その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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今年最後の投稿です。

2017年、この日になるまで読んでくださった皆様、誠にありがとうございました。

来年もこの作品をよろしくお願いします。


起動

アベルが巻き起こした新たなる怪人、バグスターの暴走。

 

バグスターは歴代の仮面ライダー達が苦戦を強いられたラスボスの姿と能力を模倣し、ウイルスとして人間に感染すると感染した人間の体を乗っ取り、感染者は消滅してしまうという恐ろしきウイルスの怪人だった。

 

悠達の前に現れた電王のラスボス、デスイマジンバグスターの前に攻撃が効かず窮地に追いやられた矢先突如として現れた彩守 蓮司は仮面ライダーブレイブへと変身しデスイマジンを撃破する。

 

後にアベルからバグスターウイルスとライダーガシャットの存在を知らされ、バグスターの撃破にはガシャットの存在が必要と知りどうすべきか悩み耽ってるなかラボに悠達のゲーマドライバーとライダーガシャットが送られて来た。

 

 

残るバグスターは、後16体──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──んじゃ、おさらいすんぞ。」

 

「オッケー。」

 

バグスターの存在を明るみに出た日から一日が経ったこの日、悠と秋はリビングのテーブルを挟んで目の前の取り扱い説明書と書かれた冊子の内容を全て理解しその内容を復唱しようとしていた。

 

テーブルの上に置かれていた説明書と、ゲーマドライバーとガシャットを手にしながら。

 

「まずは、そのままガシャットを挿し込んで変身するあのキグルミみたいなのが、レベル1ね。

レベル1は発症した感染者とバグスターを切り離して分離させる事が出来る唯一の形態、と。」

 

「見た目通りスピードは若干遅いがパワーはある。

それでも体がデカい分的になりやすくなったから、当たらないよう動き回りながら切り離すのがセオリーだな。」

 

「それこそゲームみたいにね。んで、レバーを開くとレベルが上がって、レベル2。分離したバグスターを倒すのがメイン、て言うか通常フォーム?」

 

「レベル2は使ってるガシャットのゲームを基にした能力と武器をメインに扱える。

あの野郎は俗に言う、RPGのゲームを使っていたから火やら氷なんか扱えたってワケだ。」

 

「それに比べてコッチはこれねぇ…オレはともかく悠兄さんは大丈夫?それまんま、シューティングゲームだけど、悠兄さんってゲームしねえだろ?」

 

「バカ、これからやるのはゲームじゃねえよ。それにな、俺の扱う武器の中じゃなぁ、銃が一番得意なやつなんだよ。」

 

「ウッソー。初めて聞いたよソレ。いつもは素手か剣でやってるし。」

 

「あえて不得意なヤツを使って体に慣れさせてんだよ。日々修業ってヤツ。」

 

「ふぅ~ん…ま、それが本当かどうかじき分かるとして…。」

 

何処か信じていない視線を向けながらも、秋はテーブルに置かれた黄色と黒いガシャットを見せながら説明する。

 

「ドライバーにもう一つガシャットを挿し込んで、もう一度レバーを開けば、パワーアップしてレベル3になる。」

 

「ガシャットを用いたライダーのレベルは1上がっただけでもスペックの差が歴然。実際目にしてるしな…。」

 

悠が思いつくのは最初と二度目のゲンムの姿。特に最初の時は、同時に放った必殺技の競い合いで競り負けたのが

今でも脳裏に焼き付いており、レベル3の力がどれ程のモノかを理解している気であった。

 

一通りの使い方を復習した上で説明書のページをめくる悠。開いたページには、要注意事項と大きく書かれたぺージであった。

 

「胸のライダーゲージはライダーの生命線を表すゲージ。ゲージがゼロになればゲームオーバー…消滅する。」

 

「ふぅん…正に命懸けのゲームてワケね…。」

 

「俺からしたら今更過ぎて何の動揺も感じないけどな。」

 

「ハハッ、それもそうか!」

 

「…まぁ、唯一の心配事と言えば……コレをちゃんと俺等が使えるかどうか、だがなぁ…。」

 

 

その言葉に同乗する秋の頷きを見てから悠は視線をゲーマドライバーとガシャットへ移す。

 

正直な話、悠自身は目の前のドライバーとガシャットに強い不信感を抱いていた。

誰にも気づかれる事無く自分等の拠点に置かれ、尚且つガシャットが必要不可欠だと言うタイミングで手元に来たこれ等が。送り主に心当たりがあるものの当の本人は現在行方不明。

 

昨日からドライバーとガシャットに変な仕掛けが無いかを一晩かけて調べてみるが、ドライブ以降のライダーシステムとだけあってその根本的なメカニズムをまず理解せねばならなかった為にまだガシャットを用いての変身をしていないのである。

 

こうしてドライバーの使い方を今おさらいしてる間も悠にとっては只の休憩時間。まだガシャットどころかドライバーの解析も一割と進んでいないのである。

 

「でもさ、流石に罠でコレ送られるなんて事は無いんじゃない? だってこれでオレ等殺しちゃうより、自然とバグスターに殺られるんだし。」

 

「あのなぁ、いくらなんでも欲しいモンがいきなり目の前に現れて、わーいやったー!、で使うヤツいるか。

多少なりとも調べなきゃ、安心して使えねえっての…。」

 

「まぁそれもそうだけど……いい加減あっちの事も気にしてあげたら?」

 

秋が指差す方へ目をやると、食卓用のテーブルに腰掛けてるハルナとラ・フォリア。そして昨日に続き灰原家へと訪れた古城と雪菜が差し出されたケーキを食べていた。悠と秋が此方に目を向けていた事気付いて一瞬がビクッっと上がる仕草を見せた雪菜は咳払いをして席から立つ。

 

「お話を済みましたか?」

 

「まぁねぇ。あと、口にクリーム付いてるぞ。」

 

「ラ・フォリアちゃーん、オレにもケーキちょーだい!」

 

「あぁ俺にも。脳に糖分送らにゃしんどいわ…。」

 

「はーい!」

 

「ッ…。オホンッ!まぁ食べながらでもいいので昨日伝えられなかった重大な話を…!」

 

「オイ秋。俺そっちのチョコのがいいんだけど。」

 

「えー?そこは年長者が譲る場面でしょ?いいじゃんそっちのショートケーキで。」

 

「バカ俺はまだこの後解析やらやるのに糖分欲しいんだっての。これからの功労者に譲れよ。」

 

「聞いてるんですかお二人共ッ!?これは二人にとって冗談抜きの重大な報せなんですよ!?」

 

「「はい?」」

 

二人が食べるケーキについて口論してるなか雪菜は顔を真っ赤にしながら荒い息を整えて語り出す。

 

