その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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今回は原作キャラと関わります。


決闘

 

 

三大勢力の会談から数日。

 

本格的に目を着けられた悠だがここ最近の仕事を隠密にやるようになり、三大勢力の目からうまく避けていた。

 

今日も教室の机でHRギリギリまで仮眠をとる悠。

教室の扉を開く音が聞こえたのでまだ覚めてない頭を起こしつつ顔を上げた。

 

「ほら、静かにしろ。HR始めるぞ。」

 

悠のクラスの担任である南宮 那月がクラスの静かにさせる。

その姿は小学校高学年か中学生の幼すぎる容姿だが本人いわく26歳と言うが実際は年齢詐称ではないかと疑ってるのが悠の本音である。

 

「さて、いきなりだがこのクラスに転校生が来る事になった。

外国から来たやつだが変な事教えるんじゃないぞ。」

 

那月からの言葉に再びざわつくクラスを余所に悠はどうでもよさ気な感じで聞き流していく。

 

「コラ騒ぐな。

全く、では入って来い。」

 

那月の言葉と共に入ってきた女子にクラスの男子はざわめく。

最初はどうでもいいと言った感じの悠だったが入ってきた女子の姿を見て一気に眠気が覚めた。

 

「今日からこのクラスに転入したゼノヴィア・川神だ。

色々不慣れな事があるからよろしく頼む。」

 

転入してきたゼノヴィアを見て目を見開く悠。

会談から聞いた話では彼女は行方不明の筈が何故この学園に転校生として、それに彼女が名乗った際に出て来たファミリーネームを聞いてまさかと思い考えるも。

 

「さて、不慣れな転校生に暫く世話係が必要なわけだが、・・・・灰原。お前がやれ。」

 

「・・・・・・はい?」

 

突如那月からの指名で我に返る悠。

流石の悠もこれには訳を聞かざる得なかった。

 

「先生、何で俺が世話係なんです?」

 

「お前もここに来てから大分経ったが同じ転校生だ。なら同じ転校生なら気が合うと思ってな。

それと私の話を聞き流してたお前の態度にイラッと来たからだ。」

 

「後半完璧に私情じゃないですか。」

 

「教師を舐めてるお前が悪い。

さて川神、あの気が抜けた男から色々世話になってもらえ。」

 

「はい。」

 

そう言って悠の机の前まで歩き、話しかける。

 

「ゼノヴィアだ。

これからよろしく頼む。」

 

「・・・灰原だ。」

 

 

 

______________________________________

 

 

 

 

昼休みに入り、ゼノヴィアに学園を案内する悠。

 

悠はゼノヴィアから何故この学園に入って来たのか、それと川神という名前をどうして名乗っているのか聞き出そうとする。

 

「そういえば外国から来たって言ってたけど、どうしてまたこんな半端な時期に転校を?」

 

「あぁ、ちょっと訳ありでな。

とある事情で放浪者になって手持ち金が無くなり行き倒れてた所を拾われて私の事情を話したらここで暮らすか?と言われてな。

正直当てもなく其処らを放浪する私にとっては願ってもない話だったのでそのまま川神院に世話になることになったんだ。

おまけにそこの館長が今の内に学園生活を楽しむといいと言われてな、ここの学園長でもあったから転入の手続きをしてくれたんだ。」

 

「・・・・なんか随分波乱万丈な人生だねぇ。

その年で放浪とは・・。」

 

「色々あったのさ。本当はその場で死んでもいいと思うほどの辛い事があったんだが、ある男に言われてたんだ。”自分の生き方は自分が見つけろ”って。

だから私なりにその生き方を探してみたんだが、正直自分でも驚くぐらい今の生き方に運命を感じるよ。」

 

「・・・へぇ。」

 

一先ずは彼女の生活について何ら問題ないと頭に引っ掛かっていた事が抜けた悠。

彼女の事情を聴いて学園の案内を再開しようとしたが。

 

「あっ!いたいた。

おーい!ゼノヴィアー!」

 

「ム、一子か。」

 

後ろから聞こえてくる声に振り向き答えるゼノヴィアと内心こうなることを忘れていたことに溜息を着く悠。

 

ゼノヴィアが川神院で暮らしているという事は必然的に一子とも関わりがあると言う事に悠の頭はそのことをほったらかしにしていた。

 

おまけにこちらに走ってくる一子の後ろに数人の男女が付いてきてる事にこれは逃げられないかと諦めの色を出す。

 

「やーっと見つけた。

アタシのファミリーを紹介しようとしたら出てるっていうから捜したよ。」

 

「そうだったのか。私は今この学園の案内を彼に頼んでいた所だったんだ。」

 

「へぇー。・・って、ユウ!?

