その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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遂にフェーズ4、ブラックホールのヤベーイスペック見たけどもう勝てねえよコレ…。

内海も某神と化してマッドローグへ、次回はビルドの最終フォームであるジーニアスの登場。見た目アレだがどれほど強いのか気になりますね。


使命

 

 

 

桜井 ハルナ。

享年26歳、今世17歳。前世は両親を亡くし弟と二人三脚の生活を歩んだのもあってそれほど優雅な生活とはかけ離れた人生であった為に、今彼女が目の当たりにしているシチュエーションで無意識に肩に力が入ってしまってた。

 

木造のテラス席。目に入る光景は青い空。白い砂浜によって海の鮮やかさ色彩が際立っている。

そして自分の対面には腕を組んで目を閉じている長髪の美男子。端から見れば若い男女のデート風景とも言えるが、実際は仕事の為に行動を共にし、今は昼休憩をしているだけ。 

 

本人は心の内では仕事だと強く主張しても端から見ればただのデート風景。だが当の本人は未だコミュニケーションが取れていない人物と組まされてどう接すればいいのか未だ掴めていないのである。

 

(どうしよ、全然何話せばいいのか分からない。適当に話しても一言で済ませちゃうし、何か興味のありそうな話題は…。)

 

心の内でそう唱えながら思い浮かぶのは剣術と悪い意味で悠だけ。前者は自分にとって全く関係ないし、後者の話しを切り出したらこの場の空気が悪くなるのは目に見えていた。

 

(…うん。ダメだこれ。完璧に人選ミスよ…。)

 

 

「お、お待たせしましたー。」

 

内心ギプアップ宣言かましたハルナ。そんな時に店のウェイトレスが二人の元へやって来た。

 

「こちらランチBセットの方…。」

 

「あ、それ私。」

 

「後は全部オレだ。」 

 

「え…あ、ハイ。では…。」

 

ハルナの前にパスタとサラダ、スープなどが並べられると、ウェイトレスが若干引き気味に蓮司の前に料理が並べられた。 

 

「こちらロコモコ、マグロとアボカドのポギ丼、ビーフステーキにチキンソテーとシュリンプサラダ、オックステールスープ、アサイーボウル…以上で?」

 

「あぁ。」

 

「ではごゆっくりどうぞ。」

 

去って行くウェイトレスを横目で見た後、手を合わせて”いただきます”といいスプーンを手にロコモコを口にする蓮司。

 

余談であるが蓮司も秋程とはいかないが良く食べる。昼休みに教室で四段の重箱を広げ平らげる光景は当初クラスメイトから異質な目で見られたが、ハルナは身内にそれ以上食べる光景を見ていた為に差ほど驚きはしなかった。

 

「…相変わらず良く食べるのね。」

 

「んッ……この位喰わんと体がもたん。体を造ってく上でもな。」

 

「ふーん。男の子ってやっぱそういうものなのね。」

 

「オレ達がやっている事なら尚更だ……むしろ…。」

 

「ん?」

 

「その細身でどうしてあそこまでの怪力が出せるのか気になってしょうがないんだが…見た限りそれと言った体造りはしてないみたいだが…。」

 

(お?これは思わぬチャンスが。)

 

自分とハルナの前に並んでる料理を見比べる蓮司の反応を見て、初めてまともな会話が出来ると見たハルナは蓮司の疑問に答える事にした。

 

「まぁコレについては他の神様から貰った特典としか…私はチャクラってエネルギーで体を強化してるの。治癒に使ってる力もソレよ。」

 

「そうか…ならオレには習得出来ない、という事か。」

 

「彩守君が、チャクラを?」

 

「あぁ。前にお前があの女たらしの人格破綻者を殴り飛ばしたのを見てアレをモノにすればと思っていたが……すまない、食事中に言う事では無いな。」

 

そう言い、ステーキを綺麗に切り分けて口に運ぶ蓮司はそれ以降喋らなかった。

 

ハルナはパスタを口にしながら、あの時、蓮司が言葉として放った悠をそこまで恨む理由…。

 

 

──オレにとって大事な…仲間を……師匠を…祖父を!…アイツの所為で皆死んだんだ!!─

 

 

あの時、蓮司が吐き出した衝撃的な言葉の真相。あの日以降悠を見る目に多少の疑惑を抱き始めたハルナにとってこの修学旅行はその真相を聞き出す絶好のチャンスでもある。

 

