その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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今週の一言

またやりやがったなスタァアアクッ!!


対決

 

 

 

灰原家・ガレージ地下ラボ。

 

 

 

「──えーっと。まぁ、なんと言うか…ようは、だ。

お前達は仮面ライダーで、この世界とは別の世界から異世界人で。」

 

「「うんうん。」」

 

「BABELって連中は異世界から来た侵略者的なヤツ等で、お前等はそれを防ぐために戦っていて…。」

 

「「うんうん。」」

 

「アリアは今新種のコンピューターウイルスに掛かっていて、それも異世界から来たヤツがばら蒔いたのをお前等が治していると…。」

 

「「うんうん。」」

 

「…………悪い。分かりやすく言ってくれたんだろうけど、全然話呑み込めねぇ…。」

 

「「でしょうねー。」」

 

 

最早抵抗が薄くなったのか、キンジをラボへ招き入れた悠達は、神太郎が考案したシナリオを混ぜつつキンジに事の説明を話していた。

 

いきなり過ぎる事実に頭を抱えるキンジ前に説明している悠と秋、その隣で傍観していた古城は何も言わず、キンジの整理が付くのを待つ事にする。

 

そして視線を、ローリングラビティで重さを倍にしながら正座させてる神太郎の前に立った。

 

「あの…そろそろコレ解いて貰っていいかな?

もう膝が痺れるを通り越して爆発しそうな勢いなんだが…。」

 

「桜井をみすみす戦地に行かせて? 尚且つあんな暴走起こす様なガシャット持たせて……オタク危機管理ってもんが欠けてんじゃねえの?」

 

「何ォッ!? 前者に関してぐぅの音も出ないが、後者に関して言わせてもらうなら私の作ったガシャットに不備は無い!!

あのガシャットは確かに強力故に暴走を引き起こしやすいが、強固な精神力を持ってすれば暴走など早々起こさんわぁ!!」

 

「…その言い振りだと、悪いのは自分じゃ無く暴走した桜井だと言いたいの?」

 

「その通ぉぉッりィッ!!! 私のガシャットは至高にして唯一無二の、「グラビティ。掛けてる重力5倍にして。」オオオオォオォォォオオオッッッ!?!?!?膝がァァアァアアアァアッッッ!!!!!」

 

背後で聞こえる悲痛な叫びを無視しながらこれからの出来事に頭を抱える悠。

 

神太郎の言い分は責任逃れの言い分だがハルナに非が無いと言えばそうでは無い。身の危険が十分あると言ったに関わらずエグゼイドに変身し場を乱したのは逃れようの無い失態を犯したのだ。

 

だが何時までも気落ちしている時間は無い。身を隠したオロチがまた何時動き出すか分からない今行動し無い訳にはいかない。

 

 

今灰原家の空き部屋に寝かせている感染者のアリア。オロチは彼女のストレスを増大させる標的に悠はアリアの身辺調査で大体分かった。後はその確信を得る為、悠は一通り整理の付いたキンジに話し掛ける。

 

 

「遠山。一つ、聞きたい事あるんだが、大丈夫か?」

 

「ん?おぉ大丈夫だ。何が聞きたいって?」

 

「…あのドチビが発症する前。何か話してなかったか?例えば…家族に繋がる話、とか。」

 

「家族……あ。」

 

悠の質問に対しキンジは心当たりがあった。

アリアに何を話していたのかと聞かれ自分は授業参観の事を話した。それからだ、アリアの顔が曇りかがってあの怪物が出て来たのは。

 

悠が「やはりか…。」と小さく呟いたの聞き逃さなかったのと、先程聞いたバグスターウイルスなるウイルスの特性を聞いてキンジはヒステリアスモードにならずとも全て分かってしまった。それによって生まれた感情を周りに悟られる前に悠が口を開いた。

 

 

「秋。」

 

「何?」

 

「俺はオロチの狙う標的の所に張り付く。桜井が起きて状況伝えたらお前も来い。あと、”もう二度と変身させねぇ”って伝えろ。」

 

「………了解。」

 

「暁、遠山。お前等はもう帰っていいよ。お前等は巻き込まれた被害者だし、ドチビはこっちで見ておくから。」

 

「え……灰原!オレは…!」

 

「遠山…お前がアイツのパートナーだろうと武偵だろうと、これは俺等の管轄だよ。

…お前に出来る事は、何も無い。」

 

「ッ…。」

 

「あのぉぉぉッ! わ、私はッ…?」

 

「暫くその姿勢で反省してろ。」

 

「そんなあぁぁぁあッ!!!」

 

悠は出かける支度を整え、デスクに置かれているドラゴナイトハンターZのガシャットと、ハルナが変身に使っている変身用のガシャット、マイティアクションXを懐に入れる。

 

階段を上がってガレージに入る悠の背中をラボに居た皆は黙って見送った。

 

 

「………。」

 

「…遠山、大丈夫か?」

 

「あぁ……アイツ、オレ達の知らない所ではいつもああだったんだな。」

 

「そうだよ。オレが来る前も悠兄さんはああやって誰も巻き込まないやり方でやってたんだよ。ぜーんぶ自分が背負うんだ、て意気込みで。

それはオレも同じだよ。だから…。」

 

