その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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お待たせしました最新話です。

グラファイトの散り様、正に武人という立ち振る舞いでしたね。ハートの次にイイ敵キャラではないか?

それといよいよ夏映画!どんなエンディングを迎えるのか見物ですね。

そして新ライダー…最初見た時ダブルと思ったのは自分以外にも居る筈…。


喪失

 

 

 

「消した?仮面ライダー君をですか?」

 

「そうだ。」

 

大臣の書斎。そこではようやくアジトに戻って来たオーディンが大臣に対し悠を始末したとの報告を告げた場面であった。

 

オーディンの言う事に些か信じられないと言った顔の大臣。

確かにオーディンは強いが内面短絡的な思考を持つオーディンに対し、相手があの一筋縄では行かない曲者に対し容易く躍らせられたというイメージが見えてならない。これで本当に倒されたのならば今までの苦労は何だったのかと思いたくなる。

 

この事を伝えるべきかどうか悩んだが、今計画してる作戦にはオーディンの力が居る。ならここは下手に機嫌を損ねず、討ち取って優越に浸ってるであろう今を機会に上手く誘い出す事に決めた。

 

「そうですか。それは大手柄でしたね。いや、アナタにとっては当然の結果ですか?」

 

「無論。我の下した判決は絶対。故にこの結果は必然であるのだ。」

 

「そうですね。……なら、これから戦う相手にも勝利するのは必然、という事になりますね。」

 

「ほう?残りの雑兵共の事か?」

 

「いいえ。頭となる彼を失った彼等はもう詰んでると言っていいでしょう。何時でも始末できます。

それよりも今目を付けているのが、とある種族の頂点、と言われてる希少な存在でしてねぇ。近い内我々三人でご挨拶に伺おうと思うのですが、如何です?」

 

「………よかろう。その頂点と言われてる劣等に教えるいい機会だ。存分に知らしめてくれよう。

誰が、この世界で頂点と呼ばれるに相応しいか。」

 

「決まりですね。でしたらまた明日ここに来てください。ラヴァーを含めて詳しい情報と段取りを言いますので。」

 

「良いだろう。今は貴様に従ってやる。だが、あまり我を待たせるで無いぞ。」

 

大臣の誘いに難無く乗ったオーディンは羽を散らしながら消えてった。

 

地に落ちる羽を見て大臣は傍らの台に置かれたチェス盤に目をやる。

盤には黒のキング、クイーン、戦車の駒が置かれ、白の駒にはキング、ナイト、戦車、僧侶の駒が置かれており大臣はその内白のキングを手にする。

 

(ジャッジはあぁ言ってますが、私はキミがそう簡単に死ぬとは思っていませんよ。でなければこのゲーム、我々のワンサイドになってしまいますからね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーBi-!Bi-!Bi-!ー

 

「っ!……。」

 

廃教会で一夜を過ごした悠は、携帯から為る警告音によって目が覚めた。

 

損壊した個所から照らされる朝日に寝付けが悪かったのかまだ疲労が残ってるように見える。未だ鳴り響く携帯を操作して画面に出た地図と識別を調べる。

 

「またロイミュード…こんな朝からご苦労な事で…。」

 

愚痴を溢すも黙って見過ごす訳にはいかない。腰にヒマワリのロックシードを嵌めた戦極ドライバーを着け外に停めてるバイクの元へ向かう悠であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………妙だな。)

 

悠はロイミュードの反応があった採石場に到着し辺りを見渡して疑問を抱き始める。

 

このような人の気配の無い場所に何故ロイミュードが?それに携帯を見ると今まで複数で出現してたロイミュードの反応が今回は一つ。たった一機がこのような場に居るのだ?

 

罠の可能性を真っ先に考えたがその考えは当たっていた。感じ取った複数の気配を感じ自分が囲まれていることに気付いたのだ。

 

それと同時に誰がこの罠を仕掛けたかも分かった。

 

「フゥ………オイ!

もうバレバレだから出て来いよ!!要らぬ客も全員だ!!」

 

怒鳴り声に近い大声が採石場に響くと、置かれている重機や積み上げてる岩石の影から見知った人影が悠を囲う様に出て来た。

 

そう、昨夜悠を確保すると決断した秋達と古城達であった。

 

 

「あらら、もうバレちった?」

 

「そこそこ気配を隠せてるのが三つ。それ以下が三つ。後はずぶの素人が三つ。

こんだけ人の気配がするとなればそれ以外考えられないだろ。…まぁ…。」

 

悠は携帯の画面と天龍の腰に巻かれてるベルト、ドライブドライバーと視線を交互に見る。

 

「灯台下暗し。ある意味盲点で思い浮かばなかった。

まさかクリムをロイミュードの識別コードに替えてまで誘い出すなんてね…。」

 

<キミが罠だと気付いても必ず来ると確信を得ていたのでね。>

 

「だからってこんな朝早くから動かさなくてもねぇ。コッチは昨日大仕事してくったくたなんだよ…。

おまけにこんな大人数で来やがって…。」

 

そう言いながら自信を囲んでいる決別を決めた者達を見渡す悠。その内ラ・フォリアと目が合ってしまう。

 

「…顔、細くなりましたね。ご飯、ちゃんと食べれてないように見えますが?」

 

「忙しくてな。でも最近太り気味だったし、良いダイエットにはなったよ。」

 

「とても健全とは言えないダイエットですね。」

 

「まぁな…。」

 

ラ・フォリアとある程度話すと今度はその隣に居たゼノヴィアに話し掛けに行く。

 

「まさかキミまで来ているとは、驚いたよ。」

 

「大事な返事を聞いて無かったのでな。この機会を逃す訳にはいかなかったんだ。」

 

「あぁ、そうだったな………コレが答えだよ。

やっぱ俺には、おちおち恋愛みたいな色事してるヒマなんざねえってハナシ。」

 

「…悠。」

 

「…悪いな。」

 

「灰原!!」

 

悠がゼノヴィアに思いを告げてる最中、凪沙と雪菜を傍に古城が叫んだ。

悠は呼ばれた古城の方へ視線を向ける。

 

「話は全部秋から聞いたぞ!工場で言ってたヤツは全部ウソだって!

