その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ!
体が入れ替わった俺と暁と遠山の三人は不慣れな体の所為でもう最悪の一言!
はぁ、早く元に戻りたい。」

「なぁ灰原、オレ今更の事聞いてもイイか?」

「何だ遠山?イイよドンと来なさい。」

「お前前回オレからベルト取り出してたけどアレどうやって収納してんだよ?
ポケットパンパン所の話しじゃ済まされねえレベルだぞ?」

「そりゃお前、アレだよ。
スッとしまって、シュバッと取り出せるシステムなんだよ。」

「いや分かんねえから!どうして肝心な所が擬音語!?ていうかお前に限らず桜井も彩守もどうやって仕舞ってんだよ!?」

「いちいちうるさいなぁ。そういった細かい事は気にしないの。ライダー皆が出来る芸当なの。仮面ライダーなら出来て当然なんです。」

「ますます分かんねえ!?むしろ謎が深まるばかり!?仮面ライダーってマジでなんなの!?」

「まぁそういう考え抜きに、最新話を楽しみなさいよ。」





逆境

「ん~~~…おはよう~。」

 

「おはようございます。」

 

「おはようございます。二人共早起きですね。」

 

あの混然とした入れ替わり騒動から日が変わった翌朝。台所に立って朝食を作るラ・フォリアの元に寝間着姿のハルナと古城となった悠の監視の名目で泊まった雪菜がリビングに降りて来た。

 

「ラ・フォリアさん、よろしかったら手伝いますよ。」

 

「あらどうも。といっても後はお皿に載せるだけなので…よかったらそこの三人を起こして貰えますか?」

 

雪菜が朝食の準備を手伝おうと提案するが、それよりも手が掛かりそうな仕事を頼まれて一瞬眉が上がる。

 

台所からリビングに目を移す雪菜。そこには本来置いてあるべきソファーとテーブルを隅にやって布団を横に三枚並べて眠っている古城(悠)、キンジ(古城)、悠(キンジ)が熟睡していた。

 

「まぁもうすぐ朝ご飯だし、とっとと起こしましょ。」

 

「そうですね。」

 

ハルナに背中を押されながら雪菜は三人の頭元に立ち、息を少し吸い込んでから声を上げた。

 

「先輩方!もう朝ですよ!朝食も出来ますから、起きてください!!」

 

少し声量を上げて起こそうとする雪菜であったが、三人は身じろぎするだけで一向に起きる気配が無い。古城(悠)なんかは窓から入る陽の光に当たりたくないのか、毛布を覆い被ってしまう始末だ。

 

「もう…ほら!起きて下さい!!何時までも布団出しっぱなしはダメですよ!!」

 

「ぽーーいッ!!」

 

雪菜が三人の毛布をめくり起こそうも、古城(悠)の毛布を取り上げるのに苦戦するなか三人の寝てる布団にダイブをかまそうとする夕立が三人の腹部に全体重を掛けたボディプレスを見舞わせた。

 

「ぶッ!?」

 

「ごへッ!?」

 

「がはッ!?」

 

「夕立ちゃん!?何をやって…!」

 

「ドーン!と飛び込んでみたかったっぽい!雪菜ちゃんもやるっぽい?」

 

「ゆーうーだーちィー?」

 

「ッ!!」

 

「ひぃ!」

 

毛布に包まれた塊から出て来た両手が夕立の左右のこめかみをグーで挟む。

ゆっくりと起き上がって出て来た古城(悠)の顔は、額に青筋を立てながら目が血走る程にご機嫌斜めだった。

 

「テメエなぁ……最悪の寝起きに最悪の起こしたかしてんじゃねえぞゴラ゛アァァッ!!!」

 

「ぼい゛ぃぃぃぃいッ!!!」

 

「あ゛ーーッイッテェ…。」

 

「う゛、うーーんッ!!…ハァ、スッキリとした目覚めだぁ。」

 

ぐりぐりとこめかみを拳で挟まれた夕立は少女が出してはいけないレベルの悲鳴を上げる中、腹を擦りながら起き上がる悠(キンジ)と、背筋を伸ばしながらいつもと違う目覚めに感慨深く朝を迎えるキンジ(古城)。

 

リビングで古城(悠)怒号と夕立の断末魔が響き、遅れて吹雪達がリビングについた頃には食卓に朝食が並べられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──そういえば神太郎さんは?」

 

箸で掴んだ卵焼きを口に運ぼうとしたハルナが、この場に神太郎がいない事に気付いたのを口にする。

 

「お義父様ならラボに居ますよ。呼びに行きましたけど、手が離せないから食べていてくれって。」

 

