その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ!
バグスター、アルビノジョーカとカッシスワームが合体した邪神14を相手に苦戦を強いられた俺達ライダーズであったが、俺のナイスな妙案により危機を脱し見事打ち勝ったのであった!






………アレ?今回は俺だけ?他のヤツ等は?…正月休み!?」




新年

時はクリスマスパーティーから進み、新年を迎えた。

 

バベルの塔が現れた直後に襲撃してきたアルビノジョーカとカッシスワーム以降、チームライダーズが出る様な騒動は今日まで起きなかった。

 

それでも気を抜かずにバベルの塔に対する打開策を考えるも、これといった進展は無いまま新年を迎えることになり…。

 

 

「「「「「「新年!あけましておめでとうございます!」」」」」」

 

 

「…………おめでとうさーん。」

 

 

クリスマスパーティー同様、緊張感皆無の新年会が開かれた。

 

 

 

 

 

時は数日前に遡る。事の発端は何時も突然の事だった。

 

「新年会がやりたい?」

 

「えぇ。」

 

クリスマス以降、年が明けてもラボに籠りっきりの悠に対し、新年会の提案を持ち掛けたラ・フォリア。

 

片手で二つの端末を操作する悠の目の下にうっすらとクマが出来ており、また寝る間を惜しんで作業に没頭してるのが目に見て取れる。

 

「それならもうやらなかったっけ?」

 

「それは年が明けておせちやお雑煮食べた時でしょう?私が言いたいのは、他の皆さんも一緒にです。

それにアナタ、あの時ロクに会話もせずさっさと食べて、すぐに此処へ戻ったじゃないですか。」

 

「それはまぁ、やる事が山積みにあるから、ねぇ…。」

 

「へぇ…どれどれ…。」

 

ラ・フォリアの悠と端末の間に頭を入れて二つの画面を目にするが、悠はキーボードを叩いて画面を別のに変えた。

 

「アラ?忙しいフリをしてエッチなサイトでも見てたんですか?」

 

「見るかよ、目の前に目の保養が居るし。」

 

「あら、そういう目で見ていたんですか?いやらしいですねぇ。」

 

「何を言う、人として健全に生きてる証拠じゃないか。」

 

「……とまぁこの辺にして。

さっきのアレ、アナタのじゃなくてあの二人のですよね?別に隠す程じゃないじゃないですか。」

 

「…るっせ。とにかくだ、さっきのは話すなよ!…そのかわり新年会なりパーティーなり開いていいから、いいな?」

 

「えぇ。では早速皆さんに伝えておきますね!あと、今日はちゃんと寝て下さいよ?クマ、酷いですから!」

 

「ハイハイ。キリ着いたら休みますって…ったく。」

 

足早にラボを出ていくラ・フォリアを見送り、悠は消していた画面を再度点ける。

 

二つの画面には、ラ・フォリアの言ってたようにライダーシステムの強化案らしき画が。

 

それぞれの端末には、あるロックシードとシフトカーの設計図を悠は完成させていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして新年会当日。

 

クリスマスの時とはまた違い、壁に富士山、ナス、鷹の画などが大体的に壁に描かれ会場内では餅つき大会が行われていた。

 

「いよぉし!それじゃあ一丁張り切っていくよ蓮司君!」

 

「…本当にやれるんだろうな?間違って手を打っても知らんぞ。」

 

「ハッハッハ!それはフリかな?生憎だけど今日の私は…一味違うよ。」

 

臼の前に膝をつく神太郎に、杵を持つ蓮司は何処か不安気な視線を向ける。

 

「さぁ行くぞ!みんな準備はいいな?」

 

「おー!醤油と海苔は準備OKだぜ!」

 

「あんこよーし!」

 

「あれ?きな粉もう無くなった?」

 

「あ、アタシの分けよっか?」

 

「ありがとー!お餅にはやっぱきな粉が無いと」

 

「お願いします!」

 

 

「ハァ……フンッ!」

 

「はいよッ!」

 

「フンッ!」

 

「はいッ!」

 

 

各々皿と箸、好きなトッピングを用意して囲む面々を離れた所で眺めるの元に、古城とキンジがやって来る。

 

「よぉ、そんな離れた所にいて何してんだよ。」

 

「眺めてるのが好きでね。」

 

「そんな事言ってっと、餅無くなるぞ。ただでさえ秋や彩守がスゲェ食うんだから。」

 

