その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ!
ディケイドのバグスターを撃破し残るはバグスターは一体という所でBABELのリーダーである大臣ことソーサラーが接触を図ってきた!
一体どうなる最新話!?」

「にしてもすごかったよなぁ、悠兄さんの新しいディケイド!
もう悠兄さん一人でいいじゃね的な?」

「大袈裟すぎるだろ。それにいくらディケイドが凄くてどうしても勝てねえの幾らでもあるっての。」

「へぇ~例えば?」

「マラソンとかゴルフ。」

「…あぁ。大人の事情ね。」







宣告

 

 

喫茶・ジュエリー。街の隅角にあるこじんまりとした店であるが、オープンから一月で提供するコーヒーや紅茶、軽食の口コミが街中に広まる程美味いという。

店員は店主と思わしき中年男性一人であるが、気配りのある接客と紳士的な対応もあって一躍人気店へと上り詰めた。

 

だがその裏では、今世間を騒がすBABELのリーダー。大臣ことソーサラーが表の稼業兼趣味で開いてる店だと事実は、今、この時まで知られ事は無かった。

 

 

 

 

「──どうぞ。当店自慢のブレンドです。」

 

カウンター席に座る五人の前にコーヒー独特の香ばしい芳香な香りが鼻に運ばれる。

 

店内にはカウンター内の厨房に立つ大臣。その前の席に秋、悠、ハルナ、蓮司、ウラナと順に座り、ラヴァーこと黒咲は二席ほど離れた位置に座ってライダースの様子を窺っていた。

 

「う~~。」

 

「おや?どうかされましたかお嬢さん。」

 

「アタシ、コーヒー飲めない…。」

 

「おやおや、それは失礼しました。でしたら代わりにココアでもお淹れしましょうか?」

 

「うん!ありがとおじちゃん!」

 

「…オレも出来ればコーヒーではなく緑茶が欲しいのだが…。」

 

「あぁ申し訳ない。当店は緑茶を扱っていなくて…紅茶でしたら用意できますが。」

 

「いや、なら牛乳を。」

 

「いや二人共、そんな敵の親玉が出すのそう素直に…って灰原くん!?」

 

出されたモノに注文を付けるウラナと蓮司に物申すハルナだったが、隣で黙ってコーヒーを飲む悠に唖然とする。

 

「そう騒ぐなよ桜井。お前も落ち着いて飲んどけ。」

 

「いや飲んどけって…あ。美味しい。」

 

「それは何よりです。

幾ら我々が敵対してようと、此処に立ってる限り私はこの店の店主。毒の入ったコーヒー等おいそれと出しません。」

 

「気取り屋でしょう?この男。

悪の組織だからって、ワタシ達のコードネームやBABELって名前もこの男が着けたのよ。」

 

「あのネーミングセンスってこのオッサンのだったんだ…ノリノリで?」

 

「そうよクワガタボウヤ。ノリノリで。」

 

「最終的に皆受け入れてくれたじゃあないですか。

おっといけない、そういえばまだ名乗っていませんでしたね。」

 

ウラナと蓮司の前に、ココアの入ったカップと牛乳が置いた大臣は、敬意を込めた立ち振る舞いで自らの名を明かした。

 

「では改めて、私は大臣こと史汪 真。BABELのリーダーであり魔法使い、仮面ライダーソーサラー。表の仕事は御覧の通り、一喫茶の店主を勤めてます。」

 

「ご親切な自己紹介どうも。で?こんなオフ会みたいな出会いの場所設けた理由は?」

 

「はい。今回キミ達を招待したのは他でも無い。我々からキミ達に…宣戦布告を言い渡しに。」

 

「せ、宣戦布告って…。」

 

「言葉の通りよお嬢ちゃん。ワタシ達とアナタ達、決着を付けましょうってハナシ。」

 

その言葉を皮切りに場の空気が張り詰めた空気へと変わる。

 

濃密な殺気が満ちた空気の中に、ハルナとウラナは気を失わないので精一杯。秋も二人ほどではないにしろ、平静を保てず冷や汗を滝の様に掻くばかり。

 

