その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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今の所ビルド面白いですね!

放送時間が9時になるって言うけど、これって喜ぶべきかガッカリすべきか、どっちなんでしょうね?


行動

 

 

 

 

ードンッ!ー

 

 

 

「さぁ。詳しい話を聞こうじゃないか。」

 

「お、おぅ…。」

 

 

悠が長い単独行動から抜けて灰原へ帰宅した翌日。平日であった為長く空けていた学園生活へ戻った悠を待ち受けていたのは休んだ分の大量の課題と昼休み、ゼノヴィアに校舎裏に連れられるや否や壁に追い込まれ所轄壁ドンの状態で追及されると言った現状。

 

逃がさないと言った目付きで睨むゼノヴィアの背後ではオロオロと慌てている一子の姿が。

そう、ゼノヴィアが悠に対し追及している内容はこの間のアシュラロイミュード一件である。

 

「えーっと…取りあえず何処まで知ってるんだっけ?ある程度は聞いたんでしょ彼女から、その…。」

 

「あぁ聞いた。一子からコレでもかと!

モモ先輩がロイミュードになった事や、爺様を傷つけた事や……キミが死んだ事もだぞ!!」

 

「あー…オーケー。聞きたいのはその辺の詳しい詳細だろ?川神さんもそうだよね?」

 

「え…あ、う、うん!本当は今でも全然信じられないけど、お姉さまやユウが怪物や仮面ライダーになって。ユウなんかは確かにアタシとじっちゃんを庇って死んだし…ゥゥ…。」

 

「…説明するのは取りあえず彼女落ち着かせてからの方がよくない?若干トラウマになりかけてる。」

 

「…そうだな。一度落ち着いてから話そう。」

 

あの時の光景を思い出した一子の顔色が段々悪くなる。初めて人の死に触れ尚且つその相手が好意を寄せている人間なら尚更心に傷を負うのは当然。

結果的に悠は生きてるが元は裏の世界に居たゼノヴィアとは比べ日常的に過ごして来た一子にとってはかなり深い傷跡が残されたのだ。

 

今にも泣きそうな一子の前に悠は…。

 

 

ーギュー

 

「ムッ!?」

 

「…ふぇ!?ユ、ユウ!?」

 

「オーケー。ビックリしてるけどまずはゆっくり息吸って吐いて繰り返して。ハイ吸ってぇ~。」

 

「え? えぇ!?えーーっと……すぅーー。」

 

自分の腕の中に抱き寄せ背中を優しく擦る。突然の悠の行動に仰天するゼノヴィアと一子だったが一子は言われるがままに深呼吸を繰り返す。

 

「吐いて~……よぉーし、じゃあ今度は目を瞑って……ゆっくりと、耳に意識を傾けて……何が聞こえてくる?」

 

「……鼓動が聞こえる……心臓の……決まったリズムで、ドクンって…。」

 

「そうだねぇ、ちゃんと生きてるって証の音だねぇ…。

俺はちゃーんと生きてるよ。うん、生きてる。」

 

「…うんッ……う゛ん゛ッ!」

 

端から見れば男が自分より少し小柄な女性を抱きしめている画にしか見えないが、悠の話し方や接し方等は泣きじゃくる子供をあやす親のようであった。

 

次第に一子も落ち着いて来たのかされるがままに顔色も元に戻ってリラックスした様子に見える。この様子ならもう少しで大丈夫だろうと擦る手を止めずに動かし続ける。

 

ふと此方に何か鋭い視線を感じたので視線を動かすと、そこには如何にも不機嫌な態度で腕を組み挙句貧乏ゆすりしているゼノヴィアが睨んではいないものの不満げな視線を投げていた。

 

「……この行為については他人の心音を聞かせる事で体に刻まれた母胎の記憶を思い出させて心身のリラックス効果を…。」

 

「いや、いい。キミがそういう意味でそうしてるんじゃないって言うのは理解している。だから私に構わず続けてくれ。」

 

「………もうちょっとで終わる。」

 

心では分かってるがそれでも目の前の光景に納得がいかないと言った様子のゼノヴィア。一先ず落ち着きを取り戻した一子に大丈夫かの了承を得るとそっと離れる。その際に悠の行為について顔が赤かったが先程と比べたら俄然良い状態であった為悠は良しと判断した。

 

「ッッ~~~!」

 

「さて川神さんも元気になった所で質問タイム……だ が。」

 

「?………あぁ。そういう事か…。」

 

赤面して無言で悶える一子を置いて悠とゼノヴィアは近くの茂みに目をやる。二人が視線を茂みに向けると僅かに茂みの方から物音がし、それから聞こえるか聞こえないかの音量での話し声が聞こえた。

 

「悠…。」

 

「多分アイツとおまけの彼女でしょ、出る時コッチ気にしてたし……まぁ別に聞かれても損は無いけど、コッチに来たらそっちの質問にも答えるよ?」

 

悠は茂みに隠れている者達について察しがついてる様であり出て来るよう推奨すると暫くして姿を出してきた。

 

「ハァ……暁。お前何時から男女の密会除く趣味出来たワケ?しかもご丁寧に世話女房まで連れて来て。」

 

「いや違うって!ゼノヴィアがお前の腕取って引きって出て行ったからまさかアレについてかと…。」

 

「あ、姫柊さんが女房ってのは否定しないんだ。何時もならするのに…あ、やっとくっ付いたってか?おめでとう。」

 

