「前回のあらすじ!
圧倒的な戦力差を前に苦戦を強いられる俺達チームライダーズ。そんな中俺は「どうなっちゃったにゃしィ!?」それを今から言うから!
俺は剣バカからデュアルガシャットを取り上げ「それってドロボウっぽいーッ!」いいんだよアレ俺のだから!ていうかまだ喋ってる!!
んんッ! 俺はデュアルガシャットでスナイプレベル50に変身しハイドラグーンとの決着を「悠さん!アレって何の戦艦なんですか!?大和型!?それとも海外型!?」あぁもう碌にあらすじ出来てねえ!!
ああそうこうしてる内にもう時間が!!」
「削除、開始ッ!──ッ!」
スナイプレベル50へと進化したスナイプは己の意気を上げ、盛大な初手を踏んだ。
両腕、肩を合わせ計十門の砲塔から派手な砲撃音が響かせながら吐く砲火は一発で数体のハイドラグーンを撃破する程強力な威力を有していた。
「ウラウラウラウラウラァァーーーッッ!!!」
次々と塵となって爆ぜるハイドラグーンの軍勢。そのペースは今までの比に当て嵌まらない程の早さで既に三ケタに及ぶハイドラグーンを駆逐していった。
やられて堪るかとハイドラグーン達はスナイプへ迎撃に突撃を仕掛けたり両腕のクローを飛ばす等の抵抗を見せていくが、特攻を仕掛けたハイドラグーンはスナイプへ到達する前に撃ち抜かれ、飛ばしてきたクローも的確に撃ち抜かれると砲弾はそのままクローを放ったハイドラグーンも粉砕していった。
スナイプ自身の高い精密射撃性能と両肩のスクランブルガンユニットの自動迎撃システムによって視覚外からの敵にも対応出来、ソレに加え止む事の無い連射性能を備えたオーバーブラストキャノンの高威力砲撃によって繰り出される砲撃戦は怒涛の嵐、攻めによる鉄壁の布陣を強いていた。
ハイドラグーンを次々と撃ち抜く中でスナイプはあるエナジーアイテムを探していた。そして目的のモノを見つけるとスナイプは砲撃しながらアイテム目掛けて駆け、取り込んだ。
<< 分身! >>
分身のエナジーアイテムで五人に増えると互いの背中を庇うように円陣の形を取る。五人のスナイプの左目にレーダーが現れ、それぞれの視界に入るハイドラグーンにマーカーを付けていく。
「これで堕ちろォッ!!」
五人のスナイプから放たれる一斉砲火。最大火力で放たれた砲撃は空を瞬く間に赤一色の炎に染まり、ハイドラグーンの軍勢達は塵も残らず全て消滅していった。
「オォ!アレだけの数を全て…! 流石は私の造ったガシャットだァ!!」
「そこは俺じゃねえのかよ…。」
分身化が解け一人になったスナイプが自信の技術力を称賛するゲンムに不満を漏らすなか、単騎となった赤いハイドラグーンはまたしても倍加を試みようとしていた。
[Boost!Boost!Boost!]
