その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ!
BABELのライダー、コーカサスを前に手も足も出ずに一方的にやられる俺達の前に現れたのはハイパーゼクターを使って過去に跳んできた未来の俺だった。
コーカサスと互角の戦いを繰り広げていたが、突然消えてしまい結局どうして未来の俺が過去に跳んできたかの理由を知る事は出来なかった。」


「未来かぁ、高校卒業したら大学受験に就活、あーイヤになる!
仮面ライダーやってましたぁ、って面接で言ったら受かんねえかな?」

「私も今世はどうなんだろうなぁ、前世と同じく独り身で終わるのか…。
仮面ライダーやってる女子って男から見たらどういう印象何だろう?」

「お前ら考える事現実的ですね。」


「皆さん、どうしたんですか?」

「おぉ夏音。お前は未来の自分がどうなってるのかって気になったりする?」

「えっと…私はこれから先もみんなと一緒に、幸せに過ごせたらって思います。でした。」


「夏音…ッ!」

「マジ天使…ッ!」

「尊い…ッ!」


「え?私がこれ言うんですか?えっと…そ、それでは最新話どうぞ!」





信念

 

 

 

 

あと数刻で陽が落ちるという時間。

 

水の流れる音がする河川敷に、激しい剣劇の音が響き渡る。

 

 

ーギイィィィンッ!!ー

 

 

「ッ──なろぉ…!」

 

「ッ──ッ!」

 

 

日本刀と両刃剣。二つの剣と刃物の様に鋭い視線が合わさる。

 

片や剣術を極めた剣士。片や殺人を極めた悪人。

 

 

授業を終え、河川敷での斬り合いを蓮司と悠がする羽目になったのは数刻前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園内・昼休み

 

 

「………。」

 

教室の一角で蓮司は自分の席で昼食をとっていた。

 

最早お馴染みの光景となっているお重弁当を黙々と一人で食す蓮司の姿であったが、この日ばかりは蓮司の顔に影が差していた。

 

ただ静かに煮物、米、焼き魚、米と口に入れて咀嚼という作業をする彼の脳裏に浮かぶのはこの間の死合。敵組織の幹部であるコーカサスに敗北を突き付けられた時のであった。

 

(簡単にいくとは思っていなかった……だが、その考えすらも甘かった。)

 

相手はライダーになっているとはいえ武器すら使わず単騎で四人を圧倒して見せた。剣術という同じ武術を扱う蓮司にとって、如何にコーカサスと自分の力量の差があるかを突き付けられたその衝撃は彼の心を大いに揺さぶったのだ。

 

(このままでは駄目だ。ゲンムから渡される強化アイテムだけではヤツを倒せない……オレ自身が強くならなければ…!)

 

弁当を食べ終えお重を片付けながら蓮司は自信を鍛え上げる方針で決めた後、カバンに手を入れてお茶の入った水筒を取り出そうとするも、いくら探してもカバンの中に水筒は見当たらなかった。

 

(む、忘れてしまったか?…仕方ない。自販機で買って来るか。)

 

席を立ち近くの自販機を目指して廊下を歩く蓮司。その際コレから行う鍛錬の内容を考えていた。

 

(あのライダーは技だけでなく力も相当あった。筋トレのメニューを増やしていくか。)

 

「もし頼もう!!」

 

何やら叫び声が聞こえたが、自分に掛けられたものでは無いと思いそのまま素通りしていく。

 

(それと精神鍛錬も必要だな…滝でもあれば滝行が出来るのだが、この辺の山には無いのが残念だ…。)

 

「あ、あれ?あ、あの!」

 

(やはり座禅の時間を増やしていくしかないか…だがそれだけでは強くなれる見込みが薄い。

…一体何を補えばいい?ヤツを倒すためにオレが上げていくべきモノとは…?)

 

「あの!お願いだから話を聞いてほしい!!彩守君!!」

 

「……む?」

 

名前を呼ばれて呼ばれていたのは自分だと気づいた蓮司。

振り返った先にはようやく反応を見せてくれて安堵する源 義経の姿がそこにあった。

 

「………誰だ?」

 

「ふぅ、やっと気づいてくれた…源 義経という!!

