その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ!
桜井から出て来たバグスターことウラナを受け入れた俺達チームライダーズであったが、ウラナはガシャットとドライバーを勝手に持ち出しパラドクスレベル99へとなり勝手に戦闘をおっ始めやがった!
一体どうなる最新話!!」

「なぁー悠兄さん。オレ気になったんだけど、イレイザーの給料でどんくらい出るもんなの?」

「あー、まぁ給金のシステムは月給制じゃなく仕事一件の成功報酬だな。一件につき……大体こんぐらい。」

「え、こんなに出んの?マジ?」

「マジだよぉー。内容が内容だからね。
ちなみに、申請すれば手当も出るし、一年の終わり頃にボーナスだって出るし。」

「何それ超ホワイト!!」

「仕事内容がブラックだからな。」






停止

 

 

それは悠が自室で寝ている間、昼食を取って思い思いの時間を過ごしていた時の事だった。

 

「あーーッ!!ダメダメ!死んじゃう!!」

 

「ちょ、ちょっと待ってっぽい!!」

 

「アハハハハハ!!」

 

リビングのテレビの前に、最新のゲーム機で競い合ってる吹雪、夕立、睦月とそして新たに灰原家へ迎え入れることになったバグスターのウラナ。

四人対戦で行うゲームでウラナは三人を圧倒しながら無邪気にはしゃいでいる様を他の面子が眺めていた。

 

「…分かんねえモンだなぁ。まさかこの歳で叔父さんデビューしちゃうとはねぇ。」

 

「違うからね。似たようなものだけど違うからね。」

 

 

「あぁして家族が増えていくものなんですねぇ。私も早く自分で産んだ子をこの手で抱き締めたいものです。」

 

「家族…子供……ッ~~!」

 

「ラ・フォリアさん。あの子はそんな微笑ましいエピソードで出て来たもんじゃないんで。

それと夏音ちゃん。アナタにはまだ早いから、まずは健全なお付き合いから始めなさい。」

 

 

「いやー、蓮司君も罪づくりな男だよねー。まさかバグスターに好意を向けられるなんて、ぶっちゃけどうなのよその辺の心境は?」

 

「…どうもこうもない。そんな直ぐ返答できるものでは無いだろう…。」

 

「あー、その辺は悠君と同じカンジかー。」

 

「それはそれで凄く不愉快だ…。あぁそういえば…。」

 

「ん?…おぉ!それは…!」

 

レンジが思い出したように懐から取り出したモノに目を輝かせる神太郎。前の戦闘でアベルから奪い取ったガシャットギアデュアルを蓮司から受け取った。

 

「戦利品だ。」

 

「取り戻してくれたか!いやぁーよくやったよ!!グッジョブ!!

フフフ、アベルめ、私の発明品を勝手に使ったバチが遂に来たな!」

 

「アベルのガシャットねぇ。なーんか使うのにちょっと躊躇っちゃいそう。ゲームの内容的にもなんかクセありそうだし。」

 

「秋くん。正しくは、我々のガシャットだよ。

パーフェクトパズルとノックアウトファイターはアベルのヤツが創ったゲームらしいが…ゲーム自体の完成度はかなりのモノだ。改めて見ると私から奪ったガシャットの設計図だけでこれほどのモノを創るとは…。」

 

「ッ!?…ガシャットにうるさい神太郎さんが素直に称賛、しかも敵に…。」

 

「あくまでゲームだ。それだけ。それにヤツはこのガシャットの真の使い方を知らなかったようだしな。」

 

「?…どういう意味だ。」

 

「ムッフッフッフ~。」

 

意味深な笑みを浮かべながら神太郎は、懐から取り出した自身のゲーマドライバーとギアデュアルを首を傾げる蓮司達の前に置いてその真意を語り始めた。

 

「このガシャットは蓮司君の使ってるギアデュアルβ同様ゲーマドライバーに挿して使える。だがそれだけじゃあない。

ガシャット単体での変身より遥かに強化され、そのレベルはなんと、ハルナ君のマキシマムマイティXと同様レベル99になるように作られてるんだよ!!」

 

「マジ!?……な、なぁおやっさん。そのガシャットなんだけどさー。オレに譲って貰っても…。」

 

「掌返し!」

 

「ただ、アベルが創ったゲームの所為でどういう性能になるのかが分からないんだよねー。

まぁここはじっくりと調べて誰にこれが向いてるかを……ん?」

 

神太郎が視線を下に向けると、そこに置いた筈のガシャットとドライバーが無くなっていた。

 

「蓮司君、ここに置いたガシャットとドライバー知らない?」

 