「灰原先輩ッ!!!」

 

「それも違ぇッ!!!後追う途中で姫柊が突然出て来たんだよ!!コイツも跡一緒に行くって言うからオレは必死に止めたけど言う事聞かなくて仕方なく…!」

 

「セ・ン・パ・イ…ッ!それは私が邪魔だって言いたいんですか!?」

 

「だってお前尾行とかそういうの下手くそだったろ!!素人オレですら一発で怪しいって思うくらいのレベルだぞ!?現に気付かれて物音立てたのお前だろ!?」

 

「アレは…!その…つい身構えた際に偶々体に当たって…!!」

 

「…取り敢えず夫婦喧嘩してるアイツ等放って置いて細かな詳細を話すけど、イイ?」

 

「い、イイのアレ?放って置いても…。」

 

「昼休みにも時間が限られてるしな、私は構わないよ。それにあの二人はアレが普通らしい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから悠は話せる範囲であるがある程度の事を話す。

 

百代が敵の巧みな口車に乗ってアシュラロイミュードと化した事、あの時の自分は仮死状態であった事、蘇生に成功した後アシュラを撃破し百代を無事一子達へ引き渡し事を。

途中口喧嘩をしていた古城達も耳を傾け、今初めて採石場以降の悠達の行動について知り大層驚いていたようであった。

 

 

 

「──とまァ。新しい力で蘇った俺は、ゴリラ…キミの姉をロイミュードから切り離した。という事。」

 

「今ゴリラって完璧に言ったよね?…そう、やっぱりアレは本当にお姉さまだったのね…でもどうして…。」

 

「そういうヤツだからだよ。キミの姉を利用したヤツも……利用されたのも。僅かな心の隙間を突き突かれて出来たのがあの怪物だ。」

 

「許せん……おのれBABELめ!」

 

「何と言うか…色々あったんだな。」

 

「川神先輩のロイミュード…想像しただけでも厄介極まりないですね。

でもそれ以上に驚いたのがそれを灰原先輩一人で倒したって事が一番衝撃的ですよ。」

 

「…いや。今回ばかりは俺だけどうしようも出来ない相手だったよ。アイツ等が居なかったら腐るまで寝ていただろうし…。コレばっかりはアイツ等に頭が上がらねえよ。」

 

「……。」

 

「でも本当に良かったよぉ~。ユウが死なずに済んだし、じっちゃんも元気になって…お姉さまはまだ目が覚めてないけど…。」

 

「あれだけのエネルギーで精神崩壊寸前だったからなぁ…こればっかりは何も出来ずに、申し訳ない。」

 

「そんな、頭上げてよ!!

…コレばっかりは悠だけの責任じゃないよ。お姉さまの様子が可笑しかったのはファミリーの皆が気付いてた事だし。あの時もしアタシ達がお姉さまをもっと気に欠けていたらこんな事にならなかったかもって、大和も言ってたし…。」

 

「大和?……あ、そっちの大和ね、うん……名前が同じだからややこしい(ボソ)。」

 

「悠?」

 

「いんやなんでも……ま、取りあえずその続きは本人が目を覚ましたら十分反省会でもしなよ。俺は全面的に悪いのはコアを渡した野郎だと思ってるし…そっちの落とし前は平和的にやってくれ。俺は俺であのクソ野郎をぶちのめす。」

 

無意識に手に力が籠る悠。事の元凶であろう黒ローブの正体を突き止める事を決心する悠に静観してた雪菜が前に出て来る。

 

「灰原先輩……川神先輩等の話が終わったのなら今度は此方の質問に答えてくれますか?」

 

「…内容によるね。何?」

 

「…全部です……仮面ライダーとは何か。BABELやファントム、ロイミュード…そして灰原先輩。アナタの事もです。」

 

「おい姫柊、少し強引すぎやしないか?」

 

「でも先輩だって知りたいのは本音でしょう?」

 

「ッ…まぁ、そりゃあ…。」

 

「ふぅん……欲張りだねぇ。こっちはこの前の一件で個人的に知られたくない事知られちゃったんだけど…。」

 

「それってお前の恋人の事か?」

 

「ッ!先輩ッ!!」

 

「古城…キミってヤツは…!」

 

「え……?」

 

古城の発した言葉で時間が止まったように固まる一子を除き雪菜とゼノヴィアは非難の目を向ける。

 

「ッ!!!わ、悪い灰原!!その、つい…。」

 

「…もう過ぎた事だっての。もうこっちはケリ着いてるからお気になさらず。

…あーらま川神さんカッチンコッチンに、おーい。」

 

「…ハッ!え、ユウ……ッ!ユウ!!そ、その!ここここッ、恋人って…!」

 

「あー。元カノだよ、も・と・カ・ノ。今はもうきっぱり縁切った仲です。」

 

「そ、そうなんだぁ~~。」

 

事情を知らない一子に説明する悠を見て古城は罪悪感を感じてしまう。

悠の死んだ恋人。詳しくは知らないがきっと彼にとってとても大事な人だと言うのはあの時の豹変ぶりを見て分かる。

この数日の間、古城は悠について知った事は仮面ライダーであると同時に自分なんかでは想像もつかない程辛い思いをしているのだと。灰原 悠に対する古城の見解がそれであった。

 

