その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ!
マキシマムマイティの力でゾンビグレムリンを倒し、更に元凶であるアベルもあと一歩といとこまで追い詰めた俺達であったが、アベルは桜井がバグスターウイルスに感染していることを明かしてしまう。
そして、真相知った彼女から出て来たのは、桜井に感染したバグスターであった。」

「ハァー。また新キャラ登場かぁ。今度のCV誰に何だろ?
悠君はオラオラの人だし、秋君は本家だし、ハルナ君はしゃんなろー!だし、蓮司君はお前殺すと言って自爆する人でしょ?
いやー誰に何だろなー?」

「あらすじにメタい事言うんじゃないよ。そういうのは作者の仕事だから!」

「どうせなら可愛い声がイイ!!」

「なッ!?桜井のバグスター!どうしてここに!?」

「フッ…ボウヤだからさ。」

「何言ってんのお前!?てかそれ只言いたいだけだよな!?」

「それじゃあアタシの出る最新話、ドーンだよ!」

「あぁ台詞取られた!」




願望

「フハハハハハ!!アッハハハハハハハ!!!」

 

 

アベルが高らかに笑いながら告げた真相。

 

力を付けるにつれてハルナの体を知らぬ内に蝕んでいたウイルス。それが彼女のストレスを糧に成長し、今、悠達の前に姿を見せた。

 

 

「えっへへ~…イェイ!」

 

 

「アレが…桜井に感染している、バグスター…。」

 

 

「あんな、小さい子が…?」

 

一見どう見ても年端もいかない子供がこれまで苦戦を強いられた怪人の仲間であることに未だ驚いているハルナ。無邪気な笑顔を振りまいてピースサインを向けている存在が、自分の体を蝕んでいる人外の一種だと未だ頭が認識出来ていないのだ。

 

手足を見て触れたりして活き活きと調子を確かめているバグスターの少女に、アベルは声を掛けながら近づいて来た。

 

「おめでとう!実体化を果たしたキミはコレで自由の身となったワケだ。他でもない、このボクのお陰でね。」

 

「?」

 

 

「ッ、野郎!あのバグスター引き込む気か。」

 

「やる事せこ過ぎ!」

 

グレムリンことフリードが消滅した今、アベルが動かせる駒として狙い付けたのが今目の前で首を傾げている幼い少女のバグスター。

ハルナの身に感染しているにしても、所詮はバグスター。最悪手籠めに出来ずとも、自分にとって有利になるように唆して動かせればいいと思っているアベルである。

 

そんなアベルの意図に気付かず不思議そうに首を傾げていたバグスターであったが、不意に視界に入った人物の姿を見て態度が変わり、その人物の元へと駆け足で近寄っていく。

 

「という訳で…ってアレ?ちょ、ちょっと!?」

 

アベルの静止の言葉を聞かず一目散にその人物の前にまで来たバグスターの行動に、蓮司は珍しくも困惑した表情を浮かべる。

 

「な、何だ…?」

 

相手が相手なだけにどう対応すれば良いのか困り果てる蓮司に対し、ニコニコと満悦な笑みを向けるバグスターの少女は…。

 

 

「えいッ。」

 

「ッ!?」

 

「ムフフ、あったか~い♪」

 

 

「え…えぇ!?」

 

困惑する蓮司の腰元に腕を回して抱き着きその感触を満喫しだすバグスター。一方のハルナは自身の体から出て来た存在の行動に対し驚きを隠せない模様。

その様子を見たアベルはガックリと肩を落としていた。

 

「アレは…ダメそうだ。とても使いモンになりそうにないや…。」

 

思惑が崩れ落胆する様子を見せながらアベルは煙の様に姿を消しこの場から去った。

 

「あ!逃げられた…。」

 

「…今はいい。それよりも、今直面しなきゃいけないのは…。」

 

アベルをみすみす逃がした事に悔しがる秋。そんな秋を宥める悠は、未だ蓮司に抱き着いているバグスターの少女へと目をやったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰原家、リビング。

 

「「「……。」」」

 

 

「………。」

 

「あ~む…ん~、美味しい~♪」

 

「それは良かったです。まだ食べられるなら焼きますけど、如何です?」

 