「神通がよそって持って来てくれるからいいんだよ。」

 

「おいおい、パシリかよ。」

 

「言っとくけど俺からじゃ無いぞ、アイツから持ってくるから待っててくれって…最近ずっとそうだよ。何かと過保護になってる。」

 

あのクリスマス以降、悠の対して周囲の…主に女性陣の対応が何かと変わりだしたのだ。

 

「悠さん、コーヒー淹れたのでどうぞ。」

 

「悠さん、軽めの夜食作って来ましたよ。」

 

「悠さん、座っりっぱなしの姿勢だと体悪くしますよ?一休みついでにマッサージしましょうか?」

 

先も述べたように、神通は何かあれば悠の傍にいて邪魔にならない程度に世話を焼いたり。

 

 

「えへへ~♪」

 

「…川内。そう顔スリスリされても摩擦で熱いだけなんだけど?」

 

「アタシの温もりを伝えてるの!」

 

「温もりの域超えてる気が…いやホント熱い、ほっぺ熱い!」

 

 

 

「……ねぇ。」

 

「ハイ?」

 

「…水着着用とは言え、なーんで一緒に風呂入ってんの?」

 

「いえね、アナタがお風呂の中で寝てしまわないか心配で、ホラ、アナタ徹夜続きでしたし。」

 

「要介護のお爺ちゃんかよ…ていうか、近すぎない?もう当たってんだけど。色々。」

 

「当ててます♪」

 

ラ・フォリアや川内は何かとスキンシップして体を密着してきたり。

 

 

「聞いたぞ悠。最近徹夜続きだそうじゃないか。

大変なのは分かるが、休める時に休まないと、いざという時満足に戦えないぞ。」

 

「適度に体も動かさないとダメだよ!…な、なんならアタシが朝のランニング付き合ってあげようか?大丈夫!隣の県まで走るだけだから!」

 

「ダメだよゆーくん!ちゃんとご飯食べてしっかり睡眠取らなくちゃ倒れちゃうよ!ただでさえゆーくんはケガしやすいんだから尚更だよ尚更!

コレ、みんなで食べて!栄養と疲労回復に気を付けて作ってきたから!」

 

今日、年が明けて初めて会った凪沙、一子、ゼノヴィアからは、体の心配されるわ、作ってきたという手料理を勧められ。

 

 

 

「…えっと、ゴメン夏音。もう一回言ってもらえる?」

 

「わ、私も、い…一緒に、寝てもいいですか?」

 

「………。」

 

「?…アラアラ、また固まってしまいましたね。」

 

中でも特に驚いたのが、内気だと思っていた夏音が就寝時に枕を以て添い寝を要求して来たのには、思わず思考停止した。

結局ラ・フォリアの後押しもあって三人で寝る羽目になった。

 

 

「積極的になった夏音の成長を喜ぶべきか否か………どっちなんだ!」

 

「おい一体どうした!?叶瀬がどうしたって!?」

 

「悠さん、お餅持ってきましたけどあんこで良かったですよね?…?、どうかされたんですか?」

 

「さぁ?何が何だか…ってあぁ!おい暁!餅が!!秋と彩守、藍羽が餅を食い尽くそうとしてる!」

 

「なッ!ひ、姫柊!オレと遠山の分とっておいてくれ!!」

 

30人分の餅は殆どが大食い三人の胃に入ったが、古城とキンジの分は何とかどうにか確保できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──おっと、そろそろいい時間だな…。

みーんな注目!そろそろ本日のビッグイベントを執り行うよ!」

 

「ん?なんだ?」

 

「まぁーた、くだんねぇ企画モノだろどうせよぉ。」

 

会場にいる一同が台座に立つ神太郎の前に集まっていく。

 

悠達ライダーの面々は、また突発的な思い付きに振り回されてしまうのかと半ば気落ち仕掛けたが。

 

「集まったね?さぁってそれじゃあこれから始めるのは参加してもよし!不参加でも楽しめる正月イベント、その名も!”掴み取れ!お年玉争奪バトル”ゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

神太郎が宣言したお年玉争奪バトル。何処からか取り出したホワイトボードには、完結にまとめたルール説明が書いており、内容は以下の通りだ。

 

 

・本イベントはVR空間で行う、バトルロワイヤル形式のライダーバトルである。

 

