最初見た時はこんな”神”作品になるとは本当に思いませんでした。一年間本当にお疲れ様でした。
そして神ィ!またお前がやらかすのかよ!!
灰原家、ガレージ地下ラボ内。
「……くそッ!」
「天龍ちゃん、傷に障るわよ…。」
「くっ…不甲斐無い、恩人を、みすみすと…。」
「長門。辛いけど気をしっかり持って…。指揮を執る貴女がしっかりしなきゃ…。」
「…みんな。ゴメン……オレが、オレがちゃんとしてれば…!」
寝台の上に寝かされている悠。動く事も言葉を発する事も無くなった彼を中心に感情を抑えきれず悲しみに暮れていた。
その中で秋は悠を死なせた事を自分の所為だと自責するなか、壁に拳を打ち付けていた天龍がカッとなって秋の胸倉を掴み壁に叩き付けた。
「おい天龍!こんな時に内輪揉めなど!」
「こんな時だから、コイツの腑抜けたツラをどうにかすんのが先だろ!
…オメェよぉ。オレ達がお前を責めれば悠のヤロウが生き返ってくるとでも思ってるのかよ?」
「………。」
「…仇を取りたいと思わねえのか!!
聞いたぜ、ソイツ自分の家族ごと消そうとしたんだろ?そんなヤツが悠を殺して今でものうのうとしてるのがオレは気にいらねえ!!……殺る理由としては文句の無いヤロウだぜ!!」
「止めないか!!少し落ち着け!!」
長門が天龍と秋の間に入って引き剥がし感情的になってる天龍を落ち着かせる。
「天龍…気持ちは大いに分かる。私だって正直言って憎いさ。」
「じゃあ尚更敵討ち取るべきだろ!!ここでメソメソ泣くよりよっぽど有意義だ!!」
「あぁそうだな。確かに何時までメソメソする訳にはいかない……だが、仇討を許す事は出来ない。我々はあくまで彼等のサポート。
我々には転生者はおろか、この世界の人間の生死に関与してはならないルールがある。これをもし破ったら存在を消されてしまうのは重々わ分かっているだろう?」
「でも…!」
「それに…少なくとも存在を消されるのを一番望んでいないのは、他でも無い彼だと思うぞ…。」
「っ……クソォ!!」
近くにあった椅子を蹴り上げる天龍。寝台に眠る様に横たわってる悠の姿を見てやるせない気持ちに八つ当たり気味になるしか出来ない自分自身に腹が立つ。
そして未だ放心状態の秋に陸奥が肩に手を置いて励ます。
「秋くん……近くに居たアナタがどれだけ辛いかは私達には想像出来ないけど、まだハルナちゃんが目覚めない以上頼れるのはアナタだけなのよ。」
「無理だよ…悠兄さんでさえ勝てねえ相手に、オレがどうやって…。」
「秋くん……しっかりしなさいッ!!アナタがそう落ち込んでいる間に被害者が…それこそ死人が出たらどうするの!?」
「ッ…!」
「倒す事が出来なくても私達はそれを食い止める義務がある。そうでしょう?止める事が出来るのは…仮面ライダーであるアナタだけよッ!!」
「………仮面ライダー、か……ヤダなぁ、この名前の重さ、今初めて痛感しちまった…。」
自傷気味に笑いながら秋は悠の傍まで近寄る。
傷つきながらも穏やかな顔で眠る死顔。もうこの顔が自分に向く事も言葉を掛けてくれる事も無い。
そんな彼に対し、秋は改めて尊敬の言葉を掛ける。
「すげえよアンタは、ずっと一人でこのプレッシャーと戦っていてさ…。
もっとアンタの隣で戦いたかったよ…ッ!そんでもってこの戦いが終わったら、姉ちゃんと、ラ・フォリアちゃんとで一緒に…平和に、笑って過ごしたかった!」
堪えながらも涙が頬を伝う秋。小刻みに震える秋の言葉に誰もが静聴していた。
「…悠兄さん。オレ、やるよ。アンタのしたかった事、オレが成し遂げる…いや、成し遂げてみせる!!……だから、ゆっくり休んでくれ。」
覚悟を決め自身の顔を手で強く打ち付ける。”パァン!”と乾いた音が響いた後振り返ると、両側の頬が赤くなりながらも先程とは打って違い強い意志が籠ってるのが見て取れた。
「悪い天龍。あの脳筋センパイは倒すけど、殺す事はしない。見る限りロイミュードになった所為でイカレてたからな。」
「……ケッ!わぁーったよ!好きにしろ!!…ただし!殺さずともコッチは一発殴らなきゃ気が済まねえからそのつもりでいろよ?」
「いーんじゃない?その位ならさ…。さて、とは言ったものの…。」
「相手の動きはまだ分からず仕舞だからな…。」
長門が目を向けた先は、夕張が悠の携帯からロイミュード探知システムプログラムをラボの端末と繋げているがまだ時間は掛かりそうだ。本人は至って真面目にやってるが、悠の死亡の知らせに感情を抑えて涙と鼻水を拭きながらの作業なので急がせるのに強く言おうに言えない始末である。
そんななか話を静聴していた龍田が真剣みを帯びた口調で秋にある質問を投げる。
「ねえ秋くん、アナタ敵の近くに居たのなら何か聞いてないかしら?これからの行動とか、目的とかそう言うヒントになりそうなの。」
「ヒント……ちょっと待って…あん時オレも頭打った所為でボーっとしてたから……あ。
そういや言ってたな、強いヤツと戦うとか、そんなカンジの…。」
「戦う事が目的か…だとすると余計放って置けないぞ。最悪また市街地を破壊するかもしれん。」
「でもその子、武道じゃ結構強いほうなんでしょ?四天王とか呼ばれるくらいに。
だとすると相手もそれなりに限られてくるんじゃない?同じ四天王で負けた相手とか…。」
「負けた相手…それだ!龍田ちゃんナイス!!」
狙われそうな人物に心当たりがあったのに気付き、秋はラボから飛び出て行った。
ガレージに上がりライドマッハーン跨るとシャッターが開く。エンジンを掛けていざアクセルを回そうとすると間に人影が入って来た。
「うおゥッ!?…って古城センパイ危ないよ!!危うく轢く所だったじゃん!!」
「お、おぉ。悪い……また行くのか秋?結局灰原のヤツは戻って来なかったのか?」
「……。」
秋はまだ古城やリビングに居るラ・フォリア達には悠の死の事を告げていなかった。いずれにせよ真実を告げる事になるが、今はアシュラロイミュードの撃破を優先すべきと判断して先を急ぐことにした。
「…悪い古城センパイ。取りあえずその話は置いといてさ、ロイミュード出たからオレ行かなきゃ。」
「そうか、悪いな呼び止めて…。ちょっと帰った時のお前の様子が可笑しかったから何かあったのかと思ってよ…。」
「…ホントなぁーんでそういうのに鋭いんだか…ゴメン、行って来る!!」
秋は今度こそライドマッハーを発進させて、古城等に対し真実を隠す事に罪悪感を感じながらもアシュラが狙って来るであろう人物を守るべく街へ駆り出した。
