その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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~今日のエグゼイド~

ようやくOP復活しましたね!おかえりグラファイト。クロニクル、えげつないゲームだぜ。


疑惑

 

 

 

「フン♪フフンフン♪フンフ~ン♪」

 

とあるビルの屋上。頭から足元まで黒ローブで身を包んだ男、アベルは陽気に鼻歌交じりにある作業をしていた。

胡坐を搔きながら地面に置いたカセット、ガシャットと何処からか取り出した赤いミニカー。それは悠の使ってるシフトカーとかなり酷似していた。

アベルは取り出したガシャットとシフトカーを重ねると、シフトカーはガシャットに取り込まれ赤い光を点滅しだした。

 

「さぁて、ボクの覚えてる限りの知識で造った模造品。コレをガシャットに読み込ませて…う~ん、でもやっぱオリジナルと比べると進み具合が遅いなぁ…。」

 

ロックシードからガシャットを作るのとは違いスムーズにいかない事に不満を言って寝転がる。そしておもむろに懐から十五個のガシャット、レジェンドライダーガシャットを取り出し素顔は見えないが新しいオモチャを手にしたテンションで眺めていた。

 

「ハァア~~…楽しみだなァ。肝心のお披露目はやっぱ派手にいきたいからなァ…フフッ、色々準備しなきゃね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、若獅子トーナメント本選第二試合。

 

 

チーム・グレーオータムVSチーム・バレッドブレード

 

フィールド・廃墟都市

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーダダダダダダダダッ!!!ー

 

 

 

「チッ!」

 

「ウオォォオォッ!?」

 

「このッ、待ちなさい!!!」

 

 

 

【神崎選手、試合開始から一向にマシンガンを撃つ手を止めない!正に乱れ撃ちです!!】

 

【相手は近接メインのチームだからああして近づけさせないつもりだろう。】

 

 

試合開始のゴングが鳴ったと同時に両手のサブマシンガンを手にしたアリアからの容赦ない銃撃に悠達は回避するのに精一杯の状況。

アリアの射撃の腕前もあってか別行動を取ろうも動きを先読みされて上手く誘導され、尚且つフィールドが瓦礫の山や崩れたビルなど障害物の多い廃墟もあって試合はアリアの有利に動いていた。

 

悠と秋が揃って逃げた先は窓ガラスの無いビルの中。一面コンクリートで出来たビルの窓へ跳び込むように入り身を隠した。

 

「ちょっとちょっと!ヤバいんじゃないのアレ!?一向に近づけないんだけど!?」

 

「完全に先手打たれたな。こっちが近づきゃなきゃいけないって事上手く突いてやがる。」

 

「どうすんの!?これじゃあ攻めようも即ハチの巣だぜ!?」

 

「…いや、そうでもない。ヤツが持ってるのはMAC10だ。サブマシンガンの中じゃ高い連射精度の銃だ。」

 

「えっと……つまり?」

 

「馬鹿が。…連射が速い分、弾の消費も速いってこった。替えのマガジンだって数に限度がある。つまり…。」

 

「あ、弾切れを狙うって事か!!流石悠兄さん!頭冴えてる!!」

 

「誰だって思いつくだろ……でも一つ気掛かりが在るとすれば、流石に向こうがトリガーハッピーの単細胞でも弾切れを気にしない筈が無いワケが…。」

 

 

 

 

 

ーコンッ!──コロコロンー

 

 

 

「「ん?」」

 

 

丁度二人の間に窓から投げられた物体が転がる。

 

そう、安全ピンの抜かれた手榴弾が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ードガァァァアンッ!!ー

 

 

 

 

【おーっと神崎選手の投げた手榴弾がビル内で爆発したぁ!!グレーオータムは無事なのか!?】

 

【…いや、流石に少しやり過ぎじゃないか?いくらダメージが軽減するとは言えマシンガンは兎も角手榴弾も使うのは…。】

 

【ですが大会公式ルールでは、”予選エントリー時に事前申請をし、大会委員会が許可した武器の使用を認める”とありますので、神崎の選手の場合使用する銃火器の他予備の弾丸の数も申請されているので…。】

 

【…ちなみに、申請した銃火器って…。】

 

【えっと…コルトガバメント二丁、日本刀二振り、サブマシンガンMAC10二丁、手榴弾三個…と書かれてます。】

 

【…大会委員会は何故そのような武器の使用を認めたんだ?】

 

【さぁ?…あの強襲課クラスの武偵だからじゃないですからですかねぇ?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やったかしら?」

 

「アリア…幾らなんでもやり過ぎじゃありません?ダメージ軽減で殺傷力は大幅に下がっても、手榴弾の爆発は普通の怪我じゃ済みませんよ!?」

 

「相手が相手よ。あの二人…特に灰原とか言うヤツを下手に動かすとすぐ向こうのペースに呑まされるわ。ならその前に先手必勝を取ったまでよ。」

 

「それでもやり過ぎだと思うなぁ。ああコレキンちゃんにどう言えばいいんだろう…。」

 

煙の上がるビルを前にサブマシンガンを手にするアリアとオロオロとビルを見ながら狼狽える白雪。

未だ何の動きも無い様子に先程の爆発で動けなくなったか?そう考えてた時だった。

 

