時は大和達がロイミュードと遭遇する前まで遡る。
「新戦力?」
「そう、私の方もそろそろ動いた方がいいかなって思ってさ。」
悠は自宅リビングで上司と電話をしてた。
会話の内容はこれからの戦いに備えての話だった。
「ほら、最近じゃ例の転生者がファントムとか、えーと・・コイニョーボ・「ロイミュード。」・そうそうそれそれ、とかが出てきて君の負担が出るばかりじゃない?」
「まぁ確かに此処最近ロイミュードの出現が頻繁に起きてる。
あの日から五日経って八件もだ。これも何かを狙ってるのか考えなしにただ人を襲わせてるのか・・。」
「そこでだ、私が近々手に付けようとしている新しいライダーの力を君に送ろうと思ってね、まずその為の下準備として今君の元にある物を送らせた。多分そろそろ着く頃合いかな?」
「着くって何が・・。」
「ヤッホー。」
リビングの入り口から声が聞こえたので振り返ると、学生服を着た黒髪を三つ編みにした女性がアタッシュケースを持って立っていた。
「じゃーん、スーパー北上さまからのお届け物だよ~。」
「・・もしかして、コレの事?」
「その様子だと着いたみたいだね。」
「ム、なにさ、ワザワザ私が届けに来たんだから少しは嬉しそうな顔しなよ。」
「いや、君が来るのに文句も何もないんだが、ほら例の・。」
「・・・あー大井っち?大丈夫大丈夫。
今酔いどれ軽空母の絡み酒に巻き込まれてるから。」
「それはご愁傷さまだな、アイツ。
それよりそれは?」
「ハイハイこれね。私も何入ってるか聞いてないから知らないんだけど。」
悠は北上からケースを受け取り、携帯をスピーカー状態にしたままケースの中身を開けて見る。
中に入っていたのはドライブに変身するのに必要なドライブドライバーとシフトブレス、そして何より重要なアイテムである黒いシフトカー[シフトスピード プロトタイプ]。
「これって・・。」
「おー何々?新しいベルト?」
「それはデータ収集用だ。取りあえず君がプロトドライブに変身してロリショージョと・「ロイミュード!」・・・と戦闘した時のデータを集めてそれを元に君専用のドライブを作るのを計画してるから。」
「・・・チェイサーのデータじゃダメなのか?」
「うーん、出来なくはないんだがそっちよりもドライブドライバーを使った方が効率良いからね。
・・・やっぱり抵抗があるかい?君がそれを使う事が。」
「?、どういう事?これだって基本悠が使ってるのと一緒でしょ?」
「そういう意味じゃないんだ。
これはね、元々人間を守るために作られたベルトなんだよ。本物じゃないにしろ製作者が命を賭けてまで作った。」
「なら別に問題ないじゃん。悠のやってる事と対して変わりない・・。」
「全然大違いさ。俺は逆に人殺しにライダーの力を使ってる。
結果はどうあれ、どんな利益が出ようとそれの為に殺しをするのは正当な理由にならないよ。
・・そもそも俺は元から仮面ライダーを名乗るような人柄じゃあないから尚更ね。」
「・・・・。」
悠の言葉に何も言葉が出なかった北上の沈黙がしばらく続いた後、悠の元にチェイサーバットバイラルコアが飛んできて悠はそれキャッチしバットバイラルコアが悠に何か伝える様に鳴き声を上げる。
「早速か・・。」
「・・・行くの?」
「あぁ、何にせよ今ロイミュード相手に戦えるのは俺ぐらいしか居ないからね。」
そう言ってシフトブレスとドライブドライバーを着けシフトスピードを持ってガレージに停めてあるライドチェイサーの元まで行く。
そしてそんな悠に北上は黙って近くに居たのだった。
「・・・何してんだ?」
「んー?いや別に。ただこれから戦いに行くヒーローの変身を見ようかなって。」
「・・・物好きめ。」