「お二人に伝えるのは、獅子王機関から私に下された指令です……今後、仮面ライダーを発見した場合は最優先に…抹殺せよとの事です。」

 

 

「「……。」」

 

雪菜から告げられた報せは、場の空気を静寂に変えた。

 

裏の組織である獅子王機関。それが下した指令の意味は仮面ライダーの存在が世界にとって真祖を超える一級危険対象として見た事。この間のBABELの行動が決め手となったのだ。

 

雪菜にとってコレは二人に対する警告であった。組織の一人としては目の前の対処を真っ先に殺さねばならないが今までの二人の行動を見てBABELとは違う二人を殺す気になれない…今でもおちょくられてる事を除けば。

 

流石にバカな事をするとは思わないがこれで自重してくれれば、少なくとも協力的になって今まではぐらかせてきた真実を教えてくれると思っていた雪菜であったが…。

 

「あぁ、そう。ま流石に連中がああも派手に動けばなぁ。」

 

「余計な事してくれちゃってるよねぇホント…あ、そうだ。

なんならケーキ半分こに等分して食おうよ。その方がショートとチョコ両方楽しめるっしょ?」

 

「ふむ、確かに…なら切り分けるか。」

 

「………。」

 

対して反応が薄い事に何も言えない雪菜であった。

 

「……あの、二人共ちゃんと聞いてました?獅子王機関は先輩達の命を狙っているんですよ?」

 

「ハイハイ聞いた聞いた。ていうか、連中が国攻めしたっての聞いてからこういう事になるの想像してたし…ん。」

 

「ていうかぶっちゃけ、今そんな事よりもっともヤバい連中と相手しなきゃいけないからさぁ、オレ等…お、サンキュー………。

ねぇ悠兄さん可笑しくない?なんで三角形のケーキを縦じゃなくて横に切るの?なんでオレ先っちょの部分?なんでそっちはデカくてイチゴの乗ってる部分喰ってんの!?」

 

「あー悪い、徹夜明けで手元狂っちまったわぁ。」

 

「せっこ過ぎるわぁッ!!今時小学生でもやんねぇよこんなん!!

ちょっと姫柊ちゃん!!丁度良いからこの人ぎゃふんって言わせてやってよ!!」

 

「え………?」

 

「ぎゃふん。」

 

「だぁあああああッ!!!こんんのォォッ!!!ケーキ返せええええ!!!!」

 

 

雪菜は目の前の二人の事が益々分からなくなってきた。命を狙われると言っているのにたかがケーキで争っているこの二人のマイペースさに。

 

 

「…なんかアイツ等、見ていてホンットブレねぇなぁ…。」

 

「そこがイイ所じゃないですか。中々いませんよあぁいう人達は。」

 

「付き合わされるこっちは疲れるけどね……ッ、二人共!!喧嘩はお終いよ!!」

 

「んん?」

 

「イダダタタタタッッ!!顔がッ!!顔の形が変わっちゃう!!!」

 

秋の顔にアイアンクローを決めている悠に静止を掛けたハルナは見ていた携帯のSNSサイトの内容を二人に告げた。

 

「出たわよ例のバグスター!! また街で派手に暴れているわ!!」

 

「ッ!……そっか。」

 

秋を手放した悠はテーブルのゲーマドライバーとガシャットを懐に入れる。

 

「おい秋、後で買ってやっから早く支度して行くぞ。後念の為桜井も来てくれ。感染者や万が一を考えて。」

 

「言ったな!?よォーしッ、後でホールケーキ頼んでも絶対文句言わせねえよ!?」

 

「了解…で、それ使うの?大丈夫なのそれ?まだ解析終わって無いんでしょ?」

 

「それは相手によるよ。とにかく急ぐぞ。」

 

「ま、待ってください灰原先輩!!」

 

雪菜は現場へと向かう悠を思わず呼び止めてしまった。

呼ばれた悠は若干迷惑そうな目を雪菜に向けて来るが、それでも雪菜は一つ、どうしてもこれだけは知っておかなければいけないと思って呼び止めたのだ。

 

「先輩は…先輩方は、その力を何のために使うんですか?正義ですか?それとも目的や使命ですか?」

 

「…何の為、ねぇ…そんなの最初っから決まってるよ。」

 

「ッ…なんですか?」

 

「自分の為。使いたいように力を振るう。そんだけ。」

 

「なッ…そ、それじゃあただの暴力と大して変り無いですよ!!」

 

「正義だ使命だ義務だなんだ、そんなん掲げて戦っても変わりないじゃん、傷つけて壊してんだから…悪いがこのハナシ終わり、急いでいるんで。」

 

「あ、いけないいけない。 悠、忘れ物ですよ。」

 

「え? 忘れてるもんなんか…。」

 

必要なドライバーとガシャットは今手に持っている為忘れているモノなど無いと言おうとした悠だが、顔を此方に近づけて指で自身の口を指差すラ・フォリアが。

 

「これから大きな戦いになるのなら、必要じゃありません?おまじない。」

 

「……いや、人めっちゃ要るんですけど。」

 

「私は気にしませんよ?」

 

「俺は気にする。」

 

「………。」

 

「………ハァ、まぁ実際ご利益はあったからな。」

 

内心、女性に本当に弱くなったと感じた悠はラ・フォリアに近づいて唇が触れるだけのキスをした。

触れるだけの短いキスだったが、ハルナは既に見慣れたのかやれやれと言わんばかりに肩をすくめ、古城と秋は突然の光景にぽかんと口がみっともなく開いた状態になり、雪菜は前回のハルナ同様に顔を赤く肩を震わせていた。

 

「…うん。確かに貰った。」

 

「はい。くれぐれも無茶は避けてくださいね?」

 

「それはアンタのまじない次第だね。」

 

「まぁ、それは責任重大ですね。」

 

「アンタに押し付ける程落ちぶれちゃいないよ…ってなにバカがアホ面かましてんだ、さっさと行くぞ!!」

 

「灰原先輩!!……ッ、桜井先輩!!」

 

「えッ、オレ?…まぁオレは悠兄さんに付いて行くって決めたし、今持ってる力を使わなきゃすっごくヤバい事になっちまうからな!!」

 

「私は弟が心配だから着いてるだけ!そういう事だから、じゃ!」

 

余りの簡潔過ぎる内容に雪菜は空いた口が塞がらなかった。

世界を壊すと宣言をしたBABELと違いあまりに単純。命を賭けてまで自分のやりたいようにやる悠達の考え方が全く分からなかった。

 

どうしても分からない。何が彼等をそこまで動かすのか、どうしてそこまで戦うのかが。それを知る為に雪菜は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、市街地では昨日に続き人々が恐れ、逃げ果せていた。

 

 

