怪物と戦い続けるのは間違っているだろうか   作:風剣

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はい、戦闘回です!ダンジョンダンジョンします!
深層域の怪物もガンガン出す予定です!


進撃

「ガラン、ジャック、前線に上がれ!レイラとアリシアは詠唱を始めろ!」

 

 天井に張り付いて隙を(うかが)っていたヤモリの様なモンスターの頭部を杖で粉砕したグリファスの指示に従って陣形が組まれる。

 

「―――邪魔だぁ!」

 

『ゲッ!?』『ギッ!?』

 

 疾走するジャックは進路上にいた二体のゴブリンを文字通り一蹴し、近くにいた大型、トロールの顔面に叩き込む。

 

『ゴッ……!?』

 

 ふらついたトロール、その太い首を切り裂いて絶命させ、肩を踏み台にして宙で羽ばたいていた蝙蝠(バットパット)を斬殺した。

 

「ッ……おらぁ!!」

 

『グゥウウウ!?』

 

 一方、大型級に匹敵する巨体を持つモンスター、バーバリアンと戦闘を続けていたガランは大剣を振るって致命傷を叩き込んだ。肩で息をする彼に襲いかかった野猿(シルバーバック)が裏拳で顔面を爆砕される。

 

「あまり上がり過ぎるな!巻き込まれるぞ!」

 

「【全てを貫け、光の槍】―――【イグザス・レイ】!」

 

 長槍で大虎(ライガーファング)を仕留めるディルムッドが叫ぶと同時、アリシアの超短文詠唱が完成した。

 

 彼女の指先から放たれた腕程の太さの閃光が、射線上のモンスター全てを貫いた。

 

 イグザス・レイ。

 

 光精霊(ルクス)の美女、アリシア・マリゴールドの操る、ありとあらゆる物を貫く『貫通魔法』だ。

 

「撃つ時は一言かけろ!?今ちょっと(かす)ったぞ!」

 

「ごめーん!」

 

 黒髪の一部を焦がすジャックの必死の叫びにアリシアが慌てる一方―――瞑目するレイラは後方で詠唱を続けていた。

 

「―――【凍てつく風、迫り来る冷気】」

 

「【世界の始まりから存在する二つの深遠】」

 

 王族(ハイエルフ)にふさわしいその凄まじい魔力に気付いた数体の屈強なモンスターが目の色を変えて襲い掛かるが―――届かない。

 

「させんさ」

 

「通させる訳には行かないからな」

 

「消えろ」

 

「らぁあああああ!!」

 

 紅い魔力を(まと)う銀杖が巨大蠍(ヴェノム・スコーピオン)を爆砕し、長槍が上位蜥蜴人(リザードマン・エリート)の胸部を貫き、剣と双剣の連携がフォモールを斬り刻んだ。

 

 紅い魔力を纏う王族(ハイエルフ)小人族(パルゥム)の騎士、狼人(ウェアウルフ)の剣士、褐色の女戦士(アマゾネス)がモンスターを抑えつけてみせる。

 

「【足を踏み入れし愚者は瞬く間に凍り付き、無数の氷像が形作られる】」

 

 (うた)う、(うた)う、(うた)う。

 

 今も編み続けるのはレイラの持つ二つの攻撃魔法、その一つ。

 

 終焉の吹雪(かぜ)を呼び、敵対する物を凍りつかせる広域殲滅魔法。

 

 自分を常に信頼し、今も昔も守り続けてくれる想い人(グリファス)に応える為、レイラは歌を紡ぎ続ける。

 

 どこまでも美しく()る少女は僅かに、だが確かにグリファスを見惚れさせ―――詠唱を完成させた。

 

「【咲き誇れ青い薔薇(バラ)、至れ、氷の国―――我が名はアールヴ!】」

 

 紡がれ続けた詠唱の完成に気付き、その魔力の規模に冷や汗をかく前衛が撤退すると同時。

 

 魔法名が紡がれた。

 

 

 

「【二ヴルヘイム】!」

 

 

 

 安全圏にいるにも関わらず視界が塗りつぶされる程の白い吹雪。それがあっという間にモンスターを呑み込んだ。

 

 もはや嵐と表現しても足りない純白の暴風が収まると―――そこにはどこまでも白い世界が広がっていた。

 

「あ、相変わらず洒落んなんねぇ……」

 

「さ、寒ぅっ……」

 

 壁面、天井まで白い氷に覆われる中、無数のモンスターの氷像ができあがっている。

 

 流れていた汗まで凍りついた事に気付いたジャックが顔を引きつらせ、ガタガタと震えるミランダもこくこくと頷く。レイラも多少は自覚があるのか困ったような笑みを浮かべた。

 

「その……ちょっと、やりすぎてしまって……」

 

「絶対ちょっと、じゃねぇ!?明らかにやり過ぎだったろ!?」

 

「絶対おかしいよ、なんで王族(ハイエルフ)ってこんなに強いの……」

 

 若干凍りかけてた尻尾を保護していたシルバが食って掛かり、アリシアが呻く中、弛緩した空気が流れる。

 

「レイラ」

 

「グリファス様……?」

 

 纏っていた魔力を解き、首をかしげるレイラにグリファスは微笑みかけた。

 

「良くやった。素晴らしい魔法だった」

 

「ぁ――――」

 

 数瞬遅れ、なんと言われたのか理解したレイラは頬を赤く染める。

 

「あ、え、その―――」

 

 照れ、はにかみながらも、少女は最高の笑みを浮かべた。

 

「―――はい!」

 

 束の間、穏やかな雰囲気になる中。

 

 念の為凍りついたモンスターは全て破壊し、戦士達は先に進んでいった。

 

 




いやあ、夏休みですねえ。東方の作業用BGMを聞きながらもそもそと執筆する日々。
最高です。

……原作のままだと、あれだな、モンスターのネタが足りなくなってきましたな。
タグでも新しくつけるか?



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