「全く秋のヤツ、いきなり飛び出しおって…陸奥。念のため秋の元に一艦隊を送ってくれ。」
「えぇ。丁度那智達の部隊を待機させてるから連絡しておくわ。」
「頼んだ。…さて、我々は「すいません。今ちょっと大丈夫ですか?」む?どうした明石。」
長門の元に白衣を着た明石が神妙な顔つきで手に持ったカルテに視線をやりながら近づく。
「今さっき悠さんの遺体を調べていたんですけど……ちょっと妙な事が二点ほどあるんですよ。」
「何だと?どういう事だそれは。」
「まず一つが、心停止が確認されてから二時間程経過してるんですけど。本来なら死後硬直の傾向が見られるんですが悠さんの体にはそのような現象がまだ出ていません。それどころか細胞の腐敗も一向に見られないんです。
それともう一つが…。」
明石が寝台に寝かされてる悠に被せられたシーツを取ると、そこには腹部に巻かれたドライブドライバーがあった。
「ご覧の通り悠さんと一緒にベルトさんの機能も停止されて動いていません。実質ベルトさんも死んだと言う事になります。
でもどうしてもこのドライバーが悠さんから取り外せないんです。まるで外れるのを拒否してるみたいで。」
「明石。結局どういう事なんだ?ソレが一体何に繋がるんだ?」
「…コレは私の仮定なんですけど…。
遺体に見られる現象はこのドライバー…ベルトさんが関係していると思うんです。だから死後硬直も細部の腐敗も起きていない。…一種の仮死状態に近いものかと。」
「仮死状態…ちょっと待て、という事は…!」
「えぇ。もしかしたら……生き返らせる事が出来るかと…。」
明石が放った言葉がラボの空気を大きく変えた。
「そ、それでッ、一体どうやったら生き返るんだよ!?
電気ショックか!?復活の呪文!?目覚めのキス!?」
「そ、そこまではまだ何とも…。ただ本来の仮死状態とはまた一味違うので従来の蘇生法でいくかどうかが…。
でも出来る限りの手は尽くします!!」
「よし。なら明石は彼の蘇生を頼む。天龍と龍田は皆にこの事を伝えろ。特に川内達にな。夕張はプログラムが完了次第明石の手伝いを。」
「りょ、了解~……ん?なにこれ?」
端末を前に作業をしていた夕張の目に突如画面上にメール受信の知らせが。
ラボにある端末は全て外部との通信を遮断している為に間違ってもメール等が来ない筈だが、送られたメールにはMr.Gという差出人からのファイルが載ったメールが送られてきたのだ。
夕張はウイルス感染を考え何度も何度もチェックするが引っ掛からない様子からウイルスで無い事が判明すると、恐る恐るメールの中身を確認した。
開かれたファイルには複雑な計算式と一つの設計図。計算式の内容は複雑すぎて内容が理解できなかったが、共に送られてきた設計図を目に驚嘆し明石を慌てて呼び出した。
「あ、ああああ、明石さぁんッ!!こここ、コレェ!!見てください!!早く!!!」
「どうしたのそんなに慌てふためいて!?……嘘、どうしてコレがあるの…!?
……これ…まさか……いやでも、この理論に則るなら不可能じゃ……。」
「ど、どうした?一体何が送られてきたんだ?」
画面に映し出されてる計算式を見て明石は顔を俯いてブツブツと呟いてる姿が若干不気味であったが、声をかけないと一向にこのままのような気がしたので意を決して声を掛けにいった長門。
しばらくの沈黙の後、顔を上げた明石の顔には、突然の事に戸惑いながらも一筋の光明を見付けたような目をしていた。
「長門さん……イケますよ…このメールの計算式が本当なら、悠さんを生き返らせますよ!!」
「何だと!?」
詰め寄りながらメールの内容について説明する明石の肩を掴む長門。
長門が更に深く追及しようとした時に上の階段から聞こえる足音にハッと気づいて目を向けると…。
「…今の話、どういうことですか?悠を、生き返らせるって…。」
階段から長門達と寝台に寝かされた悠を交互に見るラ・フォリアがそこにいた。
『──現在の□×通りの様子です。ご覧の通り、激しい戦争でもあったかのような抗争の跡が見られます。
今回の騒動も、機械生命体・ロイミュードとの仮面ライダーの激しい戦闘があったようであり、詳しい情報は──』
「うわぁ。またハデに暴れたんだなぁ…いや、これはあの子じゃなくてロイミュードがやったのか。」
街の商店街にある電気屋の前のテレビから流されてるニュース速報を、買い物袋を手にした燕は買い出し中の足を止めて画面から流されてる街の様子に釘付けになっていた。
『尚。新しく入った情報によりますと、仮面ライダーはロイミュードの破壊に失敗し□×通りから逃走するロイミュードの姿を近隣住民が目撃したとの情報があります。
近隣にお住まいの方は十分に注意してください。』
「え、それってヤバいじゃん?近くって言ったらこの辺だし……もう!何やってるのかなあのコンビは!しっかり倒してくれなきゃ安心して買い物出来ないよん!!」
燕が思い浮かべたのはとある兄弟のような凸凹コンビ。その正体は未だ謎に包まれているもBABELのように極悪人という訳で無く、むしろどこか好感が持てるのもあって燕は信頼しその正体について詮索も暴露もしていない。奇妙な関係を築いているのである。
「さてどうするか。本当はまだ買い足りないんだけど、さっきのニュースだと近くにいるかもしれないし……よし、こうなったらサッと買ってサッと帰ろう!!」
買い物袋の中を見て早めに帰ることに決めた燕は、目的地であるスーパーへ駆け足で行こうと踏み込んで地面を蹴り上げた時だった。
ードォォォオオオンッッ!!ー
「………ふぇ?」
先ほどまで自身が立っていた場所から凄まじい轟音と衝撃が辺りに奔り、電気屋の前に置いてあった商品がたちまち木の葉のように吹き飛んでいく。
燕は茫然としながらもゆっくりと顔を振り向いて見ると、自身が先ほどまで立ってた場所にはクレーター出来ており、中心には六本腕の金色の異形、アシュラロイミュードが上体をぐったり俯いた状態でそこに立ち尽くしてた。
【見ィ~~つけたぁ…燕ぇ…。】
「え?わ、私?」
【燕ぇ……早速だが私と戦おう…。いいだろ?なにせお前は…私を倒したんだからなぁあああッ!!】
「え?ちょっと何!?え?えぇぇ!?」
突然襲い掛かって来るアシュラに理解が追い付かない燕。何でこの怪物は私を知っているんだ?何でこの怪物は私に襲い掛かってきているんだ?