秋が顔を見上げると、そこには治療を施したハルナがバツが悪そうな顔でラボに降りて来ていた。

 

 

 

 

「あ、足が、もう、限界…………ダレカ、タスケテェェ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠は闇夜の道をエクステンダーに跨り目的地を目指す。

 

やがて辿り着いた先は、高く強固な壁に囲われた監獄。女子刑務所から離れた場所でヘルメットを脱いだ。

 

「………何でテメェが居んだよ。」

 

「むしろ何故今になって来たと言い返してやる。」

 

悠が不快な視線を飛ばした先に居る人物。ベンチに座っている蓮司が自分より早くこの場に居た事を聞く。

 

「ゲンムのヤツに調査を頼んで感染者の情報からバグスターが狙う場所がここだと踏んだ。

…それよりも、先程からゲンムに連絡を取っても応答が無いのだがヤツなにをしてる?」

 

「重力を倍にした正座受けてるよ。桜井にガシャット使わせた罰としてな。」

 

「そうか……桜井の容体はどうなっているんだ?」

 

「へぇ……あの時俺等に押し付けた割には心配してんだ。

心配せずとも今の所は平気だ。もう変身もさせねぇからな。」

 

「それは…桜井のか。」

 

悠は隣に置いてあるベンチに腰掛け、取り出したマイティアクションXのガシャットを眺める。

 

「これが終わったらとことんお説教だ。要らねえ心配掛けさせた分のな。」

 

「そうか……時にお前、桜井が使っていたあのガシャット。使う気か?」

 

「現状それしか手はねぇだろ。オロチとまともにやり合えるのはレベル5のガシャットじゃなきゃな。」

 

「ならそのガシャットはオレが使う。オレなら暴走を起こさず力を制御し切れるだけの精神力はあるからな。」

 

「言うと思った…オレがすんなり渡すと思うのかよ。」

 

「思わんな。」

 

「即決だねぇ………んじゃ、これからする事も一択だよなぁ。」

 

「そうだな。言葉より此方が手っ取り早い。」

 

二人はベンチから同時に立ち上がり相対する。どちらの手にもゲーマドライバーを手にしながら。

 

 

「大事な本番を前に丁度練習したいと思ってた所なんだよねぇ。」

 

「貴様を斬るついでにガシャットも手に入れられる。一石二鳥だな。」

 

蓮司と悠がそれぞれのガシャットを構える。

 

 

「「───変身」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「って待て待て待てぇぇッ!!! 何やってんだお前等!?」

 

 

ガシャットの起動スイッチを入れようとする寸前、二人の間に入って来たキンジは二人から発せられる威圧に挟まれながらも必死の形相で二人を止める。

 

「何って、邪魔になりそうなヤツを片付けようとしただけだけど?

つかなんで此処に居るんだお前?」

 

「待ち伏せする場を掃除しようとしたまでだ。」

 

 

「こんな所で殺し合い始めようとすんな!仲間じゃねえのかお前等!?」

 

 

「「殺すぞ。」」

 

一瞬本気の殺気をその身で受けて腰が抜けそうになるが、これまでの命の危機の経験の賜物か寸での所で踏ん張った所で一呼吸入れ心を鎮める。

 

「フーッ…張り込みって言ってたから差し入れ持って来たんだよ。それと…オレも職業柄で張り込むの手を貸そうと思って。」

 

そう言いながら差し出した手には水や携帯食が入ったコンビニの袋を持っていた。

 

「帰れって言ったのに、お前ときたら…。」

 

「分かっているんだけど、どうジッとしていられなくてな…。

それに張り込みって結構体力勝負なんだ。お前等もこれから戦うのに休まずに着くのは結構キツイと思うぞ。」

 

「ふぅむ…。」

 

「…戦いの邪魔をしなければオレは構わん。もちろん、何かあった場合は自己責任でいう事にさせて貰うが。」

 

「構わない。灰原もそれで良いか?」

 

「……ハァ。良いよ。」

 

渋々了承した悠はベンチに座り、蓮司もベンチ一つ空けた所に座り静かにその時を待つ。

キンジは悠の座ってるベンチの方に腰掛け、悠に水を手渡し目の前の刑務所に目をやる。

 

その顔は浮かない表情であり、何処か思い詰めたようにも見える。悠はそんなキンジの顔を横目で見つつ、一息吐いてキンジにバッサリと物申した。

 

「遠山さぁ。別にお前が責任感負う必要なんて何処にも無いんだよ。」

 

「え…?」

 

「お前ドチビが発症起こしたのは自分の所為だと思ってんだろ?だからこうして此処に地味でやる必要の無い張り込みを手伝ってる。違うか?」

 

「………。」

 

悠の指摘に何も言えなくなるキンジ。

悠の言ってる事は全て当たってた。アリアが発症するきっかけになったストレス。彼女にとって一番のストレスは、壁の向こうに居る、冤罪を掛けられた実の母親。

 

授業参観の話しから母親の事に繋がってしまったと考えたら自然と胸の内に罪悪感が灯ってしまった。

 

沈黙は肯定と受け取った悠は、水を一口飲んだ後、背中が曲がってるキンジの背中を思い切り叩いた。

 

「痛ッでぇ!? 何すんだよ!?」

 