 

ービキィ!ー

 

 

「「ッ!」」

 

 

ーバキィ!…ガアァアァンッ!!ー

 

 

【なッ!?ビ、ビルの壁が崩れたァーー!?】

 

 

煙の上がってる階の上の階の壁がひび割れたと思った瞬間、ビルの壁が内側から壊されたように破壊された。

 

壊された壁は瓦礫となって下に居るアリアと白雪へ、反射的に後ろへ下がり瓦礫を避けるがその際に上がった砂塵が二人の視界を悪くし一瞬の隙が生まれた。

 

「ゴホッ…これって…!」

 

「構えて白雪!アイツ等まだ……!」

 

 

 

 

 

 

ーシャキィィンッ!ー

 

 

 

 

 

アリアが白雪に警戒するように叫ぼうとしたのが悪手だった。

 

叫んで自身の居場所を掴まれたアリアの右手に握られたサブマシンガンの銃身が斬られるまで悠が近づいてる事に気付かなかった。

 

「ッ──このォッ!」

 

「シッ──!」

 

 

使えなくなったサブマシンガンを捨て未だ健在のサブマシンガンを向けようとするが、悠はこれを回避せずむしろ向かって行った。

突き出した剣の切っ先はアリアが向かって来る悠に対し意表を喰らった隙を突いて、サブマシンガンの銃口へ。切っ先は銃口を貫き、アリアのサブマシンガンを使用不可にした。

 

「退きなさいアリア!」

 

「させねぇ、っての!!」

 

すかさず白雪は手にした刀を抜き悠へ斬り掛かろうと動くが、それを阻止するように別方向から秋が手にした槍で白雪目掛け振り降ろす。

白雪は咄嗟に躱し、秋と相対する形となって距離を取った。

 

 

【グレーオータム、健在!まだ勝負は終わっていなかった!!神崎選手の銃器を破壊し、一対一の戦況!グレーオータムにとって有利な場面となりました!!!】

 

 

 

形勢逆転。正にこの言葉が相応しいと言われるこの戦況に観客は歓声を上げた。

 

アリアを除いて互いが獲物を構えながら睨め合うなか、アリアが言葉を発する。

 

「まさかあの爆発を逃れるなんてね。どういうトリックを使ったのかしら?」

 

「別に、咄嗟に蹴った先が偶々空いた部屋だったのと、隠れてた場所の近くに階段があったからバカ引き連れて上に逃げただけ。」

 

「マジでヒヤヒヤしたぜ。悠兄さんが動いてくれなかったら即お陀仏だったし!」

 

「お前が固まってただけだろ!落ち着いてれば爆発までの時間に対処できるっての!」

 

「冷静な判断とそれを即座に実行する行動力…強襲課で十分やっていけるレベルね。」

 

「冗談。武偵クラスなんて、俺の性に合わねぇて、のッ!」

 

動き出した悠に対しガバメントを抜いたアリアは構えて発砲。撃ってきた弾丸を逆手に持った剣で弾きながら進むと言う離れ業をするなか秋と白雪も互いの得物を打ち合って行き、一対一の戦闘が始まった。

 

【さぁ勝負は一対一の対決となりましたが、川神さん、これをどう見ますか?】

 

【そうだな。端から見れば最初はバレッドブレードのペースであったがそれは完全に崩れグレーオータムに向いてはいるように見える。だが相手は仮にも武偵クラスのチームだ。いくら接近戦に事が運んだとしても良くて五分五分の勝負となるだろう。】

 

 

そう試合の戦況について語る百代の見解は正しかった。

 

アリア、悠の方は悠がアリアの銃撃をものとせず間合いを詰めて蹴り技を放ったり等追い込んでいってるが、秋と相手をしている白雪の剣術は慣れない獲物を扱う秋にとって苦戦を強いられていた。

 

「ハアァァアァッ!!!」

 

「ぬォォッ!?…アイタタ…。」

 

白雪の剣戟を受けようとしたが気迫の籠められた剣戟は秋の予想以上の業であり男女の体格差等無かった様に吹き飛ばされ尻餅をつく始末。

咄嗟に秋は横目でアリアの銃撃を剣で防いでる悠にある提案を持ち掛ける。

 

「悠兄さん!!ちょっと今ピンチになんですけど!?」

 

「今取り込み中だ!自分で何とかしろ!!」

 

「何とか出来そうにないから言ってるんじゃん!!ホラ、アレ!Cプランで行こうよ!!」

 

「あーーッもう!!仕方ねえなちゃんと受け取れよ!!」

 

「アタシ達を無視して話してんじゃないわよ!!」

 

「何かやるつもりですが…させません!」

 

悠と秋のプランを阻止すべくアリアと白雪は前に動き出す。悠は剣を鞘に納め、秋は槍を持ったままそれぞれ別方向に走りだしアリア達はそれを追い掛ける形となった。

 

そして秋が瓦礫の一つに足を掛けて踏み台として跳び、走る悠を目測に捕えた。

 

「悠兄さん、ホイ、パスッ!!」

 

