エクゼイドも益々面白い展開になって来ましたねぇ。劇場版も期待できそうです。
アマゾンズは…うん。もうなんかバッドエンド一直線と言わんばかり。もう、クウガやアギト並に悲惨な死に方で死人でまくってる。
「……はぁ~~。」
柄にも無く悠は目の前の光景に呆気に取られた声を出してしまう姿に隣の凪沙は思わず笑みを浮かべた。
「ゆーくんったら、そんなに珍しい?遊園地。」
「いやぁ、どういった所かは聞いたりはしてたが…実際目の当たりにするとすっげえ賑わってるんだなぁ…。」
「フフッ、賑やかに楽しむのが遊園地だよ?この位で呆気に取られちゃここから先もっと大変だよ。」
「そうだねぇ、ちょっと気を引き締める必要有り、かな?」
「もう!そんな難しい事考えなくても普通に楽しめばいいんだよ!ホラ行こ!」
「おぅっと!」
凪沙に手を引かれ入園ゲートから園内に入って行く二人。
そして二人が遊園地内に入って行くのを後ろから見ていた古城と、仕方なしに付き合ってる雪菜も園内に入ろうとしていた。
「中に入ったか…よし、オレ達も行くぞ。」
「オレ達って、さらっと私を先輩と同類扱いするのは勘弁してほしいんですけど…。」
「ここまで来たらそんな事もうどうだっていいだろ。とにかく人の多い遊園地とは言えアイツが何か可笑しなことしだしたら速攻止めに行くぞ姫柊。」
「はぁ……凪沙ちゃんも苦労しますね。」
こうして園内に入り色々見て回る悠達の後を追う古城達。
ーコーヒーカップー
「おぉおぉッ!?回る回る!これ回ってる!!」
「アハハハッ!ホラホラ、もっと早く行くよぉ~!」
「オォォォオォィイッッ!!!姫柊ィ!早い!!早く回し過ぎィ!!!…うっぷ!」
「これどうやって止めればいいんですか!?って先輩!!顔がすごい青くなって…!」
ーゴーカートー
「キャーーー!ゆーくん!運転上手いけどスピード出し過ぎじゃない!?」
「そう?まだ全然遅い位だけど?」
「ちょ先輩!ぶつかる!!ぶつかりますってそんなスピード出したら!」
「しょうがないだろ!こんくらいスピード出さないと差が出る一方(ガンッ!)だふッ!…し、しひゃひゃんだ(舌噛んだ)…!」
ーミニゲーム広場・射的ー
「うわすご!みんなど真ん中命中じゃん!」
「…得意分野なんで。あ、景品、どれがイイ?」
「このッ、あ、外れた!」
「動く的に当てるって思ったより難しいですね…。」
ーメリーゴーランドー
「メリーゴーランドって馬に乗るモノだと思ってたけど、馬車とかそういうのもあるんだ…。」
「結構前からあるよ?こうして二人並んで座れるしね。」
「オイ。ちょっと密着しすぎだって…!あぁクソ、死角に入って見えない!」
「先輩。今思ったんですけど。コレ私達も乗る必要あります?」
ージェットコースターー
「キャーーーーーッ!!!」
「おぉ。結構急…ッ!」
「キャァアアァアアァアッ!!イヤァアァアッ!!!」
「ちょ姫柊!オレの首じゃなくてバー掴め!バーッ!!!」
ー観覧車ー
「いやー、たくさん乗った乗った。どうゆーくん、初めての遊園地は?凪沙的にはやっぱジェットコースターが一番良かったなぁ~。少し怖い所がなんというかね!
