その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ!
新たな敵クロノスの襲来に頭を悩ませる俺達であったが、アホ上司が開発する新ガシャット、ハイパームテキに活路を見出すが、それが使えるのはエグゼイド、桜井だけと知って本人は困惑するのだった!
一体どうなる最新話!?」

「あぁそういえば本編とは関係ないけど、なんか上から指示が来たみたいだよ!超重要だとかで!」

「はぁ?こんな忙しい時に別の仕事とか何考えてんの!?全く…で、その仕事って?」

「CM撮影だって。」

「は?CM?なんの?」

「栄養ドリンクのだって、なんか一部向こうで流行りだしたみたいで拡げたいから撮ってくれだって。」

「バカバカしい、そんなのに時間割くワケ…。」

「ちなみに見事人気が出れば、特別ボーナスが出るって!」

「しゃあねぇやってやっかぁ!
てわけでCM撮影の準備をする間、最新話どうぞ!」







運命

 

 

 

 

「ハイパームテキガシャットは、エグゼイド…お前にしか使う事が出来ない。つまり、クロノスとゲムデウスを倒せるかどうか…全て、お前にかかっている。」

 

「え…?」

 

ハルナは自身の耳を疑ったが、真っ直ぐ此方を目で捉えてる悠の眼力が本気だと訴えて来る。

あまりにも受け入れ難い事実を前にハルナは目の前が真っ暗になったが、掠れる声で何かの間違いだと弱々しい異議を立てた。

 

「そ、そんなの…有り得ないわよ。わ、私なんかよりも、灰原君や彩守君が使った方が…!」

 

「…ムテキガシャットが桜井にしか使えないちゃんとした理由、あるんだろ?」

 

悠はハルナの意義に対し、事の真意を神太郎に尋ねた所「あぁ。」という返事が返ってきた。

 

「悠君、秋君、蓮司君が変身出来るのは、私が創ったバグスターウイルスの抗体を体内に入れてるのに対して、ハルナ君はバグスターであるウラナ君に感染…別の言い方をすれば、同化してるのもあって変身出来る。コレが大きな違いなんだ。

ガシャット40本以上使って創り上げたムテキガシャットを悠君達が使ってしまえば、プロトガシャット以上の膨大なバグスターウイルスに抗体が耐え切れず…最悪死に至る。でも…。」

 

「バグスターであるウラナと一体化した桜井なら、ムテキガシャットを使えるって事だ。」

 

「あ……一番重要な事…。」

 

ガックシと肩を落とす神太郎だが、それすら気にする余裕の無いハルナに目に見えない重圧がのしかかってるのが傍から見ても分かる程に彼女の顔に曇りが掛かっている。

 

顔を俯かせるハルナに声を掛けようとウラナが近づいてくが、蓮司が肩に手を置いて止めた。何故?と振り返って目で訴えるウラナに、蓮司は黙って首を横に振るうだけ。

 

ただ沈黙の時間だけが過ぎていくなか、ハルナは何も言わずラボから出て行った。

 

「あ、姉ちゃん…!

 

「追うな、弟。」

 

階段を駆け上がっていくハルナを一人追いかけようとする秋だが、ウラナ同様蓮司に後ろから肩を掴まれてその足を止められる。

 

「ロン毛…何で止めんだよ!」

 

「今、弟のお前が声を掛けても奴の耳に入らん。それほどまで重圧を感じてるのはお前だって分かってただろ。」

 

「それは…でも、だからって一人して…!」

 

「…今はそっとしておくのが、オレ達に出来る事だ。」

 

「ッ…。」

 

「ハルナ…。」

 

未だ嘗てないプレッシャーに悩ませられるハルナに対し、今は考え時間を与えるのがベストだと蓮司は言う。

 

仮面ライダーとして戦う決心を付けた彼女でも、自身がこの戦争の雌雄を決すと聞かされれば心が揺らぐのも無理ないと蓮司や悠は思ったからこそ何も言わず行かせたのだ。

 

だからこそ無理強いさせる様な事はしない。全てはハルナ本人の意思に任せる。例え彼女がライダーの名を捨てようと決めても。

 

「…信じるしかねぇ、か…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ハァ…。」

 

ラボから出て暫く歩いたハルナが行き付いた公園のベンチの上。空を見上げ流れていく雲を眺めながら大きく溜息を吐いた。

 

