その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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蛮野のドライバーが出るらしいけど、名前がバンノドライバーって・・。
もう少しマシな名前は無かったのか・・。




 

 

 

悠がプロトドライブとして戦い始めて二日ほど経った頃。

 

悠は今日も夜の街を歩き、ロイミュードの捜索を行っているのがここ最近の日課になりつつ、その所為で翌日の学校はほぼ睡魔との戦いになっていくのだがこればかりは手を抜くわけにはいかなかった。

 

ロイミュードの出現は少なくとも一日に一件はあり、多い時には三件などあったが今夜はまだ確認されてない。

 

今日はこのまま何も出ませんようにと悠は願っていたが、ロイミュードが出てこない分最悪の知らせを受ける事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーキィィィィィンキィィィィィンキィィィィィンー

 

「ん?」

 

突如悠の耳に聞こえた金切音に悠は近くのビルの窓ガラスへ目を向ける。

 

窓ガラスには悠にしか見えない悠が契約してるモンスター達の姿と、自己を強く主張している鳴き声が悠の耳に響いてくる。

 

「・・・そういえばロイミュードばっかに目を向けてお前等のエサしばらくやってなかったか・・。」

 

悠は軽く言ってるがその内容はとても深刻である。

悠は本来ドラグブラッガーと契約してる分デメリットの一つである食事の提供に、複数のモンスターとも契約してるので実際の所戦力が上がるメリットと対照にデメリットの方が大きいのである。

加えてそんな時に都合よく抹消対象の転生者が来るとは限らないし、はぐれ悪魔も此処最近出現していない。

 

悠がどうしたものかと悩んでる時、悠の足元で何かが当たったような感触が来る。

 

「キャ!」

 

足元に目を向けるとまだ幼い肩口までの長さの黒い髪のまだ歳が十も行ってない少女が先程ぶつかった所為か尻餅をついていた。

悠はその少女の違和感にすぐ気付き、少女の着ている服は病院に入院している患者が着る様な薄い紙のようなもので、服や体は清潔とは言えない程に所々汚れがあった。

 

そして何より悠を見上げてる少女の目が恐怖の色に染まっており、すぐさま立ち上がると裸足の足で一目散に逃げて行った。

 

「・・・何なんだ、オイ。」

 

悠が少女の姿が見えなくなるまで見ていると、今度はビルの屋上から物音がしてそこに目を向けると、人とは言えない巨大な影が月に照らされて巨大な影はまるで何かを探すように首を動かすと強靭な足で屋上から跳び上がって行った。

 

そしてその影が向かった先は先程の少女が逃げて行った方角と一緒。

悠はしばらく考えた後、溜息をついて歩を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ・・。」

 

悠とぶつかった少女は恐怖に包まれながら土地勘の無い街をただひたすら走っていた。

花序はある場所から逃げて来たがその追手とも言える存在から逃げていたのだ。

 

小さな体でずっと走って来たのか、ビルに挟まれているパーキングエリアに停まってる車の影に隠れて息を整えていた。

 

「・・・ぐすっ、・・・うぅぅ・・。」

 

車の影で小さく縮こまりながら追手が来る不安と逃げてきた場所に対する恐怖が彼女の心を蝕んでいた。

誰も助けてくれる存在などなく、唯々不安な気持ちが彼女に圧し掛かっていた。

 

その時、隠れてる車の屋根に何かが落ちてきて車体は金属が大きくへこむ音と共に変形した。

 

「キャアアアッ!」

 

彼女は自分を追ってきた者に見つかったと分かり、すぐに逃げようとするが自分が逃げようとするその直線状に立ちふさがって来た。

 

それは人間か動物か判らず、人の様に二本脚で立っているが頭は犬で腕はゴリラの様に太く足は鹿の足を太くしたような形状だった。

 

追手の怪物は彼女に詰め寄っていき、彼女も自然と後ろに下がって行くがすぐに壁際まで追い詰められ後が無くなる。

怪物は追いつめられた彼女にその太い腕を伸ばし、彼女はこれから来る恐怖の所為で叫び声すら出なかった。

 

(イヤ!もうあそこに戻りたくない!・・誰か・・・誰か!)