「食べるー!」

 

アベルを逃がした後ハルナのバグスターを穏便に事無く自宅へと連れて来た悠達。

余計な刺激を与えない為にラボでは無くリビングに連れていき一先ず様子見。彼女は今蓮司の膝に座りながらラ・フォリアの焼いたパンケーキを満足そうに食している。

 

そんな様子を離れて見ている悠、秋、ハルナ。そして中学生組。

 

 

「うぅ…夕立も食べたいっぽい。」

 

「そっち?…後で焼いてやっから今は大人しくしてろ。」

 

「にしてもアレ本当にバグスターかよ?さっきからあぁしてロン毛にベタベタしてパンケーキ食ってるだけだし。」

 

「全然危ない風に見えない、でした。」

 

「分かんねぇぞ。人間の姿になる怪人なんて幾らでもいるんだ。あぁして油断を誘っているやもしれん。いいか、一瞬たりとも気を抜くんじゃねぇぞ。」

 

「は、はい…!吹雪、いつでもいけます。」

 

「…う~~ん。」

 

「?ハルナさん、どうしたんですか?さっきから唸ってばっかで。」

 

「いや、なんていうか……あの子、なんか見覚え?というか…既知感というか…。」

 

「ハァ?見覚えはともかく既知感って、アレ、お前のバグスターだし、あんくらいの小さいガキなんて幾らでもみてるだろうに。」

 

「そう、なんだけど、どうもこう引っ掛かる何かが…。」

 

 

 

 

(アイツ等…オレの心配はこれ一つも無しか!)

 

「?…どうしたの?難しい顔してるよ?」

 

「…いや。何でも無い。」

 

「?……ハ!も、もしかして…たくさん食べる女の子って、嫌い…?」

 

「い、いや、オレもよく食うし。健康的でいいのではないか?」

 

「!…えへへ~♪そっか!じゃあ、ハイ!あーん!」

 

「…あー。」

 

「ムフフ♪美味しい?」

 

「…あぁ。(何なんだこの少女は。本当にバグスターなのか?)」

 

目の前で向けられる無垢な笑みに蓮司は思わず警戒を解いてしまいそうになる。今まで相対して来たバグスターが怪人のフォルムで出て来たのもあってか、自身の膝に座ってる彼女をどうも年相応の女の子として見てしまう。

それを思ってるのは蓮司だけでなく、離れて見ている悠達も同様であった。悠が意を決してバグスターの少女へ問いかけようと歩み寄ったその時、リビングの扉が静かに開いた。

 

 

「ふあぁ~~。皆お疲れ~~。無事に勝てたようで、ホッとしたよぉ。」

 

「あ、おはようございますお義父様。」

 

空気を壊すかのごとく現れたのはマキシマムマイティXを創る際自称神の才能をフル活動しダウンしていた神太郎大きな欠伸をしながらリビングへ。

リビングに入った神太郎は悠達の様子に何処かぎこちないと感じつつ、蓮司の膝に座っているバグスターの少女を姿をその目に捕らえた。

 

「おや?これは可愛らしいお客さんだ事で。ヤダなに蓮司君、キミ何時の間にこんな可愛い子とお知り合いになったのかなぁ?」

 

「黙れ。コイツは貴様が思ってるよりずっと深刻な存在だ。」

 

「あ。頭のオカシイおじさんだ。」

 

「んん?コラコラ。誰が教えたのか知らないけど、私は頭のオカシイおじさんじゃなくて、神太郎おじさんだよ?」

 

「えー?だっていつもヘンな笑い方してるじゃん!ブェァハハハハハハ!って。」

 

「えー?そんな事無いよぉ。」

 

「あるよー!」

 

彼女がバグスターであると知らず話し掛けていく神太郎であるが、会話しているにつれここで一つの疑問に気付く。

彼女は今日初めて会う神太郎の事を何故知っている口ぶりなのか?よくよく考えればここまで何の不満も疑念も抱かず彼女は素直に此処までついて来た。そして家に入る際も初めて入ったような余所余所しい様子でも無く、むしろ我が家に帰ったかのような。

 

「それで、キミの名前はなんていうのかな?」

 

