長い間間を空けて申し訳ありませんでした…。
物語りも終盤に差し掛かり、ラストはあーでも無いこーでも無いと軽くスランプに陥ってしまいまして。
取り敢えず現時点で納得いったのを投稿します。
「オイオイ、無視は傷つくなぁ。せめて”何でそんなトコに立ってらるんだー!?”位のリアクションは見せて欲しいよ。」
何時になく陽気に振舞うアベルを前に自然と表情が強張る史汪、番堂、黒咲の三人。
此方に向けている無邪気な笑みを前に背中に張り付く程イヤな汗が止まらず流れている程の緊迫感が公園内全体を包み込んでいる。
宙に立っていたアベルがゆっくりとした速度で地上へ降り立つ。史汪達は一瞬の内も目を背けずドライバーを身に着け、何時でも戦えるよう身構えていた。
「悲しいかなぁ。まさかキミ達が裏切ってくれるなんて…悲しすぎて心が裂けてしまいそうだよ…。」
「なんとも嘘くさいセリフだね、そもそも心なんてある事すら疑わしいよ…。」
「あるさ、番堂…。少なくとも、こうしてボクに楯突くというのを目の当たりにして不快と思う位に。」
「アラ、ソレは良かったわね。ならその顔に一発叩き込んだらもっとイヤな気分を味わえるって事ね…!」
「一心さん、気持ちが荒ぶるのは無理も無いですが此処は慎重に……少なくとも今の我々ではヤツに対して勝ち目はほぼありません。」
「へぇ、流石BABELリーダー。よく相手と状況を見据えられる…で?気が変わって戻る気になった?」
「ご冗談を。勝てないなら、少しでも手の内を明かすまでですよ──変身ッ!」
<< CHANGE NOW! >>
「アタシは勝つつもりで行かせて貰うけどね?──変身ッ!」
<< HENSHIN >>
<< CHANGE BEETLE >>
<< KAMEN RIDER CHRONICLE >>
「私も受けた屈辱分は返すつもりだよ──変身。」
<< BUGL UP! >>
<< ───今こそ時は、極まれりィィィ! >>
史汪、番堂、黒咲は変身して抵抗の意志を表す。
ソーサラー、コーカサス、そしてクロノスに囲まれるアベルは平然とした態度を崩さずに神太郎から奪ったゲーマドライバーを装着した。
「やっぱ人間っていうのは愚かだなぁ。敵わないと分かってて歯向かうなんて非合理的…。
でも、だからこそ見ていて面白い。カイン程じゃ無いが、ボクだって人間が大好きなんだ♪…だからこそキミ達に見せてあげよう。
完全なる力、神としてのボクの力をね♪」
<< GOD MAXIMUM MIGHTY X >>
「確か、こうだっけか?──グレード1000000000」
<< マキシマムガッシャット! >>
「変身♪──ッ!」
<< ガッチャーン!──FU・ME・TSU! >>
<< 最上級の神の才能!クロトダーン!クロトダーン!! >>
差異は有れどガシャットを装填してレバーを開くまでの手順はハルナのマキシマムマイティXと同様の独創的な待機音が流れる中で頭上に現れたゲンムの顔を象った巨大なアーマーが出現。
その身をゲンムへと変えていたアベルはガシャットの上部スイッチであるゲンムの頭部を叩き付けると勢いよく跳んだ。
「トゥッ!───ッ!」
<< GOD MAXIMUM!──X! >>
「フンッ!───フゥゥゥ…。」
巨大なアーマーと合体し、轟音を響かせて地上に舞い降りたアベルの変身したゲンム。
「それが…。」
「そう、コレがゴッドマキシマムX!そのレベルはビリオン、10億だ!」
仮面ライダーゲンムゴッドマキシマムゲーマー。
Lv.1000000000という脅威のレベルを持つゲンムの姿は外見的要素だけで無く、肌に突き刺さる程のプレッシャーを漂わせる程強大に魅せていた。
「レベル10億…何ともデタラメな数字を…。」
「10億が何よ!数字は所詮、ただの気休めに過ぎないのよォッ!!!」
「ッ!?待て!?」
クロノスの静止の叫びも振り切って単独棒立ちするゲンムへ地面を蹴っていくコーカサス。
「初手貫徹!先手必勝!これまでの恨みと散った仲間の無念を思い知れやァ!!」
<< RIDER BEAT >>
「エイィヤァッ!!」
剛腕から轟かせる一撃。ゲンムのアーマーに衝突する拳から電撃と衝撃が生み出される。
全身全霊で放ったコーカサスの本気。目の前の相手が各上の相手であると踏まえ、これまでの因縁を払う為に放った一撃はゲンムの足を僅かに後退させた。