彩守 蓮司君、キミに決闘を申し込みたい!!」

 

「断る。他を当たれ。」

 

「そうか!断るか!!……え?」

 

義経からの決闘の申し込みをあっさりと断り歩いていく蓮司。呆然と立ち尽くす義経だが、すぐに蓮司の後を追いかけた。

 

「ちょ、ちょっと待ってほしい!断るって、そんなどうして…?」

 

「逆に聞くが何故オレに決闘など申し込む?事あることにその手を誘いを断っているのだが?」

 

「一子殿に彩守君の実力を聞いたのだ!其れで是非とも彩守君の剣とも一手交えたいと思ったのだ!」

 

(かずこ?………あぁ。居たな。ヤツの取り巻きの女の一人にそういう名前が…。)

 

「それでこうして昼休み決闘の申し込みをしたのだが…どうしても駄目だろうか?」

 

前に立ち塞がり、潤んだ目で蓮司を見上げる義経。まるで小動物に見られてるかのような上目遣いは愛らしさを放っており、世の男子なら即イチコロにさせる魅了を義経は放ったが…。

 

「くどい。失せろ。」

 

「んな…ッ!」

 

バッサリ切り捨てるのがこの男である。

 

ガーン!という効果音を出しそうな位に衝撃を受けた義経。そんな義経を後に蓮司は自販機に辿り着く。

 

(決闘などというお遊びに付き合う暇など無い。オレにはオレの…彩守の剣を以て為すべき使命があるんだ。)

 

ポケットから取り出した小銭を投入口へ入れようとするが、丁度蓮司と同じタイミングで横から小銭を入れようとする手がぶつかった。

 

「「…ん?」」

 

顔を合わせるとバッタリタイミングが合った相手は悠だった。

 

互いの存在を認識すると、二人の顔に嫌悪の眼差しが向けられながら一触即発の空気が放たれる。

 

「…んだよ。」

 

「別に…オレはお茶を買いたいのだが?」

 

「俺だってコーヒー買いたいんだけど?」

 

「ならば隣の自販機で買えばいいだろう。早くその手を退けろ。」

 

「買いたい銘柄のコーヒーここしか売ってねぇんだよ。お前こそ隣の自販機で買えばいいだろ。」

 

「オレもこの銘柄が飲みたいんだ。」

 

ガッ!ガッ!っと小銭と手がぶつかる音を立てながら二人を一向に譲る気配を見せず口によ、口による争いはヒートアップしていく。

 

「第一オレが貴様より早かった。だからここはオレに先を譲るべきだろう。」

 

「いやいやお前の目は節穴ですかぁ?俺の方がコンマ一秒の差で早かったんですけど?」

 

「ならオレはそれよりコンマ一秒早かった。」

 

「いや俺が早かった。」

 

「オレだ。」

 

「俺だっての。」

 

 

「あ…あの、二人とも…。」

 

 

「じゃあ分かったよ、一度お互い手を下げてどっちが早かった第三者に聞こうぜ、ならいいだろ?」

 

「その手に乗らんぞ、下げた所で小銭を入れる魂胆だろう。姑息な貴様の考えなどお見通しだ。」

 

「ハ、お前如きがそんな口叩くなんざ十年早ぇんだよ。」

 

「貴様こそその驕りが命取りだ。」

 

激しさを増す小銭のぶつかり合いに、投入口に傷が着けるなど気づかず口論する二人を見ていた義経は、二人の口論を止めようと意を決して間に入っていった。

 

「ふ、二人とも!!ケンカは止めるんだ!!もうこれ以上は義経も黙っていられないぞ!!!」

 

 

「「余所者は引っ込んでろッ!!」」

 

 

「ひぅッ!!」

 

 

「ちょーっとちょっと~。アンタ等ウチんところの主を何泣かせてんのさ?」

 

「……。」

 

 

「べ、弁慶~!与一~!」

 

「ハーイハイよしよし。怖かったねぇ~主。んで?これは一体どういう状況?」

 

「うぅ…実は。」

 

二人に大層な形相で強く言われた義経は臆して涙目になった所に弁慶と与一がやって来て弁慶が義経を抱いて慰めていた。そんな事を他所に二人がメンチを切っている様を、与一は悠を複雑めいた目で見ていた。