そして唯一平然と、殺意と気迫を決壊したダムの如く放ってる悠と蓮司。ソレを真に受けている史汪と黒咲は涼しい顔で受け流していた。

 

「…随分いきなりだな。何?活動資金底尽きた?それとも野郎ばっかのチームに嫌気が指した?見るカンジにむさ苦しいし。」

 

「失礼ねカブトボウヤ。此処に居るじゃないの、麗しいのが。」

 

「そのガチムチの筋肉しまってから言ってくれ。」

 

「コイツの言ってる事は無視して、何故今になって決着を?

コイツが一人で、お前達が五人の時なら兎も角、だ。」

 

「準備が整ったのですよ。我々の最終目的を果たすのがね。ですからその前に、キミ達との決着も付けるべきだと判断したのですよ。」

 

「世界を壊すっつう、あのふざけた目的?」

 

「えぇ。ですがあれは、ハッキリ言って正しくない。我々が果たすべき成就はもっと別です。」

 

「世界中にあんだけ言って、ハッタリでしたってか?」

 

「アレは最終目的を行うに辺り起きてしまう、副産物の様なモノです。

ですからあながち間違いでは無い。だから言ったんですよ。キミ達へミスリードに誘うのも兼ねて。」

 

「待って…それってつまりこういう事?あくまでこの世界が壊れるのは…ついで扱い?」

 

「ありきたりに言えば。」

 

「?…えーっと…ねぇどういうこと?」

 

「コイツ等がクソ野郎って事。ちゃんと覚え解けよウラナ。」

 

「止めろコイツに汚い言葉を覚えさせるな。まだ子供だぞ。」

 

「何時から親になったんだお前は?子連れ狼か。」

 

「あの作品は好きだった。」

 

「二人共静かにしてまた話が徐々にズレてるから…!」

 

「アナタ達何時もこの調子なの?」

 

「まぁね。お陰で毎日楽しいよ、カワイイ子もいっぱい居るし。」

 

「それは羨ましい限りで。」

 

 

 

「…ねぇ私が異常なの?なんで敵の本拠地で仲良く何時ものノリで話してんの!?さっきまでの緊迫感何処行った!」

 

 

「オーケー分かったこっからマジだ。

で何だっけ、あぁそう決着の話だっけ。」

 

「えぇ、こっちも危うく話が脱線しかけましたよ…。それで時間と場所ですが…。」

 

 

「別に今すぐでもいいんだぜ?まどろっこしい待ち時間過ごすよりその方が手っ取り早いし。」

 

「みすみす敵を前に黙って引き下がると思っていたのか。」

 

「待てバカ二人。考えろよ、態々招待しておいてこんな事態考えて無い程マヌケな連中か?」

 

「よくご存知で嬉しい限りですよ。此処で戦闘が起きたら複数個所で待機しているグールとデビル、残っているロイミュードが無差別に人を襲うように指示してあります。」

 

「ほらね。よくあるパターン。」

 

「ハッタリやもしれんぞ。」

 

「平気で冥府と真祖の国攻める奴らだぞ?今更無関係な人間何人死のうが、何事もなかったかの様に涼しい顔するよコイツ等。」

 

「………フゥム…場所と日時は?」

 

「5日後の夜明け。場所は××通りの広場。」

 

「そんな市街地で!?」

 

「其処がいいんです。詳しくは当日のお楽しみで。」

 

「大丈夫だ桜井。ゲームエリアを展開すれば下手な被害は出ない。」

 

「此方からは以上です。では五日後、お互い全力を尽くしましょう。」

 

 

「…え、本当にコレでお開き?」

 

「今奴等に下手な手出しは出来ん。情報もこれ以上聞き出すのは不可能だ。」

 

「安心なさいサソリボウヤ。五日経ったら知りたい事知れるわよ…最後になるからね。」

 

「…この前の借りは返させて貰う。」

 

「フフ…楽しみね。」

 

 

「では、五日後に。」

 

