その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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仮面ライダーローグこと氷室 玄徳、カム(噛む)バック(に何か貼られてますよ?)

今日の放送見て思ったんですけど、スタークって前やられたスパークリング相手にもう優勢に立ってたし、ハザードを前にしても全然余裕そうなの見て、素の実力で一番強いのってマスタークじゃね?


真偽

 

圧倒的な強さで悠達を苦しめる仮面ライダーパラドクスことアベル。

更には謎の仮面ライダー、ゲンムの正体が悠の上司である神であるという衝撃の事実を突きつけられる。

そして極めつけはハルナの変貌。ハルナはゲンムから強奪したプロトガシャットを正規版へと変え、仮面ライダーエグゼイドとなってグレムリンことフリードを撃破してしまう。

一連の詳細に関する詳細を上司の神に説明を求める悠であったが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰原家・ガレージ地下ラボ

 

 

「………。」

 

「………。」

 

「………え~っと。」

 

「フゥ…。」

 

 

時刻は日が暮れた夜。ガレージの地下ラボ内には四人の男達がそれぞれが離れた位置でただ時間が経っていくのを黙って過ごしていた。

 

悠はデスクの椅子に腰を掛けながら不機嫌そうに腕を組み、連れて来られた蓮司は壁に背を預けながら黙って立ち、秋は階段に座って居心地の悪そうにきょろきょろと周りを見回し、今回の元凶とも言える上司ことカインは椅子に座ってコーヒーを飲みホッと息を吐いていた。

 

苛立ちから我慢が効かなくなったのか悠が隠す気も無い不満を表に出しながらカインに話し掛けた。

 

「なぁ……何時まで無駄な時間過ごしてんだよ。アンタちゃんと話すって言ったよなぁ?

なのにここに来てからもう一時間もこうだぞ?オイ…。」

 

「そんな怖い顔しないでよ、イライラしたって何の得にもならないよ?

まぁコーヒーでも飲みなよ、普段はブラックだけど切羽詰まってる時は砂糖三杯だったよね?キミは。」

 

「ッ…。お前この状況でなぁ…!」

 

「ちょっと落ち着けよ悠兄さん!気持ちは分かるけど…!」

 

「分かってるなら止めるなッ!!

桜井が可笑しくなって未だ目覚めず仕舞いなの原因がコイツにあるかもしれないんだぞ!」

 

強引に問い詰めようとする悠を思わず止めに入った秋の顔色がこの一言で変わる。気を失う前に見た姉の豹変と変身したピンク色のゲンムの姿がおぼろげ気味だった記憶の中で今でも鮮明に覚えている為に、気まずい空気の中よ空気を読む反面姉のハルナの事で頭が一杯だった。

 

そんななか元凶と疑われてるカインは指を指されながらも態度を崩さずコーヒーのカップをデスクに置いた。

 

「…そうだね。彼女の件については大半が私の所為だ。そこは認めるよ。

だが、それ以外は私の想像を超えた偶然の産物、としか言えない。」

 

「だから自分は悪くない、とでも言うつもりか?」

 

「そんな無責任な事を口にするつもりは無い。こんな事になるのならもっと慎重にやれば良かったと後悔してる。

…まぁ、これから私がしようとする事については、そうでもないけどね。」

 

「これからする事?それどういう…。」

 

 

そこから先の言葉は上に通じる階段の扉が開いた音でとぎられた。

 

 

「来たね。大体予想通りの時間かな?」

 

 

階段を降りてくる複数の足音から悠や秋はてっきり吹雪達が降りて来たかと思ったが違かった。

 

 

ラ・フォリアを先頭に、一度ここに来た事がある古城と雪菜。後から来たのはロスヴァイセ、ゼノヴィア、一子、燕、凪沙と言った面子が階段を降りながら地下ラボの広さに驚きながら辺りを見回していた。

 

突然の来訪に二人は驚きの表情を隠せない。そんな二人の心情を余所にカインはラボに来た面々を迎え入れる。

 

「やぁやぁどうも、突然の招待に関わらずこうして来てくれて大変嬉しいよ!」

 

「えっと…アンタがあのメールの送り主?」

 

「あぁそうさ、来てくれるかなーって心配してたけどちゃんと全員来ているね、うん!」

 

 

 

「………オイ。」

 

 

 

「それでアナタは一体誰なんですか?