…にしても所々なんか古城クンと雪菜ちゃんっぽい声が聞こえたけど…。」
「う~ん…気のせいじゃない?来たとしても向こう向こうでデートとか?(あの二人、アレでバレてないとか本気で思ってないよな?)。」
向かいに座ってる凪沙の満足そうな顔と観覧車から一望出来る光景を目に悠は凪沙の背後のゴンドラから感じる視線を悟られない様に受けていた。
向こうは最低限の変装をしているお蔭か凪沙にはバレていないようであったが、視線に人一倍敏感である悠には最初から今に至るまで気付いていた。古城の凪沙を思う気持ちは最初から知っていたので必ず付けて来ると思ったが悠から見れば向こうも向こうで遊園地デート満喫してるように見えた。…本人達はどう思ってるかは知らないが。
首を横にゴンドラから見える景色を一望しながら悠はこの後のプランを考えてた。その横顔を目に凪沙は今日一日の悠について振り返る。
(やっぱり笑わないなぁ…でも今日は本当に遊園地始めてってカンジだったし、いつもとは違うってのは分かるけど…。
やっぱラ・フォリアさんの言う通り一線引いてるのかなぁ…。)
凪沙は少し前の記憶を呼び戻す。そう、あの晩の女湯で赤裸々に語った夜の事である…。
「───正直に聞きますけど、皆さん彼の何処に惹かれました?」
「「「…え?」」」
ラ・フォリアから告げられる突然の質問に目が点とする中で唯一人、裏の顔も知りそれすらも受け入れる気でいるゼノヴィアが真っ先に応えた。
「私は最初強い所に惹かれたかなぁ。今でも覚えてるよ、彼が私を助けた時のあの背中。」
「ふぇ?ゼノヴィアってユウに助けられた事あるの?」
「あぁ。言って無かったが色々あってな、その時悠に知らずに助けられてたんだよ。それで学園で彼に出会って人柄を知って…気が付けば強さ以外の彼の人間味に興味が抱いていたよ。これがあの時助けてくれた…人として生きる事を教えてくれた男か、って…こういうのをギャップ萌え、ていうのか?日本では。」
「あぁアレですか!確かに当て嵌まってますよ、彼あぁ見えて甘党ですし、小さい子の面倒見も大分手馴れてるますから。」
「へぇ。そうだったのか……時にキミはどうだ?一子。キミは私より早く彼に会ってるんだろう?」
「え!?ア、アタシ!?こ、ここでアタシに振る?」
「別にイイじゃないか私だって言ったんだし。」
「うぅ~……まぁアタシもゼノヴィアと似たようなものかな。鍛錬してる時にバッタリ会って、アタシが挫けそうになった時励ましてくれて…。」
「それだけか?」
「ッ~~……わ、分かんないよ!一緒に過ごしていく内に何時の間にか、す…好きになっちゃったんだもん!!」
「い…犬のヤツがなんか、女子に見える…。」
「ワン子…やっと、やっと恋する女としての自覚が芽生えたのね…ッ!」
『フォーゥ!こりゃ断然面白くなってきたなまゆっち!』
「ま、松風!そんな失礼な事言ってはいけませんッ!」
「ッ~~~!」
聞き耳を立てるファミリーの反応に対し、一子は赤面しながら湯の中に沈んで行った。
そして今度は夏音の番と言う事で視線が集まるなか当の夏音は何処か言いづらそうにかしこまってた。
「えっと…。」
「?どうしたの夏音ちゃん?」
「何か、言いにくい事でも?」
「その……これは言って良いかどうかは分からないんですけど…その…。」
「大丈夫です。そこまで無理して言わなくてもアナタが悠をどう見てるかでいいんで。」
「…最初に会った時、お兄さん、とても辛そうな顔でした…。」
「辛そう?ゆーくんが…?」
「…あの時のお兄さんは正直言って見ていられない位に傷ついてました。…そんな人に私は…。」
「助けて貰ったんですね。アナタも…。」