「フゥゥゥ…───ッ!?」
「ん~~?…軽いねぇ♪」
確かな手応えに残身するコーカサスの前で余裕の表れを見せるゲンム。
平然と振舞うゲンムの態度に硬直するコーカサスに、ゲンムは倍ある大きさの拳をコーカサスに浴びせると、爆弾が破裂したかのような爆音と共にコーカサスが吹き飛んでいった。
「ゴハッ…!?───ガハッ!」
「一心さん!」
「全くノープランで突っ込んでいくからこうなる!!」
「おややぁ大丈夫かい?これでも軽いジャブで打ったつもりなんだけどなぁ?」
「ジャブって…受け身取らなかったら死んでも可笑しくなかったわよ…!」
ゲンムの拳が当たる寸前に受け身を取って威力を軽減したコーカサスであったが、体の内側から破裂する程の強烈な一撃によるダメージで既に瀕死一歩手前である。
「さて、先ずは一人脱落かな?」
「ッ!!…舐めてんじゃ、ないわよ…!」
「一心さん!無茶はお止しなさい!アナタの体はもう…。」
「……ハァ、やれしょうがない。こんな速く使う事になるとは…。」
振るえる膝で立ち上がろうとするコーカサスを横目に、クロノスが取り出したエナジーアイテムを収めるメダルホルダーから一枚のメダルを手に取る。
「何をするつもりだい?まさか、そのアイテムで彼を治そうと?」
「その通りだが?」
<< 回復! >>
指で弾いたメダルがコーカサスに吸い込まれると、淡い光に包まれていく。すると、膝の震えが収まり軽くなった体の変化にコーカサス自身が戸惑う姿に、ゲンム表情が僅かに揺らいだ。
「何?…何でガシャットを用いて無いライダーにアイテムの効果が…?」
「私が独自に組み立て取り入れた、協力プレイ用のパーティーシステムさ。私が味方と認めたライダーにはシステムの違いに関係なくエナジーアイテムの恩恵が得られる。
更に──ッ!」
<< PAUSE >>
クロノスの最大の武器であるポーズ。ゲームエリア内の全ての時間を停止させる能力はプレイヤーであるクロノスとハイパームテキのエグゼイドを除き、誰にも抗う事の出来ない強力な武器である。
唯一動けるのはクロノスだけとなる静止の世界。だが、相対しているゲンムが動かないのに反して、背後にいたソーサラーとコーカサスはポーズの中で止まることなく動いていた。
「このように味方はポーズの効果は受け付けない…って、聞こえていないか。今のキミには。」
「天治君、コレばかりはキミを天才と認めるしかないですね!」
「…でもあまり良い気分じゃ無いわね。動けない相手を一方的に、って…。
今まで悪党してたアタシが言うのも凄く皮肉だけど。」
「操られていたんだから実質ノーカンさ。それよりも丁度いいサンドバックが出来た事だし、一発かましてやろうよ。」
<< マッスル化! >>
<< マッスル化! >>
<< マッスル化! >>
<< キメワザ! >>
クロノスは自身とソーサラー、コーカサスにマッスル化のエナジーアイテムを投げ入れ攻撃力をアップさせると、必殺技のモーションに入った。
ソーサラーも同意を表すように右手に嵌めたコモンリングから黒い龍が描かれたファイナルストライクリングに嵌めかえる。
「一心さん…。」
「…やるわよ。今は矜持より、結果が大事だってのは重々承知よ!」
「ならば、いきますよ!」
<< YES! FINAL STRIKE! UNDER STAND? >>
<< CRITICAL CREWS-AID! >>
「「「ハァッ!───」」」
三人が同時に跳び上がり、微動だにしないゲンムに向けて右足を突き出す。
金色の魔力と淡い緑色の光と強靭な足から繰り出されたトリプルライダーキックはゲンムに炸裂。僅かに動いて大きく仰け反った体勢で再び止まった所に、着地を決めたクロノスがドライバーへ手を持って行く。
<< Re・START >>
停まっていた時間が再び動き出すと、ゲンムの巨体が勢いよく後方へ吹っ飛んでいく。公園に置いてある遊具を壊しながら勢いよく背中から倒れた瞬間、ゲンムを中心に大きな炎が上がった。
「…流石に少しは効きましたよね?」
「だといいね。コレで効かなかったらもう打つ手無しだ。」
「止めなさいよそういう不吉なの!!手応えは確かにあったし、幾ら頑丈でも多少のダメージは…。」
「……効いたよぉ?───ちょっぴりと、だけどね♪」
「「「ッ!!」」」