「そらちゃんと受け取れッ!」

 

秋は悠目掛け槍投げの要領で手にした槍を投げ、悠も秋目掛け剣を投げた。

 

槍は悠の走る先に突き刺さり悠はそれを回収。秋目掛け投げられた剣は上手い具合に秋の手元に向かい秋は空中でキャッチし、それぞれの武器を交換した。

 

「ちょ、武器の交換とかそんなのアリ!?」

 

「これは…意外な所を突いてきましたね。」

 

武器を交換してまた向き合う形となり、秋は悠から受け取った剣を鞘から抜く。

 

「武器を変えた所で私に勝てると思いですか?アリアはともかく、私相手に剣で挑むのは些か悪手だと思いますけど?」

 

「そりゃご丁寧にどうも。だけど…。」

 

秋はニヤリと笑みを浮かべ、抜いた鞘を順手に持って構えだす。

 

「…二刀流ですか。」

 

「オレって口で言われて納得するより自分の身で味合わねえとアレな性分だからさァ…行かせ貰うぜ?」

 

「…いいでしょう。ならお望み通り迎え撃ちます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ホント気に入らない。」

 

「は?」

 

「それだけの腕前があるのに一般教育課で何もしないままただ時間を過ごしてる。その実力を有意義に使おうとは考えないの?アンタもキンジと同じ穴のムジナ?」

 

「使ってるよ?自分のしたい事をする。だからこうしてアンタとメンチ切ってる。」

 

「フン。口だけは一丁前なのね。」

 

「それこそお互い様じゃね?見た目に反して口だけは大きい武偵サン?」

 

「…なんですって?」

 

アリアの額に青筋が浮かぶ。

 

「おっと失礼分かり辛かった?なら簡潔に。

その見た目が見た目だけに、武偵として、尚且つ偉大な偉大なご先祖様の名前をバカにされないように大物ぶってる様が、如何にも背伸びした子供みたいにしか見えなくてねぇ?あ、コレは勿論俺個人の考えだよ?”今までの”おたくが火遊びしてきたハナシを聞いてのねぇ。」

 

「…決めた。アンタは風穴所じゃ済まさないわ……頭からつま先まで鉛玉ぶち込んでやる!!」

 

「おーぉー。余所に見せらんねえ形相になっちゃって…。」

 

煽りに煽って完全にアリアを怒らせた悠は秋と交換した槍の柄頭の部分を軽く回すと槍の刃が収納されて鉄製の棍棒となり、それを器用に回した後、指をクイクイと動かして更に挑発する。

 

(ほーんと楽勝。こういうタイプの人間はちょっと突つけばコレだから。)

 

悠を完膚なきまで叩き潰すと言う事以外頭に無いアリアは悠の術中にまんまと嵌められた事など一切気付かないまま引き金を引くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うっわ~。無害なキャラして相当えげつない事ぶっ込んできてるねぇ~。」

 

観客席では双眼鏡を手にリングを眺めてた理子の発言に隣に座ってたキンジが反応し、詳細を聞こうとする。

 

「灰原の事か?て言うかお前、読唇術出来たのかよ!?」

 

「まぁね♪スーパー怪盗リコりんに掛かればこの程度おやつ前ってね!

それはともかく、ありゃ完全に狙って言ってる挑発だね~。アリアの性格も考慮して冷静を欠く、ねちっこいやり方。」

 

「挑発?灰原のヤツなんて言ってたんだよ?」

 

「うん。全部は読み取れなかったけどオルメスの家柄に付いて言ってたみたいだよ?”ご先祖”って言っていたようだし。」

 

「…そういえばアイツ気に入らない人間に対して結構辛口な所あったな。川神先輩なんか特にそれだったし。」

 

「へぇ~…ますます気になって来ちゃったなぁ。きーくんのお友達に。友達になれそう♪」

 

「珍しいな。お前ってやけに灰原を気にしてんだな。」

 

「そうなんだよねぇ。なーんか分かんないんだけど親近感というか何と言うか…同じニオイがするって言うのかな?」

 

「同じ?…お前と灰原がどこか似てるって?」

 

「さぁそこまでは…お!きーくん見て見て!!」

 

理子が指差す方へ目をやるキンジが見たのは悠の蹴り技でアリアの持つ銃を蹴り飛ばした場面だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!──」

 

「ハイ一つ。」

 

間近に近ずいて来た悠はアリアの銃の丁度持ち手のそこにつま先が当たる様に蹴り上げると白のガバメントは空中で綺麗な弧を描いて飛んで行ってしまった。

 

もう片方の銃を構えようもバトンの様に振り回す棒術によって弾かれ、そのままのテンポで膝、肩、骨盤等当て続け防御も反撃も許さない攻めの一手だった。

 

「セリャッ!」

 

「ッ──ガハッ!」

 

アリアの腹部に強烈な後ろ回し蹴りを叩き込む悠。ボールの様に地面をバウンドするアリアは腹部を抑えながらヨロヨと立ち上がる。未だ悠を睨めつけたままで。

 

「…まだやる?」

 

「当たり…前でしょッ!こんなので…負けられ、ないのよ!」

 

「…そう。じゃあ相手してやる。」

 