自分がやろうとしているのは裏切りに近いモノだが、ハルナは蓮司の事同様に悠の事について全てを知っている訳でも無い。だからこそ知りたいのだ。これから共に戦う仲間として、彼等を信頼する為にも。

 

目の前でポギ丼をかっ込む蓮司を前に、どう切り出すべきか考えながらスープを口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、ショッピングモール内。

 

 

「──うわー!すっごーい!広ーい!」

 

「おい犬。外とは言えうるさいぞ。」

 

「まぁはしゃぐのも無理ないよ。今回の修学旅行稀に無いケースだからさ。」

 

パーク内のショッピングモールで風間ファミリー達は周りの壮観な光景を前に年相応のはしゃぎ様であった。

 

だがそんな明るいグループ内の内一人だけ浮かない顔の少女がいた。

 

 

「………はぁ。」

 

「……浮かない顔ねゼノヴィア。」 

 

「あ…すまない。」

 

「いいよ。アナタのその気持ち凄く分かる。こういうイベントは好きな人と一緒に周りたいモノね。」

 

「あぁ…。」

 

「でも埋め合わせはするって船が出る前に言ってたんでしょ?だからワン子だっていつも通りに元気になってるんだし。」

 

「それはそうだが…何というか、分かってても未練がましい自分に嫌気が差してるというか…。」

 

「もう! だったら尚更楽しんで気分変えなきゃ。灰原に言っちゃうよ?ゼノヴィアがアンタの所為で終始つまらない顔してたって。」 

 

「ッ!…そ、それは…。」

 

「おーい! ゼノヴィアと京も早くおいでよー!」

 

「ほら、呼ばれてるよ。向こうは灰原の分まで楽しもうってつもりみたいだし。」

 

「…そう、だな。折角の旅行をウジウジと過ごしても、勿体ないな。」

 

京の励ましにより気持ちの切り替えが出来たゼノヴィアは前に居る一子達の元へ。

 

全力で楽しむ事を決意したゼノヴィアに釣られてファミリーのメンバーも士気が高まり、モール内に彼等の笑い声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

そんな彼等を歪な笑みで狙いを付けた男が見下ろしてる事に気付かず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃のハルナ達は、以外にも会話が弾んでいた。 

 

「え、彩守君、日本舞踊なんてやってたの!?」

 

「あぁ…そんなに意外か?」

 

「正直言って。だって彩守君根っから剣術一筋ってカンジだし。」

 

「…まぁそう思われても仕方ないか。」

 

「でもこれで納得したわ。だから初見でドレミファビートを使えたのね。」

 

「あの程度の音なら自然と合わせられる。今を思えばゲンムもそれを踏まえて渡して来たんだろうな。」

 

食後のコーヒーを飲みながらハルナはどうにか蓮司が乗ってくれそうな話しを切り出した結果、見事に会話を成立する事が出来た。

 

以外にも思っていたより会話が出来る蓮司の意外性にも呆気を取られるなか、予想外にも蓮司の方からハルナに話し掛けてきた。

 

 

「…一つ、個人的に気になる事があるのだが。」

 

「へ…わ、私に?」

 

「あぁ。」

 

思い掛けない事態に動揺をしてしまうハルナを前に、蓮司はハルナに対する疑問を口にした。

 

「お前が…桜井が命の危機を犯してまで戦う理由は、なんだ?」

 

「戦う、理由…?」

 

「オレはあの男と外道の転生者を斬る他に、一つの誓いを立ててこの戦いに身を投じた。どれ程の修羅が待ち構えていようとな。

お前の話しはゲンムから聞いたが、オレは正直に言って桜井が命を懸けてこの戦いに加わる必要は無いと思う。」

 

「ッ…でも!私はあのゲームに勝った!その事については彩守君だって…!」

 

「あぁ。お前が勝った以上オレは桜井のやる事に口を出す権利は無い………だからこそ不安なんだ。お前が。」

 

「不安?」 

 

「あぁ。お前が…。」

 

「?…どうしたの?」

 

「……すまない。この話しは忘れてくれ。そろそろ行くぞ。」

 

「え、ちょ、待ってよ!!」

 

突如として口を紡いだ蓮司は伝票を手に席を立った。ハルナは一番重要な所で話しを切られて納得がいっておらず後を追い掛けて蓮司に詰め寄るも、そこから先は一切喋ってくれなかった。