圧倒的な威圧感から逃れる人々の背に向けているその存在は昨日のデスイマジンとは違ったタイプの怪人。

 

コウモリを彷彿させる頭部と体にステンドガラスの様な模様の体組織。とある世界で吸血鬼の如く人間の生命力、ライフエナジーを吸い取り力を付ける怪人・ファンガイアの頂点。

 

”暁が眠る、素晴らしき物語の果て”の真名を持つファンガイア・バットファンガイアバグスターは完全体へと生まれ変わる為に目的地を目指していた。

 

 

鬱陶しく視界と耳に入る人間の姿と悲鳴を消したい所を抑えてまで真っ直ぐに向かってる施設を目にした途端に手を上に翳すと、手の平からウイルスである粒子が噴き出す。

バットファンガイアは自身の配下である”黒い死”を真名に持つビーストクラス、ラットファンガイアの軍勢を生み出し、目の前の施設。保育園を指差す。

 

『行け、この私が完全なる存在となる為の贄を捧げるのだ!!』

 

高らかに放った言葉にラットファンガイア達は保育園に向かって行進して行く。

だがその足を止めるかの如く前に立つ人物が一人、バグスターの出現を気付いて駆け付けた蓮司だった。

 

「昨日に続いて三体目か…思ったよりウイルスの万延は早いらしいな…。」

 

ゲーマドライバーを身に付けガシャットを取り出す蓮司。起動させようとスイッチを押そうとした時耳に入るエンジン音が手を止めた。

 

二台のバイク、エクステンダーに乗った悠とハルナを後ろに乗せた秋は、蓮司とファンガイア達の間に堂々と入り乱入してきた。

 

「貴様等…。」

 

「ファンガイア、キバのガシャットか…!」

 

「どうやら早速使う事になりそうだね!」

 

「え?彩守君!? どうしてここに、ってそのベルト! もしかしなくても、彩守君もライダー!?」

 

「…ちょっと姉ちゃん。どういう事? なんでこのいけ好かない野郎の事知ってるの?……まさか!」

 

「違う!アンタの思ってる事は大体予想できるから違うわ!!

クラスメイトよ!!転校で入ったクラスが私のクラスだったの!!」

 

「なぁんだ、同じクラスかぁ……はぁああッ!? こんなヤツが姉ちゃんと同じクラスだぁ!?

認めねえ!!お父さん認めませんよ!! いいか姉ちゃん、あぁいうクールぶってるヤツは顔に出さないだけで内心すっごいムッツリスケベだから絶対に近づくなよ!! 姉ちゃんの貧相なボディを見て、よからぬ妄想してるに違いねえ!!」

 

「何時からアンタは弟からお父さんになったのよ! ていうか誰が貧相な体よ!! 周りに居るのがデカいのばっかで、私だってねェええぇええッ!!!!」

 

「イタダダダダッ!!! ギブ!ギィーブッ!! 姉ちゃんのパワーでアイアンクローは洒落にならねえって!!!」

 

「…下らん。 漫才がしたいなら余所でやれ。どの道此処で貴様等が出来る事など無いからな。」

 

「果たしてそれはどうかな、と。」

 

「ッ!、それは…。」

 

揉み合ってる秋とハルナをスルーして蓮司はファンガイア達の前に出るが、ドライバーを手にした悠が蓮司の前を塞ぐように出て来る。

 

「これで俺等も本格的に参戦だ。残念だったなぁ、カッコ付ける場が無くなって。」

 

(ゲンムめ…奴等にもドライバーを渡したのか。)

 

「さて…始めるか。」

 

「あ゛~イッデェ、顔の形マジで変わりかけた…んじゃ気を取り直して、おニューの変身いっちゃいますか!」

 

顔を擦りながら悠の隣に並び立った秋。二人はゲーマドライバーを装着すると悠は紺色の、秋は黄色のガシャットを取り出しそれぞれの起動スイッチを押した。

 

 

 

<< BANG BANG SHOOTING >>

 

 

悠の背後に現れたスクリーンから次々と出て来るドラム缶が辺りに散りばめられる。

 

ターゲットを倒さない限り無限に敵がパワーアップして来る難易度マックスのシューティングゲーム、”バンバンシューティング”。

 

 

 

<< BAKUSOU BIKE >>

 

 

秋の背後に現れたスクリーンからは優勝トロフィーが散りばめられる。

 

破壊、妨害、あらゆる行為が認められるトップを競うバイクレーシングゲーム、”爆走バイク”。

 

 

 

悠はガンスピンの如くガシャットの持ち手に指を掛け器用に回し、秋はその場でターンを決めて体を半身に向ける。

 

「変身ッ」

 

<< ガッシャット! >>

 

 

「変身ッ!」

 

<< ガッシャット! >>

 

 

<< Let`s GAME! Mettya GAME! Muttya GAME! Whats your NAME?──>>

 

 

二人の周りを浮かぶアイコンから悠は前に出て来たアイコンを撃ち抜く動作で選び、秋はキャラクターを足で蹴って選ぶ。

 

そしてアイコンは二人の姿を包み込み──。

 

 

<< I`ma KAMEN RIDER! >>

 

 

二人が変身した姿は蓮司のブレイブの様な二頭身のキャラクターへ、悠の変身したライダーはSTGと書かれたヘルメットを被り右目をバイザーらしきモノで隠した赤目のライダー。

秋はバイクのハンドルが耳みたいになっており頭頂部にトゲがモヒカンの様に縦一列に並び、両手にはバイクの車輪型の武器、[フロントアームドユニット・リアアームドユニット]の二つを手にしていた。

 

 

「っしゃあッ! 一番槍貰い!!」

 

「オイ!…ったく。」

 

秋は手にしたアームドユニットを構えながら単身ラットファンガイア達の元に突っ込んで行く、悠はベルトに手を翳すと出て来たアイコンに触れ、一丁の拳銃を手にした。

 

<< ガシャコンマグナム! >>

 

「ちゃんと手筈分かってんだろうなあのバカ…ハッ!」

 

ハンドガンの形状で銃口の無く、ガシャコンソードと同じAとBボタンが取り付けられたガシャコンウェポン[ガシャコンマグナム]を構え、遠くに居るラットファンガイアへ的確に射撃しながら悠も動き出す。

 

後ろから見ていた蓮司はラットファンガイアを相手に立ち回る悠と秋の姿を少し見ていたが、みるみる内に眉間にシワが寄るとガシャットを起動した。

 

<< TADDLE QUEST >>

 

「あんな連中だけに任せるなんて冗談じゃない…変身ッ!」

 

<< ガッシャット! >>

 

<< Let`s GAME! Mettya GAME! Muttya GAME! Whats your NAME?──>>

<< I`ma KAMEN RIDER! >>

 