半ばラボから逃げる形で出て行った負い目が半面、自分がこの戦争の雌雄を決するというプレッシャー。

その大きな悩みに頭を抱えているハルナは、無意識の内に何度も大きな溜息を吐いてしまっていた。

 

(ハイパームテキは私にしか使えない上に、創る上でも責任重大……仮面ライダーとして戦う決心はつけたつもりだけど、まさかこんな事になるなんて…。)

 

修学旅行の一件で仮面ライダーの名を背負って戦う決意を決めたが、いざ重大な役目を目の当たりにされると思わず尻込みしてしまう。

 

だが何時までも悩んではいられない現状。やるにしてもやらないにしても敵が本格的に動く前に結論を出さねばならない。

 

でもだからといって悠や蓮司と違い少し前まで戦いとは無縁の一般人だったハルナが一人で即決して動く程軽い問題でもないのも事実である。

 

空を見上げていた顔が上から下へ、苦悩に項垂れるハルナ。

 

(私がムテキにならなくても、灰原君ならクロノスやゲムデウスと戦えるけど……でも彼一人だけにやらせるのは…。)

 

「あの…。」

 

(でも…もし私がムテキになったとしても、クロノスやゲムデウス相手にまともに戦えるの?…。)

 

「あのぉ…。」

 

(私は、一体どうしたら…?)

 

「あの!」

 

「ッ!?──うぇぇッ?!」

 

「うわッ!?」

 

突然声を掛けられ、驚いて跳び上がるハルナに驚いて声を掛けてきた男も驚いて地面に尻もちついてしまった。

 

「あ、すみません!」

 

「イタタタ…あぁいえ!大丈夫です!突然声掛けられたらビックリしちゃうのは当然ですし…。」

 

「はぁ…。」

 

ハルナは立ち上がって着いた土を払う声を掛けて来た男をまじまじと見る。

 

歳は20代前半。パッと見で気弱そうでも爽やかな印象受ける好青年に見えるが、特に見る目がいくのがその格好であった。

上下はカラーパンツとプリントTシャツという年相応な服装だが、その上に純白の白衣を羽織っていた。ソレを見てどこぞの大学の研究生か、または…。

 

「あの…私に何か?」

 

「え?…あぁ!その、どこか具合でも悪いじゃないかと思って、思わず…。」

 

「…それだけ?」

 

「えぇ。職業柄、医者なので…。」

 

(お医者さん、だったんだ…。)

 

まさかの職業に少し面を喰らうハルナ。てっきりナンパ目的の大学生かと思っていたが、職業柄と言え此方の身を心配して善意で声を掛けてくれた青年に対し、やましい目的だと勘繰った事に申し訳ない気分になった。

 

「あの?…。」

 

「あ…だ、大丈夫です!コレといった病気とか具合悪いとか、全然ないんで!」

 

「そう…じゃあもしかして、何か抱え込んでる、とかかな?」

 

「え?……えぇ。まぁ、そんな所、かな?アハハ…。」

 

「そうなんだ……もしよかったら、どんな悩みか聞いてもイイかな?」

 

「え?…。」

 

突然の青年に申し出に、思わず目が点になるハルナ。

 

「担当は小児科だけど、悩み相談とかもドクターの仕事だから。まぁ先輩のドクターには、甘すぎるってよく言われるんだけど…。」

 

アハハと笑って頭を掻く青年を前にハルナはどうしたものかと少し躊躇うが、よくよく考えて相手は社会人な上医者だし、愚痴を吐き出すのなら知ってる相手より知らない相手が適任かもしれない。

 

少し考えてハルナは青年の誘いに乗った。

 

 

 

 

 

 

その頃、ハルナが出て行った後のラボの様子は…。

 

 

「ヌォォォォォォォォオオオォオオオゥゥァァァシャァァァアアアアアアアッッッッッ!!!」

 

 

「うっわ~、いつになく気合入ってんなぁあの人…。」

 

「どっからあんな声出てんだろうねぇ~。」

 

神太郎はハイパームテキガシャットの制作に取り掛かり、一人で40本以上のガシャットのデータを一つにまとめるという過酷な作業を血眼になって複数の端末と向き合ってる姿を、秋とウラナはコーヒーとココアを口にしながら眺めている。

 

また別の所では、別の開発作業に取り掛かってる悠に背中を向けた蓮司は先程のハルナの事を切り出してきた。

 

「…どうするつもりだ。」

 

「どうするって、何が?」

 

「桜井の事だ…やはり今回の一件は、彼女には荷が重すぎる…。」

 