お前そこまでしてオレ達と縁を切るつもりかよ!?」

 

「…………。」

 

「おい、なんとか言えって!」

 

「…キミと話す事は、もう何も無いよ。」

 

「っ!」

 

「当然。隣に居るキミの妹にも、ね。」

 

「っ!…。」

 

「灰原先輩!凪沙ちゃんに対してそれは酷いですよ!!

凪沙ちゃんが一体どんな思いでここに居るのか、アナタに分かるんですか!?」

 

「さぁ?そんなの分かる訳無いでしょ…。

それよりも俺が話をしたいのは、お前等だ。」

 

今までとは違い、凪沙に対しても冷めた対応する悠に雪菜は激励するが悠はそれすらも軽くあしらい秋とハルナの方へ目をやった。

 

「何さ話って?もしかしてラ・フォリアちゃん達ココに連れて来ちゃったのに対してのお説教?」

 

「それもある。が、今はそれよりも重要な話だ………お前達の持っているドライバー。全部俺に渡せ。」

 

「…やっぱりそう来たわね。」

 

秋とハルナに持っているドライバー全てを要求してきた悠にハルナはクリムから悠が二人に対しドライバーの要求をしてくる可能性が高いという事を知らされているので特に慌てる様子も無く落ち着いていた。

 

二人の反応に悠は、ほぅと口にし感心したように二人を見る。

 

「意外だなぁ。てっきり文句の一つ二つや驚く様を想像してたが…あぁ。クリムか。」

 

「そういう事。んで、それに対する答えは当然ノー。」

 

「コレを渡したらそれこそ本当にアナタを止められなくなるからね。」

 

「そうか……なら仕方ない。無理やりにでも回収させて貰おう。」

 

「出た。お決まりの展開…やるっきゃないか。」

 

「えぇ…。」

 

目配りをした秋とハルナは悠然と立つ悠と対面する。そしてそれに加わるのがもう一人…。

 

「天龍ちゃん。本当にやるつもり~?」

 

「おう。艦娘を代表してオレが野郎にガツンと一発かましてやる!つーわけだ。頼むぜベルトさん!」

 

<今回だけだぞ?例えキミの妹がまたドリルやらスパナを出されても、今回だけだからな!!>

 

「うふふ~♪」

 

(……クリム。ちょっと人間に近すぎ過ぎたな…。)

 

憐れみと同情の視線を籠めて天龍の腰に巻かれたクリムを見つめた後、改めて目の前で対峙している三人に向き合った。

 

「…そういやあの時の…お前が吹っ掛けた力比べの勝負、お流れのままだったな…丁度良い、どの位腕上がったか見てやるよ。最後にな…。」

 

悠の腹部には何時の間にかライダーベルトが巻かれ、それに合わせてか秋の腹部にも同じベルトが巻かれていた。

そして秋の顔付きは、何時もとは違い、覚悟の籠った目をしていた。

 

「なら目ぇ見開いてちゃーんと見といてよ。オレが悠兄さんをボコす所をさ。」

 

「ふん。達者になったのは口だけじゃない事を祈りたいね。」

 

二人の元に飛来してくるダークカブトゼクターとガタックゼクターが手元に収まる。

ハルナもラルクバックルにカードを入れ装着し、天龍はドライブドライバーのイグニッションキーを回した。

 

 

「変身──。」

 

<< HENSHIN >>

<< CHANGE BEETLE >>

 

 

 

「変身!──。」

 

<< HENSHIN >>

<< CHANGE STAGBEETLE >>

 

「変身!──。」

 

<< OPEN UP >>

 

「ライダ~~…変身ッ!──。」

 

<< DRIVEtypeNEXT! >>

 

 

 

「──来い。」

 

クナイモードにしたカブトクナイガンを逆手に持つダークカブトの言葉にガタックはガタックカリバーを構え、ラルクはファインティングポーズを取り、ダークドライブは天龍の刀を持ち構えた。

 

「行くぜ、姉ちゃん!天龍!」

 

「えぇ!」

 

「よっしゃ!行くぜ!行くぜ!!行くぜぇ!!!」

 

一斉に掛かって来る三人を前にダークカブトも遅れて駆けてった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり風間ファミリーが根城にしている廃墟ビル内。

今現在ビル内の空気はいつもの様に喧騒と笑いに包まれた陽気なモノは無く、重い空気が漂っていた。

 

理由としては二つある。その内は一つは、テーブルに顔を突っ伏してる一子にあった。

 

 

「…はぁ。な~んかお通夜みてぇな空気だなぁ。なぁワン子。灰原とゼノヴィアが最近構ってくれないからって、落ち込み過ぎじゃね?」

 

「違うもん。別にそんなんじゃないし、最近ユウと全然会って無いとか、ゼノヴィアが何も教えてくれないで一人でどっか行ったとか、そんなんじゃないもん。」

 

「いやそれ完璧に当たってるじゃねえか。」

 

「放っておきなよキャップ。ワン子はワン子で、私達より複雑な心境を抱えてるんだから。」

 

「…なぁ京。そういやお前随分と灰原が関わってる時のワン子に肩を持つけど、お前だけだぞ?