「ッ!」

 

アリアは二本の刀を抜き特攻気味で悠に斬り掛かって行く。

悠はコレを棒で上手く受け流し、弾いたりなどしていく最中どう試合をシメるか考える。

ちらっと秋の方を見ると、渡した剣と鞘の二刀流で白雪の剣戟にギリギリ対応出来てる。だが剣と剣の勝負では白雪が上であり、秋が独断で倒すのは結構厳しい相手である。

 

ならどうやって二人纏めて倒すか。怒りの形相で斬り掛かって来るアリアを前にしながらそんな考え事をしてた際にあるモノが悠の目に写りこんだ。

 

「(…使える。)秋!なるべくそっちの動きを封じてろ!!」

 

「え!?何でさ!?」

 

「いいから言う通りしてろ!!いい案浮かんだ!!」

 

「マジか!なら頑張ってみる!!」

 

秋に白雪の動きを封じる様に指示を出した悠は受けの姿勢から攻めに動いた。

 

二振りの刀を棒で受け止めるとローキックで膝を攻撃。姿勢がグラついたアリアは片膝を着く瞬間即座に後ろに回り込んで無防備な背中目掛けて大きく足をける体勢に入った。

 

狙うはそう、秋が必死で動きを止めている白雪目掛け…。

 

「ドㇻアァッ!!」

 

「キャアァアアアッ!!!」

 

小柄な体格もあってかサッカーボールのように蹴り飛ばされたアリアは真っ直ぐ白雪の元へ、白雪はアリアの絶叫を聞いて気付くが剣と鞘を振り回す様に攻めて来る秋によって回避する間が与えられずアリアと激突した。

 

「キャアァッ!」

 

「ブフッ!?」

 

「秋こっち来い!!ダッシュでだ!!」

 

「?わ、分かった!」

 

丁度白雪を後ろから押し倒す様に共倒れとなったアリア達を見て悠は秋を呼び戻す。

 

「イタタ…ちょっと!気付いたのなら受け止めるくらいしなさいよ!!」

 

「無理言わないでください!彼の無茶苦茶な剣を前に受け止めるのが精一杯だったんです!!」

 

「その位どうにかしなさいよ!!それでも星枷の家の巫女なワケ!?」

 

「な、あ、貴方って人は…!!」

 

「オーイ。お二人さん。」

 

内輪揉めをするアリアと白雪の目が、声を掛けた悠に集まる。未だ理解出来て無い秋の隣で、勝ったような雰囲気を出して。

 

「コレ…なーんだ?」

 

「?…ッ!」

 

悠が指で摘まむように見せつけたモノにアリアはハッとなって慌てて懐に手を弄り出す。

 

悠が見せつけてるモノ。そう、アリアが申請して持ち出してる手榴弾の安全ピン。

 

 

「──BON!」

 

 

ードガァァアァアァンッッ!!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──フ~。いや~さっきは危なかったねぇ。悠兄さんのアイデア無かったら負けてたかも。」

 

「お前がな。俺は全然余裕だった。」

 

会場内の自販機にて悠と秋はそれぞれ缶ジュースを手に先程の試合を振り返っていた。

 

早い話試合は悠達の勝利に終わった。アリアが懐に入れていた手榴弾が目に写った際コレを利用する手を思いついた悠はアリアの後ろに回り込んだ時に手榴弾の安全ピンを抜いたのだ。

そして一種の爆弾と化したアリアを白雪の元まで、ほぼゼロ距離で爆風の威力を喰らった二人は即K,Oという結果になった。

 

一部の大会役員と武偵側から一種の抗議が出たが、アリアの過剰な武器の使用を認めた役員と武偵から持ち出したとされる手榴弾についての管理問題について悠が談義したら手を返した様に大人しくなった。余計な責任問題など背負いたくないと言う暗黙のルールなのだろう。

 

そんな少しの騒動も片付いて一息つけるために人通りの少ない場所で休んでいた最中だった。

 

「これで後二回勝てば優勝ねぇ…やっぱオレ達の手に掛かれば楽勝だな!!」

 

「出来て当然の結果だ。喜ぶ程の大事じゃない。…それに何度も言うが、俺達はある目的の為に出ているんだぞ?狙うのは優勝じゃない。」

 

「おっとそうだった、つい…ゴメン。」

 

「とにかく、俺達にとっては遊びとは言え気を緩めるなよ……そろそろ帰るぞ。いい加減硝煙のニオイを落としたい。」

 

「オーケイ。オレも腹減ったし。帰ってメシメシ(PiPiPiPi!)…オイオイ。タイミング悪。」

 

「敵はこっちの都合お構いなしか…二か所か。…別れて倒すぞ。俺は遠い方をやる。」

 

「オッケイ!ならオレは近場の方ね…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、頼まれたモンは…これで全部か。」

 

「はい。先輩一つ持ちますよ。」

 

「おう。悪いな。」

 

トーナメント二回戦が終わり日も落ちかけて空が赤くなってきた時間帯に古城と雪菜は揃って買い出しをしている最中だった。

最早監視対象と監視役とは誰も思わない雰囲気で端から見れば少し歳の離れたカップルとしか言えない光景だった。

 