・ライダーバトル参加者希望者は、ランダムで決められた仮面ライダーになって戦う。

 

・それぞれに割り振られたのHPが0になったらプレイヤーは脱落。

 

・否希望者は、ライダーバトル参加者のプレイヤーを一人選び、勝者を当てる。

 

・参加者、1位を当てた否参加者には、賞金が贈呈される。

 

 

「VR…特訓の時に使ったアレか。」

 

「そう!VR空間なら無茶なことしてもケガもしないし安全だからね、こういった催し企画にはピッタリさ。

それに、悠君達以外の子たちも気軽に変身出来るし、ね。」

 

「え…オレ達も参加できるのか?」

 

「あぁ勿論!当然無理強いしないが、お年玉が欲しいのなら、参加する事をオススメするよ?」

 

「お年玉…賞金は幾ら貰えるんですか?」

 

「フッフッフ、聞いて驚き給え…。

1位を当てた者には、賞金5万!ライダーバトルに生き残った者にはなんと!倍の10万だ!」

 

神太郎が告げた争奪戦の賞金額に、皆の目の色がガラリと変わりだした。

 

「へぇ、今回は結構マシな遊びじゃん。勝って金も手に入るとか。」

 

「しかもいつもと違うライダーになれるとか、これは出なきゃライダーの名折れっしょ!」

 

「…まぁ、鍛練の一環だと思えばマシか。」

 

「私はパスでいいかなぁ、正月は戦い抜きでゆっくりしたいし、それに…。」

 

「?…アレ?そういえウラナは?いつもなら真っ先に飛びつくのに…。」

 

「あの子、秋や彩守君と張り合ってお餅食べ過ぎて…アレ。」

 

 

「う~~ん…お腹、苦しい…。」

 

ハルナが指差した方には、妊婦の様に膨らんだ腹を抑えながら寝転ぶウラナが。初めて食べる餅に感動したのと、秋達と競う様に食べたお陰でダウンである。

 

「とまぁあの子の様子を見て無いと…。」

 

「ていうか、バグスターも腹痛って起こすんだな…。」

 

悠達ライダーズはハルナとウラナを除いた三人が参加を表明。残る面々は…。

 

 

「…よし、参加しよう。」

 

「え!ゼノヴィア、やるの!?」

 

「あぁ折角だ。彼等と同じ視点で戦ってみたい。一子はどうする?」

 

「う~ん…アタシはイイかな、ぶいあーる?っていうのより、現実で戦いたいし。」

 

 

(10万か…灰原の借金払っても半分近くは残る。

灰原や彩守とぶつかって勝てるとは思えないけど、漁夫の利を狙いに行けば…。)

 

 

「ぽーい!夕立も出るっぽい!」

 

「えぇ!?夕立ちゃん参加するの!?」

 

「ぽい!」

 

「す、凄いチェンジ精神にゃしぃ…。」

 

 

「姉さんはどうするんですか?」

 

「当然出るよ!変身出来るなんて機会滅多ないし!悠にもデキる女だってアピール出来るしね!」

 

「そうですか…なら、姉さんも私の敵、という事ですね……フフ。」

 

(あ…ヤバイ。神通、本気の目してる…。)

 

 

「先輩。さっきからなんかそわそわしてますけど、もしかして参加するつもりですか?」

 

「え…い、いや、別にオレは…。」

 

「古城!出るならアンタは逃げの一手で一人になった所を狙いに行きなさい!アンタが勝って、私達がアンタに賭ければ25万よ!」

 

「あ、浅葱ちゃん?それって凪沙も入ってるの?」

 

 

「さぁーてそろそろ始めるよ!参加者は前に出てこの箱からクジを引いてね!書かれた名前がキミ達の変身するライダーになるから!」

 

箱を持った神太郎の前に出て来た人数は9人。

 

悠、秋、蓮司、夕立、川内、神通、ゼノヴィア、キンジ、古城であった。

 

「お、ゼノヴィアも出るんだ。」

 

「あぁ。貴重な体験をしようと思ってな。無論勝つつもりで行くから、お手柔らかにな。」

 

「負けたら残念賞でなにか驕ってやるよ…10万円分。」

 

参加する者の中には自分の勝利に自信満々の者も居たり…。

 

「クジで決めるのか…なぁ、仮面ライダーって、アタリハズレが激しいモンなのか?」

 