「お門違いな罪悪感吹っ飛ばしてやったんでしょうが、全く…。

あのドチビは随分前からウイルスに感染していたんだ。遅かれ早かれストレスさえ溜まればそのうち発症するモノなんだ、それが偶々今日だっただけ。」

 

「……。」

 

「それにな。責任云々ならお前よりあの剣バカにあるぞ。

俺等に面倒事押しつけて追い掛けたクセに逃がしてんだからよ。」

 

「ふん。自分の不甲斐無さを他人に責任を負わせてもみ消しか。つくづく底の浅い男だ。」

 

「お、オイ、お二人、さん?…。」

 

「はぁ?それ言ったらテメエだってそうだろ。 あんなに的デカいのに、ご自慢の剣ほとんど空振っちゃってんの!」

 

「そういう貴様こそ空を飛んでた割には大した活躍を見せていなかったな?むしろ盛大に堕ちていく様は見物だったぞ?」

 

「…やっぱ目障りだな。消すか。」

 

「…やはり粗大ゴミは片付けておくべきだな。」

 

「だぁーから止めろって!!つかオレ挟んで殺気飛ばすな!!すっげぇ息詰まりそうなんだよ!!」

 

「おい遠山。コッチは刑務所を張り込んでるんだぜ?そんな大声出すとバレて面倒だろ。」

 

「おまけに今は深夜だ。それ以上騒ぐと近所迷惑で最悪武偵の立場に影響を起こすぞ。」

 

「殺し合い始めようとするお前等が言うな!! てかなんでオレに注意する時だけ息合ってんだ!?」

 

 

キンジの心を蝕んでいた罪悪感は、二人の下らない言い争いの所為で何処かへ消えていった。

 

後にキンジはあの時の二人は自分を励ましたにあんな子供レベルの言い争いをしたのではないだろうかと考え出すのだが、馬鹿らしい考えだと捨て切り後日の話しとして語られる事も無かった。

 

 

 

 

 

 

場所は戻りガレージ地下ラボ。ラボ内の一角で椅子に座って向かい合っている桜井姉弟。

 

弟である秋が如何にも怒ってるという雰囲気を前に姉のハルナがただ申し訳なさそうに顔を俯いて目を合わそうとしなかった。

 

「姉ちゃんよぉ。オレがどうしてこーんな不機嫌か、言わなくても分かってるよね?」

 

「…忠告破って変身して、ごめんなさい…。」

 

少しの間を空けて素直に謝ったハルナを前に秋は頭をガシガシと搔きながら、改めてなぜあのような行動に出たのか聞き出して来た。

 

「で? 何でたってあんなことしちゃったワケ?」

 

「………出来ると、思ったから…。」

 

「はい?」

 

「…ここ最近の私さ、敵わないって分かってるのにアンタや灰原君、彩守くんと比べる様になっちゃって。

勝手に自分の低さに嘆いて、挙句の果てに居場所が無くなっちゃんじゃないかって勝手に自分追い込んじゃって…。」

 

「………。」

 

「そんな時にアレよ? ほぼ無意識みたいなものだったけど、私がやってやったんだ!って……確かに自分がどうなっちゃうかって思うと怖いわよ。

でもそれ以上に、これで皆と本当の意味で一緒に戦える!、って…それを証明したかったの…。」

 

「………よく分かったよ。でも、それで姉ちゃんが危ない目に遭うの、オレも悠兄さんも良しとは思わねえよ。」

 

コンプレックスとも言えるハルナの胸の内を明かされた秋は、その思いを受け止めながらもハルナを戦いに出すのに認める訳にはいかなかった。

 

それでもハルナの意志は曲がる事は無い。いや、曲げたくなかったのだ。

恐らくこの世界に来て初めて芽生えたとも言える意志がようやく形となったのだ。例え否定されようとも突き進んで行くつもりで。

 

 

その主を伝えようとした瞬間、今まで口を出さなかったあの男が二人の間に入る様に口を出して来た。

 

「そうか、それがキミの本心と言う訳か…。」

 

「神太郎さん?」

 

「…おやっさん。アンタ膝が生まれたの小鹿みてえにガックガクだけど?」

 

「膝は気にするな!」

 

 

上半身は腕を組んでドヤ顔を決めるのに対し下半身は悲鳴を上げるかのように膝が震えてる神太郎は、ハルナにとある提案を持ち掛ける。

 

「キミ達の想いはどちらも間違っていない。ならばどうるか?簡単だ。

勝ち取ればいい。自身の想いが正しいと証明するには一番だ。」

 

「勝ち取るって…いや流石に灰原君や秋を相手に勝てるイメージが湧かないんですけど…。」

 

「問題無い。勝負と言ってもコレはある意味ゲームと呼べる勝負だ。真っ当な力のぶつかり合いでは、勝負が見えるからね。」

 

「いやゲームって、オレは兎も角あの悠兄さんが乗って来るとは思えないけど…。」

 

「彼は間違いなくこのゲームに乗るさ…まぁまずは私の話しを聞いてくれ。」

 

そして神太郎は秋とハルナにゲームの内容を説明する。ハルナにも勝てる見込みのある対等なゲームのルールを。

 

 

(…最低だな、私は。コレをチャンスと見て彼等を利用するなど…。

だがこの戦争は負ける訳にはいかない。例えどんな汚名を着ようと……私の意志は変わらんぞ、アベル!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………朝だな。」