「恐らく先輩方を元に戻す方法を探してるかもしれないですね。」

 

「マジか、なんか悪い事しちまったな…。」

 

納豆をかき混ぜながら神太郎の所在を教えるラ・フォリア。焼き鮭を箸でほぐす雪菜が悠達を元に戻す為に一夜漬けしているのだと推測し、悠(キンジ)が茶碗と箸を手に、僅かながらの罪悪感を感じる。

 

「(言っちゃアレだけどオレ的にはもう少しこのままでイイかなぁ…。)ハァ、味噌汁美味い。」

 

久方ぶりの爽やかな朝に、不謹慎ながらもこの体でいたいと内心思うキンジ(古城)。

 

「Zzzz…んぐんぐ…。」

 

「おぉ~、ホントに寝ながら食べてるにゃしぃ…。」

 

「睦月ちゃん!次私がやるっぽい!」

 

「二人共、そんな餌付けするみたいに食べさせるのは止めようよ…。」

 

「お兄さん、起きて下さい。お兄さん!」

 

余程朝に弱い体質なのか、テーブルに顔を突っ伏して眠る古城(悠)に中学生組が囲んで食べさせたり起こしたりするも、一向に目が覚める気配が無い。

 

「暁君っていつもこんな調子なの?」

 

「いえ、起きたらいつも眠そうですけど、ちゃんと起きています。」

 

「悠も基本朝に弱いですから、古城の体質も合わせて一層弱くなってるのかもしれませんね…。」

 

ハルナが思わず雪菜に普段の朝の古城の事を聞くも、目の前の光景より酷く無いらしい。ラ・フォリアは普段朝に弱い悠と吸血鬼の体質が原因と唱えながら、かき混ぜた納豆の小鉢を古城(悠)の顔の近くに置いた。

 

「Zzz……臭っ!?んだコレ、納豆!?何この新手の嫌がらせ!?」

 

「あ、起きた。」

 

「灰原納豆ダメなんだ。」

 

「そうなんですよ、美味しいのに。」

 

鼻を擦る古城(悠)の意外な一面を見た面々は再び朝食に箸をつけ始めようとした時だった。古城(悠)のポケットから着信音が鳴り、画面に出ている名前を見て一瞬目を見開くと、尽かさず通話ボタンを押す。

 

「ハイ……えぇ朝食中ですけど…えぇ……下手人を捕まえた!?」

 

「「「「「!!」」」」」

 

口にしようとした朝食が古城(悠)の一声で皆止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中学生組を除き、一同は学園へ足を運んだ。

 

週末であったお蔭で休日に残った仕事を片付ける教師しかおらず、周りを気にする悠達にとって都合が良かった。目の前で鎖で吊し上げられている下手人の姿もあって。

 

「…まぁ、納得のいく下手人だこって。」

 

「よくよく考えれば中身が入れ替わるガスなんて変なモノ作りそうなの、この人しかいなそうだしね。」

 

「オイ桜井よぉ、そいつは聞き捨てならねえな。オレが何時も手掛けてる発明品はどれも画期的で有効に使える為に…。」

 

「その発明品とやらの所為で生徒に害が起きてるんだろうが!この低脳カラスめが!!」

 

「イデッ!! 誰が低脳だ!!というよりいい加減これ解けや空隙の!!」

 

鎖で葛巻にされミノムシの様に吊るされた、学園の教師でもあるアザゼル。那月の飛ばす扇子の一撃を躱す事が出来ずに頭部へ集中的に攻められる。

 

「ま、まぁなにわともあれこうして犯人は捕まった事だし、これで元に…。」

 

「それがそうもいかないみたいだぞ灰ば…いや遠山か。

このクソカラスの作ったあのガス、実は失敗作のゴミだったらしい。」

 

「し、失敗作…?」

 

「あーー、まぁそういうこった。

あん時本来作る筈だったガスと全く別モンの効能がでてきちまってなぁ。流石に使えないからどこか適当な所で捨てようかと思った矢先、うっかり手からこぼれて窓から落ちちまって。

で、落ちたその場に丁度いたのがお前等三人ってコト”バチィィンッ!!”ブホォ!!」

 

「も・ど・せ!も・と・に・も・ど・せ!!」

 

「ブッ!バッ!ヤ゛ッ!べッ!」

 

「灰原!気持ちは分かるが落ち着け!!先生喋れないから!!」

 

「完全に頭に血が昇ってますねぇ。」

 

堪らずアザゼルの顔に往復ビンタを浴びせる古城(悠)しかも無意識に吸血鬼としての力を使ってる為に一発一発毎にアザゼルの首が千切れ取れそうなくらい首が左右に動いている。