「あーー。あるって言えばあるかなぁ。頼むからカニは勘弁してくれよぉ…。」

 

勝率が大きく左右されるライダー決めに祈る者も居たり…。

 

「…お前も出るとは少し意外だな。やはり賞金目当てか?」

 

「え…あ、あぁ。まぁ浅葱が出ろってな。ハハ…。(素直に言うべきか?オレも変身してみたかった、って…。)」

 

前々からの願望を叶えようと思う者も居たり…。

 

「夕立さん?勝負と言うからには手加減無しでいきますので、そこの所よろしくお願いいたしますね?」

 

「ぽい!夕立負けないっぽい!」

 

(…うん、あの二人には近づか無いようにしよう!)

 

激しい火花を散らしたり等、様々な一面を見せていた。

 

 

「さ!みんなこの箱から一枚紙を引いて!

やり直しの効かない一発勝負だから、引く前に祈った方が良いかもね!」

 

各々が順番に神太郎の持つ箱に手を入れ、変身するライダーの名前が書かれた紙を引く。紙に書かれたライダーの名前を見て、反応は様々だった。

 

「お、コレ結構イイの引いたかも。」

 

「う~ん、ハズレでは無いけど、ちょーっと厳しいか?」

 

「コレは…剣を使えるのか?」

 

 

「ほぉ、中々鼓舞を高めてくれる名前だな。」

 

「お~、強そうな名前っぽい!」

 

「アレ?確かこのライダーって…!」

 

「コレが私の変身するライダーですか…。」

 

 

「うーん?…なぁ灰原。コレってどういう仮面ライダーなんだ?」

 

「オレも教えてくれ。」

 

「んー?どれ……オイオイ。」

 

「何々?二人共何引いたん?……わーお。」

 

「え、何だよその反応。まさか、ハズレ?」

 

「…いや、逆。二人共アタリだよ。大当たり。」

 

「しかも狙ったかのようなチョイス…何コレ、ご都合主義ってヤツ?」

 

「「えぇ!?」」

 

 

 

「じゃあ参加しない子達は、この紙に1位予想の子の名前を書いてね!何がどうなるか分からないから、大穴を狙うのもアリだよ。」

 

 

「う~~~ん、夕立ちゃんに入れたいとこだけど、悠さんや蓮司さんも居るし…睦月ちゃん誰にするの?」

 

「私は大穴で神通さん!」

 

「…睦月ちゃん、本気で賞金狙ってるんだね。」

 

「秋さん…頑張ってください!」

 

 

 

「頼むわよ古城!私達アンタに賭けてるんだからね!必死になって逃げきりなさい!」

 

「ま、まぁ、引いた仮面ライダーによっては先輩も戦える…かも、しれませんよ?」

 

(ゆーくんや夕立ちゃんも応援したいんどなー…。)

 

 

「ふむ。王道で行くか、それとも大穴を狙いに行くか…。」

 

「く…ッ!教師でもある私が生徒を賭けに…!でも、5万ッ…!」

 

「選択。大穴でMs川神に…。」

 

 

「ラ・フォリアさんはやっぱり灰原君?」

 

「そうですねぇ、個人的には入れたい所ですけど…夏音はどうします?」

 

「え、えっとぉ…!」

 

 

 

「時間切れぇーッ!それじゃあ参加者のみんなはコレを被って寝転がって!」

 

「一々うるせぇなぁ…。」

 

とんとん拍子で進んで行き、参加者の面々はゴーグルを着けて床に敷かれたマットに寝転ぶ。神太郎は端末の前に座り、各参加者の設定を変身するライダーのデータを振っていく。

 

「最後の説明をするけど、VR空間に入ったらキミ達の変身するライダーについてのデータはゴーグルを通じて脳内に送っとくから、変身の仕方や、フォームや武器とかは問題無く扱えるから心配しないで思いっきり戦ってね!