「あぁ……個人的に、こんな美味いコーヒーを淹れられる人間の殺すのは…実に残念だ。」

 

「…そのコーヒー、この店で出すのは今日で最後です。」

 

「…そうか……行くぞお前等。」

 

出されたコーヒーを飲み干して悠を先導に五人は店内から出ていった。空となったカップを片付ける史汪に、黒咲は話し掛ける。

 

「ねぇ。どうして五日後なの?例のアレ、やろうと思えば今すぐにでも動かせるんでしょう?どうして態々…。」

 

「理由は二つ。一つはジャッジが動ける時期を見計らっての事。この前の国攻めで一番の負傷者ですから。」

 

「ふーん。で?二つ目は。」

 

「ココの片づけですよ。」

 

「片付けって…この店の?」

 

「えぇ。今日で閉店ですから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰原家のラボに戻ったチームライダーズ。

 

戻って早々気を休める雰囲気では無く、彼等の心中には五日後の決戦の事しか頭に無かった。

 

「にしてもビックリだよなぁ、まさかこんな形でBABELと戦う事になるなんて…思いも寄らなかった。」

 

「だがまたとない機会であるのは明白だ。一網打尽に出来る絶好の。」

 

「向こうは3人。こっちは6人。数では勝って向こうの手の内も知ってる。

これだけならこっちが圧倒的有利なんだ、が…。」

 

「そう簡単にはいかないわよね。この前も五人がかりでコテンパンにやられちゃったし…。」

 

「もきゅもきゅ…。」

 

「なら鍛え上げればいい。幸い時間は五日もある。」

 

「脳筋が…絶対に勝たなきゃいけないんだぞ。大事な決戦を前に、そんな無茶な特訓出来るわけねぇっつの!」

 

「ならばどうする気だ?あと五日、無駄に時間を過ごせと?」

 

「なわきゃねぇだろ、ドライバーのメンテ、相手の戦略、新兵器の開発とか、一杯あるだろ!」

 

「己も磨き上げねば勝てぬ相手だと知ってるだろうが!道具と小細工に頼ってるだけで勝てると思ってるのか戯けめが!!」

 

「オメェもその道具に頼って戦ってんだろうが!!」

 

 

「もきゅもきゅもきゅもきゅ…。」

 

 

「…後ウラナぁ!この後メシだからお菓子ボロボロ溢しながら食うな!!」

 

「ふぇッ!?」

 

「子供に当たるな、今は食べ盛りの年頃だぞ。」

 

「お前は甘やかし過ぎだっつうんだよ!あの位は目を離したら好き勝手仕出かすから、目を光らせなきゃいけないの!」

 

「そういう目を向けるから反って反抗心が生まれるんだろう!褒める時は褒める!叱る時は叱る!飴と鞭の使いようで…!」

 

 

「ストォーーーップッ!!二人共教育熱心なのは分かったから!!いい加減アンタ等の口喧嘩止める私の心労も考えてくれません!?」

 

「はぁー、姉ちゃんもすっかり抑え役板についたなぁ…。」

 

「ねぇねぇ。みんなが喧嘩してるの…アタシの所為?」

 

「んー、いんや。ウラナは悪くないよ、みんなウラナを大事に思って、それであぁ騒がしくなってるだけ。」

 

「そう、なの?アタシが大事…レンジが……えへへへ♪」

 

結果的に話がBABELとの決戦からウラナの教育方針に変わってしまい、ウラナは思い人に大事にされてるのが嬉しいのか顔に手をやって顔を赤くすしている中、彼等の間に強引に割り込むように、神太郎が謎のケースを抱えて登場して来た。

 

「はいはいそこまでぇ!ウラナ君の教育も大事だけど、今大事なのはこの五日間どう対策を立てるかだろ?