 

弁慶は義経を慰めながら、どうしてこうなったのかの事情を義経から聞き出していた。

 

「彩守のとこ行って決闘申し込んで来るとか言って中々戻ってこないと思ったら…とにかく主はあの二人の喧嘩を止めたいんだね?」

 

「うん…理由は何であれあんな争いをしちゃ義経はダメだと思って…。」

 

「主は優しいねぇ~。まぁ任せな。与一、主任せた。」

 

「あ?……あぁ、分かったよ。」

 

弁慶は義経を与一に任せ、小銭を持った手をぶつけ合ってる悠と蓮司の元に歩み寄った。

 

 

 

「いいから退け。」

 

「お前が退け。」

 

「貴様が退け。」

 

「お前が退け剣バカ。」

 

「貴様が退け女たらし。」

 

「ハイハイちょっとごめんよぉ、お二人さん。」

 

「ッ、オイ。」

 

「何だ。」

 

弁慶を強引に二人の間に入り込んで、二人の手から小銭をとるとそれを自販機へ。お茶とコーヒーのボタンを押し、出てきたお茶とコーヒーを二人の手へと持たせた。

 

「ハイ、これで一件落着っと!これで言い争う理由は無くなったね!」

 

「…余計な事を。」

 

「ケ…。」

 

二人はそっぽを向いてプルトップを開けて缶の中身を口にした。

先程の喧騒で上がった熱を一気に冷ますが如く飲み干した缶をゴミ箱に捨て、早々と立ち去ろうとするが二人の肩を弁慶が掴んで足を止めた。

 

「ちょっと待った。アンタ等女の子泣かしといて、何も言わず行くつもり?」

 

弁慶が顎で指した方へ眼をやる悠と蓮司。そこには涙目で肩を震わせた義経が目に映った為に、二人は無言で目を合わせた後、義経の方へ近づき、頭を下げた。

 

「ゴメン。ちょっとカッとなり過ぎて八つ当たりした。」

 

「無関係な人間を泣かせるというあるまじき行為、反省する。申し訳なかった。」

 

「え、いや!よ、義経はもう大丈夫だ!!全然気にしてないぞ!!」

 

涙目の顔から一転、戸惑いの表情を見せるものの、いつもの晴れやかな笑顔を見せる義経であった。

彼女の許しを得て頭を上げる悠と蓮司。そんな二人に、弁慶が瓢箪を手に悠の肩を組みながら絡み酒の様に話しかけてきた。

 

「意外だねぇ灰原。アンタ彩守と仲良くケンカする仲だったとわね。」

 

「酔って認識能力落ちてんの?誰がこんなんと。」

 

「同感だ。」

 

「これは川神水だからお酒じゃありませ~ん。ほれ与一、アンタもそんなとこで突っ立ってないでこっち混ざりなよ。」

 

「群れるのは性じゃねぇ。」

 

「駄目だぞ与一!義経は知ってるんだぞ、与一は灰原君に話しかけようにも恥ずかしくて中々話し掛けられない事を!」

 

「灰原が見える度チラチラと見てたしね~。アンタの事だから灰原のこの頭、カッコいいとか思ってたんでしょ?」

 

「ち、違ぇ!!!」

 

「いやー、相変わらずだねよっちゃん。」

 

「よっちゃん言うな!クソッ、コイツが絡むと変に調子が狂うぜ!!」

 

「……オレはもう行くぞ。」

 

「あ、待ってくれ彩守君!」

 

「放っておいていいよ。野郎は剣ブンブン振り回すしか能の無い無愛想なヤツだから。」

 

「なんと!それならば同じ剣を振るう者として是非とも仲良くなりたいぞ!!」

 

「えぇ、マジかよ。」

 

「主はそういう娘だから。」

 

「うむ!義経は友達をたくさん作るつもりだ!もちろん灰原君もだぞ!!」

 

眩しい笑みで堂々と胸張って友達宣言する義経の背後にうっすらと学ランリーゼント頭の男が拳を突き出してくる幻影がうっすらと悠の目に見えた。

蓮司も面倒な相手に目をつけられてしまったと言いたげな顔付きになり、弁慶はそのさまをケラケラと笑って眺めた。

 