それじゃあシステム──起動!」

 

「「「「「「「「「ッ!!──」」」」」」」」」

 

神太郎がエンターキーを押すと同時に、9人の意識が電子で創られた世界へと送られる。

 

ほんの一瞬視界が白一色に染まるが、次の瞬間には広大なコロシアムの真ん中で円を作って立っていた。

 

「おぉ、すげぇな…全く違和感がねぇ。」

 

「土の感触や匂いも本物と差し支えない…科学と言うより、コレはもう魔法の域だな。」

 

「はぁ~……うぇッ!?」

 

初めてVR技術に触れる古城達は現実と全く変わりないその再現度に大層驚くが、視線を下に向けると、自身の腹部に巻かれていたベルトの存在に驚いたキンジが声を上げた。

皆の視線が声を上げたキンジに自然と集まる。悠のベルトである、ドライブドライバーを巻いたキンジに。

 

「コレ!ベルト…!灰原のじゃねぇか!」

 

<それはそうだ。これからキミがなるライダーは、ドライブシステムのライダーだからね。>

 

「クリム!?お前まで参加するのかよ!」

 

<あぁ。キミ達に対するハンデのようなモノだよ。今回は彼のアシストを務めさせてもらう。>

 

「えー?それズルくなーい?」

 

「…そういう川内も、それ俺のじゃねぇか?」

 

悠が指を指すのは、川内の腹部に巻かれたゲーマドライバーと、悠が使ってるガシャットを手に持っていた。

 

「あ、コレ?えへへ♪いや~コレを引いた時運命感じちゃったよ~♪赤い糸が導いてくれたってカンジ?」

 

「…フフフ。」

 

「おい神通。気持ちは分からんでも無いが、ソレを壊すのは得策ではないぞ。」

 

「あぁすみませんゼノヴィアさん。私ったら、つい…。」

 

神通の手に持つカードデッキからメキメキと鳴る音に気付いたゼノヴィアが静止を呼びかける。だが当のゼノヴィアも、自身の腹部に巻かれてるベルトと手に持つ変身時に使用するナックル型のキーアイテムと川内のを見比べて羨望の視線を送る。

 

「夕立ちゃんはどんなライ、ダー……あー。」

 

「ぽい!神通さんと一緒のっぽい!」

 

「カードデッキか…どちらにせよ相手にとって不足は無い。」

 

ロックシードを手にする秋が隣にいる夕立の使うカードデッキを見て、思わず絶句する。蓮司は夕立の持つカードデッキについて知らないので、秋と違いモラル的な見解はしないでガイアメモリを手に普通に警戒した。

 

そんな中、サソリが描かれた銀色のメダル、セルメダルを指で弾いたり回したりして弄んでる悠が口を開いた。

 

「なぁ、いい加減そろそろおっ始めない?そんでさっさと終わらせたい。」

 

「それについては、同感だ。」

 

「…アレ?

なぁちょっと!なんか皆ベルトとかなんか手に持ってるけど、オレなんもねぇぞ!?」

 

「古城センパイのはなんもしなくても勝手に来るよ!…ホラ!」

 

「?来るって、何が…?『オレ様の事でぃ!』うわぁッ!?」

 

秋に言われた直後、古城の元に飛んでやって来た小さな金色の蝙蝠。パタパタと羽ばたく音を立て古城の前に止まった蝙蝠は気さくに話し掛けて来た。

 

『オレの名はキバットバットⅢ世!短い間だがよろしく頼むぜ!』

 

「お、おぉ!よろしく…。」

 

『んじゃま早速変身といこうや!古城、手を出せ!手!』

 

「手?…こうか?」

 

『よし!キバッテ行くぜぇ!──ガブッ!』

 

「痛ぁ!?」

 

キバットの言う通り右手を差し出す古城の手に噛み付いたキバット。すると噛みつかれた箇所を抑える古城の腹部に、赤いベルト、キバットベルトが巻き付かれた。

 

「おぉ!」

 

『ソイツにオレ様を嵌めろ!』

 

「わ、分かった!」

 

 

「んじゃ、俺等も変身しますか──。」

 

「よぉし!行きますか!──」

 

<< ブドウ! >>

<< LOCK ON! >>

 

「勝つのはオレだ──。」

 

<< ACCEL >>

 

悠がセルメダルを指で弾きキャッチしたメダルを腰のバースドライバーに入れる。

秋は手に持つブドウロックシードを開錠し腰の戦極ドライバーにセットすると頭上にブドウ型アームズ現れる。

蓮司はガイアメモリ、アクセルメモリのガイアウィスパーを鳴らすと腰のアクセルドライバーに挿し込む。

 

「フム、ならば私も──」

 

<< レ・デ・ィ >>

 

「では私も──」

 

「ぽい!──」

 

「夜の方が良かったけど、いざ──」

 