えっ、ゼノヴィアが入ったクラスってユウのクラス!?」

 

「ん?なんだ、二人とも知り合いだったのか。」

 

「・・まぁ、一応ね。」

 

久しぶりに会う一子に適当に接する悠だが一子は悠が何故消える様に会わなくなった理由を聞き出そうとするが。

 

「おいワン子、一体どうしたんだ?」

 

「犬、今日入った転校生を紹介してくれるのではなかったのか。」

 

「大和、クリ。」

 

一子の後ろから来た集団から茶髪の男子と金髪の外人が前に出て一子に問いかける。

茶髪の男子は一子の前に居る悠を見て思い出す。

 

(こいつ確か、姐さんが目を付けた転校生。

そいつが何でワン子と・・・。)

 

「あぁゴメンゴメン。

こっちの青い髪の女の子が家で暮らすことになったゼノヴィア。」

 

「ゼノヴィアだ。よろしく頼む。」

 

「私はクリスティアーネ・フリードリヒだ。

気軽にクリスと呼んでくれ。」

 

「俺は直江大和だ。よろしくゼノヴィアさん。」

 

「島津岳人です!現在彼女募集中です!」

 

「全くガクトってば。僕は師岡卓也、よろしく。」

 

「俺は風間翔一!風間ファミリーのリーダーだ!」

 

「まっ!まままま黛由記江です!そしてコッチが。」

 

「松風だぜぇ!よろしくなゼノっち!」

 

「・・・椎名京。」

 

「あと、アタシのお姉さまを含めて風間ファミリーっていうチーム組んでいるんだアタシ達!」

 

「そうか、それは楽しそうなチームだな。」

 

「んで、そこの気の抜けた男は誰なんだ?」

 

それぞれが自己紹介したなかクリスは未だに名乗ってない悠に問いかける。

 

「あ、あぁ!この人は灰原悠君。アタシは友達だと思ってんだけど・・。」

 

「・・・どうも。」

 

少し気まずい感じで悠を紹介する一子にクリスは目を変えて悠に問い詰める。

 

「おいお前。まさかここ最近犬の様子が可笑しかったのはお前が原因か?」

 

「クリ!?」

 

「ここ最近のワン子は普段はいつも通りを装っていたが、その表情はどこかしら無理して作っていたものだった。

答えろ、貴様ワン子に何をした?」

 

「ちょ、ちょっと待ってよクリ!ユウは何も・・。」

 

「強いて言うなら何もしてないよ。

ここ最近は彼女とは口を交わしてすらいないから。」

 

「そうか・・・だが気に入らんなその目と態度。

灰原と言ったな、私は貴様に決闘を申し込む!」

 

悠を問い詰めるクリスの誤解を解こうとする一子だがそれよりも先に自分と一子は何の関係もないと否定する悠。

そんな悠の態度が気に入らなかったのかクリスは学園のワッペンを突きつけて宣戦布告を出す。

 

「どういうつもりかなぁ?」

 

「その性根を叩き直すためだ。

貴様のその無神経な性格が私にとって気に入らん。

ゆえに私の剣でその性根を矯正させてもらう。」

 

「待てよクリス。

少し無理がありすぎだ。」

 

「大和の言う通りだよ!

それにユウは何の武道もしていない普通の人なんだよ!?」

 

「なに、心配する必要は無い。

加減が出来ない程の腕は持ってないさ。」

 

大和と一子が若干暴走気味のクリスを止めるなか、悠もそれに便乗してこの状況から逃れようとする。

 

「生憎だが、俺はパスするよ。

君と戦う理由はこれと言って無いからね。」

 

「なんだ、男のくせに逃げるのか。」

 

「なんとでもどうぞ。

無意味な争い程、醜いものは無いからねぇ。」

 

「いや、意味ならある。

私の義による正義の為の戦いだ。」

 

「・・・・・正義?」

 

「そうだ。お前の腐りきったその性根を叩き直すため私の正義で貴様を矯正する。」

 

「・・・・ッハ。正義ねぇ。今時まだそんな考え持ってる奴がいたんだ。」

 

「ユ、ユウ?」

 

一子は突如雰囲気が変わった悠を見て動揺する。

悠はそんな一子を余所にクリスを見下した目で見る。

 

「何が可笑しい?」

 

「別に、正義だなんだ今時流行らない事抜かすもんだからついな。

それはそうと気が変わったよ、お前の言う決闘付き合ってやるよ。たしか、こうするんだったよな?」

 

悠は自身の持ってるワッペンを出して地面に叩き付ける。

対してクリスも持ってるワッペンを悠のワッペンに重なるように叩き付けた。

 

「貴様、最初は手加減してやろうと思ったが私も気が変わった。

貴様は全力で倒す。」

 

「そうかい、程々に期待しておくよ。」

 

そう言って悠はその場を後にした。

残された者たちは先程の悠の豹変ぶりに口が出ず、一子もその一人だった。

だがその中で一人だけ違う事を考えていたものが一人。

 

(あの気迫、・・似ている。あの黒いのと。)

 

 

___________________________________

 

 

「ではこれよりクリスティアーネ・フリードリヒと灰原悠の決闘を行う。」

 

放課後の学園のグランドで那月はめんどくさそうに進行する。

学園のグランドには決闘用のステージが立てられており、学園で行う決闘にはこのステージで行うのがこの学園の決まりである。

 

当然の如くステージの周りには授業を終えた生徒が観客として見に来ており、悠はあの時感情的に話に乗った自分を後悔していた。

 

「やれやれ、なんで転校生の世話を任せてすぐにこんな騒ぎを起こすんだ?