「させっか!」
増殖を阻止すべくスナイプは両腕のキャノンをハイドラグーンへ向けて発砲。砲撃はハイドラグーンへ直撃し、ダメージを与えた。
「倍加をする時はどうしても硬直するみてぇだな。俺にとっちゃ格好の的だぜ。」
スナイプの砲撃を受け黒い煙を上げながら高度が下がったハイドラグーン。弱点も見抜き、端から見れば勝負は決まったと見受けるこの状況下でスナイプは追撃の砲撃を放った。
だがハイドラグーンにとって脅威なのは倍化だけでは無かった。下を向いていた頭部が持ち上がると同時に大きく広がる四枚の羽。
砲撃が当たる直前、ハイドラグーンの姿が消えた。
「ッ!何処に──グァッ!?」
「悠君ッ!!」
的を失った砲撃は背後のビルに当たり爆発した後、消えたハイドラグーンを探し出すスナイプの横から襲い掛かって来た強い衝撃に吹き飛ばされた。
ダンプカーで突き飛ばされたかのような威力でビルの壁に激突するスナイプ。全身に奔る痛みを堪えながら顔を上げると、広げた羽が目で追えない程羽ばたかせているハイドラグーンが刃を擦り合わせたような鳴き声を上げながらスナイプを目で捕らえていた。
「今のは……高速移動か!」
スナイプは先程の現象を、高速移動による体当たりと推測する。
ハイドラグーンは見た目の通りトンボ型のミラーモンスター。トンボの飛行精度は現代の科学技術では完全な再現が不可能な程の三次元飛行が可能な生物だ。加えて人間台より遥かに大きいサイズによってそのスピードも更に上がっており、巨体を生かした体当たりは必殺技級の威力を有している。
倍加以外の厄介な能力に仮面の下で顔顰めるスナイプ。そんなスナイプの内心を露知らずにハイドラグーンはまたその場から消えたかのように高速移動をした。
「ッ!んなろッ!!」
スナイプは背中を壁に着ける。死角を失くして当たり所を定めた後、左目にレーダーを表しその行方を捜そうとしたのだが…。
「ッ!?速すぎだろ!?」
ハイドラグーンを思わしき赤い点がレーダーの範囲内を凄まじい速さで縦横無尽に駆け巡っている。
目で追い付けないマーカーの点を追い掛けず、一点に絞ってもこのスピードでは砲撃の着弾まで余裕で避けられてしまう。なので出来る事と言えば、牽制程度で、運良くまぐれ当たり位しか無い。
とにもかくも手当たり次第に砲撃を放つスナイプ。だが放った砲撃は周囲の建物を壊していくだけに終わり、意思のある敵だったら今のスナイプの姿を嘲笑っていただろう。
そしてハイドラグーンの高速移動の体当たりが左から襲い掛かって来た。
「グァァッ!!」
大きく吹き飛ばされるスナイプ。狙ったかのように壁から離れた道の真ん中へ転がるスナイプにハイドラグーンは容赦の無い追撃を仕掛けに行った。
「グゥッ! ガッ!! ウワァッ!!!」
体当たりで吹き飛ばされ宙に浮いてる所に連続で突撃して来るハイドラグーン。スナイプはピンポールお玉の様に全方位からの体当たりを喰らうと、攻撃が止み、地面へ打ち落とされていった。
「グッ!……グッ、ソ…!クロックアップ相手にしてるもんじゃねぇかよ…。」
「悠君!!「来るんじゃねえ!!」ッ!」
地面に倒れるスナイプの救援に向かおうとするゲンム。だがスナイプはゲンムに拒絶の声を上げた。
「たかが虫一匹始末すんのに手助けなんざいらねえっての。黙って見とけ。」
「馬鹿かキミは!このやりとりさっきの蓮司君と全く同じだろ!
それにその一匹に苦戦を強いられているじゃないか!意地を張ってないでここは私と二人で…!」
「いいから黙って見てろじゃなきゃ殺すぞ……ハァ、ご褒美はお預け、か…。」
ゲンムを無理矢理引き止めたスナイプは、諦めた溜息を吐いた後立ち上がって滞空しているハイドラグーンを睨み付けた後、構えを取った。
足を肩幅まで広げ膝を軽く曲げ、腰を落とし。少し前屈みになって頭部を守るよう両腕を上げた。
「?…あの構えは?…ッ!まさか!」
ゲンムの目にはスナイプの取っている姿勢が普段のスタイルとは打って変わり、完全な受け身の体制。長年悠を見て来た実績からこれからスナイプのやろうとしている事を悟った。