<< HURRICANE NINJA >>

<< ガッシャット! >>

 

ゼノヴィアはナックル型武器兼変身アイテムであるイクサナックルを掌に当てて起動。

神通は白鳥のエンブレムが描かれた白いカードデッキ、夕立はコブラのエンブレムが描かれた紫のカードデッキを翳すと腹部にVバックルが現れ装着。

川内は悠の使用してるハリケーンニンジャガシャットを起動させゲーマドライバーへ挿し込む。

 

<では我々も行こう!──Start Your ENGINE! >

 

「あぁ!頼むぜベルトさんよぉ!」

 

キンジはドライブドライバーのイグニッションキーを回すと何処からかやって来たシフトカー、シフトスピードをレバーモードにして左手に巻かれたシフトブレスに装填する。

 

 

「──変身!」

 

悠はバースドライバーのハンドルを回すとベルト中央のカプセルが二つに割れ、次々と現れたカプセルが割れると中からアーマーが出現し体に纏われる。

 

「うっし!稼ぐか、10万!」

 

悠が変身するは、欲望のエネルギーで戦う戦士──仮面ライダーバース

 

 

「──変身ッ!」

 

<< ハイィー!──ブドウアームズ! >>

<< 龍・砲!ハッハッハ! >>

 

銅鑼のメロディーに合わせて中国拳法風の構えからカッティングブレードを倒すと、ロックシードの展開と同時に頭上のアームズが頭に被さり緑色のボディースーツが纏われる。アームズが展開され鎧と化し、手にはアームズウェポンである拳銃型ウェポン、ブドウ龍砲が握られた。

 

「マッハじゃねぇけど、今日はオレがヒーローになってやるぜ!」

 

秋が変身するは、龍の息吹が如く弾丸を放つ戦士──仮面ライダー龍玄

 

 

「変…身ッ!」

 

<< ACCEL! >>

 

アクセルドライバーのパワースロットルを捻ると、メモリとドライバーの機能でアーマーが生成。蓮司の体に装着され変身が完了すると同時に、蓮司の前にバイクのエンジンとブレードが合わさった専用武器、エンジンブレードを手に引き抜いた。

 

「いざ、振り切る!」

 

蓮司が変身するは、不死身の戦士──仮面ライダーアクセル

 

 

「──変身!」

 

<< FIST ON >>

 

イクサナックルを腹部のイクサベルトに装填すると、内蔵されたアーマースーツが出現しそのままゼノヴィアの体に装着される。頭部の十字架を模したマスクが展開されると、中から赤い目を見せたと同時に熱風が吹き荒れた。

 

「…この格好、不思議と教会時代を思い出させるな…だが、悪くない!」

 

ゼノヴィアが変身するは、魑魅魍魎を打ち払う為に生み出された戦士──仮面ライダーイクサ

 

 

「変身──」

 

神通がデッキをVバックに装填すると、鏡像が神通と重なり変身が完了。女性らしいフォルムを残し白いマントを靡かせながら腰に下げてるバイザー、羽召剣ブランバイザー手に構える。

 

「仮面ライダーファム、出撃します。」

 

神通が変身するは、白羽を散らし敵を薙ぎ払う戦士──仮面ライダーファム

 

 

 

「変身!──ぽい!」

 

夕立も神通と同様にデッキをVバックルに装填すると、夕立の小さな体が成人男性と差して変わらないサイズとなる。紫のアーマーに身を包み、コブラを思わせる頭部をゆっくりと回す。

 

「ぽぉぉぉい…。」

 

夕立が変身するは、暴力の限りを尽くした狂戦士──仮面ライダー王蛇

 

 

「変身!──」

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

<< マキ!マキ!竜巻!──HURRICANE NINJA! >>

 

川内は自身のスタイルと見事合致した悠が変身する忍者ライダー。

 

川内が変身するは、闇夜に二刀を煌めかせる忍者──仮面ライダー風魔

 

 

「変身ッ!──」

 

<< DRIVEtypeSPEED! >>

 

ブレスに装填したレバーを倒すと、キンジを囲う様に赤いスポーツカーの様なアーマーが形成され装着。飛んで来たタイヤが胸部にたすき掛けの様に装備される。

 

「コレは…。」

 

<そう、それがドライブ。悠が変身するダークドライブの原型とされた仮面ライダーだ!>

 