丁度イイのがありますよお客さん!!さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!」

 

「「「古ッ…。」」」

 

現代っ子三人(悠、秋、ハルナ)から時代錯誤な評価を得たが目を引き付ける事が出来た神太郎は、ケースを開け中に収められたゴーグルを五人へ見せた。

 

「?何だコレは…?」

 

「あ、オレ知ってる。VRゴーグルっしょ?」

 

「そう。今流行りのバーチャルリアリティーゲーム。コレを使ってキミ達のスキルアップを行う!!」

 

「ゲームで特訓だと?また何時ものおふざけか、ゲンム。」

 

「まぁ話を聞き給え蓮司君。私のVRは一般で売られてるゲームとはワケが違う。

私の作った電脳世界は五感の再現は当然の事、疲労や痛覚も忠実に再現した、正にもう一つの現実世界!!

それを私がこの手で創り上げた、正に神の所業さぁぁアアアァァアーーーッ、ッハッハッハァ!!!」

 

 

「…す、凄いと言うべきか、何と言うべきか…。」

 

「リアクションに困るんならもうしなくていいじゃない?付き合わされるコッチが疲れるし。」

 

「悠兄さんもう投げ槍だね。」

 

「一応長い付き合いだからな。」

 

 

「電脳世界ならば傷はおろか致命傷負ってもキミ達の肉体は無事なまま。これから五日間電脳世界で戦闘スキルを磨き、時に体が鈍らないようトレーニングをし、作戦を立てる。

私はその間ガシャット開発を行う。悠君の覚醒したディケイドライバーのお陰で入手できた素晴らしいデータを基にすれば…究極のガシャットが完成するやもしれん!!」

 

「究極のガシャット?どんなガシャットだ?」

 

「それは……。」

 

「「「「……。」」」」

 

「ワクワク♪ワクワク♪」

 

 

「………まだ決まって無い。」

 

「「「無い のかよ/んかい/の !?」」」

 

「まぁそれはさておき、今は悠君と蓮司君用の新しいガシャットがもうすぐ出来上がる。それが終われば私は究極のガシャットの制作に取り掛かる。

此処まで何か質問は?」

 

神太郎からの問い掛けに誰も声を出してこない。変わりに向けられたのは、決意を決めた五つの強い眼差し。

 

進むべきは道が決まった今、後はその高みを目指してひたすら突き進んで行く。無言の返答を目に神太郎は満足気に頷いた。

 

「いよぉし!ならば早速ッ…「あの~。」…ん?」

 

「「「「ん?」」」」

 

「ほぇ?」

 

いざ特訓を開始しようと宣言した矢先、エプロンを着けたラ・フォリアが若干申し訳なさそうな様子で六人に声を掛けた。

 

「盛り上がってる所お邪魔する気は無いんですけれど、晩御飯の準備が出来たので、一旦ご飯食べてからにしませんか?」

 

「わーい!ごはんごはん!!今日はなにー?」

 

「今日はスタミナの付く、餃子ですよ♪」

 

「わーい!ギョウザ♪ギョウザ♪」

 

はしゃぐウラナの手を引いて灰原宅へ向かっていくラ・フォリア。その後ろ姿を目に、微妙な空気となってしまった。

 

 

「……えっと…取り敢えず、餃子食べてからにしよっか。」

 

「「「「異議なし。」」」」

 

 

なんとも締まらない面々であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夕食後…。

 

 

「いよぉおッしッ!!腹ごなしも済んだ所で本格的に特訓開始だぁッ!!」

 

「アンタじゃなくて俺等がな。」

 

神太郎から特注のVRゴーグルを受け取る悠達。敷かれたマットの上で寝転ぶ悠達に神太郎は端末を操作しながら電脳世界での最終確認を説明していた。

 

「さて、さっきも言った様にキミ達が向かう電脳世界では現実の様にダメージを負う。そしてそのダメージが致死レベルまで達すると自動的に現実世界へ戻って来れるようになっているから、万が一トラブルがあったり怪人が出た場合は此方から強制的に戻すから安心して。その為に医療スタッフとして明石くんもスタンバイしてもらってます!」

 

「ハイ!皆さんのメディカルチェックはこの明石にお任せを!」

 

白衣を羽織った明石が胸張って宣言する隣で、神太郎が操作する端末の画面には、五人が変身するライダーのデータが写し出されている。

 