そんな負い目を感じてる古城に対し悠は一子に一通りの事情を言った後、思い出したかのように古城にある事を告げる。

 

「あぁそうそう。これ後に言おうとしてたけど、暁。お前んトコに暫く警護付かせるから、ヨロシク。」

 

「は?……ハァアアッ!?」

 

余りにも軽い雰囲気でサラッと重大な発言をした悠に当人の古城は勿論、その監視役でもある雪菜も開いた口が塞がらなかった。

 

「ちょっと待て!!お前の警護って、なんでオレなんかに!?」

 

「いやホラ。凪沙ちゃんとのデートの時、お前量は計り知れど連中に魔力持っていかれたじゃん?また狙ってくる可能性もあるだろうし。」

 

「確かに…先輩は普通とは違いますからソレは大いにあります…ですが!!そうさせない為にも監視役である私が先輩の傍に…!」

 

「現状向こうには三人の仮面ライダーがいる。もし奴等が総出で直接出向いて来た場合相手できるのは同じライダーである俺達だけだぞ?」

 

「でも!」

 

「──でももクソもねぇよ。決定事項だ。

その為に色々手を回したからなぁ。」

 

「手を回した?…オイまさかお前も隣の部屋に引っ越すとかそういう…?」

 

「いやそれは無い。もっと別…じゃあここで気分を変えて連想ゲーム。お題は狙われた暁、お前を手っ取り早く簡潔に攫う為に、最も効果のある交渉材料は?」

 

「?………ッ!凪沙!?」

 

「半分正解。もう詳しくはお前の身内、友人、その他関わりある人間…でもやっぱ効果のあるのは身内だろうな。不注意とは言え一度攫われたのを許しちまったし。」

 

「ッ…オレの、オレの所為で…。」

 

「先輩!」

 

自身の存在は明るみに出てはいないがそれでも古城に来るストレスは頭を抱え込むほど相当なモノだった。

そんな古城に悠は何を思ってか…脛に蹴りを入れた。

 

「イッッッデェ!! な、にしやがんだテメエ!!」

 

「いやね、話聞いてた?言ったでしょ、"手を回した"って。俺が一体何日学園休んでたと思ってんだよ。」

 

「え?」

 

「俺も同じ失敗は繰り返さない為に色々やってんの。

少なくとも凪沙ちゃんと夏音は問題無い。あっちにはウチの精鋭を送ったからな。」

 

「精鋭?…ッ!まさか…。」

 

「どうした姫柊?」

 

「実は…今日ウチのクラスに転校生が来たんです…三人も。」

 

「三人!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

~数時間前~

 

 

「えーっと、皆にとってはかーなーり急な話だけど、このクラスに転校生が入りました。

じゃあ順から自己紹介ヨロシク。」

 

「は、ハイ!

特型ッ、じゃなかった…北野 吹雪です!よろしくお願いします!」

 

「雲野 夕立っぽい~!ヨロシクするっぽい~!」

 

「上条 睦月です!仲良くしていただけると嬉しいにゃ…です!」

 

 

『美少女キターーーーーッ!!!』

 

 

 

 

 

「へぇ~。こんな時期に三人も来るなんて不思議だねぇ、雪菜ちゃん。」

 

「え、えぇ。そうですね…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──こんな時期に三人も同じクラスだなんて可笑しいと思いましたけど、あの子達って灰原先輩の寄越した護衛だったんですね。凪沙ちゃんと夏音ちゃんの。」

 

「腕利きで同じお年頃で同性。これ程の打って付けは居ないだろう?

あぁそれとお前んトコの母親にも…。」

 

「お袋にも!?でもお袋は…。」

 

「だーいじょぶ大丈夫。どういう人間かはこの間のデートで聞いたから、それにこれには俺が直々に動いてな…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日前~

 

 

 

「──えーっと、”カンコレ家政婦派遣所”営業課、須藤 霧彦さん?う~ん、家政婦ねぇ…。」

 

「はい。本日は新しく開業しました我が派遣所のテスト運用とお客様へのお試し期間をお勧めしようと訪問した次第でして。」

 

「お試し期間?何ソレ?一カ月3割引きとか?」

 

「えぇ。ですが今回はどれほど出来るかというテスト運用も兼ねていますので…料金の方は無料でウチの家政婦を週替わりに派遣すると言う形に。」

 

「無料!?それってタダで掃除やら洗濯やら料理作ってもらえるってコト!?」

 

「えぇ。これにつきまして先着一名様と限られてますので早い者勝ちですが…。ちなみに、どの子も選りすぐりのカワイイ子ばかりですよ?」

 

「受けまーす!これでもう凪沙に色々言われなくて済むしね!」

 

「ありがとうございます。それでしたら詳しい書類手続き等がございますので此方の資料を──。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──と、言った感じに上手く契約取れてな。確か今日は…あ、祥鳳と龍鳳だ。」

 

「お袋…そんな如何にも怪しいセールス信じるなよ!!」

 

「ま、まぁそれで先輩のお母さまが安全なら良いじゃないですか。」

 

「まぁそれで妹と母親の身辺は大丈夫…なんだが、お前の父親は…。」

 

「あぁ、それなら心配いらねえよ。オレ等に何も言わず色々飛び回ってるし、親父なら上手く逃げ切ることは出来るだろうさ。」

 

「…お前がそう言うならそう言う事にしておこう。」

 