 

「あぁ……ふぁ…。」

 

「………。」

 

刑務所の前で張り込んでいる悠、蓮司、キンジは日が昇りかけた空の下で、未だ待ち構えてる最中であった。

 

険悪な関係の悠と蓮司に挟まれたキンジが所々会話を持ち掛けるも長続きせず、重い空気のまま朝を迎える事になった。

 

キンジは左右に居る悠と蓮司の顔色を窺う。蓮司は精神統一してるかのように精神を研ぎ澄ませており、悠は欠伸をするも決して普段見る気の抜けた顔では無く、何時でも動けるという目つきをしていた。

 

二人はオロチがそろそろ動く頃合いだと揃って思っていた。じき始まる決戦の時が刻一刻迫る緊迫の空気がひしひしと肌で感じ取れた。

 

問題はレベル5のガシャットで上手く立ち回れるかどうかが悠の懸念してる所だった。蓮司にはデカい口を叩いたがあの強力な力をハルナの様に暴走しないとも100%言えない。

 

懸念材料が残る現状、レベル5の力を使ってもオロチに勝てる見込みは低い。

 

どうこの問題を解決すべきか試行錯誤を繰り返すなか、悠達の前に一台のバイクが停まった。

 

 

ライドマッハー、乗って来た秋とハルナの登場に、悠は頭を抱えた。

 

「秋……どういう事だこれは?」

 

「あーー、これはだね…。」

 

「待って秋。私が話を付ける。」

 

説明を求める悠にハルナが前に出てくる。

 

「灰原君…私、決めたわ。

私も一緒に戦う。だからガシャットを返して。」

 

「寝言は寝てから言え。暴走起こす力を易々渡すバカがいるか。」

 

予想通り悠はハルナの参戦を否定してきた。

 

故にハルナは神太郎が考案した千載一遇のゲームを持ち掛けた。

 

「…ハッ、ゲーム、ねぇ……ふざけてんのか。んな悠長に遊んでるヒマがあると思ってんのか?あ゛?」

 

「ッ…大丈夫。このゲームはちゃんと意味のあるゲーム。アナタが今持ってるドラゴナイトハンターZがその鍵なの。」

 

「……何だと?」

 

悠の剣幕に一瞬息を飲むハルナだが、気を確かにして悠の意識を変える事が出来た。悠はハルナから、懐から取り出したガシャットに目をやる。

 

「そのガシャットはね、他のガシャットと違うのはレベルだけじゃないの。

ドラゴナイトハンターは最大4人までの協力プレイが出来る狩猟ゲーム。」

 

「協力プレイ?」

 

「4人…まさかお前…。」

 

「そう…ゲームの内容を言うわね。

プレイヤーはここに居る私を含めた仮面ライダー4人。ドラゴナイトハンターの協力プレイでこれから来るオロチを倒して、オロチのガシャットを最初に手にしたライダーが勝ち。

勝てばドラゴナイトハンターとオロチのガシャットが手に入って…そして私が勝てば戦いに出られて、それ以外の三人が勝てば私はもう変身しない。」

 

「………。」

 

「悪い条件じゃない筈よ?オロチを速く倒したいアナタにとって、レベル5の力を持ったライダーが4人に増えて、私以外が勝てばアナタの望む展開になる。

もちろん神崎さんを助けるのは第一優先よ。結果的にガシャットが出るのはオロチを倒した後なんだから、それまでの目的は皆でオロチを倒す事よ。」

 

「しかもレベル5の力を分散させる事になっから、暴走する危険は無いだって。

おやっさんドヤ顔で決めてたよ。」

 

「どうかしら?灰原君ならそんな悩む必要の無い位イイ条件の筈よ…どうする?」

 

「……。」

 

暫くの間を空けて悠はこのゲームの考案者の顔を後で全力で殴る事を決意し、ドラゴナイトハンターとマイティアクションXのガシャットをハルナに投げ渡した。

 

「灰原君…。」

 

「勘違いすんな。お前の言うゲームなら、こっから先は敵同士だ。

俺は勝負が決まるまで認めねえからな。」

 

「…えぇ!」

 

「で? さっきからだんまり決め込んでるけど、オタクはどうすんのさ?乗るの?乗らないの?」

 

「分かりきった事を言うな。

バグスターを斬るのもガシャットを手にするのもオレだ。その為にお前等の案を利用させて貰おう。」

 

「…ケッ!やっぱいけ好かねぇの!」

 

「…なんかオレ、此処にいるの相当場違いな気がして来た。」

 

「遠山。それに気付くのが少し遅かったなぁ……来やがった。」

 

悠の言葉と共に見上げた先には空を泳ぐように飛行して来るオロチ。見た限り昨日の傷は完全に癒えていた。

 

オロチが刑務所に攻め立てる前に悠はゲーマードライバーを着けステージセレクトの能力でオロチをゲームエリアに閉じ込める。昨日とは違い、ローマのコロッセオに似た闘技場の上からオロチは地上に居る悠達に向けて雄叫びを上げた。

 

 

『グアァアァアアァアンッッ!!!』

 

「おーぉー。昨日と違って元気だなぁ…いや、怒ってんのか?」

 

「そりゃ昨日あんだけやったら怒るでしょう、ね?姉ちゃん。」

 