 

「ねぇ!さっきの話しって結局何を伝えたかったの!?ねぇ!!」

 

「忘れろ………むしろしてはいけない話だった。だから聞かない方が良い。」

 

「理由になってないよ!私に何が足らないって言うの!?」

 

「…………。」

 

「彩守君!!」

 

どれだけ強く言っても一向に口を開かない蓮司に、ハルナは前に立ち塞がって睨み付けるも、当の本人の顔色は一向に変わらない。

 

苛立ちが募りつつあるハルナ。だがその怒りは爆発する前にクラクションを鳴らしながら二人の間に入って来たカラフルコマーシャルによって遮られた。

 

「コマーシャル?どうしたのよ急に…。」

 

「…ッ! 早速お出ましと言う訳か…!」

 

「え?……ッ! まさか…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーギィィンッ!ー

 

ショッピングモール内に、剣が交じり合う金属音が響く。

 

自身の持つ剣から散る火花と剣戟と共に発せられる狂気に満ちた笑い声に、ゼノヴィアは苦戦を強いられていた。

 

後ろでは武器を持っていないクリス達が加勢に加わろうとするのを一子と大和とモロが抑えているのを気にしながら目の前の男を抑えるのは彼女にとって厳しい状況だった。

 

(これは少々厳しいな…ッ!)

 

「シェァァアアッ!!」

 

「くッ!!」

 

眼前に迫った二振りの凶刃をデュランダルで受け止める。

 

以前戦った時とは段違いの剣を振るう男が顔を近づけて来た。

 

 

 

「ちょっとちょっとぉ~ん!余所見は厳禁よぉ~ん? 元教会のビッチ様よぉ!!」 

 

「化け物に変わっても汚い口はそのまま、いや、一層醜くなったな!フリード!!」

 

「ヒャハハ!生まれ変わったボクちんの嫉妬ぉ?ならもっと見せ付けちゃう!!」

 

突如として襲撃を仕掛けてきたのはアベルの下についたフリード。フリードは鍔迫り合いをしているゼノヴィアを腕力で弾いた後、懐に手を入れて取り出したのは。

 

 

<< MAGIC THE WIZARD >>

 

「培ッ、養ッ! ンァーーーッ!!!」

 

取り出したガシャットを起動させて自身に突き刺し、進化体グレムリンへと姿を変えた。

 

 

「ッ、あれが悠の言っていた……マズイな。」

 

ゼノヴィアは修学旅行に出る前に悠に聞かされていたバグスター、進化体グレムリンの厄介な点。通常攻撃は一切効かないというワードが頭の中に駆け廻り冷や汗を流す。

 

加えて後ろには大和達が居る状況。一人で逃げるのに徹するとしても、大勢を連れて無傷で逃げ切れる保証などどこにも無い。

 

「さぁ~て、アベルの兄ちゃんから言われたお仕事がありますしィ、こっからは楽しい楽しいギッチョンタイムといきやしょうかぁ!!」

 

「仕事?…貴様一体何を企んでいる!?」

 

「お前がバラバラになったら教えてやんよぉオォォッ!!!」

 

ラプチャーの刃を交じり合わせて不快な金属音を鳴らせながらグレムリンはゼノヴィアへ向かって駆けだしていく。

 

驚異的な瞬発力から折り出されるスピードで詰めよって来たグレムリンに反応が遅れるゼノヴィアを前に、ラプチャーが振り下ろされようとした時、二人を巨大な影が覆った。

 

「んぇ?──ぶふぉおッ!?」

 

巨大な腕がグレムリンを殴り飛ばし、吹き飛んでいく様を見送った後眼前に居るゼノヴィアへ視線をやった。

 

 

「状況を確認…戦闘による負傷は皆無と確認。」

 

「キミは、南宮先生の…。」

 

寸前の所でゼノヴィアを危機を救ったのは眷獣を出したアスタルテだった。

 

その後その巨体の影に隠れて同伴していたロスヴァイセが顔を出してゼノヴィアへ安否の確認をする。

 

「大丈夫ですかゼノヴィアさん!怪我はしてないですか!?」

 

「ハイ。私は平気です。後ろの皆も大丈夫です。」

 

「よかったぁ、生徒が襲われたって聞いたものですからもう大慌てで!」

 