私達を此処に呼んだという事は灰原先輩達の関係者と見受けしますが…。」

 

「それについても後で詳しく話そう。まぁまずは適当な椅子に座ってお茶でも飲みながら…。」

 

 

「…オイ……いい加減にしろよ…ッ!」

 

「おぉ?」

 

 

 

 

古城達を呼び出してであろうカインの胸倉を掴む悠。その眼にはカインに対する明らかな怒りを宿していた。

 

「何を企んでる?どうしてコイツ等をここに呼んだ?」

 

「彼等に此方の事情を知って貰おうと思って、私が呼んだんだ。」

 

「何の為に?」

 

「キミ等に対する信頼と信用を確実なモノにする為に。」

 

「そんな必要は無い。」

 

「あるよ、現に巻き込まれてしまった子もいる。例えば…暁 凪沙くんの誘拐、とか。アレは相当な失態だよぉ?」

 

「ッ…ならこの場でその時の記憶を消せば良いだろう!」

 

「消せば全てが解決するとは限らないよ?それを彼女が望んでるかどうかが、大事だと思うけどね。」

 

悠は横目でカインから凪沙に視線を移す。

怒りに身を任せている悠に臆しているのか古城の背に隠れて此方の様子を窺っているのが見れる。

 

「…怖い思いをするよりマシだろ。」

 

「全くキミってヤツは…なら上司命令だ。私のする事に異論反論を許さない。」

 

「ヤダね。今のアンタは正直言って信用出来ない。」

 

「ハァ………本当に強情だねぇ、キミって男は…。」

 

一向に引き下がらない悠の強情ぶりに話が進まないと判断したカインは、悠の肩に手を置き…。

 

 

ープスッー

 

 

「ッ!!!お前、何…を……───」

 

 

ーバタン!-

 

 

「えぇええッ!?ちょ、悠兄さんッ!?オイ!!」

 

「大丈夫、ただ眠ってるだけ。暫くは起きないけどね。

やっぱ使う事になっちゃったかぁ、コレ。あ、念のためキミにも。」

 

「へ?”プスッ”あ……──。」

 

ーバタン!ー

 

袖に隠しきれる位小さな注射器を悠達の首筋に刺して強制的に眠らせたカイン。眠って居る悠と秋を蓮司に任せ、彼は置いてけぼりとなってる古城達に振り返り、飄々とした笑みを見せる。

 

「ゴメンね~。ちょっとごたついちゃって。まま、お詫びに美味しい羊羹があるから、つまみながら私の話を聞いてくれるかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──さて、お茶と羊羹はみんなに渡ったし、本題を話すとしようか。」

 

 

ラボにある椅子に座りながら渡された羊羹に誰も手をつけず前に立つ人物を警戒するような目で見られているのを当の本人は気にしていなかった。

 

先程の悠との会話から仲は険悪と思われると、上司命令という言葉が出て来た事から悠より上の立場の人間と探っているのは雪菜と燕とロスヴァイセ。その他は異様な場所と状況で落ち着かない者や、椅子を三つほど並べて簡易的な寝台で雑に寝かされている悠の安否を気にしたりしている等が居るなかでカインは自らの素性を明かした。

 

 

「ではまず皆が気になっている私の素性についてだが…。

私は灰原 神太郎。戸籍上悠くんの父親であり、彼等にライダーシステムを提供した者だ。」

 

 

「…………え?」

 

誰が洩らした声なのか気にする事も無く、誰もが羊羹の乗った皿をを落としそうになる位の衝撃だった。

 

目の前に居る銀髪の男性が悠の父親で、仮面ライダーの力を渡したと言う事は上の立場どころか、トップの位置に座る人物ではないだろうか?もしそうなら自分達は今とんでもない人を前に間抜け面を曝してる事になる。

 

しばらく沈黙が流れ、次に進もうかとカイン、否、神太郎は口を開こうとした時、ラ・フォリアが突然立ち上がって近づいて来たと思いきや、突然頭を下げた。

 

「初めましてお義父様。諸事情で居候させて貰っておりますラ・フォリア リハヴァインと申します。

機会があればご挨拶をしたいとずっと思っていました。」

 

「おー、知ってるよ。いやぁー私の息子が苦労かけさせてるみたいで悪いねぇ。全く悠くんは、こんな美人のアプローチを無下にするなんて、本当に困った子だなぁ。」

 

「えぇ。でもまだ諦めていないのでこれからじゃんじゃん攻めに行くつもりです。」

 

「いいねぇ!これなら孫の顔を早くに見られるかな?