<< ガシャコンソード! >>

 

 

「いざ──ハァッ!!」

 

蓮司もブレイブレベル1へと変身しラットファンガイア達との戦闘に加わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!──いよっとォ!!」

 

悠は四方八方から襲い来るラットファンガイア達を持ち前の体術と的確な射撃で相手取っていた。

 

死角から肩を掴んできたラットファンガイア腕を払い足を掛けて転倒させた所を抑え付け、前から来た二体をガシャコンマグナムで撃つと抑えたラットの頭部を撃ち抜く。

体をローリングでその場から移動しながら牽制でガシャコンマグナムの引き金を引くのを止めずラット達に銃弾を浴びせる。

 

戦法はスティールソルジャーやG4の時と同様に銃撃メインと近接戦闘を合わせたスタイル。ただあの時とは違い銃弾を再装填する必要が無い分弾切れを気にせず撃ち続けられるのが利点だった。

 

たがそれと同時に不利な所もある。

 

(あー、思った程じゃないけど動き辛い。特に足が短いから上手く蹴れないし!)

 

レベル1の姿はその見た目から分かる通り細かな身動きがし辛い体躯だ。特に悠の様にトリッキーに動くタイプは少しの異変でも動きのキレが大分違ってくる。

 

どうにか出来ないかと思考を働かせていた悠。その時目に付いたのは宙に浮かんでる数々のドラム缶だった。

 

「あれだ!…ホッ!」

 

跳躍した悠は浮かんでるドラム缶の上に乗る。ドラム缶は下に落ちる事無く悠を乗せた状態のまま浮かんでいる。これに悠は好機と思った。

 

下に居るラット達を上から狙い撃ちしていく悠。これにラット達は武器であるマスケットのような銃を取り出しドラム缶の上にいる悠目掛け撃ち始めて行く。

 

「よっとォッ!!…ソラソラソラァ!!」

 

悠はドラム缶の上から飛び退き、隣に浮かんだドラム缶を足場にそのまた隣へ。横に、上に、下に、宙を縦横無尽に駆けながら悠は下で此方を撃ってくるラットファンガイア達へ一発も無駄撃ちをする事無く数へ減らしていく。

 

「ハッ、これって俗に言う作業ゲーってかァ!?」

 

 

 

 

悠がドラム缶を活かした戦法でラットファンガイアを倒していく中、離れて戦ってる秋も独特の戦いを魅せていた…。

 

 

 

「オォォゥワワァアアアァアッ~~~~!?!?!?

チョッ誰かァッ!!誰か止めてェェェ~~~~ッッッ!?!?!?!?」

 

 

自身のコマの様に凄まじい速さで回転しながら固まってるラットファンガイアをボーリングのピンの様に弾き飛ばしてる秋。だがその口ぶりから察するに今行ってる回転攻撃は上手く制御出来ないようであった。

 

それでも半ば捨て身の戦法は効果があり、ラット達の倒すペースは悠やブレイブより上である。重量のある体躯で遠心力をつけて増した体当たりはラット達を悉く打ち倒していく。

 

 

『この狼藉共め!──カァァアッ!!!』

 

「「ッ!!」」

 

「ヌォオオォッ!?」

 

バッドファンガイアはラット達を打ち倒していく悠達に業を煮やしたか、全身から赤いエネルギー派を出し悠達へと攻撃を仕掛ける。悠とブレイブは即座に下がってダメージを軽減したが、秋は制御できない状態なのでエネルギー派をモロに浴び吹き飛ばされる。

吹き飛ばされた秋は仰向けに倒れ長く回った事による酔いとダメージで若干ふらつきながら立ち上がった。

 

「オエッ、あーー、やっと止まったぁ…。」

 

「お前何遊んでんだよ。ちゃんとやれ、撃つぞ。」

 

「だってェ、止まらずに動くならこうかなぁってやってみたら、思いの外じゃじゃ馬だったもんで。」

 

「フン、使い熟せずに死合に挑むとは、浅はかな…。」

 

「あぁ!? オイコラ待て!誰が浅はかだ!?」

 

「お前の事だよ。」

 

「悠兄さん!?」

 

ブレイブの挑発とも言える言動に秋は意義を立てるが、ブレイブは聞くまでも無いと言わんばかりにバッドファンガイアの元に駆ける。

 

ブレイブはガシャコンソードを振るいバッドに斬り掛かかりに行くが、バッドの両腕に取り付けられてる鉤爪の様なモノでその剣は届かずにいた。

 

流石にラスボスを相手に一筋縄ではいかないと判断した悠は辺りにあるドラム缶やトロフィーに目をやる。送られた取扱説明書の内容を思い出し、行動に移した。

 

「正直嫌なんだけどなぁ、こういう運任せってのも!」

 

悠がドラム缶をマグナムで撃ち抜く。撃ち抜いて壊されたドラム缶の中に入っていたのは大きな絵柄が描かれたメダル。絵柄を見た悠は更にメダルを撃ち、弾いた拍子で自分の手元まで持っていくとメダルは体に飲み込まれるように入って来た。

 

 

<< 透明化! >>

 

「ラッキー!……マジで効いたよ、おまじない…。」

 

ぼそりと呟きながらも悠の体は次第に色を失い、その姿が見えなくなっていく。

 

秋はその一連の行動を見て、傍にあったトロフィーに目をやった。

 

「へぇ~、そういうカンジ?…なら、よッ!」

 

秋は悠と同様にトロフィーを壊すと中からメダルが現れたのを確認し、それを自身の体へと取り入れた。

 

 

<< マッスル化! >>

 

「お!イイの引いちゃった? だったらこのまま行くぜェ!!」

 

秋は体内から底知れぬ力が満ちて行く感覚から当たりを引いたと思い、ブレイブと戦ってるバッドファンガイア目掛け駆けて行く。

 

 

二人が体内に取り入れたメダルは”エナジーアイテム”と呼ばれるサポートアイテム。個々のメダルによって様々な能力が備わっており、引き当てるメダルはドラム缶やトロフィーに隠れてランダムだが能力によってはレベルの差を縮めて戦局を大きく変える可能性を持つ強力なアイテムだ。

 

 

雄叫びを上げながら近づく秋の姿を捕えたバッドファンガイアはブレイブを鉤爪で振り払い、意識を無謀にも突っ込んで来る秋の元へ。

鉤爪にエネルギーを送り、放とうとするバッドの腕が秋に向けられようとしたが、その腕はどこからか放たれた銃弾によって見当違いの元へ放たれていった。

 

『ヌッ!? 一体何処から…!?……クッ!?!?』

 

銃弾が放たれたであろう場所へ目をやるがそこには誰の姿も見られない。捜そうとするバッドだが今度は左足を撃たれ膝を着いてしまい、見えない所から次々と容赦なく銃弾が振りかかって来る。