「だろうな。元はただの一般人に背負わせるには結構ヘビーなプレッシャーだろうよ。」

 

「分かってるのなら何故あんな言い方をした?アレでは余計に…。」

 

「ならどう言えって?はぐらかせた物言いで誘導させた方が正解だ。って言いたいのかお前?」

 

「それは…。」

 

「戦況はクロノスが出た所為で切迫しちまってるんだ。生半可な覚悟で決められても困るんだよ…。

アイツには本気で悩んだ末に決めて欲しいのさ。戦うか、降りるかの選択をな。」

 

「……。」

 

「…つーかさ。お前ひょっとしなくてもマジで桜井の事気にしちゃってる?さっきからずーっと落ち着きなくソワソワと…。」

 

「ッ!?き、貴様はこんな時に何を言ってんだ!不謹慎な…!?」

 

「いやだって、王女がそらまぁ楽しそうに言ってたんで。」

 

「不覚…ッ!」

 

こうなるなら口止めすべきだったと後悔する蓮司であった。

 

そんな頭を抱える蓮司と悠の元に、秋とウラナが声を掛けて来る。

 

「なになにー?レンジどうしちゃったの?」

 

「遅めの思春期だとよ。」

 

「???」

 

「ま、詳しい事は桜井にでも聞いておけ…あ、そうだ。

オイ秋…ん。」

 

「へ?何よ……ライドクロッサーのシフトカー?」

 

「シフトライドクロッサー。ソイツはマッハとチェイサー、二つのライダーの力を合わせたパワーアップアイテム。

ハイスペックで扱うのにコツがいるが、乗りこなせばデッドヒート以上のパワーとスピードが出せる。」

 

手渡されたシフトカー、シフトライドクロッサーを手にいろんな角度で視る秋に説明する悠。

説明を聞き、「お~ッ!」と目を輝かせながら感慨の声を漏らす秋。扱い慣れてるマッハの強化アイテムというだけでなく、悠のチェイサーの力を有してると聞けば嬉しくない訳が無い。

 

「お前の為に寝る間惜しんで創ったんだ…しっかり使いこなさなきゃ容赦しねぇからな。」

 

「悠兄さん……へッ!オレを誰だと思ってのよ?オレは何でも、マッハでこなす男だぜ!見てな、期待に答えまくってやっからよ!」

 

背中を向ける悠に、宣言と共にサムズアップを向ける秋。

 

悠は何も返さなかったが、その口元が僅かに上がっていた事は誰にも見られることは無かった。

 

残るアイテムを完成させるべく作業の最終段階に入ろうとした時、緊急事態を告げるアラートがラボに鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───そっか。確かにそれは責任重大だね…。」

 

「えぇ。お陰様で…。」

 

ベンチに座りながらハルナは医師である青年に胸の内を曝け出した。

 

流石に内容全てを明かす訳にはいかないので、”務めてるバイト先で店舗の存続に関わる重大な役目を任された”、という少し無理が有りそうな嘘をついたが、隣に腰を下ろしてる青年は真剣に耳を傾けてくれていた。

内容はともかく、ハルナが大きな責任という重荷を背負い心悩ませられているという真意を真に受け取った青年は、ゆっくりと言葉を投げてきた。

 

「そんな強いストレスを感じる程のプレッシャーって、今回が初めて?」

 

「えぇ…恐らく、現時点で人生最大と言って過言じゃないです…。」

 

隣に居る青年に真実こそ伝えて無いが、実際は自身の命とこの世界の存続に関わるレベルなど一目瞭然であろう。

 

そう考えると痛くなる頭を抱え顔を俯かせるハルナ。そんな彼女の様子を窺う青年は、ふと自身の経験談と思わしき話を口にしだした。

 

「確かに、自分の取る行動が自分だけじゃなくて他人の誰かにも関わって来る。って考えちゃうとすごく大変な気持ちになっちゃうよね。」

 

「?…。」

 

「ボクもドクターとして患者さんの命に関わるオペに何度も関わったから、キミの気持ち全て分かる。とは言えないけど、そうやって色々迷ったり悩んじゃう所は分からなくもないかな、って。」

 

「あ…。」

 

ハルナはこの時今更になって気付いた。隣に居る青年が医者だというのなら、患者…見ず知らずの他人の命を背負う仕事している社会人だという事を。自分達とは違い、医療という技術で命を蝕む病と戦う人間だという事を。

 

それに気付いたハルナは、思い切って青年に聞いてみた。

 