 

声に出ない願いを心の中でしても来ない事は彼女も分かってるつもりだった。

しかし、それが分かっていながらも彼女は願った、自身を地獄から助けてくれる者の存在を。

そんなことを思いながらも怪物の手が彼女に触れそうになった時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ!」

 

怪物の横に停めてあった車の窓ガラスから突如何者かが現れ、その者はそのままを殴り彼女との間に立った。

 

(え?)

 

彼女が自身に背を向けて怪物と対峙している存在に気付き、彼女の前に立っている黒い仮面をした人物、リュウガは後ろに居る彼女に目を向けた後目の前に居る怪物に目をやった。

 

(えーっと、頭が犬で、上半身が・・ゴリラか、そして足が・・鹿か?あれは。)

 

目の前の怪物を観察していくリュウガを余所に怪物は突如現れたリュウガに敵意を向けて牙を剥き出しにしながら唸る。

 

(なにはどうあれ、これはラッキーかも。

ご都合主義は好きじゃないが、今回はそれに感謝ってかな・・。)

 

そんな事を考えてる内に怪物は足のバネを生かした跳躍力でリュウガに突っ込みその太い腕を突き出してきた。

 

リュウガは後ろの彼女を脇に抱えその場から跳び、狙いを外した怪物の腕は壁に深く突き刺さった。

 

リュウガは着地して抱えていた彼女を降ろし、一先ず彼女を此処から離れさせるために隠れる様に言う。

 

「下がって隠れてろ。いいな?」

 

彼女はリュウガを見上げながら首を縦に頷いてパーキングから出て行く。

リュウガは彼女が放れた事を確認して壁から腕を抜いた怪物と対峙する。

 

<< STRIKE VENT >>

 

リュウガは相手の特徴からあの強靭な腕力に対抗すべくメタルホーンを召喚する。

怪物はリュウガに殴り掛かり、リュウガはそれを受け止めるが思いのほかの力に少し後ろに押される。

メタルホーンで腕を弾いて攻撃するが、その巨体に見合わない跳躍力で後方へ下がり空振りに終わる。

 

<< ADVENT >>

 

リュウガは戦況を変える為にバイオグリーザの奇襲を仕掛け、透明化したバイオグリーザの舌が怪物を狙ったが怪物はバイオグリーザの舌を掴んでそのまま腕を振り下ろしてバイオグリーザを投げ飛ばした。

 

リュウガはこの光景に目を疑ったが怪物の頭部である犬の嗅覚が迫る舌の匂いを察知して透明になったバイオグリーザの攻撃に対処できたのだと推測する。

 

怪物はバイオグリーザを投げ飛ばした後再びリュウガに向かい、攻撃を仕掛けるなかリュウガは二枚のカードをバイザーに入れる。

 

<< SWING VENT >>

 

<< HOLD VENT >>

 

エビルダイバーの尾を模した鞭[エビルウィップ]とバイオグリーザの目を模したヨーヨー[バイオワインダー]を召喚する。

エビルウィップで怪物の鼻先を叩いて怯ませ、その隙にバイオワインダーで怪物の体を葛巻に拘束し怪物は身動きが取れず倒れる。

 

「捕まえた!」

 

リュウガは怪物の頭が犬ならば恐らく犬の特性である鼻先が弱いのではないかと推測を立て先程の手を撃ってみたがリュウガの推測は当たっていたようであった。

 

必死にワイヤーを引き千切ろうとする怪物を余所にリュウガはこの隙を逃さず止めを刺しに行く。

 

<< FINAL VENT >>

 