…上司として、親として、今後とも息子をよろしくお願いします。」

 

「はい。勿論そのつもりです。」

 

 

「お…お義父様! 私ッ、クラスメートのゼノヴィア・川神です! 息子さんに命を助けられ、好きになりました!」

 

「うわぉ、どストレートだねぇ。でも…嫌いじゃないよ!そういう姿勢は。」

 

「ハ、ハイ!ありがとうございます!!」

 

 

 

「あ、あの! アタシ、じゃなくて、私!川神 一子です!!ユウ、じゃなくて悠さんとは、その、えっと…い、今はまだ友達ですッ!!」

 

「ほほぉ~?”今は”かぁ。 うんうん! 青春だねぇ~!そこから芽生える恋もなんてロマンチック!」

 

「はぅぅぅ~!」

 

 

 

「な、なぁ。 この流れ、オレ達も挨拶に行った方が良いのか?」

 

「そう、じゃない? ゆーくんのお父さんな訳だし…。」

 

「おまけに先輩達の上司、ですから失礼の無い様に振る舞わないと…。」

 

「あ~、そんなに固くならなくてもいいよ? それにキミ達の事は既に把握済み。

キミが寝坊助の暁 古城くんと妹の凪沙ちゃん。古城くんの世話女房の姫柊 雪菜ちゃんだよね?」

 

「え!? そ、そうですけど、寝坊助って…いや、事実だけど…。」

 

「女房って…ッ!わ、私と先輩はそういう関係じゃあ無いです!!」

 

「アハハ、なんかイジり具合がゆーくんとそっくり…。」

 

 

 

「ハッハッハ…そ・し・て。黒髪のキミが松永 燕ちゃんだね?

見てるよ納豆小町、人目見て直ぐにファンになっちゃた!ね、握手お願いしてもらっていいかな?」

 

「え…あ、はい。喜んで。」

 

「ありがとう…あ、そうそう。あまり下手な詮索はしない方が良いよ。

お気に入りのアイドルを目の敵になっちゃうと、ショックで寝込んじゃいそうだから。」

 

「……アハハ、肝に銘じときます。(コレって、脅し、だよね?)」

 

 

 

「後は…。ロスヴァイセ先生。何時も息子の無茶振りに振り回されてるようで…。」

 

「い、いいえ! その分のお金は十分と言える程貰っていますので、そんな頭を下げなくとも…!」

 

「そうであっても、下手すれば先生の人生を悪くしてしまう事をやらせてるのは事実です。

お詫びと言っては何ですか、何かあったらご協力を惜しみませんので、その時は遠慮せず言ってください。」

 

「あ、ありがとうございます!

ううッ! やっと…やっと親切な人に出会えました…!」

 

 

 

 

「………オイ。話が次第に脱線して行ってるぞ。」

 

「へ?」

 

「此方の事情を話すのなら手短にやれ。この後の事もあるだろう。」

 

古城達と言葉を交わしていく神太郎を見て、ここに来てから口を開かなかった蓮司が話を進める様指摘してきた。

神太郎は”それもそうだ”と言いながら、席に座らせた古城達の前に立った。

 

 

「いや申し訳ない。私とした事が少しばかし見失っていた…。

では話を戻そう、これから話すのは、我々の事、仮面ライダーの事、BABELの事だ。」

 

 

「ッ! 本当に、教えてくれるんですか? 灰原先輩は頑なに秘密にしてた事を…!」

 

「あぁ。 本来なら超機密扱いなのだが、状況が状況だからね。

ただ、これから言う事は誰にも口外しないという事を約束してくれれば、ね。」

 

最終確認と目で訴えるかのように、一人一人、目を合わせて顔色を窺う神太郎。時間掛けて表情からその真意を読み取り、やがて満足気に頷く。

 

「うん!よろしい!では真実を教えよう。

我々はこの世界の住人では無い。別の世界から来た、いわば異世界人だ。」

 

 

「い、異世界人!?」

 

「そう。別の言い方であれば、並行世界、パラレルワールドかな?まぁその辺の認識は個人に任せよう。

我々の他に、仮面ライダーやその武器に組み込まれているオーバーテクノロジーや、BABELのロイミュードやファントムを生み出した技術と魔法。少しでも思った事は無いかい?

これら全てがどのようにして生まれ、人知れず形となってキミ等の前に現れたのか。

その答えがこの世界では無く、別世界から来たのものだと考えれば、全てが納得いかないかい?」

 

 

(嘘が混ざった真実、か…。転生者や神である事を隠している辺り、ただの嘘より悪質極まりないな。

それに加えて信じ込ませる為の誘導的な口ぶり……見た目によらず腹黒い。)

 

 

蓮司は離れた所で神太郎の話す真実の裏に隠された意図的な隠蔽工作する神太郎に誰にも気づかれる事無く冷めた目を向ける。

 

蓮司の視線の正体に気付いている神太郎は気にする素振りを見せずに、話のペースを落とす事無く続けた。

 

 