「アタシの、名前?……う~ん……ねぇねぇ!!」

 

神太郎が彼女に名前を尋ね、それに対しどう答えればいいのか分からないと言った顔をしだした彼女は、悠達、ハルナの元に詰め寄ってきた。

 

「ねぇ!アタシに名前頂戴よ!」

 

「名前って…私が?」

 

「うん!」

 

「あー…桜井、付けてやれ。」

 

「えぇ!?」

 

「まぁある意味姉ちゃんから生まれた子なワケだし、当然っちゃあ当然だろうけど…。」

 

「ちょっと秋!誤解を生むような言い方しないでよ!!」

 

「良いからホラ。早く付けてやれよ。餌を前に待てされた子犬のような目で見ているぞ。」

 

「だからいきなり過ぎだって!……えーっと…。」

 

突然の要求に頭を捻って考え込むハルナ。悩むに連れて深く考えるよりシンプルな方が良いのでは?と考え付いた末、浮かび上がった名前を口にしだした。

 

「…ウラナ。じゃあダメ?」

 

「ウラナ?」

 

「うん。私の中、裏に居たから、ウラナ。」

 

「それは…安直過ぎない?」

 

「某電車ライダー並みのセンスだな。」

 

「ちょっと、そこまで言う?」

 

「ウラナ…うん!イイ!!じゃあ今日からアタシ、ウラナ!!」

 

 

「…ねぇ。何が起きてるのか私置いてけぼりなんですけど?

結局あの子は誰なの?」

 

「バグスターだ…実体化した桜井のな。」

 

「あぁ成程バグスターね、ハルナ君の……ってえぇぇぇぇぇッ!?!?!?か、かかかか彼女が!?ハルナ君の!?」

 

「あぁ。というか、貴様最初から知っていたんだろう。アイツが感染しているという事に。」

 

「あ……あーーいやー…ねぇ?

だって下手に知ったらそれこそ消滅する恐れもあったわけだし、どうにかうまく隠してきたつもりだったんだけど…。」

 

「どちらにせよだ。本人は兎も角、オレ達に隠してた罪は重いぞ。そのような大事な事を貴様一人でどうにかする気だったのか?」

 

「予定ではね。人知れずハルナ君の感染をどうにかする為の治療法をバレずに見つけ出そうと…。でもとっくの前に悠君やキミに感付かれてたみたいだったようだね。いやー、参った参った。」

 

「その辺のハナシは一先ず置いといてだ…ウラナ。」

 

「ん?なーに?」

 

「お前の事について幾つか知りたい事がある。聞いてもいいか?」

 

「うん!いいよー。」

 

しゃがんで目線を合わせながら頼み込んでくる悠の要望を何の躊躇いも無く了承するウラナ。

少しの間を空け、悠は思い切ってウラナへ訪ねた。

 

「ウラナ……お前は一体何者だ?」

 

「?……ウラナだよ?」

 

「…あー、そうだな。うん…よし、言い方を変えよう。

ウラナ。お前自分がバグスターっていう存在だってのは、分かっているか?」

 

「うん!」

 

「そうか…俺達な、これまでお前と同じバグスターを沢山見て来たんだ。」

 

「知ってるよ!アタシもたくさん戦って倒したし!!」

 

(やっぱり…感染してから自我が芽生えて、それが徐々に強くなっていったんだ…。)

 

この答えからウラナがどうして初対面の神太郎を知っているのかの疑問が解けた。ゲンムが不慮の事故で掛けてしまった抗体プログラムから感染。そして恐らくだがエグゼイドの初変身の時には既にウラナの自我がハルナの体内で芽生えだし、それ以降の出来事をハルナを通じて知ったのだ。

 

「それじゃあ、どうしてウラナは他のバグスターと違って小さい女の子の姿をしているんだ?今着ている服も、髪形も、みんな桜井に関係しているのか?」

 

「うん!だってアタシ、ハルナの願望から生まれたから!」

 

「願望?…桜井の?」

 

「うん!」

 

ウラナはハルナの元へと近づき、ハルナへ問い掛ける様に自身の出生の秘密を明かした。

 

「ハルナはさ、やりたい事したい事、いーっぱいあったよね!」

 

「え…?」

 

「色んなとこ行ってたくさん遊んで!美味しいモノたくさん食べて!素敵なヒトと出会って恋をしたいとか!」

 

「まぁ、ハルナも夢見る少女、という事ですか。」

 

「いやいやラ・フォリアさん、それ子供の時の話…って、なんでそれ知って…。」

 

「でも、お父さんとお母さんが死んじゃって、泣き虫の秋を自分が面倒見なきゃと思って、それ以来好きな事たくさん我慢したんでしょ?

