その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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決闘の後篇です。
ではどうぞ。




 

クリスとの決闘に勝利した悠。

だが、ステージから降りようとした時、立ちふさがった一子から決闘を申し込まれる。

 

「どういうつもりかな川神さん?」

 

「・・・アタシ、ずっと考えてたんだ。

ユウが何を考えてアタシと全然会ってくれないのか。アタシバカだから口で言っても全然解決できないと思う。

だからこうしてぶつかり合う事でしかユウとちゃんと向き合えないって!」

 

「・・・・。」

 

一子の思いに何も語れなくなってしまう悠。

そんななか一子の隣に並び立つのが一人。

 

「すまないがこの決闘私も入れてくれないだろうが?」

 

「ゼノヴィア!?」

 

「一子、君のその思いを邪魔するわけではないが、私もどうしても確かめなきゃいけないことがあるんだ。」

 

一子の隣で自身が持つ聖剣を出すゼノヴィア。

悠はこの状況から目を背くことを止めた。

 

「先生、すみませんがもう少しだけ付き合ってもらっていいですか?」

 

「全く、次から次へと。

仕方ない、これが最後だ。これ以上の我儘は許さんぞ。」

 

「すんません。・・・あと。」

 

「なんだ、まだあるのか?」

 

「・・・俺も武器用意していいですか?」

 

 

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「ったくよ。オレは宅配便じゃねえっての。」

 

「まぁいいじゃない。そのお蔭でバイクに乗る口実が出来たわけだし。」

 

校門の前で悠が連絡して自宅からある物を届けてくれるように頼んだ天龍がライドマッハーに乗ってやって来た。

 

「ばっ、べ、別にオレはそんな事・・・。」

 

「龍田が言ってたぞ?」

 

「龍田ぁ・・。」

 

「にしても意外だね。

君の事だからライドチェイサーやエクステンダーで来ると思ってたけど。」

 

「いや別に俺だって白とかそういうの選ぶ時はあるっての。」

 

「ふぅん、この前の休みで白の水着ノリノリで買った時も?」

 

「そうそう・・・って何で知ってんだよお前!

・・・まさかそれも・・。」

 

「龍田だ。」

 

「龍田ぁぁぁぁ!」

 

「・・・それはそうと頼んだものは?」

 

「ぜえ、ぜえ。・・・あぁ、こいつだろ?言ってたモノは。」

 

天龍が取り出したものは何の変哲もない剣だった。

長すぎない細い両刃の片手剣で、鞘と柄は全て黒で塗られていた。

 

「一体それ何なんだ?

見た所唯の変哲もない剣に見えるけどよ。」

 

「ある物を作ろうとして、その試作品に作ったものだよ。

頑丈さだけはピカイチだから取っておいたんだ。」

 

「へぇ。・・・それはそうとお前それ使って戦るのか?」

 

「あぁ、いい加減こっちの方をケリつけようと思ってね。」

 

天龍にそれだけ告げ悠はグランドのステージに向かって行く。

ステージ上ではゼノヴィアと一子が武器を構えて待っていた。

 

「待たせたな。」

 

「いや構わないさ。

それと見た所君は剣を扱うのか?」

 

「程々にな。

・・・所で川神さん何でそんな不機嫌なの?」

 

「一子、やっぱり私が乱入したのを・・。」

 

「そうじゃ無いよ、ただユウってほんと女の人の知り合いが多いね。」

 

「お前ら、無駄なお喋りはその辺にしてさっさと始めてくれないか?」

 

那月がこれ以上は待たないと言う顔で三人は戦闘態勢に入る。

 

「さっさと済ませろよ。

両者、始め!」

 

開始の合図と共に一子とゼノヴィアは同時に駆ける。

下手な連携はお互いを邪魔しかねないので、無理に合わせず悠を攻めて行こうというのが二人が取った作戦だった。

 

悠は特に構えを取らず、剣も抜いてない状態で二人が近ずいてくるのを待つ。

 

「たあっ!」

 

「ふっ!」

 

一子の上から来る一振りを半歩ずらすことで避け、ゼノヴィアの横からの大振りも鞘に収まった剣で受け止め腹に蹴りを入れて後ろに飛ばし悠は挟まれる状況になる。

 

「やるな、だがこれからだ!」

 

ゼノヴィアはデュランダルを構えて悠に再度突撃する。

対して悠も未だ剣を抜かない状態でゼノヴィアに向けて突撃していく。

 

ゼノヴィアの上段を剣で受け流すように反らし背後に回り込んで前蹴りを繰り出す。

前倒れになるゼノヴィアの横を一子が通り過ぎ薙刀を振り下ろすが悠は片手で剣の鯉口だけを切ってそのまま鍔迫り合いの状態になる。

 

「強いね、ユウ!

何でこんなに強い事黙ってたのさ!?」

 

「誰も聞かなかったからだ。」

 

残った手で剣の柄を持ち一子の薙刀を弾いて完璧に抜いた状態で一子に斬りかかる。

一子は何とか受けきるも一撃一撃が重く、尚且つ隙を見せない剣の太刀筋に防戦一方になる。

 

「私を忘れるな!」

 

悠の背後からゼノヴィアが斬りかかるが残った剣の鞘で逆手で受け止め、前に一子、後ろにゼノヴィアという形で鍔迫り合いになる。

 

「驚いたな。私のデュランダルがそんな細い剣の鞘で受け止められるなど。」

 

「ホント、こんなに強いんだったら鍛錬に付き合ってもらえばよかった。」

 

「お褒めに扱り光栄だが、そろそろギアを上げていくぞ?」

 