「ハイ…その後も色々お兄さんに助けて貰っていました。本当に、たくさん…だから、私はあの人に助けて貰った分のお礼をしたいんです。
あの時の辛そうなお兄さんを少しでも元気にして挙げられたらって…。」
「…救いたい気持ち、ですか……フフッ。やっぱり私達って血が繋がってますね。ホント。」
「え…?」
「私も見ましたよ。一瞬だけ。…今でも忘れられませんよあの目は。始めてみました…そんな人が無茶して、人の為に自分を蔑ろ扱いだなんて…。
私も一子と一緒です。助けてあげたいって思ってる内に、何時の間にか好きになっちゃいました。
…恋ってホント、不思議ですよねぇ。」
「…全くだな。」
「…そう、ですね。」
「───ブハァッ!…え、なに、このカンジ?」
「フフフ…さて、最後になりましたけど…凪沙はどう思ってます?彼を。」
終始話の内容に付いて多少の理解が追い付いていなかった凪沙に話しは振られ、「えーっと…。」と言いながら自分なりの意見を告げようとしていた。
「そのォ…何と言うか正直皆さんの話聞いて、ゆーくんって色々やってんだなぁって言う風に思ったりなんだったり……。
…何て言えばいいのかなぁ、ゆーくんに対して思う所は……そうですね。
……笑った顔が見て見たいなぁって。ずっと前から思ってます。」
少しの間を空けた後、正直に胸の内を語った彼女の言葉に四人は無言で聞きいれた。
この中で一番付き合いが長いであろう凪沙だから思った事なのかどうかは定かではないが、普段から無表情で過ごしてる悠。時折人並みの感情を露わに顔色を変えるが、それでも喜びと言う感情を露わにした笑顔はまだ誰も見ていない。
裏の事情を知っているラ・フォリアやゼノヴィアも人が180度変わった悠を幾度と無く見ているがそれでも笑みと言う笑みを一度も見ていない。
だから凪沙の言う言葉に一番共感出来たのだ。ここまで行為を向けている男の笑顔を誰も見れていないのだから。
悠に対する思いを打ち明け、それをこの場に居る五人が知った今ラ・フォリアが本題に入ろうとしていた。
「さて皆さんがそれぞれに語って知った上で本題に入りますが……多分彼、十中八九この中の誰一人の気持ちに応えない気ですね。」
「「…………えぇッ!?」」
「え…?」
「やっぱりそうか…。」
ラ・フォリアの言った事に一子と凪沙は思わず揃って立ち上がる程驚き、夏音が静かに驚いてるなかでゼノヴィアは大体予想していたのかラ・フォリアの言った言葉に一人静かに頷いてた。
「彼、前より比べて大分心を開きましたけど、それでもどこか私達と一線を引いているように見えるんですよ。
その理由がなんであるかは分かりませんが…。」
「…もしかして、笑顔を見せないのもその一線が原因、ですか?」
「多分そうかもしれないな。……もしかしたら彼は、本当の自分をまだ私達に見せて無いんじゃないか?普段のあの無表情ぶりを見ていて、時折何処か違和感が感じた事が…。」
「あ……多分、そうです。私が初めて会った時と今のお兄さん、違いがある、でした…。」
「えっと…つもり……どういう事?」
「つまりだな一子。今キミが知ってる悠は、本当の悠じゃない。本性を隠してる。という事だ。」
「………えぇッ!?」
「な、なんか…いきなり話が突飛的に変わっちゃいましたね…。」
「えぇ。それよりも本当にどうしたものか。
幾らこちらから仕掛けても一向に手は出してくれませんし、何度も抱き枕にされるし…。」
「だ、抱き…枕…?」
「えぇ。ちょっと思い切って彼の寝ている所に何度もベットに忍び込んではいるんですけど、手を出す所か彼、寝ぼけて私を抱き枕代わりにしてきますし…。でもそれはそれで結構悪くないんですよねぇ、細身だけどあの逞しい腕に抱かれてるって思うと…。」