悠はドライブドライバーのイグニッションキーを捻るとドライバーからエンジンが掛かる待機音が響き、次にシフトスピードの後ろ半分を回転させてシフトブレスに挿し込みレバーとなったシフトスピードに手を掛ける。
「変身。」
<< DRIVE! TYPE・SPEED! >>
シフトブレスを倒すと黒いボディパーツが悠の体に纏われ、プロトドライブへと変身する。
プロトドライブは手を開いたり閉じたりなど調子を確かめてる。
「おーー、カッコいいじゃん。」
「装着者がマシなら尚更な。」
「でも今はアンタしか居ないんでしょ?それなら早く行きなよヒーロー。」
「・・・言われずともそのつもりさ。」
プロトドライブはライドチェイサーに跨り、先導を行くバットバイラルコアの案内でロイミュードの元に向かって行った。
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そして今バットロイミュードを撃破した場面に変わる。
プロトドライブがバットロイミュードを撃破した姿を大和達は唖然としながらそれぞれが思った事を口にしだす。
「・・すっげえ。生の特撮モノを見た気分だ・・・。」
「うん、まんまモロが好きそうな姿だよねアレ・・。」
「これが仮面ライダーの戦い、・・自分たちが思ってたより予想以上の衝撃だったな。」
「クリの言う通りね、悔しいけどあの強さ私達よりかなり上だよね・・。」
「昨日の鎧武者もそうだけど、あの黒いのも相当だな。まゆっち。」
「えぇ、あの身のこなし只者では無いですね。」
(あの仮面ライダーもユウならばコカビエルの時に見た姿を合わせて四つ。
ユウ、君は一体何者なんだ?)
「・・フ・・・・フフフッ・・。」
「?、お姉さま?」
顔を俯かせ小刻みに震えながら笑う百代を一子が声を掛けるが、声を掛けたと同時に顔を上げた百代の顔にはプロトドライブを狙った野獣の様な好戦的な目をしてた。
「!、姐さんダメだ!アイツと戦っ・・。」
「仮面ライダァァァァァァッ!!」
「!」
大和が百代の異変に気付いて止めようにも百代はプロトドライブ目掛けて仕掛けていき、これに気付いたプロトドライブは百代の繰り出してきた拳を受け止めた。
プロトドライブが見た百代の顔はまるで欲しかった玩具を見つけた子供の顔と理性が外れかかった野戦的な目をしていた。
「やっと見つけたァ。私が本気を出してもすぐに壊れ無さそうな相手に・・。
さァやろう、今すぐ戦おう。そして私を満足させるまで楽しませてくれ!!」
目の前の百代は最早人間とは言えるものでなく、まさに血に飢えた獣だった。
百代はプロトドライブに掴まれてる手を振り払い、横蹴りを繰り出すがバックステップで素早く距離を取られ躱される。
プロトドライブは百代から距離を取って手を翳すと、プロトドライブの背後から三台のシフトカーが百代に向かって行く。
「!、な、なんだこいつ等!えぇい!離れろ!」
ミキサー車型の[スピンミキサー]がコンクリートを消防車型の[ファイヤーブレイバー]が消火剤を雪上車型の[ロードウィンター]が冷気ガスを放ちながら百代の周りを駆け巡る。
「邪魔をするなぁっ!川神流・人間ば・(ブシュー!)・!、ギャアアアッ!!目がァァァァァッ!!!!」
何かを仕掛けようとした百代の目にファイヤーブレイバーが消火剤を放って突然の不意打ちに百代は目を抑えながら転げ回る。
プロトドライブはその隙にこの場から立ち去ろうとしたが。
「まっ、待ってください!仮面ライダーさん!」
プロトドライブを呼び止めたのは由記江でこの事にいつも消極的な由記江が前に出て大声を出したことに大和達は驚愕の顔をしていた。
「あ、あああ、あの!さ、先程は助けてくれてありがとうございました!