 

ある程度叩き終えた頃にはアザゼルの頬は真っ赤っかに貼れた状態で、古城(悠)は顔をズイっと近づけながらアザゼルに話し掛ける。

 

「とにかく、アンタが役に立たない事は分かった。

だからあのガスの調合法やら使った材料やらを教えろ。それを基に戻るヤツをこっちで作って…。」

 

「ぞ、ぞれ゛がな゛、元々調合法や゛ら゛材料自体が間違っでたんで、メモに書いたそいつはもう消去…ゴハッ!?」

 

 

三人の拳が綺麗にアザゼルの顔にめり込んだ。

 

 

「ふっざけんなよ!!じゃあオレ達どうやった戻れんだよ!?」

 

「つーかんな危ねぇ代物窓から落とす事態いい加減すぎだろ!!」

 

「オイコイツこのまま海に投げ捨てようぜ!!」

 

 

「落ち着いてください先輩方!!特に灰原先輩!!」

 

これにはキンジ(古城)と悠(キンジ)も思わず手を上げアザゼルを非難の声を上げ、古城(悠)はアザゼルをサンドバックの如くキックをかまし、気絶しても尚蹴りを叩き込んでいた。

 

「その辺にしておけ、特に灰原。コイツを消し去る事については大いに賛同するが、コイツの立場上いろいろ面倒なのでな。」

 

「決してアザゼル先生の味方では無いんですね、南宮先生も。」

 

「当然だ。私はコイツの事が心底嫌いだからな。

さて灰原、いい加減お前も頭を冷やせ。大体気が済んだろう。

 

「フゥ………えぇお陰様で。

にしてもどうすっかな、戻る一つの道が途絶えた今、本格的にアホ上司に未来が掛かっちまった。」

 

「そうですねぇ。一度家に戻ってお義父様に聞いてみますか?」

 

「…あぁ。」

 

「?」

 

ラ・フォリアは古城(悠)の返した返事に違和感を感じ首を傾げる。

 

一同は意識の無いアザゼルの後処理を那月に任せ学園から自宅へ帰る道中、ラ・フォリアは自分と離れて歩いてる古城(悠)目にしながら、隣にいたハルナへ疑問を投げてみた。

 

「ねぇハルナ。今日の悠何か可笑しくありません?」

 

「? 灰原君?…いや、見た目以外特に変わった様子は…。」

 

「私もずっと気のせいだと思ったんですけど、私と話す時どうも素っ気ないと言うか、余所余所しいと言うか…何か距離感を感じるんですよね。他の方達は普段通りに接してる様なんですけど…。」

 

「…あーー……ねぇラ・フォリアさん。それって本当にラ・フォリアさんにだけ?」

 

「えぇ……いえ、そういえば夏音の髪を梳かす時、どこかぎこちなかったですね!吹雪達の時はいつも通りパパッとこなしていたのに。」

 

(決まりね。うん、確実にクロよ。)

 

悠の朝の日課として、吹雪達の髪のセットをしている。

基を辿れば身分上ラ・フォリアが外出する際、多少の変装が必要だ。今日の後頭部に団子状に纏めたヘアースタイルも悠が手掛けたものだ。施設に居た時、子供達の面倒を見る際に身に付いた技術だと当の本人が言ったと言う。

 

その手際の良さから普段の髪の手入れなど外出する予定が無くとも頼むようになり。それを知った夕立が自分もとせがみ、釣られて睦月、最終的に残った吹雪も、そして後から住む様になった夏音も含めて、自然と板についた役割を受け持ったのである。

 

そしてその日課は体が入れ替わった今朝も。古城達は意外過ぎる一面に目を見開く程驚いてる中、悠はラ・フォリアと夏音を除いて手際良く日課をこなした。

それを聞いてハルナは昨日起こった出来事と、前の方で雪菜をからかい反応を見て楽しんでる古城(悠)を見て全て察した。

 

(灰原君、バリバリ二人の事意識しちゃってるよ。いや、この場合川内達も含めて考えるのか道理か。)

 

昨日の仮装したラ・フォリア達を見て、普段の悠ならば抑えが利いたのであろうが、吸血鬼の吸血衝動の所為で彼の中にある情欲が上手くコントロール出来ないとハルナは見る。

 

だが今現在雪菜の頬を餅みたいにこねくり回してる様や、今朝吹雪達や自分と関わった際にそのような様子は一切窺えなかった。

この事から考えられるの答えは一つ。

 