炎の中から地震の様な足音を立てながら健在の姿を見せて来たゲンム。
無防備な状態で三人の必殺技を受けても大したダメージになって無い事に、先程は軽口を叩いたが内心焦りを見せるクロノス。そんなクロノスを見て察したソーサラーは、コモンリングに嵌め変え、何時でも撤退できる準備を見せる。
「さて、キミ達の望み通りサンドバックにもなってあげたし、そろそろお披露目といこうかな。
このゲンム、ゴッドマキシマムの真の能力、それは…。」
「生憎ですが!今日はこの辺で失礼させて貰いますよ!!──ッ!」
ゲンムが仕掛ける前にテレポートで撤退しようとコモンリングをベルトの前に翳すソーサラー。ゲンムの能力を調べるべく立ち向かったが、これ以上はマズいと察した為に悔しくも撤退を決意。
限界まで飛べるところに飛び、バラバラに散ってゲンムの情報を悠達に報せようと試みるソーサラーであったが、ベルトに翳してから数秒経っても、ソーサラー達はゲンムの前に居たままだった。
「ッ!?…どういう事です!?魔法が…!」
何度もベルトを操作してリングを前に翳すも、テレポートする為の魔法陣が一向に現れない所かベルトからは何も聞こえない事に動揺を見せるソーサラー。
「ちょっどうしたのよ!」
「ココにきて故障かい!?ならポーズで…ッ!?」
見兼ねたクロノスがソーサラーに変わりポーズで時を止めようとするが、ドライバーのボタンを押してもポーズが発動しない。
そんな二人の慌てふためく様子を見るゲンムはクックッと肩を振るわせて笑っていた。
この状況から原因はどうみてもゲンムによる仕業だと察するクロノスは声を荒げて問い詰める。
「アベル…!お前一体何を!」
「そうせっかちにならないでよ、これから教えようとした所だってのに…。では改めて教えよう。
ゲンムゴッドマキシマムゲーマーの真の能力、それは、ボクの思うがままに新たなゲームを生み出すという能力さ!」
「ゲームを、創るだって…?」
「キミ達の魔法やポーズが使えないのはボクが今さっき創ったゲームのルールだからさ♪
ノックアウトファイターの改良版、【サバイバーファイター】!!1対1のリングから、たった一人の生き残りを賭けた多対一のバトルフィールドへ。
このゲームは、武器も、魔法も、能力も一切使えないのさ!!
故に───ッ!!」
「ッ!!───ゥォォオオオオッ!?」
両腕を掲げ勢いよく振り下ろすと、ゲンムの腕が伸びてその巨大な手が魔法の使えないソーサラーの体を掴むと、今度は足を伸ばして空高く上がると同時に伸ばした腕を引いてソーサラーも空高く上がった。
「ダメージ判定は全てッ、直接攻撃限定だぁッ!!ソォォイッ!!」
「ウァァァッ!!──ガッ…ァ…ッ!!」
掴んでいたソーサラーを地上に向けて大きく振り被って落としたゲンム。地面に叩き付けられたソーサラーは、大きく出来たクレーターの中心で埋もれ、余りのダメージに起き上がってくる様子が見られない。
ドシン!と大きな音を立てながら着地するゲンム。その時、丁度同じタイミングで公園に現れたオーロラカーテンから、悠と蓮司が出て来て、悲惨な荒地となった公園を見渡す。
「ッ!?──何だよありゃ?」
「ん?…キミ達か!参ったなぁ、こんな形でこの姿を見せる気は無かったんだが…。」
「アベル…その姿…!!」
「あぁ、コレがカインの力を得て誕生した新たなゲンム!──仮面ライダーゲンムゴッドマキシマムゲーマー!そのレベルは…なんと、10億だ!」
やって来た悠達に対し、ゴッドマキシマムゲーマーの姿とレベルを大手を広げて高らかに言うゲンム。
そんな隙を野獣の如く喰らい付くために出て来た影が一つ。背後から、狙ってコーカサスが拳を突き出して来た。
無防備な背中を見せてるゲンムにコーカサスは気迫の籠った拳を何度も叩き付ける。繰り出すラッシュは、絶え間なく響く打撃音と残像から腕が何本もあるかと思わせる位のスピードであった。
「ウラ゛ァァァァァァッーーッララララララァァッッッ!!!」
「フフ♪キミにはお誂え向きのゲームだが…ッ!」
「ッ!?」
背中に怒涛のラッシュを受けてるゲンムは、振り向くと同時にコーカサスの拳を掴み取る。
「軽い拳では全く意味が無ぁいッ!!──フゥンッ!!」
「グァッ!!──」
カウンターの一撃を見舞い、吹き飛ぶコーカサス。
「フム…折角だ。キミには特別に【サバイバーファイター】の裏ボスと戦わせてあげよう♪…ッ!!」