「またとんだ無茶を…! だが、現状では有効な手はそれしか無いか!」
悔しそうに声を漏らすゲンムを余所に、スナイプは此方の様子を窺っている風に見下ろすハイドラグーンを前に今か今かと待ち構える。
「どうした、とっとと来いよ蚊トンボ。最後のじゃれ合いに付き合ってやらぁ。」
その言葉に感化されたのか、羽を羽ばたく音が一層強くなるとその姿を消した。
「ッ~~ッ!!!」
またしてもスナイプに襲い掛かる衝撃。今回は万全の態勢でいる為に吹き飛ばされていなくダメージを負っているが多少の軽減はされてはいるが、長く保てられない。
スナイプは全神経を使ってただひたすら堪える。
両腕から、背中から、膝から、肩から、腹部から伝わる鈍痛が引っ切り無しに来る所為で体の感覚が可笑しく成って来た頃合いに、攻撃が止んだ。高速移動のインターバルに入ったらしい。
姿が見えるハイドラグーンを目にしながら肩で息をするスナイプ。思わず力んだ力が抜けて膝が崩れそうになる、実際の時間よりも長く感じた体感時間、スーツの下は恐らく青痣だらけだろう。
だが勝利への布石はたった。後はそれを成功させるだけだ。
「フゥ……来いやぁ!!」
「……。」
防御の構えを解いて両腕のキャノンを構えるスナイプ。それを固唾を飲んで見守るゲンム。
ハイドラグーンはコレで勝負を決めるつもりでスナイプの前から、姿を消した。
「ッ──ラアァァァッ!!!」
スナイプがハイドラグーンの高速移動したと同時に砲撃を放つ。狙ったのはハイドラグーン──では無く、両サイドに建てられているビル。
ビルに着弾し、割れたガラスの欠片が重力に沿って落ちていく。
スナイプは宙に舞っているガラスの欠片に目を配る。そして見つけた。
スナイプの周囲をガラスの欠片が雨の様に落ちていくなかで、”一筋の道の様に出来た空間”を。
「────そこかァ!!」
背後に振り返りキャノンを構える。スナイプに向かう”空間の先頭”に向かって。
ーガガガガガァァンッ!!!ー
砲弾が直撃し何も無い所が爆発した直後、火に包まれたハイドラグーンが姿を現した。
スナイプは動きが止まったハイドラグーンに集中砲火を浴びせる。これまで受けたダメージを倍にして返す為に。
「ウラァアアアッッ!!!!」
全ての砲門を使っての最大火力。流石のハイドラグーンもタダでは済まず、鎧の如き外骨格に亀裂が奔り四枚の羽はボロボロになりまともに飛ぶことが出来ない位悲惨な状態だ。
<< ガッチョーン!──キメワザ!──ガッチャーン! >>
「コレで終いだ!」
両腕のキャノンを合わせて船頭の形となり、二つの砲門にガシャットからエネルギーが蓄積されていく。
左目のマーカーがハイドラグーンをロック、危険値を表す警告音を鳴らしながら構えた船頭の砲門には限界値までエネルギーが籠められていた。
<< BANGBANG CRITICAL FIRE! >>
「ッ──ハァッ!!」
二つの砲門から放たれたチャージショット。スナイプの一撃はハイドラグーンの胴体を撃ち抜き、頭と先の無い両腕を残し、爆散していった。
<< MISSION COMPLETE!>>
<< GAME CLEAR! >>
スナイプの手元に落ちて来たガシャット、龍騎のレジェンドライダーガシャットを手に取ると変身を解除する。
<< ガッチョーン!──ガッシューン >>
変身が解けと同時にゲームエリアが解け林の中へ。手を握ったり開いたりして様子を見ている悠の元に同じく変身を解除した神太郎が声を掛ける。
「反動は?」
「…特に、最初はちょっとキツイ、ってカンジだけど馴れた。」
「あのサンドバック状態になってた所為かな?にしてもあのバグスターの行動パターンを読む為によくあんな馬鹿げた事を平気でするもんだよ…。お父さんキミの将来が本当に心配。」
「誰がお父さんだコラ…まぁ、ちゃんと成果としてこうして生きてんだし、結果オーライとしとこうや。」
「………。」
「…あ、でもさっきのはゼノヴィアに言うなよ。ダメージは喰らったけどサンドバックのハナシは無しで。」