「あ~…あのねラ・フォリアさん。コレは別に彼がアナタ達をどうこう思ってというか、ソッチからしたら朗報なのか…。」

 

「? 一体何です?」

 

「…うん。あのね…。」

 

未だ真相に気付かない彼女に耳打ちで教えようと顔を近づけるが。

 

「桜井!」

 

「うぇあッ!? な、なにッ!?」

 

携帯を手に先程までふざけた雰囲気など一切無い古城(悠)が声を荒げてハルナを呼んだ。

 

 

「バグスターだ!!街でとんでもねぇ事やらかしてやがる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁッ!!!」

 

真昼間の街中に断末魔の悲鳴が響き渡る。

 

音を立てて地面に転がる音。逃げ惑う人々。

 

そんな混乱の只中、ベンチに座りながらつまらなそうに眺めるアベルに路駐してる車に寝転がるフリードが話しかける。

 

「アベルのお兄さ~ん。今日は珍しくご機嫌斜めなカンジっすねぇ~?

新しく出て来たアイツ、今チョーイケイケなカンジなのに。」

 

「あぁ…バグスターになれば多少の変化はあるかなぁってちょっと期待してたけど……ボク、アイツ嫌いなんだよねぇ。」

 

「あら意外、お兄さんも嫌いなヤツとかいるんすねぇ。」

 

「まぁね、この場合アイツ限定じゃなくて、アイツの種族がキライなんだよボク。

人間は人間のままでイイとかつまんない事ばっか抜かしちゃって、そんな面白味もなんも無い連中好きになる訳無いじゃん!」

 

「そうですかィ?まぁ分からなくもないですがな!オレッチとしちゃあ…。」

 

フリードが車体の上から遠くを見渡す様に手を翳しながら街中を見渡す。

 

そこから見えたのは道端に倒れた人、人、人の姿。

 

傷も無く、血も流れず、命の無い人の形がゴミの様に道に転がってる光景が出来上がっていた。

 

「こうも綺麗で静かなコロコロはノリに乗れませんなぁ、オレッちなら血がドバっと!悲鳴がキャーキャー!の音楽がなきゃあ遣り甲斐ってモンがなぁ…。」

 

「ま、どちらにせよ今回のバグスターは乗り気じゃないって事で…。」

 

アベルは遠くからだが此方に向かって走って来る悠達の姿を目に捕えた。

 

「今日は少しだけキミ達を応援するとしようか、中身が入れ替わった状態だしね♪」

 

 

 

 

 

 

「お前等帰れって言ったじゃん!!何で着いて来てんの!?」

 

「私は先輩の体が心配で着いて来ただけです!」

 

「お前何度も言うけどそれオレの体だからな!?」

 

「そういうお前もオレの体だってコト忘れて危険区域行こうとすんなよ!」

 

「あーッ!誰も言う事聞いてくれない!!なんで!?」

 

「いや入れ替わってるからでしょうが……ッ!!」

 

「ッ!…コイツは…。」

 

「オイどうし、ッ、んだコレ…!」

 

前を走る古城(悠)とハルナが急に静止した前には、道端に倒れる人々の死体。

 

余りの光景に一同が呆然と立ち尽くす中、古城(悠)は近くに倒れてるし体に近ずき、首元に触れる。

 

「…死んでる。参ったな、バグスター騒動初の死者発生、しかもこんなに……王女を無理に帰して正解だったか。」

 

「ッ…!!」

 

「…桜井、大丈夫か?」

 

古城(悠)は幾度も人の死を見たのもあってコレといった動揺は見受けられないが、初めて死に直面したハルナの顔色が少し青くなった。思わず古城(悠)が声を掛け、ハルナを口元を抑えながら応える。

 

「平気よ。変身してバグスター倒す事だけ考えるから、戦えるわ。」

 

「……そうか。」

 

戦線に出れる決意を示すハルナに、古城(悠)は先を進む事を提案した。この惨状を引き起こした下手人が先に居るのと、少しでもこの光景を目に捕えさせない為に。

 

そうして走らせていると、張り詰めた空気と共にこの惨状を起こした下手人の姿を捕え、古城(悠)はその正体に思わず顔を歪める。

 

クジラを思わせるフォルムに神官を思わせる杖を手に、僅かに女性と思われる体つきのソレは、かつて闇の力の配下として仕える7人の上級ロード、エルの一人。

 

水を司る高位の使徒・水のエルが振り返り、手にした杖[怨嗟のドゥ・サンガ]を地に打ち付けて鳴らしながら古城(悠)達を見据えた。

 

『…貴様等も人で無き者……人で無い者は、滅びねばならぬ。』

 