「ム?………何処だ?」

 

「アレぇ?何処だ?落っこちてもいないし…。」

 

「あ…ね、ねぇ。アレ…あった。」

 

 

 

「へぇ~。なんかコレ面白そう!」

 

ハルナが指差した方へ目を向けると、何時の間にかギアデュアルとドライバーを手に目を輝かせているウラナが。相手をしていた筈の吹雪達が積み重なるように倒れているのを見て完膚なきまでに打ちのめしたようで、自然とこっちに興味を向けたようだ。

 

「う、ウラナくーん?ソレ、返してほしんだけどなー?」

 

「ヤダ。コレアタシ使うー!てわけで今から練習にいってきまーす!!」

 

「ちょ!、ウラナ!!待ちなさい!!」

 

手を伸ばすハルナの静止の声を聴かず、ウラナは体をデータ状に変えてその場から瞬間移動しハルナ達の前から消えてった。

 

「え!?何今の!?ど、何処行っちゃったのさ!?」

 

「ふむ。バグスター特有の瞬間移動。いや、ワープか?存在がコンピューターウイルスだからそういうのも出来るのか…。」

 

「吞気に考察してる場合か!とにかく早く連れ戻さねば、取り返しのつかない事に…!」

 

「オ、オレ悠兄さん起こしてくる!!こんな状況だから叩き起こしても殺されない…筈。」

 

 

 

 

 

そして場面はウラナがはぐれ悪魔を前に仮面ライダーパラドクス パーフェクトノックアウトゲーマーへ変身した所へ切り替わる。

 

「ヘイ、カモーン♪」

 

「このッ、舐めてんじゃあねぇぞガキがぁ!!」

 

パラドクスの挑発に見事嵌められた蜥蜴のはぐれ悪魔はその巨体に見合わない俊敏な動きでパラドクスへと詰めていく。攻撃が届く間合いに入った瞬間、強靭な爪を備えた腕を振り下ろした。

 

 

 

ードゴォォンッ!!ー

 

「ぶゥッ!?」

 

腕を振り下ろしパラドクスへダメージを与えたと思ってたはぐれ悪魔は体を九の字に曲げながら吹き飛ばされていた。

木々を何本も折りながらようやく止まったが、はぐれ悪魔の腹部にくっきりと着いた黒く焦げた跡から臭う焼け焦げた匂いが林に漂う。

 

「ぶッ…おぇぇ!!」

 

「ん~?強すぎた?」

 

腹を抑え蹲るはぐれ悪魔に対しパラドクスは右手をぶらぶらと振りながらゆっくり歩いていく。ゆっくりと迫るパラドクスを前に、はぐれ悪魔は目付きを変えた。

 

「ガキィ…このオレ様を…本気にさせてくれたなぁ!!」

 

「んん?…お~。」

 

はぐれ悪魔は腕を地に着けて二足から四足へ。蜥蜴の様に木々に張り付いて飛び移り、俊敏な動きでパラドクスを翻弄させる。

 

「ハハァどうだ!!この動きには着いて来れまい!!」

 

「ふーん…じゃあコレ!」

 

木と木の間を飛び移っている相手に対しパラドクスは一つの武器をドライバーから呼び出す。パラドクスの手にAとBボタンが着けられた斧と銃身が合わさったパーフェクトノックアウトゲーマーの専用武器。

 

<< ガシャコンパラブレイガン! >>

 

<< ズ・ガーン! >>

 

「フッ!」

 

パラドクスはパラブレイガンをガンモードにし、はぐれ悪魔へ銃撃を放つ。だが、パラドクスの放つ弾丸は木々の間を自在に駆け回るはぐれ悪魔に中々当たらずにいた。

 

「ハハハハ!どうしたどうした!!大層な武器は見せかけかぁ?」

 

「む~!だったら!──」

 

<< 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10! >>

 

パラドクスははぐれ悪魔に唆されるとパラブレイガンのBボタンを素早く連打、その後青い左腕、パーフェクトパズルの能力であるエナジーアイテムの操作で、一つを自身に、もう一個を武器であるパラブレイガンに取り込ませた。

 

<< 分身! >>

<< 高速化! >>

 

「これで──どうだ!!」

 

<< 10連鎖! >>

 

「んなぁ!?」

 

分身のアイテムで十人に増えたパラドクスが背中合わせになって死角を無くし、十発の弾丸を連射。

放たれた弾丸には高速化のアイテムの能力ではぐれ悪魔の反応でも追いつけない程の弾速になった嵐の様な弾幕を前に、はぐれ悪魔は必死に避け続けるも全てを躱しきれず一発を喰らって動きが怯んだ隙に容赦の無い銃弾が見舞われた。