「我々の世界では並行世界の存在を確認されてから研究対象として調べていく内にとある真実へと至った。

それは、並行世界同士のバランスはとても脆く、僅かな変動によって複数の世界に影響を齎す、とね。」

 

「バランス?…。」

 

「そう。特に他世界からの影響ってのが一番バランスを不安定にさせる要因なんだ。しかも最悪な事に、並行世界の存在が明らかになってから我々の世界の一部の人間による他世界の侵略的行為が出る様になってしまったんだ。

大胆な悪事が出来ないのなら、余所で好き勝手暴れてやろうって言う身勝手で、無責任な連中によって…。

しかもさらに性質が悪い事に、ソイツ等はあろうことか他世界の武器や技術、あるいは魔法、魔術、魔獣等を勝手に持ってって利用すると来たもんだ。」

 

「他世界…ッ!あ、あのッ!! もしかして少し前まで世間が騒いでいた異能力者の異常発生やBABELも…!?」

 

「お察しの通り、異世界からの招かれざる者達さ。しかもこの世界に足を踏み入れたのは一人二人では無くかなりの数が入ってきてしまってね。最悪の事態を危惧した我々は、すぐに彼を…イレイザーをこの世界に送り込んだんだ。」

 

「イレイザー…それが悠達、か…。」

 

「そゆこと。」

 

「じゃあ、仮面ライダーは? BABELのメンバーも灰原君達と同じタイプの仮面ライダーも居たけど。カードを使うのとか、虫みたいなとか。」

 

「そうだね…なら、仮面ライダーとは一体どのような存在かを教えようか。

既に感付いているのもいるかもしれないが、仮面ライダーもこの世界とは違う異世界で造られた力だよ。

仮面ライダーの力はその世界の脅威と為りうる異形の怪人達を相手に対抗する為に造られた一種の防衛兵器。故に私はコレに目を付けた。

各世界のライダーシステムを開発した科学者、組織に協力を求めその技術を提供してもらい、世界に影響を生み出す異能者達を抹消する存在、イレイザーが彼の事さ。」

 

「そう、だったのか…じゃあアイツ等は殺し屋とかそういうのじゃなくて、云わば公安?みたいな立場のヤツだったってワケか。」

 

「簡単に言えばね。あぁでも、秋君やそこに居る蓮司君はまだ正規のイレイザーでは無いよ。

BEBELの動きが思った以上に強くて彼一人じゃ荷が重いと感じてね、急遽助っ人として適性のある二人を此処に送ったんだ。」

 

「え……ちょ、ちょっと待ってください!てことはまさか、この世界に来るまでイレイザーの仕事していたのは…灰原君、たった一人?」

 

「ご名答。だがこれにはちゃんと理由が有るんだ。

世界を渡り歩くイレイザーは誰もが成れるわけでは無い。なる為の条件として一番重要なそれをクリア出来たのが、彼一人しかいなかったと言う訳さ。」

 

「…その条件とは?」

 

「…申し訳ないが、その情報はSランクにあたる機密情報でね。幾ら協力してくれた先生でもコレは容易に口に出来ないんだ。」

 

「…いえ。まだ若いのにたった一人でそんな重役を抱えていたとは知らなかったので、つい…。」

 

「……あー、これは、言っても大丈夫、なのかなぁ…?」

 

「お義父様?」

 

「うーん。彼は女性では無いし、むしろそういう些細な事は気にしない性格だけど…。」

 

「…お義父様。それはもしかして、彼の実年齢のことでしょうか?」

 

渋い顔を見せる神太郎にゼノヴィアが助け船を出すかの如く挙手をする。

神太郎からゼノヴィアへと全員の視線が写り、神太郎はゼノヴィアにアイコンタクトで、任せたと伝える。

 

「コレは随分前に本人に聞いたんだが……悠の実年齢は軽く定年を越していると聞いている。」

 

「へ……ま、まっさかぁ!もうゼノヴィアったらこんな時に冗談……じゃない、よね?」

 

「あぁ。彼は自分の実年齢を言って私に諦めさせようとしていたつもりだったんだが、当の私は彼の逸脱した戦闘技術の正体が長年の経験で築き上げられたモノだと知って納得していたんだ。」

 

「イレイザーは希少な存在だからねぇ、肉体の老衰を極限にまで抑える処置を彼の体に施しているんだよ。私にもね。

だが不老であって不死では無い。この言葉の意味が、分かるよね?」

 

「っ……ハイ。」

 

コレに重々しく返事を反したのは一子だった。

彼女は実際目の当たりにしていたのだ。今椅子に寝転がって寝ている彼が身を挺して自分等を庇った結果命を落とした事を。

 