「ッ!──ッァ、ハァ…!!」

 

「姫柊!?どうしたんだ!オイ!!」

 

水のエルから放たれる威圧とは別に、雪菜は剣巫としての霊視で水のエルを見た途端、糸が切れた様に腰が砕け息が荒くなっている。

キンジ(古城)が咄嗟に支えるも、雪菜は顔を青くして絶え絶えの言葉でキンジ(古城)に口を飛ばす。

 

「せ、先輩…アレは、危険です……人間の勝てる、相手じゃない!!」

 

「姫柊!しっかりしろ!!」

 

 

「アイツが……アイツを、倒す!!」

 

<< MIGHTY ACTION X >>

<< GEKITOTSU ROBOTS >>

 

 

「ッ!オイ待て桜井!!」

 

「大・大・大変身ッ──!」

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

<<──Mighty MIGHTY ACTION──X!──アガッチャ! >>

<<──GE・KI・TO・TSU ROBOTS! >>

 

「ハァァアアアーーッ!!!」

 

ハルナは古城(悠)の静止の言葉を聞かず、エグゼイドアクションロボッツゲーマーに変身して水のエルに向かって行く。

 

「しゃああんらァァアッ!!!」

 

盛大な掛け声と共にアームを振りかぶるエクゼイド。繰り出された岩を簡単に砕くアームの一撃は水のエルに当たる前に見えない壁に遮られ、止められた。

 

「な…!」

 

『…フンッ!!』

 

「うわあああぁッ!?」

 

水のエルが腕を振り払ったと同時にエクゼイドの体が大きく吹き飛ばされた。

 

「桜井!ソイツは今までのバグスターとは違う!!無闇に突っ込んでいくな!!」

 

「ッ、だったら…ハァ!!」

 

古城(悠)からの忠告を耳にしたエグゼイドは、起き上がるや左腕のアームを水のエル向けて発射した。

 

迫りくるアームを水のエルは手を前に翳しただけで、ゆっくり失速し終いには水のエルの手前でピタリと止まる。

その後水のエルが開いていた手を閉じると、宙に浮かぶアームがベキベキと音をたてながらへこんでいった。

 

「ッ!?」

 

深海の水圧でボールが小さくなるのと同様、アームがひしゃげて元の形が分からない位に小さくなると、最終的に粉々に砕け散った。

 

『力無き者よ。滅びを受け入れよ。』

 

「ッ、誰が弱いですって!?」

 

<< MIGHTY BROTHERS XX >>

 

 

「ダメだ…桜井止せ!!お前一人じゃソイツには勝てない!!」

 

「だから二人掛かりで行くのよ!! だ~い変身ッ!!」

 

<< ガッチャーン!──DOUBLE UP! >>

<< ──Mighty MIGHTY BROTHERS "Hey!"──XX! >> 

 

「「ハァアアァァッ!!」」

 

エグゼイドはLとRの二人になり左右に分かれての挟み撃ちを仕掛ける。

 

『フン───ッ!』

 

「え!?」

 

「いない!?何処行った!」

 

攻撃が当たる寸前で姿を消した水のエルの行方を探すエグゼイド達。当の水のエルはエグゼイド達の上、上空に浮かびながら自身の足元に巨大な紋章を生み出す。紋章は下に居るエグゼイド達に向かって落ち、二人の足元には水のエルの紋章が浮かぶ。

 

「ッ!何コレ!?」

 

「マズイ!──二人共すぐ離れろォ!!」

 

古城(悠)が二人に向かってすぐ離れる様叫ぶも、紋章から昇る火柱が二人を襲った。

 

「「ウワァァアアッ!!」」

 

大きなダメージを負った事を胸のゲージが半分にまで削られた事が知らされる。

倒れるエグゼイド達の前に水のエルがゆっくりと地上に降り立ち、威圧と共に口から言葉が放たれる。

 

『哀れ。間違った進化の先にあるのは破滅。故に絶たねばならぬ。過ちを犯した者達を。』

 

「間違った進化……まさか、さっきの奴等全員が…?」

 

古城(悠)は水のエルが放った言葉からある真相に気付く。

 

 

先程見て来た死体の惨状。あれらは全て間違った進化、転生悪魔や天使、あるいは神器持ちが狙われて殺されたのではと。

 

『人が人である為に、災いを齎す過ちは全て消し去る。そうして…。』

 

「ッ!アレって…!!」

 

水のエルが手を翳すと、何も無い虚空から宙に浮いた人が隣に現れる。

気を失って顔が伏せられても特徴的な栗色のツインテールをした少女、イリナを見据えて水のエルは言葉を発す。

 