「にしても今日のスーパーやけに混んでたなぁ。これもトーナメントの影響か?」

 

「そうですね。ここまで大規模な催しは今まで初めてと聞きますし…でもこの街ってそれ以外にも確か大きなイベントありましたよね?確か…。」

 

「あぁ、波朧院フェスタか。とは言ってもアレってハロウィンをただデカくしただけの祭りなんだよな。この街って人外が結構多いから。」

 

「それに第四真祖の吸血鬼も居ますから尚更ですよね、この街…。」

 

今更だが雪菜の言う通り、この街には三大勢力の悪魔、天使、堕天使の他、獣人や吸血鬼と言った魔族といった種族が人間と五分五分の割合で共存してる街なのだ。普通に考えればこれだけ多くの種族が集まる街が種族間での争い無く過ごせてきた事が奇跡と言える位だ。

 

…そう、”今まで”は。

 

二人は道中、電気屋に置かれてる売り物のテレビの映像に目が行く。テレビでは学園襲撃時に放送されたBABELの宣戦布告の映像。そして、数多くの怪人軍団を薙ぎ払って行くリュウガ、ビースト、ダークドライブの姿が映し出されてた。

 

「仮面ライダー、か……なぁ姫柊。」

 

「なんですか?」

 

「…お前さ、灰原のヤツが……仮面ライダーだったら、どう思う?」

 

「ッ…先輩?」

 

「…いや、何でもねえ。悪いな変な話しちまった。」

 

「い、いえ……先輩は、どうして灰原先輩が仮面ライダーだと?」

 

雪菜は古城からこれだけはどうして聞きたかった。自分や紗矢華はともかく古城はまず人を疑うと言う考えが低いからである。そんな古城が気の合う友人であろう悠に世間を騒がせてる中心人物ではないかと疑い始めてるのが古城にとって、第四真祖の古城にとってまた予期せぬ騒動に巻き込まれる可能性を考えての追及であった。

 

「いや、オレの場合だとちょっとした影響と言うかさ…ホラ、アイツ今日の試合とかでも剣で弾丸斬ってたよな?」

 

「えぇ。正直驚かされてばかりです灰原先輩には。もしかしたら、私よりも強い人何じゃないかって思う位です。」

 

「煌坂相手にも普通にやり合ってたしな……それによ。一つ思い出した事があるんだ。

覚えてるか?叶瀬と初めて会って、ウチニ帰る時。」

 

「はい。ファントムが襲いかかって来た日ですよね。」

 

「その時のアイツ…何時もと違かった。普段はボケーっとしてるアイツがあの時は別人みたくさ。

あの時の灰原は何と言うか……まるで…。」

 

「…先輩。実は私達…。」

 

雪菜が悠に対して胸中に秘めている事、そして属してる獅子王機関からの命令を打ち明けようとした時だった。

 

 

鼓膜に響く様な爆発音と金属音。コレにハッとなって見渡すとそう離れて無い位置から黒煙が上がってるのが見えた。

 

「アレって…もしかして!」

 

「ちょ、先輩!!?何処に行くんですか!?先輩!!」

 

慌て逃げ惑う人々とは逆に煙の上がっていく場所へ走っていく古城を掛ける雪菜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< ゼンリン! >>

 

「デリャッ!!」

 

一方でビル建設中の工事現場で仮面ライダーマッハは死神ロイミュードと下級ロイミュード二体、合計三体を相手にしていた。

 

下級のコブラ型とスパイダー型にゼンリンシューターを振るって薙ぎ払い、同時に襲い掛かって来る死神ロイミュードの奇襲を体を回して避け、ローリングソバットを背中に叩き入れる。

 

「ったく、久しぶりに出てきやがって。こっちは腹減ってるって時によぉ。」

 

 

<< SignalBike! >>

 

<< シグナルコウカーン! カクサーン! >>

 

「ちゃちゃっと終わらせて、ラ・フォリアちゃんのメシ食うとしますかね!」

 

<< タクサン! カクサーン! >>

 

ブーストイグナイターを連打しシグナルバイクの能力を格上げしながらマッハは特攻。ロイミュード達はこれに迎え撃とうとするが、三体を前にマッハは懐に入り込んでボディにゼンリンシューターをコレでもかと思う位に叩き込んだ。

 

「オララㇻラㇻラㇻㇻァッ!!!!」

 

残像によって無数の手に見える程の高速のラッシュとシグナルカクサーンによる攻撃拡散がロイミュード達のボディを削っていき、最後に顔面ストレートを三体同時に叩き入れて吹き飛ばした。

 

「んじゃ、そろそろ仕上げっと。」

 

<< ヒッサツ! >>

 

<< MACH! Full Throttle! >>

 

<< シューター! >>

 

ゼンリンシューターにシグナルマッハを装填して上に向かって放つマッハ。見当違いの狙いには上を向くロイミュード達を余所にマッハはドライバーのブーストイグナイターを押した。

 

<< カクサーン! >>

 