「それとキミ達が変身するライダーやそのスペックは此方から制限を掛けさせて貰うよ。特訓だからね。

そして、ハルナ君とウラナ君。」

 

「はい?」

 

「なーに?」

 

「キミ達二人は他の三人と比べて経験が浅いから、それに追いつく様少しハードな相手を組ませて貰うよ。キツイだろうけどコレを乗り切れたらレベルアップ間違いなしだから、頑張ってくれたまえ!」

 

「え……。」

 

「アハハ、ドンマ~イ。ま、これも世界平和の為だぜ、姉ちゃん。」

 

「楽して強くなる道など在りはしない。ウラナ、修業とは己との戦いなのだ。」

 

「う~ん…よく分かんない。」

 

「今分かんなくともやれば嫌でも分かるだろうよ。そろそろおっ始めよう。」

 

愕然とするハルナと、蓮司の語る言葉をイマイチ状況を理解出来ないウラナはハルナの体内へ入り込む。そして四人はゴーグルを装着し敷かれたマットに寝た所で、不意に秋が手を上げた。

 

「今更だけど質問!オレ達が電脳世界で戦う相手ってどんなの?」

 

「あ、そういえば…。」

 

秋の疑問に便乗する様に、ゴーグル越しに四つの視線が神太郎に集まる中、当の神太郎はイタズラめいた笑みを浮かべながら全ての設定を終えエンターキーに指を掛けた。

 

「それは……会ってみてからの楽しみだ♪」

 

神太郎がエンターキーを押すと悠達の意識は落ち、その意識は電脳世界へと飛ばされたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん。」

 

悠・市街地エリア。

 

「コレは…随分と手の込んだ事で…。」

 

 

 

 

蓮司・森林エリア。

 

「この土の踏んだ感触、匂い。木の手触りまで…とても作り物とは思えん再現度だ…。」

 

 

 

 

秋・スタジアムエリア。

 

「おぉーッ!!スッゲェ!超リアルー!!」

 

 

 

ハルナwithウラナ・山岳エリア。

 

「凄い…とても作り物とは思えない…。」

 

「うわ~!広~いッ!!」

 

 

 

四人はそれぞれのエリアにドライバーを身に着けた状態で立っており、誰もが現実と変わりない再現度に目を見開く。

足裏から感じる地面の感触も、肌で感じ取る風も、電脳世界と言われなければラボからこの場へ瞬間移動したと思い込む程の出来栄えに舌を巻いていたが、そんな彼等の前に灰色のオーロラが出現し、四人の前に修業相手となる人物達が姿を見せた。

 

 

悠には五人、秋は三人、蓮司は一人、そしてハルナとウラナは…十人。

 

 

 

 

ースタジアムエリアー

 

 

「…マジ?」

 

秋の前に現れた三人。

 

赤い革ジャンを羽織った者、秋と同じ年頃の学生服を纏っている者、そして青と黒のレザージャケットを着た長身の男が近づいて来る。

 

レザージャケットを着た男を除き、革ジャンと学生服の二人の事を知ってる為、レザージャケットの男の正体も察した秋は声を掛けようとしたが、データで造られた存在だと分かっても緊張してしまう。

 

「あ、あの~。アンタ等、んんッ!アナタ達が、オレの修業相手で?」

 

「俺に質問をするな。」

 

秋の質問を一蹴した革ジャンの男は、懐からバイクのハンドルを模したドライバーを装着すると同時に、学生服の男も真ん中に天球儀が嵌め込まれたのを、レザージャケットの男は腹部から現れたレバーの着いたドライバーを身に着けていく。

 

「お前は黙って俺達と戦え…殺す気でな。」

 

「俺達もただお前と戦うだけ。その為に今の俺達は居る。」

 

 

<< ACCEL >>

 

<< METEOR Ready? >>

 

<< アーイ! >>

<< バッチリミロー! バッチリミロー! >>

 

「変…身ッ!」

 

「「変身ッ──!」」

 

<< ACCEL! >>

 