「明らかに桜井を狙っているな、あの獣…。」

 

「え、ウソでしょ?…。」

 

「あホントだ。さっきから姉ちゃんしか見てねえ…良かったね姉ちゃん、ファンが出来て。」

 

「デビューもまだなのに初っ端からあんな大物虜にするとは、お前も中々…。」

 

「いやお前等マイペースだな!?さっきまでの空気何処行ったんだよ!?」

 

「それがオレ達のアイデンティティ、ってヤツ。そこのロン毛は除いて…。

それよか先輩、アンタさり気無く巻き込まれてるけど、大丈夫なの?」

 

「え……あ。」

 

「下らん漫才はその辺にしておけ、そこの男の生死は自己責任と聞いたから大して気にする必要は無い。」

 

「吐いた唾は呑み込めねえぞ遠山。」

 

「オイ!」

 

「まぁまぁ。その変わり特等席で見れると思ったらイイんじゃない?」

 

「なら…始めましょうか!」

 

 

悠を除く三人がゲーマドライバーを着けガシャットを構える。その時、ハルナの手にしたドラゴナイトハンターのガシャットが光りながら自ら浮き上がり、その数が四つに増えた仮想ガシャットがドライバーを着けた四人それぞれの手に収まった。

 

「へぇー、こんなカンジなんだ。」

 

「フム、用途は分かった。ならいざ…。」

 

「えぇ…ッ。」

 

ガシャットを握る力が強くなるハルナの下に一陣の風が吹くと、一瞬、目が赤く染まりハルナの別人が表に出た。

 

「さぁ、ゲームの始まりよ!」

 

<< MIGHT ACTION X >>

 

 

 

<< TADDLE QUEST >>

 

「段位・二段──変身!」

 

 

<< BANG BANG SHOOTING >>

 

「第弐戦術──変身!」

 

 

<< BAKUSOU BIKE >>

 

「──変身!」

 

 

 

「ッ──大変身!」

 

 

<< ガッシャット! >>

 

 

レベル2のエグゼイド、ブレイブ、スナイプ、レベル1のレーザーが続けてドラゴナイトハンターの仮想ガシャットの起動させ、召喚したハンターゲーマがオロチへ雄叫びを上げる。

 

 

<< FANG! >>

 

<< BLADE! >>

 

<< GUN! >>

 

<< CLAW! >>

 

 

<< ガッシャット! >>

 

 

「第伍戦術──」

 

「段位・五段──」

 

「しゃぁ! 五速!──」

 

「大・大・大・大ッ・大変身!──」

 

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

<< Mighty Jump! Mighty Kick! Mighty MIGHTY ACTION──X!──アガッチャ!── >>

 

 

前回と同様ハンターゲーマーはエグゼイドの下で分離しアーマーとして装着、フルドラゴンとしての姿になるが、竜のゲートを四人のライダーが潜り抜けるとフルドラゴンのアーマーがエグゼイドから離れ…。

 

 

<< D・D・DRAGO! KNI・KNI・KNI・KNIGHT! DRA!DRA!──DRAGO KNIGHT HUTER!─── >>

 

 

<< Ex-AID! >>

 

ハンターゲーマーの頭部を纏い強靭な顎と牙によって噛み砕き灼熱の炎を息吹き、背中の尾で薙ぎ払う[ドラゴンファング]を身に付けたハンターアクションゲーマー。

 

<< BRAVE! >>

 

右腕に青の両刃剣[ドラゴンブレード]によってあらゆる敵を両断するハンタークエストゲーマー。

 

<< SNIPE! >>

 

左腕に黄色の銃身[ドラゴンガン]から放たれる電磁キャノンによって強固なガードも撃ち抜くハンターシューティングゲーマー。

 

<< LAZER! >>

 

両腕にドラゴンブレードとドラゴンガン、そして両足に優れた瞬発力と強靭な爪を持った[ドラゴンクロー]を備えたハンターバイクゲーマー。

 

 

竜の力を纏った四人の竜戦士が並び立つその姿。離れて影から顔を覗かせたキンジの目を奪わせる程に圧倒的オーラを発していた。

 

「…スゲェ。」

 

 

「オ~! イイねイイね!」

 

「これがレベル5か…確かに暴走する気配はねえな。」

 

「フム…この剣ならヤツの鱗を斬れるな。」

 

「さぁ皆!準備はイイ?」

 

 

各々レベル5の姿に目を奪われるなか今か今かと待ちきれない様子のエグゼイドの言葉によって、一同は相対するオロチの前でそれぞれ構える。

 

「このゲーム、ワイルドにクリアする!」

 

「いざ、尋常に参る!」

 

「削除、開始!」

 

「マッハで乗ってくぜェ!」

 

 

『グオオオオオオォンッ!!!』

 

 

オロチから口から放たれる巨大な火の息吹がゲーム開始の合図として四人を動かせた。

 

 

「「「「オオォーーッ!!!」」」」

 

 

4人が思い思いに散らばって動きそれぞれの戦闘スタイルに合わせオロチへ攻撃して行く。

 

 

「ハァッ!!」

 

ブレイブは電磁気が奔るブレードを振るいオロチの強固な鱗諸共肉を切り裂き。

 

「ウラァッ!」

 