「あの…先生のその悩みって、どんな?」

 

「う~ん、詳しくは言えないけど…そうだなぁ…。

やっと心が通じ合った人が目の前で命を無くしたり、自分がドクターであるという事を見失ったりして、周りの人に迷惑かけちゃったり…。

オペをするのが怖くて、思わず逃げ出しかけたりした時もあったな…。」

 

「…大変、なんですね。お医者さんも…。」

 

「うん…ボクもここまでとは全然思って無かったから、余計にね。」

 

「…そんなに大変なら…辛いなら、どうしてまだ医者を続けてるんですか?」

 

「確かに大変な事や、辛い事は一杯あって投げだしそうになった事はあったけど…ボクなんかよりも苦しんでる患者さんの方が、辛くて、怖い思いをしてるんだ、って。

だからボクはドクターとして患者さんを助けなきゃ、って。消えかけてく命から、絶対に目を背けちゃいけないんだって思うんだ。」

 

「…凄いなぁ。」

 

ハルナは率直に心から思った事を口に出した。

隣に座って語る青年は、気弱そうな印象を受けるがハルナの目にはとても大きな存在に見えた。見た目とは裏腹に何度も困難と言う壁を乗り越えた貫禄が感じられるのだ。

 

そんなハルナが言葉にした率直な思いに対し、青年は首を横に振った。

 

「そんな事無いんだよ。ボクがここまで来れたのは、ボクだけの力じゃ出来なかった。」

 

「え?」

 

「さっき言ってた通り、ドクターとして大変な事や辛い事は沢山あった。でもボクの周りには、とても心強い仲間がいてくれたんだ。

その人達が、励ましたり、背中を押してくれたり、信じてくれたから、今のボクが居るんだ。」

 

「仲間?…それって、同じ職場で働くお医者さん?」

 

「うん。ちょっと我が強くて一癖二癖あるよう人達だけど、目の前の命を必死に助ける為に諦めたりしない信頼出きる人達なんだ…ボクは、最高の医療チームだって堂々と言える位に。」

 

爽やかな笑みを向けて語る青年の仲間という言葉に、ハルナも無意識の内に秋や悠、蓮司、ウラナ、神太郎等の様々な人物達の顔が浮かんでくる。

 

「仲間…。」

 

「…その様子だとキミにも居るみたいだね。」

 

「…えぇ。それこそ我が強すぎて、振り回される位に。」

 

「ハハハ。そういった所はお互い苦労するね。」

 

「フフ、そうですね……でも、不思議と一緒に居て、イヤだって思わないんですよねぇ…。

やる事言う事メチャクチャでシリアスな空気壊しちゃうし、騒がしくするけど…とても頼もしく思える連中なんです。」

 

思わずクスっと笑みを浮かべるハルナ。ソレを目にした青年はベンチから立ち上がり、ハルナの前に立つ。

 

「先生?」

 

「…これだけは、覚えておいて。

どれだけ大きな困難が立ちはだかって来ても、諦めなかったら運命は変える事が出来るんだ。って。

人の運命も、自分の運命だって。」

 

「自分の、運命……。

…私に、出来るのかな…?」

 

「うん、きっと出来るよ!

ボクみたいな男にだって、変える事が出来た…キミも、ううん。キミ達にもきっと出来る!」

 

「私達で……そっか、元々私一人で全部背負う必要は無いんだ…。」

 

青年に言われて何かに気付いたハルナは、ベンチから立ち青年と向き合う。

 

その顔には憂いの色は無く、曇りの抜けた晴れやかな笑みを浮かべて青年に頭を下げた。

 

「先生。ありがとうございます!

私、難しく考えすぎてたみたいです…私に出来る事なんてたかが知れてる、だから出来ない事は、アイツ等に任せればいい…それがチームなんですね。」

 

「うん。そういう事だよ………今のキミになら、任せてもいいかもね。」

 

「?それってどういう…?」

 

「ううん。コッチの話し…ん。」

 

ハルナの様子を見て、青年はハルナに手を差し出した。

 

突然の事で首を傾げるハルナだが、青年の差し出す手に応えその手を掴む。すると握手した手から何かが入り込んでくるような感覚が奔り、思わず手を引っ込めてしまった。

 

「?…先生、今のって…。」

 

「いたーーッ!おーいハルナーーッ!!」

 

「ウラナ!?」

 

背後から大声を出しながら此方に向かって来るウラナ。振り返って青年からウラナを方へ意識を向けると、彼女は焦った様子で事情を話しに来た。

 

「たいへんたいへん!敵が出て来てみんな行ってアタシはハルナ探しに行けって言われて!それで…!!」

 

「あぁーッ!ストップストップ!!