「灰原先輩。暁先輩のご家族には警護は付けて、当の先輩は?やはり灰原先輩が?」

 

「いや、俺じゃない。ソイツの警護は今…両肩に乗ってる。」

 

「……は?」

 

理解が追い付かない古城は恐る恐る自身の肩を見ると、右肩にはミニサイズのパトカーがサイレンを鳴らし、左肩には同じくミニサイズのモンスターカーが鳴き声を上げた。

 

「……オイ。」

 

「パトカーの方がジャスティスハンター、紫のがマッシブモンスターだ。」

 

「イヤイヤイヤイヤ……待てよオイ!!凪沙やお袋に対しては色々手を付くして、オレにはこんなちっこいミニカー!?これがどうオレを守るってんだよ!?」

 

「そうですよ!!これでしたらまだ私が先輩のお傍に付いた方が…!痛ッ!?」

 

「姫柊!?──ってうおわァ!?あばばばばばッ!?」

 

 

二人の主張に怒りを買ったのかハンターとモンスターが古城の肩から降りるとモンスターは雪菜の周りを飛び回っては体のあちこちに鋭い歯で噛み付き、ハンターは出現させたゲージを古城の体に巻きつける様に拘束すると弱めだがゲージから電流が流れ古城の体を痺れさせる。

 

「イタッ!ちょ、止めてッ!あッ、お尻はやめてッ!」

 

「あばばばばばばッ!!!」

 

 

「…小さくとも俺と一緒に戦って来た戦友であり息子だ。そこいらのSPより俄然優秀だよ。」

 

悠が一声かけるとハンターとモンスターは下がり二人共地面にへたり込んだ。

 

「…で、他に異論は?」

 

「「無いです…。」」

 

二人に一矢報いたハンターとモンスターはどーだ!と言わんばかりに高らかにクラクションを鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ハァ。」

 

「随分とお疲れの様ですね。」

 

「ここ最近色々動いたからな…ん、サンキュー。」

 

学園から自宅に戻った悠はソファーにだらーっと身を預ける様に座り込みここ最近の疲労を表す様な深い溜め息を吐き出す。

ラ・フォリアから差し出されたコーヒーを受け取り口に入れる。その際にラ・フォリアは悠の隣に腰掛けてくる。そこまではまだよかったのだが…。

 

「…近すぎない?」

 

「え?そうですか?」

 

「うん。」

 

体を密着させるだけでなくカップを持って無い方の腕を組んできたり頭を肩に載せてくるという状態に悠はつっこむも当の本人は何を今更と言う目で訴えて来る。

 

「もう、今更そんな事気にせずとも私達毎晩夜を過ごしてるじゃないですか。」

 

「勝手に人のベッドに忍び込んで寝てるだけね。途中から何も言わなくなった俺も俺だけど。ていうか、俺のワイシャツを寝巻代わりにするのは止めてくんない?只でさえ替えが少ないから。」

 

「えー?男の人は大層が喜ぶって聞きましたよ、彼シャツ。」

 

「シャツの替えがねぇ野郎にとってはあまり喜ばねえが。」

 

「じゃあ今度買い足しに行きますね!…そう言う訳で採寸を…。」

 

「Lサイズでお願いします。」

 

「…もう、いけず。」

 

不満そうな顔をしてくるがそれでも彼女は一向に離れようとしなかった。

悠は近頃のラ・フォリア…否、戻って来てから自身の周囲の変化に薄々感付いてきていた。

 

(…やっぱ可笑しくなってきてるよなぁ…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CASE1:浴室…。

 

 

「………。」

 

 

湯船に不自然な竹筒→悠、桶を手に取る→湯を汲んで竹筒の中へ→竹筒から湯が噴き出してきた

 

 

「ブハァッ!?!?ゲホッゴホッ!オェ!」

 

「…何やってんだこの色ボケなんちゃって忍者が。」

 

「ハァ、ハァ…い、いやそのぉ~…日々頑張ってる悠に背中でも流してあげようとスタンバって…。」

 

「……本音は?」

 

「悠にあすなろ抱きされながら混浴したかったです!我欲です!だからその握り拳を…!」

 

「鉄拳制裁!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CASE2:鍛錬…。

 

 

「あの、悠さん。」

 

「ん?なんだ神通。」

 

「その…もしよかったらこの後鍛錬でもしませんか?ここ最近ご無沙汰でしたので。」

 

「いいよ。今やってるコレが済んだらだけど。」

 

「はい!…あのそれともう一つ…。」

 

「ん~?」

 

「ゆ、悠さんは武道の経験が無いと聞きましたので試しに柔道でもやってみませんか!?抑え込みとか寝技とか、覚えておくと便利ですよ!」

 

「う~ん柔道ねえ…俺基本武器使ってだからあんまそういうのは…。」

 

「やりましょう!」

 

「…あ、ハイ。」

 

この後、めちゃくちゃ寝技掛けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CASE3:今日の密会の後…。

 

 

 

 

「さて、痺れた暁を姫柊さんが保健室に運んでいったし…俺等も戻りますかねぇ。」

 

「………。」(ギュ)

 

「ッ!?」

 

「ん?どしたの急に抱き着いてきて。」

 

「…一子にはああまでして、私には何も無しか?」

 

「え、でも…」

 

「………。」(潤んだ瞳で上目づかい)

 