そんな答えの帰って来ない自問自答をしてる間にアシュラの拳が刻一刻と燕に迫った時だった。
ーDaDaDaDan!ー
【ぬゥんッ!?なんだぁ!?】
燕の背後から放たれる光弾。その威力にアシュラは怯み、燕への特攻を中断して下がる。
燕の背後上空から光弾を放ったのは、合体四輪・ライドクロッサー。燕の前に着地すると機関砲とレーザー砲絶え間なく撃ち続け、アシュラの動きを止める。
通常武器よりも破壊力のある光弾も流石のアシュラはダメージを無視できず、六本の腕を全てガードに使う。
【グゥウウゥゥウッ!!!】
「セーフ!ギリギリ間に合ったか!!」
ライドクロッサーの内部では発射トリガーをひたすら連打するマッハの姿が。アシュラの狙う強者というヒントを元につい最近百代に白星を出した燕が狙われる可能性があったため即座に駆け付けたが好転だった。
「こっちはオレが引付けておくぜ!!後ろのセンパイは任せた!!」
『了解。対象を保護しつつ、速やかに護送する。』
ライドクロッサー内の通信機で手短に話すと、操縦桿を前に倒し撃ち続けながら猛スピードで特攻を仕掛ける。
アシュラと押し相撲になる形で動きを封じ、フルアクセルのライドクロッサーのタイヤが摩擦で煙を起こしてる光景を腰を抜かしながら見ていた燕の体が、突然ヒョイと軽く持ち上げられた。
「ふぇ!?な、なになに!?今度はなんなの!?」
「おーっと、舌噛むからあんま騒ぐなよネエちゃん。行くぜィ!清霜!!」
「がってんだぁー!」
「ちょっと待ってなに!?アナタ達子供…てうえええああああッ!?!?!?」
燕を担いで行ったのは艦娘の朝霜と清霜。背中から持ち上げられた為上向きで地面を滑走する動きに燕は奇声を上げながら現場から離脱して行く。
変わって現場に入って来た増援として、那智、足柄、飛鷹、隼鷹、沖波、早霜がアシュラと取っ組み合いをしているライドクロッサーの周りを囲んだ。
「いいか!情報によると敵は我々の攻撃を一切通さない程の硬さだ。故に殲滅では無く、撤退に備えておけとの事だ!」
「あぁもう、そういうの柄に合わないわね!改二にでもなればまともに戦り合えるってのに!!」
「アタシもやるなら派手にパーッと暴れたいねえ、あん野郎に一発ブチかましたいってんだ。」
「二人共落ち着きなさいよ。あの子が生き返るって報告聞いたでしょ。それに今のアンタ等が行ってもアッサリ返り討ちってオチよ。」
「フフフ…フフフフフ。」
「は、早霜ちゃん?お、落ち着いて引き金から指離そ?ね?」
「でもやっぱ何時までも裏方ってのは我慢ならないわよ!!私達用の量産型ベルトは何時になったら出来るのよ!?」
「落ち着け足柄。今作戦行動中だぞ。私だって派手に暴れたいが、今は自分の成すべき事をやるんだ。
…そして早霜。お前はお前で魚雷を撃とうとするな。秋にも当たるぞ。」
那智が部隊を纏めてる最中でもアシュラとライドクロッサーの取っ組み合いは続いていた。押し相撲状態に痺れを切らしたアシュラは気とコアのエネルギーを解放した。
【ヌウウゥゥウッ!!ハァァアアアッ!!!】
「何とぉ!?」
拮抗状態だった取っ組み合いだが、力を解放した途端アシュラのパワーが倍増して行く。最終的にはライドクロッサーを軽々と持ち上げるまで力を解放したアシュラは、そのままライドクロッサーを投げ飛ばした。
地面へ叩き付けられた衝撃でライドクロッサーは分離し、中に居たマッハも地面へ転がり落ちる。
【またお前かぁ……お前じゃダメだ。楽しめないなぁ…。】
「んなろッ!」
<< シューター! >>
アシュラの煽りに乗せられたマッハはゼンリンシューターを発砲するが、光弾をノーガードで受けるアシュラには全く効いて無い様子。
光弾を受けながらマッハへ歩み寄ってくアシュラの姿を別の視点から見ている人影が一つ。百代をアシュラへと変えたよう要因であるアベルだ。番堂を閉じ込めているパッドを手にマッハへ殴りつけているアシュラを電柱の上から眺めていた。
「うわぁーお♪ハデに暴れてるねえ彼女♪…ん?どうしたの黙り込んじゃって、さっきまであんなハイテンションだったのにえらく落ち込んでるみたいじゃん?」
<そりゃあね、最初はボクの悲願が叶ったと喜んだのも束の間……見ていて確信がいったよ。
…アレは失敗作だ。>
「へぇ?…………その根拠は?」
<言わずとも見て分かるだろう、あの異常なまでのエネルギーの流出と精神状態。
あのコアはロイミュードと融合しない分使用者の強い感情によって生じる力をダイレクトに受ける事になるが、あの様子だと過剰なエネルギーが精神にまで及んであんな暴走状態になっている訳だ。
しかもその暴走状態のお蔭で戦闘欲求が次第に上がり、コアが反応してエネルギーを製造し、やがて…。>
「心はおろか体も壊れ、仕舞には暴走したエネルギーがボディに収まりきらず大爆発を起こす……これじゃあただの人間爆弾ってワケだ♪」
<……やっぱりこうなる事を知っていたのか……キミの目的はなんだ?一体何を考えてこんな事を…。>
「当然、面白いショーを見る為さ♪……いずれボクが主役となる、この幕間劇の、ね♪」
フードに隠した思惑を目にアベルはアシュラによって吹き飛ばされるマッハの姿を最後に、黒い霧となってその場を立ち去った。
そしてマッハを相手取ってたアシュラは、次第にマッハへの関心も興味も薄れていき。
【ダメだぁ……お前じゃ楽しめない……もっと強いヤツを…強いヤツ……強いヤツと…。】