<< カイガン!──スペクター!>>

<< レディゴー!・覚悟!・ドキドキ・ゴースト!>>

 

 

革ジャンの男、照井 竜、学生服の男、朔田 流星、レザージャケットの男、深海 マコトがガイアメモリ、アストロスイッチ、そして眼魂と呼ばれるアイテムで変身していく。

 

加速の戦士・仮面ライダーアクセル

 

天翔ける流星・仮面ライダーメテオ

 

罪を背負う亡霊・仮面ライダースペクター

 

 

「さぁ、振り切るぜ!」

 

「お前の運命は、俺が決める。」

 

「俺の生き様、見せてやる!」

 

 

「うわー壮観…よっし!一人は知んねぇけど胸借りさせて貰うぜ!」

 

<< SignalBike──Rider! >>

 

「Let,s!──変身ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

ー森林エリアー

 

 

「…お前は。」

 

蓮司の前に現れたのは、スーツを纏った気品を感じられる男性。

 

だが蓮司は、その男の並みならぬ雰囲気を感じ取りすぐ警戒態勢へ入っていた。まるで歴戦の戦士を前にしたかのような緊張を帯びて。

 

するとスーツの男、呉島 貴虎はゲネシスドライバーを装着する。

 

「変身──。」

 

<< メロンエナジー! >>

 

 

「ッ!それは…!」

 

<< LOCK ON!──SODA! >>

 

<< メロンエナジーアームズ! >>

 

蓮司の前で斬月・真として変身し、専用武器であるソニックアローを突き付ける。

 

「どうした、変身しないのか?お前は戦う為にこの世界に来た筈だ。」

 

「…あぁそうだ。オレは強くなる為に…貴様を倒す。」

 

「ほぉ?」

 

<< メロン >>

 

「──変身ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー市街地エリアー

 

自身の前に現れた黒い装束を纏った五人組を悠は知っていた。

 

 

傭兵でありながら不死身と言われ、名前を聞けば誰もが震え上がる…悪魔が率いる傭兵部隊を。

 

 

「へぇ、アイツボコボコにしちゃえばいいんだ。」

 

<< HEAT >>

 

 

「ハッハッハッハッハ!暴れるぜ~ッ!!」

 

<< METAL >>

 

 

「…ゲームスタート。」

 

<< TRIGGER >>

 

 

「アラ?イケメンじゃな~い!ワタシが、愛してあげるわ~!」

 

<< LUNA >>

 

 

五人の内四人がガイアメモリを自身に挿して、怪人・ドーパントの姿になる。

炎を纏い女性のシルエットを残した怪人ヒートドーパント、全身が鋼鉄に纏われたメタルドーパント、右腕がライフル銃になっているトリガードーパント、クネクネと体を揺らしている両手が鞭になっているルナドーパント。

 

そして真ん中に立っていた男、大道 克己は、ロストドライバーを身に着け、手に持っているメモリを悠に見せびらかすように起動させる。

 

 

<< ETERANAL >>

 

「さぁ、死神のパーティータイムだ──変身ッ!」

 

<< ETERANAL! >>

 

悠の前に姿を見せた白い悪魔、仮面ライダーエターナルが率いる不死身の傭兵集団・NEVERを前に悠は乾いた笑みしか出せなかった。

 

「野郎、皮肉効かせすぎだろ…。」

 

 

「踊り狂え、道化の様にな…ッ!」

 

「突撃~ッ!!」

 

「おっしゃ行くぜェェェェッ!!!」

 

「フフ…ッ!」

 

「ッ!!」

 

 

「ッ!四の五の言ってる場合じゃないか──ッ!」

 

<< HENSHIN >>

 

「変身ッ!──ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー山岳エリアー

 

 

「……。」

 

「お~、いっぱい居る!」

 

桜井 ハルナは感心しているウラナを他所に目の前の光景に対し、驚愕の余り何も言葉が出なかった。

 

ハルナは悠や秋と比べ仮面ライダーに詳しくない。そんな自分でも目の前に居る仮面ライダーを知っている。

 

なにせ…。

 