「………。」(ナデナデ)

 

「ッ~~~。」(胸元に顔を埋める)

 

「う……ユ、ユウ!その…次アタシね!!」

 

「…もう時間無いよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……うん。明らかに可笑しい…。)

 

「? どうしました?」

 

「…いや。」

 

ここ最近のごく一部の女性陣についてやけに悠に対するスキンシップとやらが激しい気が薄々感じ取れていたが日が経つにすれそれが明確になっているのが分かる。

隣のラ・フォリアも何かとつけ入る隙を見せればこのように寄りかかったり抱き着いて来る等頻繁に多くなった。

 

(…確実にアレ、だよなぁ。そうなった原因は。)

 

コレに関しては心当たりが無いワケでは無かった。ただ自分の心情的に少し複雑な面もあって無意識に目を背けている自分が居る。

彼女達の意志も尊重する反面自身の長く貫き通した相反する意志の問題。自分が原因とはいえより面倒な事態になった事に悠は流し目でラ・フォリアの見つめながら気が重くなっていた。

 

そんな悠の気を紛らわす様に手元に置いていた携帯のアラームが鳴る。怪人出現時のアラームだ。

 

即座に手に取り場所を確認する悠。そんな悠の事を浮かない表情を浮かべるラ・フォリア。

 

 

「何だコレ……仕事だ。行って来る。」

 

「あ…。」

 

上着を羽織りリビングから出ようとする悠にラ・フォリアはつい口を出てしまう。

アシュラロイミュード以降から止んでいた怪人の出現。無視してはいけないと分かっている分、今まで見る事の無かったラ・フォリアの葛藤の表情が見て取れた。

 

思わず動いていた足が止まってしまう悠だが、ラ・フォリアは葛藤を振り切って笑顔を向けて来た。

 

「…いえ、何でも無いです。気を付けて。」

 

「……あぁ。」

 

笑顔で見送りを受けた悠は現場へ向かおうとしたが二歩ほど進んだ後またも足が止まりラ・フォリアが首を傾げるなか悠は…。

 

「…昨日は揚げ物だったから今日はあっさりしたカンジの夕飯が食いたいな。」

 

「ッ!」

 

「…きっちり終わらせて帰って来るよ。」

 

「…ハイ!美味しいご飯用意して待ってますね!!」

 

「…行ってきます。」

 

無事戻って来る事を告げた悠は今度こそ現場へ向かうのだった。

悠が出た後、帰ってくる悠達の為に食事の用意に取り掛かろうとしたラ・フォリアは台所に向かう途中、食卓の上に置かれた一通の便箋に目が行く。

 

「いけない、コレの事すっかり忘れてました…後で渡しておきましょう。」

 

便箋に悠の名前がデカデカと書かれており、差出人の欄には達筆な字で九鬼財閥と書かれた便箋をラ・フォリアは目に付くリビングの台の上に置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーおー、こりゃまた大盤振る舞いだ事で…。」

 

出現現場である建設途中の高層ビルの工事現場へとたどり着いた悠。剥き出しの鉄骨の骨組みが堂々と立つ場所で彼が開口一番に圧巻とした理由は目の前で蔓延ってるモノが原因だった。

 

「いや確かに暫く見なかったけどこんなサービスせんで良いっての…一体どんだけいんだよこのグールの大群。」

 

そう、今悠が目の当たりにしているのは夥しい程に居るグールの軍勢であった。

軽く見積もって100は近いであろう数の多さにイヤな顔しつつも未だ奥のビルの中から出て来るグールにゆっくりする時間は無かった。

 

「雑魚は雑魚だがこうも数が多いとな…。」

 

「おーい!悠兄さぁーーん!!」

 

懐からドライバーを出そうとした時後ろから聞き覚えのある声が聞こえたので振り返ると大手を振って走って来る秋とハルナが到着した。

 

「おっ待たせ! うわ何この数、こんだけいるとかえってキモいわ。」

 

「なんでったってこんなに居るのよ!?戦争でもやるつもり?」

 

「いや絶賛戦争中でしょうに…でも確かに言われると妙だななんでまたこんな雑魚を大量に…。」

 

「とにかくこの数じゃ一筋縄じゃいかないわね、ここは私も…。」

 

「待て。」

 

目の前のグールの大群を前にハルナも戦おうとドライバーを取り出す手を悠が掴んで止めた。

 

「お前は此処に居ろ。コイツ等は俺と秋でやる。」

 

「はぁ!? 何よソレ!流石の私でもグールが相手なら早々遅れは取らないわよ!」

 

「グールだから二人で十分と言ってるんだ。」

 

「それでもこの数じゃ時間もかかるし、外に逃がさない為にも出来るだけ人が居た方が良いでしょう?」

 

「ならここで取りこぼしを相手しろ。」

 

「他に出入り口があったらどうするのよ!?」

 

「まぁまぁ二人共落ち着けって!! どうしたのさ悠兄さん?姉ちゃんを戦わせないのはオレ的にも賛成だけど、今回はちょっと様子が変だぜ?」

 

「…そんな事は無い。」

 

秋の疑問に対し悠は嘘を吐いた。

 

本当はハルナに対し一種の懸念材料があった。懸念と言っても彼女の実力の方では無く心身の方だ。

悠が灰原家に帰った翌日の朝、悠が目にしたハルナは何処か様子が可笑しかった。普段の彼女からは想像が尽かないような言動とあのテンション。

あの日以降あの姿は見なかったが悠の脳裏には今でもあの異様な光景が浮かんで離れない。

 

「悠兄さん?…おーい!」

 

「ッ…耳元でデカい声出すな!」

 

「ボーっとしてたから出したんじゃん!