「ま、待てこの…!」
アシュラは呼び止めるマッハに見向きをせずその場から跳躍して飛び去っていった。
「クッソ!……ハァ。」
<< オツカーレ >>
「……あんな化けモン、一体どう倒せばいいのやら…っといけねえ、何弱気になってんだが…。」
「そうよ!いい?こういう時はガッツよガッツ!!相手の喉元に噛み付く位根性見せればワンチャンあるわよ!!」
「うおぉおいッ!?」
突然肩を組まれた足柄に驚く秋。そんな秋の元に那智達が駆け寄る。
「秋、無事か?」
「おう、平気平気……バイク、傷付けた以外な…。」
「そうか……飛鷹!準鷹!偵察機は!?」
「駄目ね。飛ばしたは良いけど速すぎて見失っちゃったわ。」
「こっちもダーメ。こりゃお手上げだねィ。」
「…でもやんなきゃいけねえよ………悠兄さんが居ない今、仮面ライダーはオレだけなんだからな…。」
「秋さん…。」
何時もより覚悟を決めアシュラへの打倒を志す秋の元に早霜がそっと声を掛ける。
「今すぐラボへ戻ってください…秋さんとっての吉報が首を長くして待ってますよ。」
「吉報、何ソレ?」
「それはお楽しみです。フフフ…。」
(───…ココは?)
気が付いたら辺り一面黒一色の世界に居た。
上も下も、全てが黒く塗りつぶされてる為地に足が着いてる感触も無く浮いてると言った錯覚すら感じてしまう程の空間。
自分が何故このような世界に立たされてるのか、悠は一から辿って思い出し、その答えは直ぐに出た。
(……そっか。死んだのか、俺は…。)
死の直面、アシュラの攻撃から一子と倒れた鉄心の前に立ちその攻撃を受け止めた、そして今自分はこの謎の空間…あの世らしき場所に居る。
死んだと言うのに現実味が無く、コレといった心の動揺も無い。むしろ何時に無く静まってる心境を感じながら悠は仰向けに倒れた。
(こんな終わり方とはな……皮肉、ってヤツか。誰かを庇って死ぬなんて…初めて死んだのと一緒。)
目を閉じた悠の脳裏に浮かぶのは自身の腹部に刺さった刀剣と、金の鎧をつけた男の歪んだ笑い顔。
前世の死に際を思い出しながら悠は一人笑みを浮かべる。
この後の自分はどうなるのか、このまま地獄へと落ちるのか、こんな事なら上司から死んだ場合どうなるのか聞いておけばよかったなど、このまま流れに身を委ねようとした。
「…お前の目には、深く、黒い闇がある…。」
「ッ!?」
突然聞こえた声に閉じていた目が開かれ、体を置き起き上がる悠。
条件反射で動いた体の次に堕ち様としていた意識も次第に覚醒していき声を発した元へ目を向けるが、そこに居た人物の姿に悠は目を疑った。
足まで届く黒いコートを身に付けているが、片方の袖が破けてボロボロであり派手なチェーンアクセサリーを身に付けた男性。整った顔立ちだがその眼には一切の光が無く、どんよりと吐いたため息が暗い雰囲気を漂わせてる。
その男は悠が知っている人物であり……悠が勝てなかった数少ない人物達の内の一人だった。
「矢車?…アンタ…なんでココに…?」
「…俺には分かる。お前がどんな地獄を見て来たか…その眼は俺と、今はいない相棒と、一緒だ…。」
(…アレ?コレって確か…。)
矢車が行っている言葉には聞き覚えがあった。確かさっき言ってたのは自身に黒星が掛かり立ち去って行こうとした時に放った言葉だ。
あの後なんて言っていたか思い出すより先に矢車の口からあの時の言葉が出て来る。
「…だがお前の中には、ほんの小さな光が見える。小さく、今にも掻き消えてしまいそうな、淡い光だ………だが。」
背中を向けつつ上を見上げて、手で目を隠す。まるで眩しいものから遮る様に。
「暗く深い闇の中だからこそ、その小さな光は、眩しい……お前となら一緒に白夜を見ても良いと思ったが……お前は俺にとっては、眩しすぎる…。」
「………。」
それを最後に矢車の姿が黒い空間に溶け込むように、消えた。
残された悠はあの時、矢車に負けてあの言葉を言われた時の事を思い返す。
あの時は矢車との勝負に負けての悔しさから最後に言った言葉の意味を理解出来なかったが、今になって何故あの言葉が出て来たのだ?
「……俺の中の、光…?
なんだってんだ、いつものキチガイ思考じゃねえのかよ…。」
誰もいない空間で一人、答えの帰って来ない疑問に頭を抱える。
自身にある光と言うのが、今の今まで隠した自分なのかそれともそれ以外なのか、悠にとっては今更過ぎる疑問だ。
いっその事考えるのを止めようと思った。既に死んだ自分が答えを見つけた所でどうにか出来る問題でないから。
「あぁそうだ。もういいんだ、もう……オレは…。」
「───本当に、それでイイの?悠。」
「…………え?」
それは聞き馴れた声だった。それでいて一番、好きだった者の声でもあった。
「イイ訳無いわよね?シスターだって言ってたじゃない。物事を中途半端に終わらせるなって。」
「あ……まさか…そんな…。」
その全貌に悠の涙腺が崩れようとしていた。
「なによその幽霊でも見ている顔は、って死んでいるか私。」
「………あぁ。そうだな…オレも死んでる。」
「そうね…これじゃあ元気?って言えないね、死んでるんだから。」
「…ハハッ、そうだな。」
あの時と変わらない会話に目から一筋の涙が垂れる。
「……久しぶり…カナ。」
「うん……久しぶり、悠。」
「──待って待って待って待って。つまりなに?簡単に言ってこういう事?