「えぇ?なんでまたそんな。」
「いいから上手く口合わせろ、得意だろそういうの。」
「ほぉ?何を上手く口を合わせろと?」
「「あ。」」
第三者の声がした方へ振り返ると、腕組みをしたゼノヴィアが悠に厳しい視線を向けていた。
「地形が元に戻ったから終わったと思って来てみれば…さっきの話しはどういう事だ?」
「いやぁ、ねぇ?…ほら、ちょっとダメージ喰らっちゃったから、ご褒美逃したくなくて、ね。」
「ほぉ、そうか…だったら!」
「え、ちょ、なに!?何やってのキミ!ちょっと!!」
「えぇいッ!いいから大人しくしろ!!」
「コラッ!こんな所で野外プレイなんて、お父さん認めません!!ちゃんとベッドの上でしなさい!!」
「ふざけてねえで止めろやこのアホ上司!!…あ。」
「ッ!……なんだコレは?」
悠のシャツに手を掛け強引にまくり上げたゼノヴィアはその体を見て言葉を見失う。
どれ程厳しい戦いをしていたのかを物語る様に、肌色が真っ青な青痣だらけ。常人なら動くだけでもかなり辛いと思える痛々しい光景だ。
誰もが青ざめてしまいそうな体を前にゼノヴィアは如何にも怒っているという視線を悠に飛ばす。
「…これを黙っていようとしたのか?」
「…まぁね。タダの打ち身だしってァイッダァ!?!?」
この状況下でも誤魔化そうとする悠にゼノヴィアは曝け出した腹部を指で突くと、案の定悶絶する。
「ふおぉぉぉ…ッ!」
「はぁ、キミは全く分かってくれない!全然分かってくれない!!!」
「……。」
「…でも、ちゃんと生きて帰って来るのを見て許してしまう私も私なんだな。」
「……ハハ、ゴメン。」
苦笑いをしながら顔を上げる悠。そんな彼を見てゼノヴィアは険しい顔つきから一変、穏やかな笑顔を見せた。
「あぁでも、この事はラ・フォリアは夏音には言わせて貰うから、精々お叱りをしっかり受ける事だな。」
「…………え?」
「ハハハ、尻に敷かれるのは大変だねぇ。」
「言っときますけど、止めなかったお義父様も同罪ですから。」
「………え?」
同時刻、悠達から少し離れた場所ではハイドラグーンとの戦闘で意識を失った蓮司とハルナが木を背もたれに未だ目を覚ましていなかった。
そんな二人、否、ハルナに向かって覚束ない足取りで近づいて行く影があった。
「おっぱい……おっぱいが見たい、つつきたい!揉みたい!!」
先程悠が気絶させた一誠が眠っているハルナの胸を好き放題すべく邪な欲望を向けていた。
一誠のゲーム病は既に治り消滅する恐れはもう無くなったのだが、当の本人はそんな情報を知らず死の絶望感と欲に胸が一杯で自身の体の変化などに全く気付いていなかった。
「ハァハァ………ど、どうせ死ぬんだ…だったら、おっぱい揉む以外の事も、しても、いいよな…?」
最早自制心と言うものが存在しない一誠。ワナワナと振るわせる手を伸ばし、ハルナの着ているYシャツに手を掛けた。
「───キモッ。」
ーガッ!ー
「ッ!?ィ、ガァァアアアッ!?!?!?」
腕が潰されかねない位の握力に一誠が溜まらず悲鳴を上げた。自身の手首を掴む細い手が、万力以上の力で握りつぶしている。
一誠の手首を締め上げている張本人、瞳が赤くなったハルナは汚いモノをみるかのような視線を一誠に向ける。
「あ~~、ホンット最悪! やっと出て来られるまで来たって時にこんなスケベが目の前に居るとか…こ~んな手は、えいっ。」
ーゴキャッ!ー
「ギャアァアァアアアーーーーッ!!!手が、手がァアアアッ!?」
「もう、うっさい…飛んでけ。」
「ぶはッ!?」
一誠の手首を折ったハルナは痛みで悶絶する一誠を煩わしく思い、鼻っ柱に蹴りを入れた。蹴られた一誠は背後の気に頭をぶつけ気を失う。
木にへたり込み鼻の骨も折れた一誠を前に、背を伸ばして体のあちこちの様子を確かめる。
「う~ん、やっぱ意志があって動かすのとそうじゃないのって大分違うのねぇ、不思議な感覚…ああでもやっぱさっきのはすっごくイヤ!!あの不快感だけでもう外に出れそう!!