「ッ!!……な…ッ。」
突如としてゲンムが呼び出した巨大な存在に、コーカサスは仮面の下で絶句しながら見上げる。
ゲンムの前に浮かんでいる5m程の金色の巨体は、六つもある赤い眼光をコーカサスに向けており睨まれただけで委縮する程の気迫を込めている。
そして何より目を引くのは、筋骨隆々な太い腕が2本だけで無く、その倍はある10本の腕を露わにしていたその姿を前に、コーカサスはポツリと呟く。
「あ…阿修羅…。」
「プレイヤーが最後の一人になった時に現れ、真の強者であるか否か見定める武神・ラシュア。
武闘家が武の神によって最期を迎えるなんて、本望だろう?」
ゲンムが片手を上げると、ラシュアは10本の腕を構え拳を音が鳴る程握り締める。その様は、まるで死刑執行人の如く鎌を構えているようにも見える。
ラシュアの放つ存在感に唖然と立ち尽くしていたコーカサスであったが、やがて全てを悟ったかの様にフッと笑みを溢した。
「笑えちゃうわ…生涯かけて積み上げたモノが、こうもあっさり崩されるなんてね…。」
「オイ!何を棒立ちしてるんだ!!さっさと逃げ…「アンタは黙ってなさい!!」ッ!!」
逃げるように叫ぶクロノスの声を無視し、足を広げ拳を構えるコーカサスを背後から見るクロノスは信じられないモノを見たかの様に狼狽えた。
「まさか、真っ向から迎え撃つつもりか!?キミってヤツは一体何処まで脳筋なんだ!?」
「お生憎ね!アタシは生まれてこの方武術と花の事しか頭に無いのよ!アンタみたいな科学者さんと違ってね!!……でも、だからこそアタシ達、イイ仲間でいられたと思わない?」
「ッ!!…キミ…。」
目の前の怪物を前に、自分では手も足も出ない事は直ぐに分かった。死を悟ったのだ。
だがそれでも、コーカサスは…黒咲 一心は立ち向かってみせた。
「例え散りゆく命でも!仲間の為に咲かせてみせましょう花道を!!───我の屍超えてゆけぇいッ!!!」
友の為、仲間の為に、命を燃やす覚悟を決めて吠える。
だが、その叫びは神の耳からしたら、か弱き遠吠えでしかなかった。
「それが遺言?暑苦し───殺れ。」
ゲンムの声と同時にラシュアの剛拳が振り下ろされる。
「シェエェァァァァァァァァッッ!!」
10本の腕から繰り出される拳を前に、コーカサスは迎え撃つべく構えていた拳を突き出す。
ラシュアとコーカサスの拳が撃つ合う度に空気が弾け、音が響く。打ち合う度にコーカサスの腕は、筋が切れ、骨が軋み、スーツの内側は血潮に染まっている。
それでもコーカサスは一歩も引かずに拳を突き出し続けた。骨が砕けて拳を握れなくとも、武神を前に抗い続ける。
「ラ゛ラ゛アアアアアアアァァァーーーーーッッ!!!───ブゥッ!ガッ、ガァァァッ…!!!」
ラシュアの剛拳が遂にコーカサスの身に炸裂する。頭部の角が容易く折れて黄金に輝くアーマーが拉げていく痛ましい姿になりながらも10本の腕から繰り出す爆砕は止まらない。
「ッ!!黒咲ッ!!」
クロノスが咄嗟に叫ぶも、猛烈なラッシュを受けているコーカサスは何の反応も返さない。
ベコベコに歪んでいくアーマーも遂に限界を迎えたのか、スパークを凄まじい放った後ブレスに収まっていたゼクターが爆ぜて砕け散ると変身が強制解除された。
ボロボロのコーカサスから夥しく血を流し、ダランと垂れる両腕が真っ青になって俯く黒咲の姿に。
どうみても重傷であった黒咲だが、彼はまだ二本の足で地に立っている。
「んん?まーだ生きてるぅ?アレだけ受けて立てるとか、どんだけタフ……ん?」
重傷を負いながらも未だ健在の黒咲にげんなりするゲンムであったが、黒咲を注視して気付くや否や片手を挙げてラシュアを消した事に怪訝になるが、何もしてこない期を逃さずクロノスに続いて悠達も黒咲の元に駆け寄る。
「おい!大丈夫かキミ!!……ッ!!」
「何ボーっとやってんだ!!早くソイツ下がらせ…ッ!」
「こ、れは…。」
いち早く駆け寄って肩を掴んだクロノスに続いて悠達も気付く、ゲンムが何故ラシュアを消したその理由を。
俯いてる黒咲の目は開いているも、その瞳にもはや光は一切写って無かった。全身全霊を尽くして、燃え尽きているのだ。
黒咲 一心は、最後まで一歩も引く事の無いまま絶命した。
「黒咲…。」
「立ったまま絶命…何て男だ。」
「……。」
「ハッハッハッハ!最後の最後に中々のを見せてくれたねぇ!!