スナイプはドラゴンガンから放たれる電磁キャノンをオロチの急所と思われる箇所へ正確に当て。

 

「ソラソラソラァ!!ウリャァッ!!」

 

レーザーは見た目によらない俊敏な動きでオロチの体を這うように走りながらブレードとガンを駆使してダメージを与え。

 

「テェエエイィッ!!」

 

エグゼイドは翻弄されるオロチの眼前に迫りながら炎を吹き、尾を鼻っ柱に思い切り叩き付けた。

 

 

尾を叩きつけられたオロチは身をよじらせてエグゼイドを振り払おうとするが、振ろうとする尾をブレイブのブレードに先端の部分を切り落とされる。

 

ならばと思い、口から火炎弾を吐き出そうと口を開けた所をスナイプの狙撃が吐き出そうとした火炎弾に当たり、オロチの口内で爆発が起きる。

 

悲鳴のような叫びを上げるオロチの左右からレーザーとエグゼイドの飛び蹴りが炸裂し、オロチは昨日よりも大々的なダメージを次々と負っていく。

 

 

昨日の苦戦が嘘みたいに圧倒的にオロチを追い込む4人の仮面ライダー。

4人がレベル5のガシャットを使っているという理由もあるが、優位に立っているのはそれだけでは無いというのが、外野から見ているキンジがその正体に気付く。

 

 

「オラッ──もう一丁!!」

 

「そこだ!──セイィ!!」

 

レーザーの俊敏な動きに翻弄されて動きが鈍いオロチに前回動きが速すぎて剣を当てられなかったブレイブの剣戟がオロチを捕える事ができ。

 

「──BANG!」

 

「今がチャンス!──喰らいなさい!!」

 

それに続いてスナイプによる狙撃がオロチの急所を撃ち抜き、出来た隙を突いてエグゼイドが威力のある大振りの攻撃を繰り出しオロチへダメージを与えていっている。

 

 

4人は与えられたゲームに勝つ為だけ考えながら動いている為ただひたすら自身の得意な戦法を駆使してオロチに攻め続けている。

だがキンジの目からは4人の仮面ライダーが協力してオロチを追い込んでいく光景にしか見えず、思わず口かほこんでしまう。

 

 

「アイツ等…何だかんだ言って協力プレイしてんじゃねぇか…。」

 

 

 

「ッ!オイ貴様!何処に向けて撃っている!?」

 

「アァ!?テメェが射線上に入ったのが悪いんだろうが!!」

 

 

(…………ん?)

 

 

「熱ッ!?ちょっと姉ちゃん今オレに火ィ当たったじゃん!!髪チリチリになっちゃたらどうしてくれんの!?」

 

「ゴメーン!てかアンタ頭モヒカンじゃん!!」

 

 

(んん?)

 

 

「オォーーーッ!?、アデェッ!? イタタ…悠兄さん何処見て跳んでんのさ!?」

 

「オロチに決まってんだろ!! てかオメェぶつかった時剣が当たってかなり痛かったんですけどォ!?」

 

 

(アレ?なんか空気が…。)

 

 

「っと!ゴメンゴメン、って!アンタ今何処触ったのよ!?エッチ!!」

 

「な! じ、事故だ!!それにさっき手にはそれらしき感触は一切感じ、グフッ!?」

 

 

(……え~~?)

 

 

「あぁもう…!」

 

 

 

 

「「「「 アンタ・お前 達 邪魔 だ・よ !!!」」」」

 

 

「………オイ。」

 

 

 

さっきまでの自分を撃ちたいと思ったキンジの目には固まって言い争ってるライダー達の口喧嘩が激しくなっていく一方。

 

オロチはバラバラだった4人が固まってるのをチャンスと見たのか口から巨大な火炎弾を放つ。キンジが叫んで知らせようとしたが、迫り来る火炎弾に4人が口喧嘩を止めて火炎弾に向かい…。

 

「「「「ハァッ!!!」」」」

 

尾で、剣で、弾丸で、蹴りで火炎弾を弾いた四人。目の前のオロチは相当の傷とダメージを負っており、先程の火炎弾に力を使い切ったのか最初と比べかなり弱っていた。

 

 

「そろそろフィナーレといくわ、トドメは…!」

 

「ヤツを斬るのは…!」

 

「ガシャットを手にすんのは…!」

 

「カッコよくキメんのは…!」

 

 

 

「「「「 アタシ・俺・オレ よ・だ!!!」」」」

 

 

 

<< ガッシャット──キメワザ! >>

 

 

『ッ───グ、ギュァァアアァアアアァアーーーーーッッ!!!』

 

 

ドラゴナイトハンターZのガシャットをホルダーへ挿し込む4人。

 

エグゼイドの頭部、ブレイブのブレード、スナイプの銃、レーザーの両腕にガシャットから送られるエネルギーが大きくなり、その光景を見たオロチは抵抗の表れか地震のような咆哮を上げながら特攻を仕掛けた。

 

4人を喰らう勢いで向かって来るオロチ。だが4人は一歩も引く様子は無い。

 

向かって来るオロチに対し今では何の脅威も感じない。むしろ今大口を開けてるヤツは前座に過ぎない。本当の戦いはこの大蛇の化身を倒した先にある。

 