そんな空気の中、ただ静観していた与一が放った思い掛けない一言がこの場の流れをおおきく変える切っ掛けとなる。

 

 

「…灰原と彩守って、どっちが強ぇんだ?」

 

 

「ん~?どうしたんだィ与一?アンタが他人を気にするなんて珍しい。」

 

「そんな深い意味はねぇけど、仲が良いのか悪いのか訳分かんねぇ関係っぽいから、もしかしたら彩守も強ぇのかなって。」

 

「あー、確か与一はトーナメントで灰原と一度やったんだっけか。」

 

「うむ、それは義経も気になるな!」

 

 

「どちらが強いって…。」

 

「そんなの…。」

 

 

 

「「俺/オレに決まって……。」」

 

 

睨み合う二人。再度一触即発の空気が流れる。

 

 

今、在りもしないゴングの音が鳴った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして冒頭に戻る。

 

 

 

「セエァアッ!!」

 

「ウラァッ!!」

 

 

「…与一。こうなったのはアンタの責任だからね。」

 

「どうしてそうなんだよ…つか止めなくていのかよアレ。」

 

「イヤイヤ無理でしょ。あんな殺意マシマシな場にさ。」

 

河原で斬り合ってる悠と蓮司を離れた場所で眺めているクローン組の三人。

 

あの与一の発言の後またも頑なに自分が強いという両者の主張は実力行使として行われ、三人はその証人としてこうして二人の斬り合いを見せられているのである。

 

最初の内はとんでもない厄介ごとに巻き込まれたと思っていたが…。

 

「にしても……凄いねぇ、あの二人…。」

 

「うむ……義経を想像を遥かに超えているぞ…。」

 

「アイツ、オレの時明らかに手抜いてやがったな…。別格じゃあねぇか。」

 

 

 

 

 

「オゥリャアッ!!」

 

悠は剣を逆手に持ち変え蓮司に肉薄し、途中スライディングで地を這うように地面を滑りながら蓮司へと斬りかかる。

 

蓮司はこれを見切り体を捻って回避。だが尽かさず悠は地面に空いて手で体の向きを変え、そのまま軸に蓮司へ下から足払いの蹴りを見舞わす。

 

「ッ!──フッ!」

 

蓮司は僅かに下がって蹴りを躱し、構えを正眼から刀を水平に顔に持っていく霞の構えを取り、刺突を放った。

 

「んなろッ!!」

 

地面に這っていた悠は体のバネを使って跳び上がらせ躱すと同時に体制を直す。

 

その後も蓮司の繰り出される刺突を剣で弾きながら後退を余儀無くされる。

 

「やはり刀の方がしっくり手に馴染む!」

 

「あぁそうかいッ!」

 

点で攻めて来る蓮司の猛攻撃。蓮司の放った突きが悠の持つ剣の刀身同士と合わさった瞬間を蓮司は狙った。

 

「そこッ!」

 

「うぉ!?またかよ!?」

 

以前戦った際にも使った技、巻き上げを使い悠の手から剣が手放される。

 

だが悠も同じ手を食らうほど甘くはない。

 

「シェラァッ!」

 

「ッ!?」

 

巻き上げた際に振り上げた両手に持つ刀を狙って悠がサマーソルトを繰り出す。足のつま先が丁度刀の柄頭に当たり、蓮司の手から刀が離れてしまった。

 

互いに武器を失った状態。悠の蹴りと蓮司の掌底がぶつかり合った。

 

「「ッ!!──ッ!」」

 

足と手を引き、互いに距離を空ける。

 

悠の回し蹴りを頭を下げて回避、反撃に下から突き上げる様に掌底を放つが受け止められ掴んだ腕をそのまま一本背負いの様に投げ飛ばされるが、空中で体制を直し足で着地すると今度は蓮司の方から腕と襟口を掴んで背負い投げを悠に見舞わす。

 

完全に頭が地面へ激突するかという所で、空いた片手で地面に手を着き、逆立ちの状態で蓮司の脳天に膝蹴りを繰り出す。

蓮司は咄嗟に両腕を前に出しガード。そして悠の脚を掴み、力任せに投げ飛ばす。

 