すると光弾は弾けたように拡散し、光の雨となってロイミュード達へ。必殺技のヒットマッハーカクサーンはあらゆる方向から敵を撃ち抜き逃げる事の許されないロイミュード達は光弾の雨に撃ち抜かれ爆散していった。

 

立ち上る爆炎と煙を前にマッハはイノベイドバイザーを上げ余剰エネルギーは排気しながら眺める。

 

「ふぅ~。あの程度なら楽勝に勝てる位になったってトコかな?さぁて、悠兄さんも終わってるだろうし、今度こそかーえろ。」

 

そう呟きながら近くに停めて有ったライドマッハーへ向かう途中工事現場の入り口から誰か入って来たのに気付き振り向くと…。

 

「?…あ。」

 

「ハア、ハア…ッ!アイツは…!」

 

「先輩!急に何も言わないで走らないでください!!…ッ!か、仮面ライダーッ!」

 

入り口から入って来たのは、息が上がって汗が頬を伝ってる古城と、古城に追いかけて来た雪菜がマッハを前に警戒しギターケースから雪霞狼を取り出した。

 

(あっちゃ~。まさか古城センパイ達に会っちゃうとは…。これどうやって切抜けばいいんだろ?)

 

「動かないでください!アナタには獅子王機関から捕獲命令が下されています!下手に抵抗した場合、実力行使での捕獲、討伐に掛かりますので、素顔を見せてください!!」

 

「討伐って、おい姫柊!どういう事だよソレ!?」

 

「…すみません。実は少し前に私も命令が下されたんです。仮面ライダーの捕獲、もしくは抹殺の命令を…。」

 

「マジかよ…。獅子王機関も…。」

 

「…あの~。悪いんだけどオレ、捕まる訳にも倒される訳にもいかなくてさ。それにさっき一仕事終えたばっかだから帰りたいんだけど…。」

 

「そうはさせません!この場でアナタを「ちょっと待った姫柊!」先輩!?」

 

マッハと雪菜の間に割り入って来る古城。突然の行動にマッハも唖然とするなか古城は雪菜に落ち着く様に説得する。

 

「何やってるんですか先輩!?早くそこを退いてください!!」

 

「だから待てって!コイツはアレだろ!?学園を守るために戦った方の仮面ライダーだろ!?ならコイツは悪いヤツじゃ…!」

 

「それでも危険対象である事に変わりありません!」

 

「だからっていきなり実力行使は無いだろ!?話せば何か分かるかもしれないから一旦ソレ下ろせ!な!?」

 

「………分かりました。でしたらこの場は先輩に任せます。ですが何かあった場合は…。」

 

「…サンキュー。」

 

渋々といった顔で雪霞狼を下ろす雪菜。一息ついた古城は後ろに居るマッハの方へ顔を向け対話を試みようとする。

 

「…悪いな。アイツちょっと手が早いトコがあると言うか…。」

 

「え?…ああいやいや!そんな滅相もない!うん!(えぇ~!?何この展開!?逃げようにも逃げづらい状況になっちゃったんですけどぉ!?)」

 

内心相当焦ってるマッハだがどうにか悟られない様に必死に誤魔化す。この時だけ仮面を被ってる事に本気で良かったと思っている。秋は悠と比べてこう言った状況に馴れてないからだ。

 

「そっか。…アンタ確か学園に居たヤツだよな?確か名前は…えっと……ま、ま……マッパ?」

 

「ちがァーーーーうッ!!!」

 

「うおッ!?」

 

自分の名前がとんでもない間違いをされてる事にマッハは思わず叫んでしまった。

 

「何その露出狂みたいな名前!?いくらなんでも無いっしょソレは!!…よぉーし分かった。今からとっておき見せてやっから、見逃すなよ!!」

 

「ッ!」

 

「ッ!先輩下がって!!!」

 

逆鱗に触れて攻撃するのかと思い古城の前に出る雪菜。当のマッハはバイザーを下ろし、一歩ずつ前に出て…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──追跡!撲滅!!いずれも…マッッッハァーーーーッ!!!」

 

 

「「……え?」」

 

 

「仮面ライダァァーーーーーッ……マッハァァーーーー!!!」

 

 

「「………。」」

 

 

何時もの名乗りと決めポーズを披露するマッハを前に二人は困惑した表情で首をコテンと傾げることしか出来なかった。

 

「…えっと……今のは…?」

 

「名乗りだよ!名・乗・り!!いつもより溜め多くしたバージョン!

それより覚えた?マッハだよマッハ!!仮面ライダーマッハ!!次からは間違えないでよね!!!」

 

「「あ…ハイ。」」

 

「ならよし!…にしても流石にまっぱ無いよなァ。うん。これからマッハ以外にも名乗り出した方が良いのかな?いやでも、隙が出来るから控えろって言われてるし、でもやっぱあんな間違いされるとなァ…。」

 

「…先輩。コレ。どうすれば良いんでしょうか?」

 

「…オレに聞かれてもなぁ……ん?」

 

「先輩?」

 

「…あの声に、あのノリ…もしかして…なぁ!」

 

「え?何?今ちょっと大事な考え事を…。」

 

「お前……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしかして………秋か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えぇ!?さ、桜井先輩!?」

 

 

 

「いや気付かねえか?声といい喋り方といい、どっから見ても秋にしか見えないんだが…。」

 

 

 

「い、言われれば…。」

 

 

(…ば、バレたァーーーーーッ!?!?ヤッベェマジでどうしよコレェ!?ていうか何で気付くのあの人!?超ド級の鈍感の癖に!)