「…ってぇ!何やってるんですかアナタ達はァ!?」
「ま、まぁ紗矢華さん、話を聞く限りじゃ手を出してないって聞くし…。」
「それでも王女を抱き枕扱いって!し、し、しかも何度も、ってッ!!そ、そんな不潔な…ッ。」
「うっわー、灰原ってもしかして古城以上に無自覚の女ったらし?」
「…アレ間近で見せられる私の気分にもなって欲しいわ。秋はなにかと面白がってるし…。」
「まぁなにわさて置き、私が言いたい事はですね……彼の化けの皮を剥がして、本性なり素顔なりさらけ出してあげましょう!そうすれば彼が築いてる壁も無くなって、誰かしら受け入れてくれるかもしれませんし!」
「…なぁいいのか?もしそれで彼の秘密がバレたら…。」
「その時はその時ですよ。…私が彼の心を本気で救うためにはこうやって無理にでも動くしかないと身近に居て辿り着いた応えです。
…私は信じますよ?彼は…悠は優しい人だって。…でなきゃこうして好きになってはいないと思いますから。」
「…凄いなアナタは。そこまでして彼の事を気遣えるなんて…これは自信を無くしそうだ。」
「いいえ、彼にはきっとアナタも必要ですよ。だって、あなたのお蔭で悠も少しづつ変わってきているのは事実ですから…。」
「…そうか。……ならこの調子で彼の心を掴んでみせるか。次はもうちょっと大胆に。」
「あら、なら私も負けてられませんね…。それにしても…。」
「ゆ、ゆーくんと一緒に、し、しかも、抱きしめられてってそんな…。」
「はぅぅ…ッ!」
「……──。」
「…夏音達には少し刺激が強すぎましたかねぇ?」
「オーイ、一子。のぼせたのならもう上がるか?」
(──さっき腕に抱き着いた時はホントに逞しかったなぁ。カチカチで。腹筋だって多分古城クンより割れてるって分かる位だったし。それで肌キレイとか…あ、あんな体で抱き着かれながら一緒に寝るとか…ッ!)
「オーイ。凪沙ちゃん?…大丈夫?」
「ッ!うっ、うん!ゴメン!ちょっとボーっとしちゃってたや!アハハ!!」
「あー…そう?なら、良いんだけど…。」
相当深く考え込んでたのか何時の間にかゴンドラは既に一周を終えようとして、中々反応を示さない凪沙を心配して悠が顔を覗き込んできた。
あと少しでゴンドラが下に着こうとするなか、身振り手振りで何とか誤魔化そうとする凪沙を前に悠は凪沙の手を掴んだ。
「え……?」
「扉開いたらちょっと走るよ。」
「え?ゆーくん?…ってうわっ!」
「説明は後で!」
係員が扉を開けた途端悠は凪沙の手を掴んでまま走りだしていった。
「あぁッ!!アイツ凪沙を何処に連れてこうとしてんだ!?オイ!!待てぇ!!!」
「ちょっと先輩落ち着いてください!!もしかして、私達に気付いてた!?」
ードガァッ!ー
「ッ…!」
「ハハハ。弱い弱い…。」
時は遡り、廃工場と化した疑似空間。”ゲームエリア”内では、アベルの前に出現した黒い仮面ライダーが吹き飛ばされて地面に転がり、対するアベルは全くの無傷と言って良い位に黒い仮面ライダーを圧倒してる様であった。
「ハァ~、流石はお前の造ったライダーシステムだなァ。性能が段違いだ。
と言っても、基となった基盤をイジって完成させたのはこのボクだけどねぇ~?」
「ッ!…。」
顔を上げてアベルを睨む黒い仮面ライダー。怒りを誘うアベルの手には禍々しい黒いエネルギー球体が黒い仮面ライダーへ放とうとされていた。
「良い退屈しのぎにはなったよ。ありがとう…そして、さよなら出て来て早々ゲームオーバーだ。」
アベルが手を振り上げ光球を放とうとした時だった。
ービキィィンッ!ー