悠兄さんは今ベルトさんが何かやって死んでるんじゃ無く仮死状態で、何らかの処置を施せば悠兄さんは生き返る!?」
「そうよ~。」
「今明石と夕張がその処置法を知ってるんだと!上手くいきゃあ今日中にも出来るってよ!!」
「マジでぇ!?どどど、どうやって!?オレも手伝うから!!何をどうすれば悠兄さんは生き返るんだ!?」
「それは私が説明しましょう!!」
ラボに戻って来た秋に出て行ってからこれまでの経緯を伝える天龍と龍田。
余りの感情に跳びはねかねない位の喜びを見せる秋の元に白衣を着た夕張が手に一つのシフトカーを持って前に出て来た。
そのシフトカーはどことなくネクストライドロンに似ているが今までの形状とは変わり若干細長い形状をしてた。
「ん?夕張ちゃん何ソレ?シフトカー?」
「ハイ!これは私達と悠さんとで前々から製作していたドライブのバージョンアップ用シフトカーです。
当初はシフトカーの力を一つでは無く、複数を合わせる事で未知数の力を発揮するのが当初の予定だったんです。」
「当初はって、今は違うの?」
「えぇ。このシフトカーの能力、”複数のシフトカーの力を一つ”にが悠さんの蘇生の大きなカギとなるんですよ!!」
「複数のシフトカーを一つに………ゴメン、オレそういう科学系はサッパリ。分かりやすく教えてくんない?」
「そうですね……では簡潔な例を。
今の悠さんがバッテリーの切れた一台の大型車です。そしてシフトカー達のコアドライピアを直結させエネルギーを供給すれば…。」
「バッテリーが溜まって悠兄さんが動くってか!!………でもそれ、ホントに出来んの?
シフトカー全部っつうと、下手したら大爆発起きそうに思えんだけど…。」
「えぇ。当初では三台くらいが限界でしたけど、ココにあるメールが届いたんです。」
「メール?」
「このシフトカーの調整が加えられてる設計図と必要なプログラムの計算式……ハッキリ言って完璧な設計図ですよ。私達の遥か上をいくレベルの出来です。
これを送って来たMr,Gは誰かは知りませんが送られた設計図には怪しい箇所はありませんでした。」
「ミスターGィ?誰だソレ?…オレ等の味方って見ていいの?」
「それはまだなんとも……でも!その設計図を基にこのシフトカーを調整すれば全てのシフトカーだけでなくバイラルコア達はおろかネクストライドロンの力も合わさって、悠さんを生き返らせられる可能性が確立に上がるんですよ!!
……例え罠だとしても、もう私達はこれに賭けるしかないんです。」
「……だな!よし!そうと決まればやろうぜ!!悠兄さんを起こそう!!」
「おう!アイツが生き返ればアシュラとかいうヤツもブッ飛ばせるる事が出来るしな!!」
「えぇ!よォ――しッ!そう決まればやってやりますよぉおお!!徹夜がなんぼのもんじゃーーい!!!」
「さてじゃあオレは何を手伝えば「秋くん秋くん」ん?なに龍田ちゃん?」
「秋くんには~、あの子の事をお願いしたいのだけど~?」
「あの子?……ッ。」
龍田に言われ連れてかれた所は寝台に寝かされてる悠の所。
シーツは取られベルトや体にコードが貼りつけられているその傍らにはラ・フォリアが背を向けて佇んでいた。
「ラ・フォリアちゃん…。」
「……あ、戻っていたんですか。すみません。気が付かなくて…。」
「お、おう。今さっき、ね…。」
秋に気付いて振り返るラ・フォリアの顔はいつも通りの笑顔であったが目元が赤く腫れあがり笑顔も何処がぎこちなく無理してるのが見て取れた。
「………ゴメン。悠兄さんを死なせないとか言っておきながら、こんなザマで…。」
「一通りの事情は聴きました。秋は悪くないですよ。それともビンタの一つをそんなに受けたかったんですか?」
「…受けても文句の言えねえ事しちまったって自覚はあるよ、オレがもうちょいしっかりしてれば悠兄さんがこんな事にならずに済んだのは、事実だし…。」
「…過ぎてしまった過去はどうやっても変える事は出来ません……でも、これから起こる未来の事は今どう動くかで変わります……私はそう信じてます。」
「ラ・フォリアちゃん、何処に?」
「夜食作ってきます。皆さん完全に徹夜する気満々らしいですから。」
「あ、ちょ…行っちゃった……ハハ、ホーントイイ女過ぎるよなぁ?肝が据わってると言うか何と言いますか。」
乾いた笑みを浮かべながら、今は眠りについている悠に視線をやる。
「こりゃ起きた時相当の覚悟が必要らしいぜ?悠兄さん。悪いけどそん時は静観させて貰うからな。」
「…え?ゴメン、もう一回言ってもらえる?」
「だーかーら!アンタはまだ死んで無いの!!ここあの世じゃなくていわば中間地点。正に、生きるか死ぬかの瀬戸際ってヤツよ。」
「マジかよ………アレ?ちょっと待て、じゃあ何でお前ここに居んだよ?だってお前もうとっくに………まさか偽物か!?」
「そこまで言うならアンタとの初めての夜の事言うけど?あの時アンタ私の胸触って鼻血…。」
「分かった。信じる。信じるからそこから先言わないで、お願い。」
「もう……まぁ強いて言うなら連れて来られた、かな?悠と会えるって言われちゃったらそりゃ迷わず行くもの。」
「…誰に?とは言わないけど……そっか。じゃあちゃんとあの時の事も覚えてるってワケだ。」
「………うん。」
「…………そっかぁ。」
対面して話してた悠が背中を向け出す形で目を逸らした。
「悠?」
「………全く、自分でも嫌気が差す位だよなぁ。
……守ってやるだなんだ言っておきながらも守れず仕舞いだ、お前の好きなヒーロー像とは真逆の事やってるわで……おまけにだ、こーんな変わり果てた自分の姿を見せちまうなんざ…………とんだ追い打ち攻撃じゃねえか。」
「………。」
「オレは……結局最初から約束も守れねえ、誰も守る事の出来ねえ……ろくでなしだった訳だ「そんな事無い!」…カナ?」
真っ向から否定する言葉と憤りと慈悲のある目を向けられていた。
「それでは皆さん、準備は良いですか?」
『おう/あぁ/えぇ/ハイ !』
アシュラの暴走から日付が変わり、昼を超えた時刻。
人通りと障害物の無い海岸の倉庫街にて、秋達は大掛かりな計画を始めようとしていた。
明石がお立ち台に立ちメガホンをもってこの場に居るメンバーに声を掛ける。
「では改めて内容を説明しますね。
まずネクストライドロンに悠さんを乗せて、この海岸線をトップスピードで走らせてネクストライドロンのコアがフル稼働させた頃合いを計りシフトカーとバイラルコアの同調を始めます。
役割分担は、運転役が秋さん。」
「よっしゃ!任せとけ!!」
「万が一の護衛役には那智さん達が。」
「あぁ。了解した。朝霜と清霜は居ないが、やり遂げてみせよう。」
~その頃の朝霜・清霜は…~
「美味ぇなこの納豆!!姉ちゃんおかわり!!」
「わたしもーーー!」
「はいはい。ちょっと待っててね……アレ?なんでこんな事になってんだっけ?」
「そして夕張がラボ内の全システムを使って遠隔で同調プログラムを操作する。ここまでは良いわね?