 

「…言い返して来ないですね。まさか本当に…。」

 

(ヤバい!ヤバい!!ヤバい!!!マジでどうすればいいんだぁ!?)

 

今は仮面で隠れてるが自分の名前が出された事に相当焦りの色が出ているマッハ。どうにかして桜井 秋では無いと言おうにも下手に否定すれば反って逆効果を与えてしまう。だが今のマッハには冷静に考える程の落ち着きが無く、ただ時間が過ぎようとしていた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──何をしている。」

 

 

「「ッ!」」

 

「あ…。」

 

 

突如空から聞こえてくる声。

 

機械的に、何の感情も込められて無いと思う程の冷たい声はマッハにとっては救いであり、古城と雪菜にとっては畏怖の念を抱かせた。

 

悪魔の様な機械の羽を広げ、見下ろして来る死神・魔進チェイサーの姿を。

 

(何だコイツ!?コイツも仮面ライダーか!?)

 

(──強い。)

 

マッハの前に降り立つ機械の異形を前に古城達は戦慄する。

 

それ程までに感じるのだ。仮面で隠したその裏に此方に向けてるであろう鋭い視線を。それが二人の本能に直に伝わって来た。

 

目の前の存在は、危険だと。

 

「…マッハ。」

 

「は、ハイィッ!!」

 

「お前は先に戻ってろ。コイツ等の対処は、俺がする。」

 

「り、了解!」

 

「ッ、に、逃がしません!」

 

チェイサーの指示に従いライドマッハーに跨りアクセル回して発進させるが、それを阻止する為に感情を振り払って駆けだす雪菜。

 

走るライドマッハーの横から雪霞狼を突き出そうとするが、突如死角から出て来た機械の腕がそれを阻んだ。

 

「ッ!?」

 

「させると思うか?」

 

雪霞狼の刃を片手で掴んで止めたチェイサー。雪菜は振り払おうと力を籠めるがチェイサーの強靭なパワーにビクとも出来ずマッハを乗せたライドマッハーが工場現場から消えてチェイサーが離すまで何の抵抗も出来ずにいた。

 

尽かさず雪菜は下がって古城の元へ、チェイサーはただ何もせずジッと此方を見てるのが二人にとっては不気味でもあり、一向に気を緩んではいけないと感じていた。

 

緊張の空気の中、最初に口を出して来たのはチェイサーだが、それは二人に対しての言葉では無かった。

 

「…そこに隠れてるヤツもいい加減出て来い。」

 

チェイサーの言葉に二人は目が点になるがその意味は直ぐに出て来た。重ねられた資材の山からスッと出て来た人影。その姿を見た古城は思わず声が出てしまった。

 

「遠山!?何でココに居んだよ!?」

 

「騒ぎを聞きつけて来たんだよ、武偵の仕事柄な。そしたらこの場面って訳だ。」

 

そう言いながらキンジはチェイサーに目をやる。

ロイミュードが初めて市街で暴れた際に遭遇した機械の異形。先程マッハに指示を出した場面を見た時点であの時の知りたかった謎が今解けた。

 

「やっぱりアンタも仮面ライダーだったんだな。随分いかついからBABELのヤツかとずっと思ってた。」

 

「半分正解。とだけ言っておこう遠山 キンジ。今の俺は魔進チェイサー。仮面ライダーでは無い。」

 

「…って遠山お前、ソイツの事知ってるのかよ!?」

 

「あぁ。一度だけ会った。…そして、お前今こう言ったよな?”今の俺は”って…お前、リュウガか。」

 

「そうだ。」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!なんか二人だけで勝手に話進めてますけど私達にも分かる様に言ってくれません!?」

 

「簡単に言えば、コイツは色んな姿を持ってるって事だよ。

学園の時に見せたリュウガと黒マント、オレが初めて会った白い鎧武者と戦極 凌馬から聞いたガイムって言う赤い鎧武者。そして銅色の仮面ライダーもな。」

 

「…ここだけの話し。俺達について一番関わっているのはお前だ。遠山 キンジ。」

 

「そうかよ。ならこれを機会に色々教えてくれないか?お前達が何なのか、BABELってのは何なのかさ。」

 

「武偵にはこれ以上の詮索をしないよう警告したはずだが?」

 

「…それでも知りたいんだよ。…世間はお前等をヤバいヤツ扱いしてるけど、正直言ってオレはお前がそんな悪いヤツだとは到底思えない。だって…お前ミカの事助け…。」

 

「結果論だ。俺には俺の目的があった。その結果あの子供が偶々関わり、あの結果になった。助けた覚えは、無い。」

 

「お前…。」

 

「それならオレ達の事は!?お前があの時の助けてくれた黒い仮面ライダーだろ!?なら…。」

 

「漁夫の利を狙っただけだ。失敗してしまったがな。」

 