オカマキャラっていうインパクトだけが売りだと思ってたけど、イイ意味で裏切ってくれたよ!!正に有終の美を飾ったってカンジ?」
「ッ!貴様…ッ!!」
「武に生きた男の侮辱は許さんぞ!!」
「オイ落ち着け剣バカ!
お前もムキになってんじゃねぇよ!!今はどうやったって敵わねぇってとっくに気付いてんだろうが!」
黒咲をやられて感情的になるクロノスとゲーマドライバーを取り出した蓮司を、悠が抑える。情報が少ない今、感情的になって勝てる相手出ないと、黒咲の死を以て思い知らされたからだ。
「さて、お披露目もここまでにして…。」
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悠達に余計な事を喋る前にクロノスを消してしまいたかったゲンムは、一歩前に出ると体に鎖が巻き付かれていく。
「は?」
視線を別の咆哮に向けると、辛うじて立った状態のソーサラーが此方に手を向けていた。
「史汪!」
「天治君!キミは彼等と共にここから逃げて下さい!!アナタが居た方が、アベルに勝てる算段が見つかる筈です!!」
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「おやおや、必死だねぇ。カワイイこと♪」
クロノスと悠達をこの場から逃がす為に、ゲンムを鎖で封じていくソーサラー。
立て続けにチェインの魔法をかけていき、ゲンムの巨体が白い鎖で葛巻状態となり首だけが動く状態でゲンムが笑みを漏らす。
「泣かせるねぇ、その身を犠牲にして仲間を助ける。王道の展開だ……【バンバンウォークラフト】!!」
ソーサラーの必死の抵抗を嘲笑うかの如くゲンムが新たにそのゲームの名を口にすると、ゲンムの背後にジェットコンバットのコンバットゲーマーやバンバンシュミレーションのシュミレーションゲーマー、更には砲身をソーサラーに向けている小型の戦車らしきゲーマーが次々と現れた。
「ッ!おい、アレはお前のガシャットの…!!」
「見りゃ分かるよ!でもあの戦車は知らねえ!!一体何だってんだ!?」
「アレがヤツの能力だ!今のヤツはイメージ通りのゲームを思うがまま創る能力を持っているんだよ!!」
「ハァ!?…んだそのデタラメはよ!?」
「今度はバンバンシュミレーションの改良版、陸海空の兵器を操って世界戦争を勝ち抜く戦略ゲーム【バンバンウォークラフト】!
攻撃目標を殲滅するまで、鉄火の咆哮が鳴り続ける…。」
「…私もここまでですか…。」
既に四方八方をゲンムが呼び出したゲーマー達に囲まれ成す術無く窮地に追いやられたソーサラー。
ゲームが変わった今ならポーズも使えると思い動こうとするクロノスを、ソーサラーは手で制した。
「天治君!先程言った通りです、キミは彼等と共に行きなさい…。」
「ッ!…ふざけるな!!私が何の為に苦労してキミ達を助けたと思ってる!こんな所でキミも死なせるなんて許さないぞ!!」
「それなのですが……先程の一撃が相当効いてましてねぇ。もう、目が霞んでほぼ見えて無いんですよ…。」
「ッ…史汪!」
「ですから、私はここでリタイアです…。仮面ライダー君達!」
「「ッ!」」
「こんな形となってしまいましたが、どうかキミ達は覚えていて欲しい。
私達は、お互い全力でぶつかり合える良きライバルであった!例えそれが仕組まれたものであっても!…後は、全て託しましたよ…。」
「ッ!…史汪、キミは…。」
「もう終わった?じゃあ…攻撃開始!」
ゲンムの号令と共に兵器の軍勢は一斉に火を吹く。
直視できない程の光と爆風に腕で庇う悠と蓮司とは対象に、クロノスはただ爆心地を眺めるだけ。肩を震わせ、機械の手がギリギリと音が鳴る程に。
「───ハイ止めェ!!あーーー耳が痛くなったぁ、このゲーム近くでやったらダメだ…。」
爆撃が止み、ゲーマー達が消えるとそこには最早何も残されてなかった。ただそこにソーサラー、史汪 真がいた事を示すようにソーサラーのリングが地面に落ちていた。
「ッ…!!」
黒咲に続き史汪も目の前で死んでいき、初めて味わう喪失感に耐え難く無い筈の心が苦しくなっていくクロノスは、どうしようもなく制御できない感情の矛先をゲンムに向けるしか出来なかった。
「アベルゥゥゥゥゥゥッ!!!」
「ん~~?」
遂にクロノスは理性を失い、我武者羅にビームガンを撃つもゲンムのアーマーの前に霧散するだけで何の効果を与えずに終わる。
当たっいる光弾を気にしないまま、ゲンムは歩みだす。
「フフ、初めて見たよそこまで怒ったキミは。
何時も高い知力を以てして理知的に判断するキミは、正にボクの求める役者として適役だった…舞台を盛り上げてくれる敵役として、ね♪
さて、いい加減消えて貰おう。余計な事を喋る前に──【コズミッククロニクル】!」
ゲンムは空に手を翳すと、これから訪れる災害の名を口にする。
星が散らばる夜空にポツポツと浮かび上がる赤い点。それらはやがて雲を裂き、大気を焦がしながら降って来た隕石を前にゲンムは宙に浮かび出す。
「コズミッククロニクルは宇宙存亡を阻止するスペースアドベンチャーゲーム!…数多の隕石を前に、キミ等はどう対処するかな?」
「隕石って…出鱈目にも程があるだろ!?」
「流石に逃げ場が…!下がってろ!オレがどうにか防いで…!!」
「バカ!まとめて吹っ飛ばされるのが目に見えてるわ!!