投げ飛ばされた悠は受け身を取って衝撃を緩和させると。頭上から先程打ち上げられた剣の存在を感じ取りノールックでそれをキャッチ。蓮司も自身の頭上に落ちてくる刀をキャッチすると正眼の構えで悠と再度対峙する。

 

 

 

 

「…凄いね。あの二人。まるで本当の決闘見てるみたい。」

 

 

「そりゃそうさ。彼らはそれがお仕事なんだから。」

 

「なッ!?」

 

 

三人に割って入ってきたように声を入れた主。思わず後退る三人を他所に、アベルは人当たりの良い笑みを浮かべる。

 

「やぁ久しぶりクローン少年。元気にしてたかい?」

 

「?…誰だお前。お前みたいなヤツ会ったこともねぇよ。」

 

「え~?もう忘れ…あぁそっか。こうしてちゃんと顔を合わせるのは今日が初めてか。あの時はお互い顔を隠してたしねぇ。」

 

「だから何を……待て、その、声…まさか…!」

 

アベルを怪しむ与一であったがアベルの告げた言葉に彼の記憶からある場面、スティールソルジャーとなった自分見下ろす黒ローブを羽織った男の声と一致した瞬間には、懐に入り込んだアベルの手が与一の頭を掴んでいた。

 

「ッ!ガ…ッ!!」

 

「与一!!」

 

「アンタ何してんだ!!」

 

 

「おっと、君達には用はない♪──ッ!!」

 

「「うわぁッ!?」」

 

「よ、義経!姉貴!!」

 

「さぁて、キミの中にいるバグスターを起こすとしようか♪」

 

「あぁ!?何をッ!?ガッ…グアアアアアァァァッ!!!」

 

アベルの手から放たれる黒い波動によって義経と弁慶は吹き飛ばされてしまう。二人の安否を気にする与一にアベルは与一を掴んでる手に黒い靄のようなモノを纏わせると与一の口から苦痛に塗れた絶叫が響き渡る。

その際に離れで騒ぎが起きてる様子を剣を振るっていた悠と蓮司が気付き、アベルの存在を目にすると目の色を変えた。

 

「アベル!何でヤツが…!」

 

「まさかあの男が…!!」

 

二人はアベルの目論見に気付くと一目散に駆ける。だがその二人の背後から飛び掛かってくる凶刃が迫りつつあった。

 

「シャアァッ、ハァアッ!!」

 

「ッ!クッ!!」

 

「ッ!またお前かよ!!」

 

「ハーイ!またオレッちデース!!」

 

奇襲を仕掛けたフリードことグレムリンの凶刃を躱した悠と蓮司はゲーマドライバーを装着。そして二人は同じガシャット、ギアデュアルβを手にした。

 

 

<< TADDLE FANTASY >>

<< Let's Going King of Fantasy!──Let's Going King of Fantasy!─>>

 

 

<< BANG BANG SIMULATION >>

<< I Ready for BATTLE SHIP!──I Ready for BATTLE SHIP! >>

 

 

<<<< デュアルガッシャット! >>>>

 

 

「段位五十段──」

 

「第伍拾戦術──」

 

 

「「──変身ッ!!」」

 

<< ガッチャーン──DUAL UP! >>

 

 

<<──TADDLE FANTASY! >>

 

<<──BANG BANG SIMULATION! 発進! >>

 

 

蓮司がブレイブレベル50、悠がスナイプレベル50へ変身し、スナイプが先制攻撃として両腕のオーバーブラストキャノンから砲撃をグレムリンへと見舞わす。

 

「ヌオオォォォッ!?ちょ、開幕ブッパですかぁ!?」

 

「るっせぇ!御託に付き合う暇は無い!!