ワン子とゼノヴィア除いて灰原の事良く思ってない俺様達のなかじゃあよ。」

 

「相手が誰だろうと関係ないよ。例えキャップでもガクトでも。同じ恋する乙女として応援するだけ。

…と言う訳で大和、私の恋も受け止めて。」

 

「…………え?…あ、あぁゴメン。聞いてなかった。なに?」

 

「大和、またモモ先輩のこと考えてたの?」

 

「あぁ。…ここ最近川神院で鍛錬してるって聞いたけど…どうも気になって…。」

 

「…あ。お姉さまなら今日鍛錬休みにされたわ。オーバーワークし過ぎだって…。」

 

「な!?あ、あのモモ先輩が、オーバーワーク!?」

 

「言っちゃ失礼かもしれませんけど…あの鍛錬嫌いのモモ先輩が鍛錬のし過ぎで注意されるなんて…。」

 

『こりゃあ人生の変わり目かもしれねえぜ!いやぁめでたいぜぇ!!』

 

「…本当に、良い方へ変わってくれるといいんだけどな…。」

 

「大和…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デェェエエリャアッ!!!」

 

「ハァアアアァアッ!!」

 

「ウォォオォラァッ!!」

 

 

「フン──ゼァッ!!」

 

 

戦地と化した採石場では、ガタック・ラルク・ダークドライブが、ダークカブトを囲う様に三方向から同時に攻めて行く。

 

これに対しダークカブトはあえて動かず三人を懐に入れた。

 

右のガタックのカリバーの一撃をクナイガンで受け止め、後ろのラルクへの拳が入る前に腹部に後ろ蹴りを入れ、左のダークドライブの上段の振りを腕を掴んで受け止める。

 

そしてガタックの方へ引き寄せ、二人をぶつけた後クナイガンの斬撃をガタックの胸部に、ダークドライブに左の前蹴りを喰らわせる。

 

「グァッ!……こんのぉ!」

 

「さっすがに三人相手でも遅れは取れないか!」

 

「とにかく三人同時攻撃よ!一対一じゃ確実に不利だわ!」

 

「……いや姉ちゃん。それ今の悠兄さんには無駄かも…。」

 

「……クロックアップ。」

 

「ッ!クロックアップ!!」

 

 

<<<< CLOCK UP >>>>

 

 

ダークカブトに合わせてガタックもクロックアップを発動。二人の姿が一瞬で消えると、たちまち辺りは砂塵に包まれる光景を、高みで見ている古城達が驚いていた。

 

「き、消えた!?アイツ等何処行った!?」

 

「…ッ!見てください先輩!砂埃が走り通った後の様に舞っています、きっとあれは目に見えない程の速さで動いていると思います。」

 

「目に見えない程って……なんだそりゃ。何でもありか仮面ライダーは!?」

 

 

 

 

その頃クロックアップの世界に入っているダークカブトとガタックはひたすら剣と剣を打ち合い、白熱した戦いを見せていた。

 

「なぁ!ここなら今二人っきりだし!他のヤツ等には、聞こえて無いよッ!」

 

「気持ち悪い事言うな!何の事言ってやがる!?」

 

クナイガンとカリバーがつば競り合い、互いの顔が近い状態でガタックはダークカブトに話し掛ける。

 

「オレ達からドライバー取る理由!オレや姉ちゃんが戦って傷つかない様にする為!でしょ!?」

 

「お前達と戦うより、一人で戦った方が効率が良いと至ったまでだ!くだらねえ勘違いしてんじゃねえ!!」

 

「そっちこそいい加減、くだらねえウソ吐くんじゃねえ!!」

 

ガタックが受けていたクナイガンを片方のカリバーで弾きもう片方でダークカブトの胸部に斬り付ける。

ダークカブトは一瞬怯んだが、即座にバックステップでガタックと距離を取った。

 

「そんなウソ吐いてまで自分の思い通りにしなきゃ気が済まないのかよ!!オレ達や、悠兄さんの事好きな娘らの気持ち無視してさ!!」

 

「あぁそうだ。俺はやりたいようにやる。やりたいように力を振るう。他人の事なんざ、知ったこっちゃねえよ!!」

 

「悠兄さん!!」

 

「俺は転生者を…BABELを倒す。その為にお前達を…切り捨てる!!」

 

<< ONE・TWO・THREE >>

 

「そんなので…納得できるかよ!!」

 

<< ONE・TWO・THREE >>

 

「「──ライダーキック!」」

 

 

<<<< RIDER KICK >>>>

 

 

 

武器を投げ捨て同時に跳び上がった二人。

 

 

「ウオリャァ!!──」

 

「セアァッ!!──」

 

 

ガタックの回し蹴りが繰り出される瞬間。ダークカブトは左腕をタキオン粒子が纏って無い部分のガタックの足を受け止め、突き出した右足をガタックに叩き入れた。

 

 

 

「グッ、グァァアアッ!!」

 

<< CLOCK OVER >>

 

「ッ!し、秋!!」

 

「オイ!大丈夫か!?しっかりしろ!!」

 

クロックアップが解け姿が見えるようになり、変身が解けた秋の元に駆け寄るラルクとダークドライブ。

 

そして同じく姿が見えるようになったダークカブトの手には、何時の間に手に取ったのかガタックゼクターが握られていた。

 

「まずは一つ…。」

 

「悠、お前…!ハルナ!お前は秋を治してろ!オレが行く!!」

 

「ちょ、待って天龍!!」

 

秋の治療をラルクに任せたダークドライブは単身ダークドライブへ向かって行く。迫るダークドライブを目に鼻で笑うと指を鳴らし、ダークカブトの合図によって現れたシフトカー達がダークドライブへ向かって攻撃してきた。