知ってるもん。アタシはハルナの心の奥底にしまっていた願望から生まれたバグスターだから!

…ハルナはアタシ!アタシはハルナなの!」

 

「…あぁ!……思い出した…。」

 

「何だよ急に!何を思い出したって?」

 

「さっき姉ちゃんが言ってた既知感ってヤツ…そりゃそうだよ。だってこの子、背丈を除けば小さい時の姉ちゃんとそっくりなんだよ!

特にこの髪型!これ、姉ちゃんが母さんによくしてもらった髪型だよ!」

 

「!」

 

「成る程。ウラナが怪人の姿で無く、少女の姿をしているのは昔の桜井の姿を模しているからか。」

 

「…いや、一点だけ、本物と違うとこがあるぜ。」

 

「?一体何処が…。」

 

秋が無言で視線を向ける先。そこは、低身長ながらもハッキリと凹凸している…胸部。

 

そして無言で見比べる一同…。

 

 

 

「………まぁ、願望から生まれたっていうのなら……ねぇ?」

 

「何故、オレに聞く。」

 

「…姉ちゃんもその辺、気にはしていたんだね。」

 

「シッ!身内とはいえそういうのはあまり触れていいもんじゃねえだろおバカ。ここはそっと…。」

 

 

「止めて!そういう気づかいが余計惨めになるから!!」

 

「?」

 

 

男性陣、女性の悩みを心から理解出来ず。

 

 

「ま、まぁこれで一つの疑問が解けたということで、次なんだが…。

ウラナ、お前はこれまでマイティアクションXやブラザーズ、今回はマキシマムマイティとガシャットを創ってきたが、アレはどうやって?」

 

「んー……なんか出来た。」

 

「なんかって、一番重要なとこを…。」

 

「ちょっといいかな?」

 

曖昧な返答に肩を落とす悠だが、そこに神太郎が待ったを掛けた。

 

「そのガシャットが創れる訳なんだけど…もしかしてウラナ君は、感染者の力を使うタイプのバグスターなんじゃないかな?ホラ、夏音ちゃんやアスタルテちゃんの時の様な。」

 

「ッ!…その理論でいくと桜井の力って確か…。」

 

「…チャクラ?」

 

「いやいやちょっとそれ可笑しくね?だってチャクラって、忍術使う時にするもんでしょ?ガシャットとどう関係あんのさ。」

 

「…いや、そうでもないかも。」

 

「?、どういう意味だ。」

 

「チャクラって、分身や水の上歩く他にも結構出来る事あるのよ。

津波レベルの水出したり隕石落としたり、挙句の果てには死んだ人間を疑似的に生き返らせたり。」

 

「それはもう忍術の領域を超えてないか?」

 

「まぁ!ジャパニーズニンジャはそのような事も出来るんですか!?これはユスティナに教えなくては!」

 

「いや違うから。というか誰よユスティナって。」

 

「それはともかく、ハルナ君はこう言いたいんだよね?

チャクラならバグスターウイルスを操ったり生み出せる。と…確かにウイルスがチャクラと上手く同化したなら理論上不可能とは言い難い。」

 

「その線が高いか…もし上手く使えばこれからのガシャット開発に大きな変化が…。」

 

「ガシャットを生み出す権利は創造主であるこの私だけだァァァアアアアアアッ!!!!」

 

「子供の前でそれは止めろゲンム。見ろ、怯えているではないか。」

 

「あ…ゴメン。どうもこの感情は抑えが効かなくってね…。」

 

蓮司に指摘され素直に謝罪する神太郎。

これでウラナに対する疑問が全て解けた所で、悠はウラナにある意味重要な質問を問いかけた。

 