ホッと胸を撫で下ろすロスヴァイセ。その次の瞬間、吹き飛ばされたグレムリンが近くにあったベンチを蹴り飛ばして来たが、アスタルテが腕を出して二人を守った。

 

「かぁ~!、やってくれましたねぇこんチキショウめが!!ま、全ッ然痛くないんですけどぉ!」

 

「警告。速やかに武器を手放し投降する事を推称。さもなければ実力を行使。」

 

「はぁ~? 言ってくれるねぇお人形ちゃんよぉ……武器を放す、ねぇ?」

 

そう言いながらグレムリンはラプチャーを弄びながら、含みのある声でアスタルテとロスヴァイセに警戒心煽らせる。

 

「えぇいいですよぉ、武器を放しましょう……アイツ等になぁ!!」

 

「ッ!?」

 

「しまったッ!!」

 

両手のラプチャーを勢い良く投げた先には、後ろで離れていた大和達が立ちすくんでいた。

 

二人の不意を突いて放たれたラプチャーは、ブーメランの如く風間ファミリーの面々を切り刻まんと意志を持っている様に向かっていく。

 

「貴様ッ!!」

 

「ヒャーッハッハ!!恨むならそこのお人形ちゃんを恨めやぁ!!」

 

してやったりの思いで高笑いをするグレムリンの凶刃がファミリーに襲い掛かる寸前だった。

 

 

高速移動で彼等の前に出て来た騎士が現れたのは。

 

 

<< コ・チーン! >>

 

 

城壁の如くファミリーの面々の前に氷が張られラプチャーを弾き返す。

 

駆け付けて来たブレイブは一瞬の内に起こった出来事に追いつかず呆然としている風間ファミリーへ目をやった。

 

 

「……は?…え、仮面、ライダー…?」

 

「動けるのなら早く行け。ここはもう戦場だ。」

 

「かぁーーッ! イイとこで邪魔してくれちゃってぇ!先にオメェからぶった切ってやんよ!!」

 

「やってみろ───ハァッ!」

 

ブレイブはラプチャーを手に向かって来たグレムリンに肉薄してガシャコンソードを振るう。 

 

目の前で行われる死闘に目を奪われるファミリーの元へ、ハルナが駆けつけた。

 

「ちょっとアナタ達! 何ボサっと此処に突っ立ってんの!?早いトコここから逃げるわよ!!」

 

「…ハッ! そ、そうだよ皆!!あの怪物はあ…仮面ライダーに任せて逃げよう!!」

 

「ワン子?…。」

 

ハルナと事情を知っている一子が率先して避難しようとする姿に僅かな違和感を感じる大和だが、目の前で繰り広げられている仮面ライダーと怪人の激しい戦闘を前に、いつもの決闘の比で無い事を見ると大和もファミリーへ声を掛けた。

 

「皆! 何がなんだかオレも分かんないけど今此処に居るのはマズイ!だから逃げよう!!」

 

「うん!賛成!!ボクも早くここから逃げたい!!」

 

「大和が言うなら!」

 

「くッ、やむを得ないか!」

 

 

賛同した風間ファミリーが踵を返して走り出す光景を、グレムリンは許さなかった。ブレイブの剣戟を受け止めつつ、懐から魔石を取り出す。

 

「ダメダメ! トンズラは許さねぇ、よ!!」

 

放り投げた魔石は大和達の進行方向へ落ちると、魔石が人の形を作りだしやがてグールとなって大和達の道を阻む。

 

「貴様…!」

 

「ハッハッハァ~! どうせならギャラリーが居た方が盛り上がるっしょ?」

 

「…ッ、まさかあの中に…!」

 

「ん~?何の事かなぁ?」

 

「クッ!…(あの状況じゃ桜井は変身出来ない。オレが行くにもコイツが許してはくれない!)」

 

ブレイブがこの状況を踏破する為に思考を練るが、襲い掛かってくるグレムリンを前に解決策が思い浮かばない。そうしてる間にも、グール達は大和達を追い詰めていく。

 

ハルナは庇うように彼等の前に立つが、変身しようにも彼等の目があって出来ずにハルナの胸の内である種の葛藤が起きていた。

 

 

賭けに近い形でこのまま戦うか、それとも彼等の前で変身するか。

 

 

ハルナの素の実力は神太郎を除けばチーム内で一番下だ。純粋なパワーがあったとしても下級の怪人数体を相手に後ろの大和達を守れるか。

 

(どうする?、どうする!? 変身すれば簡単に倒せるけど正体が!…でもちゃんと話せば川神さん達の様に分かってもらえるかも…でもだからって悪戯に正体を明かすのも…!)