私だって忙しいのにこんな役をやらされるわで迷惑してるのだが。えぇ、灰原?」

 

「・・・・すんません。今度紅茶奢るんでそれで勘弁してください。」

 

「ふん、まぁいいだろ。さっさと終わらせろよ。」

 

巻き込まれた不満を悠にぶつける那月を収めた所で那月が進行を進めていく。

 

「東、クリスティアーネ・フリードリヒ。」

 

「はい!」

 

「西、灰原悠。」

 

「はい。」

 

「それでは両者。始め!」

 

那月の開始と共に先に繰り出したのはクリスだった。

 

クリスは手に持ったレイピアで刺突の攻撃を悠に仕掛ける。

悠は繰り出されるレイピアの突きを躱していく。

 

躱されたクリスはさらにレイピアの突きを反撃の隙を与えず繰り出していく。

それに対して悠はクリスの攻撃を躱し続けていく。

 

一方的に見ればクリスの攻撃を悠が紙一重で躱し続けるのもあってクリスの方が優勢だと周りの観客は見ていく。

 

「なんか灰原君避けてばっかだね。でも流石にあの突きからうまく避けて攻めるのは難しいよ。」

 

「俺もモロと同意見だな。

見る限り筋肉があるようにも見えないし、これはクリスの勝で決まりだな。」

 

「・・・・本当にそうでしょうか。」

 

「?、どういうことだ、まゆっち?」

 

「端から見れば灰原さんは避けてばっかりですが、それが全て突きが当たるギリギリのタイミングですべて避けてるんです。」

 

「まゆっちの言う通りかも。

あの男、避けながらクリスの攻撃を見ている。」

 

「そうなのか京?」

 

「うん、伊達に目は良くないから。それと結婚して大和。」

 

「お友達で、それじゃあ。」

 

「・・・最悪負けるかもね、クリス。」

 

 

 

ステージの上ではいったん距離を取って息を整えるクリスと未だ攻撃が当たってない悠が対面してた。

 

「どうした?俺を倒すと言っておきながら未だお前の攻撃を喰らってないんだが。」

 

「ふん、そういう貴様こそ。さっきから避けてばっかで何もしてこないではないか。」

 

「それもそうだな、まぁお前の攻撃は大体は掴めた。

・・・ホレ来いよ。そろそろ終わらせる。」

 

「嘗めるな!」

 

悠に挑発され再度突っ込んでいくクリス。

 

悠は繰り出される突きを右足を引いて躱し、レイピアを持ってる右手を掴み相手の力を利用して引く。

 

掴まれたクリスはバランスを崩して前倒れになり、悠は左ひじをクリスの脇に突き出す。

 

「がっ!?」

 

人体の急所を突かれたクリスは息を吐き出されるが、悠は追い討ちに突き出した左腕を90°曲げ、掌底をクリスの顎に喰らわす。

 

喰らったクリスは軽い脳震盪を起こし、悠はシメに掴んだ腕をそのまま引っ張って背負い投げの要領で投げる。

 

「ぐあっ!」

 

背中を思い切り叩き付けられたクリスは思わず手に持ってたレイピアを離してしまい、それを掴んだ悠がレイピアの剣先をクリスに突きつけた。

 

「そこまで!勝者・灰原!」

 

那月が試合終了の宣言をし悠の勝利が決まった。

クリスは先程のダメージが原因か気を失い、悠は手に持ったレイピアをクリスの近くに置いた。

 

そんな悠の元に那月が近寄って声を掛ける。

 

「おい灰原。お前本当は最初から手加減してたんじゃないだろうな?」

 

「まさか、最初の内は手一杯の状況でしたよ。」

 

「・・・ふん、まぁいい、そういう事にしてやる。

紅茶の件、忘れるなよ。」

 

「はいはい。」

 

 

 

____________________________________

 

 

「まさか、本当にクリスが負けた。」

 

「何だ何だ、私がサボってる間に何か面白そうなことが起きてるじゃないか。」

 

「姐さん!」

 

「モモ先輩!?」

 

クリスが負けた事に驚く大和たちのもとに現れた百代。

百代の視線の先は先程クリスに勝った悠の姿があった。

 

「姐さん。まさか灰原がただ者じゃ無い事を分かって俺に調べる様に・・。」

 

「ん?いや、最初はワン子が気になってる男がどんな奴か知ろうと思ったのが切っ掛けなんだが、アイツを見てると私の勘が囁いてきたんだよ。

アイツは強いって。

まあそれが今回の事でようやく分かった所だがな、さて私もアイツと・・。」

 

「ちょっと待ったーーーーー!」

 

百代が悠に戦いを仕掛けようとするなか、ステージから降りようとする悠を遮るものが一人。

 

それは薙刀を持った一子が悠の正面に立っていた。

 

「川神一子!灰原悠に決闘を申し込むわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





後編に続く。

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