『この者に分からせるのだ。信じている神が間違っていると。人に誤った力を与えた神の子など、災いでしかないと。』

 

「そうすりゃ自然とストレスが溜まって実体化ってか…冗談じゃねえ。やっぱ神ってクソだな。」

 

「ッ……ふ、ざけない、でよッ!」

 

水のエルが話してる間に、痛む体に鞭打って立ち上がったエグゼイド達が水のエルを睨む。

 

「あの中にはッ、望んでいない力をもった人だっていた筈!それをアンタの勝手都合で…!!」

 

『否。その類の者達にとって、死は災いへの解放。すなわち、救いである。』

 

「解放?救い?……ふざけるな!!そんな死んで救われる命なんて、一つも無い!!」

 

「アンタはただ完全体になりたいから殺してるだけ!自分が強いから何してもイイって言ってる最低最悪な怪人よ!!」

 

 

「「アンタなんかの救いなんざ、死んでもゴメン よ/だ !!」」

 

「桜井、お前…。」

 

『…ならば。』

 

水のエルは宙に浮かせたイリナを地面に下ろすと、ドゥ・サンガを地面に強く叩く、すると杖の形状が変わり片刃の着いた戦斧[怨念のバルディッシュ]に変え、エグゼイド達へ突きつける。

 

『汝には無残な死を、絶望に堕ち朽ち果てる死を与えよう。』

 

「一人で強化態になれんのかよ…どちらにせよヤバいな、こりゃ…。」

 

「灰原、なんか策は無いのかよ?これだと桜井が…。」

 

「…無い事は無い。この時の為に準備しておいた秘策がある。」

 

「あるのか!?だったら何で使わねえんだよ!?」

 

「使いたくても使えねえんだよこの体じゃ!!ったく本当にタイミング悪く厄介モンが出てきやがって…!」

 

「わ、悪い…。」

 

「…いやこっちこそ、少し血が昇ってた……クソ、G4さえ使えたら…!」

 

G4-Xは悠の生体データ自体が一種のパスワードである為に、古城の体である今G4のスーツを纏えない。

 

古城(悠)が見ているしか出来ない現状に憤慨しながらも水のエルはバルディッシュを手にしながらゆっくりと近づいて行く。エグゼイド達がキースラッシャーとガシャコンブレイカーを手に迎え撃とうと構えるなか、水のエルが進めていた歩を突然止め…。

 

 

ーギィィィンッ!!ー

 

 

「クッ──セァアッ!!」

 

死角を突いて奇襲を仕掛けたライダー、ブレイブが振り下ろしたソードをバルディッシュで防がれ、追撃を仕掛ける為一度離れ再度斬りかかるが、翳した手の平から放たれた衝撃波がブレイブを弾き飛ばした。

 

「グァァッ!!」

 

「「ハァアアアッ!!」」

 

水のエルの注意がブレイブに向けられている隙を突きエグゼイド達が強襲を仕掛けに行くも、水のエルが放った念動力が二人の動きをビデオの一時停止の様にピタリと止めた。

 

「な、何よ、コレ!」

 

「う、動かない!」

 

『ハァ!!』

 

「「グァァアアッ!!」」

 

動きを止められた二人にバルディッシュの一撃が見舞われる。大きく吹き飛ばされる二人。ブレイブはガシャコンソードを氷剣モードに変え、地面に突き刺し氷柱が地面から水のエル向けて奔る。

だが水のエルは向かって来る氷柱をバルディッシュの一振りで薙ぎ払い、砕け散った氷が舞った。

 

『ヌゥ、ハァ!!』

 

「ッ!グアァアッ!!」

 

水のエルから放たれた念動力がブレイブにダメージを負わせる。ゲージを減り片膝を着くブレイブを目に、古城(悠)が隣に立つ悠(キンジ)の懐を弄る。

 

「オイまたかよ!!」

 

「ちょっと黙ってろ!えぇっと確かこの辺に……あったッ!、オイ剣バカァ!!」

 

「ッ!」

 

悠(キンジ)から取り出したデュアルガシャットβをブレイブに投げる。

 

ブレイブは投げられたソレをキャッチすると、立ち上がって素早くダイヤルを回した。

 

<< TADDLE FANTASY >>

 

<< Let's Going King of Fantasy!── >>

 

ゲームタイトルから出て来たファンタジーゲーマーが牽制として黒い波動を水のエルに放ってる間にブレイブはデュアルガシャットをドライバーへと挿し込む。

 

<< デュアルガッシャット! >>

 

「段位・五十段──!」

 

<< ガッチャーン──DUAL UP! >>

 