バイザーの音声と共にデストワイルダーが拘束された怪物を引きずり、その先にはデストクローを構えたリュウガが引きずられた怪物に爪を突き立て頭上高く持ち上げるクリスタルブレイクによって怪物の抵抗は空しく命を落とす。

 

「ふ~。・・うあッ!?」

 

亡骸になった怪物を降ろして一息吐いた所に突如デストワイルダーとバイオグリーザが主であるリュウガを押しのけて怪物の亡骸に一心不乱に喰らい付いて行く。

 

「!、ちィ!、やっぱ分け合って食うほど余裕は無いってか・・。」

 

リュウガは密かに恐れていたことが現実になった事に舌打ちをして悪態をつく。

 

二匹の喰いっぷりを見るからに他のモンスターにも早く餌を供給しなければモンスターが暴れ出し自然と主である自分に喰らいに来る状況にリュウガは立たされていたのだ。

 

そんなリュウガの元に近ずいてくる小さな影が一つ。

先程隠れてるように言った少女がリュウガの元に近ずいて来たのだ。

 

それと同時に怪物の亡骸をあっと言う間に食したデストワイルダーとバイオグリーザがリュウガの元に近ずき、彼女は二体のモンスターに小さい悲鳴を上げるがリュウガは二体のモンスターに強く言った。

 

「食うモンは食っただろ。早く戻れ。」

 

二体のモンスターはリュウガの言う事を聞き、車の窓ガラスを通じてミラーワールドに戻って行った。

 

彼女はモンスター達を従わせてるリュウガの姿を希望に満ちた目で見つめていた。

 

(この人、わたしを助けてくれた・・・わたしを守ってくれた・・。)

 

誰も味方が居ないこの状況で追手の怪物を倒し、尚且つ追手の怪物に劣らない強力なモンスター達を従わせてるリュウガが今自分を救ってくれる救世主に見えていた。

 

彼女はリュウガに対して口を開こうとしていたその時。

 

「全く、アリアの奴。桃まんくらい自分で・・・って!、お、お前、仮面ライダー!?」

 

突如二人の元に来たのは愚痴を言いながら此方に気付いて大声を上げるキンジの姿を見て彼女はリュウガの背に隠れてその手を掴む。

 

キンジもそうだが突然の彼女の行動にリュウガも仮面の下では目を見開いていた。

 

「オ、オイ。一体どういう状況だが知らないが、その子は一体何なんだ?」

 

「・・・俺に質問するな・・。」

 

キンジの質問に答えようがないリュウガはこのままじゃ埒が明かないと思い自身の手を掴んでる彼女に言う。

 

「オイ。取りあえずあそこに居る男の元に行け。少なくともお前には危害は加えない。」

 

「え?」

 

リュウガの言葉に目に涙を浮かべながら行きたくないと目で訴えるが、リュウガは今度は感情が入ったような言葉で言う。

 

「いいから・・・・行くんだ。」

 

「・・・・・。」

 

未だ涙目になってる彼女だがしばらくリュウガの顔を見つめた後渋々といった様子で手を放しキンジの元へと向かって行く。

キンジも状況が解らないまま此方に来た少女を保護する。

 

キンジの元に付いた彼女は振り向いてリュウガの姿を見るが、リュウガはデッキからカードを引いてバイザーへ入れる。

 

<< CLEAR VENT >>

 

リュウガの姿が透明になって消えていき、彼女は「あっ。」と声を出すがリュウガの姿はもう何処にも居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーキィィィィンキィィィィンキィィィィンー

 

 

 

 

 

「・・・ふう。」

 

変身を解除した悠は未だガラスから鳴っている金切音に溜息を溢す。

 

「・・・もう少し待てって。餌なら言われずとも用意してやる。」

 

ガラスから此方を見ているモンスター達に落ち着かせる様に言い、モンスター達は素直に引いたが悠の命の危機は刻一刻と迫っていた。

 

 






後編に続く!

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