では、機材の準備が整い次第即決行します!」
明石の号令と共に皆が一斉に自分の持ち場へ動く。
秋はネクストライドロンの運転席に座りハンドルを手に具合を確かめる。隣では助手席に座っている悠のシフトブレスに嵌ってるシフトカーとシートベルトを確認して準備を整いつつあった。
「よし。後は安全且つ迅速な運転で…「秋。」…ラ・フォリアちゃん。」
「お茶どうぞ。ハーブティーですので、少しはリラックスできますよ?」
「お、サンキュー。」
運転席部の窓から紙コップを差し出したラ・フォリア。ライダー組以外の面子では悠の仮死状態を知っているのはラ・フォリアだけで済み、古城達にはラ・フォリアがご自慢の口八丁で自宅に帰らせ大々的に作業を進める事が出来たのはラ・フォリアの功績だ。
そんな彼女がこの場に居る事に誰も文句は言えない。こうして裏方的作業を進んでやるラ・フォリアの心情を皆が分かっているのも在るからだ。
「いよいよですね。悠を起こす一大計画が。」
「あぁ。目が覚めたらまずなんて言ってやろうか、色々あって迷っちまうさ。」
「そうですねぇ、私は取りあえず今までの鬱憤を全部ビンタにして返しますか!言葉で言うより物理で言った方が分かる人でしょうし。」
「ハハッ!いいじゃん!じゃあオレも一発ぶちかまして…。」
「秋さーーん!準備整いました!!スタート位置までお願いします!!」
「おっと出番だ。んじゃ、行って来るぜ。」
「はい………ご武運を。」
明石の準備が整い、秋はレーサー用ヘルメットを着用してネクストライドロンを動かした。
ラ・フォリアの持つフラッグの前に停車し、後は振り降ろされるのを待つだけだ。
「待ってろよ悠兄さん…今起こしてやるぜ…!」
「カウント開始!3…2…1…!」
秒読みが開始されフラッグが振られると思ったその直後…。
ードォオォォォオオオッ!!!ー
「ッ!!」
「何だッ!?」
ネクストライドロンの直線状コースに、空から雷のような轟音を響かせ落ちて来た。
次第に土煙が晴れて行くと、昨日姿を消していた最凶最悪の魔神・アシュラが突如として現れた。
「アイツは…!マジかよ!!こんな時に!!」
「アレは…。」
「ラ・フォリアさんこっちへ!!急いでココから避難してください!!」
「総員戦闘態勢に入れ!計画は中止だ!!」
突如として乱入してきたアシュラロイミュード。体から溢れてる気とコアのエネルギーは昨日と違いかなりの放出量となっているのが囲んでいる那智達の肌にひしひしと伝わってきている。
アシュラの視線は取り囲んでいる那智達では無く、ネクストライドロンに乗っている悠の元に向けられた。
【ィィィイタァアア~~…ツヨイヤツゥ……ワタシトォ……タタカエエエエエェ!!!!!】
叫びと共に気とエネルギーの放出が周囲に広がる。狂気交じりの雄叫びと視線が悠に集中的に向けられた事に那智達の脳裏に最悪のイメージが浮かばされる。
もし、アシュラがあの状態の悠に攻撃を放ったら、最後の希望が消えてなくなってしまう。それだけは…。
「させるかぁああッ!!」
「行かせないわよおおぉぉッ!!」
「準鷹ッ!!」
「おうさァ!!全部持ってけッ!ヒャッハァーーーッ!」
「絶対…行かせません…!!」
「当たってぇ!」
出し惜しみの一切無い砲撃と、魚雷と、爆撃がアシュラに向かう。撃退では無く一秒でも持たせる為の時間稼ぎ。全方位の総攻撃に少しでも怯んでくれればとの思いで放った攻撃は狂気の魔神には届かなかった。
【ジャアァァァマァアァアアアァアダァァアァアアアァアーーーーッ!!!】
地面に大きく振りかぶった腕が叩き付けられると、その衝撃が那智達の放った砲撃全てを弾き飛ばしてしまった。空の艦載機も衝撃で全てが粉々にされ一切の攻撃が当たる事無く終わった。
そしてその衝撃は那智達にも襲い掛かる。
「ぐぅ!!」
「あ゛ぁッ!!」
「きゃあッ!!」
「どわぁ!?」
「ッ!」
「ヒアァアッ!!!」
その一撃だけで皆大破状態にまで追い込まれ地に伏せられた。
アシュラは呻き声を上げながらゆっくりとした歩調でネクストライドロンへ歩を進めた。那智達が立ち上がろうにもダメージが大きく力が入らない。
那智達を傷つけ此方に向かって来るアシュラに対し、秋は…。
「ちっくしょう!悠兄さんをやらせるかってんだ!」
ヘルメットを脱ぎ捨てマッハドライバーを身に付け運転席から飛び出し、アシュラと対峙しだした。
「明石ちゃん!悠兄さんを頼む!!