 

「うわッ!?お、お前等!!止めろ!!オレだぞ!?天龍だぞ!?」

 

<無理だ!シフトカー達は悠の指示を優先的に動いている!我々の言葉では、彼等は止められない!!>

 

シフトカー達がダークドライブを足止めしてるなか、ダークカブトは変身を解き悠の姿へ。

これに上から見ていた古城達は目を見開くも、次の悠の行動にその意味を理解する。

 

 

 

<<ブラッド・オレンジ!>>

 

「変身──。」

 

<<ブラッドオレンジ・アームズ 邪ノ道・オンステージ!>>

 

 

悠はダークカブトから武神鎧武へと変わり腰に差してる無双セイバーを抜くと、シフトカー達が引き上げダークドライブと対峙する。

 

「どういうつもりだよ?黒カブトムシのままだったら、あっさりやれたんじゃんねえの?」

 

「言ったろ?どれだけ腕が上がったか見てやるって…。誰も秋個人に言った覚えは無いぜ。」

 

「けっ!舐めやがって、上等じゃねえかぁああっ!!!」

 

<落ち着け天龍!感情に任せて剣を振るうな!!>

 

武神鎧武に煽られて斬り掛かりに行くダークドライブ。

 

クリムに指摘されてる通り感情的になり過ぎてるのか、武神鎧武に簡単に太刀筋を見切られ僅かな動きで回避され続ける。

 

「全く…前にも言っただろ。お前はカッとなると剣が大雑把過ぎる、って!」

 

「うわァっ!!」

 

大橙丸によるカウンターを受け斬られるダークドライブ。ダメージを受けた個所を抑えながら下がるダークドライブを前に武神鎧武は二本の剣を下げたままであった。

 

「剣の鍛錬に付き合えって言われて、30本中全敗記録叩きだしたってのに…。つくづく学習能力の無い…。」

 

「るっせえ!コッチは頭で考えるより、直感信じて行くタイプなんだよ!!」

 

「そう。だったらそれがどれだけ愚策のやり方か…教えてやるから来いよ。」

 

「ウオォオォオォッッ!!!」

 

 

雄叫びを上げて向かって来るダークドライブを前に、剣を構えだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同時刻、河川敷のほとりで川神院から休みを言い渡された百代は一人、言葉では言い表せぬ心境に立たされていた。

 

事の原因は若獅子トーナメントで起きたファントムの乱入騒動。自身の強さを確かめる為。自身の強さを認めさせるため。ただその一心。湧き上がる高揚感を除けばそれ以外の感情は全く無かった。

そう、例え死ぬかもしれないと言う感情さえ、彼女は持ち合わせて無かった。

 

ただ戦えればいい。それしかあの時、あの男に植え付けられた恐怖を忘れさせてくれる唯一の特効薬だったから。

 

だがそれは果たされなかった。ファントムの他に現れた乱入者によって自身の居場所を横取りされたからだ。

 

 

横取りされた事実もそうだが問題はそのやり方だ。百代を大人しくさせる為に殴る蹴るの荒業ではなくデコピンという悪さをした子供の躾に使われるやり方で大人しくさせられたのが、百代のプライドを大きく踏みにじられた。

 

更に最大のトドメは後日、急遽別日程で行われた若獅子トーナメントのエキシビジョンマッチ。

百代と戦う事になった知性チームの松永 燕との一騎打ち。彼女は松永 燕の知略と切り札の平蜘蛛の性能に…負けた。

 

それからだ、世間の評価と共に彼女の心の中で焦りが出始めたのは。

バハムートとダークカブトを前に口にした発言が中継中の放送に流され、尚且つ彼女の無様な姿が世間に流され、”あのような人物が天下の武神を語っていいのか?”という議論が彼女の知れない所で話題となっている。

 

そのことを耳にした百代は以前の生活が一変して嫌いだった鍛錬に明け暮れた。

 

強くなる。武神という名に相応しい強さと、今度こそ負けない為に。

 

だが、幾ら門下生の倍の鍛錬を積んでも、どれだけ苦手な精神修行をしても彼女の焦りは日に日に増すばかりだった。

 

 

(どうすればいい…私は…どうすれば強くなれる?どうすればあの男に……。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お困りかな?お嬢さん♪」

 

「ッ!?」

 

そんな百代の元に、悪魔の囁きが目を付けた。

 

 

 

吐息が頬に触れるまでの耳元の近くで囁かれた百代は咄嗟に距離を取って構えた。

 

百代の前には全身黒ローブで素顔が見えないが声からして若い男性と見て分かる。

 

 

「…誰だ、お前…。」

 

「ボク?そうだねぇ、通りすがりの魔法使い、かな?」

 

「………。」

 

 

如何にも胡散臭い。格好や言動から言って百代の抱いた感情はまさにそれに尽きた。

 

「ちょっとちょっと。そんな警戒しないでよ。ボクはキミにイイ話しを持って来ただけなんだからさ!」

 

「イイ話し?…。」

 

「そ、イイ話し♪…キミ、戦いたいんだろ?強いヤツと…例えば…仮面ライダー、とか♪」

 

「ッ!」

 

「アハ♪分っかりやすい反応。…目を見れば伝わって来るよぉ、キミが抱いてる途轍もない焦燥、不安、葛藤が!

ボクならキミの心を蝕んでるその感情を取り払える。」

 

「……お前、一体何者だ?」

 

「言ったじゃないか!通りすがりの魔法使いだって!

