訣がそれかよ。」

 

「凄いだろ?キメラの細胞を私自身の体に打ち込んで得た体がこれだ。

コレのお蔭で70の歳など怖いもの知らずさ。フフフ、この体と君の生物、それとあのモルモットがいれば私の研究は世界を震撼させることが出来る!」

 

「・・・・そこまであのガキが必要なのかよ?」

 

「当然だとも。あの子は私の今後の研究を支えて行くために必要なモルモットであって、・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の娘なのだから。」

 

男の言った言葉にリュウガは仮面の下で目を開く。

この男は自身の子供を堂々と物扱いしてきたのだから。

 

「おや?驚いてるのかね?」

 

「アンタ・・・自分が言ってる事とやってる事が分かってんのか!?」

 

「なにをそんなに声を上げているのだ?私は自分の体にキメラ細胞を打ち込んだがまだ改良の余地があると思ってその為にあの子を用意したのだよ。

適当な健康体の女を身籠らせて、あの子の中に入ってる私の遺伝子を研究材料に様々なパターンの実験を行い、私を進化の過程に導かせるための大事な研究材料なんだ。」

 

「・・・・母親はどうした・・。」

 

「あぁ、あの子が生まれて言語を理解できるようになった頃合いにもう必要なくなったからキメラのエサにしたよ。

最後まであの子の事をミカ、ミカとうるさく言いながらだ。」

 

何の感情も無く只々答える男の言葉にリュウガを顔を伏せていた。

 

「さてお喋りはこの辺でよろしいかな?

キミのそれを頂戴するぞ!!」

 

巨体となった体からは想像できない速さで駆ける男にリュウガは顔を伏せながら立ったまんまだった。

 

「もらったぁ!」

 

筋肉で覆われた太い腕がリュウガに掴みかかろうと伸ばすが。

 

 

「なに!?」

 

リュウガは顔を伏せた状態で片手一本で男の腕を掴む。

男は腕を振り払おうとするがリュウガの掴む力が強い所為でビクともしなかった。

 

「・・・・・・テメエなんざ。」

 

腕を掴みながら顔を上げて行くリュウガの声には明らかに怒気が含まれた声を出していた。

 

「テメエなんざ、んな体に成る前から・・・人の皮被った・・・バケモノだろうが!!!」

 

「!?、ぶおォッ!!!」

 

リュウガは男の胴に強烈な拳を叩き付け、モロに喰らった男は予想外の威力に吹っ飛ばされる。

 

リュウガは吹き飛ばされた男に近ずき、頭の掴み上げ顔面に本気の拳を叩き込んでいく。

男が喋る間も与えず只々殴り、殴り、殴り、殴り、殴り、殴り、殴り。

 

この行為を制限時間ギリギリまで続け、リュウガの体が粒子に分解され始めた頃合いに手を放し、カードをバイザーに入れる。

 

<< FREEZE VENT >>

 

男は凍ったように動かなくなりそれと同時にリュウガの変身が解ける。

 

「・・・お前なんざ殺す価値も無い。

死より苦痛な生き地獄を味合わせてやる。」

 

<< ETERNAL >>

 

「変身。」

 

悠はエターナルに変身し、エターナルエッジに一本のガイアメモリを挿し込む。

 

<< GENE >>

 

<< GENE MAXIMUM・DRIVE! >>

 

エターナルエッジを突き刺し、緑の発光が出るなか男の体は段々と小さくなり年相応の体に為って行く。

 

エターナルが体の変化を確認すると今度は緑色のメモリをマキシマムスロットに入れる。

 

<< MEMORY >>

 

<< MEMORY MAXIMUM・DRIVE! >>

 

男の頭を掴むと頭からエターナルの腕に数字と英字が吸収されていく。

 

エターナルはメモリーメモリから読み取った情報からある地点へ跳ぶ為、ゾーンメモリを手に持つ。

 

<< ZONE >>

 

<< ZONE MAXIMUM・DRIVE! >>

 

 

エターナルが居なくなった後には半裸の老人と、大きな血の跡がそこに残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「・・・・ん。」

 

「やっと起きた?」

 

「・・・え?ユウ!?アタシ何で・・」

 

「何でって、さっきまで寝てた奴が何言ってるか。」

 

日が完全に上った時間帯に目を覚ました川内の目に写ったのは悠の背に乗っている自分。

突然の事に川内は驚くが、悠の変わらない様子を見て察する。

 

「・・・もしかして、もう大丈夫?」

 

「あぁ、何とか食われる未来は回避したよ。」

 

「そっか・・・・・ゴメン。アタシ、ユウを困らせてるだけで何の役に立ってないよね。」

 

「・・・んなこたねえよ。」

 

「え?」

 

「夜食、届けてくれただろ?俺にとっては大分助かったよ。」

 

「・・・・うん。」

 

川内は悠の不器用な感謝の気持ちに自然と口角が上がり悠の背に身を預ける。

自分はこの男のこういう所が好きになったのだと。顔を少し赤くしながら改めて自分が悠に抱いてる気持ちを再確認した。

 

「そういえばユウ、今時間大丈夫?学校は?」

 

「あ・・・・・・。

ハァ、いいや。昨日寝てないし今日はサボる。」

 

「それじゃあさ!今日はアタシがユウの家でお世話してあげるよ!」

 

「いや、それよりも寝かせてほしんだけど・・・。」

 

 

 

 

 

 

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早朝の街の街路で一人の男が発見された。

半裸の状態で道に寝ており、駆けつけた警察官が話を聞こうにも突然気が狂ったように叫び。

”私の体がぁ!私の頭脳がぁ!私の研究がぁ!”と意味不明な事を叫び、その男は警察の精神病院で隔離されることになり、今でも訳の分からない事を口にしてるとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、街外れの今は誰も使われてない施設で出火原因の不明な火事が起き、消防隊が沈下した時は何もかも燃やされた後に地下室の様なものが発見され、中は牢屋の様だがそこには何も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてキンジ、アリアが保護したミカという少女は自分の境遇について武偵が聞き出し、違法研究の被害者として十分な対応で保護されることが決まり。

施設に入ったミカを時々キンジとアリアの二人が様子を見に来ているとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇミカちゃん。それなぁに?」

 

施設で絵を描いていたミカに隣に居た少年が絵の内容について聞き出す。

 

「・・これはね・・・ミカにとっての・・・だいじなひと。」

 

ミカが描いた絵はあの時ミカを助けたリュウガの絵が描かれていた。

 

 

 





長々と書いてすみませんでした。

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