「そ、そうなの……ちなみに彼の事は…。」

 

「これぽっちも気にしてないぞ?」

 

「私も特に気になりませんね、むしろ今まで知らなかった事が分かって良かったと思ってますし。」

 

「ハハハ、愛されてるねぇ~我が息子は。」

 

「……あ、あの!」

 

「ん?」

 

「えっと、その……ゆーくんがとても貴重な人で、ゆーくん以外の人が居なかったからその、イレイザーっていうのにならなきゃいけないっていうのは分かったんですけど…。

……それってどうしてもゆーくんじゃなきゃダメだったんですか?」

 

「………うん。もっともな意見だね。

確かに言い方を変えれば、私は彼を死地へと送っている事になるね……。

だがそれは彼が、灰原 悠が選んだ生き方さ……彼の恋人の話しは知っているよね?」

 

「それって、確か灰原の目の前で殺されたって言う…。」

 

「正確には、当時同じ施設に居た義兄弟達や恩師も含まれるね。そして、それらの悪行を行ったのは異能者…異世界の者……彼がイレイザーになって初めて相対したターゲットだ。」

 

「それって、敵討ち!?」

 

「そう、そして見事仇を撃ち、彼は今の生き方を選んだ……それ以降は彼本人に聞いてくれたまえ。こればかりは私の口から言う事じゃ無いし……では質問が無い様なら最後に…。」

 

 

古城達への事情説明を締め括ろうとする神太郎、彼は姿勢を正し、古城達へ深々と頭を下げた。

 

「改めて言わせてもらうが、この度は此方の事情にキミ達を巻き込み、実害を受けてしまう事になって本当に申し訳ない。だがそれでも、彼に対する気持ちはどうか変えないで欲しい。

彼がこの世界に来て、キミ達と関わり合ってからから失われつつあった人としての心が再び芽生えて来ている。それこそイレイザーになるまでの人情味溢れた少年のね。

だから……。」

 

「お義父様。」

 

頭を下げて悲願する神太郎の肩に、ラ・フォリアがそっと優しく手を乗せた。

 

「悠との付き合いはまだ短いと言っても過言ではありませんが、少なくとも彼は信頼に値する人間だと私は信じてますよ。

…他の人達はどうか知りませんけどね!」

 

「ってオイ!……まぁ、今回の事で灰原がどういうヤツなのかは知ったから、変な意識を向ける事はねぇよ。」

 

「私も先輩方の素性をようやく知れましたからね、とりあえずは信用します。でも変な動きを見せた場合は…。」

 

「オイ。」

 

 

「アハハ。まぁ私も灰原君には色々仮が有るからね~。」

 

「私も世界の為と言うなら、これからの協力を惜しみません!…報酬も今の仕事よりすごくイイですから。」(ボソ)

 

 

「私は…。」

 

「ゼノヴィアは言わなくても分かってるから!………まぁアタシもだけど…。」

 

 

「みんな……ありがとう!」

 

 

神太郎は古城達にこれでもかと言わんばかりの礼を口にする。

 

だがその中で唯一顔を俯かせている凪沙は眠っている悠に複雑な視線を向けているのに気付けた者はほんの僅かだった。

 

 

 

 

 

 

 

「──さて、と。」

 

一通りの説明を終え、古城達を帰らせた神太郎。ラ・フォリアにはこれから大事な話があると言ってラボから退出させ、出した皿と湯呑を片付け終えた神太郎は寝て居る悠達へ視線を送る。

 

「そろそろ薬の効果が切れる時間だね、起きてる?」

 

「………あぁ。だが意識だけは起きてたけどな。」

 

「え?…打った薬、ゾウでも一瞬で眠らせるくらい強い薬だったんだけど?」

 

「あぁお蔭で首から下が全然動かなかった………ったく、口が出せねえ状況で好き勝手言いやがって、なぁにが異世界人だ、変なシナリオ作りやがって。」

 

「でも彼等は疑う余地なく信じてくれたよ?それに言ってる内容は、あながち間違いでも無いしね。

でもこれで下手な疑いを持たれて敵対されるって言う、負担となりうる事態は避けたという事で、良しとしようじゃない。それに万が一また誰かにバレたとしても、彼等の内の誰かが弁護してくれたら余計な荒事にならず丸く収まると思わない?」

 

「……ケッ!イイ性格してやがる…。

オラ起きろバカ!」

 

ーガシャアン!ー

 

 

「ッ!?!?い゛っだあ゛ッ!?!?