<< 辿る!・巡る!・RPG!──TADDLE FANTASY! >>

 

「オォォォッ!!」

 

ファンタジーゲーマーが鎧となり、ブレイブファンタジーゲーマーレベル50へなるとソードを手に水のエルへ。

水のエルが念動力を放つが、ブレイブも手を前に波動を放ち相殺。ソードの届く間合いへ入ると、ソードを横薙ぎに振るった。

 

「セェァッ!」

 

『ッ!』

 

水のエルはバルディッシュを前にソードの一振りを受け止める。

ソードを弾き、バルディッシュの上段の一撃をブレイブは受け流し、突きを繰り出すもソードの刀身を掴まれ止められる。

 

「ッ! グゥゥッ!!」

 

『無駄だ。ムン!』

 

掴んだソード毎ブレイブを投げ飛ばす水のエル。追撃にエネルギーで出来た光球を放つが、ブレイブは魔力で作ったバリアーで光球を防ぐ。

 

レベル50となって水のエルとやり合えているブレイブ。渡り合うブレイブを見てエグゼイド達は痛む体を鼓舞しながら立ち上がる。

 

「まだ、やれるわよね!」

 

「当然!あのカマクジラはアタシ等が攻略すんだから!」

 

ブレイブに負けじとエグゼイド達も再度加わり三人掛かりで水のエルを押していく。

三人の剣戟が至る所から振るわれる中で、水のエルは三人の攻撃をバルディッシュを駆使して全て防ぎきってる為に未だダメージが与えられず、念動力も使われて押されるために未だ突破口が掴めずにいた。

 

バルディッシュに三つの刀身が受け止められると同時に、念動力で弾かれた三人は、一度距離を取った。

 

「んもうぉ!当たんない!!どうなってんのあのカマクジラ!!」

 

「落ち着いて!とにかく粘って、チャンスを待つわよ!!」

 

「その前にアイテムでゲージを回復しろ、オレが前に出て隙を作る、そこを全員で叩くぞ。」

 

「えー!?」

 

「分かった!ほら駄々捏ねてないで回復のアイテム探すわよ!別に手柄取られる訳じゃないんだから、ホラ!!」

 

「ブーッ!分かりましたよぉ!」

 

不満を垂らすエグゼイドRを嗜めて回復をアイテムを探すエグゼイドLを横目にブレイブは水のエルから目を放さずに構えを取り、能力の瞬間移動で水のエルの間合いへ。

だが水のエルも瞬間移動でブレイブの動きに付いて行き、両者の姿があちらこちらで武器をぶつけ合って火花を散らしていった。

 

「凄ぇ、彩守のヤツあの化け物に着いてってる…これなら…!」

 

「いや、全然。レベル50でもどうにか着いて行けるレベルじゃエルには勝てねえ……あんのアホ上司何時になったら…!」

 

 

「呼んだかね?」

 

 

「うわァッ!?」

 

二人の間から、ズイ!っと現れた神太郎に面を喰らわせられた悠(キンジ)と対象に不機嫌な顔を隠さない古城(悠)は神太郎は睨み付けた。

 

「いや遅れてすまない。キミ達を元に戻す方法を見つけるのに没頭し過ぎてラ・フォリアちゃんに耳元で叫ばれるまで気付けなかったんだ。」

 

「…説教は後、取りあえず早くアレどうにかしてくれ。」

 

「よかろう……エルロードか。いい機会だ、奴に本当の神の力を見せてやろう。」

 

「…なぁ、神太郎さん神とかどうとか言ってるけど…。」

 

「気にしないで、アレあぁ見えて頭狂ってんだ。」

 

神太郎は意味深な視線を向けられながらバグルドライバーとバグバイザーを装着する。

 

<< ガッチョーン! >>

<< DANGEROUS ZOMBIE >>

 

「変身ッ!──」

 

<< ガッシャット!───BUGGLE UP! >>

<< ───DANGEROUS ZOMBIE! >>

 

「ムゥワァハァアアアァア~~ッ!」

 

 

「…なぁ、アレ本当に神太郎さんか?」

 

「悲しいけど、現実なんだ。コレ。」

 

 

<< ガシャコンスパロー! >>

 

「ブハハハハハッ!!!神の力を思い知れええええ!!!」

 

変身したゲンムが鎌モードのスパローを手にブレイブと相対している水のエルへ。

 

水のエルはゲンムの一振りをヒラリと躱すと、ブレイブの隣に並ぶゲンムを見る。

 

『また愚かな人間……否、貴様は人間では無い。何者だ。』

 

「私は…神だァアアアァアッ!!!」

 