 

 

悠が引き当てたエナジーアイテム、透明化は文字通り一時的に姿を透明にして隠す能力。悠はコレでバッドの目に捕えられる事無く秋の援護を行い、隙を作っていた。

 

秋の引き当てたエナジーアイテムはマッスル化。マッスル化は攻撃力を一時的に上げる能力を持っている。攻撃力が上がった秋は悠の作った隙を突いてアームドユニットを握り締める。

 

「デェアァァァッ!!!」

 

『グウアアァアッ!!!!』

 

秋の攻撃を受けたバッドは胴に傷跡を残す位に受けて吹っ飛ぶ。

 

するとレベル1の能力である分離が効いたのかバッドファンガイアの体から一人の男性が出て来た。

 

「よっし!分離成功!!……アレ?」

 

「ん?」

 

「あの頭、どっかで…?」

 

バッドファンガイアから出て来た人物に、悠、秋、ハルナは目を細めて注視する。

 

学園の制服に特徴的なスキンヘッド。気を失っており悪夢でも見ているのか脂汗が流れ寝言が出る程に魘されてる。

 

 

「うぅ……や、止めろぉ……子供に……オレの前で…子供達、を……傷付けるなぁ…!!」

 

 

 

 

「「「…ってまたお前かよ!!!」」」

 

 

以前のリジュベロイミュード騒動同様に今度は感染者として巻き込まれた井上 準に三人は胸の内を盛大に合わせて放った。

 

 

『グゥゥ…おのれ狼藉者共ォ!私の復活に必要な儀式をォッ…!』

 

 

「オレとあんな奴等を一緒にするな!!

仕切り直しだ──段位・二段!」

 

 

 

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

 

<< 辿る・巡る・タドル・メグル──TADDLE QUEST! >>

 

 

『かかれぇ!!我が僕共よッ!!』

 

「いざ参る!」

 

 

 

バッドファンガイアはレベルアップしたブレイブに再度剣と銃を持たせたラットファンガイア達を出現させ向かわせる。

 

放ってくる銃弾をブレイブは腕に取り付けられた盾とソードを振るいながら駆け、その勢いを止めない。

短い両刃剣を持った複数のラットがブレイブに斬り掛かりに行く。

 

「ッ──セァアアッ!!!」

 

ブレイブは駆ける足を止める事無く、振り下ろされる剣の軌道を読んで僅かな動きで回避しながら次々とラット達を斬り捨てて行く。

 

 

そして悠と秋の下にも武装をしたラット達が襲い掛かり対応してるなか、悠は列を組んでる銃を持ったラット達を斬っていくブレイブの姿を見えた。

 

「野郎にイイとこ持ってかれるか!

秋!コッチは任せたぞ!!」

 

「あッ!ズリィ!!」

 

 

 

雑魚の相手を秋に任せその場から跳んで離れて行く悠。

着地した場所では、バッドファンガイアとそれを守る様に立ちはだかるラットファンガイア達を銃口を向けていた。

 

 

「さぁて本領発揮と行くかぁ──第弐戦術」

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

 

ベルトのレバーを勢い良く開くと現れたゲートを潜り、その場から跳ぶ。

 

 

 

<< BaBaBANG! BANG!BaBANG! Yeah!──BANGBANG SHOOTING! >>

 

 

纏っていたアーマーが弾けた様に二頭身からスリムな四頭身へ。

紺色に所々黄色のラインが入ったボディスーツと頭部のヘルメット、そしてレベル1時に無かった右肩を覆う黄色のマント[スタンヘキサマント]を纏った銃士。

 

 

仮面ライダースナイプ シューティングゲーマーレベル2

 

スナイプはガシャコンマグナムの銃口を真っ直ぐバッドファンガイアへと向ける。

 

「削除、開始。」

 

その一言が合図であるかのようにラットファンガイア達は一斉に銃弾を放った。

 

真っ直ぐスナイプへと放たれた銃弾は広範囲に散らされるなかスナイプその場から跳躍。再びドラム缶を足場に跳び進み、列を組んでるラットファンガイア達のど真ん中へと落ちて行く。

 

足場の確保の為着地点にいるラット達を一発で撃ち抜くスナイプは、着地点を確保しラット達に自ら囲まれにいったスナイプはマグナムのBボタンを押す。

 

銃口部にエネルギーが溜まると身を低くしブレイクダンスの如く回りながら引き金を引く。すると一発づつしか出て来なかった弾丸は高速で連射出来る様になり、囲んでいるラット達に銃弾を浴びせる。

 

マグナムの連射が終わったスナイプに後ろから襲い掛かるラット。だがスナイプは後ろに目があるかのように後ろに足を突き出して胴に蹴りを入れる。そのまま体を捻り、逆の足でラットの側頭部に回し蹴りを叩き入れた。

 

「やっぱスリムな方が戦いやすい、な!」

 

<< ズ・キューンッ! >>

 

前方から突き出された銃を蹴り上げ、マグナムを放ったスナイプはAボタンを押すとマグナムの銃身が展開されハンドガンモードからライフルモードに変形する。

 

「ハッ!」

 

四方から殴りかかって来たラット達をから逃れる様に跳び再びドラム缶の上へ。ライフル構えたスナイプはスコープ越しから見えるラット達に狙いを定め引き金を引く。

 

「ッ!」

 

放った弾丸は密集しているラット達を大きく吹き飛ばす爆風を起こした。ライフルモードはハンドガンに比べ連射は効かないが一発の威力はハンドガンの50発相当に及ぶほど。

更にスナイプはBボタンを押しチャージする。マグナムから警告音が鳴りフルになって放った弾丸は先程放ったのよりも大きな爆風を巻き起こし、気付けば全てのラットファンガイア達を倒していた。

 

「…ハ、イイねコレ。気にいった。」

 

『えぇいッ、使えぬ奴等め!! ヌウッ!!』

 

「っとォ──ッ!」

 

『グァッ!!』

 

守るモノが居なくなったバッドファンガイアはスナイプ目掛け攻撃を放ったが、スナイプは飛び降りて回避し落ちた状態にもかかわらず銃弾を放ちバッドファンガイアへと当てた。そこへ…。

 

 

「ハァアッ!!」

 

『ヌアァアッ!!!』

 

此方も全てのラットファンガイアを倒したブレイブが銃弾を受けて怯んだバッドに一撃喰らわせた。

 

「オレの存在を忘れないで貰おうか。」

 

『おのれ小癪な真似を…!』

 

「さぁーて雑魚掃除は終わったと、残す的はアンタだけ、っとォ。」

 

「ちょーーーっと待ったぁ!!」

 