キンジが変身するは、トップギアで加速し続ける戦士──仮面ライダードライブ

 

 

「フゥー…変身!」

 

深呼吸をして手に持ったキバットをベルトに装填すると、古城の体が異形にも似た鎧が纏われる。

 

古城の体質と同じ、吸血鬼を思わせる赤いボディにコウモリのような黄色い頭部のデザイン。両肩と右足に巻き付いた鎖、拘束具カテナを身に着けるのは強大な力を抑える為に着けられている。

 

「おぉ!変わってる!変身してるよ!オレ!!」

 

『どうよ!中々キマッてんだろ~?』

 

古城が変身するは、吸血鬼の王である証の鎧を纏う戦士──仮面ライダーキバ

 

念願の変身を果たし、興奮を抑えようにも上手く制御できない古城。一人だけペタペタと自身の体に触れて相当嬉しいようだ…この映像が記録の為録画されてるとも知らずに。

 

全員の変身が終わると、円を作っていた9人の中心に、10と大きく映し出された数字が宙に現れた。

現れた数字はゲーム開始のカウントダウンらしく、10から9、8、7と段々0に近づいて行く。

 

 

「い、いよいよか…!」

 

<そう緊張する事は無い。何かあれば私が指示を出すからその通りに動けばいい。>

 

「おう、マジで頼むぜベルトさん!…こうなりゃ本気で1位取ってやる!」

 

 

『おい古城!そろそろ気持ち切り替えろ!激しいバトルが始まるぜ!!』

 

「え、もう!?」

 

 

(さて、まずは誰から狙いに行くか…。)

 

(一先ず悠さん達は後回しにすべきですかね、幾ら仮面ライダーになってもいきなりあの人達の内の一人を相手するには厳しいでしょうし…。)

 

(スタートしたら忍者らしく、後ろからスパ!っとするの、と~ぜんアリだよねぇ♪)

 

(早く!早く早く早く!)

 

 

(剣が使えるのは幸運だったな…これで気兼ねなくヤツを…。)

 

(とりあえず初っ端から悠兄さんは無しだな…んじゃあここは…)

 

(まず倒すべきは…。)

 

 

4、3、2と、スタートが近づき、そして遂に…0になる。

 

 

ーパァァンッ!!ー

 

 

「うおッ!?び、っくりしたぁ…<キンジ!前だ!>──ッ!?」

 

0になった瞬間、大きな花火が上がりその音と光に思わずビックリしてしまったドライブに迫ってきたのは…。

 

 

「オゥラァッ!!」

 

「うわッ!──は、灰原ッ!?」

 

開始早々、隙だらけのドライブにドロップキックをお見舞いしたバース。キックを喰らい地面を転がり回るドライブの頭上に、対戦ゲームでよく見るライフゲージが現れると、青いゲージが少し減ったのが確認された。

 

「灰原お前!」

 

「悪いな遠山、中身がお前であろうとドライブが相手だってんなら、真っ先に挑まなきゃいけなくて──なぁ!」

 

「うおぉッ!?」

 

バースが繰り出すパンチの連打をドライブは持ち前の逮捕術も活かして受け流し、掴み上げて関節技を決めようとするが、バースはソレをさせる前にドライブから拳を引き、足払いを掛ける。

ドライブは瞬時に後ろへ下がって回避し、距離を空ける。距離を取って構えるドライブは、ほんの僅かと言えどバースを相手に今のとこ互角で戦えている事に、希望が見え出してくる。

 

そんなドライブを前に、バースは専用武器であるバースバスターを手にする。ポッドに入ってるセルメダルをバスターに装填し、メダル上に模られた銃口をドライブへ向ける。

 

「ッ!」

 

「目一杯楽しもうぜぇ、お互い滅多に出来ない機会だからな!」

 

ドライブ目掛け、メダルの光弾が連射される。

 

 

 

 

 

 

バースとドライブの他にも、それぞれが一騎打ちの勝負を始めようとしていた。

 

 

「まさか貴様から来るとはな…。」

 

「いやぁ、流石に初心者相手に本気で潰しかかるのも大人げないかなぁー、ってのと…アンタとオレ、どっちが上かって、良い機会かだからこの場で決めようかなー、って。」

 

「いいだろう。コイツの慣らし運転には丁度良い。」

 

「へッ、そんな余裕かましてられるのも──今の内だぜッ!」

 