オイ、コイツは俺に任せてアベルとこ行け!!」

 

「ッ…止むを得まいか!」

 

ブレイブがアベルの元へと向かい、その場に残されたスナイプはラプチャーを手に持つグレムリンと対峙する。

 

「あれまお兄さ~ん!オレッとそんなにコロコロしたかったなんて超ウレシイ!!さぁさぁ楽しい殺し合いを始めましょうやぁ!!!」

 

「今日で見納めにしてやる……削除開始!!」

 

 

 

 

 

 

「おっとキミが来たかぁ、ブレイブ♪」

 

「アベル…!そいつから手を放せ!!」

 

アベルの元まで来たブレイブだが、アベルは苦しむ与一を盾にするかのように前に突き出してるお陰で下手に手を出す事が出来ず、仮面の下で苦虫を噛んだような表情を浮かべる。

そんなブレイブの様子を面白がってるかのように、アベルは口を開いた。

 

「あー、それはまだ出来ないな。まだバグスターを生み出すのに十分なストレスを与えてないから♪」

 

「やはり…そいつは感染者だったのか。」

 

「正解♪この間のツインテちゃんの様にストレスの元となってるマイナスのエネルギーを送れば態々発症を待たずともバグスターを生み出せる。まぁ加減を間違えれば発狂しちゃう位荒療治だけど?」

 

「貴様…ッ!今になって何故そのような外法を…!!」

 

「オイオイそんな事も分からないのかい?バグスターも残り4体となって余裕が無くなったから…つまり、キミ達の所為って事♪」

 

「言い掛かりを!!」

 

「ガァアァアアァァァッ!!!」

 

「お、そろそろか。」

 

苦しむ与一の様子からバグスターの誕生が間近と見るアベル。

 

その予想通り与一の体からオレンジの粒子が出て来たが、ここでアベルですら誤算の結果が起きた。

 

目を見開いて驚くアベルの視線の先には、ヒト型となっているオレンジの塊。それが一つだけでなく、二つもあった。

 

 

「これは…!?」

 

「おやおや、コレはビックリ!…まさか二つも感染してたとはね。」

 

掴んだ手を放し地面に倒れる与一を他所に、アベルは姿を形どるオレンジの塊をジッと見つめブレイブはガシャコンソードを手に構える。

 

そうして現れた二体の異形、褪せた金色の装甲に杖を持ち右目が隠れた超越者と、ワインレッドと黄色の鎧に身を包んだ二本の角を生やした魔人。

 

『ココは…何処です?』

 

『誰だ…オレを呼び出したのは。』

 

 

自身に置かれた状況を理解しようと辺りを見渡すユートピアドーパントと長剣、グロンバリャムを手に臨戦態勢に入っているロードバロンの二体がこの場に現れたのだった。

 

「ひゃ~!コレは凄いねぇ!まさかこんな強力なのが二体とは…。」

 

『その口ぶり、アナタが私を呼び出したのですか?』

 

「そうだよん。」

 

『…何の為に?』

 

『……。』

 

「やだなぁそんな怖い視線向けて…特に何も?こうして呼び出してやったんだからオレの為に動け!とか配下になれ!とか全然。

キミ達の好きに動いてくれ。ボクにとってそれが一番都合がいいんだ。」

 

『好きに、ですか………いいでしょう。ならお言葉に甘えてそうさせて貰います。』

 

『オレは誰の指図も受けん。なればこそ貴様の口車に乗ってやる。』

 

「OK♪話は纏まったね…と、言いたいけど。あそこにいる彼がどうもキミたちの存在をよく思って無いらしくてねぇ~。」

 

アベルが指差す所には二体のバグスターを前に対峙するブレイブの姿があった。

 

『アレは、まさか仮面ライダーですか?』

 

『どうだっていい。オレを倒すというのなら…迎え撃って捻じ伏せるだけだ!』

 

「ッ!来るか…!」

 

相手を観察するユートピアに対しロードバロンはブレイブへと向かって駆け、手に持つグロンバリャムを振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶへぇあッ!?…な、なんで、ですかぁぁああッ!?」

 

「フン。」

 

一方のスナイプはグレムリンを相手に優勢に立っていた。

 

スナイプはグレムリンを前に精密な砲撃射撃で懐に入ることを許さずグレムリンを翻弄していき、瞬間移動などを用いても現れる位置が最初から分かってるかのように砲門を構えたスナイプに疑問が止まないグレムリンであった。

 

「どうして、オレっちの動きが…!?」

 

「当然だろ。なんで俺がお前の相手引き受けたと思ってる。」

 

<< ガッチョーン!──キメワザ!──ガッチャーン! >>

 