だからこの異形は此処でさっさと散らす。それがエグゼイド、ブレイブ、スナイプ、レーザーが共に抱く戦意。

 

 

<< DRAGO KNIGHT CRITICAL STRIKE! >>

 

 

「デェリャァッ!!」

 

「オラァッ!!」

 

「ハァアッ!!」

 

「しゃーん、ラァアッ!!!」

 

 

 

『ゴアァアァアーーーーーーッッッ!!!』

 

 

向かって来るオロチを竜の炎が焼き、竜の斬撃が切り裂き、竜の弾丸が貫き、竜の爪撃が削る。

 

 

怒涛の如く繰り出される4人の必殺技を受けるオロチの進撃を止め、天に向かって悲痛な咆哮を上げるオロチはその巨体を盛大に散らした。

 

空に灯される爆炎で出来た巨大な火の塊から小さな影が飛び出て来た。それが彼等の勝敗を決めるトロフィーの役割を持つ重要なキーアイテム。

 

 

「ッ!ガシャット!」

 

「貰ったぁッ!!」

 

いち早く跳んでいったレーザーが手を伸ばし思わず勝利を確信して仮面の下で笑みが浮かぶ。これで姉を危険な目に合わせず済むと。

 

「させるか!」

 

「んなぁッ!?」

 

レーザーの頭部を踏み台にブレイブが跳んでレーザーを追い越し、ガシャットへ手を伸ばす。これで二つのガシャットの力を得れると。

 

だがそのガシャットがブレイブの背後から放たれた銃弾に掠りブレイブの予測していた軌道コースからズレる。

 

「なッ…!?」

 

「ハッ! 残念!」

 

狙撃によって軌道をずらしたスナイプはガシャットに向かって跳ぶ。ガシャットへ手を伸ばし自身の思い描く欲を形とする為。

 

だがそれを阻止する障害がスナイプの背後から迫って来る。

 

「ウオオォーーーッ!!!」

 

「ッ!! 落ちろォッ!!」

 

背後から追って来るエグゼイドに向けて発砲するスナイプ。

エグゼイドはスナイプの弾丸をドラゴンの翼で防ぎ、吐いた炎でスナイプを包む込む間にエグゼイドは翼を広げスナイプを追い越した。

 

「行かせるか!!」

 

<< ガシャコンマグナム! >>

 

<< ズ・キューン! >>

 

スナイプはライフルモードのマグナムとドラゴンガンを構える。

一つはガシャットにもう一つは無防備なエグゼイドの背中に。

 

(テメェを勝たせてたまるか!……ッ!!)

 

エグゼイドの勝利だけは阻止するスナイプ。だが何処からかスナイプの発砲を妨害する光弾がスナイプの持つ銃身を撃ち狙いを外させた。

 

「誰がッ…ッ、しまった!」

 

「獲ったァアアア!!」

 

エグゼイドはオロチから出て来たガシャット、”TAICO MASTER HIBIKI”を手に掴み高らかに勝鬨を上げた。自身の勝利を示す様に。

 

<< GAME CLEAR! >>

 

 

 

「いよっ、しゃあぁーーーーッ!!!!」

 

「マジ、かよ…。」

 

「ッ…不覚!」

 

「ッ………。」

 

 

ゲームの勝者が決まると、4人のベルトに収まってたハンターガシャットが独りでに飛び出し元の一つになると変身を解除したハルナの手に収まった。

 

 

ゲームエリアも解除され、その場には戦いを見守ってたキンジとライダー4人が円を作って向かい合う。

そんな輪の中をいち早く抜け出したのは、悠だった。

 

「あ、は、灰原君!」

 

「…なに?」

 

「その…こ、これからは訓練して、この力を使いこなせるようにするから!だから…。」

 

「…桜井。」

 

「は、はい!」

 

「…どんな形であれ、勝ち取ったからにはそれなりの責任があると思え。それ以上はもう言わん。」

 

「フン……精々足を引っ張らない事だな。」

 

去って行く悠に続いて蓮司もハルナに一言告げた後、この場を去って行った。

 

去って行く悠と蓮司の背中を見届けたハルナはその場で腰が抜けた様にへたり込んだ。

 

「ね、姉ちゃん!」

 

「…ハ…ハハハ……秋。私、勝っちゃった…掴んだんだ。この手で…。」

 

「…姉ちゃん。」

 

ハルナは半ば放心状態で、手に取った響鬼のガシャットとドラゴナイトハンターのガシャットを眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~~ん。あの娘っ子が、ねぇ~。」

 

アベルは事の一部始終を全て離れた所から見物し、ハルナがこれからの戦いに加わる事を知ったアベルの顔は見定める様な目で地面に座るハルナを視ていた。

 

「まぁまぁやるっぽいけどボクの舞台に上がらせるのは早計だね~…近い内舞台審査でも仕掛けるかな。

…生き残ったら合格。死んだら不合格のボクのテストに♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──どうもご迷惑かけました…ほらアリア。」

 

「……ご迷惑、おかけました。」

 

灰原家の玄関前で悠達にしぶしぶ頭を下げるアリアの姿が在った。

 

発症の影響で前後の記憶が曖昧になっているアリアには過労による貧血と言う事で灰原家に世話になったというウソをライアーメモリで信じ込ませる事故処理を済ませ何の問題も無くなったアリアを送り出そうと玄関前に揃っていたのだ。