 

 

「こんの野郎!こうなったらここはオレ様の筋肉でぶっ潰してやる!」

 

「よっしゃ!オレも乗ったぜガクト!」

 

「私もだ!ここで逃げたら武士の名折れだからな!」

 

「ッ、ダメよ!アナタ達は早く逃げて…!」

 

「オイオイ心配すんなって!見てな、オレ様の筋肉が織り成す活躍を!」

 

「そういう事だから下がっときなって! なぁに大丈夫だ!オレ達ファミリーなら乗り越えられる!」

 

「待ってよキャップ!相手は人じゃ無くてバケモノなんだよ!? 危険だよ!!」

 

「どうした犬?やけに弱腰だな…まぁいい、戦わないのならそこで見ていろ!」

 

「クリ!」

 

ハルナを押し退けて前に出始めるファミリーの面々。一子も止めに入るが、それでも聞く耳を貸さない。

 

自身が迷っている内に状況が悪化して行く事に、ハルナは焦燥感が募る。

 

(どうする!? 今出ていっても彼等が素直に引いてくれるとは限らない、やっぱり変身するしか……でも!)

 

「よっしゃ!行くぜオメェ等ァア!!」

 

「「オウ!!」」

 

 

(ッ……こうなったら…!)

 

 

ハルナが意を決してドライバーを取り出そうと懐に手を入れた。時だった。

 

またしても彼等の前に巨大な影が覆ったのは。

 

 

「執行、”薔薇の指先”──。」

 

 

「ッ!!」

 

間に入って来たアスタルテが風間ファミリーの前に立ち、グール達を薙ぎ倒していく。

 

その巨体を活かし瞬く間に倒していくアスタルテを前にファリミー達は前に出るのを止めてしまう。

 

「南宮教官の修学旅行中学園生徒の監督・警護の命令遂行の為、実力行使に入ります。

ですので貴方達は下がってください。」

 

那月から与えられた使命を果たす為に武力を振るうアスタルテ。それをグレムリンはブレイブの剣戟を躱しながら見ていた。

 

「ありゃ、邪魔されちゃった。」

 

「残念だったな、狙いが外れて!」

 

「ん~、まぁしょうがない。こうなりゃオレッちが頑張るしかないっか!」

 

「それをさせるとでも?」

 

「しちゃうんだよんッ!」

 

「ッ!!」

 

ブレイブの一振りを片方のラプチャーで受け止めた後、もう片方で弾くと蹴りを入れたグレムリン。

 

そこから二刀による連撃が繰り出される。ブレイブはそれをソードで受け止め、二刀の剣戟から繰り出される僅かな隙を見つけ出す。

 

(……そこだ!)

 

「ぬおッ!?」

 

 

上段から来る一振りを、ソードで薙ぎ払って胴体を曝け出したグレムリンに刺突を繰り出すブレイブ。

 

「やっべぇ!───なんちて♪」

 

「何ッ!?」

 

完璧に決まると思われたブレイブの攻撃は、能力である高速移動で躱される。

 

素早い動きでブレイブ翻弄し始め、死角を突いての攻撃を繰り出す等攻める勢いを徐々に増していった。

 

「くそ…!」

 

「ヒャハハハ!! そら喰らっときなぁ!!」

 

「ッ!────グアァアッ!!」

 

上空に跳び、そこから斬撃を飛ばして地上のブレイブへ振り下ろして行くグレムリン。

 

爆発が生じ爆炎に包まれるブレイブをグレムリンは高笑いを上げながら更に魔石を取り出す。

 

「ちょーっとお仕事してくっから、ソイツ等と遊んでてぇ!!」

 

「待て!──クソ、邪魔だ!!」

 

グレムリンはグール達の妨害を受けるブレイブを置いてハルナ達の元へ。

 

近づいて来るグレムリンに気付くアスタルテは向かって来るグレムリンを迎え撃とうとする。

 

「行かせない…!」

 

「ハッ! トロいんだよお人形ちゃぁん!!」

 