キミと言う可哀そうなシンデレラを、素敵な舞踏会に出せる位の、綺麗なドレスと馬車の魔法をかける、ね♪」

 

 

 

 

 

如何にも芝居掛かった台詞。でも百代にはとても興味を惹きつけられるモノを感じ取った。

 

 

そして甘美な言葉と共に男が百代に差し出したのは、コブラバイラルコア。

 

だがその色は、日の光が反射して輝くほどの金色だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ハァッ!!」

 

 

ーズバンッ!ー

 

 

「グァァアッ!!」

 

「て、天龍ちゃん!!」

 

「来んな龍田ァ!!」

 

「で、でも…!」

 

「いいからそこに居ろ!!…このバカには、どうしても教えてやんなきゃいけねえ事があんだよ…!」

 

「…そんな様で何を教えるって言うんだ?」

 

武神鎧武とダークドライブの攻防は、武神鎧武が有利に動いていた。

 

手に持つ刀は鮮烈な太刀筋の前に真ん中からスッパリ斬られた為に今は投げ捨ててダークドライブの持つブレードガンナーに持ち替えているが、それ以外は満身創痍の状態。今は変身しているから倒れずに済んではいるがもししていなかったらとうに立ち上がる事すら出来ないまでに斬られているのが現状であった。

 

<天龍。ここは無理せず引いた方が良い。そのダメージではもう長く戦えない。>

 

「……あぁ。そうだなぁ…ならやる事は一つだ!!」

 

<お、おい!何をする気だ!?>

 

片膝を着いていたダークドライブは突如立ち上がり武神鎧武に特攻を仕掛けた。

ブレードガンナーを牽制に撃ちながらスピードを緩めず突っ込むダークドライブ。武神鎧武は自身に当たりそうな光弾だけ大橙丸で防ぎダークドライブにトドメのカウンターを決めるつもりでいた。

 

「ウオオオオォオォ──ッ!!!」

 

「(無謀な…。)──シッ!」

 

剣が届く間合いにまで距離が縮んだのを見計らって武神鎧武は無双セイバーの突きを繰り出した。

 

「来ると思ってたぜェ!!!」

 

「ッ!?」

 

ダークドライブがまるで突きが来るのを分かってた様に眼前スレスレのタイミングで避けると突き出した方の腕を掴みそのまま後ろに回り込んで武神鎧武を羽交い絞めに拘束した。

 

「へッ!伊達に負け続けた訳じゃねえっての!お前ならああするって読めてたぜ。」

 

「ならこの後は?これしきの拘束で動きを封じたとでも?」

 

「いんや、思ってねえよ。ただ少し話すには十分だってな。」

 

「話す、ねェ…。」

 

「あぁ。……お前分かってんのかよ。理由がなんであれお前はオレ達を裏切ったって事になってんだぞ?」

 

「あぁそうだ。だが俺はお前達を仲間として見て無かった。利用できるから利用した。」

 

「ハ!とてもそんな風には見えなかったが!?」

 

「信用し過ぎなんだよお前等。一度助けて貰ったからってソイツが善人とは限らないだろう?」

 

「…あぁそうだな。少なくともお前は善人て言える人間じゃ無いな。………でも…。」

 

「でも?…」

 

「…オレが…オレ達が本気で力を貸そうと思ったのは間違いなくテメエなんだよ!!悠!!そういうヤツ等の期待や信頼を、お前は本当に捨てるのかよ!?えェ!?」

 

「……お喋りは終わりだ。」

 

武神鎧武はダークドライブの足の甲を思い切り踏みつける。

足から来る鈍痛に僅かな隙を見せたダークドライブの腕を掴み、そのまま背負い投げの要領で投げ飛ばした。

 

「グァッ!!」

 

「少なくとも俺はそういうヤツ等を裏切る程の最低なヤツだって事だ…。」

 

無双セイバーを大橙丸を合わせ薙刀モードにし、腰のロックシードを外そうとした時、突如後ろを振り返る。

 

 

「デェァアッ!!」

 

「チッ!」

 

背後から来た奇襲を薙刀で受け流す。

奇襲を仕掛けて来たのはダイスサーベルを持ったビースト。ビーストはそのままラルクと共にダークドライブの傍に寄った。

 

「もう治療をし終えたのか。」

 

「何処かの誰かさん達が無茶ばっか要求してきたからね。あの程度の傷すぐ治せる位にはなったわ。」

 

「悠兄さん!オレのガタックゼクター返せよ!!」

 

「…取り戻したきゃ、取り戻して見ろ。」

 

<< ブラッドオレンジ・スパーキング! >>

 

武神鎧武は薙刀の先端を地面に突き刺すと。放たれた赤いエネルギー地面を走る様にビーストたちの元に向かい爆発する。

だが直撃はせず直前で爆発した為に大したダメージは与えておらず爆風の衝撃に覆われるくらいだった。

 

 

「うわッ!!──なんだぁ!?」

 

「…ッ!秋!上よ!!」

 

 

ラルクが指差した方へ目をやるビースト。

 

目線の先には滞空で空を飛び、此方にブースターライフルを向けているサイガの姿が在った。

 

「Just Dance!(踊れ!)」

 

サイガはライフルモードの連射でビースト達を上空から攻撃する。

 

空から雨の如く襲い掛かる光弾がビースト達を翻弄されて行く。

 

「のわあああぁぁッ!?」

 

「ちょっと!空から撃って来るなんて反則じゃない!?」

 

<それだけ本気と言う事なのだろう!!>

 

「ウァッ!!!…なんろォ!だったらコッチも!」

 

<< FALCO GO! >>

 

相手が空ならば此方も。ビーストは空を飛んでるサイガを前にファルコンマントで自身も空へ飛び上る。ドライバーからミラージュマグナムを召喚し接近しながら撃っていくが、サイガのアクロバットな動き。後ろ向きに飛んだり体を横回転しながら等普通なら有り得ない変則な動きで全て回避される。