スナイプは両腕のキャノンを一つに合わせ、エネルギーが充満していく砲門をグレムリンに向ける。

 

「お前との付き合いが長い所為でお前の攻撃パターンがイヤでも頭に入ってんだよ。」

 

「ッ!!」

 

「それがお前にとって大きな敗因だ!」

 

<< BANGBANG CRITICAL FIRE! >>

 

「ッ!…クソったれがあぁぁぁああッ!!!」

 

スナイプの放ったチャージショットにせめての対抗としてラプチャーから緑色の斬撃を放つグレムリン。だがグレムリンの斬撃よりもレベル50となったスナイプの必殺技の前に難無く打ち破られ、グレムリンは成す術無く必殺技を受けてしまう。

 

「グァアァアアァァァッ!!!」

 

立ち昇る爆炎の中から出て来たモノを掴むスナイプ。それはオーガを倒した際にフリードに横取りされたウィザードのガシャットであった。

 

「今度こそウィザードガシャットゲットだ。」

 

「ち、っくしょうがぁ…ッ!」

 

元の人間態に戻ったフリード。砲門を向け砲撃が放たれるといったところでフリードは懐から取り出した閃光手榴弾を地面に叩き付けると、眩い光にスナイプは一瞬フリードを見逃してしまい、次に見た時にはフリードの姿はもう居なかった。

 

「…ハァ。アイツ本当逃げ足だけは一人前だな…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヌァァッ!!』

 

「クッ…!セエァッ!!」

 

一方のブレイブはロードバロンの繰り出す剣戟を前に苦汁を飲まされていた。

 

ロードバロンの振るう剣から伝わるパワー。それでいて力任せに振るうでなく巧みな技によって繰り出される剣技はブレイブの一歩先を上回っていた。

 

ブレイブはソードでグロンバリャムを受け止めつば競り合いの形となって押し合っていく。ブレイブが懸命に押していくが余裕のロードバロンがブレイブに問いかけた。

 

『お前は何故オレを倒す?貴様は一体、何を信念にその剣を振るう?』

 

「ッ、決まってる討つべき敵と、外道な輩を斬る為だ!!」

 

『…それがお前の強さの源か…だが!』

 

「ッ!?」

 

押されていくブレイブ。圧倒的な力と共にロードバロンはブレイブに対する指摘を止めない。

 

『お前のその剣には信念が感じられない…空っぽの剣だ。』

 

「ッ!!」

 

『そんな半端な強さで……オレを倒せると思うな!!』

 

「ッ!──グァアァァァッ!!!」

 

ロードバロンは強引にブレイブのソードを弾くと、無防備なボディに向けて渾身のストレートをブレイブに叩き込んだ。

大きく吹き飛ぶブレイブは変身が強制解除され、蓮司は地面を弾みながら転げ回った。

 

「グッ…グゥゥ…ッ!!」

 

『フン…貴様の様な弱者は倒す価値など無い…。』

 

「待てッ!!」

 

ロードバロンは地面に倒れる蓮司にトドメを刺さず体をデータ化してその場から姿を消した。

蓮司はただ敵として見向きされなかった屈辱と、ロードバロンの言っていた言葉に地面を強く殴りつけるしか出来ずにいたのだった。

 

 

 

『フム。私は蚊帳の外ですか……まぁいいでしょう。その方がそれこそ好きにできますしね。フフフ。』

 

不敵な笑みを発しながらユートピアもデータ化してその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰原宅・ガレージ地下ラボ。

 

 

 

「う~~~ん。まさかまさかまさか二つのウイルス感染者が出るとは…。」

 

思い掛けない事態に頭を抱えて眉間に皺が寄る神太郎。

 

あの後与一達は九鬼の人間が回収していき、悠達はそれに気付かれる前に退散した為大事にならずに済んだが、問題は今回の敵、二体も強力な怪人であると同時に非常に厄介な能力を有してる為に作戦会議を開いてる最中だった。

 

「おやっさーん。もうさぁ、出ちゃった事に変わりないんだし、前向きにユートピアとロードバロン倒す事専念しようぜ?」

 

「うーむ…まぁそれもそうか。むしろ今回で二体も倒せるってポジティブに考えればマシな方かな。」

 