 

「ぐああぁぁぁあッ!!!」

 

「アハハハ!当たった当たった!!」

 

木から落ちて倒れるはぐれ悪魔を前に、見た目にそぐわず飛び跳ねて喜ぶパラドクス。

はぐれ悪魔は傷着いた体を起こすと更なる変化を遂げる。またも二本足で地を立つ、すると両腕が肩からどんどん膨張し始め、やがて剛腕ともいえる両腕となって地面に打ち付けると僅かだが大地が揺れ、巨大なクレーターが出来あがった。

 

「うがああぁぁぁぁッ!!!もう食う食わねえは関係ねぇ!!テメエはここで原型も無くグチャグチャにして殺してやる!!!」

 

「うわーすごーい。まるでゴリラみたーい♪」

 

「ッ~!──クソガキィィィィィィッ!!!」

 

荒い足音を立てながらパラドクスへと肉薄していくはぐれ悪魔。パラドクスは殺意を剥き出しに迫るはぐれ悪魔の威圧に臆することなく冷静にパラブレイガンのAボタンを押して銃身を回転、炎の模様が描かれた片刃の斧となる。

 

<< ズ・ゴーン! >>

 

 

「んな小せぇ斧がなんだァ!!テメエの貧相体をオレ様の腕でペシャンコに潰してやらァァッ!!!!」

 

 

「ふーん…やってみれば?」

 

<< 1・2・3・4・5! >>

 

アックスモードとなったパラブレイガンのBボタンを5回連打し左手を柄頭に添えて静かに構えるパラドクス。

 

頭上から迫り来る巨大な腕がパラドクスを押し潰さんと風を切るはぐれ悪魔の一撃に対し、パラドクスはパラブレイガンを勢いよく振り下ろす。

 

常識的に見て質量の差でははぐれ悪魔の方が上、相手の武器が威力のある斧だとしても攻撃を繰り出したタイミングから見て力では此方が押し勝てる。はぐれ悪魔は自身の拳で肉塊となるパラドクスをイメージしニヤリと口角を挙げた。

 

 

そして鮮血が舞い、林の木々に夥しい量の血が飛び散った。

 

 

はぐれ悪魔の眼下にいるパラドクスはパラブレイガンを振り下ろした姿で健在。思い描いた光景になっていない事に疑問を浮かべたはぐれ悪魔であったが、振り下ろした自身が視界に入った瞬間、余りの光景に頭が真っ白になった。

 

自身の振り下ろした右腕が肘の所まで縦にパックリと裂けており、今も壊れた蛇口の様に断面から血が流れ出ていた。

 

「ぎッ、ギャアアアアアアァァァッ!!」

 

 

<< 5連打! >>

 

「うぇ、ばっちぃの着いちゃったぁ~。」

 

体に着いた血を拭うパラドクスを前に、腕を斬られた事に気付いたはぐれ悪魔は襲い来る壮絶な痛みから喉が枯れる程の絶叫が林の中に響く。

 

パラドクスの持つパラブレイガンは高熱衝撃波という能力が備えられており相手がガードしたとしてもその余剰エネルギーを与える事が出来るうえ先程押したBボタンは一撃に押した回数分のヒット回数を与えられる為、はぐれ悪魔は5回分の攻撃を受けた事になるのだ。

 

「ち、畜生…ッ!」

 

「う~ん、そろそろ飽きたなぁ…じゃあもうこれでおしまい!」

 

<< ガッチョーン!──ウラワザ!──ガッチャーン! >>

 

パラドクスは斬られた腕を抑えて後退るはぐれ悪魔を見て潮時を判断すると、ドライバーに挿してるガシャットのダイヤルを回しレバーを閉じて再度開くと握りしめた右拳に赤いエネルギーが集っていく。

それだけに終わらず、パラドクスは左腕を操作するように振るうと、パラドクスに一つのエナジーが取り込むと大きく跳躍した。

 

<< 巨大化! >>

 

「ハッ!──ッ!!」

 

「あ……。」

 

<< KNOCK OUT CRITICAL SMASH! >>

 

はぐれ悪魔がパラドクスが跳んだ後を目で追う、巨体の部類に入る自身の体よりも大きい炎を纏った巨大な拳が押し潰そうとしていたのがはぐれ悪魔の見た最後の光景であった。

 

<< K.O! >>

 

 

 

 

 

 

 

「ん~!…初・勝利ィーッ!イェイ♪」

 

