怪物と戦い続けるのは間違っているだろうか   作:風剣

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 新しくタグ付けました。

 今話も戦闘回ですし、上手くラブコメ書けるかは分かりませんけどね!




迷宮死線

 

 聴覚を消し飛ばすかの様な爆音が響いた時には、もう遅かった。

 

 大紅竜(ヴァルガング・ドラゴン)の砲撃に、腕が焼かれる、その直後―――レイラは、それの作った穴に、呑み込まれる。

 

「ぁ―――」

 

 迷宮の中を落下する中、彼女が目にしたのは―――遥か下方、数百(ミドル)下から砲撃して来た、一頭の巨竜。

 

『オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

「ッ……!!」

 

 喉が干上がる。

 

 呼吸が止まる。

 

 汗が止まらない。

 

 大紅竜の放つ凄まじい威圧感に、レイラは気圧されていた。

 

『―――ギィ!』

 

「あっ!?」

 

 落下する中、醜悪な形相のハービィ、その群れに襲われる。

 

 砲撃を受けてもまだ落とさなかった杖を振るい、辛うじて防いでいたが反撃に転じる事ができない。

 

 グリファスの見よう見まねで杖を突き出したが、軽くあしらわれて蹴りを腹に受けた。

 

「グッ……!?」

 

 落下する中、必死に応戦するが、少女(エルフ)の細腕では防御すらおぼつかない。群れの猛攻を受けて次々と傷を負っていった。

 

『アァアアアアアアアアアアア!』

 

「うっ!?」

 

 焼かれた左腕が使えない事に気付いたモンスターが執拗にそこを狙い始める。群れの攻撃を防ぎきる事などできず、裂傷を負う度に激痛が脳を焼いた。

 

『ギャァ!』

 

「ッ!?」

 

 一体のハービィに肩を切り裂かれた。

 

「―――」

 

 意識が、朦朧(もうろう)とする。

 

 杖が手を離れた。

 

 故郷の森、送り出してくれた両親、そして出会った仲間。

 

 己を喰らおうとするモンスターを目の前に、走馬灯の様な光景が映る中―――少女が最後に思い浮かべたのは。

 

 憧れ、恋焦がれた王族(ハイエルフ)の青年の笑顔だった。

 

「(ぐり、ファス―――)」

 

 その紅い瞳が、一粒の涙をこぼす。

 

 下から大火球が迫る、その直後。

 

『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?』

 

 周囲のモンスターが、一瞬で撃墜、爆砕される。

 

「―――ぁ」

 

 レイラの瞳に映ったのは―――魔力を纏い、背に虹色の翼を携えた王族(ハイエルフ)

 

 その直後、抱きしめられ、一気に飛び―――すぐ側で、大火球が炸裂した。

 

 

 

 

「ッ!」

 

 すぐ側で炸裂した大火球の余波で崩した体勢を立て直し、グリファスは叫んだ。

 

「レイラ、生きてるか!?レイラ!!」

 

 一拍置いて、返事があった。

 

「グリファス、様……?……えぁ!?ちょ、なん、で……!?」

 

 腕の中で確かに動いた少女の声を聞いて、彼は薄く薄く息を吐いた。

 

 正直泣きたい位の気分だったが、安心するのはまだ早い。下には大紅竜(ヴァルガング・ドラゴン)がいる。アレが健在である限り決して安心できない。

 

「あ、あのっ、グリファス様っ!?なんで、こんな事を……!?」

 

「……?」

 

 顔を真っ赤にして叫ぶレイラ。一瞬何を言っているのかと思ったが、今彼女を抱きかかえている事を思い出すと意味が分かった。

 

 動揺を瞬時に抑える。

 

「……仕方がないだろう。落ち着いてくれ。それともまた砲竜に向かって落ちるつもりか?」

 

「……す、すいません」

 

 ようやく状況を把握したのか、未だに頬を染めながらも静かになったレイラに尋ねる。

 

「……レイラ、怪我は」

 

「だ、大丈夫です、炎は掠っただけですし、それほど切り傷も深くな―――」

 

「寝言は寝て言え」

 

「ふわっ!?」

 

 少女の言葉を一言で切り捨て、『連合(ユニオン)』に所属する薬師(くすし)の調合した回復薬(ポーション)を浴びせるようにかける。

 

「悪いが応急処置しかできそうにない。まずはアレを始末してからだ」

 

「わ、私達だけで、ですか?」

 

「他に誰かいるのか?」

 

「ジャックさん達は……」

 

「そもそもここでまともに動けるのは私だけだろう。詠唱を始めてくれ」

 

「は、はいっ」

 

「―――行くぞ」

 

 遥か下、16階層から放たれた大火球を回避。

 

 レイラを抱きかかえ、グリファスは急降下した。

 

 

 

 

「……」

 

 長剣を振るってモンスターを片付けたシルバが、何かに気付いた様に振り向いた。

 

「追撃が、止まったな」

 

 未だに大火球が放たれ、その度に迷宮が揺れるが彼等に対する被弾は無い。きっとグリファスが上手く誘導しているのだろう。

 

「ディルムッド」

 

「……大丈夫だ。彼等は生きてる」

 

 小人族(パルゥム)の騎士の言葉に一同は安心した様に息を吐く。

 

「それなら、砲竜ももう大丈夫ね」

 

「あいつ等ならどうにかするだろ。問題は―――こいつ等だ」

 

 ジャックの言葉と同時、戦士達が振り返った。

 

 ヴァルガング・ドラゴンの砲撃でできた大穴。

 

 そこから、飛竜(イル・ワイヴァ―ン)をはじめとした何体ものモンスターが飛び出して来た。

 

「うへぇ、飛竜が4体もいるじゃない。倒せんの?」

 

「通路に誘い込め。巨体ではあそこを自由には動けないだろう」

 

「アリシア、詠唱」

 

「精霊使いが荒いわねぇ」

 

「とっとと歌えや」

 

 好き勝手言いながら各々の武器を構える彼等を包むのは光の衣。

 

 魔法効果、物理効果から彼等を守り、移動速度を強化する光精霊(ルクス)の加護だ。

 

「さて……」

 

 聖剣を振るうジャックの視界に映るのは、グリファスの置いた出入口(あな)への目印。

 

 ここでモンスターを全滅させなければ、確実に大群は『穴』―――地上に殺到するだろう。

 

「―――ここで全部抑えつけるぞ。地上(うえ)には行かせねぇ」

 

『おう!』

 

 武器を握る戦士達と、咆哮と共に威嚇するモンスター。

 

 直後、二つは激突した。

 

 

 






 最近、執筆中に燃え尽きそうになる事が多い。
 1話書き上げられた瞬間、達成感と共にバタンキューする日々。



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