……良いから合わせろ!」
戦極ドライバーを手に迫る隕石をどうにか防ごうと試みる蓮司を押し退け、悠はオーガに変身し前に出る。
落ちて来る隕石群を前にオーガストランザーを手に構えた。
<< Exceed Charge >>
「まさか隕石ぶっ壊す事になるなんてね…!───やってらやぁぁぁッ!!」
隕石群に向けて横薙ぎに振られる黄金の光剣は、巨大な隕石群を砕いた。だが、未だその脅威は消えていない。オーガが砕いた隕石の破片が流星群の様に降って来る。
オーガは尽かさず、後ろに向かって叫ぶ。
「おら出番だ変われ!!」
「言われずとも──!!」
変わるように前に出て来たのはジンバーメロンアームズの斬月。その手に持つのは無双セイバーでは無く、防御に特化したアームズ、メロンディフェンダーだった。
<< メロンスパーキング! >>
<< ジンバーメロンスパーキング! >>
「ハッ!──」
ロックシードのエネルギーを限界にまで溜め込んだメロンディフェンダーを、斬月は流星群に向けて投げる。
あと少しで地面に着弾する流星群。だが、斬月の投げたメロンディフェンダーが半透明の巨大な盾となり流星群を阻む。
巨大な隕石とは違いオーガが砕いてサイズを小さくしたのもあってか辛うじて防ぎ切った斬月は、緊張の糸が切れたのか片膝を着いた。
この一連の動きを見てクロノスは思わず仮面の下で目を見開いた。コレといった打ち合わせや目配りもしないで理に適った連携プレーで隕石を防いだ悠と蓮司に。
「フゥ、何とか防げた…もう終わりか!?案外楽勝だったな!」
「所詮幼稚な妄想で創った遊び!遊びなどではオレ達の首は獲れんぞ!」
「そういうこった!
どうする?降りて来てボコられるか、お家に帰ってR指定のゲーム創って部屋籠ってるか!お好きにどうぞ?」
「へぇ~?簡単だったんだ?──じゃあ、難易度あげてみよっか♪」
「ハ?……マジか…!?」
「…オイ。コレはもう完全にお前の所為だぞ。」
「いや、先に言ったのはお前だ。言い出しっぺ。」
見上げた先にあったのは、先程と同じ隕石。だが、その数は前の比を遥かに超える数の多さに空が真っ赤に覆いつくされる程の大群が降って来ていた。
「さぁお望み通りやり甲斐のあるレベルにしてあげたよ。頑張って生き延びてね♪」
「チ…ッくしょうがぁぁぁッ!!やってやれるよこんチクショウが!」
「隕石が斬れずして剣士を名乗れるかァァァッ!!」
「クソ…ッ!!キミ達の所為で完全にとばっちりだ!!」
クロノスも加わり、迫り来る最大級の災害を前に必死の抵抗を見せる三人のライダー。
オーガはオーガストランザーで、斬月は無双セイバーから繰り出す斬撃で、クロノスはエナジーアイテムを駆使しバグバイザーのビームガンで隕石を壊していく。先程は斬月が全て防いだが、今回は迎撃に回ってる為小さくなった隕石の破片が当たる。
向かって来る隕石群をを前に決死の覚悟で迎え撃っているが、豪雨の様に降って来る隕石群を前に徐々圧され始めてきた。
「ッ!!──数が多すぎるッ!このままでは…!!」
「オイメガネ!なんかねぇのかよこういう時役に立ちそうなモノ!!」
「あったらとっくに使ってるよ!それよりも集中を乱さないでくれるかな!?一つ撃ち漏らしてしまったんだが!!」
「それならオレが斬ったから安心しろ!」
「それはどうもッ!」
「お~~。夢中になってくれてるねぇ♪愉快愉快♪──あ。」
ゲンムが思わず声を漏らしてしまった理由。オーガが壊した隕石の破片が偶然にも大きいまま地面に着弾し、その威力に彼等の足下が揺れて体勢が崩れた。
「あ~~、こりゃもうダメだな…。」
ゲンムの徐に放った言葉の後に、次々と隕石が着弾。絶えなく続く爆発の炎に包まれていく三人。
「ゲームオーバー、残念♪」
隕石が止み、地上に降り立つゲンム。彼の視線の先には、ボロボロの状態で倒れ伏す悠と蓮司に、顔の右半分が破け機械の顔が露わになっている番堂。
仮面の下でしたり顔になるゲンムはそのまま番堂に向かって重い足音を立てながら近づいて行く。
対する番堂はゆっくりと此方に近づいて来るゲンムを見て、左半分の顔が険しい表情を浮かべる。