それよか、前。やっこさんオレ達の事ロックオンしてるけど?」

 

秋が指差した方へ目をやると、幾多のグールの目線が此方に狙いを定め当然の如くハルナもそれに含まれてた。

 

「こりゃどー見ても三人で行かなきゃいけないヤツじゃね?悠兄さんが何心配してるか分かんねえけど、そこはオレ等がカバーすれば問題無いっしょ?」

 

「アンタも心配し過ぎだっての! 私だってこれでもトレーニング積んでんだからね!」

 

「………ハァ。 あぁ分かったよ好きにしろ!」

 

「よーし!決まったならさ……今回はコレでイカね? 久々に三人揃ったって意味合いで。」

 

秋が活き活きと取り出したのはハルナが持つラルクバックルと同型のベルト、[ランスバックル]と[チェンジケルベロス]のラウズカードだった。

 

悠はやれやれと分かりやすいような仕草で首を振ると自身も[グレイブバックル]と[チェンジケルベロス]のカードを取り出す。

 

グールが槍を構えジリジリと詰める様に行進するなか三人もゆっくりと前に歩き出た。

 

「数が多いとは言え雑魚に時間掛けたら恥だぜ。 速攻で片付けるぞ。」

 

「当然。 速さがオレの売りだしね。」

 

「そう言って無駄に怪我すんじゃないわよ。 治す身にもなってほしいわ。」

 

 

三人はそれぞれのバックルにカードを装填すると自身の腹部に装着。

バックルに手を掛ける動作と自身の姿と覚悟を決める掛け声、何の意識も無く三人とも自然と息ピッタリのタイミングで合わさった。

 

 

「「「──変身ッ!」」」

 

 

<< OPEN UP! >>

 

 

バックルをスライドさせて出現したオリハルコンゲートを三人は潜り抜ける。

 

 

 

三人が纏った鎧は三つ首の怪物の頭を模したAの戦士。

 

 

 

赤を基調とした光を司る銃の戦士・ラルク

 

 

緑を基調とした衝撃を司る槍の戦士・ランス

 

 

黄を基調とした重力を司る剣の戦士・グレイブ

 

 

 

「「「──ハァッ!」」」

 

 

向かって来るグールに三人の前蹴りが同時に炸裂。まともに受けたグールは後ろに居たグールをいくらか巻き込んで吹っ飛んだのが開戦の合図となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くわよォ──ッ!」

 

 

ラルクは本来武器であるラルクラウザーを駆使して戦う遠距離型のライダーだが、ハルナが纏うラルクは持ち前のパワーを駆使した近距離にも対応していた。

 

突き出してきた槍を掴み、豪快に固まってるグールの集団へ投げ飛ばしていくラルク。

その後も豪快に殴り飛ばし、蹴り飛ばし、掴み上げてジャイアントスイング等のパワーを駆使した戦法で次々とグールの数を減らしていく。

 

そしてグールを投げ飛ばしたラルクが目に付けたのは、工事現場に置かれてた鉄骨だった。

 

「いよぉし!──ッ! 」

 

両手で鉄骨を掴むと、それを自身の頭上に持ち上げたのだ。

自身の背よりも倍の長さはある鉄骨を持ち上げたラルクにグール達は揃って慌てふためくなか、ラルクはグールの集団に狙いを定め。

 

「しゃん、な、ろーーーーーッ!!!」

 

ブゥンッ!っと風を切る音がしながら鉄骨を投げた。鉄骨は宙を舞いながらグールの集団目掛け弧を描きやがてグール達を下敷きに押し潰した。

 

 

 

 

 

 

 

「おー、姉ちゃんパワフルだねぇ…んじゃオレはスピーディーにやりますかねぇ!」

 

ラルクの豪快な暴れっぷりを目にランスは対抗意識を燃やしながら専用武器である槍[醒杖 ランスラウザー]を手に地を駆けた。

 

「ソラ ソラ ソラ ソラァッ!!──シャァッ!!!」

 

風の如く疾走するランスはグールの間を潜る様に駆け抜きながら長物であるランスラウザーを無駄の無い巧みな槍裁きで操りグールを薙ぎ倒していく。

 

「ハッ! 最初は扱いづれぇと思ったけど、馴れればコイツも中々使えんじゃん!!」

 

自身の成長ぶりを自画自賛するランスの前に特攻覚悟で向かって来るグールの集団を前にランスは右手でらうざーを持ち、半歩体を引き右腕を限界まで引いて腰を落とし構える態勢を取り…。

 

「───シャァッ!!」

 

引き延ばしたバネを離した様に地面を駆るランス。

トップスピードに達した時点でラウザーを突き出しグール目掛け一直線に走ると、グールはボウリングのピンの様に盛大に宙に舞い上がった。

 

「…フッ、 決まったぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ゼァッ!」

 

一方のグレイブは、専用武器である剣[醒剣 グレイブラウザー]駆使しながら着実にグールの数を減らしていっていた。

 

ランスやラルクに比べパワーやスピードを発揮した派手な動きは見られないがグレイブにはそれを凌駕する技量があった。

 