「……あ?」
アベルと黒い仮面ライダーの間に遮る様に現れた輝く壁。良く見ると、それは氷で出来た壁が黒い仮面ライダーを隠した。
アベルはそのまま氷の壁目掛け光球を放つ。光球は氷の壁を難無く壊したが、そこに黒い仮面ライダーの姿は無かった。
「今のは………。なぁ~るほどォ。
流石にあんな状態で一人で来るほどバカじゃない、ってヤツか……
ホント、つくづく邪魔をするんだなァ………”カイン”」
「──もう!古城クンってば、信じらんない!雪菜ちゃんも止めてくれればいいのに!」
「まぁまぁ。今に始まった事じゃ無いでしょ。キミの兄貴の暴走っぷりは。」
悠と凪沙は遊園地から出て公園内のベンチにまで移動し、見るからにご機嫌斜めの凪沙に悠が勝ってきた自販機のジュースを手渡す。
観覧車から走り去った後、悠達はある程度離れた所で建物の物陰に隠れ顔を覗かせると後から決死の形相の古城とそれに辛うじて付いて行ってる雪菜を目に凪沙は驚いたが、暫く隠れて会話を聞いていると古城達が待ち合わせから今現在まで後をつけていた事が発覚しこれには流石の凪沙も怒り心頭になる。
出て行って文句を言ってやろうとしたがそこは悠が抑えこんだ。それよりもこのまま隠れて二人の目から逃れて残った時間を満喫しようと提案し凪沙もコレに反対する事無く了承した。
「…そういえばココって…。」
「ん?」
「覚えてる?この公園、凪沙とゆーくんが初めて会った場所だよ。」
「…あ、そういえば…。」
初めて会った場所。あの日、凪沙は偶然にもはぐれ悪魔遭遇してしまい命の危機に瀕した時、偶然にも通り掛かった悠に助けられたあの夜。詳しい詳細は知らされてないが凪沙にとっては悠に初めて会い、命を救って貰えた思い入れのある場所なのだ。
「今でもびっくりだよねぇ。突然バイクで凪沙の前に出て来て、知らない間に気を失わされて、目が覚めたら古城クンがお腹抑えて蹲ってるんだもん。
ホントあの日は色々有り過ぎて、衝撃的だったなぁ…。」
「…そうだねぇ。」
感慨深く過去を思い返す凪沙の隣で悠はポケットの上から伝わるメモリの感触を確かめながら立ち上がった。
(そんなつもりで来たんじゃなかったけどなぁ……でも、やる事は変わらないか…。)
「ゆーくんどうしたの?急に立ち上がって…。」
「ん…いんや。ちょーっと昔を振り返ってた。あん時はちょー必死で走ったなぁ、って…。」
「そっか………そうだよね。今の凪沙が居るのは、ゆーくんが助けてくれたからだよね…ありがとう。」
「いやいや、もう十分それ聞いたからあん時。それはもう終わったハナシだよ。」
「それでも助けて貰った事に変わりないよ。……ねぇゆーくん。一つ、聞いても良いかな?」
「ん?何を?」
「えっと…そのね?、あの…。」
柄にも無く凪沙は緊張しているのか何時ものマシンガントークが上手く出せず口籠ってしまう。
無理も無いかもしれない。今端から見ればこの状況。邪魔者も無く二人きりで、尚且つ二人にとっては思い入れのある場所。もしかしたらそういう展開になるかもしれないという考えが年頃である凪沙が思わないと言う事は無かった。
此方の質問をジッと待つ悠に何を切り出せばよいか考える凪沙。ようやく開いた口から出たのは、自身でも思いがけない一言だった。
「ゆ、ゆーくんは今…す、好きな人、居る?」
「………。」
その言葉に少しの静寂が流れた後、凪沙は言葉に出ない後悔の念が頭に駆け廻って来た。
(あぁあああぁぁああッッッ!?!?!?ななな、何言っちゃてるのォ!?いくら二人きりとは言えそんな事…いやでもこう言う時だからこそ聞けない事だし、間違って…いやでもそれで他の人の名前出てきたらどうするの!?