ちょっと何この痛み!?……アレ?オレどうしてんだっけ?」

 

機嫌悪く起きた悠は、未だ薬で眠っている秋を蹴って無理矢理叩き起こすと、最早殺意すら出す位の眼光で神太郎を睨み付けた。

 

「ちょ、ちょっと待とうよ!、そんな今にでも殺しに掛かりそうな空気出すの止めたまえよ!」

 

「誰が原因だ、あ゛?テメエのくっだんねぇシナリオ展開でこっちは今にも変身しそうなんだよ。

何が良い?ファイナルベント?スパーキング?フルスロットル?」

 

「何でその三つ!? もしかして強化形態で殺るつもり!?

いや頼むから待ってって!! ちゃんと話す!!話します!!!だから今は落ち着こう!!ね!?」

 

「じゃあとっと話せよ。首飛んだら流石に喋れなくなるからよ。」

 

「首取るの確定なの?……おほん。

まぁ悪ふざけもこの辺にして、ここからは真面目に行こう。まずキミ達が知りたいのは…ハルナ君の急変だね?」

 

「あぁ。」

 

「………。」

 

神太郎の話しがハルナの事になると悠は静かに頷き、秋は目の色を変え何事も受け止める覚悟を持つ。

 

 

「……ハルナ君の性格が突然変わった事、そしてプロトガシャットを正規版に書き換えたあの現象は……。」

 

「「………。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ハッキリ言って私にも全然分からない。」

 

 

「「………。」」

 

 

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「待て待て待て待て!! 確証は無いが、仮説ならある!!だからそのシフトカーはしまって!!ベルトを外して!!」

 

「だったらそう言えよ…で?その仮説とやらは?」

 

「う、うん。

さっき彼等にも言ったけど、イレイザーになる為に必要な条件があると言ったね?その一つが、”特異体質”である事。これは此処にいる全員が知ってる事だよね?」

 

「確か、催眠やら精神干渉が効かないごく稀なヤツだっけ?」

 

「そう。だけどそれだけじゃ無いんだ。キミ達が仮面ライダーに変身できるのは特異体質であるが故に、出来る事なんだ。

現に秋君。キミは体内にファントムであるキマイラを宿しているよね?本来普通の人間にキマイラを宿したら、それだけでその人間は死ぬ。

悠君だってサイガやオーガに変身する為に埋め込んだ完全なオルフェノクの記号が拒否反応起こさずに正常に動いているのはそれが理由さ。」

 

「それが桜井とどう関係あるって言うんだ?アイツが半端とは言え、特異体質で無いのはリジュベの一件で明らかだが?」

 

「そう正にそれなんだよ!!考えられる要因として浮かび上がるのは特異体質者で無い事と…。」

 

そう言いながら神太郎は懐に手を入れ取り出したのは、戦闘時に武器として使っていたバグヴァイザーだった。

 

「以前キミ達に接触して浴びせた抗体プログラム。これにはゲーマドライバーとガシャットを使用する上で必要なバグスターウイルスに対する抗体を半ば強制的に体内で生成する為のものでね。

彼女がエグゼイドに変身出来たのはこのプログラムが原因と見て間違いない。」

 

「じゃあガシャットを書き換えたのもそのプログラムが原因で?」

 

「その可能性は極めて低いね。幾ら変身出来るようにする造られたプログラムであろうと、ガシャットそのものを変えるなんてのは幾らなんでも不可能だ。

とにかく、事の原因が分かるまで彼女はエグゼイドに変身させないつもりだ。このガシャットも詳しく調べてみたいしね。」

 

神太郎の手にはハルナが変身に使ったマイティアクションXのガシャットが握られており、一先ずハルナの事については様子を見るという事で決着が着いたが、秋はハルナに対する懸念が増す結果だけに終わり、不満げな様子だった。

 

「桜井の事は大体分かった。じゃあ次はアンタだ。

どうして神であるアンタが此処に降りて来ている?天界の奴等は此処には来られない筈だ。」

 

「それについては順を追って教えよう。

まず神である私がこの世界に立っているのは、今キミ達が確認してるこの私の体はいわば仮の肉体。アバターって言えばわかりやすいかな?