Let,s!変身ッ!」
<< SignalBike/ShiftCar!──Rider! >>
<< DEAD HEAT! >>
秋はデットヒートマッハとなってアシュラへと突っ込んで行く。
アシュラのボディにゼンリンシューターを叩き込んで足止めを試みるマッハを目に、明石は物陰から顔を出してネクストライドロンを見る。
「…ラ・フォリアさん。私が合図したら全速でネクストライドロンに向かって一緒に走ります。三人でちょっと狭いけど私が運転してこの場から離脱しますので…。」
「……いいえ。ここはもう勝負に出る時ですよ!!」
「ちょ、ラ・フォリアさん!?」
明石が合図を出すより先に飛び出て行ったラ・フォリア。そのままネクストライドロンの運転席部に座るとドアを閉めハンドルを手にした。
「何やってるんですかラ・フォリアさん!!まさかとは思いますけど…!!」
「えぇ。運転の仕方なら隣で見てましたから分かります。幸い真っ直ぐ進めるのなら私でも出来ますから。」
「危険ですよ!だって直線状には敵が!!」
「秋達を信じます。それにこの機会を逃せばもう次はありません…今が運命の分かれ道ですよ!」
「……分かりました。一か八かに駆けてやりましょう!!」
ラ・フォリアの強い意志に心打たれた明石は作戦の決行を決意する。機材の所に辿り着き、システムを起動させた。
「こっちはオーケーです!いつでもどうぞ!!」
「………。」
隣に座ってる悠の手にそっと自分の手を重ねた後、ラ・フォリアはアクセルペダルに足を掛けた。
「………行きます!!」
強く握りしめたハンドルと踏み込むアクセルにマフラーから爆音が響いた。
次第にスピードを上げて走るその爆音は離れて戦ってるマッハの耳にも、倒れている那智の耳にも…。
「まさかラ・フォリアちゃん…!?
………オッケー、未来を決める時が今って事か!!」
<< Burst! DEAD HEAT! >>
【~~~ッ!】
マッハはネクストライドロンの直線コースからアシュラを退かす為にブーストしてアシュラを押しだしたが、それも僅か。途中で踏み止まったアシュラが残った四本の腕でマッハへ殴りかかろうとした時だった。
ーガガガッ!!!ー
【ァア~~~?】
「ッ!皆ッ!!」
「まだだ…!弾が尽きようと、この那智は、まだ倒れんぞ!!」
「今こそガッツの見せ時よ!手負いの狼は…しつこいわよ?」
「こういう暑苦しいのはガラじゃ無いけどッ、私だけ寝てるなんてもっと性に合わないわッ!!」
「ヒャッハーッ!万が一を考えて酒を隠し持ってて正解だったねえ!!今のアタシしゃあ、燃料満タンだよぉ!!」
「私達も…!」
「まだまだやれます…!」
マッハに振り降ろされる腕を那智、足柄、飛鷹、準鷹が大破して出血してるに関わらず一人掛かりで一本の腕を抑え込み、早霜と沖波はマッハの背中から押していってる。
一人一人のその力は微々たるものであったが、結束した今その力はアシュラにも僅かながら通じていた。
「よっしゃみんな行くぜぇえッ!!いっっっせぇーーーのッ……ッ!」
「「「「「「せぇええッ!!!」」」」」」
【ヌッ!?ゥゥゥウウゥゥウーーーーーッッッ!!!!】
マッハの掛け声と同時に残った力を全てつぎ込んだ皆の強い意志は、アシュラの強靭な体を動かした。
そして空けた道を、ネクストライドロンが通り過ぎる。
「行けええーーーーーッ!!!」
マッハ達が決死の覚悟で作った道を、ラ・フォリアは胸の内で感謝しつつラストスパートを掛けてアクセルを更に踏み込む。
そして、遂にメーターが最大速度に達した。
「きた!みんな!お願い!!」
明石が端末の数値が規定値に達したのを目に待機していたシフトカー、バイラルコアへ呼び掛けた。
明石の呼び掛けに待ってましたと言わんばかりに、光となってネクストライドロンに向かって行くシフトカーズとバイラルコア。ネクストライドロンに次々と取り込まれていくとブレスに嵌ったシフトカーとドライブドライバーが共鳴するように輝きだした。
だが、このまま上手く行く程、運命のロードは優しく無かった。
【ウガァーーーーーーーッ!!!ザコハァ…ドケエエエエエエェッッ!!!】
「ッ!う、うわァァアアアッ!!!」
『アァァ!!』
<< オツカーレ >>
抑え付けていたマッハ達を強大な気のエネルギーで弾き飛ばすアシュラ。変身が解かれ、那智達も立ち上がれずアシュラを抑える手立ては無くなってしまう。
鬱陶しい付き物から解放されたアシュラは走り抜けていったネクストライドロンへ向けて技を放とうとした。
【ニィイイゲェエエルゥゥゥウナァアア……タァアタァカアァァァエエエエエッ!!!!】
「マズイッ!」
無情にも放たれたビームは走行中のネクストライドロンに直撃してしまい、爆炎で火が着きながら大きく後ろから吹き飛ばされてしまった。
「キャアァアァァァッ!!!」
「ラ・フォリアちゃんッ!!悠兄さんッ!!」
火が着きながら車体が大きな弧を描きながら地面へと転がり回るネクストライドロンの姿に秋は中に居るラ・フォリアと悠の安否を気にして痛みが走る体を起こし駆けつけようとしたが、無情にも、ネクストライドロンは赤い炎を爆ぜて、爆発した。
「あ……ああ………そんな…。」
爆発したネクストライドロンを目に絶望してしまった秋は膝を着いた。最後の希望が目の前で砕け散り、その上ラ・フォリアの命まで、秋だけでは無く那智達や明石の心を完璧に砕くには衝撃的すぎる光景だった。
一人…前髪が乱れ、隠れてた目が曝け出された早霜の両目が見開くまでは。
「違う…………皆さん、アレを!!」
いつもの静けさが感じられる声で無く、恐らく誰もが初めて聞いたであろう早霜の叫び声で向けられた先。