「じゃあ早速これからの方針だが…ユートピアは俺一人でやる。お前らはロードバロンの方をやってくれ。」

 

「ちょっと灰原君、一人でやるなんてまたそんな負担が大きい事を…。」

 

「いや姉ちゃん。今回はそれがベストかも。ユートピア、ドーパント相手なら…。」

 

「そういう事。相性的にはエターナルの方がヤツの能力に対抗出来る。だから…。」

 

「いや、ここはちゃんと分断していこう。」

 

悠の案を遮るように神太郎が間に入って提案を却下する。悠から睨まれながらも神太郎は自信が企てたプランを話始める。

 

「ユートピアに対しては、私と、秋君の二人で行く。」

 

「え?オレ?」

 

「オイ、最近出番無かったからって…。」

 

「それもあるけどそこまで考えなしじゃあないよ。

私のデンジャラスゾンビと、秋君の新しい力があればユートピアに十分対抗できるさ。で、ロードバロンの方は悠君と……蓮司君の二人で行って貰う。」

 

「ハァ?」

 

「ふーん、悠兄さんと…って何ィーーッ!?」

 

神太郎のプランに秋が以上にリアクションを取る中、悠は離れて壁に背を預けている蓮司に目をやる。蓮司は顔を合わせる事無くただ黙って聞いているが、何処か様子が可笑しい事が明確であった。

 

「ちょっとおやっさん!何で悠兄さんとあのロン毛を組ませるのさ!!」

 

「うん。ロードバロンは強敵だから、レベル50のガシャットと戦極ドライバーを持つ彼らが一緒に行った方がいいと思ってね。」

 

「…あれ?あの、私は?」

 

「ハルナ君は今回待機をお願いしたい。今回はあのアベルが動いた以上何をしてくるか分からないから念の為にね。」

 

「……分かりました。」

 

「よし!そうと決まれば早速行動開始!!あ、蓮司君、ちょっとこっち。」

 

神太郎は片隅に寄っている蓮司を手招きして自身の前に呼ぶと、未だ目を合わせない蓮司に率直なモノ言った。

 

「…ロードバロンに何か言われたのかな?例えば…キミの信念、とか?」

 

「ッ!!」

 

「何で分かったんだー、って顔だね。いやロードバロンの事はよく知ってるから、彼がキミにどう言うか簡単に想像ついちゃったんだよ……キミの過去を知る者としてもね。」

 

「……。」

 

「今回の相手はキミにとって良い教訓となりうるいい機会だ…どうかそれを忘れないでくれ。」

 

「ッ…ヤツに何を学べと?」

 

「それはキミ自身が気付く事さ…それとコレをキミに。」

 

「?…このアイテムは。」

 

「今回の戦いで必要になるだろうと思って用意しておいた。使い方は…。」

 

「いい、見て大体分かった…。」

 

「そっか…私からは以上だ。」

 

「……。」

 

蓮司は神太郎に何も告げずラボを後に出た。ガレージの外では悠が階段から上がる蓮司を待ち構えていた。

 

「…なんだ。」

 

「別に、足引っ張るような真似したら先に潰すぞってだけ言おうと思って。」

 

「…此方の台詞だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フゥ……大丈夫だ。彼ならきっと…。」

 

「あの、神太郎さん。」

 

「ん?どうしたんだいハルナくん?」

 

「えっと…その……彩守くんについてですけど…。」

 

「…ハハ~ン、そうかそうか、いやー修学旅行から帰ってきた際になーんか距離が縮まったなぁっと思ってたけど…。」

 

「違いますから……彩守くんから聞いたんですけど…灰原くんが、彩守くんの師匠を…。」

 

「あぁ……それについてなんだが、まぁこれは何時もの彼の悪い癖と言うか…。」

 

「…それ、どういう意味です?」

 

「…うん。時間も少しあるし、いずれ知っておくべきと思ってたし…ちょっと話そうか。

彩守 蓮司…彼の辿ってきた過去について…。」

 

 

 

 

 

 

 







龍騎のスピンオフキター!!でもネット配信のヤツだから入会しないと見れないんですよね…。

本編でもまさかのアナザーリュウガだし、ジオウってホントサプライズ的な演出好きですよね。

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