「ッ!──シッ!」

 

グレイブの死角から来たグールの攻撃をラウザーで弾きカウンターの要領で斬り付ける。その後に来たグールには蹴りを叩き入れ吹き飛ばし、正面から複数の槍をラウザーで受け止めた。

 

「足元が…ガラ空きだっての!」

 

グール達の足元、丁度膝関節辺りを一番端に居たグールに目掛け前蹴りを叩き入れるとバランスを崩したグールが隣に居た他のグールを巻き込む形で体勢が崩れ、受け止めている槍の力が弱まった隙をグレイブは突く。

 

「デェィリャッ!!」

 

槍を弾き返し、ラウザーで横一文字にグールの胴を斬り付けたグレイブ。

 

斬り捨てたグールを前に周囲に居る残りを眼で追うと粗方片付いたのを確認し…。

 

「コッチはそろそろシメに掛かるか…!」

 

ラウザーの持ち手部分にあるカードホルダーを扇状に展開すると一枚のラウズカードを取り出す。

 

 

 

 

「さぁって!そろそろ決めちゃいますかね!」

 

 

「これで終わりよ!」

 

 

 

その頃同じようにランスとラルクも腰に取り付けられたホルダーに手を伸ばしラウズカードを取り出していた。

 

 

 

 

 

 

<< MIGHTY >>

 

「ッ!──ハァァーー。」

 

グレイブはグレイブラウザーにカードを読み込ませ、浮き出たカードの幻影を刀身に宿らせ…。」

 

 

 

 

<< MIGHTY >>

 

「スゥゥーーーー。」

 

 

 

 

<< MIGHTY >>

 

「ッーーー!」

 

 

 

ランスもランスラウザーに幻影を宿らせて呼吸を整えながら構え、ラルクは専用武器であるボウガン[醒銃 ラルクラウザー]に幻影を宿らせグールに矢先を狙いつけていた。

 

 

 

 

 

「ッ!オオォォオォッ!!」

 

 

グレイブは向かって来るグールの集団目掛けて駆け、素早い動きと的確な狙いですれ違い様に斬り捨てていく。

刃先が当たった瞬間、纏った重力と共に斬り伏せる[グラビティスラッシュ]

 

 

 

「デェエエィリャァッ!!」

 

 

ランスは振り回した槍で次々とグールを薙ぎ払い吹き飛ばしていく。

穂先に当たった瞬間、溜まった衝撃波が炸裂する[インパクトスタップ]

 

 

 

「ハッ!」

 

 

ラルクの放った複数の光矢はグールの体を貫いてその後ろに立っていたグールも次々と貫いていく。

光の速さで敵を貫く、[レイバレッド]

 

 

 

 

 

三人のライダーが放った必殺技は百近く居たグールの軍勢を瞬く間に撃破し、後に残ったのは爆散して燃え散った火の手が三人の周りにあるだけになった。

 

 

 

「…フゥ。」

 

「オーイ! 悠兄さん!コッチに居た分は全部倒したぜ!!」

 

「私も問題無くよ…どう?これでもまだ私が前に出るのに心配?」

 

「それは出て来る相手による……お前達まだ変身は解くな。もしかしたら討ち漏らしが居るかもしれん。

手分けしてこの辺を捜すぞ。」

 

「了解。」

 

「分かったわ。何かあったら即連絡ね。」

 

グレイブの案に同意したランスとラルクはそれぞれ別方向へと出向いてグールの残党を捜しに出た。

 

 

その一方で二人と別れたラルクはラウザーを手にしながら一人先程のグレイブとの会話について一人文句を垂れながら捜索をしていた。

 

(全く灰原君ってば、少し位は信用してくれてもいいんじゃないの! 確かに私は二人と比べて裏方だけど特典の力もあって多少は戦えんだから……!)

 

内心声に出さずに不満を吐き続けたラルクだが、進行方向の先に複数の影が視えた事に目の色を変えた。

音を立てず慎重に進み影から顔を覗かせるとグレイブの考えが的中、残党のグールが十数体群れを成してビルの中を逃げ彷徨っていた。

 

(見つけた。 数はそう多くは無いわね…アレなら私一人で…!)

 

先程まであれ以上の数を倒した自分なら余裕で倒せる。その確信を持ってラウザーを持つ手が自然と力みながらラルクはいざ前に出ようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーズガアァアンッ!ー

 

 

「………え?」

 

 

前に出ようとしたラルクは目の前の光景に間抜けな声を漏らすしかなかった。

 

一瞬だった。一瞬で十数のグールが爆ぜて塵となって消えたのだ。

 

「い、一体何が…?」

 

 

 

<< CLOCK OVER >>

 

 

唖然とするラルクの前に聞き覚えのある機械音声と共にその者は姿を見せた。

 

 

紫のアーマーに身を包んだ緑色の複眼、片手に片刃の片手剣を持ち頭部やアーマーの形状から蠍を思わせるシルエットが燃え散った火の粉に包まれながらその全貌を明かした。

 

「アレは……仮面ライダー?」

 

呟いた言葉に対する返答は何も無い。謎のライダーはラルクに掛ける言葉も何をするでも無くただ視線を向けていた。

 

<< CLOCK UP >>

 

「あ!」

 

謎のライダーは銀のベルトに手を掛けた瞬間、音声共にその姿をラルクの前から消した。

 