先程の隕石による衝撃でロイミュードのボディは酷く損傷し戦闘続行は不能。悠と蓮司の二人も、生きてはいるが傷の具合からこれ以上の戦闘は不可能だと簡単に見て取れる。
ゲンムは番堂の知るあの情報を悠達に知らせない為に真っ先に自分を消そうとしてくる。今その情報を悠達に教えようにも、その前に瞬時に消されるだろう。
だがその辺りの心配はもう必要ない。それに関しては、優秀なリーダーが既に手を打った。いずれ彼等は自分達の知るあの情報を知って対策を立てるだろう。
ならば後は此方の自由だ。史汪は共に行動しろと言ったが、どの道もうすぐ機能停止する。ならば最後は、此方に近づいて来る憎き相手に出来る限りの嫌がらせをしてやろうと思うと、口元に笑みが浮かんだ。
番堂は身に着けていたバグバイザーとガシャットを取り外すと、それらを悠達に向けて投げた。
「いいかよく聞け!出来る限り時間を稼いでやるから、その間にヤツを倒す術を陳腐な頭フルで使って見つけ出すんだな!!」
「あ?……テメ、まさか…!!」
「…じゃあね。私も案外楽しめたよ、キミ達とのバカ騒ぎは!!」
機械の体を無理矢理動かしてるからか、電流が体中に奔りながら向かって来るゲンムに向かって走っていく番堂が何をしようと気付いた悠は静止の声を掛けようとするが、既に番堂は自身の倍ある巨体のゲンムの腹部にしがみついていた。
「おやおや、キミとした事がまさかのカミカゼかい?余程正気を失ったようだねぇ、賢いキミがそんな無駄な最後を迎えるとは…。」
「ハッ!正気じゃない?無駄にデカくなった分目が悪くなったみたいだねぇ!!」
「何…?」
「この私が、ただ死ぬわけ無いだろう!!───精々イラついてろ、クソ神さま。」
「ッ!!───。」
番堂の体が光に包まれた次の瞬間、限界に達した機械の体はゲンムを巻き込んで爆発した。
立ち昇る炎の中から飛び出て来る金属片。それ等に交じってレンズが割れ酷く歪んだメガネが悠達の元に飛んで来た。その直後だった。
ドシンドシンと炎の中から聞こえる足音が聞こえ、その音の主が姿を現す。
ゼロ距離で爆発を受けてもゲンムが纏ってるアーマーには傷一つ付いていない。やはり無駄死にか、と仮面の下で鼻で笑うゲンム。だが、その直後に異変が起きた。
「ッ!?──グゥッ!?…ヌォオオオオォォォォォッ!?!?!?」
「何だ?…何が起こってる!?」
突如としてドライバーから電流が体中に奔り苦しむ様子を見せるゲンム。
突然の異変に困惑する悠達を前にゲンムの異変はやがて変身が強制解除される。
「どういう事だ?一体何が…。」
膝を着いて脂汗を流すアベル。荒い息が時間を経て収まりだした頃に、アベルは自らの身に起きた異変の正体に気付き、今までにない位に慌てふためいた。
「バカな!そんな、まさか…!!無い!!無くなってる!!ゲムデウスの力が、無い!!」
アベルの力の源であったゲムデウスの力。それが忽然として無くなってしまっているのだ。まるでロウソク火が消えたように。
アベルの異変の前に何が起きているのか理解出来ず困惑する蓮司を他所に、悠はその異変の正体に気付いていた。
「リセットだ…。」
「リセット?…確か、クロノスがあの二人を助けるのに使ったという…?」
「あぁ。それで無かった事にしたんだ…ゲムデウスのプログラムを創ったアイツなら、ソレが出来る…。」
「なら…今がヤツの倒す絶好の…ッ!!」
弱体化したアベルを足す絶好の機会と見た蓮司だが、立ち上がろうとするも体に奔る激痛に再び倒れてしまう。
当のアベルはゲムデウスの消失に狼狽えていたが、落ち着きを取り戻しすぐに行動に移した。
「ま…まぁいい、塔に戻ればバックアップのデータが有る筈!!それさえあれば…!!」
「ッ!!───逃すかこの野郎!!」
<< RIFLE MODE!──FUNKEY! >>
悠は撤退するアベルをそのまま逃すまいとライフルモードのネビュラスチームガンをアベルに向けて発射。
「ッ!!───ッ~~!!グゥゥゥ…ッ!!」
心臓目掛けて撃ったが、アベルは瞬時に避け弾は心臓の位置からズレて肩を貫通する。