爆発した先にある炎で包まれている物体。纏っていた炎が次第に収まりシルエットが明らかになると早霜以外の面子が驚いた表情になる。
炎が消えた物体の正体は、新品同様の輝きを放っている健全のネクストライドロン。
そして、”助手席”のドアが開かれると皆一同、特に秋の絶望しきった顔に光が戻って来た。
「悠…兄さん…。」
「……。」
助手席から現れた人物、仮死状態から蘇生した悠は一度当たり周辺を見渡すと、静寂な空気の中、大きく息を吸った。
「スゥーーーーー……ハァーーーーーーー……ったく、人が寝てる傍でドッカン!、バッカン!騒いでんじゃねえよ!!叩き起こされたコッチはイイ迷惑だこの、バカ野郎共ォ!!!」
「……ブハッ!……ちょっと、人が必死の思いで起こしたってのにソレは無いんじゃないのォ!?」
「全く…本物の大馬鹿者は貴様だ…。」
「ホントよ、もう!……でもッ…よ゛がっ゛だ!」
「ホントに、私達の恩人サマは、ブレないわね…ッ!」
「だぁ~っはっはっは!イイ~じゃねえかよ!アタシは好きだぜぇ?ああいう、バカ!」
「……フフ。本当に見ていて面白いです、貴方と言う殿方は…。」
「は、早霜、ちゃん?」
「や゛っ゛だぁ゛~~~!、でぎだよォ、 わ゛だじ、う゛ま゛ぐ…でぎだぁ゛~~~~ッ!!う゛ぁ゛~~~~ん゛!」
蘇っていきなりの怒号に、秋は涙ながらツッコみ、那智はうっすら涙を浮かべながら鼻で笑い、足柄は盛大に涙を流し、飛鷹は呆れながらホッとし、隼鷹は腹を抱えながら涙を浮かべ転がり回り、早霜は何故か顔が紅潮し、沖波はそれを不安そうに見て、明石は自分の調整が上手くいった事に安堵と喜びの感情を盛大にぶちまけていた。
他者多様な反応見せるなか悠は助手席から運転席部のドアを開け、中に居るラ・フォリアをゆっくりと下ろした。
腰が抜けているのかペタンと女の子座りで地面に腰着くラ・フォリアにしゃがんで目線を合わせる。
「悠…。」
「全くお前は、無免許運転のみならず盛大に事故りやがって。とんだじゃじゃ馬王女だ事で。」
「ッ~~!バカァ…!」
ラ・フォリアの目からダムが決壊したように涙が流れてくる。
本当なら仮死でも声を上げて泣く所を抑え込み、命がけで運転したプレッシャーからの解放が同時に押し寄せて来たのだ。悠の胸に拳を弱々しく叩き付てくるラ・フォリアの手をそっと掴んで下ろさせた悠は下を向いてるラ・フォリアの顔を上げて手で両目の涙を拭った。
「あぁ、悪かったよ…今まで、心配掛けさせちまって……愚痴は後でたっぷり聞くよ。
…アイツを倒した後で。」
頭を軽く撫でた後、立ち上がった悠。
向かう先は此方を見据え構えているアシュラ。一度殺されたアシュラに悠はもう一人の相棒に声を掛ける。
「…クリム。」
<…ああ、私も、大丈夫だ。>
「そっか…寝起きで悪いが、一仕事してもらうぜ。」
そう言いながら取り出したのは自身の蘇生に使ったシフトカー。
これの使い方は知っている。だが、その力は自身が設計して手掛けたモノでなく、もっと巨大な力。どう扱えばいいのか自然と頭に浮かび上がった。
【クッハハハハハハハァ!!ツヨイヤツゥ、イタァ!!!タタカエエエ!タタカエエエエエェ!!!】
<コアのエネルギーが彼女の精神を蝕んでいる、早く手を施さねば、廃人どころじゃ済まないぞ。>
「オーケー、ならスピーディに行くぜ…。」
ー忘れないで、アナタは…。ー
「…オレの呪われた過去もすらも…!」
ー何時までも、どんなに変わり果てたって…。ー
「振り切って…未来に進んで行く!」
ーアナタは、私の…私達のヒーローだよ。ー
<< FIRE! ALL CORE/ENGINE! >>
新たな覚悟が、新たな力。シフトカー・[シフトフューチャー]を起動させた。
ブレスに挿しこんだシフトフューチャーを眼前に持っていく。掛け忘れていたエンジンに再び、その意思を燃料に、火を着ける為に…。
「──<変身ッ!>」
<< DRIVEtypeFUTURE! >>
シフトフューチャーの起動に他のシフトカー達やバイラルコア達が悠の周りを走り回ると、光となってシフトフューチャーの中へ。そして後ろで止まっているネクストライドロンにも光が灯ると、データー状の渦となって悠の体に鎧となって纏われた。
ネクストライドンを思わせる青ラインのボディスーツとアーマー。腰から膝裏までにかけての同デザインのマント。左肩と両足の踵に着けられたタイヤ。右肩に小型のサーキュラーダイナミクス。そしてダークブルーの複眼。
全てのシフトカーとバイラルコア、そしてネクストライドンとの同調で得たダークドライブの新の姿。
仮面ライダーダークドライブtypeフューチャー
「ゆ、悠兄さんと、ネクストライドロンが…一つに…!」
「…行くぜ、クリム!」
<OK!Start our Mission!>
止まりかけてたエンジンが、再び始動する。
これが本当の、Surprise Future。
…ハイ、調子乗りました、すみません。
ここでオリジナルフォーム・タイプフューチャーに関しての簡単な説明を…。
外見はタイプトライドロンのネクストライドロン状態。
ただし下半身はハートタイプミラクル同様のマントと、右肩魔進チェイサーの背中についてるサーキュラーダイナミクスの小型にした装置が着いてる。
変身音はタイプネクストとタイプトライドロンの合わせたヤツ。ハートの変身音を知ってる方はそれを基にイメージしてみてください。
カナとの会合の続きは次回の話しでやります!決して忘れた訳では無いのでご安心を。
では次回。新たな新フォームの力が明らかに!?お楽しみに。