「…やっぱりアレ、二人と同じタイプの仮面ライダー、よね?……敵、なの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、建設現場の外でラルクがビル内で見つけたのと同じ討ち漏らしのグールの残党の群れがグレイブ達から逃れようと移動していた最中だった。

 

 

<< チュ・ドーン! >>

 

 

一体のグールの体に紫の光弾が当たり、火花を散って倒れ込む。

 

グール達は光弾を撃って来た人物に槍を構える。撃って来たのは以前悠達の前に姿を現わし場を乱しに乱した謎の

黒い仮面ライダーだった。

 

黒い仮面ライダーは右手に持つパッド型の武器[ガシャコンバグヴァイザー]のグリップ部から取り外すと向きを180°変えてチェーンソーのような刃が着いた方にグリップを取り付けた。

 

<< ギュ・イーン! >>

 

バグヴァイザーをビームガンモードからチェーンソモードに変えるとグール目掛け突っ込んで行く黒い仮面ライダー。

グール達もコレに立ち向かいに行き、一体のグール目掛け黒い仮面ライダーはバグヴァイザーを振るう。グール槍を前に出しコレを受け止めようとしたが、刃先から聞こえる駆動音と火花を散らしながら槍ごと切り裂かれた。

 

敵の懐に入った黒い仮面ライダーは小回りの利くバグヴァイザーを警戒に振るい続けグールの武器である槍を次々と真っ二つに切り裂き続け、やがてグール達は黒い仮面ライダーに武器を全て破壊されたのだった。

 

丸腰になったグール達は黒い仮面ライダーを取り囲むなか、ベルトに取り付けられたホルダーからゲームカセット、ライダーガシャットを取り出す黒い仮面ライダー。

 

そのガシャットは以前使われた黒いガシャットでは無く、黄緑のカラーリングが施されたモノだった。

 

<< SHAKARIKI SPORTS >>

 

<< ガッシャット! >>

 

ガシャットを起動させベルトの横に取り付けられたスロットホルダーへ挿し込むと、前輪がピンク色と後輪が黄緑のBMXバイクが黒い仮面ライダーの隣に現れた。

 

黒い仮面ライダーは現れたバイクに乗り込むとペダルに足を掛け走らせる。

 

ウィリー走行でグールを薙ぎ倒したり、時には倒れたグールの上を通過したり、急停止時に後輪を浮かせて当てたりなどのアクロバティックな動きでグールを翻弄させていた。

 

<< キメワザ! >>

 

<< SHAKARIKI CRITICAL STRIKE! >>

 

ホルダーのスイッチを押すと、ガシャットからバイクのタイヤにカラフルなエネルギーが収束されながら黒い仮面ライダーは車体を浮かせバイクをスピンしながらグール達に強烈な体当たりを炸裂させた。

 

<< 会心の一発! >>

 

バイク毎地面への着地を決めた黒い仮面ライダーはバイクからスロットに挿さってるガシャットを抜くとバイクは消え去り残ったのはポツンと立っている黒い仮面ライダーだけだった。

 

<< CLOCK OVER >>

 

すると黒い仮面ライダーの背後にラルクと遭遇謎の仮面ライダーが現れる。

黒い仮面ライダーに警戒の色は見られず、現れた謎の仮面ライダーが此処で口を開いた。

 

「…すまない。向こうに姿を見られた。」

 

「そうか…まぁいい。いずれにせよ知られる時期が早まっただけだ。」

 

謎のライダーの声色から若い男性と言う事が聞き取れるなか、黒い仮面ライダーの声はボイスチェンジャーの様なモノでモザイクめいた声になっており声だけで人物像が判別できないようなっていた。

 

黒い仮面ライダーは謎のライダーに顔を向けながら話し掛ける。

 

「今後の話しだが、キミには予定通り学園の方へ通ってくれ。住居も用意してある。 その後はキミの好きに動くといい。」

 

「了解した。 其方はどうする気だ?」

 

「残りのガシャットの調整を急ぐ。 整い次第キミの分を送ろう。

……それともう一つ。」

 

「なんだ?」

 

「これから私のこの姿の時はゲンム…仮面ライダーゲンムと呼んでくれ。呼び名が無いと不便だからね。」

 

「構いやしないが…それで何時までも正体を隠しきるのは些か無理があるぞ。」

 

「今はまだその時ではないのだ。 その為にもキミの協力も必要だというのを理解して欲しい。 その代わり私も影から出来るだけのバックアップは約束しよう。」

 

「……分かった。 今はそういう事にしておこう。」

 

<< CLOCK UP >>

 

謎のライダーは黒い仮面ライダー、否、ゲンムを残して一人行方を告げず姿を消していった。

 

残されたゲンムは手元に二つのガシャットを眺め変性した声で呟きだす。

 

「貴様の思い通りにはさせんぞ……どんな手を使ってでもこの私が…!」

 

変性されているがその口調から怒りと決心が籠められたゲンムが握っている二つのガシャット…。

 

 

 

藍色の銃士が描かれたガシャットと黄色のバイクに跨ったレーサーが描かれたガシャットを手にゲンムもその場から姿を消していったのだった。

 

 





ようやく新世代ライダーを出せた!(達成感)

謎のライダー? 二つのガシャット? サテイッタイナンダロウナー?(ネタバレ防止)

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