ブレイブ、スナイプがバッドファンガイアを追い詰めるなか、此方もようやく片付いた秋が遅れてスナイプの横に並んだ。

 

「主役は遅れて登場するってな! こっからがオレの見せ場だぜ!」

 

「いや別にお前居なくとも倒せんだけど。」

 

「そうだな、貴様等が居ない方がもっと早く終わっただろうな。」

 

「あ゛ぁ? 俺の造ったチャンスでようやく一発当てたヤツがよく言うわ。」

 

「なんだと?」

 

「だってそうだろ? 結果的に分離させたのは俺等だし? それに上手く便乗して美味いとこ一人持ってこうとしたセコイ人がよく言うわぁ、ってハナシ。」

 

「貴様…貴様から先に斬り捨ててやろうか。」

 

「やってみろよ、セコ剣士。」

 

一触即発の空気を流すブレイブとスナイプ。それぞれ武器を持つ手に力が籠められ危うく火花が散らされようとしていた。

 

 

「あーぁーもう何やってんだが。

ま、そうこうしてる間にパパっとオレが終わらせてやんよ!──二速!」

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

 

完全に蚊帳の外扱いにされた秋は単身でバッドファンガイアを撃破しようとターンを決めながらレバーを開き、現れたゲートを潜った。

 

 

<< 爆走!独走!激走!暴走!──BAKUSOU BIKE! >>

 

 

 

「っしゃぁッ!……………アレ?」

 

「?…ッ!?」

 

「……何だアレは?」

 

『ヌゥ?』

 

「え?…えぇ!?」

 

 

ゲートを潜り体の装甲が弾けた秋の姿に誰もが視線を釘づけだった。

 

「っかしいなぁ、なんか手足の感覚が…ていうか何か視線が前より低いような?………ん?んんんんッ!?!?

な……なんじゃあァァアアアコリャアァアァアアア!?!?!?」

 

衝撃的過ぎる現実に叫ばずにいられない秋。だってそうであろう…。

 

変わった姿が人型で無く、バイクそのものに変わった自分など叫ばずにいられなかった。

 

 

レベル1時に武器として持っていたアームドユニットが前輪、後輪として取り付けられ、ヘッドライト部が頭部として存在している、今までに無い異色のライダー。

 

仮面ライダーレーザー バイクゲーマーレベル2

 

 

「何よコレ!?何なのさコレ!?!? え!?もしかしてアレ!? レースゲームだからバイクになってゴールしろってヤツかこれ!?

誰だよ!んなアホみてぇな設定にしたヤツ!!出て来いコラ!!!直訴してやる!!直訴!!!」

 

 

「秋…お前直訴なんて言葉知ってたんだな…。」

 

「悠兄さんツッコむとこ違うし!!」

 

 

 

「……何がしたいんだコイツ等は…。」

 

 

 

『貴様等ァ……!何処まで私にコケにする気かァァアッ!!!』

 

 

「ッ!──ッチィ!!」

 

「へ?──ちょっとォ!!」

 

 

 

ードガァアァアァアアアンッッ!!ー

 

 

 

完全に緒が切れたのか、バッドファンガイアはスナイプとレーザー目掛け今日一番の攻撃を放った。

 

 

放たれ攻撃の威力は凄まじく、激しい爆炎と風が辺り一面に広がる。まともに喰らえば無事では済まない威力にバッドファンガイアは確実に仕留める事が出来たと今度はブレイブへと放とうとした時だった。

 

 

ーブゥゥゥゥゥンッッッ!!!ー

 

 

『ッ!?』

 

 

燃え滾る炎の中から聞こえるエンジン音と共に出て来たのはバイクとなったレーザーに乗り操るスナイプだった。

 

 

「ハッハァァアッ!!オレ達がこんなんでやられるかってんだよ!! やっちまえ悠兄さん!!」

 

「いいから黙って走ってろ!!」

 

<< バ・キューンッ! >>

 

『ッ!グ、グァァアアアッ!!!』

 

スナイプはハンドガンモードに戻したガシャコンマグナムをバイクを走らせながらバッドファンガイア目掛け連射で放った。

 

銃弾を浴びせながら間近にまで距離を詰めたスナイプはブレーキをかけ、180°方向転換させながら後輪を浮かせる。

 

浮かせた後輪をバッドへと当てその状態でアクセルをフルスロットルで回す。すると高速で回るタイヤとマフラーから噴出された炎がモロにバッドへと浴びせ、吹き飛ばした。

 

『ヌガァアアッ!!!』

 

 

「よし決めるぞ!!」

 

<< ズ・キューンッ! >>

 

「おう!!」

 

 

<< ガッシャット!──キメワザ! >>

 

 

<< ガッシャット!──キメワザ! >>

 

 

 

スナイプはマグナムをライフルモードにし、ベルトに挿しているガシャットをマグナムへ装填。レーザーに取り付けられてるベルトからガシャットを引き抜き、サイドについてるキメワザホルダーへとガシャットを装填しアクセルを回した。

 

 

「行くぜェエエエエッ!!!」

 

 

<< BAKUSOU CRITICAL STREIKE! >>

 

 

マフラーから噴出される炎の勢いに乗って加速したレーザーは光のような速さで走るレーザーはバッドファンガイア目掛け特攻して行き、轢き当たっていった。

 

『ヌァアアァアッ!!!』

 

「悠兄さん!!」

 

「分かってんだよ!!」

 

轢き当てたバッドは大きく吹き飛んで宙に浮かび上がり、スナイプはレーザーを停めてライフルモードとなったマグナムを構え、スコープの標準をバッドに合わせた。

 

<< BANGBANG CRITICAL FINISH! >>

 

「──ハッ!」

 

 

『ガッ!…──。』

 

 

限界にまで蓄積したエネルギーが一直線に放たれるチャージショットは、落下中のバッドファンガイアの眉間に寸分の違いも無くど真ん中を貫いた。

眉間を撃たれたバッドファンガイアは空中で爆発四散し、空にステンドガラスの塵が舞い幻想的な画となった。

 

<< 会心の一発! >>

 

ーGAME CLEAR!ー

 

 

スナイプの元に落ちて来るソレをキャッチする。落ちて来たガシャット、”DOKIDOKI MAKAIJOU KIVA”と描かれた戦利品を仕舞いレーザーから降りる。

 

「……フゥ~。」

 

「いんやぁ、最初は焦り過ぎたけど、案外バイクってのも悪くねえかもなぁ。

今まで以上にオレと悠兄さんのイイコンビプレイが決められっし……女の子乗せりゃケツの感触をモロに、ってあだぁ!?」

 

一息吐くスナイプの横でバイクとなった感想を述べたレーザーに対し、スナイプはレーザーを蹴って転倒させる。

 