ラ・フォリアさん!?ゼノヴィアさん!?夏音ちゃん!?赤髪の人!?それとも別の人!?そ、それとも……。)
「………好きな人かぁ。」
脳内で若干パニック状態の凪沙をさて置き悠は背中を向けていた。
(…ま、最後くらいはいっか。)
彼女と関わるのはこれで最後。そう古城達に言った事を悠は実行しようとしていた。
これから益々規模がデカくなるであろう戦争間違っても巻き込んでしまわない様に。なにもかも綺麗さっぱり思い残す事無く。
取り出したメモリーメモリを眺めて、悠は答えた。恐らく、彼女に対して最後の会話を偽りなく。
「……いたよ。」
「…え?」
「…大好きだった。初めて、心の底から、愛してた…。」
「愛してた、って…今はもう違うの?」
「……約束、やぶっちゃってね。……それ以来…オレは嘘吐きになった。」
「?…どういう意味なの、それ?」
「施設のシスターに言われた言葉でね、”大事な人との約束をやぶってはいけません。それは嘘吐きの中でも最も最低な行いです”…ってね。
今でもそうだよ、オレはみーんなに、ウソ言いまくり。」
「…その人は今…。」
「…もう会えない。どう転んでも、もう…。例えカミサマの悪戯で会えたとしても、今のオレには…会う資格が無い。」
「………。」
「…凪沙ちゃん。」
耳を傾けて黙って聞く事しか出来なかった凪沙に、悠は振り向いて対面する形となった。
「……え。」
凪沙の目が思わず見開く程のモノを見たのか、それ程までに目が奪われてる凪沙を余所に悠は語り出す。
「…オレは──。」
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「ッ!───危ないッ!!」
「え?──キャァァッ!!!!」
凪沙を咄嗟に庇った直後に、悠の背中に激しい熱と爆発の衝撃が襲い掛かる。
耳に入った機械音声から誰が此方に向けて攻撃して来たか嫌でも突きつけられるが凪沙を胸に抱きながら顔を振り向ける。
爆炎により立ち上る陽炎から見て取れたのは…金色の人型が二人と言う悠にとって最悪の場面であった。
「どうも御無沙汰してます。折角のデート中、大変失礼極まりないと思いましたが…。」
「こう見えてボク達悪の組織だからねぇ、相手の一番嫌がるタイミングで出てこようかと思った次第さ。」
「…ホンット、最悪過ぎるよ。」
「ヒッ…!」
突如として現れたソーサラー、ゴルドドライブの出現に悪態を吐く悠だった。
凪沙にとって恐怖の対象である仮面ライダー。人外の様に錯乱はしてないものの二人の仮面ライダーを前に悠の背中に隠れ震える程のものであった。
「おや?随分な怯え様ですねぇ、彼女。大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねぇに決まってるだろ。一体、何が目的だよ。」
「なぁに、この前の大演説の感想でも言いにねぇ、よくまァあんな方法思いついたもんだ。」
「そのお礼参りともう一つ、少し確認すべき事がありましてねぇ。──まあ取りあえず。」
ソーサラーはグールの魔石を辺りに散りばめ、グールを召喚する。
「行きなさい。」
「チッ…離れないで!」
「う、うんッ!」
迫り来るグールの猛攻に凪沙を庇いながらなんとか応戦する悠。だが後ろに凪沙を連れてるのもあって無理に動けず槍を受け流したり凪沙を誘導して躱す等が精一杯であった。
内心悪態を吐くも、状況的にソーサラーとゴルドドライブが安々と逃がしてはくれないだろう。今この場で優先すべきは…。
(──仕方ない。一か八かエターナルに変身して、その後に記憶を…。)