そ、それと!もし貴方のお知り合いに、白い鎧武者の仮面ライダーさんが居たのなら、その方にも助けてくれてありがとうございますと、お伝えできないでしょうか!?」
所々焦りながらもこちらに対する感謝の気持ちにプロトドライブは仮面の下で目を見開いていた。
プロトドライブはしばらく由記江の顔を見た後、背を向けて今度こそこの場から立ち去って行った。
由記江は余程緊張していたのか、プロトドライブの姿が見えなくなると腰が抜けたように尻餅をつき、そんな由記江に大和達が声を掛ける。
「まゆっちすごいじゃんか!あそこまで自分の気持ちちゃんと伝えられて。」
「ホントだよ!私なんか突然の事に声が出なかったよ!」
「うむ、まゆっちの礼を伝えようとしたその心意気、実に見事だった!」
「やったなまゆっち!まゆっちの成長ぶりにオイラ感動したぜ!」
「松風・・・でも私、ちゃんと自分の思いを伝えられたのでしょうか・・。」
「大丈夫さ。由記江の伝えようとした思いはちゃんと彼に届いた筈さ。
キミはちゃんと思いを伝えた事を誇りにしていい。」
「ゼノヴィアさん・・・・はい!」
「・・・・ねぇ皆あそこにいるモモ先輩はいいの?」
「ぐおォォォォォッ!目がァァァァ!」
「あーー、うん。姐さんはちょっと反省が必要だと思う。」
「ま、まぁ。一応瞬間回復があるし・・。」
「でも大丈夫なんでしょうか、あれは・・。」
「まゆっち!ココは細かいこと気にせずドーンと行く所だぜぇ!」
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「あ、お帰り~。」
「・・・まだ居たのか、お前。」
「いいじゃん、いいじゃん。別に減るもんじゃないし。」
「少なくともお前が食ってる家のアイスは減ってるがな。」
悠が帰宅して見たのは、ソファーに転がりながらテレビを見てアイスを食ってる北上の姿が。
悠は溜息を吐いてテーブルの椅子に腰かけ、今日の出来事について思っていた。
「・・・・なんかあった?」
「なんだ、突然。」
「別に、何かあったような顔してたから。」
「別に何も、・・・・・ただ。」
「ただ?」
「・・・・初めて礼を言われた。」
「・・・・え?それだけ?」
「あぁ、・・実際あんな本気の目で礼を言われたのは今日が初めて。」
「ふーん・・・・まぁ言われたのなら素直に受け取ったら?
それがお礼を言った相手に対しての礼儀みたいなモンでしょ。
悠って素直じゃないから、そういうのあんまり本気で受け止めてなかったでしょ?」
「・・・・そんなもんかぁ。」
「そんなものだよ。」
それ以降は何も語らず、悠と北上はボーっとしながらテレビを見てた。
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「んっと、ちょっと量が多かったですかね。」
「まゆっちー。やっぱり大和田の嬢ちゃんの助けが必要だったんじゃねえか?」
翌日、由記江は学園の階段をプリントの束を持ちながら登っていた。
次の授業に使うらしく、彼女は若干苦戦しながらも階段を上っていた。
「大丈夫ですよ。私とて鍛えてる身ですし、このくらいは一人で・(ガッ!)・キャッ!」
喋ってる時に足を引っかけたのかバランスが崩れ後ろ倒れになりそうな由記江。
手はプリントでふさがってる為受け身が取れず、このまま背中から倒れると思って目を瞑ったら。
「・・・・アレ?」
肩に何者かの手が掛けられ倒れそうな体制ギリギリで誰かに支えられたようであった。
由記江は受け止めた人物を見ると、由記江を支えてたのは悠だった。
「大丈夫?」
「あ、は!はい!、お、おおおかげ様で大丈夫です!」
「お、おう。」
少し顔が近かったのか顔を赤くしながら礼を言う由記江に若干戸惑う悠。
由記江の体制を治して落ちてるプリントを拾い、由記江に渡す。
「手貸そうか?また転びそうになったら後味悪いし。」
「い、いえ!私の教室この階段上がってすぐの所なので平気です!」
「そう、なら気を付けて。」
「はい!・・あ、灰原先輩!」
「ん?」
「先程は助けてくれて本当にありがとうございます!」
「・・・・あぁ。
どういたしまして。」
次回お楽しみに。