 

「意外。ちゃんと礼言って頭下げられんだ…てっきりベッドや枕の文句とか言われるかと思った。」

 

「いや流石に……あーー…まぁ無いだろう、多分。精々ももまんの文句はあるだろうが…。」

 

「そこの二人。眉間に風穴空けられたい?」

 

「きゃーたすけてー、武偵が一般市民を脅してるよー。」(棒)

 

「コラそこで挑発しない。アリアもマジで銃に手を掛けるな。」

 

「ハハ、キンジ先輩大変だねぇ。」

 

「なら変わってくれるか?この挟み撃ち。」

 

「遠慮する。オレもこれから忙しくなると思うし。」

 

「…桜井の事か?」

 

「まぁね、大人気無ぇパートナーもそうだし、色々不安定な姉貴の面倒見なきゃいけなくなっちまったしぶぎゅ!?」

 

「だ・れ・が、大人気無いって?だ・れ・がパートナーだってぇ?」

 

「誰が不安定ですってぇ?」

 

「痛い痛い痛い痛い痛いッ!!! ちょっとこの挟み撃ちは勘弁!! こめかみグリグリは超痛ぇって!!」

 

「………なんなのよコイツ等。」

 

「…チーム、なんじゃねえか?凹凸の激しい、デコボコのな。」

 

「はぁ?」

 

キンジの言っている言葉の真意に理解が出来ないアリアだが、キンジの表情が綻んでいるのがもっと理解出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フムフム…やっぱり4人でのレベル5のデータ収集は有益だね。この調子なら新たなガシャットの開発も事通り無く…。」

 

ラボの端末に向かい合ってる神太郎はオロチ戦での戦闘データを目にご満悦であった。

 

「これなら例のアレも…。」

 

「アレって、何の事かな?」

 

神太郎の後頭部に突きつけられた銃口。ブレイクガンナーを手に背後に立つ悠は神太郎に尋問に近い形で聞き出そうとしていた。

 

「おやおや。コレは一体どういう事かな?」

 

「しらばっくれやがって…お前だろ。あの時、俺の邪魔しやがったのは。」

 

「何の事だい?」

 

「最初から桜井を前線に出させる為にあんなまどろっこしいゲームさせやがって…おまけに今回の戦いで十分なデータも入ってさぞかし満足だろうなぁ?」

 

「フム……まっさか~!流石にそれはキミの考え過ぎじゃない?

私がハルナ君がまさか勝っちゃうとは予想だにしていなかったし、キミを狙い撃ちする程の技量は無いし、データが集まったのは今回の副産物に過ぎないし。

…まぁでも、ハルナ君が加わったお蔭で私の危惧してる予感に備えが出来るのは、嬉しい誤算だね。」

 

「危惧?」

 

「修学旅行さ。思い出してご覧?これまでの感染者を。

確認できたバグスターの内、6体中4体の感染者がキミの通ってる学園の生徒だ。ストレスが原因で感染力が活発化するバグスターにとって、悩み多き十代の少年少女等が格好のターゲットなのかな?ま、その辺はあくまで仮説に過ぎないが。」

 

「…修学旅行先でウイルスが発症する。それがアンタの危惧してる予感?」

 

「まぁね。半数が学園の生徒である限り、ゼロとは言えない。

でも修学旅行はここから離れた南の島。BABELの事もあるしココを手薄にするにはいかないだろう?」

 

「だからバグスターに対抗出来る人員が欲しかった。それが狙いだったワケ。」

 

「いやだからそんなんじゃないって!…あくまで保険だよ。保険。もしかしたら発症しないとも言えないだろ?

それに修学旅行にはハルナ君の他に、蓮司君も行かせるよ。先程本人にはこの事を伝えておいたからね。」

 

「……。」

 

悠は突きつけていた銃を静かに降ろした。

 

「………ま、今はそういう事にしといてやるよ。過ぎた事は変わらないし、一々口を出すのは面倒だし。」

 

「そっか。ならこれからは信用できるよう精進しよう。新しいガシャット期待しててくれたまえ。」

 

「ちゃんと使える奴にしろよ……あと。」

 

「ん?まだなにか?」

 

「…俺、邪魔されたとは言ったけど、撃たれたなんて言葉は一切言って無かったけど?」

 

「………。」

 

「フン…ま、言った手前もう何も言いませんよ、っと。」

 

そう言って悠はラボを後にした。

 

残された神太郎は背もたれにもたれ掛り大きな溜息を吐くと、ポツリと言葉を漏らす。

 

「…やっぱり合わないなぁ、私にこういうのは…。」

 

悠の言う通り過ぎた事は変わらない。やったからには最後までやる事を決意した神太郎は一先ずこれから必要になるハルナ用のゲーマドライバーを用意するのであった。

 

 

 

※残りのラスボスバグスター/レジェンドライダーガシャット = 13体

 

 

・エグゼイド = 1

 

 

・ブレイブ = 2

 

 

・スナイプ = 1

 

 

・レーザー = 1

 

 

 

 






スピードのラビットラビットとパワーのタンクタンクですか。
最終フォームっぽいけど、あれ中間フォーム扱いなんですよね。最終フォームのネタバレ見ちゃったけど…。アレかぁ…。

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