「ゆーくんッ!!!」
冷静で無かった所為か、凪沙の声に気付くまで悠は死角からのグールの槍に気付けなかった。
迫る槍を凪沙に当たらぬ様配慮して咄嗟に避けたが、運悪く上着のポケットに掠り中のモノが外に出てしまった。そう、先程まで手にしてたメモリーメモリを。
メモリを落としたと気付いた時には遅かった。運悪く、メモリは悠達を取り囲んだグールが踏みつけてしまい砕けてしまった。
「メモリが…ッ!」
「ゆ、ゆーくん…。」
記憶消去の手を失ってしまった事に絶句するなか更に最悪の展開。グールに四方八方囲まれてしまった。
「い、いや…助けて…。」
「凪沙ちゃん…。」
背中で自身の上着をこれでもかと強く握りしめる凪沙を見て悠は、懐に手を伸ばそうとした。
「ウオォオオオオォッ!!!」
「暁!?」
「古城クン!?」
「こっちです!早く!!」
取り囲んでるグールの背後から雄叫びを上げて殴りかかって来た古城にグールの目が行ったのを境に悠は凪沙の手を掴んで走り出した。
古城と雪菜が注意を惹きつけたお蔭でグールの包囲網からどうにか切り抜ける事が出来た悠は、凪沙を雪菜に預け未だグールと応戦してる古城の元に駆け寄り、グールに跳び蹴りを喰らわせた。
「灰原ァ!お前コレはどういう事だよ!?納得いく説明をしろ!!」
「上手くやってたつもりだったがなァ!!コソコソ嗅ぎ回ってたのに目ぇ付けられてコレだよ!!」
「…お前もしかしてこうなるの分かってて凪沙と関わらないって言ったのかよ!?」
「なに!?今気付いたの!?どんだけ頭ユルユルなんだよ!?…って当たり前か。」
二人してグールを相手しながら会話する何とも言えない光景に、近くで見ていたソーサラーとゴルドドライブは。
「全く、彼ってホント悪運強いね。このタイミングで助っ人とか…まぁあの程度ならボクでも余裕だけどどうす…?、どうしたんだい?」
「いえ、あの銀髪の少年…少し妙なモノを発してましてねぇ。なんでしょうか…?」
ソーサラーが古城から何か感じ取りながらも古城と悠は、雪菜と凪沙の元まで下がりこれからの行動について話す。
「…敵の数が多い。しかも最悪な事に仮面ライダーが二人…一体何をやってこんな事になったんですか!?灰原先輩!!」
「それは一先ず置いといて…キミ達二人、凪沙ちゃん連れて此処から逃げろ。アイツ等の狙いは俺なんだし。」
「ヤダよ!!そんなの絶対ダメ!!逃げるならゆーくんも一緒に逃げよう!?」
「そうだ。こんな状況幾らお前一人でも無理だ。だから…。」
「いいから!…シスコン馬鹿はシスコンらしく、他人より自分の妹守りなよ。俺は俺で「バカ野郎!!」暁?」
「…他人なんかじゃねえよ。お前は……お前はオレの…ダチだ!」
「ッ………ダチ?」
「先輩…。」
「古城クン?」
「………お前にあんな事言った奴をダチ?ホンット、頭どうかしてんじゃねえの?」
「今なら分かるよ。お前がああ言ったの、オレとの関係も絶つつもりで言ったんだろ?自分がこうなるのを見越して、巻き込まない為に…。」
「………。」
「…お前一人置いてかねえよ。凪沙は当然助けるし…お前も助ける。」
「う~~~む、どうにも気になる……ここは一つサンプルの採取でもしてみましょう。」
ソーサラーが徐に指を鳴らすと突如飛来して来たのは、魔力を収集する為に生み出されたファントム・デビル。
デビルファントムは飛行しながら真っ直ぐ悠達の元に向かって飛んで来た。
「ッ!伏せろォ!!」
悠の言葉で即座に頭を下げる。デビルファントムは悠達の頭上を通過していき、上空で滞空しながら悠達、古城に目を付けていた。