アスタルテが放った巨大な拳をグレムリンは身軽に躱して懐に入り、ラプチャーでアスタルテの眷獣、”薔薇の指先”に滅多切りに切り付ける。

 

 

「シャアッ!──ッ!」

 

「ッ~!!」

 

苦痛に顔を歪めるアスタルテをグレムリンは蹴り飛ばして転倒させ、踏みつけて動かない様に抑え込む。

 

そしてラプチャーに魔力を送り、狙いを風間ファミリーの面々に定める。

 

「よぉ~く見てなお人形ちゃん、大事な大事な生徒ちゃんが愉快に死んでく様をさぁ!!」

 

グレムリンはアスタルテに見せ付ける様に、ラプチャーから斬撃を放った。

 

 

 

「ッ! ダメェ!!」

 

ハルナは駆けだしながら最早迷いも見せずゲーマドライバーを取り出し身に着ける。続いてガシャットを取り出しそうとするもグレムリンの放った斬撃は既に大和達へと次第に迫る。

 

 

 

「皆ぁ!逃げろォ!!」

 

ロスヴァイセと共にグールに囲まれているゼノヴィアが叫ぶ。だがその叫びは無情にも爆発音に掻き消された。

 

 

 

 

声を上げる間も、何が起きたのか理解する間も無く爆炎に包まれていく風間ファミリー。

 

 

 

その光景を、ハルナは黙って見る事しか出来なかった。

 

 

「ぁ……。」

 

 

 

「ヒャハハハハハッ!!! あー!死んじゃった死んじゃった!!大事な命令をこなせず生徒が目の前で死んじゃいましたよー!?」

 

「きょ、教官……──ッ!? ぁ、ァアアアーーーッ!?」

 

「おぉキタキタァ!!」

 

 

グレムリンが感極まる程に燥いでるのと対に、アスタルテは普段無表情な顔が絶望に満ちた顔を見せた途端、苦しみ出した。オレンジのノイズを奔らせて。

 

 

「アレは! フッ!──感染者は襲ったあの中の誰かじゃ無く、ストレスを与える為に…!」

 

「そゆこと! アベルの兄ちゃんからの指示でさァ、こうした方が手っ取り早く発症できるって!オレ的にもウェルカムなオーダーだったから非ッ常にやりがいのあるお仕事だったぜェ?」

 

「ッ、この外道めが…!」

 

「ハハハッ! 褒め言葉どうも!! そうらこうしてる間にも新しいバケモノとのご対面だ!!」

 

そうグレムリンが指差した先にはノイズに包まれ繭の形をしたアスタルテだったのが、宙に浮かび、その姿を模っていく。

 

 

黒い体に赤いラインが奔り、頭部を中心に赤い花の様に周りに花弁を囲わせた特徴的な頭部。

 

ソイツが完全に実体化したと同時に放たれた衝撃波が、モール内の店のガラスを割り、地上に居るブレイブ達も余りの威力に後退りしてしまう程に強力なソレは、重力を操ってるかのようにゆっくりと地上へ降り立った。

 

 

『覚醒ヲ確認。全機関正常ニ作動。ガンマイザー、起動シマス。』

 

 

無機質な口調で誕生したバグスター、パーフェクト・ガンマイザーを前にしてブレイブは警戒心を最大にした。

 

(何だ、あの異様な佇まいは。これまでに見たバグスターとは何かが違う!…桜井は…。)

 

ブレイブがハルナの方へ目をやると、倒れている風間ファミリーの前で膝を着き俯いていた。一目で戦闘に参加できそうに見えず、仮面の下で顔が険しくなる。

 

(ここはオレ一人やるしか……?アレは…。)

 

 

ブレイブがドライバーのレバーへ手を掛けようとしたした直前、膝を着いてたハルナが俯きながらその足で立ち上がった。

 

たがそれよりブレイブが目に付いたのがその佇まい。ガンマイザーと同じくハルナの纏っている雰囲気がいつもと何処か違う事に気付く。

 

やがてその異様な雰囲気はブレイブ以外にも感じ取れる程に濃密なモノとなり。全員の目がハルナへと集まる。

 

 

 

『…分析終了。対象体内ノバグスターウイルスノ活性化ヲ確認。尚モ上昇中。』

 

 

 

「何ッ!?」

 

ガンマイザーから放たれた言葉にブレイブが驚くなか、俯いて顔を見せなかったハルナが顔を上げた。

 