「ウラナ…最後に一つ、これは一番重要な質問だ。これにはお前の正直な気持ちを答えてほしい。」

 

「うん!」

 

「お前は、これまで桜井の中に居たから戦って来たと言える。なら実体化して外に出れた今、お前はアベルの言った通り自由の身だ。つまり、もう戦う必要が無いという事だ。」

 

「?」

 

「灰原くん…。」

 

「お前はこれからも、桜井と…いや、俺達と一緒に戦う気はあるか?」

 

ウラナが誕生した経緯もその能力もハッキリとした今、悠だけに限らず、これはこの場に居る全員がハッキリとさせておきたい事だった。

 

ウラナ、ハルナのバグスターである彼女を受け入れるか、否か。

 

ウラナはバグスター、今悠達が命を懸けて戦っている怪人と同じ種族だ。ウラナもバグスターを倒したと自覚はしているが、それは一種の正当防衛。本当は同族を倒している自分たちを目の敵として見ている可能性だって大いに有り得る。

それにハルナに感染しているバグスターである以上、バグスターとして完全体になる為にハルナを消滅させるか…これらの不安要素がある以上、ウラナを黙って受け入れる気は毛頭ない。

 

もし、彼女が完全体、敵になる事を告げるのならば、悠は迷いも無くウラナを消す気でいる。それは口にせずともこの場に居るチームのメンバーがその意図に気付いていた為に余計な口出しをしなかった。

だからこそハルナも黙ってウラナの返答を待っている。その胸の内の片隅に、一種の願いを込めて。

 

 

 

 

「やる。アタシもみんなと戦うよ。」

 

返ってきたのは迷いの無い肯定。悠は何故その思いに至ったのか、その真意について尋ねた。

 

「えらくあっさりと言ったが、本当か?」

 

「うん。だって、アタシはハルナの願望から生まれたんだもん。

ハルナはこの居場所が、みんなの事が好き。だからアタシも好き。みんなと一緒に戦って勝つ事が、アタシのしたい事なの!」

 

「…そうか。」

 

その言葉が嘘ではないと悠は観察しながら背後へ振り返った。

 

「って言ってるけど、お前達は?」

 

 

「うーん…ま、いいんじゃね?悪い事しないようオレ等が見張ってる、って事にしといてさ。」

 

「しないもん!アタシ良い方のバグスターだもん!!」

 

「へぇー、ホントか~?」

 

「ムゥーッ!ホントだもん!!」

 

 

「…お前の意見は?」

 

「どうもしない。もし敵に回るようなら斬るだけだ。」

 

「文句は無い、と。アンタは?」

 

「私も異論は無いよ。むしろ歓迎したいね!ウラナ君はバグスターの中でかなり希少な存在だ!もしかするとバグスターウイルスの更なる可能性を見出すための布石となるやもしれない。ならば身近に置いておくのは当然の処置だ。」

 

「ほどほどにしろよ…お前達にも聞いておくが、どうよ?」

 

「えぇ。私は問題ないですよ。賑やかになりそうで。」

 

「私も。ウラナちゃんはイイ子だと思います、でした。」

 

「夕立たちも賛成っぽい!」

 

 

「そ、じゃあ決定と言う事で。」

 

「あの、私の意見は?」

 

「え?聞く必要ある?」

 

「えぇ?……まぁ、私も賛成だけど。一応…あの子は私、らしいし。」

 

「じゃあ聞く必要無かったじゃん。」

 

「いや、それでも流れ的に聞くでしょ…。」

 

 

全員がウラナを受け入れる話で進んでいく中、ウラナは受け入れてくれた事に喜びながら蓮司に近づいていった。

 

「ねぇねぇレンジ!アタシ名前付けてもらったよ!!ウラナだよ!ウラナ!!」

 

「それはさっき聞いたから知ってるが。」

 

「!…ムゥー!」

 

「?」

 

「蓮司君蓮司君、きっとウラナ君はキミに名前を呼んで欲しいんじゃないかな。」

 

「?、どうしてまたそんな。」

 

「良いから良いから、ほっぺ膨らませてご機嫌斜めだから、言っちゃいなって。」

 