 

 

 

 

「仮面ライダー、1号!」

 

「仮面ライダー2号!」

 

「仮面ライダーVッ、3ィ!」

 

「ライダーマン!」

 

「仮面ライダー、X!」

 

「アーマーゾーン!」

 

「仮面ライダーストロンガー!」

 

「スカイライダー!」

 

「仮面ライダー、スーパー1ッ!」

 

「仮面ライダーZX!」

 

 

丘の上で高らかに名乗る始まりの戦士は流石に誰でも知っているからだ。

 

此方を見下ろす十人の昭和ライダー達の背後では派手な爆発が演出されてる。”多分神太郎さんの趣味だな、アレ”と現実逃避まがいな感想を思うなか、1号はハルナ達に指を指してきた。

 

「何をグズグズしている!これからキミ達はパワーアップの為に地獄の様な特訓を受けるのだぞ!」

 

「キミ達が戦う相手は強敵だ。ならばこそ生半可な特訓では強くなれない!」

 

「その為に我々が此処にいるのだ!」

 

 

「ハルナ…。」

 

「…えぇ。やりましょう。どっちにせよ戦う為にこんなとこ来ているんだし。」

 

<< MIGHTY BROTHERS XX >>

 

 

「行くぞォ!」

 

「「「「「「「「「オォ!!」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じ、神太郎さん。これって…。」

 

「ん?あぁコレ?

仮面ライダーとしての素質を上げるなら、ライダーと戦わせるのが一番だ。

彼等はこれまで天界から観測された記録と、悠君達が集めてくれたレジェンドライダーのガシャットのデータを基に私が構築した。思考パターンや戦闘スタイルも本物と言っても全く差し違え無いさ。」

 

「だとしたらこの特訓相当厳しいんじゃ。特にハルナさんなんて十人も…。」

 

「その位しなきゃダメなんだ。BABELにも、バグスターにもアベルにも。これから立ち憚る大きな壁を超える為に必要なんだ。」

 

神太郎は四つの画面からダークカブト、マッハ、斬月、エグゼイドが戦闘を開始した様子を見て、席を立ちあがった。

 

「さて、私はガシャットの開発に取り掛かるとしよう。

明石君、さっきも言った通り彼等の脳波のチェックを。何かあればすぐ呼んでくれたまえ。」

 

「はい!お任せ下さい!」

 

神太郎は席を移り変わり、二本のガシャットが専用機器に挿してある端末の方へ。

 

二つの画面には白く輝く鎧を纏った老騎士と月夜をバックに闇夜を駆ける忍者と思わしきゲームロゴの画面が写し出されていた。

 

「さてと。この二本を五日で完成させるのが、神である私の試練だ!!ハァァアアッ!!!」

 

左右に置いたキーボードを片手で同時に打ち込んでいく神太郎。

 

 

来るべき決戦に向け、チームライダーズの正念場となる試練が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻・アベルは何時ものビルの屋上の一角でただ静かに、ジッと動かず目をつぶった体制で地べたに座っていた。

 

アベルは閉じていた眼をゆっくり開けると自身の右手を顔を前に持ってくる。

 

近づけた右手には、黒いノイズが奔っていた。

 

「もう少し…もう少しでこの力は完全にボクのモノだ…

そしたら次はキミの番だドクター、いや、番堂。」

 

<…あぁ。だが本当に信用していいんだね?コレが終わったらボクを開放すると。>

 

「あぁ勿論。だからそれこそ死ぬ気でやってくれ。今まで回収した全てのデータを一つに、ね。」

 

番堂を閉じ込めているバグバイザーの画面が切り替わり、そこにはクウガを除いた全てのライダークレストが写されていた。今日倒したディケイドのバグスターも当然含まれている。

 

 

「もうすぐだ。もうすぐボクは生まれ変わる…新たなる神の誕生が!!」

 

 

 

 

 

 

 






次回は修業回、そして決戦回と言う流れで行きます。

にしてもムテキ回といいなんでこういったタイミングで天敵ゴルフが流れるのか…。

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