イレイザーの活動が確定されるまでは天界の住民が仮の肉体で下の地上に降りて転生者の監視、対処を行ってね。今私の本体は、天界のとある場所で隠されている。」

 

「成程。だがそれでも相当な綱渡りをしてるんじゃないか?勝手に地上に降りて、最悪今の立場を落とされるぞ。」

 

「そんな事は百も承知さ。私はそれを踏まえて此処にいるんだよ。」

 

「……アベルか。」

 

神太郎は静かに首を縦に頷く。

 

「私とアベルは見た通り、双子、といえばいいのかな。

私達は元々天界で問題視されてる転生者の暴走をどうにかすべく創造主によって生み出された。一人で動くより、互いに支え合い、時に間違いを指摘する為という意味を込められて…。」

 

「そういう身の上話は後にしろ。俺が知りたいのは、アンタの言ってたこの戦争に隠された真実。それにアベルが関係してるんだろ?」

 

「冷たいねぇ~。あぁ、その通りだ。

アベルはあぁ見えてかなり頭が切れる。下手すれば私を超える程に。現に奴は転生者問題を解決すべく、上にあるプロジェクトを公表し、見事採用されたのさ。」

 

「………まさか。」

 

「そう……転生者による問題を転生者によって対処させるイレイザー計画…あれはアベルが提案したものなんだ。」

 

「アベルが!?」

 

神太郎から告げられた驚愕の真実に悠の目が大きく見開かれる。だが、告げられる真実はコレだけでは終わらなかった。

 

「アベルはイレイザー計画が認められその資格者としてキミが正式に選ばれた頃に姿をくらましたんだ。多分その頃に色々準備していたんだ。自身の欲望を実現させる為に…。

そして……奴は長い時間を経て動き出した…戦場となった、この世界を造り上げ、BABELの五人にライダーの力を与えて転生させた。全ての元凶として。」

 

 

「「ッ!?」」

 

 

悠と秋は今度こそ絶句する。

複合したこの世界を造り上げ、最大の脅威となっているBABELの仮面ライダー達を送り出した張本人。それがアベルだと。

 

コレを聞いて悠の脳裏にある光景が浮かび上がった。ヘルヘイムの森で仮面ライダーマルスこと小金井 竜二との決着が尽きようとした際に、アベルの存在を竜二が気付いた時のあの表情。あれはあり得ないモノを見た、という心情を表した顔であった事を。

 

 

「アベルの動きを知って私は開発途中だったゲーマドライバーとガシャットを秋君の後に見つけ、スカウトした蓮司君に渡した後、彼と一緒にこの世界に降りて来た。

後はキミ等の知ってる通りさ。正体を知らせない為、ゲンムとなって襲撃に近い形で抗体プログラムをキミ等に注入し、完全に後退が出来上がった頃合いを見て調整の済んだガシャットとゲーマドライバーを此処に置いた。」

 

 

「………あーッ!!まさかMr.Gって…。」

 

「そ、アレは私さ。ゲンムのGを取ってね。

悠君が仮死状態とは言え死んだと聞いた時は思わずガシャットの調整を中断してシフトフューチャーの完成図を速攻で仕上げた時は自己ベストを更新したよ…。」

 

「どうりで俺の予想を超える代物なワケだ…。」

 

 

「…私の話す事はコレで以上だ。何か質問はあるかい?」

 

「そうだな……そういえばアベルの使っていたガシャット。あれは俺達の使ってるガシャットとは大分違う代物だがアレもアンタが造ったやつなのか?」

 

「そーだよ!レベル50とかぶっ飛び過ぎたアレ!!アレってオレ達の分もねーの?」

 

単純にアベルの使っていたデュアルガシャットの詳細について聞き出そうとした悠。だが神太郎にとって逆鱗にでも触れたのか、突如奇抜な行動に出た。

 

 

 

 

 

 

「………ふ……ふふふふ…ブァハハハハハッ!!!!」

 

「え?ちょなに?なんなのちょっと怖ッ!!何笑っちゃってんのこの人!?」

 

「………はぁ。」

 

 

 

 

「ダァーーッハハハハハッ!!……ァ~~……アベルのヤツゥ!!

私の作業部屋に忍び込んでブランクのガシャットとバグバイザーを盗んだだけに終わらず、デュアルガシャットの設計図までぇ!!この借りは必ず報わせてやるぞぉ!!アァァベェルゥゥゥゥウッ!!!」

 

「…またか。全く…。」

 

突然奇声を上げてアベルに対する怨嗟を叫ぶ神太郎。蓮司はコレが初めてでは無いのか、頭を抱え溜息を吐いた。

 

「な、なぁアンタ。何か知ってるようだけど…アレ、なんなん?」

 

「……あの発作のような気病を知ったのは、ヤツがオレの元にレベル3のガシャットを渡しに来た時に知った…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数週間前~

 

 

「バグスターの発生が想定以上に速い…急いで残りのレベルアップ用のガシャットを仕上げあげねば…。まずはゲキトツロボッツからだ…。」

 

 

 

 

~ガシャット制作から二日経過~

 

 

「ふぅ~~。ゲキトツロボッツ、ロールアウト完了。

流石にこの体で徹夜はキツイなぁ……だが休んでるヒマは無い。次はドレミファビートだ…。」

 

 

 

 

 

~四日経過~

 

 

「うぅッ……ぎ、ギリギリチャンバラのロールアウト、完、了…ね、眠い…頭も、ガンガン痛むッ……。

もう少しだァァ、後一つでレベル3ガシャットが……睡魔などに負けてられるかァァアアアッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

~七日経過~

 

 

「ブゥゥアァーーーッハッハッハッハッハ!!やったぞ!!やり遂げたぞォォォォォォッ!!!