「ううむ…………ウラナ。」

 

「!…えへへへ♪」

 

 

「…なぁ悠兄さん。今更なんだけど、なんでウラナはロン毛に対してああも好意的なワケ?」

 

「それはアレだろ。ウラナは桜井を基に生まれた訳なんだから…。」

 

「?…ッ!ま…まさか…そんな…ッ!」

 

「まぁ!薄々は思っていましたけど、やっぱりハルナは…。」

 

 

 

「?……ッ!い、いやいやいやいやいやいや!!!違うから!!別にそういうんじゃないから!!わ、私は彩守君に対してそんなのは…!!」

 

「えー?でもハルナの好みのタイプって、背が高くて、カッコよくてクール系の人でしょ?全部レンジに当て嵌まってるじゃん!」

 

「…そうなのか?」

 

「ウラナーーーーッ!!!」

 

顔を真っ赤に否定するハルナに対し爆弾発言をかましたウラナ。思わず怒号を放ったハルナだが、ウラナはそれに構う事無くまた蓮司に抱き着いた。

 

 

「…また騒がしくなってきたなぁ、オイ……ッ、ゥ…。」

 

「悠兄さん!オイ、大丈夫かよ?」

 

新しい加入者にまた頭を悩ませられそうだと思った悠であったが、突然視界が暗くなり倒れそうになるのを秋が間一髪の所で受け止めた。

 

「悠!?」

 

「お兄さん!」

 

「あぁ大丈夫だ。徹夜越しの連戦の疲れかな……俺は寝させてもらうわ。」

 

「あ…もう少しでお昼にしようかと思ってたんですけど…。」

 

「俺抜きで食ってくれ。」

 

そう言って悠は気怠い体を無理に動か自室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フゥ……アァ。」

 

自室のベットに倒れこむ形で寝転ぶ悠、すると部屋のドアが開く音がし、目線だけ動かすと入ってきたのは神太郎だった。

 

「具合、良くなさそうだね?」

 

「寝込み襲うなら今って?それなら美人のケツに敷かれたいね。」

 

「悪いけど今は冗談無しの真面目な話。君の体についてだ。

極アームズ、使ったんだろ?前より長く使ってないから前回の様に寝込む程じゃあ無いが、それでも秋君や蓮司君と比べたらキミの方が大いに負担を強いられていた。

おまけにだ、キミはプロトガシャットの反動もモロに受けて体はもうボロボロと言っていい位。」

 

「その辺りはもう治ったんじゃあなかったっけ?」

 

「あぁ。でも以前より強靭な体では無くなった。これまでキミは色んな所で色んな奴と戦って来たがここまで長引いたのは今回が初めてだ。

これ以上無理すると、何時体にガタが来ても可笑しくない。だから、これからは…。」

 

「元々ハードな肉体労働だから、その辺は覚悟してたさ。」

 

悠は神太郎の言葉を遮るように口を出しながらベットから体を起こす。

 

「残るバグスターは二体。BABELは三人、アベルはガシャットを失って孤立状態。

…僅かだがゴールは見えて来ている。ならゆっくりのペースじゃベストは狙えんさ。」

 

「………フゥ。

まぁ、言って聞かないとは知っていたが、それでも言わなきゃガンガン無茶するからね、キミは。

ま、とにかく今日だけは安静に寝てなよ。皆には私がそれとなく言っておくから。」

 

悠に忠告をし部屋を出ようとする神太郎であったが、ドアノブに触れる直前、背中越しに悠に語り掛けた。

 

「…この家。キミ一人で住ませるのに広すぎたかなって最初は後悔してたが…大分賑やかになったね。」

 

「…騒がしいの間違いだろ。」

 

「ハハ……此処まで来ると、別れる時が、辛いね。」

 

「…………そうだな。」

 

「…おやすみ。ゆっくり休むんだよ。」

 

そう言って神太郎は今度こそ部屋を出た。

 

 

 

 

 

この時、神太郎は今いる場所がホームである事もあって警戒は薄れていた為に気付けなかった。

 

部屋を出た際、神太郎はドアを開けてすぐ進行方向を見て閉めた為に、開いたドアの陰に隠れてしまっていた人物の姿を見る事無く階段を下りて行ったのだ。

 