声を上げる暇も無くパラドクスの繰り出した必殺技に押し潰されたはぐれ悪魔。白い煙が立ち昇っている大きなクレーターにははぐれ悪魔と思わしき肉塊も血も無く、超高熱で瞬時に燃やし尽くしたかのような異臭が林に漂う中で変身を解いたウラナは初戦の白星を大いに喜んでいた。

 

そんな様子を一部始終、パラドクスの戦闘から今に至るまでを携帯のカメラ機能で録画していた浅葱は録画機能を止めて携帯の中に居るモグワイに話し掛ける。

 

「か、勝っちゃったわね。あんな小さい子が……しかも、えげつないやり方で。」

 

<あぁ。パンチで押し潰そうとしたヤツにそれ以上のパンチで押し潰すとか、ちっこいのにえげつねぇ勝ち方だなオイ。

んで嬢ちゃん。どさくさに紛れてちゃっかり撮っちまってるけど、ソイツをどうする気だ?これで世間にあの嬢ちゃんが仮面ライダーだって広めるか?>

 

「う~ん…無意識に撮っちゃったけど、確かにこれかなりマズいわよね。これ一本でどれだけ騒ぐか…結果的に言ったらあの子に助けられた訳だし、こんな爆弾は……ッ!?」

 

浅葱は今撮った映像が個人で持つ代物としてどれほど危険なモノかを理解し、結果的に助けてもらった恩返しとして消去のボタンを押そうとした矢先、未だ喜んで飛び跳ねるウラナに近づいて来る人影の存在に気付き、木陰に身を隠した。

 

「んーッ!はぁ…疲れちゃった。帰ってレンジに褒められてから寝よーっと♪」

 

 

「へぇ~?……誰に、褒めてもらうって?」

 

「へ?──ヒィッ!?」

 

突然後ろから掛けられた声に反応して振り返った其処に居たのは…鬼だった。

それはもう悲鳴を上げる程の形相と怒気を放っている悠に後退るウラナだったが、素早く伸ばされた手がウラナの頭を鷲掴みそのまま片手で持ち上げられる。

 

「いんやぁー探した探した。シフトカー総動員どころかモンスターもゼクターも動かしたからなぁ。当然俺達もあっちこっち動いてよォ~?

出て来て初日から随分な事やらかしたな問題児ィ。しかもこの荒れ具合、バッチリやっちゃったみたいですしィ?あぁゴラ、何余計な事しでかしてんだオイゴラァ…。」

 

「あわわわわ…!」

 

鼻と鼻の先がくっつく程に顔を近づけられて顔が真っ青になるウラナ。それ程までにブチ切れているのだ。少なくとも後ろで眺めている秋達三人が、勝手を働いたウラナに対して一言言おうにも言う気が無くなる程に。

 

「あ、あのー灰原くん、そろそろその辺で落ち着いて…。」

 

「止めろ姉ちゃん。今の悠兄さんマジヤバい。

楽しみにとっていた期間限定モノのアイスをオレが知らずに食っちゃった時と一緒だ、あの時はマジ死ぬかと思ったぜ。」

 

「………その気持ちは分からなくも無いな。」

 

「そこは同意するんだ。」

 

 

「さぁ~て、グチグチと言わせてもらいましたけど……それに対して何か言う事は?」

 

「え…えーっと…。」

 

「んん?」

 

 

「…ご…ごめんなちゃい♪」

 

舌をペロッと出して可愛くウインク。ウラナにとってそれは恐怖心を紛らわす為と目の前の鬼の威圧感に思考が上手く働いてなかった為に出てしまった咄嗟の返しであった。

 

間違いである。完全に墓穴を掘る行為である。火に油どころかダイナマイトぶち込む行為である。不正解だと言わんばかりに何かが切れた音がし、悠が片手から両手で挟むように持ち変えた。

 

「な・に・が……ごめんなちゃいだゴォゥルラァァァッ!!!!なんでもかんでもブリッ子かましゃあ許されると思ってんのかこのガキャァッ!!!」

 

「んにゃァアアアアアアアアァァアアッ!?!?!?」

 

 

「うわ。挟むタイプのヘッドロック。あれ超痛いんだよな~。」

 

「いやこれはもう虐待レベルにダメな画じゃない?もうコレどっちが悪いんだか…。」

 

「じゃあ…止めに行く?」

 

「…まぁ、これも教育の一環という事で…。」

 

「オイ。」

 

 

「フゥーッ!フゥーッ!───フゥ…今日はこの辺にしといてやるか。」

 