「何やってんだよ悠兄さん!? 今のオレピカピカの新車なんだよ!!傷付いちゃったらどーしてくれんの!?女の子乗ってくれないじゃん!!」

 

「隣でセクハラの計画立ててんじゃねえよ、ていうか順応早すぎんだろうがよオメェは。」

 

「それよりもコレ、ちょっと起こしてくんない? まだ上手く感覚掴めなくて、絶賛カメの体験してるみたいなんだけど!」

 

「知るか………はぁ、起こせずともレベル1に戻る位なら出来んじゃんねえの?」

 

「あ、そうか!」

 

<< ガッチョーン! >>

 

レーザーに取り付いてるベルトのレバーが独りでに閉じるとバイク形態のレーザーにパーツが取り付き、人型のレベル1に戻った。

 

呆れたように溜息を吐くスナイプ。ふと視線を感じ其方を見る。スナイプの予想が当たり、そこには此方に歩み寄り一定の距離を空けたブレイブが未だ剣を持ったままスナイプ達を見ていた。

 

スナイプは先程の戦利品を見せながら話しかける。

 

「よォ。今回は俺が貰って行くぜ。」

 

「…フン。良いだろう、だがそれだけだ。今後現れるバグスターは全てオレが斬る。」

 

「出来るかなぁ~? 火遊びとチャンバラごっこで気取っちゃってるぽっと出が。」

 

「ッ…!」

 

(うわぁ、悠兄さん煽る煽る。 これ赤髪悪魔んとこの連中並に嫌いって事じゃん。)

 

「…貴様を斬るには、まず無駄に回る舌から斬った方が良さそうだな。」

 

「ヤルかぁ? いいぜ、ボコして色々聞くついでに、テメエの持ってるガシャット全部貰うぜ。」

 

「悠兄さんそれ完璧悪役! リンチして奪うとか完璧に悪党だし!!」

 

「自覚はある。だからやるんだよ。

嫌なら黙って後ろで見てろ…野郎のすまし顔が悔しさで崩れる様をよ。」

 

「セリフもまんま悪党!!」

 

「好都合だ。外道なら躊躇いも無く斬れる。」

 

互いに武器を構え本当にやる気の二人をレーザーはどうにか止めようと思考を働かせるが、どう考えても自分が斬られ撃たれる未来しか浮かんでこない。

 

そんな危惧をしてるレーザーの心境など余所に、スナイプとブレイブとの火蓋が切られてしまった。

 

「「──ッ!!」」

 

ブレイブの足が先に動く。スナイプはその場で牽制の銃弾を放っていき様子を見る。

 

当てる気が無いと知ってかブレイブは盾を前にスナイプ目掛け前へ詰めてく。スナイプもこのまま撃っても無駄と感じようやく足が動いた。

 

ブレイブから繰り出される袈裟懸けを上体を反らして回避し銃口を向ける。が、それをソードから離した右手で弾かれ、ソードを逆手に持ち替えて左から水平に振るう。

スナイプは当たる前に右の片足を上げ、ソードの唾に当たる所に膝を当て軌道を止める。体を捻り残った左足で回し蹴りをかますがブレイブは右腕でガード。だが勢いを殺せず下がるハメになる。

 

ブレイブはBボタンを5回押し刀身に炎を纏わせ振るう。振るった剣戟は攻撃範囲が上がり3m弱離れたスナイプの元まで届く。

スナイプは即座にバク転で剣戟を避けた後、地面に転がりながら銃弾放つ。放った弾丸はソードの刀身によって阻まれた。

 

「オラァァッ!!」

 

「セェアァッ!!」

 

 

二人の戦いはヒートアップして行く。

 

 

 

 

 

 

 

「あーぁー。どうしよこれ。」

 

「どうしよこれじゃないわよ。あの二人本気で倒す勢いでやってるみたいだけど。」

 

「みたいじゃなくて、倒すつもりでやってんじゃん?あんだけ派手にやってたら…。」

 

秋は変身を解いた状態だが、何時止めに入ってもいいように使い慣れたマッハドライバー炎を装着していた。横で並んでるハルナもヒヤヒヤした様子でスナイプとブレイブの戦いを見ている。

 

ハルナの視線の先には、素人から見ても分かる熟練された剣戟繰り出すブレイブとアクロバティックな動きで避けながら正確な銃弾を放つブレイブ。

 

最初見ている内は止めるべきか、また治療する羽目になるのかと危惧していたハルナだったが、二人の戦いを見ていく内に、胸の内に彼女ですら理解出来ない感情が徐々に姿を見せて行く。

 

 

(ゲームのライダー……RPGって現実にするとあぁいうカンジなのかな?シューティングゲームはあまりしないけど映画みたいな動きなんだ……楽しそう。

私も………アタシも…。)

 

「姉ちゃん?…おーいッ!」

 

「ッ!…な、なによ?」

 

「何よじゃないよ、どうしたんさ柄にも無くぼぉーっとしちゃって…まさか、あの野郎に見惚れてたとかそういうのじゃねえだろうな!?」

 

「だから違うって言ってんでしょ!!同じクラスだからってそういう展開に進めるな!!!恋愛脳か!!」

 

「オレだって恋愛したいよ!!」

 

「だったらさっさと速吸ちゃんとくっ付けや!!」

 

「それは………まだ心の準備が要るんだよォォ!!!!」

 

「変な所でヘタレか!!!」

 

 

桜井姉弟が詰まらない兄弟喧嘩が勃発してるなか、スナイプ、ブレイブの戦いは本格的になって来た。

 

「「ハァッ!!」」

 

振り降ろされる上段に合わせて蹴り上げたスナイプのつま先は柄頭に当たりブレイブはソードを手放してしまう。

無手となったブレイブへ銃口を向けるスナイプ。だが、ブレイブは銃を持った手首掴んで捻り、一度高く上にあげると勢いよく下に振り降ろしながら捻り、スナイプのバランスを崩した。

 

転倒するスナイプにブレイブは膝蹴りを繰り出すがスナイプは腕を前にガード。ダメージは入らなかったものの、銃を手放してしまい互いに無手となった。

 

「フゥ…今の合気か。」

 

「剣が無ければ倒せるなどと、大きな見当違いだ。」

 

地面に落ちたガシャコンマグナムを遠くへ蹴り飛ばしながらブレイブはガシャコンソードと自分の距離を目測で見る。

後ろに落ちてるソードは大分離れており、回収は難しいと判断したブレイブはホルダーへと手を伸ばす。

 

「貴様相手に使うのも癪だが、練習台には丁度良いか。」

 

「へぇ、そっちも持ってんだ。じゃあこっちも使うかね。」

 