…どうせ触られるなら…。」
ハルナは何を思ってか傍で未だ気を失っている蓮司の元に近寄り、その顔をずいと近づけまじまじと眺めた。
「…うん。ちょっと怖いけどやっぱこっちが好みかなぁ、さっきの二人位イチャイチャまでとは言わないけど…なんだかんだ言ってこの子も気になっているし。」
そう言いながら指で頬をつつくハルナの耳に、此方に近づいて来る足音が複数入り不満げな表情になる。
「あー、今日はここまでかぁ。でもいい具合に培養して来ているし、この調子ならあともう少し…その時はうんと楽しませてね♪」
蓮司の鼻を指先でつんと触れた後、ハルナは糸が切れた様に意識を失い蓮司の胸に寄りかかった。
そんな事があったと知らずにやって来た悠達は、目の前の光景に怪訝な顔を隠せずにいられなかった。
「……どうなってんだこりゃ?」
「わ、分からない。私が此処を離れた時は何も…。」
「うっわ。ヒドいな左手首と鼻が折れてるよ…。」
神太郎が気絶している一誠の容体を確認してるなか悠は蓮司の胸に頭を乗せて気絶しているハルナに目をやった。
(まさか……早いとこアイツに何が起きてるか突き止めなくては。)
この惨状の原因に目星を付けた悠は一先ず目先の問題を片付けるべく、一誠の容体を見ている神太郎に話し掛けた。
「よぉ。俺から取り上げたメモリーメモリ、使い時だ。返せ。」
「え~?」
「可愛い子ぶってもキモいだけだからさっさと渡せ。
これまではバレた相手が良かっただけで、コイツはダメだ。絶対後々になって面倒事を持ってくる。そうなる前に処理すべきだ。」
「う~~ん…。」
神太郎は顎に手をやり深く考え込むと、観念したのか懐から一本のガイアメモリ、メモリーメモリを悠に差し出す。
「キミの判断は間違ってるとは言わないが、くれぐれも程々の領域にしておいてくれよ?」
「俺がそんなヘマすると思うか?俺は何時だって…。」
メモリーメモリを受け取った悠は、更にライアーメモリ、ロストドライバーを取り出す。
「徹底的に且つ合理的に物事を進めるタイプだ。」
翌日。悠は頭を抑え項垂れてるハルナを隣に学園への登校中だった。
あの後ハルナと蓮司は同時に目を覚まし、ハルナは起きて眼前に蓮司の顔が近くにあった事と体を密着させた事に頭がショートして再び気絶。蓮司はただ何故こうなった?と言わんばかりの目を悠達に向けただけだ。
「まだ気にしてるの? どんだけ初心なんですかオタク?」
「るっさい!こちらとら異性とあんな密着した事無いのよ!!アンタと違って清純なのよ!!」
「それ俺が汚れてるって言いたいの?…まぁそうですけど。」
「あ…ゴメン、そういうつもりで言ったんじゃなくて…。」
「あぁ良いよそういうハナシは。一々気にしても仕方ないし、事実だし。」
「…分かったわよ。」
本人は気にもしてない様子だが悪くなった空気を変える為にハルナは別の話題に切り替える。
「そういえばあの後兵藤に暗示掛けたのよね、どんな風に誤魔化したの?」
「あぁそれな、記憶を消してそれから…お、噂をすれば丁度。」
悠が指差した方へ目をやると、左腕にギプスと鼻にガーゼを貼った一誠が友人である元浜と松田に何かを渡している場面であった。
「おまッ!、イッセーこれ、本当に貰っても良いのかよ?」
「これってお前が自慢してたお宝級のエロ本とAVじゃねーか!どういう風の吹き回しだよ!?」
「良いんだ。オレ決めたんだよ。これからはオレが部長を守って支えてあげられる位に強くならなきゃって!