 

「クソッ!なんつー動きだよ!てかマジでなんなのその変態軌道!?」

 

「空なら自在に泳げるんだよ俺はァ!!」

 

回避行動を取っていたサイガは打って変わりビーストの元まで急接近していった。

 

コレにビーストはミラージュマグナウで牽制しながらサイガと距離を取ろうと後方へ下がるが、トップスピードでミラージュマグナムの魔力弾を回避するサイガとの間合いは空く所か徐々に詰められていった。

 

「ウラァッ!!」

 

「ゴハッ!」

 

遂にビーストとの間合いを詰めたサイガは足で器用にミラージュマグナムを蹴り上げ自身の狙いを外し、がら空きになった胴体に空いてる片足で蹴りを入れた。

 

「Fall Down(落ちろ)」

 

「ガッ、ガァアアアァアッ!!!」

 

そしてフライグアタッカーから繰り出される光弾を浴びたビーストは真っ逆さまに落ちていった。

 

 

 

ードガァァアンッ!ー

 

 

「グハッ!」

 

「秋ーーーッ!!」

 

地上へ落ちたビーストの変身は解け、仰向けで倒れ気を失った秋に駆け寄るラルクと覚束ない足取りで遅れて来るダークドライブ。

少し離れた所でサイガは地上へと降り立った。

 

「灰原君…!アナタ…!」

 

「オイ、いくらなんでもやり過ぎだろ!?コレで秋が死んだらどうするつもりだったんだよ!?」

 

「……さぁ?」

 

「ッ!……灰原ァァアアアッ!!!」

 

「お、おいハルナ!!落ち着け!!」

 

弟を傷つけられた怒りからかラルクは怒気を含んだ叫び声を上げて単身サイガへ向かって行った。

 

「ァアアアァアッ!!!」

 

「ふぅ──ハァッ!!」

 

感情に任せた一撃だった拳をサイガは回し蹴りで弾き、そのまま回転の流れに乗って連続の回し蹴りをラルクの側頭部に浴びせた。

 

「セアッ!」

 

「ァアッ!!」

 

「ハルナァ!!」

 

ダークドライブと気を失ってる秋の元まで蹴り飛ばされたラルク。意識はまだあるもの頭部への蹴りが膝に来ているようで中々立ち上がれずにいた。

 

そんな中サイガは腹部に巻かれたサイガギアを引き剥がして、新たにロストドライバーを身に付ける。

 

「そろそろ終わりにしようぜ。この無駄な争いを──。」

 

<< ETERNAL >>

 

エターナルへと姿を変え、トリガーマグナムを手にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──マズイな。悠のヤツ、トドメを刺そうとしてるぞ。」

 

「トドメって、秋達を殺すって事かよ!?」

 

「いいえ。流石にそこまではしませんよ。悠の事ですから完璧に戦闘不能にさせてベルトを取るつもりなんでしょう。」

 

「三人を相手にほぼ無傷で……これが灰原先輩の本当の姿なんですね…。」

 

「……違うよ。」

 

「凪沙?」

 

「…確かに今凪沙が見ているのもゆーくだよ。でも…でも凪沙はゆーくんが怖い人じゃないって信じたい!だってあの時ゆーくんは…。」

 

「…やっぱジッとしてらんねえ。ちょっとオレ行って来る!」

 

「ちょ、先輩!?」

 

「…そうだな。私も黙って見るのは性に合わない!」

 

「ゼノヴィア先輩も!?」

 

「凪沙。よければ教えてくれませんか?凪沙は悠の何を知ったんです?」

 

「……うん。実は、あの時公園で──。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< TRIGGER MAXIMUM DRIVE! >>

 

 

「ッ!クソ…ッ!」

 

「終わりだ。」

 

 

向けられた銃口に悪態を吐くダークドライブ。せめて二人の盾にと前に出るその姿にエターナルは無情にも引き金を引こうとしたその時だった。

 

「ハァアッ!!」

 

突如横からデュランダルを手にしたゼノヴィアがエターナルに斬り掛かりに来るがエターナルはバックステップでコレを回避。

距離を取って前を見ると、ダークドライブ達の前にゼノヴィアと古城が立ちはだかった。

 

「これはまた、相変わらず思い切った行動を取るのが好きなご様子で。」

 

「はて?私が今まで思い切った行動を取った事があったか?」

 

「いやあるよ、それはまぁ…色々と。」

 

「…あぁ。思い切ってキスした事か。」

 

「はぁ!?」

 

「…言っちゃたよこの娘。この場に合わないトンでも発言しちゃったよもう、そういうのを言ってるんだよ俺ェ…。」

 

剣を構えたままのゼノヴィアのキス発言に隣の古城は声を荒げながら驚きエターナルは顔に手を当てて肩を落とす。なんとも異様な光景である。

 

「ぜ、ゼノヴィアお前、灰原の事もしかしたらって思ってたけど…。」

 

「あぁ。この思いを言葉にしていいのか悩むに悩んでな。ならばいっその事言葉では無く行動でこの思いをぶつけようとして積極的にキスしたんだ。」

 

「その度に俺は心臓止まるかと思う位ビックリしたけど。」

 

「でもなんだかんだ言ってキミも乗り気だったじゃないか。ホラ、川神院の前でした時なんか私を優しく抱きしめてくれて…。」

 

「ゴメン。今その話ホント止めて。二人きりなら兎も角この状況言うの止めて!」

 

「……フフ。ハハハッ!」

 

「ゼノヴィア?どうした急に笑って…?」

 