「それって私達を利用したって事じゃないですか!…先輩、やっぱりこの人は危険ですよ。マッハって仮面ライダーは兎も角この人は…。」

 

「俺をどう思おうと関係無いが、此方も言いたい事があるので言わせて貰うぞ。…暁 古城。」

 

「ッ!?何でオレの名前…?」

 

「知ってるさ。隣の女の事も、そして…お前の隠してる力についてもな。」

 

「ッ!?」

 

「先輩の正体を…!?どうして、仮面ライダーが!?」

 

「暁?」

 

チェイサーの衝撃とも言える発言に古城と雪菜は今日一番の驚愕に染まった顔をする。逆にキンジは話しに付いて行けず割り込む余地が無かった。

 

「お前、どうして……お前もしかして…!」

 

「此方の情報網もかなり優れてると言う事だ。そこの女の組織が、裏では俺達の力を狙ってる事も既に知っている。」

 

「獅子王機関の事まで…。」

 

「暁 古城。お前のその力は強大が故に何時までも隠しきれるものでは無い。いずれ公に曝す事態が容赦なくお前に降り掛かるだろう。

だが…この戦争では首を突っ込むな。」

 

「ッ、どういう意味だ?」

 

「この戦争は俺達と、BABELとの一騎打ちに近い戦争だ。第三者の横槍を快く思わない。その辺りについては、そこの男が良く知っている。」

 

「ッ。」

 

「警告だ。俺達の戦いに横槍を入れた場合は、お前や、そこの女だけに限らず、お前の…周りの人間にも危害が及ぶと思え。」

 

「テメェ…凪沙にまで手ぇ出す気かよ!!」

 

「…最終警告だ。

──暁 古城。姫柊 雪菜。そして──遠山 キンジ。俺達に…仮面ライダーの戦いに、足を踏み入れるな。」

 

「待てッ!!」

 

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告げるべき警告を全て話し終えたチェイサーはウィングスナイパーを装着し空へ飛び立った。

 

キンジは何とも言えない複雑な顔で見上げ、雪菜は改めて仮面ライダーの脅威を感じながら見上げ、古城は…。

 

「待てよ……ふざけんなよ……灰原ァアァアッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工場現場から飛び去ったチェイサーは、河川敷の橋で着地し変身を解いた。

 

悠が歩む先にはライドマッハーに寄りかかって気まずそうな顔をする秋が居た。

 

「とんだ失態だな。ま、いずれこうなる事は予想できた。こうなったら例の作戦の内容を一部変更するかもしれんな──オイ何時まで落ち込んでんだ。」

 

「…なぁ悠兄さん。…流石に今の言い方は幾らなんでも誤解を招くって…。」

 

「あ?……見てたのか。」

 

悠は秋の手元にある鏡と肩に止まってる使い魔のグリーングリフォンを見て全て察した。

 

「ったく変な所で器用なヤツめ……シスコンのアイツには有効な手だ。これ位言っとけば首突っ込むマネは…。」

 

「そう言うのじゃねえよ!!!オレが言いたいのは…ッ。

センパイ等を敵に回す事すんなよってコトだよッ…だって…あの二人は悠兄さんの「秋。」…ッ。」

 

「アイツ等が…俺をどう思ってようが、秘密を知れば見方なんざコロッと変わるさ…。

大嘘吐きの人殺しなんざ、誰がどう見てもドン引きだろ?」

 

「……。」

 

「…ハァ。過ぎた事を幾ら思ってもどうにもなんねぇっつうの!こうなった以上例の作戦を何が何でも成功させるぞ!上手くいけば今日の失態全部はチャラだ。」

 

「……うん。」

 

「…帰るぞ。」

 

秋は一瞬の光景を見逃さなかった。

 

何時もの様に厳しく接し表情を崩さない悠の鉄仮面が、僅かに崩れた事に。

 

その時の悠は、そう、まるで…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感傷に浸る様な目をしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【さぁさぁ!!トーナメントも遂に準決勝にまで進んできましたぁ!!!残るチームは4チーム!!

更なる激闘を期待できる強者同士の戦い頂点が今正に見えてくる日だぁあぁぁ!!!!】

 

 

 

 

 

残るチームは4チーム。後二回勝てば優勝となる大会も大詰めに入り観客の勢いは加熱するばかりであった。

 

 

そんななか選手である悠は控室で携帯に送られたメールを見ていた。思わず秋が声を掛けに行く。

 

「誰から?」

 

「ん?暁。この後話したい事があるってさ。ま、確実に昨日の事だろうよ。」

 

「……。」

 

「…何辛気臭い顔してんだらしくない。これから試合だぞ。頭切り替えろ。」

 

「…おう。」

 

 

 

 

 

 

 

【さぁそれでは準決勝第一試合は……。おーっと!これもまた面白い組み合わせだ!!】

 

 

 

 

 

会場のスクリーンに映し出された組み合わせカードが出た途端一斉に歓声が上がり始めた。そのチームは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準決勝

 

 

チーム・知性チームVSチーム・グレーオータム

 

 

 

 

 

武神四天王の一人と期待の新星と評されたチームの対戦だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





分かる人には分かる、今日の主人公でした。

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