「ヒグッ、エグッ──うぇぇぇん!!ハルナ゛~ッ!レンジ~ッ!」

 

「あーハイハイ。怖かったわよねぇ。よしよし。」

 

一通り吐き出して発散したのか、悠は大きく息を吐いた後ハルナ降ろす。

降ろされたウラナはあまりの恐怖と痛みに大声を出して泣き出し、真っ先にハルナの元に駆け寄って抱き着いて来た。ハルナは顔を埋めて泣いているウラナの頭を撫でて慰めている。

 

 

ー…パキー

 

そんな中、ほんの僅かな間、枝が折れたような物音が五人の耳に入った。

 

「ッ!…まさか。」

 

「あー…ねぇウラナ。アナタ戦う前誰かに姿見られた?」

 

「ふぇ?…ぐすッ。分かんない。おっきいトカゲしか見てない。」

 

「そのおっきいトカゲの所為で見えなかったってワケ…どうするよ悠兄さん。コレ確実に見られたパターンだぜ。」

 

「任せろこういうのはなぁ…即決行動。時間掛けるなだ。」

 

そういうと悠はブレイクガンナーを取り出し、音がしたであろう場所にその銃口を向け、二発撃った。

 

「其処に隠れて居るのは分かってる!大人しく出てくれば危害は加えないが、逃げたり妙な事したら今度は当てる気で撃つぞ!!」

 

「ちょッ、悠兄さん!そのやり方アウト!それ完全に悪役!」

 

「時間掛けたら電話なりメールなりで知らされる。そうなる前に強引にでも終始こっちのペースで進めるんだよ…いいか!5秒数える!0になったら実力行使だ!!

はい行くぞォ!!ごぉーぅッ!よぉーんッ!!──」

 

ワザとカウントを伸ばしていた悠であったが、ブレイクガンナーの銃口を上に向け始め…。

 

「──3210ォ!ハイ!!ぶっ殺すッ!!!」

 

ーダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ー

 

 

「わぁーーーッ!!!分かった!!分かったから撃たないで!!私ッ!私よ灰原ッ!!」

 

 

「ったく手間を…って、え?……オイマジか…。」

 

木陰から両手を挙げて出て来た浅葱を見て、悠の顔色は物凄く渋い顔になった。

 

「アレ?あの金髪ギャルっぽいのって、確か古城センパイにベタ惚れの人だよね!?ねぇ!」

 

「あー、そうだなー、見た目の割りに初心過ぎて全ッ然ッ進展無さそうなヤツだねー。」

 

「ちょっと、それもしかしなくて私の事よね?何、アンタ私の事そういう風に見てたの?」

 

「え?それ以外にどう見ろって?ていうか間違ってますか?あぁ、この恋愛処女が。」

 

「しょ…!?あ、アンタねぇ…!!」

 

「ま、まぁまぁ!藍羽さん、だっけ?一先ずは…。」

 

「そうよ!それよりもよ!!アンタどういう事か説明してくれるんでしょうね!!あの子が仮面ライダーになった事やアンタ達とその子の関係とか!!

言っとくけど言い逃れも言い訳も聞かないわよ!!こっちには決定的な証拠が…!!」

 

「フゥム………ん?」

 

浅葱が悠達に対し追及している最中、ふと蓮司が何かに気付き警戒を露わに周囲を見渡した。

 

「オイお前達……何か、こっちに近づいて来てるぞ。」

 

「あるん…え?」

 

「ん?…あ、そう言われれば何か聞こえるな。カサカサ、って。」

 

「これは…複数……囲まれたな。」

 

「え?え?えぇ!?」

 

困惑する浅葱を放って周囲を見渡してく悠達の目がとらえたモノ。人間台サイズの蜥蜴があちこちに木々に張り付いて悠達を取り囲み、獲物を捕らえる肉食獣のような視線を飛ばしていた。

 

「な…何よコレ!?ま、まさかさっきの大トカゲの…!?」

 

 

「蜥蜴だな。」

 

「いや、まさかのヤモリじゃね?」

 

「どう見ても蜥蜴だろう。図鑑を見ろ。」

 

「うわぁ久々に見たなぁこういうの。改めて見ると気持ち悪い…。」

 

 

「ってアンタ達!!なんなのその緊張感の無さは!?