「あの姿だから気付かないか古城?今の悠を良く見ろ。…私達の知ってる悠だ。」

 

「………あ。」

 

「ッ!」

 

ゼノヴィアの指摘に古城はハッとした顔になってエターナルを見る。

 

先程までの悠は自分達に対して冷たくあしらっていたのに対し、さっきのは普段学園で見る彼そのものだった。

 

「…随分ズル賢い手が上手くなったもんだな。」

 

「いい手本が目の前に居たんでな。それにキミが女性に弱いのは紛れも無く事実だって事も共に過ごして分かった事だ。」

 

「…正確には、”好意を向けて来る女性”にだ。こんな事長くやってると、自然とそういうのに縁遠くなって来るんでな。耐性が無くなるんだよ。」

 

「灰原…どうしてそこまでやるんだよ!?オレ達にあんなウソ吐いてまで、秋達を傷付けてまで!…一体何がお前をそうさせたんだよ!?」

 

「……。」

 

古城の胸中の思いがエターナルに向けられる。

 

例え相手にされなくともこの思いを叫ばずにいられなかった。友と信じる男を一体何がこのような姿になるまでにしたのか。例え本人にとって深い闇があろうと。

 

勝手なのは重々承知の上だ。でもこうでもしないと悠の本当の気持ちを知る手段が無かったから。

 

「……フゥ。」

 

少しの間を空け重い溜め息を吐いた後、エターナルは重い口を開いた。

 

「どうして、か……特に深い理由は無い。戦う事が、今の俺にとっての存在理由。それだけだ。」

 

「戦いが存在する理由?…まるでコカビエルのような戦闘狂ではないか。キミはとてもそう言う風には見えないぞ?」

 

「それにも種類があるってコト。俺には戦う事しかない。でも、俺は戦いを心から嫌悪する。矛盾の行動ってヤツだ。」

 

「何だよソレ…意味分かんねえよ…。」

 

「だろうな。こんな理由で戦ってるヤツは狂ってるよ。…でも、俺はそれでもいい。俺が今の自分のままで戦う為にそいつ等のドライバーを回収する。

…あぁそうだ──仮面ライダーは、俺だけでいい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<──それが果たして本当に正しい行為と見ているのか?悠。>

 

「べ、ベルトさん…?」

 

古城達の後ろでエターナルの言葉を静かに聞いていたダークドライブ、の腹部に巻かれてるドライバー、クリムが突然口を開いた。

自然と周りの視線を浴びダークドライブになっている天龍はあたふたしてしまうが、クリムは構わず喋り続ける。

 

「一体どういう意味だ?クリム。」

 

<そのままの意味だよ。キミがさっき言った戦う理由…それが──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キミの前で死んだ恋人の為になっていると、本当に思っているのかね?>

 

 

「ッ……!」

 

その一言がエターナル…悠の脳内を白紙の様に真っ白にした。

 

そしてそれは悠だけに非ず、その言葉を聞いていた古城とゼノヴィア、天龍にも相当の衝撃を与えていた。

 

「灰原に恋人?いやそれよりも、目の前で死んだって…。」

 

「………。」

 

「オイオイ、初めて聞いたぞアイツに彼女が居たとか…。」

 

<キミの恋人だけでは無い。キミに人として生きる事を教えてくれた恩師や血の繋がっていない兄弟達…。彼等に対する贖罪の形がこんなもので良いのか!?>

 

「…クリム……お前……俺の…過去を…。」

 

<あぁ。知っている。こんな形で教える事になって申し訳ないが…。>

 

鈍い頭痛が徐々に痛みを増して行く。正常な思考が出来ない位。頭を抑えるエターナルの脳裏にノイズが掛かったような風景が浮かび上がんで来る。

 

<キミは自分が許せなかった。彼女達を差し置いて生き残ってしまったから。>

 

「黙れ……。」

 

 

──燃え盛る木造の建物…。

 

 

 

<戦いを嫌悪しているのに戦い続けるのは、自分が望まない事をする事で自身を罰している…。>

 

「黙れェ!…。」

 

 

──血を流し横倒れる妙齢の女性。

 

 

<秋達や彼等と離れたのも、キミが望んでいた平穏な生活から身を引く為…。いやむしろ…。>

 

「黙れと言ってるのが聞こえないのかぁ!!!」

 

 

──燃える瓦礫の中に閉じ込められた子供達。

 

 

 

 

 

<彼女達の様に目の前で死なれる恐怖から逃れる為に、孤独である事を望んだ…。>

 

 

──胸に剣が突き刺さられた少女…。

 

 

 

 

 

 

 

「黙れえぇぇーーーーーーッ!!!」

 

感情的になったエターナルは手にしていたトリガーマグナムをクリムに向け、引き金を引こうとした…。

 

 

 

 

 

 

 

<< チュ・ドーン! >>

 

が、謎の機械音と共に放たれた紫の光弾がエターナルの手を撃ち抜いた。

 

 

「ッ…テメエェ!!」

 

仮面の下で怒りが籠められた視線を向けるエターナル。

撃って来た乱入者。数日前、突如として襲撃してきた黒い仮面ライダーがまたしても現れたのだ。

 

「はぁ!?なんだよありゃ!?聞いてねえぞ新しい仮面ライダーとかよ!」

 

<何だアレは!?私も知らないぞ!>

 

「また何しに来やがった!アベルゥ!!!」

 

「……。」

 

「このッ……無視決め込んでんじゃねえぞ!!」

 

「お、おい灰原!?」

 

完全に冷静さを失ったエターナルは黒い仮面ライダー目掛け特攻仕掛けて行く。そんなエターナルを前に黒い仮面ライダーは前回と同様に黒いガシャットを取り出し起動した。

 