そう言うと悠はいきなり身をしゃがんで前の一子に足払いを仕掛け転倒させる。

足払いの勢いを利用してカポエラの足技の様に下から蹴り上げて怯ませ、その隙を突いて斬りかかる。

 

デュランダルを盾に防御するが悠の攻撃は一歩も怯まず反撃を与える隙を与えない。

ゼノヴィアはなんとか立て直そうとするが悠の剣戟に手も足も出ず、隙を見せたかどうか知らないが、悠の片手に持ってる鞘の突きがゼノヴィアの鳩尾に入った。

 

「がはっ!?」

 

それを切っ掛けに悠は鞘を放し両手で持った剣でデュランダルを弾き、無防備になったゼノヴィアに頭部の回し蹴りを喰らわした。

 

モロに喰らったゼノヴィアは倒れ、意識を失う直前に見た悠の姿があの時自分に生きる目的について語ってくれたリュウガの姿に重なって見えた。

 

(そうか、やっぱり君が・・・。)

 

「ゼノヴィア!」

 

ゼノヴィアが一瞬の内にやられたことに一子は武器を構え直して、目の前にいる悠を相手に闘志を高める。

 

「はあああああ!」

 

気合を入れた雄叫びを上げて悠に突っ込む一子に対し、悠は剣を両手に持って左足を引き剣を顔の近くで水平に構えた。

 

互いの距離が3mぐらいになった時に仕掛けたのは悠だった。

構えた剣を地面スレスレに下から切り上げて剣戟による突風をを起こす。

突如起こった突風に一子は無意識に目を瞑ってしまい、それがこの戦いの勝負を決めた。

 

一子が目を開けた時にはすぐ眼前に居る悠の姿が。

悠は剣を逆手に持ち、柄頭で一子の鳩尾を思い切り突いた。

 

その一撃はとても重く、一子の意識を奪うには十分な威力だった。

 

(負けちゃった。・・・悔しいなあ、ユウと仲直りしたかったのに・・・。)

 

意識を失い前倒れになる一子を支える悠。

この光景に周りは静かになりその沈黙を破ったのは那月の言葉だった。

 

「そこまで!勝者・灰原!」

 

那月の勝敗を決める言葉にステージの周りから歓声が上がり。

それと同時に大和たちは気を失ってる一子とゼノヴィアの元へ行き介抱する。

悠はステージ上に上がった百代に一子を渡した。

 

「お前やっぱり強かったんじゃないか。

どうだ?これから私とイイことしないか?」

 

「お断りします。」

 

「何だよ、いいじゃないか。

戦え!戦え!私と戦え!」

 

「無意味な戦いはしない主義なんで。

それにもう先生帰っちゃったし、俺も帰りたいんで。」

 

「おい!待て!」

 

百代の言葉に止まることなく鞘を回収して剣を収め、校門に向かって行く。

校門にはライドマッハーに跨ってる天龍が悠を待ち伏せていた。

 

「まだ居たの?」

 

「別にいいじゃねえか、届け賃の見物くらいよ。

・・・それはそうといいのか?アイツら。」

 

「・・・・あぁ。」

 

「・・・そっか。

・・・これから帰るんだろ?乗れよ、送ってやるから。」

 

「いや、それ俺のバイクなんだけど。」

 

 

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決闘から翌日。

一子は無意識の内に校舎裏のスペースに来ていた。

 

一子自身もなぜここに来たのか分かってない。

ただ昨日の悠の事を思うと何故か自然と足がこの場に向かってしまうのだ。

 

いつもの様に木陰の下で腰を下ろす一子。

体育座り顔を埋めながら弱音を吐く。

 

「やっぱり無理なのかな、アタシには。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何が無理なの?」

 

突如帰ってきた言葉に顔を上げ振り向く一子。

そこには缶コーヒーを持った悠が居り、悠は一子から少し離れた位置で木陰に座った。

 

「ユウ・・何で。」

 

「何でここに居るのかって?

最初に言ったでしょ、ここは静かだから俺のお気に入りの場所だって。

なら俺がここに居ても何の不思議もないでしょ。」

 

そう言って缶コーヒーのプルトップを開けコーヒーを飲む。

 

一子はそんな悠の姿に目に涙を浮かべていた。

 

「・・・何泣いてんの?」

 

「だって、・・・アタシ・・もうユウと・・・会えないじゃ無いかって・・・。」

 

「・・・大げさだよ。ただ偶々会わなかっただけでしょ。

そんな事考えなくても君の事そんな嫌ってないから。」

 

「グスッ、・・・ホント?」

 

「ホント。」

 

「・・・じゃあ許す。・・その代り、今度鍛錬付き合って。」

 

「気が向いたらね。」

 

前の様な関係に戻った悠と一子。

そんな二人に近ずく影が一つ。

 

「なんだこんなとこに居たのか。」

 

「ゼノヴィア!?」

 

「・・・なんでココに?」

 

「なに、君がココに向かう姿が見えたのでな。後を付けたんだ。」

 

そういって、悠の隣に腰掛けるゼノヴィア。

 

「ねえ、なんか近すぎない?」

 

「そうか?私はこれと言って気にならないが。

・・・時に話は変わるが君の事を名前で呼んでもいいだろうか?

一度剣を交えた中として君と仲良くなりたいんだ。」

 

「・・・・好きにすれば。」

 

「そうか、なら改めてよろしくなユウ。」

 

「ちょっと!何かアタシの時と大分違くない!?

それとゼノヴィア!ユウにくっつき過ぎよアンタ!」

 

「・・・そういう君も近すぎだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次はどうしようか。

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