去っていく神太郎の後姿を見て、部屋の中の話を水を持って来ていた夏音が聞いてしまったのだ。

 

(お兄さんの体、そんなに酷くなってるなってるなんて……それよりもさっきの”別れ”って…。)

 

偶々とは言え盗み聞きしてしまった罪悪感を感じながら、夏音は先程の二人の会話の内容が頭から離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──イ!────悠兄──起きろって!悠兄さん!!」

 

「ん……んぁ?」

 

「大変大変!ちょっと大変なことが起きたんだよ!!ホラ起きなって!!」

 

時刻は昼過ぎから陽が落ちた夕刻。秋に叩き起こされて不機嫌な顔を表す悠だが、秋の言ってる大変な事というワードにぼんやり重い頭を無理矢理覚醒させようとする。

 

「何?何がどう大変なんだって?」

 

「あー…それなんだけど、さ…ウラナが…。」

 

「ウラナが…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…アベルから奪ったガシャットと、おやっさんのゲーマドライバー勝手に持ち出して外出て行っちゃった。」

 

「…………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お!いい練習台みーつけた!」

 

「何だぁこのガキィ?態々オレ様のエサになりに来たってのか!!」

 

その頃のウラナは一人、人通りの無い林の中で腰を抜かしている女性と、それに襲い掛かろうとしている巨大な蜥蜴のような異形、はぐれ悪魔を前にはしゃいでいた。

 

「まぁなんにせよ丁度イイ。腹が減ってたんだ、ちょいとちっこいが柔らかそうな肉だぜぇ、へへへへ。」

 

舌なめずりするはぐれ悪を前にウラナは懐からゲーマドライバーを取り出し装着。続いて取り出したのはアベルから奪い取ったデュアルガシャットであった。

 

「あぁん?んだァそりゃ?」

 

「ふっふーん♪しかとその目に焼き付けィ!これがアタシの…!」

 

 

<< デュアルガッシャット! >>

 

<< The strongest fist!─What's the next Stage?──The strongest fist!─What's the next Stage? >>

 

ガシャットをドライバーへ挿し込むと、二つのゲームのタイトル画面がウラナの背後に。

 

足を開き、腰を落として交差した腕を大きく回して、高らかに叫ぶ。

 

「MAX大変身ッ!──」

 

<< ガッチャーン!──MAZARU UP! >>

 

レバーを開くと、ウラナの前方に上下赤と青で出来たゲートが現れウラナがそれに身を潜らせた。

 

 

<< 赤い拳強さ! 青いパズル連鎖! 赤と青の交差!!──PERFECT KNOCK OUT! >>

 

赤と青が左右非対称の瞳と混ざった頭髪に、青いパズルの模様と赤い炎の模様が混ざり合ったボディと下半身の前垂れ。低身長から2m近く大きく伸ばした背丈は変身前のあどけない少女の姿と大きく異なった。

 

 

「なんだと…か、仮面ライダー!?」

 

「そう♪今のアタシは仮面ライダー…仮面ライダーパラドクス、Lv99!!」

 

腕を広げ名乗り上げる、新たな仮面ライダーパラドクス。

 

噂の仮面ライダーを前に竦むはぐれ悪魔を前に仮面の下で笑みを浮かべるパラドクスは、ゆっくりとした歩調で近寄っていく。

 

 

 

一方、はぐれ悪魔に襲われかけた女性は近くの身を隠せるほどの木の陰で顔を覗かせていた。

 

「ウソでしょ…あんな小さな子が、仮面ライダー!?……ねぇモグワイこれ何がどうなってんの!?」

 

<いやぁ、こればかしはお手上げだぜ。ケケッ!>

 

偶々その場に遭遇してしまった女性、藍羽 浅葱は目の前の光景に困惑するしかなかった。

 





今日のジオウ、色々言いたい事がありまくりでしたね。

トリニティは完全てんこ盛りフォームだし、ウォズの謎の使命感、そしてさりげなく解決してしまったバトルファイト。
海東は未来ノート奪っていったけど、やっぱあれで士と会える未来を書き込むのかなぁ。



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