だからコレはオレなりのケジメなんだ。今までの自分と決別して、これから強くなる為に鍛えなきゃいけないし。」
「「イッセー、お前…!」」
「んじゃオレこれで、部長とオカ研で会う約束してるから!じゃあな!!」
一誠は鼻に貼ったガーゼが気にならない位の曇りも無い笑みを向けて二人の前から走り去っていった。一誠の熱意に当てられたのか、元浜と松田は心から応援してあげようとその背中を見送ったのだった。
「……何アレ?」
「見たとおりだ。」
「いや、見て分かんないから説明を求めているのだけど?」
「説明する程でも無いと思うのだが…俺達にとって都合の悪い記憶を消して、ライアーで暗示を掛けたんだよ。
性欲撒き散らす煩悩から、一途に思う好青年の心に変えたのさ。赤髪のアフターケアも兼ねてな。」
「リアス部長の?」
「不可抗力だったとはいえ発症させたのは俺だからな。そん時の記憶も消してやったよ。
コッチが作ってやった偽りの展開だが、アイツがなにより望んでいた愛欲を提供してやったって事で、今回はチャラ、って事でお終い。」
「…偽り、か…真実より嘘が幸せって、皮肉というか複雑。」
「そんなもんだよ、俺等がいるコッチ側の世界はな。裏があって表が成立してんのさ。」
「……。」
ハルナは悠の言葉を聞いた後、それ以降口が開く事は無かった。
自分の立っている場所が改めて一筋縄ではいかない未知に立っているのだと、実感を胸に刻んで。
「「エゲツねぇ…。」」
「んだよそのドン引き、俺はこの学校の風記改善に無償で貢献したんだぞ?」
昼休み、悠は古城とキンジと共にいつもの自販機前で今朝の事を会話の種として話し結果、悠の所業に引いたリアクションを送る二人であった。
「いやいや、無償とか言ってる時点で誠実さに欠けてるだろソレ。」
「それにお前の事だから他にも何か仕込んでいそうだし。」
「お、良く分かったな。」
「「仕込んだのかよ!?」」
キンジの不意に放った言葉を肯定する悠に二人は”やっぱコイツヤベェ”といった目を向けた。
「いやでもそんな死ぬ系のヤツじゃないぞ。ただ俺等に一切干渉とかしないように掛けただけ。きっちりマキシマムで掛けた暗示だから死ぬまで解けねえし。」
「…灰原。お前実は悪魔だったって言われても今更驚かないぞ。」
「失敬な、あんなのと一緒にしないでくんない?お前違って俺は純粋な人間ですよ…………まぁ一番怖い種族ってのが人間て言われてますけどねー。」ボソッ
「ん?何か言ったか?」
「いんやなんも。」
不意にボソっと呟いた言葉を古城が気にしたが悠はそれをはぐらかした。缶コーヒーを一気に飲み干す悠に、先程の言葉を近くにいたキンジが聞き取っていた。
(人間が怖い種族?…それってどういう意味だ?)
「どうしたよ遠山。またボーっとしちゃって。」
「あ、いやなんでも無い。」
「?……そう。」
ーカンッ!カンカン──コロコロー
「「「ん?」」」
突然の物音に三人の目が一斉に振り返る。
コロコロと転がるボール状の物体が三人の近くで止まると…。
ーバァアンッ!ー
「「「うおおおッ!?」」」
爆弾の様に辺り一面に怪しげなピンクのスモークが噴出され、三人はスモークに包み込まれていった。
やがてスモークが次第に晴れていくと、盛大にむせている三人の姿が見えて来た。
「ゲホゲホッ!な、んだよ!ゴホッ!───ッ!?」
「敵襲、か!?おい二人共大丈──ッ!?!?」
「ゴッホゲホッ!!くっそ喉がイテぇ──ッ!?!?!?」
三人が咳き込みながら互いの姿を見るや、目を見開いて幽霊でも見ているかのような顔をしている。
正確には古城が悠を、キンジが古城を、悠がキンジを。その後三人は自らの服装も確認したり窓ガラスに写った自分の顔を見て、現実を受け止められないと言った空気となった。
そんな沈黙が暫く続いた後、打ち破ったのは古城であった。
「……なぁ、取りあえず状況整理するための一環としてよぉ…自分の名前、言わね?」
「……そ、そうだな。」
「…おう。」
「……灰原 悠です。」
手を挙げて嘘偽りなく言う古城。
「あ、暁 古城だ。」
苦笑いしながら言うキンジ。
「…遠山 キンジ。」
未だ困惑しながらも言う悠。
「……なぁ、これって仮説でも何でも無くさぁ…。」
「あぁ……確実に、アレだな…。」
「信じられないけど、そういうことなんだろうなぁ…。
「「「中身が入れ替わってるーーーーッ!?!?!?」」」
「ヤッベ…。」
三人が叫びを上げる中、それを影から見ていた人物はそそくさとその場を後にした。
ソウゴって歴史以外はてんでダメなのかな、ヒットの文字もカタカナだったし。
それと最近になってマイティノベルXがようやく手に入りました!エムにあんな過去があったなんて、今日のエグゼイド回も読んだ後だから大分見方が変わっちゃう位の内容でした。