「このタイミングでデビル?……まさか。──暁ィ!!ヤツの狙いは、お前だ!!!」
「なに!?」
「ファントムが、先輩を!?」
「お前等速く逃げ、ッ!?」
「ゆーくんッ!!」
「灰原!待ってろ今…。」
「先輩!!後ろ!!!」
「ッ!?」
古城達に逃げる様叫ぶ悠だが、そんな悠の元に再びグール達が襲い掛かって来る。
助けに行こうとする古城だが、上空にいたデビルが古城に圧しかかって来た。うつ伏せに倒れその上に圧し掛かるデビルの力にビクともしない。
「イヤァァアァアッ!!!」
「先輩!!!」
「来るな姫柊ィ!!お前は凪沙を守れッ!!!──ガァッ!!」
「暁!!───ッ!」
頭を掴まれ地面に伏せられる古城。デビルの牙が古城に段々近ずいていった。
その時、悠は───。
ーお前は……お前はオレの…ダチだ!ー
<< GUN >>
「──え?」
デビルの頭部から紫の光弾が弾かれ古城の上に圧し掛かってたデビルは頭部を抑えながら古城から離れた。
自由になった古城はデビルを見た後、ある方向へ目が行く。それは雪菜や凪沙も同様に。
「……。」
「…灰、原?お前…それ…。」
「あの銃……アレって確か…。」
「ゆー…くん?」
三人が見る光景はブレイクガンナーを構えた悠。凪沙は次から次へと見る光景に混乱してるが、古城と雪菜は悠の持つブレイクガンナーに目が行ってた。
そんな三人を余所に悠に撃たれたデビルが標的を悠に変えて突っ込んで行く。突き出されようとする爪に古城が少し遅れて叫ぼうとするが悠はその場を動かず…。
「──ヌァアァアアァアッッ!!!!」
<< BREAK UP >>
ブレイクガンナーのディストラクションマズルをデビルの突き出した手の平に当たるよう突き出した悠は、その姿を変えた。
死神・魔進チェイサーへ。
「…え……ウソ、だろ…。」
「灰原先輩が……。」
「え?…ゆーくんが……そんな…。」
「おやおや、これはまた…。」
「──ウラァッ!!」
デビルの腕を弾き、ブレイクモードにしたガンナーで殴り後退させスパイダーバイラルコアを手にした。
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「ォオオオオオォッッ!!!!」
エネルギーを刃先に集中させたファングスパイディーをデビルに突き刺し、貫通させそのまま盾に引き裂いた。
爆散するデビル。一分も満たない時間で撃破したチェイサーに火の粉が掛かる姿をただ茫然と見るしか出来ない古城達。
ーギュアァァアアアッッ!!!ー
「──グァッ!!」
「誰も、一体だけとは言ってませんよ?」
それを無情に、壊して行く敵達。
新たに出現したデビルが再び古城に襲い掛かり、その牙を突き立てた。
「がっ、あ、ァア…っ。」
「先輩ッ!!」
「暁ッ…クソッ!」
古城の元に行こうとするチェイサーを立ちはだかるグール。そうしてる間にもデビルは古城から魔力を奪っていく。
「この──退けええぇぇぇッッ!!!」
一刻も早く古城の元に行こうとするチェイサーはファングスパイディーから高圧エネルギーのビームを放つ。
凪沙はその姿を見て、その姿は最早悠としてでは無く、恐怖する異形の怪人にしか見えて無かった。
「イヤ……イヤァ………もうイヤァアアァアァアッ!!!」
「凪沙ちゃん!!しっかりしてください!!凪沙ちゃん!!!」
「フフフ……どうやら、面白い展開になって来たねぇ、どうも…。」
この光景を見て、ゴルドドライブは不敵に笑いを浮かべた。
この後の展開…予想できますか?