蹲るアベルに続けてもう一発撃つが、アベルは弾が当たる寸前で煙のように消えた。まだこの場から瞬時に去る力はあったようだった。
絶好の機会を逃し、思わずスチームガンに当たって地面に叩き付ける悠。その後蓮司と同じように激痛によって地面に倒れる二人の元に、騒ぎを聞きつけ向かって来ている秋達に見つけて貰うのはもう少しの後の話しであった…。
悠に撃たれた肩を抑えながら辛うじて塔に帰還したアベルは、番堂に与えていた部屋兼研究室を訪れていた。
ズラリと幾つも並んでいる端末の一つの前に座り右手で操作する。目的は失ったゲムデウスのバックアップデータを探す為に。
「あの慎重かつ几帳面な男の事だ、ゲムデウスのデータを絶対残してる筈!!ゲムデウスの力さえ戻れば…!!」
力の源を失った事と肩の痛みからいつもの軽はずみなノリの表情が歪んでいるアベルは気付いていない。初めて窮地に追いやられたという今の状況を早く打破する為に開いた画面を見た途端、アベルは思わずデスクに手を叩き付けて立ち上がった。
「で…データ全削除?……あの野郎!!ココのデータを全部消していきやがったのかぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
画面に映し出された【ALL DETA DELETE】という英文に拳を叩き付けるアベル。日々が割れて液晶が突き破かれても怒りの矛先を目の前のモノにぶつけるアベル。
やがて右手の痛みから殴るのを止めたアベル。右手が液晶の破片で傷だらけになったのを見て更に怒るアベルは手当たり次第部屋にあった端末を叫びながら壊しだしたのだった。
その頃、中々戻って来ない上遠くからでも聞こえて来た騒音によって公園に来た秋、ハルナ、ウラナの目に映ったのは荒地となった公園とボロボロになって地面に倒れる悠と蓮司。そして、血だらけになりながらも立ったまま絶命した黒咲の姿。
余りの光景に現実なのかと疑っていたが、悠と蓮司から事の顛末を聞かされても情報量が多すぎて上手く整理して飲み込めきれない。現にウラナは頭を何度も抱えて目を回らせている。
「それじゃあ、今のアベルはかなり弱っている。って事でいいのよね?」
「あぁ…結構な犠牲は出たがな。」
そういう悠の手が持っているのは、番堂のメガネと史汪のリング。視線を移した先にはベンチに横たわらせて顔にハンカチを被せた黒咲の亡骸が。
「とにかくだ、このチャンスを逃す手は無い。どうにか塔に引き籠ってるクソ野郎を引っ張り出してぶっ殺す。」
「でもそう急がなくても、実質コレオレ達の勝ちじゃね?向こうはもう戦う力を無くしてるんだし!」
「その悠長な考えは命取りになるぞ弟。オレはあの男がこのまま黙っているとは思えない。」
「不本意だが俺も同意見。優位に立ってるようで実質なんも変わって無い。
…せめて、アイツ等から何か聞ければ…。」
「聞ければッて?」
「アイツ等は口封じに殺されたんだ。野郎も言ってたから間違いない、俺等が知ったら不都合な内容だから。」
「直前に渡されたそのドライバーに何かないのか?」
「観てみたけど、特に何も…もう少し調べれば何かは出て来るかもだが、あのメガネがこんな安直な形で報せて来るとは思えん。」
「じゃあ実質手掛かりゼロ、ってワケか…。」
「あーーーッ!!」
「どうしたのウラナ?今夜遅いんだからあんまり大声は…。」
「みてみてー!トリさんが居たー!!」
そう言いながらウラナが4人に見せて来たのは、両掌に乗ったプラモンスターのガルーダ。以前悠達を史汪の喫茶店まで導いた使い魔の嘴には一通の便箋が咥えられていた。
「コレって…アイツのガルーダだよな?」
「あぁ。て事はこの手紙は…。」
悠はウラナの手に乗ったガルーダから手紙を受け取った途端、魔力で動いているガルーダの魔力が切れたか、それとも役目を果たした故か、甲高い鳴き声を上げた後リングだけ残して消えていった。
「あ…トリさん…。」
「それが、アベルが知られたら困る情報…?」
「あぁ。態々こんな形で渡す程のな。きっとコレが…道標になる筈だ。」
取り敢えず今日はここまで、次回も投稿も何時になるか分かりませんがどうかお楽しみに。