『神……神の名を語る不届き者がぁ!!』

 

 

「…それについては同意しかねない。」

 

「何を言っている蓮司君!私は正真正銘の神だぁ!!それを今から見せてやるゥゥウッ!!!」

 

<< ズ・ドーン! >>

 

弓モードのスパローを手に単身水のエルに特攻するゲンム。矢は片手で弾かれながらも間合いを詰め、鎌モードにし斬り込むも躱されるゲンム。

 

ブレイブも渋々加勢に水のエルに向かうなか、エナジーアイテムを探していたエグゼイド達は。

 

 

<< 回復! >>

 

「よし!ゲージが戻った!」

 

「コッチも見つけた!」

 

<< 回復! >>

 

二人は回復のエナジーアイテムを取り込みゲージを満タンにして水のエルに向かう。

 

四人が取り囲んで四方から一斉に攻撃を仕掛けると、水のエルは跳び、宙に浮きながらエグゼイド達を見下ろす。

 

『哀れな。安らかな滅びよりも、苦しみを望むか。』

 

 

「誰が望むかぁ!望んでるのはアンタの攻略だーー!降りて来ぉーい!!」

 

「天使の分際で神を見下ろすかぁああ!!罰として貴様のデータをガシャットから削除してやるゥゥゥウッッ!!!」

 

「…桜井、自分の分身くらいどうにか抑えてくれ。」

 

「えぇ?いやあんなカンジだった?オレンジの私?」

 

 

「…なんか、賑わってるな。」

 

「言うな。もう何も言わないでくれ。」

 

エグゼイドRとゲンムが武器をブンブン振り回しながら上空の水のエルに向かって吠える光景がシビアな空気をぶち壊してるのを離れて見ている古城(悠)は冷めた目をしているのを、隣の悠(キンジ)は何とも言えない気まずさを感じていた。

 

 

そんな光景を前にする二人の死角から、無機質な視線を送る主はタイミングを見て飛び掛かってくのを古城(悠)がいち早く気付いた。

 

「ッ! 遠山!」

 

「うおッ!?」

 

古城(悠)に押され共に地面に伏せられる悠(キンジ)。古城(悠)が追撃する襲撃者を蹴りで下がらせその正体を見ると、昨日襲撃されたバッド型の下級ロイミュード。

バッド型に続いて更に二体のロイミュードが姿を見せる。昨日と違う点が、下級の三体では無く、コブラ型と鉤爪の死神ロイミュードが目の前の標的を捕えていた。

 

水のエルに気圧された雪菜を介抱していたキンジ(古城)が突然の事態に思わず叫んだ。

 

「灰原!遠山!」

 

「コッチ来んな!そこで姫柊の気が済むまで抱いてろ!

ったく昨日に続いてコイツ等は…。」

 

「どうするよ灰原、桜井達に助けを…。」

 

「出来ねえよ。一人でも欠けたらバグスターにやられちまう…こっちはこっちでどうにかするしかないだろ。」

 

「どうにかって!昨日満足に戦えなかっただろ!オレだってベルトの性能に負けちまってあんなんだし、それともなにか考えが…。」

 

「……あるよ。」

 

「ッ!それって…。」

 

古城(悠)は悠(キンジ)から取り出したのは、昨日使ったロストドライバーとガイアメモリ。

 

だが悠(キンジ)から見てそのガイアメモリは昨日の白いメモリでは無く、黒いメモリだった。

 

 

 

「逆境を切り抜ける切り札…見せてやるよ。」

 

<< JOKER >>

 

ガイアウィスパー鳴らし、装着したドライバーのスロットへ。

 

悠が扱うメモリの中でエターナルの次に適合率の高いガイアメモリ、あらゆる困難を切り抜ける切り札を記憶した漆黒のメモリ。

 

「変身ッ!──」

 

<< JOKER >>

 

 

一陣の風と共に姿を掛ける古城(悠)。

 

漆黒の鎧に身を包み、赤い複眼と額のv字アンテナが光る。

 

「黒い、仮面ライダー…。」

 

 

「──仮面ライダー、ジョーカー。」

 

手首を回して調子を確かめるジョーカーは三体のロイミュードへ相対する。

 

「さぁ来い木偶人形共!」

 

 

 

 

 

 

 

 





ここ最近ジオウが面白い。アナザーライダーのデザインがぶっ飛んでてスゲエし、次回は消滅したのに王となった黎斗が出るわエイジが出るわ、期待度が右肩上がりです。

余談ですか、もやしこと士が別の番組で騎士やってっけど、ジオウに出るのかなぁ?

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