…そ、そうよ!!またさっきの子が仮面ライダーに…ってアレ?」

 

浅葱が名案だと言わんばかりにウラナを探したが、当のウラナの姿がどこを見渡してもいなかった。

 

「ね、ねぇ、桜井さん?さっきアナタに抱き着いてた子は?ホラ、あのサイドテールの。」

 

「アレ?ホントだ居ねえ。帰っちゃった?」

 

「あー、それなんだけどね…あの子泣き疲れちゃったようで、さっき私の中に入っちゃって…。」

 

「入っちゃったって…本当にイマジンみたいなヤツだなぁ。バグスターってのは…。」

 

「え?え?えぇ?何々なんなの!?入っちゃったってなに!?イマジンとかバグスターってなんなの!?それよりも最悪じゃないのこの状況!!

あーーッ!こんな最後になるならもっと早く自分の気持ちに素直になるんだった!!」

 

<落ち着けや嬢ちゃん!>

 

 

最後の望みが断たれた所為でパニック状態に陥ってる浅葱に対し、悠達は至って冷静、却って隣で物凄くパニックになっている浅葱が居るのもあって逆に落ち着いているというのもある。

 

「悠兄さーん。取り敢えずさ、このトカゲ軍団をまずどうにかしないと穏便に進められそうにないし、もうやっちまおうぜ?」

 

「仕方ない……手っ取り早いので行くぞ。」

 

「已むを得んか。桜井、彼女の傍に居てやれ。」

 

<< STANDBY >>

 

「了解。こっちに飛び火当てないでね。」

 

 

悠、秋、蓮司の三人はライダーベルト、サソードヤイバーを手にし飛来して来たダークカブトゼクター、ガタックゼクターと地中から出て来たサソードゼクターを手にした。

 

<<<<<< HENSHIN >>>>>>

 

「「「変身ッ──ッ!」」」

 

<<<<<< CAST OFF >>>>>>

 

<< CHANGE BEETLE >>

 

<< CHANGE STAG BEETLE >>

 

<< CHANGE SCORPION >>

 

 

「え?……ハァァァアアアッ!?!?な?え?待ってもう意味わかんだけど!?どういう事なのねぇ!!ねぇ!?」

 

「分かるよ!その気持ちは私も分かるから!!とにかく今は落ち着こう!ね!!」

 

後ろで騒ぎ喚く浅葱を宥めているハルナ。三人の背中に”早く終わらせろ”という無言のメッセージを送り、それが通じたのか三人のライダーはそれぞれの武器を手にした。

 

「「「クロックアップ──ッ!」」」

 

<< CLOCk UP! >>

 

その電子音の直後に三人の姿が消えた。否、目に見えない速さで動いた。

 

すると取り囲んでいた蜥蜴達がフィルムを切って繋げたように、次の瞬間には体が切断していた。近くに居た蜥蜴も眼をギョっとし何故と頭で思う前に首から胴体が離れたり等、ハルナと浅葱を取り囲んでいた多くの蜥蜴軍団はものの一分も掛からず駆逐されていった。

 

「………。」

 

<嬢ちゃん?おーい!…ありゃ、こいつは思考が停止してやがる。>

 

「そっちのほうが良いわよ。うん。絶対。」

 

 

<< CLOCK OVER! >>

 

全ての蜥蜴を駆除し終わった三人は、クロックアップが解け姿が見えるようになると変身を解除し二人の元に歩み寄った。

 

「ん?おいどうした、何か魂抜けたカンジになってるけど。」

 

「簡潔に言うと、思考停止。」

 

「おけ、把握。」

 

「で、結局どうすんの?静かにはなってるけど今はまともに話せそうじゃないし。」

 

「うーむ……話せるヤツを連れて来るか。」

 

「?…あぁ。あの人か。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり、暁兄妹が住んでいるマンションの一室。

 

日が暮れた今日一日、ゾンビグレムリンの侵攻によって学園が急遽休校になり一日を持て余した古城はベッドに寝転びながら携帯のSNS内で盛り上がってるゾンビグレムリンに関する投稿に目を通していた。

 

(”化け物の大群がいきなり消えた”、かぁ…これ灰原達だよな。これ以降見たって投稿出てないって事は今回も無事どうにかなったって事だろうし…。

大変だよなぁアイツ等。今度労いの品でも送っとくか?…いや、秋辺りが滅茶苦茶食いそうだし、灰原は遠慮なく高いの要求しそうだから言葉だけにしとこ…。)

 

携帯を傍に置いた古城。勉強机から悠から護衛役として着かせたシフトカー、ジャスティスハンターとマッシブモンスターがジッと見つめる中、部屋の扉越しに凪沙が声を掛けた。

 

「古城くーん!明日の朝ごはんに使う牛乳が切れちゃったから、ちょっと今買いに行ってくれない?」

 

「えー?今かよ…。」

 