あー先生?これはですねぇその…!…あれ?」

 

ハルナが振り返った其処には、先程までいた青年は居なかった。

辺りを見渡しても青年の影は何処にも無く、気になったハルナはウラナに聞いた。

 

「ねぇウラナ、さっきまでココに白衣着た男の人居なかった?」

 

「?…ハルナ一人だけだったよ?」

 

「え…?」

 

ウソを言ってるようでないウラナの発言に対し信じられないといった表情を浮かべるハルナ。

 

先程まで話していた医師と名乗る青年は一体誰だったのか。まさか自分は幽霊とでも話していたのかと疑いだすなか、ウラナがその手を掴んで引っ張った。

 

「ハルナ!みんなが、レンジ達がピンチなんだよ!!だから早く行こうよ!」

 

「ウラナ…。」

 

必死の形相を見せるウラナを前に、ハルナは先程青年と繋いだ掌を見た。

 

例え幽霊やまやかしの類だとしても、あの時の青年の言葉は確かにハルナの心に刻まれた。握った時に感じた温もりを思い出しながらハルナは開いていた手をギュっと閉じた。

 

「…ウラナ。急いで家に戻るよ。」

 

「えぇ!?どうして!」

 

「創るのよ!──最強のガシャットをね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃アラートによって一足先に現場へ駆けつけたの悠、蓮司、秋の三人達は…。

 

 

 

 

 

 

「──のわッ!?っとォ!!……フゥ!!」

 

鏡の世界であるミラーワールドの中で、思わぬ一撃を喰らい地面を転げ回るリュウガ。

 

体制を即座に正し構える先には二つの影。

全身黒いボディスーツとアーマーに身を包んだ異形の戦士。リュウガのライダーのシステムを模倣し生み出された疑似ライダー。オルタナティブゼロと、契約モンスターであるコオロギ型ミラーモンスター、サイコローグがリュウガの前に立ちはだかる。

 

リュウガのその視線の先、丁度オルタナティブとサイコローグが背後にあるガラスに映る光景に、仮面の下で舌打ちをする。

 

「こんな芸当も出来るとか…益々最悪だなゲムデウス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミラーワールドでオルタナティブの妨害に合ってるリュウガを他所に、現実世界では…。

 

 

 

「「ッ!!───グァァァアアアッ!!」」

 

ナイトサバイブ、ビーストの二人が宙から舞い落ちてく羽に触れて火花を散らし倒れていく。

 

足音をゆっくりと立てながら近づいて来るのは、嘗て倒した筈の敵。

 

BABELの幹部であった、ジャッジこと仮面ライダーオーディン。本体であったミラーモンスター、ゴルドフェニックスも健在の最強格と言える仮面ライダーが再度敵としてナイトとビーストに牙を向けて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も無い、ただ黒いだけの世界。そこにポツンと白衣を纏った青年が一人佇んでいた。

 

その青年の前には、照らされる光によって全貌は見えないが、玉座らしき椅子に座った男が低く威厳を含めた声で青年に口を開いた。

 

 

「どうだった?」

 

「…アナタから預かった力を、彼女に渡しました。」

 

「そうか……では、貴殿の目に適ったという事か。」

 

「えぇ。最初はどうしたものかと迷いましたけど…彼女の笑顔を見て大丈夫だと思いました。

…あの時のキミと同じように、ね。」

 

「…そうか。

……改めて、感謝する。私の我儘に付き合わせて。」

 

「ううん。ボクも話を聞いて、気になりましたから。あの力を使うのに、信頼できるのかどうか…。杞憂に終わりましたけどね。

…そろそろ帰ります。患者さんの所に行かなきゃ。」

 

「分かった。では貴殿の世界へ帰そう…。」

 

そう言って男が手を翳すと、青年の姿は忽然と何処にも居なくなった。

 

ただ一人残された男は、何も無い世界の中で遥か遠くにいる者達に向けて届く事のない言葉を口にした。

 

「私がお前達にしてやれる手助けはここまでだ。後は己の手で未来を切り開き、止まらず進み続けるがいい。

…吉報を期待してるぞ、若き日の友たちよ…。」

 

そして何も無い世界から、男の姿も居なくなった…。

 

 

 

 

 

 

 

 





次回遂に登場です。

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