艦娘との話メインの回です。
「ふ~、買った買った。」
「一杯買ったね~。」
「すみません悠さん、私達なんかの為にこんなに買っていただいて。」
「別にいいさ、君達にはこの間の借りがあるし。」
悠は川内型の三人を連れての買い物からの帰路についていた。
川内型の三人には凪沙の誘拐事件の時に身代わりと凪沙の護衛に一役買ってくれたので悠がそのお礼にと三人の買い物に付き合っていた。
買った殆どが服やお菓子などの今時の女子が買いそうなものばかりだが、服選びに約3時間も時間を使うとは流石の悠も計算外だったのがいい教訓になったのは此処だけである。
「でも、悠さんには私達を助けてくれた恩があるのに・・。」
「もう~神通ってばホントお堅いんだから。ユウがイイて言ってくれんなら正直に受けておこうよ!・・ホントは夜戦もしたかった所なんだけどな。」
「夜戦って、この辺りに海は無いんだけど。」
「あれ、言ってなかったっけ?アタシたち一応艤装着けてれば陸上でも海に居る時と同じ動きが出来るんだよ。・・・まぁ別にユウだったら夜戦じゃなくて床の方でも・・。」
「姉さん!」
川内から艦娘の性能について感心しているのを余所に川内と神通が騒いでる中、先程から悠の様子を窺っていた那珂が悠に話しかける。
「ねえ、ねえユウちゃんちょっと聞いて良い?」
「何?、そういえばさっきからやけに大人しいなって思ってたけど。」
「・・・凪沙ちゃんとさ、これからも会わないつもりでいるの?」
那珂の言った言葉で全員の足が止まる。
悠としては那珂がこのような事を言ってきたことに驚きを隠せないでいた。
「那珂ちゃんね、あの一件から凪沙ちゃんと仲良くなって時々会って話したりするんだけど凪沙ちゃん会うたびにいっつもユウちゃんの事話してんだよ?ユウちゃんの事話してる時の凪沙ちゃん寂しそうで那珂ちゃん可哀そうだと思ったよ。」
「・・・そう。」
「そうって!ユウちゃんなんとも思わないの?!凪沙ちゃんが辛い思いしていてもなんとも思わないの?!」
「なら、これからもずっと彼女と関わっていたとしよう、その時あの誘拐騒ぎみたいにまた彼女が巻き込まれたら?」
「それは・・。」
「那珂、君が彼女と仲良くなるなとは言わない。ただ俺は本来彼女どころか周りの人間と深く関わってはいけない存在なんだよ。」
「そんな事無いよ!だってユウはあの男からアタシたちを助けてくれたじゃん!」
「言った筈だよ、あの時は唯の結果論だって。それに君たちがあの男から解放されるのに俺はあの男をどうした?」
「・・・・。」
「そう、殺した。あの男だけじゃない、この世界に来るまでも俺は殺し続けてきた。そんな奴に関わる奴は自然と不幸になるだけさ。」
「ユウ。・・」
「悠さん。」
「・・・話は終わりだ。帰るぞ。」
悠は三人に顔を見せる事無く凪沙達の今後の関わりについて語る。
川内型の三人は前を歩く悠の背中が孤独に包まれてるのが見えた気がした。
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夜、悠は自分の部屋で新しいロックシードの開発プランを考えていた。
戦極ドライバー、ゲネシスドライバー二つのベルトに耐えられ尚且つ今までよりも性能が上のモノとなると時間も労力も掛かるのが問題だが悠は迷わず作業に取り掛かろうとしていた。
その時部屋のドアからノックが聞こえ、悠は尋ねた人物を確かめる。
「神通です。お時間よろしいですか?」
「・・あぁ。」
部屋を訪ねた神通は悠の許しを得て部屋に入っていく、悠は神通をベットの端に掛けさせ自分は椅子に座ってお互い顔を合わせた。
「さっきはうちの那珂が失礼なこと言って申し訳ありませんでした。」
「別にいいさ、中途半端な形で縁切ろうとしたこっちにも非はあるし。」
「・・・・悠さんは。」
「ん?」
「・・・・悠さんは寂しくないんですか?ずっと一人で戦ってきて他の世界を転々としていて。」