「いいじゃん!どうせ今日一日ダラダラ過ごしてたんだし!!」

 

「だって外は危ないってニュースやってただろ?そんな中態々外出何てする奴いるのかよ?」

 

「だとしてももう終わったんでしょ?ゆーくん達がガンバってくれたお陰で!だったら古城くんも頑張って牛乳買いに行ってよ!」

 

「えー?……めんどくせぇなぁ…。」

 

 

「まぁ確かにめんどいけど、それでもゾンビに囲まれて必死だったのに比べればマシだろうよ、なぁ?」

 

「いやいや、比較する対象がちょっと飛躍しすぎ…って!?は、灰原ぁ!?」

 

「よ。」

 

この部屋に居るのは自分だけなのに関わらず掛けられた声に反応した古城だったが、気付いて声のした方へ目をやると椅子に座って手を軽く振ってる悠の姿があった事に思わず声を荒げてしまった。

 

「えー?ゆーくんがどうしたの古城くーん!」

 

「い、いや!何故か知らんが、灰原が此処に…!」

 

「あー、そういう展開よりも今は黙って付いて来てくれないか?緊急事態なんだ。」

 

「緊急事態って…いやなんでオレ!?オレがお前達の緊急事態にどう関係があるんだよ!オイ!!」

 

「大丈夫大丈夫。悪い事じゃあないから…悪い事じゃないからさ。」

 

「何で二回言った!?悪い事じゃないならそれ以外の事って事か!?そうだろ!!」

 

「いいからホラ。ジッとしてなよ、手元が狂って体の一部がどっか行っちゃうから。」

 

<< ZONE >>

 

「はぁ!?何だよそれ!?オイ待───。」

 

 

 

 

 

 

「古城くーん?さっきから何叫んで…アレ?」

 

凪沙が部屋に入った頃には古城の姿は何処になかった。ただ机の上にいたハンターとモンスターが問題無いと言わんばかりにアピールしているだけ。

 

「んー?牛乳買いに行ったのかな?ついでにアイス頼もうと思ったのに…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾーンメモリで灰原家へと強引に連れてこられた古城。

彼を待ち受けていた光景は、とてもその真意を見極められるものでは無かった。

 

 

「……えっと…灰原?これは一体どういう…。」

 

「……まぁ。御覧の通りでね。」

 

 

「ん~~♪美味しい!」

 

古城の眼前にはテーブルに並べられた料理に舌鼓している浅葱の姿が。

彼女の横には今まで食べたであろう料理の皿の塔が築けられており、キッチンではラ・フォリアと料理の出来る蓮司が今も調理中の中、それ以外の面子は浅葱の食いっぷりに唖然としているという画がそこにあった。

 

「ん!この煮物も美味し…ッ!こ、古城ッ!?アンタなんでここに居んのよ!?」

 

「いやそれはこっちも知りたいし!お前こそ……待てよ。

オイ灰原、お前ひょっとして…。」

 

「…お察しの通り。でもバレたきっかけはとんだアクシデント、事故だ。」

 

あくまで事故という事を主張して強がるが、目の前の光景前に胸を張れなかった悠だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ふ~ん。異世界から、ねぇ…。」

 

「信じてくれるのか?」

 

「信じるも何も、目の前であんなの見せられたらねぇ。否定する気にもなれないわよ。」

 

浅葱を落ち着かせる為の食事の後に古城を交えての事情説明を静かに聞いてくれた浅葱は、これといった不信感を見せず話を聞き入れていた。

 

「そういう事で、コレは非ッ常にトップシークレットな秘密だから、お決まりの展開でこの事はくれぐれも内密に。あぁでもゼノヴィアはこの事について知ってる人間の一人だから、その辺りの話がしたかったら彼女とひっそりこっそりやってくれ。」

 

「ゼノヴィアが?…そっか、ゼノヴィアがアンタにお熱なのは秘密を共有しているからってコトね。

…ん?待って。一人って事は、まだ他にもいるって事?」

 

「あーー…まぁ、いいか。

お前が知ってる人間で言うと、暁兄妹、姫柊、おチビ先生、ウチの副担、メイドちゃん、と。」

 

「凪沙ちゃんや那月ちゃんも知ってるの!?…トップシークレットって割には、大分ずさん過ぎてない?」

 

「仰る通りで…。」

 

「オレからも頼むよ浅葱。今まではコイツ等が居てくれたお陰で最悪な事にならずになってるんだ。今日の怪物の行進だって灰原達がどうにかしてくれたんだし。

だから頼む。この通りだ。」

 