その眼を赤く染めながらガンマイザーを見つめて。

 

「桜井、お前…!」

 

 

 

「…フ、フハハハッ!……やってるわよ。」

 

<< MIGHT ACTION X >>

 

<< DRAGO KNIGHT HUTER Z >>

 

 

「アンタはアタシが攻略してやる!!」

 

<< ガッシャット! >>

 

 

 

「ッ!? オイ桜井!!そのガシャットはまだ使うべきじゃない!!」

 

 

「大・大・大・大ッ・大変身ッ!!」

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

 

<< ──Mighty MIGHTY ACTION──X!──アガッチャ!── >>

<< ──DRAGO KNIGHT HUTER Z! >>

 

 

「ハァアアーーーッ!!」

 

 

ハルナはブレイブの静止を聞かず、フルドラゴンのハンターアクションゲーマーのエグゼイドへ変身してガンマイザーへ突っ込んでいく。

 

 

『対象ノ戦闘行動ヲ確認。迎撃シマス。』

 

向かって来るエグゼイドにガンマイザーは体から触手の様なモノを生やし、ソレをエグゼイドへ放つ。

 

エグゼイドは向かって来る触手をブレードで弾きながら距離を詰めていき、懐に入るとドラゴンガンで殴り付けた。

 

「デェエエイッ!!」

 

『ッ!』

 

胴に入り、ガンマイザーは少したじろいだが、すぐさま反撃に打って出る。ガンを弾き、至近距離でエネルギー波をエグゼイドへ放った。

 

「ウワァアァァッ!!」

 

「桜井! クソッ!!」

 

ブレイブはソードを氷剣モードにし、ガンマイザーの頭上を飛び越え正面に立つとソード地面に突き立て、氷でガンマイザーの動きを拘束する。

 

動けない隙にブレイブはエネルギー波で吹き飛ばされたエグゼイドの元まで駆け、強く叱責を飛ばした。

 

「一体何を考えてる!? 感染者とバグスターを切り離すのは、レベル1でなければ出来ないのは知っている筈だろう!!」

 

「それがなんだって言うのよ!?」

 

叱を飛ばすブレイブを押し退けて、エグゼイドは前に出ようとする。

 

「アタシはアイツを攻略したい!だから手っ取り早く倒せるガシャットを使ったまでよ!!」

 

「感染者の命はどうだっていいと言うのか!?」

 

「そんなの知った事じゃない!いいから退けェ!!」

 

「グァッ!!」

 

エグゼイドは尚も静止を呼び掛けるブレイブをブレードで攻撃してしまい、再度ガンマイザーへ攻撃を仕掛ける。

 

既に氷の拘束を解いたガンマイザーへガンで牽制しながら接近し、足のドラゴンクローで仕掛けるが、ガンマイザーから放たれたエネルギー波がエグゼイドを止め、追撃に触手による攻撃で吹き飛ばした。

 

「ウァッ!…グゥッ…!」

 

『…対象ノ脅威認定、脅威対象外ヘ変更。行動ヲ変更シ、最優先事項ヘト移リマス。』

 

 

 

「ッ…誰が、対象外ですってェ…?」

 

<< ガッシャット──キメワザ! >>

 

ガンマイザーから敵として見られなくなったエグゼイドは業を煮やしたのか、ホルダーにドラゴナイトハンターのガシャットを挿した。必殺技を繰り出して一気に倒す魂胆だ。

 

 

「アイツ!…止めろ!止めるんだ桜井!!」

 

「桜井さん止めて!!まだあの怪物の中にアスタルテさんが!!」

 

「オイ!!聞こえて無いのかハルナ!! 今すぐ止めるんだ!!」

 

ブレイブに加えてロスヴァイセとゼノヴィアも静止を呼び掛けるが一向に止める気配は無い。

 

エグゼイドの頭部と両腕にエネルギーが集まっていき、やがて最大値まで至った。

 

「喰らえぇェエエエッ!!!」

 

<< DRAGO KNIGHT CRITICAL STRIKE! >>

 

 

 

「ダメエエエエーーーーッ!!」

 

ロスヴァイセの悲鳴にも似た願いすらも通じず、エグゼイドは必殺技を放った

 






本編を描きながらも計画してる番外編がやっぱスピード遅い。
幾つもの作品を手掛けてる作者さんを思うと、良く出来るなぁってここ最近思いました。

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