神通は悠の背中を通して見た孤独感から悠の心情について深い所を聞き出す。
内心、自分が悠の深い事情を聴きだすのはお門違いだと思いながらも聞き出せずにはいられなかった。
神通の問いに悠は背もたれに身を乗せ頭を抱えながら困った風に答える。
「寂しいね、・・どうだろ。俺自身は慣れたつもりだけど、本心はそうじゃ無いかもしれないかな。」
「えっ。」
神通は驚きの声を上げる。正直悠が自分の問いに素直に答えるとは思ってみなかったからだ。
「ホントに縁切るつもりなら接してきた奴の記憶を消すぐらい徹底的にやるべきなんだけど、何故かそれをしたくないって言う自分が何故かいるんだよ。・・・俺がシフトカーや武器開発に没頭するのもそれを必死で誤魔化してるからじゃないかな。」
「・・・どうして私にそこまで話すんです?」
「それこそなんでだろうな。・・・・いや、ホントは待ってたのかも。・・・・・自分の弱い所吐き出すための口実がさ。・・・幻滅したか?自分を最低だ人殺しだ罵ってた男がこんなベラベラ弱音吐く様がさ。」
「・・・そんな事ありませんよ。悠さんだって人間なんですから弱い所の一面があったっておかしくないですよ。・・・・それにやっぱり私は悠さんが最低だとは思えませんよ。」
「神通?」
神通は悠の自虐を聞いて、微笑みながら悠の目を見る。
「私達は元はあの男の願いによって生まれた存在です。あの男は私達をそれこそ道具としてひどい仕打ちをしてきました。あの時は私を生んだ人だからって理由で文句は言いませんでしたがそれで姉さんと那珂ちゃんがひどい目に遭ったらどうすればいいかずっと悩んでたんです。
そんな時、悠さんがあの男から私達を救ってくれたって聞いたときは喜びました。おまけにカミサマから仕事を頂いて存在する理由も出来て、・・・・私、今でも覚えてるんです。悠さんが私達に力を貸してほしいって言われたときモノとしてではなく人として頼ってくれた事に。
私はそんな悠さんが最低な人だと思わない。・・いや、最低な人だと思いたくないんです!」
「神通。」
神通の訴えにこの前会ったラ・フォリアにも言われたことを思い出す。
”私は信じますよ、アナタが良い人だって”
今の神通はあの時のラ・フォリアと同じ真っ直ぐな目で悠を見ていた。
「・・あっ、ご、ごめんなさい!過ぎた事を言いました!」
「・・・いや、いいよ・・・いい人か。・・・・それが例え、人殺しでもか?」
「・・・あなたのした事が正しいとはハッキリ言えないですけど、それでもアナタがしてることはいつも誰かの為だって私と姉さんたちは知ってるつもりです。」
「・・そっか。」
神通の言葉を聞いてか悠は胸に抱えてたモノが少しだけ軽くなった気がした。
「・・・長々と失礼しました。私は此処で。」
「・・・神通。」
部屋から出ようとする神通に悠は背を向けながら呼び止める。
「・・・・ありがとう。」
「!・・・いえ。」
悠は神通に礼を言い、神通もそれを受け取って部屋から出た。
部屋から出た神通は先程の悠に言われた感謝の言葉を思い返して自然と笑みを浮かべていた。
「やるねぇ~神通。まさかユウにあそこまで言うとは。」
「神通ちゃんってば意外と積極的~♪」
「ね、姉さん!那珂ちゃん!」
突如出て来た川内と那珂に驚く神通。二人の様子を見るに先程の話を聞いていたようであった。
「いや~まさか神通もユウを狙ってるとは、スミに置けないな~ユウは。」
「ち、違います!・・・あれ?私・・も?」
「ライバルは多いよ~。凪沙ちゃんもそうだし川内ちゃんだって狙ってるから、ファイトだよ神通ちゃん!」
「え、えぇ~~~!」
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「へっくし!・・・風邪引いたかな。」
今回は主人公の内面が出た話でした。
それではまた次回。