ダアァァーーーーッハッハッハッ!!バアァアーーーーーーッハアァアァアーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──…つまり、初めての味わった激務の過労の所為で、頭のネジが数本飛んでった?」

 

「ありえん話しだが。アベルのガシャット関連の話しとなると、ああやって発作的に奇声で叫ぶようになった。」

 

「…イヤ何だよそのガシャット病!?」

 

 

「ブゥゥゥゥウーーーーーーッハッハッハッハ!!今に見ていろォォッ!!貴様の作ったゲームよりも、私のゲームの方が上だと証明してやるゥゥゥゥッッ!!!」

 

 

 

神太郎は奇声がラボ内に広がり、悠達の事などほったらかしに端末と向かい合ってひたすらタイピングしていた。余りの強さにキーボードが壊れてしまうくらい只一心に打ち込むほど。

 

 

「……話しが終わったならオレは帰らせて貰う。コイツはここに置いておく。部下なら上司の面倒もしっかり見る事だ。」

 

「はッ!? オイ!!アンタ何オレ達にめんどくさそうな相手押しつけて逃げようとしてんだ!!」

 

「コイツの奇病の相手にはもう疲れたのでな…。」

 

「……オイ。」

 

ラボから出ようと階段を上る蓮司を、悠は呼び止めた。

 

「いくらアイツが連れて来たヤツだとしても、俺はまだお前の事を認めたつもりは無いぞ。」

 

「貴様の意見などオレには必要ない。言った筈だ、オレは転生者を斬る為にこの世界に来た……特にお前をな。

次に戦う時は今度こそ斬り捨てる。」

 

「ハッ、良い様にボコられた奴がよく言うぜ。」

 

「あの時の動きはもう見切った。同じ轍は踏まない。」

 

「………クソガキが。」

 

蓮司はそれだけ言い残しその場から去って行く姿を、悠は悪態を吐きながら見送った。

 

「…なぁ悠兄さん。アイツと一体何があったワケ?見たまんま只ならぬ関係ってカンジだけど。」

 

「余計な詮索はするな。コッチの話しだ……それよりも。」

 

 

 

 

「ダアァァーーーーッハッハッハッ!!ゲッヒャアハハハハハハハッッッ!!!」

 

 

 

「………アレ、どうすっかなぁ。」

 

「………殴って、静かにさせる?」

 

「採用。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、深夜ビルの屋上の一角。アベルは寝転びながら手にしたバグバイザーの画面を眺め、満足気に笑みを浮かべる。

 

「この短い期間で五つ…うん♪順調だね♪」

 

画面にはブレイド、電王、キバ、フォーゼ、ウィザードのシンボルマークが写しだされていた。

 

「そろそろ次のゲームが出て来る頃合いかなぁ……フフ♪次はどんなショーになるのかな♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

「Zzzz………ハッ!……アレ?私は何時の間に眠ってしまったんだ?」

 

デスクに持たれる形で眠っていた神太郎は勢いよく頭を上げて起き上がった。

ラボには悠達の姿は無く、何故か後頭部がガンガン痛むのを不思議に思いながら、電源の付いている端末の画面を見て自分が手を付けていた事案を思い出し、再び作業を始めた。

 

「そうだ。想定外はあったが、レベル3のガシャット全てが起動し得る事が出来た戦闘データ……うん、これだけあれば十分だ。

後はデータを送れば、このガシャットは全てのライダーに適用出来る…。」

 

専用の機材を取り出し、端末と繋げると次に取り出したのは一本のガシャット。

金色で持ち手の縁が竜の頭部を模した一変変わったガシャットを機材に挿し込むと、端末の画面にゲームタイトルがでかでかと写された。

 

 

 

 

ー DRAGO KNIGHT HUTER Z ー

 

 

 

巨大な竜を相手に立ち向かう騎士達の物語が、現実で起きようとしている事はまだこの時誰も知らなかった。

 

 

 

 

 





早々と流れた夏映画の予告、あれまさかどこぞの探偵ライダー達みたいに混ざっちゃうんですかね?

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