「ッ!──フッ!!」

 

撃鉄を引いたブドウ龍砲を連射する龍玄。発射と同時に横に跳んで回避するアクセルは、一気に龍玄との距離を詰める為に駆ける。

迫り来るアクセルに、ブドウ龍砲の連射を放つ龍玄。だがアクセルはエンジンブレードを盾に徐々に龍玄への距離を詰めていき、跳躍してブレードを振り上げる。

 

「ッ!」

 

「セエェァァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ぽぉーーいッ!!」

 

「ッ!──やはりアナタが来ましたか、夕立さん。」

 

「ぽぉ~い…。」

 

襲い掛かってきた王蛇の特攻を躱したファム。王蛇は背中を向けていたファムの方へ振り返ると、その手には自身のバイザー、牙召杖ベノバイザーにカードをセットしていた。

 

<< SWORD VENT >>

 

「神通さぁん…夕立と楽しいパーティー、しましょう?」

 

「えぇ、頑張って私を楽しませて下さい?」

 

 

 

 

 

 

「──甘いッ!」

 

ーキィィィンッ!ー

 

「ありゃ?」

 

イクサは、背後からスピードと隠密を活かした奇襲を仕掛けた風魔の二刀を、専用武器であるイクサカリバーで弾き返す。

 

「あちゃー、しくじった…にしてもよく気付いたね?」

 

「日々の鍛練の成果、とでも言っておこう…。」

 

「あー、真っ先に狙う相手見誤ったか…まぁいいや。普通に戦うとしますか!」

 

「望むところだ。川内とは一度手合わせしてみたいと思っていたからな。」

 

「そうなの?じゃあこれを機会にもっと仲良くなれるかもね!」

 

「フフ、そうなるとイイな。」

 

暫し沈黙の空気が流れるが、吹いていた風が止んだ瞬間、イクサカリバーの赤い刃と、風魔双斬刀の二刀が衝突し火花を散らした。

 

 

 

さて、ここで思い出して欲しい。

 

今回のお年玉争奪バトルの参加者は、9人。奇数である。

 

全員が一対一の一騎打ちをすれば当然…。

 

「……アレ?」

 

『ってオイぃぃぃぃッ!!オレ達完全に出遅れて余っちまったじゃねぇか!』

 

たった一人、周りが激しいバトルを繰り広げてる中で、キバはポツンと一人残されてしまった。

 

だがコレは生き残り決めるバトルロワイヤルなのでコレはコレでアリな展開なのだが、どちらかと言えば古城も思いっきり戦ってみたかったのでどうにもやるせない気持ちになってしまう。

 

 

 

 

 

一方、現実の方でVR内の様子を見る否参加者たちは…。

 

 

「な、なんか夕立ちゃん…怖い。」

 

「にゃぁ……なんか、!ヤバいスイッチ入ってるにゃしぃ!」

 

「秋さん!頑張ってください!」

 

 

 

「そこッ!いけッ!……あぁ!彩守くん!頑張って下さい!」

 

「なんだかんだ言っておきながら結局賭けてるじゃないか…。」

 

「………。」

 

 

 

「あ、アタシどっちを応援すればいいんだろう!?ゼノヴィアも川内も友達として好きだし!ユウだって…うーん!」

 

「…どっちも応援すればいいんじゃない?」

 

「あ、そっか!」

 

「アラアラ、悠ったら楽しそうで。」

 

「え?…分かるんですか?」

 

 

 

 

「よっし!良いカンジにハブられたわね!後はこのまま一人になるまで逃げきれれば!」

 

「…先輩のなってる仮面ライダー、アレ、ホントに偶然なんですかね?」

 

「古城くん、ちょっと怖いけど…あのコウモリさん、カワイイなぁ…。」

 

 

皆が大きく映し出されたスクリーンに目が釘付けになってる中、神太郎は万が一不測の事態に備えながら、VR内での起こってるライダー達の戦闘データを収集していた。

 

(コレで良し。さて、貴重な戦闘データを取らせてくれよ?私のポケットマネーを無駄にしない為にも…。)

 

今回のイベント、どうやら裏があるようだが、それが何に使われるかはまだ先のハナシである…。

 

 

 

 





ガラガラの映画館で見たゲイツマジェスティ。

感想を一言で言うのなら…白ウォズがヤベー。

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