「古城……ま、まぁ、さっきの話が本当なら灰原達が居てくれなきゃ困るし、私もさっき助けて貰ったから…良いわよ。古城に免じて黙っていてあげる。」

 

「浅葱!サンキューな!」

 

「ッ…べ、別にアンタが礼を言う事じゃないでしょう!もう…!」

 

 

「…なぁなぁ姉ちゃん。アレ、どう思うよ?」

 

「灰原くんが暁くん使って藍羽さん黙らせたって?…大いに有り得る。」

 

「惚れた弱みを利用するか…外道め。」

 

 

「さぁ~て話は丸く収まったという事で!今日はお開きにしよう。ホレ暁、藍羽を送ってあげなよ。」

 

「え…!」

 

「オレェ?いやでも、オレお前にいきなり連れてこられたから靴が…。」

 

 

「先輩!!やっぱりここに居ましたか!!」

 

「ひ、姫柊!?どうしてここに!?」

 

リビングのドアが壊れる勢いで入ってきた雪菜。大きく息してる肩には、ハンターとモンスターが乗っていた。

 

「突然先輩の反応が無くなったから何かと思って部屋に行っても凪沙ちゃんは何も知らないですし!この子達が何もしないで先輩の部屋に居たからまさかと思って此処に…!!

でもよかったぁ。もしかしたら先輩の魔力目当てにBABELに攫われたのだと…。」

 

「ばッ!姫柊!!待…!!」

 

「BABEL?魔力?……ねぇ古城、それってどういうことなのかしら?」

 

「い、いや!それはだな…!!」

 

「あ、藍羽先輩!?どうして此処に…!?」

 

「姫柊さん?貴方にも詳しい話を聞きたいんだけど?良いわよね?私達、同じ秘密を共有してる者同士なんだもの…ね?」

 

「は、灰原…。」

 

「………さて、歯を磨いて寝るかな、っと。」

 

「オイ!元はと言えばお前が招いた事だろ!逃げるなこら!灰原ァ!!」

 

 

「…なんかオレ達、蚊帳の外ってカンジじゃね?」

 

「知るか。とにかく事態が収まったのならオレは帰らせて貰う。」

 

「あ、彩守君!…」

 

「ん?」

 

古城と雪菜に追及浅する浅葱達を見て蓮司は颯爽と出ようとしたが、ハルナが蓮司を呼び止める。

 

「今日は、色々助かったわ。グレムリンの件も、ウラナの件も。」

 

「気にするな。それが務めだ。

…だが、そうだな。一つ、言わせて貰うのなら、ウラナの事だ。」

 

「?」

 

「アイツは言ったな。自分はお前だと。ならウラナのする事はお前のする事と同じ。

…今回の事が今後無い様にアイツを制するのは、お前の責任であるという事だ。」

 

「ッ!」

 

「…まぁお前に限った話では無いが、心構えだけはしておけ。ではな。」

 

蓮司はハルナにそう言い残し灰原宅を後にした。

 

ハルナは胸に手を当て、其処に居るであろうもう一人の自分に伝える様に念じた。

 

(だってさ…だから近いうちちゃんとみんなに謝んなさいよ。私も付きあってあげるから、ね?)

 

ハルナの念に答えるかのように、鼓動が胸の内で大きく打ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜のビルの屋上。アベルは夜風をその身に受けながら手にしてるバグヴァイザーの画面を見つめていた。

 

「あと少しだ…あと少しで、ボクの望んだ力が…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来た!……遂に、遂に完成しました!!」

 

紙に描かれた複雑な魔方陣。手にしたペンを離し立ち上がった大臣は満足気に書き上げた魔方陣の画を手にした。

 

「コレが、我々にとって大いなる道標となる!……神の領域へと至る道へと…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語は、刻一刻と終盤へと近づいていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…。

 

 

 

 

 

 

 

この物語りを更に加速させるであろう者達が、今…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅん。」

 

場所は街全体を一望出来る高台の上。そこに手すりに寄り掛かりながら興味深そうに眺める長身の男が。

 

 

 

「面白そうな世界だ…さぁ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでは何を、破壊するか?」

 

 

薄っすらと笑みを浮かべながら首に掛けたマゼンダのトイカメラのシャッターが小さく鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 






今回はマジの神回!翔一とツクヨミの絡みも合ってたし、まさかの挿入歌にオォ!っとなった!次回もまさかのサプライズにそっちか!ってなりましたね!

ブレンもめっちゃライダーになってるし、ロイミュード勢も出るし!



この熱に乗せられて…こっちもレジェンド祭りじゃーー!!

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