 

<< JET COMBAT >>

 

「グァッ!」

 

突如画面から現れた飛行機の様な人型がエターナルに体当たりをして迎撃すると黒い仮面ライダーはガシャットをドライバーらしきベルトに入れた。

 

<< ガッシャット! >>

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

<< ──Mighty Action──X! アガッチャ! >>

 

<< ぶっ飛び!ジェット!トゥザスカイ! Fli!High!Sky! JET COMBAT! >>

 

人型飛行機が前のBMXバイク同様に黒い仮面ライダーに装着されると、飛行能力を有してるのか空へ飛び上った。

そしてドライバーのガシャットを抜き、スロットへ。

 

<< ガッシャット!──キメワザ! >>

 

<< JET CRITIKAL STREIKE! >>

 

 

「ッ、今度はぁ!!」

 

吹き飛ばされた先にあったトリガーマグナムを手にローブを脱いでメモリを手にした。

 

<< LUNA MAXIMUM DRIVE! >>

 

<< TRIGGER MAXIMUM DRIVE! >>

 

<< XTREMUE MAXIMUM DRIVE! >>

 

 

 

 

「ッ!──。」

 

「落ちろォ!!」

 

 

エターナルがマグナムから発射した無数の黄色の光弾が不規則な弾道で黒い仮面ライダーへ。

 

黒い仮面ライダーが放った両腕のガトリング弾とミサイルがエターナルへ。

 

二つの技が空中で互いにぶつかり、凄まじい衝撃が採石場に広がった。

 

 

 

 

「チッ……ッ!野郎何処に…!」

 

爆煙が晴れると宙に飛んでいた黒い仮面ライダーの姿が無くなり辺りを見渡すエターナル。

 

 

そしてその姿を見つけた時、反射的に声が出た。

 

 

 

「天龍!!後ろだァ!!」

 

「ッ!?──ああ!!」

 

 

ダークドライブの後ろ。そこには気を失って倒れてる秋に黒い仮面ライダーは悠の時と同様にパッドの銃口を秋に向けていた。

 

そして銃口からまたしてもオレンジの粒子が振り撒かれ…。

 

 

 

 

 

 

 

「駄目ぇええぇぇッッ!!!!」

 

「ッ!?」

 

「桜井!!」

 

 

秋に覆い被ってオレンジの粒子から庇おうとしたハルナだったが、粒子は被さってるハルナ諸共秋と共に体内に入り込み、意識のあるハルナは胸を抑え苦しみだした。

 

コレには黒い仮面ライダーも予期せぬアクシデントだったのか僅かに同様の反応見せた後空へ飛び上りこの場を去って行った。

 

「待ちやがれテメエェ!!…クソッ、マッドドクター!」

 

エターナルはマッドドクター呼び出すとそれを近くに居たダークドライブの手に持たせた。

 

「…二人を頼む。」

 

「おい悠!お前追い掛けるつもりかよ!?」

 

「ヤツを捕まえて俺や桜井達に何をしたか聞き出す。そして助ける方法もだ!」

 

<< BIRD MAXIMUM DRIVE! >>

 

エターナルは脱ぎ捨てたローブを羽織るとローブが翼の様な形状になりそのまま空へ飛び上った。それをダークドライブはただ見る事しか出来なかった。

 

<…天龍。取りあえずあの黒い仮面ライダーは悠に任せよう。それよりも私達はハルナ達を…。>

 

「ッ、お、おお!」

 

クリムに言われハルナ達の元へ近寄るダークドライブ。騒ぎが収まり遠くから見てたラ・フォリア達も駆け寄って来るなかハルナは謎の粒子によって悠と同じ症状を受けていた。

 

「うゥ……く、苦、しいッ…ああ……。」

 

ハルナもそうであるが気を失っている秋も発熱の苦しさからか呻き声が。そして秋の体にもノイズらしきものが走っている。

 

そんな中ハルナに至っては体に走るノイズの発現が秋や悠より多く見られた。

 

「ハルナ!オイ大丈夫か!」

 

<凄い熱だ!40℃を軽く超えているぞ!>

 

ダークドライブがタイヤコーカンしたマッドドクターで治療を施そうしたハルナの目が…

 

 

 

 

 

 

 

 

赤く輝いてた事は、顔を俯いていた為確認する事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして悠は…。

 

 

 

「何処だァ…何処に行ったァ!?」

 

 

黒い仮面ライダーを見失い、アテも無く街を駆けるしかなかった。

 

 

「クソ……どうにかして見つけないと…俺の時と同じとは限らない…一刻も早く………ッ!?」

 

街中を駆け回っていた悠であったが、急に糸が切れた様に倒れ込んでしまった。

 

起き上がろうにも力が出ない。むしろ急に体の具合が悪くなり視界がぼやけて来た。

 

「なん、だ、コレ……マキシマムの、反動じゃ、ない……まさか…。」

 

思い当たるのは黒い仮面ライダーに浴びせられたオレンジの粒子。時間差で発症する類のウイルスだったのか思いつくと、先程浴びた二人も…。

 

「……させ、ねェ…。」

 

倒れたままで、腕の力を頼りに体を動かす悠。目が次第に見えなくなりながらも前に進を止めなかった。

 

 

「誰も……死な…ねェ……今度、こそ……は…──。」

 

 

だがその思いは足りず、悠は力尽きた様に意識を失くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!?ひ、人が…!大丈夫ですか!!今救急車を!!えーと確か、110!!」

 

 

 






今ちょっとした番外編書いてますけど、本編と同時進行だから何時掛かるか分かんないっす。
それでも楽しみにして頂けたら幸いです。ではではまた。

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