スナイプとブレイブがホルダーから抜き取ったガシャットはレベル3に至る強化用ガシャットであった。

これには喧嘩していた秋とハルナはマズイと感じ、間に入って止めようと足を踏み出した。

 

 

「第参戦術──」

 

「段位・三段──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< SHAKARIKI SPORTS >>

 

 

「ッ! これは…!」

 

「まさか…ッ!」

 

 

突如聞こえた覚えのある機械音が第三者の乱入を表す。

スナイプとブレイブの間に入って来るように姿を見せた黒い仮面ライダー、ゲンム。その手には二人が持ってるのと同じ強化用のガシャット、BMXを操り高得点の技を繰り出して競い合うエクストリームスポーツゲーム、”シャカリキスポーツ”を持ちながら歩み寄って来る。

 

「ゲンム…何故この場に現れる…?」

 

「ゲンム?…。」

 

「……。」

 

<< ガッチョーン!──ガッシャット! >>

 

「──グレード3」

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

<< Mighty Action──X!─アガッチャ!>>

<< シャカリキ!シャカリキ! Bad!Bad! シャカっと!リキッと!──SHAKARIKI SPORTS!  >>

 

現れたBMXがゲンムに装着されるが、以前の時と違いモノクロカラーからピンクと黄緑と言ったカラーリングが追加され、頭部にはBMXバイクのヘルメットの様なパーツが追加されたゲンム スポーツアクションゲーマーレベル3となった。

 

ゲンムは突然の事に置いてかれてる二人を置いて、ガシャットをキメワザホルダーへ装填する。

 

<< ガッシャット!──キメワザ! >>

 

<< SHAKARIKI CRITICAL STREIKE! >>

 

「ッ──!!」

 

右肩の車輪、[トリックフライホイール]が投げられ、表面がギザギザな刃物と化したホイールは不規則な以前より不規則な軌道を描いてスナイプ、ブレイブ両者に向かって行く。

 

「なんのォッ!──グッ!!」

 

「グァァアッ!」

 

 

<< ガッシューン! >>

 

スナイプは一度受けた事があるからか、ギリギリにまで引付けた後ブリッジの体制で躱そうとしたが、僅かにタイミングがズレた所為か掠る程度当たってしまう。

ブレイブはゲンムが姿を現わした事による動揺と不規則すぎる軌道に付いて行けず直撃してしまい変身が解除される。

 

 

「悠兄さん!!」

 

「灰原君!!」

 

 

 

「グッ…! 前も喰らったからそこまで驚かねえけど、これがレベル2とレベル3の力量の差か…!」

 

「悠兄さん!…んにゃろう!!」

 

「秋!」

 

レベルの差の力量を改めてその身で刻み込まれる悠。ゲンムの前に立つ秋はシグナルバイクを手にするなか、ゲンムは右手にパッド型の武器、ガシャコンバグヴァイザーを構えて。

 

 

<< チュ・ドーン! >>

 

 

「うわッ!!」

 

それを自分達とのちょうど真ん中の地面に放ち煙幕を起こす。

狙いに気付いた秋がすぐさま動くが、既にその場にはゲンムの姿が見られなかった。

 

 

「クソッ、逃げられた…!アイツ一体マジ何モンだよ!?」

 

「攻撃をしてきたって事は、敵、なんでしょうね、多分…。

…アレ?彩守君が…。」

 

ハルナは悠と同じくゲンムの必殺技を受けた蓮司の姿が見えなくなった事に気付く。

 

姿を消した蓮司を思ってるのはハルナだけで無かった、先程蓮司が言っていたゲンムというワード。アレは恐らくあの黒い仮面ライダーの名称だと推測出来る。名前を知っているという事は、ゲンムと蓮司の間に繋がりがあるという事が分かる。

 

そしてもう一つ、悠は初めて会った時から感じていた違和感が増していく感じがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきのは一体どういう事だ!」

 

「………。」

 

何処かの路地裏で口論してる人影が二つ。と言っても、怒鳴っている男、蓮司が一方的に声を荒げてるだけで、もう一人の人物、ゲンムが黙ってそれを聞いてるだけの口論だ。

 

一通りの文句を言い終えた蓮司の様子を窺い、ゲンムはボイスチェンジャーで変えた声を発しながら先程の行動についての理由を答えた。

 

「私がキミ等を攻撃した理由は二つだ。

一つは新たなガシャットの開発に必要なデータ、レベル2とレベル3の戦闘時におけるデータ収集。

そして二つ目は…あのままキミ達を戦わせる訳にはいかなかったからだ。」

 

「オレがヤツをどう思ってるか知ってる筈だ!アンタは…!」

 

「当然だとも。

だが、キミに力を与えたのはキミの私情の為では無い。バグスターとヤツを殲滅する為に私はキミの望む力を与えた。

くれぐれもそれを忘れない様に…あまり勝手が過ぎると…。」

 

「ッ…くッ!」

 

ゲンムの言う事に納得が言って無い様子の蓮司だったが、脅しに近い言葉を投げられると渋々とその場を後にした。

 

その場に残されたゲンムは蓮司の後姿が見えなくなるまでただジッと見つめ、姿が消えると肩をがくんと下ろし項垂れる。

 

 

「ッ、ハァ~~~~~。やっぱりこういうキャラは合わないなぁ……でもまだ悟られる訳にはいかないし。

…こればかりは無茶もバカもしてでも私が動かねば。」

 

<< ガッチョーン!──ガッシューン! >>

 

先程の雰囲気とは打って違い人が変わったような喋り方をしだしたゲンムは変身を解除する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うんうん。今の所は順調、かな♪」

 

また別の場所では一人大の字で寝転がってるアベルは、手にしたバグヴァイザーの画面を見て満悦な様子である事が見て取れた。

 

 

「このまま行けば思っていたより早く集められそうだな…アイツはどう動いて来るかな?」

 

立ち上がったアベルは、自身の頭部にかけられたフードを降ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲンムの変身者は、赤いシャツに黒スーツという格好で、暗い路地裏でも分かる煌びやかな銀髪をした長身の男性。

 

 

 

 

アベルの漆のような黒髪が風に靡かれ、夕日を見上げながらその口角を上げる。

 

 

 

 

 

別の場所に居る二人の顔は、髪の色を除けば瓜二つの同じ顔付きであった。そして…。

 

 

 

 

 

 

 

「こんな茶番は私がぶち壊してやるぞ…アベル。」

 

 

「さぁお前はどうやって止めに来る?…カイン。」

 

 

 

二人の顔は悠の上司である神と同じ顔であった。





ビルドの新ライダーが音也だと知らされた時はマジびっくりしました。10年位経ってるのに全然若々しいんだもの。
おまけに新ドライバーのCVがまさかの若本…。来年も見逃せない年になりそうです。

それでは皆様、よいお年をお過ごしください。

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